(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】自動分析装置および自動分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2021036102
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山口 史晃
(72)【発明者】
【氏名】大滝 智正
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025529(JP,A)
【文献】特開2011-179825(JP,A)
【文献】特開2014-021080(JP,A)
【文献】特開2016-170057(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である検体を分析する分析部と、前記分析部の操作及び制御を行う制御部とを有する自動分析装置において、
前記自動分析装置で消費される水量を計測する水量計及び前記自動分析装置で消費される電力量を計測する電力計の少なくとも一方を備え、
前記制御部は、前記自動分析装置において水又は電力が不要に消費される動作状態であるとして予め定義した複数の動作状態のそれぞれと、前記水量計又は前記電力計の計測結果とを関連付けて不要消費水量情報又は不要消費電力量情報として記憶し、記憶した不要消費水量情報又は不要消費電力量情報を表示装置に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記不要消費水量情報又は前記不要消費電力量情報に基づいて、予め定めた単位時間ごとの前記水量計又は前記電力計の計測結果を前記表示装置に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記不要消費水量情報又は前記不要消費電力量情報に基づいて、前記複数の動作状態ごとの前記水量計又は前記電力計の計測結果を前記表示装置に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記水量計と前記電力計とを備え、
前記制御部は、前記表示装置に表示する対象を、前記不要消費水量情報と前記不要消費電力量情報とで切り換えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記水量計と前記電力計とを備え、
前記制御部は、前記表示装置に表示する前記不要消費水量情報又は前記不要消費電力量情報を、予め定めた期間における情報と1測定項目あたりの情報とで切り換えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記表示装置に表示する前記不要消費水量情報又は前記不要消費電力量情報の時間単位を、日、週、月、年のいずれか1つに切り換えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1記載の1つの自動分析装置と、1つ以上の他の自動分析装置とを備えた自動分析システムにおいて、
前記他の自動分析装置は、分析対象である検体を分析する分析部と、前記分析部の操作及び制御を行う制御部と、前記
他の自動分析装置で消費される水量を計測する水量計及び前記
他の自動分析装置で消費される電力量を計測する電力計の少なくとも一方とを備え、
前記1つの自動分析装置の前記制御部は、前記1つの自動分析装置および前記他の自動分析装置について、前記複数の動作状態のそれぞれと、前記水量計又は前記電力計の計測結果とを関連付けて不要消費水量情報又は不要消費電力量情報として記憶し、記憶した前記不要消費水量情報又は前記不要消費電力量情報を表示装置に表示することを特徴とする自動分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置および自動分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿、髄液等の生体試料に含まれる特定の成分の定性分析、或いは、定量分析を行う装置であり、例えば、病院や医療検査施設など、多くの患者検体を短時間で処理する必要のある施設では、複数の自動分析装置を用いて自動分析システムを構成している。
【0003】
このような自動分析装置における分析や洗浄などに多くの水を用いており、自動分析装置の使用状況によっては、消費水量の適切な管理を要する場合がある。例えば、特許文献1には、反応ディスクによって保持される複数の反応セルと、前記反応セルに、検体を吐出する検体サンプリング機構と、前記反応セルに、試薬を吐出する試薬サンプリング機構と、検体と試薬との混合液の光学的測定を行う機構と、を備えた自動分析装置において、分析する測定項目数と、該測定項目数に対応する消費水量とを表示する画面を備える自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置においては、生体試料の分析に伴って、水や電気を使用している。具体的には、分析中あるいは装置を扱うユーザが行うメンテナンスにおいて専用の洗剤を使用して行う、サンプルプローブ、試薬プローブ、反応セルなどの洗浄である。また、分析終了後に次回の測定開始までの時間を短縮可能な装置状態に移行する事前準備機能を使用した場合にも水や電気を使用する。事前準備機能は追加試料の測定を円滑に行うために使用されるが、分析中に近い量の水、電気を使用する。
