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特許7535058半導体オンインシュレータ基板を製造するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】半導体オンインシュレータ基板を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240807BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20240807BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/12 B
H01L21/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021557505
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020058529
(87)【国際公開番号】W WO2020201003
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】1903387
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブルクアールト, マルセル
(72)【発明者】
【氏名】カステス, アルノー
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517855(JP,A)
【文献】特開2003-347385(JP,A)
【文献】特表2010-518639(JP,A)
【文献】特表2013-531395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0087531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/20
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体オンインシュレータ構造体を製造するためのプロセスであって、
移転されるべき層の範囲を定めている弱化ゾーンを含んでいるドナー基板(1)を用意するステップと、
レシーバ基板(2)を用意するステップと、
前記ドナー基板(1)を前記レシーバ基板(2)にボンディングするステップであり、前記移転されるべき層がボンディング界面側(10)に配置され、前記界面の周辺部(11)の第1の領域(13)のところでボンディング波(3)を惹起し、前記第1の領域(13)とは反対の前記界面の前記周辺部(11)の第2の領域(14)に向けて前記波を伝播させることによって、前記ボンディング波(3)の伝播速度が前記周辺部分(11)におけるよりも前記中央部分(12)で小さい、ボンディングするステップと、
前記移転されるべき層を前記レシーバ基板(2)へ移転するために前記弱化ゾーンに沿って前記ドナー基板(1)を切り離すステップと、
を含む、プロセスにおいて、
ボンディングする前記ステップが、制御された条件で実施されて、前記ボンディング界面(10)の前記周辺部分(11)と前記中央部分(12)との間の前記ボンディング波の伝播の前記速度差を大きく
前記ボンディング波の伝播の速度の前記差異の増加が、前記ボンディング界面の前記周辺部(11)の前記第2の領域(14)においてガス状インクルージョン(4)を形成するために十分である、ことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記ドナー基板(1)の前記切り離しが、前記ガス状インクルージョン(4)のサイトにおいて始められる、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
