(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法及び発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20240807BHJP
H01L 33/36 20100101ALI20240807BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240807BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20240807BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/36
H01L21/205
H01L21/20
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2022040395
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏樹
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-187737(JP,A)
【文献】特開2022-021293(JP,A)
【文献】特開2001-210863(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050410(WO,A1)
【文献】特開2006-080469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0007100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/46
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとGe原料ガスとを含む第1原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第1n側層を形成する工程と、
前記第1n側層の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとSi原料ガスとを含む第2原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第2n側層を形成する工程と、
前記第2n側層の上方に、窒化物半導体層からなり紫外光を発する活性層を形成する工程と、
前記活性層の上方に、窒化物半導体層からなるp側層を形成する工程と、
前記p側層上に、p側電極を形成する工程と、
前記第1基板及び前記第1n側層を除去し、前記第2n側層を露出させる工程と、
前記第2n側層を露出させる工程において露出させた前記第2n側層に、n側電極を形成する工程と、
を備え
、
前記第2n側層を形成する工程において、前記第2n側層を前記第1n側層よりも厚く形成する発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記p側電極を形成する工程の後に、前記p側層側に第2基板を配置し、前記p側電極と前記第2基板とを接合する工程をさらに備え、
前記p側電極と前記第2基板とを接合する工程の後に、前記第2n側層を露出させる工程を行う請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
第1基板の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとGe原料ガスとを含む第1原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第1n側層を形成する工程と、
前記第1n側層の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとSi原料ガスとを含む第2原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第2n側層を形成する工程と、
前記第2n側層の上方に、窒化物半導体層からなり紫外光を発する活性層を形成する工程と、
前記活性層の上方に、窒化物半導体層からなるp側層を形成する工程と、
前記p側層の一部及び前記活性層の一部を前記p側層側から除去し、前記第2n側層の一部を前記p側層及び前記活性層から露出させる工程と、
前記第2n側層の前記一部に、n側電極を形成する工程と、
前記p側層上に、p側電極を形成する工程と、
前記第1基板を除去し、前記第1n側層を露出させる工程と、
を備え
、
前記第2n側層を形成する工程において、前記第2n側層を前記第1n側層よりも厚く形成する発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記n側電極を形成する工程及び前記p側電極を形成する工程の後に、前記n側電極及び前記p側電極の側に第2基板を配置する工程をさらに備え、