【0006】
一方、緊急性のある試料の分析が予定されておらず、かつ、次回の分析が当分の間予定されていない状態においては、事前準備機能を用いた場合や、測定前に行う試料の攪拌が不十分だったために行うサンプルプローブの詰まり除去を行った場合には、不要に水や電気を使用してしまうことになる。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、不要に消費してしまう消費水量や消費電力量を要因とともにユーザに適切に把握させることができる自動分析装置および自動分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、分析対象である検体を分析する分析部と、前記分析部の操作及び制御を行う制御部とを有する自動分析装置において、前記自動分析装置で消費される水量を計測する水量計及び前記自動分析装置で消費される電力量を計測する電力計の少なくとも一方を備え、前記制御部は、前記自動分析装置において水又は電力が不要に消費される動作状態であるとして予め定義した複数の動作状態のそれぞれと、前記水量計又は前記電力計の計測結果とを関連付けて不要消費水量情報又は不要消費電力量情報として記憶し、記憶した不要消費水量情報又は不要消費電力量情報を表示装置に表示するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不要に消費してしまう消費水量や消費電力量を要因とともにユーザに適切に把握させることができ、消費水量や消費電力量の低減に向けてユーザを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自動分析装置および自動分析システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】自動分析装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】運用改善支援処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図4】自動分析装置の動作状態(装置状態)の遷移の一例を示すフローチャートである。
【
図5】不要消費フラグデータベースの一例を示す図である。
【
図6】不要消費量データベースの一例を示す図である。
【
図7】装置状態に対応するコードの一覧を示す図である。
【
図8】自動分析装置の運用において発生するイベントに対応するコードの一覧を示す図である。
【
図9】は自動分析装置の運用において発生するアラームに対応するコードの一覧を示す図である。
【
図10】不要消費量表示画面の一例を示す図である。
【
図11】不要消費量表示画面の一例を示す図である。
【
図12】不要消費量表示画面の一例を示す図である。
【
図13】不要消費量表示画面の一例を示す図である。
【
図14】不要消費量表示画面の一例を示す図である。
【
図15】不要消費量割合表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図15を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置および自動分析システムの全体構成を模式的に示す図である。
【0014】
図1に示すように、自動分析システムは、血液、尿、髄液等の生体試料に含まれる特定の成分の定性分析、或いは、定量分析を行う1つ以上の自動分析装置(本実施の形態では2つの場合を例示)100,200と、自動分析装置100,200で用いる電力を供給する配電盤300とを備えている。
【0015】
配電盤300には、複数の自動分析装置100,200のそれぞれに供給される電力量(すなわち、消費される電力量)を計測する電力計301が設けられている。
【0016】
電力計301は、計測結果に関する情報(電力量、ログデータ)を格納し、図示しない通信機能によって自動分析装置100,200に定期的に送信する。ログデータには、計測の実効の有無や計測時刻に関する情報が含まれており、電力計301の計測結果から各時刻における単位時間あたりの消費電力量などを得ることができる。
【0017】
自動分析装置100は、検体の分析処理を行う分析部110と、自動分析装置100の操作を行うための操作部120とを有している。
【0018】
操作部120は、自動分析装置100の全体の動作を制御する制御部としてのPC(Personal Computer)121と、配電盤300から操作部120に供給される電力を制御する電源122とを有している。
【0019】
分析部110は、分析部110で用いられる水(純水など)を各部に供給する給水部111と、給水部111から分析部110の各部に供給される水量(すなわち、消費される水量)を計測する水量計112と、配電盤300から分析部110に供給される電力を制御する電源113とを有している。
