(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】点群データの取得方法及び点群データ取得システム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
G01C7/04
(21)【出願番号】P 2021502246
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007360
(87)【国際公開番号】W WO2020175438
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019034970
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-510559(JP,A)
【文献】特開2018-169301(JP,A)
【文献】特開2002-260163(JP,A)
【文献】特開2017-156704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行環境を表す3次元地図の元データとなる点群データをデータ収集車両が移動しながら取得する方法であって、
走行環境を構成する地物までの方位及び距離を表す点群データを取得する測距処理と、
車両の走行路に敷設されたマーカを検出し、検出されたマーカに対するデータ収集車両の車幅方向における横ずれ量を計測するマーカ検出処理と、
マーカに付設された情報提供部から固有情報を読み取る固有情報取得処理と、
いずれかのマーカの固有情報及び該いずれかのマーカに対するデータ収集車両の相対位置を表す相対位置情報を含むマーカ基準情報をひも付けて前記測距処理により取得された点群データを記録するデータ記録処理と、を含み、
前記マーカが検出された時のデータ記録処理では、マーカに対するデータ収集車両の車幅方向における偏差である横ずれ量が、前記相対位置情報として含まれるマーカ基準情報をひも付けて点群データが記録される一方、
前記マーカが未検出の時のデータ記録処理では、前回のマーカを検出したときのデータ収集車両の車幅方向における横ずれ量分のベクトルと、前回のマーカを検出したときのデータ収集車両の位置を基準とするデータ収集車両の相対位置を表すベクトルと、の和により特定される相対位置が、前記相対位置情報として含まれるマーカ基準情報をひも付けて点群データが記録される、点群データの取得方法。
【請求項2】
請求項
1において、マーカが未検出のとき、前回のマーカを検出したときのデータ収集車両の位置を基準としたデータ収集車両の相対位置を、慣性航法によって推定する点群データの取得方法。
【請求項3】
請求項
1または2において、前記固有情報は、マーカの識別情報である点群データの取得方法。
【請求項4】
車両の走行環境を表す3次元地図の元データとなる点群データをデータ収集車両が移動しながら取得する点群データ取得システムであって、
走行環境を構成する地物までの方位及び距離を表す点群データを取得する測距部と、
車両の走行路に敷設されたマーカと、
マーカを検出し、検出されたマーカに対するデータ収集車両の車幅方向における横ずれ量を計測するマーカ検出部と、
前記マーカの固有情報を提供するためにマーカに付設された情報提供部と、
前記マーカの固有情報を読み取る情報読取部と、
いずれかのマーカの固有情報及び該いずれかのマーカに対する相対位置を表す相対位置情報を含むマーカ基準情報をひも付けて前記測距部により取得された点群データを記録するデータ記録部と、を含み、
当該データ記録部は、前記マーカが検出された時は、マーカに対するデータ収集車両の車幅方向における偏差である横ずれ量が、前記相対位置情報として含まれるマーカ基準情報をひも付けて点群データを記録する一方、
前記マーカが未検出の時は、前回のマーカを検出したときのデータ収集車両の車幅方向における横ずれ量分のベクトルと、前回のマーカを検出したときのデータ収集車両の位置を基準とするデータ収集車両の相対位置を表すベクトルと、の和により特定される相対位置が、前記相対位置情報として含まれるマーカ基準情報をひも付けて点群データを記録するように構成されている点群データ取得システム。
【請求項5】
請求項
4において、慣性航法によりデータ収集車両の運動を推定する慣性航法ユニットを含み、
当該慣性航法ユニットは、マーカが未検出のとき、前回のマーカが検出されたときのデータ収集車両の位置を基準とする相対位置を推定するように構成されている点群データ
取得システム。
【請求項6】
請求項
4または5において、前記固有情報は、マーカの識別情報である点群データ取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を表す3次元地図の元データとなる点群データを取得するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転負担を低減するための運転支援技術が各種提案され、実現されつつある。運転支援技術としては、例えば、自動ブレーキ機能におけるブレーキ制御や車線維持機能における操舵制御など、車両制御の一部を車両側が担う運転支援技術がある。さらに、操舵制御や調速制御などの車両制御のほぼ全てを車両側が実行し、ドライバー側の操作負担をゼロに近づけて自動運転を実現する高度な運転支援技術などの提案もある。
【0003】