前記第2基板を配置する工程の後に、前記第1n側層を露出させる工程を行う請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1n側層を形成する工程において、前記第1n側層の厚みを0.2μm以上1.2μm以下に形成する請求項1~
4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2n側層を形成する工程において、前記第2n側層の厚みを1μm以上3μm以下に形成する請求項1~
5のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
n側層と、p側層と、前記n側層と前記p側層との間に配置され紫外光を発する活性層とを有する窒化物半導体層からなる半導体構造体と、
前記n側層上に配置され、前記n側層と電気的に接続されたn側電極と、
前記p側層上に配置され、前記p側層と電気的に接続されたp側電極と、
を備え、
前記n側層は、Alと、Gaと、Siと、Geとを含み、
前記n側層は、第1n側層と、前記第1n側層よりも厚い第2n側層とを有し、
前記
第1n側層は、複数の凸部が配置された第1面
を有し、
前記第2n側層は、前記第1面の反対側に位置し、前記p側層及び前記活性層が配置された第2面と、前記第1面の反対側に位置し、前記p側層及び前記活性層から露出し、前記n側電極が接続された第3面とを有し、
前記n側層において、前記第1面側のGe濃度は、前記第2面側及び前記第3面側のGe濃度よりも高く、
前記n側層において、前記第3面側のSi濃度は、前記第1面側のSi濃度よりも高い発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム系半導体をn型にする不純物として、シリコンやゲルマニウムが用いられている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、順方向電圧の低減を可能にする発光素子の製造方法及び発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、第1基板の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとGe原料ガスとを含む第1原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第1n側層を形成する工程と、前記第1n側層の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとSi原料ガスとを含む第2原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第2n側層を形成する工程と、前記第2n側層の上方に、窒化物半導体層からなり紫外光を発する活性層を形成する工程と、前記活性層の上方に、窒化物半導体層からなるp側層を形成する工程と、前記p側層上に、p側電極を形成する工程と、前記第1基板及び前記第1n側層を除去し、前記第2n側層を露出させる工程と、前記第2n側層を露出させる工程において露出させた前記第2n側層に、n側電極を形成する工程と、を備える。
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、第1基板の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとGe原料ガスとを含む第1原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第1n側層を形成する工程と、前記第1n側層の上方に、Al原料ガスとGa原料ガスとSi原料ガスとを含む第2原料ガスを用いて窒化物半導体層からなる第2n側層を形成する工程と、前記第2n側層の上方に、窒化物半導体層からなり紫外光を発する活性層を形成する工程と、前記活性層の上方に、窒化物半導体層からなるp側層を形成する工程と、前記p側層の一部及び前記活性層の一部を前記p側層側から除去し、前記第2n側層の一部を前記p側層及び前記活性層から露出させる工程と、前記第2n側層の前記一部に、n側電極を形成する工程と、前記p側層上に、p側電極を形成する工程と、前記第1基板を除去し、前記第1n側層を露出させる工程と、を備える。