【0020】
水量計112は、計測結果に関する情報(水量、ログデータ)を格納し、図示しない通信機能によって操作部120のPC121に定期的に送信する。ログデータには、計測の実効の有無や計測時刻に関する情報が含まれており、水量計112の計測結果から各時刻における単位時間あたりの消費水量などを得ることができる。
【0021】
自動分析装置200についても自動分析装置100と同様の構成を有している。すなわち、自動分析装置200は、検体の分析処理を行う分析部210と、自動分析装置200の操作を行うための操作部220とを有している。
【0022】
操作部220は、自動分析装置200の全体の動作を制御する制御部としてのPC(Personal Computer)221と、配電盤300から操作部220に供給される電力を制御する電源222とを有している。
【0023】
分析部210は、分析部210で用いられる水(純水など)を各部に供給する給水部211と、給水部211から分析部210の各部に供給される水量(すなわち、消費される水量)を計測する水量計212と、配電盤300から分析部210に供給される電力を制御する電源213とを有している。
【0024】
水量計212は、計測結果に関する情報(水量、ログデータ)を格納し、図示しない通信機能によって操作部220のPC221に定期的に送信する。ログデータには、計測の実効の有無や計測時刻に関する情報が含まれており、水量計212の計測結果から各時刻における単位時間あたりの消費水量などを得ることができる。なお、水量計212による計測結果は、自動分析装置100の操作部120のPC121にも送信されて共有される。
【0025】
図2は、自動分析装置の構成を概略的に示す図である。なお、
図2では、2つの自動分析装置100,200のうち、一方の自動分析装置100の構成を代表して示す。
【0026】
図2に示すように、操作部120のPC121は、電源122を内蔵する本体121aと、表示装置としてのモニタ121bと、マウスやキーボードなどの操作装置121cとを有している。
【0027】
また、分析部110は、分析対象である血液、尿、髄液等の生体試料(以下、試料、検体等と称する)を収容した1つ以上の試料容器を搭載した検体ラック114aを投入する検体ラック投入部114と、分析処理の終了した検体ラック114aを回収する検体ラック回収部116と、検体ラック投入部114と検体ラック回収部116との間で検体ラック114aを搬送する検体ラック搬送部115と、検体ラック搬送部115に沿って配置された反応ディスク118と、検体ラック搬送部115の検体分注位置に搬送された検体ラック114aの試料容器から反応ディスク118の反応セル118eに検体を分注する検体分注機構115aと、検体の分析に用いる試薬を収容した試薬容器を保持する試薬ディスク117と、試薬ディスク117の試薬容器から反応ディスク118の反応セル118eに試薬を分注する試薬分注機構117aと、反応ディスク118の反応セル118eに分注された検体と試薬とを撹拌する攪拌機構118dと、反応ディスク118の反応セル118eから検体と試薬との混合液を吸引する反応液吸引機構118aと、反応液吸引機構118aで吸引した混合液を分析する分析機能部118bと、分析機能部118bでの分析が終了した検体を貯留する廃液タンク118cと、反応ディスク118の反応セル118eを洗浄する洗浄機構119とから概略構成されている。洗浄機構119では、給水部111を介して供給されるシステム水(例えば、純水)や洗浄液等を用いて反応セル118eの洗浄を行う。
【0028】
以上のように構成した本実施の形態の自動分析装置においては、自動分析装置の水や電力の使用に関する運用状況の改善を支援する運用改善支援処理を行う。運用改善支援処理では、自動分析装置の現在の運用において不要に消費された消費水量や消費電力量を要因とともにデータベースを作成し、このデータベースの情報をユーザに適切に提示することにより、ユーザによる運用状況の改善を適切に支援することができる。以下、運用改善支援処理について詳細に説明する。
【0029】
本実施の形態においては、自動分析システムを構成する複数(例えば、本実施の形態では2つ)の自動分析装置100,200のうち、一方の自動分析装置100が運用改善支援処理を担う場合を例示して説明する。なお、他の自動分析装置200や他の計算装置などで運用改善支援処理を行うように構成しても良い。
【0030】
図3は、運用改善支援処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0031】
図3において、自動分析装置100の操作部120のPC121は、まず、配電盤300の電力計301から自動分析装置100,200のそれぞれに関する消費電力量の情報およびログデータを受信し、また、自動分析装置100の水量計112と自動分析装置200の水量計212のそれぞれから消費水量の情報およびログデータを受信する(ステップS100)。
【0032】