高度な運転支援技術の実現には、車両側で前方の道路環境を精度高く把握できていることが必要である。自動運転を実現するため、縁石やガードレールや標識などに関する3次元情報を含む高精度な3次元地図に対する社会的な要請が高まっている。
【0004】
道路環境を表す3次元地図の生成には、道路環境を構成する縁石やガードレールや標識などの地物の各点までの距離や方位の情報を含む点群データが必要となる。そこで、点群データを取得するモービルマッピングシステム(Mobile Mapping System:MMS)が提案されている(例えば特許文献1参照。)。このマッピングシステムは、レーザ光の反射時間を利用して対象物までの距離を計測するレーザスキャナや、車両の周辺画像を撮影するカメラなどを利用するシステムである。モービルマッピングシステムを搭載する車両であれば、道路を走行しながら3次元の点群データ及び前方画像の組合せを取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザスキャナとカメラとを精度高く位置合わせすれば、前方画像に対して距離情報を精度高く組み合わせることができる一方、点群データ等を取得した際のレーザスキャナやカメラの位置や軸方向が精度高く把握されていない場合、その点群データに基づく3次元地図の精度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、高精度な3次元地図の元データになり得る高品質の点群データを取得するための方法及びシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両の走行環境を表す3次元地図の元データとなる点群データを移動しながら取得する方法であって、
走行環境を構成する地物までの方位及び距離を表す点群データを取得する測距処理と、
車両の走行路に敷設されたマーカを検出するマーカ検出処理と、
前記点群データを記録するデータ記録処理と、を含み、
該データ記録処理では、いずれかのマーカを基準とした位置的な情報、あるいは該位置的な情報に基づく情報を含むマーカ基準情報をひも付けて前記測距処理により取得された点群データを記録する点群データの取得方法にある。
【0009】
本発明の一態様は、車両の走行環境を表す3次元地図の元データとなる点群データを移動しながら取得する点群データ取得システムであって、
走行環境を構成する地物までの方位及び距離を表す点群データを取得する測距部と、
車両の走行路に敷設されたマーカを検出するマーカ検出部と、
いずれかのマーカを基準とした位置的な情報、あるいは該位置的な情報に基づく情報を含むマーカ基準情報をひも付けて前記測距部により取得された点群データを記録するデータ記録部と、を含む点群データ取得システムにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マーカを基準とした位置的な情報等を含むマーカ基準情報をひも付けた点群データを記録可能である。マーカは、走行路に敷設されているため、その位置が変動するおそれは少ない。マーカ基準情報を利用すれば、点群データが取得された位置を精度高く特定できる。そして、取得された位置が精度高く特定された点群データに基づけば、高精度の3次元地図を作製可能である。
【0011】
本発明において記録される点群データは、マーカ基準情報がひも付けられたものであり、高精度の3次元地図を作製する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1における、データ収集車両のシステム構成を示す説明図。
【
図4】実施例1における、データ収集車両の電気的な構成を示すブロック図。
【
図5】実施例1における、磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
【
図6】実施例1における、車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布曲線を例示する説明図。
【
図7】実施例1における、マーカ基準データ生成処理の流れを示すフロー図。
【
図8】実施例1における、点群データ生成処理の流れを示すフロー図。
【
図9】実施例1における、データ記録処理の流れを示すフロー図。
【
図10】実施例2における、方位推定処理の流れを示すフロー図。
【
図11】実施例2における、2つの磁気マーカを通過したときの横ずれ量の差分Ofdと、方位ずれ角Rfと、の関係を示す説明図。
【
図12】実施例2における、直線路に沿って車両が走行する状況を例示する説明図。
【
図13】実施例2における、直線路を車両が斜行する状況を例示する説明図。
【
図14】実施例2における、曲線路に沿って車両が走行する状況を例示する説明図。
【
図15】実施例2における、曲線路を車両が斜行する状況を例示する説明図。
【
図16】実施例3における、2つの磁気マーカに対する横ずれ量の差分Ofdと、方位ズレ角Rfと、の関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、3次元地図の元データとなる点群データを移動しながら取得するモービルマッピングシステム1に関する例である。この内容について、
図1~
図9を参照して説明する。このモービルマッピングシステム1は、マーカが敷設された道路(走行路の一例)を対象としている。本例では、マーカの一例として、磁気発生源である磁気マーカ10を採用している。
【0014】