本発明の一態様によれば、発光素子は、n側層と、p側層と、前記n側層と前記p側層との間に配置され紫外光を発する活性層とを有する窒化物半導体層からなる半導体構造体と、前記n側層上に配置され、前記n側層と電気的に接続されたn側電極と、前記p側層上に配置され、前記p側層と電気的に接続されたp側電極と、を備え、前記n側層は、AlとGaとSiとGeとを含み、前記n側層は、複数の凸部が配置された第1面と、前記第1面の反対側に位置し、前記p側層及び前記活性層が配置された第2面と、前記第1面の反対側に位置し、前記p側層及び前記活性層から露出し、前記n側電極が接続された第3面とを有し、前記n側層において、前記第1面側のGe濃度は、前記第2面側及び前記第3面側のGe濃度よりも高く、前記n側層において、前記第3面側のSi濃度は、前記第1面側のSi濃度よりも高い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、順方向電圧の低減を可能にする発光素子の製造方法及び発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図2】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図3】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図4】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図5】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図6】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図7】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図8】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図9】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図10】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図11】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図12】第1実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図14】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図15】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図16】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図17】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図18】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図19】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【
図20】第2実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。本明細書において「上」と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方に位置している場合も含む。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態の発光素子の製造方法について、
図1~
図12を参照して説明する。
【0011】
第1実施形態の発光素子の製造方法は、
図5に示すように、第1基板101の上方に半導体構造体10を形成する工程を有する。半導体構造体10を形成する工程は、n側層15を形成する工程と、活性層16を形成する工程と、p側層17を形成する工程とを有する。n側層15、活性層16、及びp側層17は、窒化物半導体からなる。窒化物半導体は、In
xAl
yGa
1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。半導体構造体10に含まれる半導体層の形成には、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法等を用いることができる。
【0012】
図1に示すように、n側層15を形成する工程は、第1基板101の上方に第1n側層11を形成する工程を有する。第1n側層11は、第1基板101の上方に下地層103を介して形成することが好ましい。第1基板101は、窒化物半導体層を成長させるための基板である。第1基板101として、例えば、サファイア基板を用いることができる。下地層103として、例えば、アンドープのGaN(窒化ガリウム)層を用いることができる。下地層103の厚みは、例えば、5μm以上8μm以下である。
【0013】
第1n側層11は、第1原料ガスを用いて第1基板101の上方に形成される。第1原料ガスは、Al(アルミニウム)原料ガスと、Ga(ガリウム)原料ガスと、Ge(ゲルマニウム)原料ガスと、N(窒素)原料ガスとを含む。Al原料ガスとして、例えば、トリメチルアルミニウムを含むガスを用いることができる。Ga原料ガスとして、例えば、トリメチルガリウム又はトリエチルガリウムを含むガスを用いることができる。Ge原料ガスとして、例えば、テトラエチルゲルマニウムを含むガスを用いることができる。N原料ガスとして、例えば、アンモニアを含むガスを用いることができる。第1n側層11は、n型不純物としてGeを含むn型のAlGaN層である。第1n側層11のAl組成比は、例えば、2%以上10%以下である。第1n側層11のGe濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0014】