前記制御されたボンディング条件が、ボンディングするステップに先立って、ホルダ(20)の支持表面(21)に前記ドナー基板(1)及び/又は前記レシーバ基板(2)を設置することを含み、前記支持表面(21)が前記支持表面の残部に対して盛り上がったゾーン(29)を有し、前記ボンディング界面(10)を形成しようとする前記ドナー基板(1)及び/又は前記レシーバ基板(2)の露出した表面が、前記露出した表面の残部に対して盛り上がったゾーンを有するように前記ホルダの前記支持表面(21)に一致するように少なくとも部分的に成形される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ドナー基板(1)及び/又は前記レシーバ基板(2)の前記露出した表面の前記盛り上がったゾーンが、前記露出した表面の前記残部に対して15μm~150μmだけ盛り上がる、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記制御されたボンディング条件が、前記ボンディング界面(10)形成しようとする前記ドナー基板(1)及び/又は前記レシーバ基板(2)の前記露出した表面にプラズマを選択的に当てることを含み、前記露出した表面の前記周辺部分(11)に当てられたプラズマの量が、前記露出した表面の前記中央部分(12)に当てられた量よりも多い、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記弱化ゾーンが、前記ドナー基板(1)へと原子種を注入することによって形成される、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「ドナー基板」と呼ばれる第1の基板から「レシーバ基板」と呼ばれる第2の基板へ層を移転することにより半導体オンインシュレータ構造体を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体オンインシュレータ構造体は、キャリア基板と、キャリア基板上に配置された電気的絶縁性層であって、前記電気的絶縁性層が一般に酸化シリコンの層などの酸化物の層である、電気的絶縁性層と、構造体の動作ゾーンが製作され前記絶縁性層上に配置された半導体層とを備えている多層構造体である。
【0003】
半導体オンインシュレータ(SeOI)構造体は、半導体がシリコンであるときには「シリコンオンインシュレータ」(SOI)構造体と呼ばれる。このタイプの構造体を製造するために使用される1つの知られた方法は、スマートカット(Smart Cut)(登録商標)法であり、前記方法は、移転されるべき半導体層の範囲を定めるために、「ドナー基板」と呼ばれる第1の半導体基板に弱化ソーンを形成することから構成される。弱化ゾーンは、移転されるべき層の厚さに実質的に対応する所定の深さのところのドナー基板に形成される。
【0004】
移転されるべき層は、次に、「レシーバ基板」又は「キャリア基板」と呼ばれる第2の半導体基板へ、移転されるべき層を介してドナー基板をレシーバ基板にボンディングすること及び次いで弱化ゾーンに沿ってドナー基板を切り離すことによって移転される。
【0005】
ドナー基板は、ドナー基板とレシーバ基板とにより形成された構造体を熱アニーリングすることによって切り離されることがある。このタイプの切り離しは、通常「熱分割」と呼ばれ、その頭字語により「Tスプリット」と呼ばれる。
【0006】
分割波の惹起は、弱化ゾーンの近くのドナー基板及びレシーバ基板の内部の様々なゾーンの発達度により決定される。ドナー基板及びレシーバ基板の内部の温度は、不均一であり、そのため、ホットゾーンと呼ばれる高温のゾーン及びクールゾーンと呼ばれる低温のゾーンを形成する。温度のこれらの違いは、ホットゾーンとクールゾーンとの間の発達度の違いという結果になる、すなわち、ホットゾーンはクールゾーンよりも早く発達する。
【0007】
分割波は、一旦ホットゾーンが十分に発達すれば惹起される。
【0008】
しかしながら、ドナー基板及びレシーバ基板の材料内部の温度及び発達度の違いが、ドナー基板を切り離した後に得られるSeOI基板の露出した表面の粗さのパターンを作り出し、そしてさらに完全な発達に達しているホットゾーンにより解放されるエネルギーに起因する切り離しの制御も制限する。切り離しの後の構造体の自由表面の大きな度合いの粗さを減少させるために、後で、RTA(急速熱アニーリング)などの平滑化処理を次いで使用することが必要であり、このことが製造時間を長くすることに加えてより高い製造コストという結果につながる。
【0009】
熱分割はまた、いくつかの他の欠点も有する。特に、ドナー基板及び/又はレシーバ基板が電子部品を含んでいるときには、これらの部品は、高温にさらされると損傷を受けることがあり、このことが、ある種のSeOI基板の製造を実質的に制限している。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの目的は、上に記載した欠点を克服することである。
【0011】