点群データ取得システムの一例であるモービルマッピングシステム1(
図1)は、走行環境を構成する地物までの方位及び距離を表す点群データを生成する点群データ生成ユニット3と、道路に敷設された磁気マーカ10を検出するセンサユニット2(マーカ検出部の一例)と、点群データを記録するデータ記録部130(
図4)と、を含めて構成されている。特に、モービルマッピングシステム1では、いずれかの磁気マーカ10を基準とした位置的な情報を含むマーカ基準情報をひも付けた状態の点群データが記録される。
【0015】
まず、本例の磁気マーカ10について説明する。磁気マーカ10は、
図1及び
図2のごとく、道路(走行路)11の路面11Sに敷設されるマーカである。磁気マーカ10は、左右のレーンマークで区分された車線の中央に沿って例えば10m間隔で配置されている。磁気マーカ10は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなし、路面11Sに設けた孔に収容された状態で敷設される。
【0016】
磁気マーカ10では、
図2及び
図3のごとく、無線により情報を出力する無線タグであるRFID(Radio Frequency IDentification)タグ15が、上向きの端面に取り付けられている。情報提供部の一例であるRFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し、磁気マーカ10の固有情報の一例であるタグID(識別情報)を送信する。
【0017】
なお、本例の磁気マーカ10が採用する磁石は、酸化鉄の磁粉を高分子材料中に分散させた磁石である。この磁石は、導電性が低く無線給電時に渦電流等が生じ難い。それ故、磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15は、無線伝送された電力を効率良く受電できる。
【0018】
情報提供部の一例をなすRFIDタグ15は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150(
図3)の表面にICチップ157が実装された電子部品である。タグシート150の表面には、ループコイル151及びアンテナ153の印刷パターンが設けられている。ループコイル151は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイルである。アンテナ153は、位置データ等を無線送信するための送信アンテナである。
【0019】
次に、データ収集車両5(
図1)は、作業者の運転によって道路11を走行しながら点群データを記録するモービルマッピングシステム1を構成している。データ収集車両5は、制御ユニット13、点群データ生成ユニット3、マーカ検出部の一例であるセンサユニット2、情報読取部の一例であるタグリーダ34、などを備えている。
【0020】
センサユニット2は、
図1及び
図4のごとく、センサアレイ21とIMU(Inertial Measurement Unit)22とが一体化されたユニットである。センサユニット2は、例えば車幅方向に長い棒状を呈している。このセンサユニット2は、例えばフロントバンパーの内側において、路面11Sと対面する状態で取り付けられる。本例のデータ収集車両5の場合、路面11Sを基準としたセンサユニット2の取付け高さが200mmとなっている。
【0021】
センサアレイ21は、車幅方向に沿って一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている(
図4参照。)。なお、センサアレイ21では、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。
【0022】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magnet Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnでは、アモルファスワイヤなどの図示しない感磁体が直交する2軸方向に沿って配置されている。これにより磁気センサCnは、直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能である。本例では、進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるように磁気センサCnがセンサアレイ21に組み込まれている。
【0023】
センサアレイ21の検出処理回路212は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などを実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子、等を利用して構成されている。
【0024】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を、例えば3kHzの頻度で取得してマーカ検出処理を実行する。例えば3kHzの頻度で磁気センサCnによる磁気計測を実施すれば、走行中の点群データの生成・記録に対応できる。検出処理回路212は、マーカ検出処理の検出結果を制御ユニット13に入力する。マーカ検出処理では、磁気マーカ10の検出に加えて、磁気マーカ10に対するデータ収集車両5の横ずれ量の計測が行われる。検出処理回路212は、例えば、車幅方向に配列された磁気センサCnの磁気計測値の分布のうちのピーク値の車幅方向の位置を特定することで横ずれ量(相対位置情報の一例)を計測する。