図2に示すように、n側層15を形成する工程は、第1n側層11の上方に第2n側層12を形成する工程を有する。第2n側層12は、第2原料ガスを用いて形成することができる。第2原料ガスは、Al原料ガスと、Ga原料ガスと、Si(シリコン)原料ガスと、N原料ガスとを含む。第2原料ガスにおけるAl原料ガス、Ga原料ガス、及びN原料ガスは、第1原料ガスと同じものを用いることができる。Si原料ガスとして、例えば、モノシランを含むガスを用いることができる。第2n側層12は、n型不純物としてSiを含むn型のAlGaN層である。第2n側層12のAl組成比は、例えば、2%以上10%以下である。第2n側層12のSi濃度は、例えば、1×10
18cm
-3以上1×10
20cm
-3以下である。第2n側層12のSi濃度は、第1n側層11のSi濃度よりも高い。第2n側層12のGe濃度は、第1n側層11のGe濃度よりも低い。なお、Si濃度とは、半導体層中に含まれるSiの不純物濃度である。また、Ge濃度とは、半導体層中に含まれるGeの不純物濃度である。
【0015】
第2n側層12の上方に活性層16が形成される。ここで、第2n側層12の上方に、
図3に示す第3n側層13を介して活性層16を形成することが好ましい。この場合、n側層15を形成する工程は、第2n側層12を形成する工程の後に、第2n側層12の上方に第3n側層13を形成する工程を有する。第3n側層13は、第2n側層12を形成するときと同じ第2原料ガスを用いて形成することができる。第3n側層13は、n型不純物としてSiを含むn型のAlGaN層である。第3n側層13のAl組成比は、例えば、2%以上10%以下である。
【0016】
第3n側層13のSi濃度は、第2n側層12のSi濃度よりも低い。また、第3n側層13のSi濃度は、第1n側層11のGe濃度よりも低い。すなわち、第3n側層13のn型不純物濃度は、第2n側層12のn型不純物濃度及び第1n側層11のn型不純物濃度よりも低い。第3n側層13のSi濃度は、例えば、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0017】
第3n側層13を形成する工程において、第3n側層13を第1n側層11よりも薄く、且つ第2n側層12よりも薄く形成することが好ましい。例えば、第3n側層13を形成する工程において、第3n側層13の厚みを0.1μm以上0.3μm以下に形成する。
【0018】
第3n側層13は、第2n側層12よりもn型不純物濃度が低いため、第2n側層12よりも結晶性や平坦性を向上させることができる。そのため、第2n側層12の上方に、第3n側層13を介して活性層16を形成することで、活性層16の結晶性や平坦性を向上させることができる。
【0019】
図4に示すように、第3n側層13の上方に活性層16が形成される。活性層16は、紫外光を発する。例えば、活性層16からの光の発光ピーク波長は400nm以下であり、具体的には210nm以上400nm以下であり、より具体的には300nm以上400nm以下である。
【0020】
図5に示すように、活性層16の上方にp側層17が形成される。p側層17は、p型のAlGaN層を含む。p型のAlGaN層は、p型不純物として、例えば、Mg(マグネシウム)を含む。
【0021】
図6に示すように、第1実施形態の発光素子の製造方法は、p側層17上にp側電極31を形成する工程を有する。p側電極31は、p側層17と電気的に接続される。また、第1実施形態の発光素子の製造方法は、p側層17上に第1保護膜41を形成する工程を有する。第1保護膜41は、p側層17上においてp側電極31が形成されていない領域に形成される。第1保護膜41は、絶縁性を有する膜である。第1保護膜41として、例えば、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜等を用いることができる。
【0022】
図7に示すように、第1実施形態の発光素子の製造方法は、p側電極31及び第1保護膜41を形成する工程の後に、p側層17側に第2基板102を配置し、p側電極31と第2基板102とを接合する工程を有する。第2基板102として、例えば、シリコン基板を用いることができる。p側電極31は、接合部材104を介して第2基板102と接合される。第1保護膜41も、接合部材104を介して第2基板102と接合される。接合部材104として、例えば、錫を含む金属部材を用いることができる。
【0023】