続いて、自動分析装置100,200のそれぞれから動作状態(装置状態)と時刻情報とが対応付けられたログデータを収集する(ステップS120)。
【0033】
続いて、不要消費フラグに係る不要消費フラグデータベースを作成し、自動分析装置100,200のそれぞれが水や電気を不要に消費した時間を算出・特定し、図示しない記憶装置に記憶する(ステップS130)。
【0034】
続いて、不要消費量に係る不要消費量データベースを作成し、自動分析装置100,200のそれぞれが不要に消費した水量や電力量を算出・特定し、図示しない記憶装置に記憶する(ステップS140)。
【0035】
続いて、ユーザが不要消費量表示画面にアクセスしたか否かを判定し(ステップS150)、判定結果がNOの場合には、ステップS130の処理に戻る。
【0036】
また、ステップS150での判定結果がYESの場合には、不要消費フラグデータベース及び扶養消費量データベースに基づいて不要消費量表示画面を生成し(ステップS160)、生成した不要消費量表示画面を表示装置としてのモニタ121bに表示し(ステップS170)、処理を終了する。
【0037】
図4は、自動分析装置の動作状態(装置状態)の遷移の一例を示すフローチャートである。また、
図7は装置状態に対応するコードの一覧を、
図8は自動分析装置の運用において発生するイベントに対応するコードの一覧を、
図9は自動分析装置の運用において発生するアラームに対応するコードの一覧をそれぞれ示す図である。
【0038】
図4において、自動分析装置100,200の電源がONにされると、自動的にスタンバイ状態(装置状態コードS1)に遷移し(ステップS200)、遷移した時刻とスタンバイ開始のイベント(イベントコードE1)とが記録される。
【0039】
続いて、メンテナンス時などに自動分析装置100,200の内部にアクセスするために開放する背面アクリルカバーが閉じているか否かを判定する(ステップS210)。
【0040】
ステップS210での判定結果がNOの場合、すなわち、背面アクリルカバーが開いたまま電源がONになった場合には、インターロック作動のアラーム(アラームコードA1)が発生し、緊急ストップ状態(装置状態コードS2)に遷移するとともに(ステップS211)、遷移した時刻と緊急ストップ開始のイベント(イベントコードE2)とが記録される。
【0041】
ステップS211の緊急ストップ状態に遷移した場合には、ユーザがメンテナンスでリセットを実行し、背面アクリルカバーを閉めた後、自動分析装置100,200の再起動を行うことで、ステップS200のスタンバイ状態(装置状態コードS1)に遷移し、遷移した時刻と再起動のイベント(イベントコードE3)が記録される。
【0042】
また、ステップS210での判定結果がYESの場合、すなわち、ユーザが分析で使用する試薬、装置の各機構洗浄用の洗剤を設置し、操作部120,220のPC121においてラックレセプション設定を含めた各種設定を行い、背面アクリルカバーを閉めた後、分析開始を装置へ指示すると、分析準備状態(装置状態コードS3)に遷移し(ステップS220)、遷移した時刻と分析準備開始のイベント(イベントコードE4)とが記録される。
【0043】
ステップS220の分析準備では、自動分析装置100,200は、検量線の作成、精度管理、及び、検体分注機構115a、試薬分注機構117a、反応セル118e、攪拌機構118dなど分析に使用する各機構の洗浄を行う。分析準備の終了後、自動的に分析状態(開始:装置状態コードS4)へ遷移し(ステップS230)、遷移した時刻と分析開始のイベント(イベントコードE5)とが記録される。
【0044】
続いて、分析準備と同様の各機構の洗浄や、試薬を用いての試料の分析などを行いつつ、反応セル118eの洗浄に用いる洗剤が充足しているか否かを判定する(ステップS231)。
【0045】
ステップS231での判定結果がNOの場合、すなわち、反応セル118eの洗浄用洗剤が不足した場合には、セル洗剤不足アラーム(アラームコードA2)が発生し、ステップS200のスタンバイ状態(装置状態コードS1)に遷移する。ステップS200でユーザが洗剤を供給すると、ステップS210,S220を経由し、セル洗剤不足アラームの発生から約10分後に再度、ステップS230の分析状態(装置状態コードS4)に遷移する。このとき、分析準備状態(装置状態コードS3)を再度経由するため、機構洗浄用の水を消費することとなる。
【0046】
また、ステップS231での判定結果がYESの場合、すなわち、セル洗剤が不足することなく分析が終了した場合には分析終了状態(終了:装置状態コードS4)に遷移する(ステップS232)。
【0047】
ステップS230~S232の分析が終了すると、続いて、ステップS200においてユーザがラックレセプション設定を行っているか否かの判定状態に遷移し(ステップS240)、遷移した時刻とラックレセプション判定のイベント(イベントコードE6)とが記録される。
【0048】