本発明は、ドナー基板からレシーバ基板へ層を移転することによって半導体オンインシュレータ基板を製造するためのプロセスであり、前記プロセスがドナー基板を切り離すことの後で得られるSeOI基板の露出した表面の粗さが小さくなることを可能にする、プロセスを提供することを特に狙っている。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、熱分割から結果としてもたらされる制約を克服することを可能にするこのようなプロセスを提供すること、特に、多種多様なSeOI基板の製造と両立できるより経済的なプロセスを提供することである。
【0013】
この目的のために、本発明は、半導体オンインシュレータ構造体を製造するためのプロセスに関し、下記のステップ:
移転されるべき層の範囲を定めている弱化ゾーンを含んでいるドナー基板を用意するステップと、
レシーバ基板を用意するステップと、
前記ドナー基板を前記レシーバ基板にボンディングするステップであって、前記移転されるべき層がボンディング界面側に配置され、前記界面の周辺部の第1の領域のところでボンディング波を惹起し、前記第1の領域とは反対の前記界面の前記周辺部の第2の領域に向けて前記波を伝播させることによって、前記ボンディング波の伝播速度が前記周辺部分におけるよりも前記中央部分で小さい、ボンディングするステップと、
前記移転されるべき層を前記レシーバ基板へ移転するために前記弱化ゾーンに沿って前記ドナー基板を切り離すステップと
を含む。
【0014】
前記プロセスは、ボンディングする前記ステップが、制御された条件で実施されて、前記ボンディング界面の前記周辺部分と前記中央部分との間の前記ボンディング波の伝播の前記速度差を大きくする、ことで特徴付けられる。
【0015】
他の態様によれば、提案したプロセスは、下記の様々な構成を有し、これらの構成は、単独で又は技術的に可能なこれらの組み合わせで実施されることがあり:
前記ボンディング波の伝播の速度の前記差異の増加が、前記ボンディング界面の前記周辺部の前記第2の領域においてガス状インクルージョンを形成するために十分であり、
前記ドナー基板の前記切り離しが、前記ガス状インクルージョンのサイトにおいて始められ、
前記制御されたボンディング条件が、ボンディングするステップに先立って、ホルダの支持表面に前記ドナー基板及び/又は前記レシーバ基板を設置することを含み、前記支持表面が前記支持表面の残部に対して盛り上がったゾーンを有し、前記ボンディング界面を形成しようとする前記ドナー基板及び/又は前記レシーバ基板の露出した表面が、前記露出した表面の前記残部に対して盛り上がったゾーンを有するように前記ホルダの前記支持表面に一致するように少なくとも部分的に成形され、
前記ドナー基板及び/又は前記レシーバ基板の前記露出した表面の前記盛り上がったゾーンが、前記露出した表面の前記残部に対して15μm~150μmだけ盛り上がり、
前記制御されたボンディング条件が、前記ボンディング界面を形成しようとする前記ドナー基板及び/又は前記レシーバ基板の前記露出した表面にプラズマを選択的に当てることを含み、前記露出した表面の前記周辺部分に当てられたプラズマの量が、前記露出した表面の前記中央部分に当てられた量よりも多く、
前記弱化ゾーンが、前記ドナー基板へと原子種を注入することによって形成される。
【0016】
本発明の他の利点及び特徴は、下記の添付した図を参照して、例示で非限定的な実施例として与えられる下記の説明を読むと明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ボンディング界面におけるボンディング波の伝播を図示している上からの視野の模式図である。
図2】切り離し及び熱アニーリングによる熱平滑化の後で得られた2つの半導体構造体の表面においてレーザ回折を用いて得られたヘイズグラフである。
図3A】ガスインクルージョンの場所を図示しているドナー基板又はレシーバ基板の上からの視野の図である。
図3B】ボンディング界面のところに4つのガス状インクルージョンを有する、上からの4つの基板の図である。
図4】ガスインクルージョンの寸法を図示しているガスインクルージョンのクローズアップ図である。
図5】ホルダ、すなわち「チャック」の上からの写真撮影した図である。
図6図5のホルダの図である。
図7図5のホルダの側面図である。
図8】光学顕微鏡下の図5のホルダの断面側面図である。
図9】ボンディングの前の、ドナー基板及びレシーバ基板がマウントされたホルダの模式図である。
図10】ボンディングの後の、ドナー基板及びレシーバ基板がマウントされたホルダの模式図である。
図11】TEFLON(商標)コーティングの局所的な剥離を図示する光学顕微鏡下の図5のホルダの断面側面図である。