第1実施形態の発光素子の製造方法は、p側電極31と第2基板102とを接合する工程の後に、第1基板101及び第1n側層11を除去し、第2n側層12を露出させる工程を有する。
【0024】
第1基板101としてサファイア基板を用いた場合、第1基板101は、例えば、レーザーリフトオフ法により除去することができる。下地層103を形成した場合、第1基板101を除去することで、
図8に示すように、下地層103が露出する。その後、さらに下地層103と第1n側層11を除去する。下地層103と第1n側層11は、例えば、ドライエッチングにより除去することができる。ドライエッチングとしては、例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を用いることができる。
【0025】
下地層103及び第1n側層11を除去することで、
図9に示すように、第2n側層12が露出する。第2n側層12を露出させる工程において、第2n側層12の一部を除去してもよい。第1実施形態の発光素子の製造方法は、
図10に示すように、第2n側層12を露出させる工程において露出させた第2n側層12に、n側電極32を形成する工程を有する。n側電極32は、第2n側層12上において、第1保護膜41の上方に位置する領域に形成される。n側電極32は、第2n側層12上において、p側電極31の上方に位置する領域には形成されない。n側電極32は、第2n側層12と電気的に接続される。なお、n側電極32を形成する工程の前に、第2n側層12の上面のうち、n側電極32が形成されない部分を粗面化する工程を有していてもよい。第2n側層12を粗面化する方法としては、例えば、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法等を用いることができる。
【0026】
第1実施形態の発光素子の製造方法は、n側電極32を形成した後、
図11に示すように、半導体構造体10に溝91を形成し、半導体構造体10を複数の素子部に分離する工程を有する。
【0027】
第1実施形態の発光素子の製造方法は、
図12に示す第2保護膜42を形成する工程を有する。第2保護膜42は、絶縁性を有する膜である。第2保護膜42として、例えば、SiN、SiO
2等を用いることができる。第2保護膜42は、溝91を画定する半導体構造体10の側面、第2n側層12の上面、及びn側電極32を覆う。n側電極32の上面を覆う第2保護膜42の一部には開口部42aが形成される。n側電極32の一部が、開口部42aを通じて第2保護膜42から露出する。また、第1実施形態の発光素子の製造方法は、第2基板102の裏面に裏面電極33を形成する工程を有する。裏面電極33は、第2基板102及び接合部材104を介して、p側電極31と電気的に接続される。この後、溝91の位置で、第1保護膜41、接合部材104、第2基板102、及び裏面電極33を切断して、
図12に示す発光素子1が得られる。
【0028】
図13は、第1実施形態の発光素子1の平面図である。
図12は、
図13のXII-XII線における断面図である。
【0029】
図13に示すように、n側電極32は、パッド部32aと延伸部32bとを有する。n側電極32は、例えば、2つのパッド部32aを有する。パッド部32aの一部が、開口部42aにおいて第2保護膜42から露出する。複数の延伸部32bは、パッド部32aから延伸している。例えば、平面視において、延伸部32bは発光素子1の外縁に沿って延伸している。また、2つの延伸部32bが2つのパッド部32aの間を接続している。
【0030】
発光素子1は、配線部を有する配線基板上に実装される。裏面電極33は、配線基板の配線部に接合され、配線部と電気的に接続される。第2保護膜42から露出するn側電極32のパッド部32aには配線基板の配線部と電気的に接続されたワイヤが接合される。
【0031】
Geの原子半径とGaの原子半径との差は、Siの原子半径とGaの原子半径との差よりも小さい。ここで、例えば、Ge原料ガスやSi原料ガスを用いて不純物を含むGaN層を形成する際、GeやSi等の不純物はGaN層におけるGaと置き換わることで点欠陥を生じさせるおそれがある。この点欠陥の発生率は、Gaの原子半径と、Gaと置き換わるGe又はSiの原子半径との差を小さくすることで低くすることができると推測される。このことから、第2n側層12よりも高い濃度でGeを含む第1n側層11は、第2n側層12よりも点欠陥が生じにくく、結晶性が良好になると考えられる。そのため、第1n側層11の結晶性は、第2n側層12の結晶性よりも良好にしやすい。第1実施形態によれば、第1基板101の上方に第1n側層11を形成し、その第1n側層11の上方に第2n側層12を形成するので、第2n側層12の結晶性も良好にすることができる。一方で、第1n側層11よりも高い濃度でSiを含む第2n側層12は、第1n側層11よりも第2n側層12自体のシート抵抗、およびn側電極32との接触抵抗を低くできる。第1実施形態によれば、n側層15と電気的に接続するためのn側電極32は、第2n側層12に接続させる。すなわち、第1実施形態によれば、n側層15の結晶性を良好にすることができ、且つn側層15におけるn側電極32との接続部分の抵抗を低くできる。これにより、順方向電圧を低減することができる。