ステップS240での判定結果がYESの場合、すなわち、ラックレセプション設定を行っている場合には、ラックレセプション状態(START:装置状態コードS5)に遷移し、遷移した時刻とラックレセプション開始のイベント(イベントコードE7)とが記録される。ラックレセプション状態では、ステップS200(装置状態コードS1)で指定した時間だけ、試料追加を待ち受ける待機状態となる。すなわち、ラックレセプション状態(装置状態コードS5)は、追加試料測定に特化した装置状態であり、スタンバイ状態(装置状態コードS1)と比較して迅速に測定を開始できる反面、各機構を洗浄しながら追加試料を待っているため、分析中に近い水量を消費する。
【0049】
ラックレセプション状態(追加試料の待ち受け状態:装置状態コードS5)においては、ラック供給があるか否かを判定し(ステップS251)、判定結果がYESの場合には、ステップS230の分析状態(装置状態コードS4)に遷移し、遷移した時刻と分析開始状態のイベント(イベントコードE5)とが記録される。
【0050】
また、ステップS251での判定結果がNOの場合、すなわち、ラックレセプション設定で予め設定された時間、ラックの供給が無かった場合には、ラックレセプション終了状態(終了:装置状態コードS5)に遷移する(ステップS252)。
【0051】
ステップS250~S252のラックレセプション状態が終了すると、ストップ状態(装置状態コードS6)に遷移し(ステップS260)、遷移した時刻とストップ開始のイベント(イベントコードE8)とが記録される。ストップ状態(装置状態コードS6)では、ステップS200のスタンバイ状態への遷移に向けて測定終了処理を行う。
【0052】
また、ステップS240での判定結果がNOの場合、すなわち、ラックレセプション設定を行っていない場合には、ストップ状態(装置状態コードS6)に遷移し(ステップS260)、遷移した時刻とストップ開始のイベント(イベントコードE8)とが記録される。
【0053】
ステップS260のストップ状態における測定終了処理が終了すると、ステップS200のスタンバイ状態状態(装置状態コードS1)に遷移し、遷移した時刻とスタンバイのイベント(イベントコードE1)とが記録され、測定を完了する。
【0054】
図5は、不要消費フラグデータベースの一例を示す図である。
図5においては、一方の自動分析装置100についての不要消費フラグデータベースを代表して示す。不要消費フラグデータベースでは、水、電気を不要に消費した時間を特定することができる。
【0055】
図5に示すように、不要消費フラグデータベースは、装置IDや装置種類の他に、各データのデータID、記録された時刻、不要消費要因、不要消費フラグの状態、及び、不要消費対象により構成されている。
【0056】
各データの時刻の獲得手順は不要消費要因ごとに異なる。
【0057】
まず、ラックレセプション設定により水、電気が不要に消費されはじめた時刻(データID1)、及び、不要な消費が終了した時刻(データID2)の獲得手順について説明する。
【0058】
ラックレセプション設定により水、電気が不要消費される時間を、「装置状態が分析状態(装置状態コードS4)となった時刻から、分析準備状態(装置状態コードS3)を経由せずに、ストップ開始のイベント(イベントコードE8)が記録された時刻まで」と定義する。
【0059】
すなわち、不要消費フラグデータベースにおいて、データID1の時刻は、ログデータにおいてラックレセプション状態(装置状態コードS5)が記録された時刻であり、データID4の時刻は、ログデータにおいてイベントコードE8が記録された時刻である。
【0060】
なお、不要消費フラグデータベースにおいて、不要消費対象は不要消費対象であるラックレセプション設定に対して固定とする。また、不要消費フラグは、ラックレセプション設定が記録された時刻をオンとし、イベントコードE8が記録された時刻をオフとする。
【0061】
さらに、不要消費フラグデータベースにおいて、データID1が記録された後(すなわち、ラックレセプション設定の不要消費フラグがオンになった後)、分析状態(装置状態コードS4)となった場合は、不要なラックレセプション設定とは見なさないため、不要消費フラグデータベースのデータID1の行(データ)を削除する。
【0062】
次に、背面アクリルカバーを開けたまま装置起動した場合の不要消費開始時刻(データID2)及び、不要消費終了時刻(データID3)の獲得手順について説明する。
【0063】
不要消費対象である電気が不要に消費される時間を、「測定状態でない時にインターロック作動のアラーム(アラームコードA1)が発生した時刻から、スタンバイ状態(装置状態コード)となった時刻」と定義する。
【0064】
すなわち、不要消費フラグデータベースにおいて、不要消費フラグがオンとなるデータID2の時刻は、インターロック作動のアラーム(アラームコードA1)が発生した時刻であり、不要消費フラグがオフとなるデータID3の時刻は、ログデータにおいてスタンバイ状態(装置状態コードS1)が記録された時刻である。
【0065】
次に、セル洗剤不足したまま測定開始した場合の不要消費開始時刻(データID5)、及び、不要消費終了時刻(データID6)の獲得手順について説明する。
【0066】
不要消費対象である電気が不要に消費される時間を、「セル洗剤不足のアラーム(アラームコードA2)の発生時刻から、分析状態(装置状態コードS4)となるまでの時刻」と定義する。