【0025】
センサユニット2に組み込まれたIMU22(
図4)は、慣性航法によりデータ収集車両5の運動を推定する処理を実行する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである2軸磁気センサ221と、加速度を計測する2軸加速度センサ222と、角速度を計測する2軸ジャイロセンサ223と、を備えている。IMU22は、加速度、角速度、方位などの計測値を利用して運動(移動)を推定し、データ収集車両5が過去に所在した特定の位置を起点(基準)とした移動後(運動後)の相対位置を推定する。
【0026】
IMU22は、加速度の二階積分により時々刻々の変位量を演算すると共に、角速度の積分である方位の変化量や計測方位等を利用してデータ収集車両5の時々刻々の方位を精度高く算出する。そしてIMU22は、データ収集車両5の方位に沿って変位量を積算することで基準位置に対する相対位置を演算する。IMU22が推定する相対位置を利用すれば、隣り合う磁気マーカ10の中間にデータ収集車両5が位置するときにも自車位置の推定が可能になる。
【0027】
タグリーダ34(
図4)は、磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15と無線で通信する通信ユニットである。センサユニット2が車体の前部に配置されている一方、タグリーダ34は車体の後部に配置されている(
図1)。このようなセンサユニット2及びタグリーダ34の位置関係を利用すれば、センサユニット2により検出された磁気マーカ10がタグリーダ34に接近するタイミングを予測可能である。タグリーダ34は、そのタイミングを予測してRFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電し、RFIDタグ15が送信するタグIDを受信する。
【0028】
点群データ生成ユニット3は、距離画像を取得する測距部31と、前方画像を撮像するカメラ33と、を含むユニットである。
測距部31は、レーザ光を発光する光源、反射光を受光する受光部、発光から受光までの経過時間(反射時間)を計測する時間計測部、反射時間から距離を算出する距離算出部、を備えている。さらに、測距部31は、レーザ光の発光方向を縦方向、横方向に走査させる光学機構部を備えている。光学機構部は、例えばレーザ光を反射して前方に投射するポリゴンミラー(多面鏡)を高速回転させることで、レーザ光の発光方向を物理的に変更する。この光学機構部を備える測距部31は、前方の2次元的な測距エリア内の各点に距離データがひも付けられた距離画像を取得する(測距処理)。なお、測距部31の中心軸、すなわち距離画像の中心を貫く軸はデータ収集車両5の前後方向に一致している。
【0029】
測距部31によれば、路肩や、ガードレールや、標識や、信号など、走行環境を構成する地物の各点までの距離を特定できる。さらに、距離画像における座標位置は、方位を表している。つまり、点群データ生成ユニット3が取得する距離画像が、走行環境を構成する地物までの方位及び距離を表す点群データとなっている。
【0030】
カメラ33は、前方画像を撮像して2次元的な画像データを取得するためのユニットである。カメラ33は、データ収集車両5の前後方向の方位に対して光軸(中心軸)が一致するように設置されている。なお、データ収集車両5では、測距部31の測距エリアと、カメラ33による撮像エリアと、が一致するように、レーザ光の走査範囲(測距部31)、及びカメラ33の画角などが調整されている。
【0031】
制御ユニット13(
図4)は、センサユニット2、タグリーダ34、点群データ生成ユニット3を制御する機能に加えて、点群データを記録するデータ記録部130としての機能を備えるユニットである。制御ユニット13は、各種の演算を実行するCPU、ROMやRAMなどのメモリ素子、等が実装された電子基板(図示略)を備えている。制御ユニット13には、ハードディスクドライブなどの記憶デバイスが接続されている。記憶デバイスの記憶領域には、点群データベース(点群DB)133が設けられている。点群データは、この点群DB133に記録される。
【0032】
次に、本例のモービルマッピングシステム1の動作の流れについて説明する。以下、(1)マーカ検出処理、(2)マーカ基準データ生成処理、(3)点群データ生成処理、(4)データ記録処理、の流れについて順番に説明する。
【0033】
(1)マーカ検出処理
データ収集車両5が道路11を走行している間、センサユニット2(センサアレイ21)が、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理を繰り返し実行する。
上記のごとく、磁気センサCnは、データ収集車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測可能である。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、
図5のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、データ収集車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、センサユニット2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212(