【0032】
n側電極32が接する第2n側層12は、n側電極32から供給される電流を拡散させる拡散層として機能する。そのため、第2n側層12において電流を拡散しやすくするため、第2n側層12を形成する工程において、第2n側層12を第1n側層11よりも厚く形成することが好ましい。サファイア基板上に第2n側層12としてGaN層を形成する場合、n側層15の厚みに対するGaN層の厚みの割合が大きくなり、ウェーハの反りが大きくなる傾向がある。これに対して、サファイア基板上に、第2n側層12としてAlGaN層を形成することで、第2n側層12としてGaN層を形成するよりもウェーハの反りを低減することができる。
【0033】
第1n側層11は除去されるため、第1n側層11を第2n側層12よりも薄くすることで、第1n側層11の除去が容易になる。例えば、第1n側層11を形成する工程において、第1n側層11の厚みを0.2μm以上1.2μm以下に形成する。例えば、第2n側層12を形成する工程において、第2n側層12の厚みを1μm以上3μm以下に形成する。
【0034】
第1n側層11を除去する工程において、第1n側層11のすべてを除去することに限らず、第1n側層11の一部を、第2n側層12上におけるn側電極32を配置しない領域に残してもよい。
【0035】
[第2実施形態]
第2実施形態の発光素子の製造方法について、
図14~
図20を参照して説明する。
【0036】
第2実施形態の発光素子の製造方法も、第1実施形態と同様に、
図14に示すように、第1基板101の上方に半導体構造体10を形成する工程を有する。半導体構造体10を形成する工程は、n側層15を形成する工程と、活性層16を形成する工程と、p側層17を形成する工程とを有する。n側層15を形成する工程は、第1基板101の上方に下地層103を介して第1n側層11を形成する工程と、第1n側層11の上方に第2n側層12を形成する工程とを有する。また、n側層15を形成する工程は、第2n側層12の上方に第3n側層13を形成する工程を有することができる。
【0037】
第2実施形態においても、第2n側層12よりも高い濃度でGeを含む第1n側層11の結晶性は、第2n側層12の結晶性よりも良好にしやすい。そのため、第1基板101の上方に第1n側層11を形成し、その第1n側層11の上方に第2n側層12を形成するので、第2n側層12の結晶性も良好にすることができる。
【0038】
第2実施形態の発光素子の製造方法は、第1基板101の上方に半導体構造体10を形成した後、
図15に示すように、p側層17の一部及び活性層16の一部をp側層17側から除去し、第2n側層12の一部をp側層17及び活性層16から露出させる工程を有する。第3n側層13を形成した場合には、p側層17の一部、活性層16の一部、及び第3n側層13の一部をp側層17側から除去し、第2n側層12の一部をp側層17、活性層16、及び第3n側層13から露出させる。例えば、RIE等により、p側層17の一部、活性層16の一部、及び第3n側層13の一部を除去することができる。
【0039】
n側層15は、第1基板101側に位置する第1面15aと、第1面15aの反対側に位置し、p側層17及び活性層16が配置された第2面15bと、第1面15aの反対側に位置し、p側層17及び活性層16から露出した第3面15cとを有する。
図15において、第1面15aは第1n側層11の下面であり、第2面15bは第3n側層13の上面であり、第3面15cはp側層17、活性層16、及び第3n側層13から露出した第2n側層12の一部である。
【0040】
第2n側層12の一部(第3面15c)を露出させた後、
図16に示すように、p側層17上に反射電極34が形成される。反射電極34は、活性層16が発する光に対して高い反射性を有することが好ましい。反射電極34は、例えばAgを含む金属層である。ここで、反射電極34が、活性層16が発する光に対して高い反射率を有するとは、反射電極34が活性層16からの光の波長に対して、70%以上の反射率、好ましくは80%以上の反射率を有していることを意味する。
【0041】
反射電極34を形成した後、反射電極34及びp側層17の上面を覆うように第1絶縁膜43を形成する。第1絶縁膜43は、例えば、SiN、SiO2等を用いることができる。
【0042】
第1絶縁膜43を形成した後、第2絶縁膜44を形成する。第2絶縁膜44は、第1絶縁膜43、第3面15c、p側層17の側面、活性層16の側面、第3n側層13の側面、及び第3n側層13の下の第2n側層12の側面を覆う。第2絶縁膜44は、例えば、SiN、SiO2等を用いることができる。
【0043】