図12】3つの軸x、y及びzに沿った、変形後のホルダの支持表面のプロファイルを図示しているポイントクラウドの図である。
図13】ボンディング波が終わるゾーンのサイトにおけるホルダの支持表面の変形を図示している軸x、y及びzに沿ったホルダの平面度の測定の斜視表示の図である。
図14】軸x及び軸yだけに沿った図13の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、「ドナー基板」と呼ばれる第1の基板が「レシーバ基板」と呼ばれる第2の基板にボンディングされる半導体オンインシュレータ構造体を製造するためのプロセスに関する。ドナー基板は、移転されるべき層の範囲を定めている弱化ゾーンを含む。
【0019】
ボンディング中に、移転されるべき層が、レシーバ基板の自由表面と接触し、そのため移転されるべき前記層の自由表面及びレシーバ基板の自由表面がボンディング界面を形成している。
【0020】
熱処理が、2つの基板同士の間のボンディングエネルギーを大きくするために行われることがある。
【0021】
ドナー基板は、次いで弱化ゾーンに沿って切り離される。破断が引き起こされ、次いで、定義によればドナー基板のより弱いゾーンである弱化ゾーンのサイトのところで伝播する。ドナー基板の表面のところの範囲を定められた層は、レシーバ基板へこのように移転される。破断は、基板の組み立て品を所与の温度まで加熱することによって同時にトリガされることがある、又は破断は、ドナー基板に機械的な圧力を加えることによってトリガされることがある。
【0022】
層移転方法は、特に、スマートカット(商標)法であってもよく、前記方法では、移転されるべき層の厚さに実質的に対応している注入パラメータによって規定された深さのところにドナー基板へと原子種、特に水素原子及び/又はヘリウム原子を注入することによって、弱化ゾーンが作り出される。当業者は、原子種を所望の深さでドナー基板へと注入するために、注入パラメータ、特に、原子種の性質、元素種のドーズ及びエネルギーを決定することが可能である。
【0023】
スマートカット(商標)法が層を移転することの後で他の引き続く用途のためにドナー基板を再使用することを可能にし、そして薄い層を均一に移転することを可能にするので、スマートカット(商標)法は有利である。
【0024】
ドナー基板をレシーバ基板へボンディングするときに、2つの基板は、その周囲のところで接触する。ドナー基板とレシーバ基板との間の接触ゾーンは、ボンディング波が惹起されるサイトであり、ボンディング界面の第1の周辺領域を構成する。
【0025】
ドナー基板及びレシーバ基板は、ボンディング界面の第1の周辺領域を互いに覆うように一緒に結合される。ボンディング波は、接触しているドナー基板及びレシーバ基板のそれぞれの自由表面により形成されたボンディング界面に沿って、前記界面の周辺の第1の領域から接合した基板に垂直なメディアン面に対して第1の領域とは反対の前記界面の周辺部の第2の領域まで移動する。言い換えると、基板が円板形状である場合、第2の領域は、第1の領域と直径方向に反対であり、ボンディング波が終わるサイトである。
【0026】
本発明の製造プロセスは、図1によって図示された、下記の実験観察に基づいている。図1に図示したように、ドナー基板1をレシーバ基板2にボンディングするときに、ボンディング波3は、ボンディング界面10の周辺部11において前記界面の中央部分12におけるよりも早く伝播する。
【0027】
ボンディング界面の周辺部11は、ドナー基板の端部とレシーバ基板の端部との間に位置する界面の部分に対応し、ボンディング波が惹起されるサイト13とボンディング波が終わるサイト14との間に延びる。ボンディング界面の中央部分12は、2つの接合した基板の中心の近くの領域に対応し、ボンディング波が惹起されるサイト13とボンディング波が終わるサイト14との間に延びる。Vpがボンディング界面の周辺部のところのボンディング波の速度を表し、そしてVcがボンディング界面の中央部のところのボンディング波の速度を表すとすれば、そのときには、次の関係式:Vp=1,585*Vc(1)により規定されるVpとVcとの間に比例性の関係がある。
【0028】
ボンディング界面の中央部分12と周辺部分11との間のボンディング波3の速度の違いは、ドナー基板1及びレシーバ基板2が一緒に結合されるときに、2つの基板の間に位置した大量の空気が、界面の中央部分からよりも周辺部分からより早く空にされるという事実に主として起因する。しかしながら、ボンディング波がカバーしなければならない距離は、ボンディング界面の中央部分のところよりも周辺部分のところで大きい。