図4)は、このようにセンサユニット2が磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたとき、磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0034】
また、例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列したセンサユニット2の場合には、
図6の例の通り、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる。
【0035】
センサユニット2の各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する
図6の分布曲線に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを利用して磁気マーカ10の車幅方向の位置を特定可能である。隣り合う2つの磁気センサCnの中間(中央とは限らない)にゼロクロスZcが位置している場合には、ゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。あるいはいずれかの磁気センサCnの位置にゼロクロスZcが一致している場合、すなわち車幅方向の磁気計測値がゼロであって両隣りの磁気センサCnの磁気計測値の正負が反転している磁気センサCnが存在する場合には、その磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。
【0036】
検出処理回路212は、センサユニット2の中央の位置(磁気センサC8の位置)に対する磁気マーカ10の車幅方向の位置の偏差を、磁気マーカ10に対するデータ収集車両5の横ずれ量として計測する。例えば、
図6の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対するデータ収集車両5の横ずれ量は、車幅方向においてセンサユニット2の中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10=15cmとなる。
【0037】
(2)マーカ基準データ生成処理
マーカ基準データを生成する処理の内容について、
図7を参照して説明する。なお、マーカ基準データは、いずれかのマーカを基準とした位置的な情報である相対位置情報を含むマーカ基準情報の一例である。
【0038】
マーカ基準データ生成処理では、制御ユニット13による制御により、上記のマーカ検出処理P1が周期的に実行される。上記の通りデータ収集車両5の走行中の点群データの生成・記録に対応できるよう、制御ユニット13は、3kHzの周波数でマーカ検出処理P1が実行されるようにセンサアレイ21を制御する。なお、このマーカ検出処理P1では、検出された磁気マーカ10に対するデータ収集車両5の横ずれ量(相対位置情報の一例)が計測される。
【0039】
磁気マーカ10が検出された場合(S101:YES)、制御ユニット13による制御によりタグリーダ34がタグID読取処理P2を実行する。制御ユニット13は、固有情報取得処理の一例であるタグID読取処理P2によって読み取ったタグID、マーカ検出処理P1で計測された横ずれ量(相対位置情報)を含むマーカ基準データを生成する(S102)。このように生成されたマーカ基準データは、所定の書込エリアに書き込みされて、随時、最新のものに書き換えられる(S103)。
【0040】
一方、磁気マーカ10が未検出の場合は(S101:NO)、制御ユニット13は、前回磁気マーカを検出したときの自車位置を基準としてIMU22が推定した相対位置を利用し、当該磁気マーカを基準とした自車両の相対位置の推定処理を実行する(S112)。
【0041】
具体的には、制御ユニット13は、前回の磁気マーカが検出されたときに計測された横ずれ量、及びIMU22が推定した相対位置に基づき、前回検出された磁気マーカに対する自車両の相対位置を推定する。前回検出された磁気マーカを基準とした自車両の相対位置は、前回の磁気マーカが検出されたときの横ずれ量分の車幅方向のベクトルと、前回磁気マーカを検出したときの自車位置を基準とする相対位置(IMU22が推定する相対位置)を表すベクトルと、の和により特定される。
【0042】
そして、制御ユニット13は、ステップS112において推定した相対位置のデータ(相対位置情報)及び直前のタグID読取処理P2で読み取られたタグID、を含むマーカ基準データを生成する(S102)。そして、生成されたマーカ基準データは、所定の書込エリアに書き込みされて、随時、最新のものに書き換えられる(S103)。なお、タグID読取処理P2で読み取られたタグIDは、新たなタグID読取処理P2の実行により上書きされるまで、そのまま保持される。
【0043】
(3)点群データ生成処理
点群データ生成処理の流れについて、
図8のフロー図を参照して説明する。点群データ生成ユニット3(
図4)は、制御ユニット13による点群データ要求信号(後述)を受信すると(S201:YES)、測距部31を制御し、点群データである距離画像を取得する(S202)。また、点群データ生成ユニット3は、カメラ33を制御して前方の撮像画像を取得する(S203)。そして、点群データ生成ユニット3は、撮像画像と共に、点群データ(距離画像)を出力する(S204)。