第2絶縁膜44を形成した後、反射電極34上の第1絶縁膜43の一部及び第2絶縁膜44の一部を除去し、反射電極34を露出させる第1p側開口部を形成する。第1p側開口部を形成した後、第2絶縁膜44上及び第1p側開口部にp側電極37を形成する。第1p側開口部においてp側電極37は反射電極34に接する。p側電極37は、反射電極34を介してp側層17と電気的に接続される。また、第2絶縁膜44上に、導電部材38が形成される。p側電極37及び導電部材38は、同じ材料で同じ工程で形成することができる。p側電極37及び導電部材38として、例えば、AlおよびCuの少なくともいずれかを含む金属層を用いることができる。
【0044】
p側電極37及び導電部材38を形成した後、p側電極37及び導電部材38を覆うように、第2絶縁膜44上に第3絶縁膜45を形成する。第3絶縁膜45は、例えば、SiN、SiO2等を用いることができる。
【0045】
第3絶縁膜45を形成した後、第3面15c上の第2絶縁膜44の一部及び第3絶縁膜45の一部を除去し、第3面15cを露出させる第1n側開口部を形成する。また、第3絶縁膜45を形成した後、導電部材38上の第3絶縁膜45の一部を除去し、第2n側開口部を形成する。
【0046】
第1n側開口部及び第2n側開口部を形成した後、第3絶縁膜45上、第1n側開口部、及び第2n側開口部にn側電極36を形成する。第1n側開口部においてn側電極36は第3面15cに接し、n側電極36はn側層15と電気的に接続される。第2n側開口部においてn側電極36は導電部材38に接する。n側電極36として、例えば、AlおよびCuの少なくともいずれかを含む金属層を用いることができる。
【0047】
第1n側層11よりも高い濃度でSiを含む第2n側層12は、第1n側層11よりも抵抗率を低くできる。第2実施形態によれば、n側層15と電気的に接続するためのn側電極36は、第2n側層12に接続させる。すなわち、第2実施形態によれば、前述したようにn側層15の結晶性を良好にすることができ、且つn側層15におけるn側電極36との接続部分の抵抗を低くできる。これにより、順方向電圧を低減することができる。
【0048】
n側電極36が接する第2n側層12は、n側電極36から供給される電流を拡散させる拡散層として機能する。そのため、第2n側層12において電流を拡散しやすくするため、第2n側層12を形成する工程において、第2n側層12を第1n側層11よりも厚く形成することが好ましい。
【0049】
第2実施形態の発光素子の製造方法は、p側電極37を形成する工程及びn側電極36を形成する工程の後に、
図17に示すように、半導体構造体10のn側電極36及びp側電極37側に第2基板102を配置する工程を有する。第2基板102として、例えば、シリコン基板を用いることができる。n側電極36は、接合部材104を介して第2基板102と接合される。接合部材104として、例えば、錫を含む金属部材を用いることができる。
【0050】
第2実施形態の発光素子の製造方法は、第2基板102を配置する工程の後に、第1基板101を除去し、第1n側層11を露出させる工程を有する。第1基板101としてサファイア基板を用いた場合、第1基板101を、例えば、レーザーリフトオフ法により除去することができる。下地層103を形成した場合、第1基板101を除去した後、下地層103を除去する。第1基板101及び下地層103を除去することで、
図18に示すように、第1n側層11が露出する。第1n側層11の露出した面は、n側層15の第1面15aである。第1面15aは複数の凸部を有する粗面として形成されている。
【0051】
第2n側層12よりも高い濃度でGeを含む第1n側層11の表面粗さは、第1基板101上に形成する際に第2n側層12の表面粗さよりも大きくなる傾向がある。したがって、第1基板101及び下地層103の除去により、第2n側層12の表面粗さよりも大きい表面粗さを有する第1面15aが露出する。第1面15aは発光素子における光の主な取り出し面となる。そのため、第1n側層11の表面を第1面15aとして露出させることで、第2n側層12の表面を第1面15aとして露出させる場合に比べて光取り出し効率を向上させることができる。
【0052】
さらに、第2実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1面15aを露出させた後、粗面化工程を行い、第1面15aの表面粗さをさらに大きくする。粗面化工程としては、例えば、CMP法等を用いることができる。このとき、第1面15aにおける第2領域15a2はマスクで覆い、第1領域15a1に対して粗面化工程を行い、第1領域15a1の表面粗さ(又は第1領域15a1の凸部の高さ)をさらに大きくする。
【0053】
第1n側層11を露出させた後、例えば、RIE法により、第1n側層11の一部及び第2n側層12の一部を第1n側層11側から除去し、
図19に示すように、第2絶縁膜44の一部を半導体構造体10から露出させる。これにより、半導体構造体10は複数の素子部に分離される。さらに、後述するパッド電極が配置される領域の半導体構造体10も除去される。