【0067】
すなわち、不要消費フラグデータベースにおいて、不要消費フラグがオンとなるデータID5の時刻は、セル洗剤不足のアラーム(アラームコードA2)が発生した時刻であり、不要消費フラグがオフとなるデータID6の時刻は、ログデータにおいて分析状態(装置状態コードS4)が記録された時刻である。
【0068】
図6は、不要消費量データベースの一例を示す図である。
図6においては、一方の自動分析装置100についての不要消費量データベースを代表して示す。
【0069】
図6に示すように、不要消費量データベースは、装置IDや装置種類の他に、各データのデータID、開始時刻、終了時刻、不要消費量要因、不要消費対象、不要消費水量(開始時刻から終了時刻の間に自動分析装置が消費した水量)、不要消費電力量(開始時刻から終了時刻の間に自動分析装置が消費した電力量)、及び、測定項目数(開始時刻から終了時刻の間に行った測定項目数)により構成されている。
【0070】
不要消費量データベースは、不要消費フラグデータベース(
図5)から不要に消費した時間を特定した後、各データと、水量計及び電力計から得られたデータとを整理することで得られる。
【0071】
図10は、不要消費量表示画面の一例を示す図である。
【0072】
図10に示すように、不要消費量表示画面400は、表示内容を「不要消費水量L」(選択部401a)と「1測定項目あたりの不要消費水量ml」(選択部401b)の何れか一方に選択的に切り換える表示切換部401と、表示対象期間を「日」(選択部402a)、「週」(選択部402b)、「月」(選択部402c)、「年」(選択部402d)の何れか1つに選択的に切り換える期間切換部402と、表示内容を「電力」(選択部403a)に関するものと「水量」(選択部403b)に関するものの何れか一方に選択的に切り換える対象切換部403と、表示内容の年度を切り換える年度切換部404と、不要消費量表示部405とで構成されている。
【0073】
図10では、表示切換部401で1測定項目あたりの不要消費水量(選択部401b)を選択し、期間切換部402で「日」(選択部402a)を選択し、対象切換部403で「水量」(選択部403b)を選択し、年度切換部404で「2020年」を選択した場合を示している。
【0074】
不要消費量表示部405には、各データの日付と、各データの対象装置(ここでは、装置ID0001の自動分析装置100と、装置ID0002の自動分析装置200を対称装置として例示する)と、測定項目数を重みとした加重平均とが表示されている。
【0075】
不要消費量表示画面400は、不要消費量データベース(
図6)から不要に消費した水量、電力量を特定した後、不要消費量データベースのデータおよび、装置ログデータから抽出した測定項目数を用いて作成する。
【0076】
まず、「日」ごとの1測定項目あたりの不要消費水量を表示するため、不要消費量データベース(
図6)の開始時刻に基づいて、水を消費した日を特定し、各日の不要消費水量を算出する。例えば、不要消費量データベースにおいて2020/08/05に消費した水量は、ラックレセプション設定が不要消費要因である50Lである。
【0077】
算出した各日の不要消費水量から、装置ログデータより特定可能な各日の測定項目数を割ることで、不要消費量表示部405の自動分析装置100(装置ID:0001、装置種類:AAAA)、自動分析装置200(装置ID:0002、装置種類:BBBB)に関する2列の値を求めることができる。例えば、08/05(水)における自動分析装置100の1項目あたりの不要消費水量50mlは、不要消費量データベース(
図6)において不要に水を消費されたと判断されたデータ(データID:1)の不要消費水量10Lを、測定項目数である200で割り、10L/200=0.05L≒50mlのように求めることができる。同様にして、他の日付、他の対象装置における不要消費水量も求めることができる。
【0078】
不要消費量表示部405の測定項目数を重みとした加重平均は、一般的な加重平均(重み付き平均)で求めることができる。例えば、07/31(金)の場合、(50×200+30×100)/(200+100)=43.333…≒43のように求めることができる。
【0079】
なお、
図10においては、「1測定項目あたりの不要消費水量ml」を表示する場合を例示しているが、表示切換部401を「不要消費水量L」(選択部401a)に切り換えることで、測定項目数を無視した、各日の不要消費水量に切り換えることができる。
【0080】
また、
図10においては、各日の不要消費水量を表示する場合を例示しているが、期間切換部402を「週」(選択部402b)、「月」(選択部402c)、「年」(選択部402d)の何れか1つに切り換えることで、それぞれ、各「週」(
図11参照)、各「月」(
図12参照)、各「年」(
図13参照)の不要消費水量を表示することができる。
【0081】
また、
図10においては、不要消費水量を表示する場合を例示しているが、右上の対象切換部403を「電力」(選択部403a)に切り換えることで、