【0044】
(4)データ記録処理
データ記録処理の内容について、
図9のフロー図を参照して説明する。制御ユニット13は、データ収集車両5の移動距離が所定量に到達する毎に(S301:YES)、点群データ生成ユニット3に向けて点群データ要求信号を出力する(S302)。なお、本例は、所定量として10cmを設定した例である。上記のステップS301の判断によれば、例えば10cmといった一定距離毎の点群データを取得できる。
【0045】
制御ユニット13は、点群データを取得すると(S303)、上記のマーカ基準データの読出を実行する(S304)。ここで、上記のごとく、マーカ基準データを生成するマーカ検出処理P1は3kHzの周波数で実行される。この3kHzの周波数は、点群データを取得する周波数に対して十分に速い。したがって、上記のステップS304で読み出されたマーカ基準データの生成時点は、ステップS303で取得された点群データの生成時点と同時とみなすことができる。
【0046】
制御ユニット13は、ステップS303で取得した点群データに対して、ステップS304で読み出したマーカ基準データをひも付ける処理を実行する(S305)。そして制御ユニット13は、マーカ基準データがひも付けされたその点群データを点群DB133に記録する(S306)。なお、点群データに対してひも付けられるマーカ基準データには、少なくとも、直近で検出された磁気マーカ10のタグID(マーカ特定情報)、その磁気マーカ10に対する相対位置のデータ、が含まれている。
【0047】
以上のように構成されたモービルマッピングシステム1は、走行環境を表す点群データを記録するに当たって、磁気マーカ10の位置を基準とした相対位置のデータを含むマーカ基準データを点群データにひも付ける。このマーカ基準データによれば、点群データが取得されたときのデータ収集車両5の位置、すなわち点群データの取得地点を精度高く特定できる。取得地点が精度高く特定された点群データは、高精度な3次元地図を作製するための有効な元データとなる。
【0048】
なお、3次元地図の作成に際して点群データの取得地点を特定する際、マーカ特定情報であるタグIDと、対応する磁気マーカ10の敷設位置(絶対位置)のデータと、がひも付けられたマーカデータベース(マーカDB)を利用すると良い。点群データにひも付けられたマーカ基準データには、基準となる磁気マーカ10のマーカ特定情報であるタグIDが含まれている。このタグIDを利用して上記のマーカDBを参照すれば、基準となる磁気マーカ10の絶対位置を取得できる。さらに、マーカ基準データには、基準となる磁気マーカ10に対する相対位置のデータが含まれている。磁気マーカ10の絶対位置を基準とすれば、マーカ基準データ中の相対位置のデータを利用して、点群データの取得地点(絶対位置)を精度高く特定可能である。なお、車線に沿ってデータ収集車両5が走行しているという前提の下では、点群データの中心方向が車線方向に一致していると取り扱うことが可能である。
【0049】
なお、本例では、磁気マーカ10の固有情報であるタグIDを含むマーカ基準データを例示している。これに代えて、あるいは加えて磁気マーカ10の敷設位置を含むマーカ基準データであっても良い。この場合には、磁気マーカ10の敷設位置が磁気マーカ10の固有情報の一例となる。このとき、磁気マーカ10の敷設位置と相対位置のデータとの組合せによるマーカ基準データとすると良い。例えば、データ収集車両5の制御ユニット13が上記と同様のマーカDBを参照可能であれば、タグIDを利用して対応する磁気マーカ10の敷設位置を取得可能である。あるいは、磁気マーカ10の敷設位置を表す位置データを送信するRFIDタグ15を採用しても良い。
【0050】
磁気マーカ10を基準として特定された車両位置(データ収集車両5の位置)のデータをマーカ基準データとして採用し、点群データにひも付けることも良い。車両位置は、磁気マーカ10の敷設位置を基準として横ずれ量などの相対位置の分だけ、ずらした位置として特定できる。車両位置は、磁気マーカ10を基準とした相対位置のデータに演算処理を施した加工情報である。この車両位置の情報は、磁気マーカ10を基準とした位置的な情報に基づく情報の一例である。
【0051】
本例では、点群データの一例として、レーザ光を利用した測距部31による距離画像を例示している。測距部31としては、ミリ波などの電波を利用する測距部や、ステレオ視による視差を利用して距離を計測する測距部などがある。これらの測距部のいずれかを採用しても良く、複数を組み合わせることも良い。
本例では、マーカとして磁気マーカ10を例示したが、道路11に配設された各種のマーカに代えることができる。例えば、路面11Sに印刷されたマーカであっても良く、キャッツアイのようなマーカであっても良い。
【0052】
以上のように構成された本例のモービルマッピングシステム1によれば、データ収集車両5が道路11を走行しながら、精度の高い点群データを効率良く取得できる。そして、点群データを効率良く取得できれば、3次元地図の作製コストを抑制できる。
【0053】