【0054】
第1領域15a1の下方には、活性層16及びp側層17が位置する。第2領域15a2の下方には、n側電極36と第3面15cとの接続部分が位置する。第1領域15a1に対する粗面化工程により、第1領域15a1には、第2領域15a2に形成された凸部よりも大きな高さの複数の凸部が形成される。これにより、活性層16からの光の第1領域15a1からの取り出し効率をより向上させることができる。
【0055】
また、第1領域15a1に対する粗面化工程により、第1領域15a1の下方における第1n側層11の最小厚さは、第2領域15a2の下方における第1n側層11の最小厚さよりも薄くなる。これにより、第1領域15a1の下方の第1n側層11における光の減衰を抑制し、第1領域15a1からの光取り出し効率をより向上させることができる。
【0056】
また、第2領域15a2の下方における第1n側層11の最小厚さは、第1領域15a1の下方における第1n側層11の最小厚さよりも厚い。すなわち、n側電極36と第3面15cとの接続部分が位置するn側層15の厚さを厚くすることで、順方向電圧を低減することができる。
【0057】
図19に示す工程の後、
図20に示すように、保護膜46、p側パッド電極51、及びn側パッド電極52を形成し、さらに第2基板102を所定位置で切断して、第2実施形態の発光素子2が得られる。保護膜46は、第1面15a、半導体構造体10の側面、及び第2絶縁膜44を覆う。保護膜46は、例えば、SiN、SiO
2等を用いることができる。保護膜46を形成した後、半導体構造体10が配置されていない領域におけるp側電極37上の保護膜46の一部及び第2絶縁膜44の一部を除去し、p側電極37を露出させる第2p側開口部を形成する。また、半導体構造体10が配置されていない領域における導電部材38上の保護膜46の一部及び第2絶縁膜44の一部を除去し、導電部材38を露出させる第3n側開口部を形成する。そして、第2p側開口部にp側パッド電極51を配置し、第3n側開口部にn側パッド電極52を配置する。p側パッド電極51はp側電極37と電気的に接続され、n側パッド電極52は導電部材38を介してn側電極36と電気的に接続される。
【0058】
図21は、第2実施形態の発光素子2の平面図である。
図20は、
図21のXX-XX線における断面図である。
【0059】
発光素子2の半導体構造体10は、n側層15と、p側層17と、n側層15とp側層17との間に配置され紫外光を発する活性層16とを有する。
【0060】
n側層15は、複数の凸部が配置された第1面15aと、第1面15aの反対側に位置し、p側層17及び活性層16が配置された第2面15bと、第1面15aの反対側に位置し、p側層17及び活性層16から露出し、n側電極36が接続された第3面15cとを有する。
【0061】
n側層15は、GeがドープされたAlGaN層である第1n側層11と、SiがドープされたAlGaN層である第2n側層12とを有する。また、n側層15は、SiがドープされたAlGaN層である第3n側層13をさらに有することができる。すなわち、n側層15は、Alと、Gaと、Siと、Geとを含む。
【0062】
図20において、第1n側層11の上面がn側層15の第1面15aである。
図20に示す例では、第1n側層11、第2n側層12、および第3n側層13がn側層15の第1面15a側から順に配置されている。第3n側層13における第2n側層12とは反対側に活性層16が配置されている。n側電極36が接続する第3面15cは、第2n側層12の一部である。
【0063】
n側層15において、第1面15a側のGe濃度は、第2面15b側のGe濃度及び第3面15c側のGe濃度よりも高い。n側層15において、第3面15c側のSi濃度は、第1面15a側のSi濃度よりも高い。n側層15において、第2面15b側のSi濃度は、第1面15a側のSi濃度よりも高い。
【0064】
n側層15において、第1面15a側のGe濃度は、第2面15b側のGe濃度及び第3面15c側のGe濃度よりも高い。そのため、前述したように、第1面15aの表面粗さは、第2面15b及び第3面15cの表面粗さよりも大きくなりやすく、第1面15aからの光の取り出し効率を向上できる。
【0065】
n側電極36は、第1面15a側よりもSi濃度が高い側である第3面15cに接続するので、順方向電圧を低減することができる。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0067】
1,2…発光素子、10…半導体構造体、11…第1n側層、12…第2n側層、13…第3n側層、15…n側層、15a…第1面、15b…第2面、15c…第3面、16…活性層、17…p側層、31…p側電極、32…n側電極、33…裏面電極、34…反射電極、36…n側電極、37…p側電極、38…導電部材、51…p側パッド電極、52…n側パッド電極、101…第1基板、102…第2基板、103…下地層、104…接合部材