図14に示すように不要消費電力量の表示を行うことができる。
【0082】
以上のように構成した本実施の形態においては、ユーザの要求により不要消費量表示画面400を表示することで、ユーザは各自動分析装置が1測定項目あたりに消費した不要な水量の変化を日ごとに確認することができる。これにより、運用を効率的に行うことができた日と、そうでない日を、各日の消費水量と共に把握することができる。1日単位で運用状況を確認することが可能となるため、運用効率の良し悪しの原因を考えやすくなる。
【0083】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図15を参照しつつ詳細に説明する。
【0084】
本実施の形態は、不要消費量表示画面から遷移可能な不要消費量割合表示画面を示すものである。
【0085】
図15は、不要消費量割合表示画面の一例を示す図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図15に示すように、不要消費量割合表示画面500は、表示内容を「電力」(選択部501a)に関するものと「水量」(選択部501b)に関するものの何れか一方に選択的に切り換える対象切換部501と、表示内容の年度を切り換える年度切換部502と、不要消費量割合表示部503とで構成されている。
【0087】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0088】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、本実施の形態においては、不要消費量割合表示画面500をユーザの要求により表示することで、特定の期間における電力、水の消費に寄与した各要因の割合を知ることができる。不要消費量割合表示画面500は、例えば、
図14の不要消費量表示画面400において、08/05(水)のデータを選択することで遷移する。
【0090】
なお、
図15においては、不要消費電力量割合を表示する場合を例示しているが、対象切換部501を「水量」(選択部501b)に切り換えることで、不要消費水量割合を表示することができる。
【0091】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を
図16及び
図17を参照しつつ詳細に説明する。
【0092】
本実施の形態は、水や電力の不要消費や、適当でない装置運用をユーザに認識させるアラーム画面を表示する場合を示すものである。
【0093】
図16は、不要消費要因の1つであるラックレセプション状態において試料測定が行われないままスタンバイ状態へ移行した場合に表示されるアラーム画面を示す図である。また、
図17は、背面アクリルカバーを開けたまま装置を起動した際に表示されるアラーム画面を示すものである。
【0094】
図16に示すアラーム画面600を表示することで、ユーザは、ラックレセプション設定により不要に消費した水量、電力量、測定終了から次回測定開始までの平均時間を認識し、ラックレセプション設定の時間、実施の有無を検討することができる。アラーム画面600の今週のラックレセプション中の測定実施状況は、不要消費量データベース(
図6)より算出することができ、測定終了―次回測定開始までの時間の平均は、装置ログデータより算出することができる。
【0095】
図17に示すアラーム画面700においては、カバーを閉め忘れたまま装置を起動した回数、それによる消費電力量を表示することにより、ユーザがカバー閉め忘れを無くすための行動改善を促すことができる。カバー閉め忘れ状況は、不要消費量データベース(
図6)より算出することができる。
【0096】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0097】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0099】
100,200…自動分析装置、110,210…分析部、111,211…給水部、112,212…水量計、113,213…電源、114…検体ラック投入部、114a…検体ラック、115…検体ラック搬送部、115a…検体分注機構、116…検体ラック回収部、117…試薬ディスク、117a…試薬分注機構、118…反応ディスク、118a…反応液吸引機構、118b…分析機能部、118c…廃液タンク、118d…攪拌機構、118e…反応セル、119…洗浄機構、120…操作部、121a…本体、121b…モニタ、121c…操作装置、122…電源、220…操作部、222…電源、300…配電盤、301…電力計、400…不要消費量表示画面、401…表示切換部、401a,401b…選択部、402…期間切換部、402a,402b,402c,402d…選択部、403…対象切換部、403a,403b…選択部、404…年度切換部、405…不要消費量表示部、500…不要消費量割合表示画面、501…対象切換部、501a,501b…選択部、502…年度切換部、503…不要消費量割合表示部、600…アラーム画面、700…アラーム画面