ここで、マーカとしての磁気マーカが優れている点を説明する。磁気マーカを利用すれば、例えば、路面に印刷されたマーカや、キャッツアイのようなマーカなどと比べて、読み取り精度や読み取り確実性の点で有利である。例えば、キャッツアイなどのマーカは、車線の区画線であるレーンマークに設けられている場合が多い。レーンマークに設けられたキャッツアイの場合、車幅方向において車両から離れて位置するため、検出の確実性が十分でなかったり、キャッツアイと車両との距離の計測精度を十分に確保できないおそれがある。一方、車線の中央などに配置された磁気マーカの場合は、車両の直下に位置するため、検出が比較的容易であると共に、磁気マーカに相対する車両の位置の計測精度の確保が比較的容易である。また、外部に磁気を発生する磁気マーカは、雪や汚れ等が付着しても車両側で検出可能である。一方、キャッツアイなどのマーカは、雪や汚れ等の付着によって検出の難易度が一気に高まる。
【0054】
さらに、車両側で計測できる位置的な精度の点において、電波を無線出力する電波マーカよりも磁気マーカの方が有利である。例えば磁気マーカを車両が通過する際、車両の進行方向に相当する長手方向に沿う磁気の作用方向が反転し、磁気センサによる磁気計測値の正負が入れ替わる。また、車両の車幅方向に相当する横方向に沿う磁気の作用方向が磁気マーカの左右で反転する。そのため、磁気マーカに対して磁気センサが左右いずれにあるかによって磁気センサによる磁気計測値の正負が異なってくる。例えば、磁気マーカを中心とした磁気の作用方向の反転を利用すれば、位置精度高く磁気マーカを検出可能である。一方、電波マーカは、電波が届く比較的広い範囲で検出可能である一方、位置を高精度に特定することが難しい。
【0055】
(実施例2)
本例は、実施例1のモービルマッピングシステムに基づき、点群データの中心方向を表す基準方位に係る情報をマーカ基準情報に加えたモービルマッピングシステム1の例である。この内容について、
図1及び
図10~
図15を参照して説明する。
本例のモービルマッピングシステム1は、車線の中央に沿って磁気マーカ10が2m(マーカスパンS=2m)毎に配置された道路を想定している。このモービルマッピングシステム1では、2つの磁気マーカ10を利用して点群データの基準方位が推定される。なお、本例では、点群データの中心方向を表す基準方位として、測距部31の中心軸を例示する。
【0056】
本例の制御ユニット(
図1中の符号13)は、データ収集車両5の方位(前後方向、向き、車体の中心軸の方位)を推定する方位推定部としての機能を備えている。方位推定部としての制御ユニットは、車線方向に対するデータ収集車両5の方位(車体の向き)の偏差である方位ずれ角を、隣り合う2つの磁気マーカ10を利用して推定する(方位推定処理)。
【0057】
本例の構成では、点群データを取得する測距部31の中心軸に対してデータ収集車両5の方位が一致するように調整されており、両者の関係が既知になっている。したがって、データ収集車両5の方位を把握できれば、点群データの基準方位を特定できる。特に、データ収集車両5の中心軸に対して測距部31の中心軸が一致するように調整された本例の構成の場合では、データ収集車両5の方位が、そのまま点群データの中心方向を表す基準方位になる。
【0058】
制御ユニット13は、データ収集車両5の方位を推定するために、
図10の方位推定処理を実行する。この方位推定処理は、2つの磁気マーカ10に対する横ずれ量の差分を演算するステップ(S401)と、2つの磁気マーカ10の位置を結ぶ線分方向Mx(
図11参照。)に対する進行方向の偏差である方位ずれ角Rfを演算するステップ(S402)と、を含む処理である。ここで、2つの磁気マーカ10は、車線の中央に沿って敷設されている。したがって、隣り合う2つの磁気マーカ10の位置を結ぶ線分方向Mxは、車線方向(道路の方向)に略一致する。
【0059】
ステップS401では、
図11のごとく、隣り合う2つの磁気マーカ10をデータ収集車両5が通過したとき、1つ目の磁気マーカ10に対する横ずれ量Of1と、2つ目の磁気マーカ10に対する横ずれ量Of2と、の差分Ofdを次式により演算する。なお、同図の場合、Of1とOf2とで正負が異なることから、差分に応じてOfdの絶対値は、Of1及びOf2の絶対値を超える値となる。なお、
図11では、制御ユニット13等の図示を省略している。
【数1】
【0060】
続くステップS402では、
図11のごとく、2つの磁気マーカ10の位置を結ぶ線分方向Mx(車線方向に一致)に対するデータ収集車両5の方位Dirのなす角(旋回方向の角度の偏差)である方位ずれ角Rfを演算する。この方位ずれ角Rfは、横ずれ量の差分Ofd及びマーカスパンSを含む次式により算出される。
【数2】
【0061】
例えば直線路に沿ってデータ収集車両5が走行している場合(
図12)、データ収集車両5の向きが車線方向に沿うことになる。この場合には、2つの磁気マーカ10の位置を結ぶ線分方向Mxに対するデータ収集車両5の方位Dirのなす角である方位ずれ角Rfがゼロに近くなる。一方、データ収集車両5の向きが車線方向に沿っていない場合には(
図13)、線分方向Mxに対してデータ収集車両5の方位Dirがずれて、方位ずれ角Rfが大きくなる。
【0062】
例えば曲線路に沿って車両5が走行している場合には(
図14)、曲線路である車線の接線方向に、2つの磁気マーカ10の位置を結ぶ線分方向Mxが一致し、この線分方向Mxに対するデータ収集車両5の方位Dirのなす角である方位ずれ角Rfがゼロとなる。一方、曲線路である車線を斜行する場合には(
図15)、曲線路である車線の接線方向に対するデータ収集車両5の方位Dirのずれが大きくなり方位ずれ角Rfが大きくなる。
【0063】
上記のごとく、点群データを取得する測距部31の中心軸は、測距部31が取得する点群データの中心を表す基準方位となっている。また、本例の構成では、測距部31の中心軸が、データ収集車両5の方位Dirに略一致している。したがって、線分方向Mxに対するデータ収集車両5の方位的なずれを表す方位ずれ角Rfは、車線方向に相当する上記の線分方向Mxに対する点群データの基準方位の方位的なずれに相当する。
【0064】
データ記録部としての制御ユニット13は、車線方向に対する点群データの基準方位の方位的なずれである方位ずれ角Rf(点群データの基準方位を表す情報の一例)を含むマーカ基準データを、点群データにひも付ける。方位ずれ角Rfに基づけば、車線方向Mxを基準として点群データが示す各点の方位を演算等により精度高く特定可能である。各点の方位が精度高く特定されている点群データは、高精度な3次元地図を作製するために極めて有用である。
【0065】
データ収集車両5が車線に沿って走行しながら点群データを記録する際、データ収集車両5の方位(向き)が車線方向に完全に一致していれば、車線方向と点群データの基準方位との関係(方位差など)が一定になる。しかし、データ収集車両5の実際の走行では、走行軌跡のわずかな蛇行が不可避であるため、データ収集車両5の方位が車線方向からずれることがある。そして、データ収集車両5の方位が車線方向からずれると、点群データの基準方位と車線方向との関係が不安定になる。
【0066】
これに対して、点群データの基準方位を表す情報を含む本例のマーカ基準情報によれば、点群データの基準方位と線分方向Mxとの関係を精度高く特定可能である。線分方向Mxに対する点群データの基準方位の相対的な関係を特定できれば、データ収集車両5の方位と車線方向(線分方向Mxに略一致)とのずれを許容できるようになる。上記の点群データの基準方位の情報を含むマーカ基準データがひも付けられた点群データによれば、データ収集中にデータ収集車両5が蛇行しても、精度の高い3次元地図を作製可能である。
【0067】
なお、磁気マーカ10の固有情報であるタグIDと、対応する磁気マーカ10の敷設位置(絶対位置)のデータと、がひも付けられたマーカDBをデータ収集車両5に設けることも良い。この場合には、制御ユニット13が、2つの磁気マーカ10の位置を結ぶ線分方向Mxの絶対方位を算出可能である。そして、線分方向Mxの絶対方位を把握できれば、方位ずれ角Rfを利用して点群データの各点の絶対方位を算出できる。この場合には、点群データの絶対的な基準方位を、マーカ基準データに含めることが可能になる。
【0068】
なお、本例では、点群データの基準方位として、測距部31の中心軸に相当する中心方向を例示している。点群データの基準方位は、基準となる方位であれば良く、中心方向であることは必須の要件ではない。
車両方位と点群データの基準方位との一致は必須ではない。また、中心軸の方向が異なる測距部を複数設けることも良い。
その他の構成要件及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0069】
(実施例3)
本例は、実施例2のモービルマッピングシステムに基づいて、データ収集車両5の前後に設けたセンサユニット2を利用して方位ずれ角Rfを取得するモービルマッピングシステム1の例である。この内容について、
図16を参照して説明する。
【0070】
本例のデータ収集車両5では、4mの間隔をあけてセンサユニット2が配置されている。前後のセンサユニット2の間隔である4mは、1つおきの2つの磁気マーカ10の間隔4m(マーカスパンS1とする。)と同一である。4m間隔で配置されたセンサユニット2によれば、1つの磁気マーカ10を挟んで隣り合う2つの磁気マーカ10をほぼ同じタイミングで検出できる。
【0071】
図16のように、前側のセンサユニット2が計測した横ずれ量をOf1、後ろ側のセンサユニットが計測した横ずれ量をOf2とし、両者の差分をOfdとしたとき、方位ずれ角Rfは、次式で演算可能である。
【数3】
【0072】
なお、4m間隔の前後のセンサユニット2の中央に、センサユニットを追加して配置することも良い。この場合には、前側のセンサユニット2と中央のセンサユニットとの組み合わせ、及び後ろ側のセンサユニット2と中央のセンサユニットとの組み合わせのうちの少なくともいずれか一方で、2m間隔で隣り合う磁気マーカ10を同じタイミングで検出して横ずれ量を計測できるようになる。速度に応じて、2m間隔の2つの磁気マーカ10を利用するか、4m間隔の2つの磁気マーカ10を利用するか、を切り換えることも良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例2と同様である。
【0073】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0074】
1 モービルマッピングシステム(点群データ取得システム)
10 磁気マーカ(マーカ)
11 道路(走行路)
11S 路面
13 制御ユニット(データ記録部、方位推定部)
130 データ記録部
133 点群DB(点群データベース)
15 RFIDタグ(情報提供部)
2 センサユニット(マーカ検出部)
21 センサアレイ
22 IMU
3 点群データ生成ユニット
31 測距部
33 カメラ
34 タグリーダ(情報読取部)
5 データ収集車両