【0029】
このように、ボンディング波3がボンディング界面10の中央部12を通って伝播するか又は周辺部11を回って伝播するかに拘わらず、ボンディング波3は、終端サイト14に達するまでに実質的に同じ時間を要する。
【0030】
驚くべきことに、出願人は、ボンディング界面の周辺部分11と中央部分12との間のボンディング波の伝播の速度の違いを大きくすることによって、ドナー基板1の後の切り離しが容易にされ、得られた半導体構造体の自由表面の粗さの減少という結果になることを観察している。
【0031】
先の関係式(1)に戻って、ボンディング界面の周辺部分と中央部分との間のボンディング波の速度の違いが、次の関係式(2):Vp>1.585*Vc(2)にしたがって大きくなることが好ましい。
【0032】
ボンディング界面の周辺部分11と中央部分12との間のボンディング波3の伝播の速度の違いが大きくなると、特に関係式(2)を満足することによって、ガス、特に空気のインクルージョン4が、ボンディング界面の周辺部の第2の領域のサイトのところにできる。ガス状インクルージョンは、これゆえ、惹起サイト13とは反対のボンディング波が終わるサイト14のところのボンディング界面のところにできる。
【0033】
出願人は、ガス状インクルージョンがボンディング界面の端部から2.5mmと4mmとの間にできることを実験的に観察している。
【0034】
このようなインクルージョンは、従来のボンディングプロセスでは観察されていない。
【0035】
図1では、ガス状インクルージョン4は、レシーバ基板2の周辺部に示され、基板ボンディングが始められるノッチ5とは直径方向に反対である。このようなノッチは、半導体基板の分野では良く知られており、そして基板の相対的な配置のための基準として使用されている。ボンディング波の動きが、湾曲した線3により模式的に表現され、湾曲のピークは、ガス状インクルージョンが位置する端部サイト14の方向を指し示している。
【0036】
ボンディングが、窒素又はアルゴンなどの空気以外の1種又は複数種のガスの存在で行われるときには、これらのガスもまた、ガス状インクルージョン内にトラップされることがある。
【0037】
ボンディング界面10のところの1種又は複数種のガス状インクルージョン4の存在は、ドナー基板の後の切り離しを容易にする。より具体的に、ガス状インクルージョンは、ボンディング界面を不安定化する。したがって、切り離しが、特に熱アニーリング及び/又は機械的圧力によって引き起こされると、ガス状インクルージョンは、優先的破断ゾーンを構成する。破断は、ドナー基板の周辺部の弱化ゾーンのサイトで引き起こされ、次いで、弱化ゾーンに沿って伝播する。並行して、破断は、ガス状インクルージョンのサイトのところでも引き起こされ、そしてガス状インクルージョンから弱化ゾーンに向かって伝播し、弱化ゾーンのところでのドナー基板が破断することを最適化する相乗効果を結果としてもたらす。
【0038】
弱化ゾーンのところの機械的圧力は、ボンディング波の伝播の速度が本発明のプロセスにしたがって制御されていない知られたプロセスと比較して小さく、ドナー基板を引き離した後で得られる半導体構造体の自由表面の粗さの改善、すなわち減少という結果をもたらす。
【0039】
粗さのこの改善は、ヘイズグラフと呼ばれる図2に図示した粗さグラフで観察されることがあり、ヘイズグラフは、切り離し及び熱アニーリングによる熱平滑化の後で得られた2つの半導体構造体の表面におけるレーザ回折を用いて得られている。第1の構造体a)は、「Tスプリット」と呼ばれる先行技術による製造プロセスを行うことによって得られ、そして第2の構造体b)は、「Dスプリット」と呼ばれる本発明の製造プロセスb)を行うことにより得られている。
【0040】
構造体a)の表面において測定したヘイズは、非常に不均一である。このことは、約9に等しいヘイズの実体的で優勢な存在、比較的実体的な8と9との間及び9と11との間、並びに余り実体的でない7と8との間及び11と12との間によってグラフに図示されている。
【0041】
構造体b)の表面において測定したヘイズは、はっきりと均一である。このことは、余り実体的ではなくそして5と7との間に多かれ少なかれ均等に分布したヘイズによりグラフに図示されている。
【0042】
図3A及び図3Bは、いくつかのガス状インクルージョン4の位置を図示している。図3Aは、ガス状インクルージョンがボンディング界面の周辺部11に位置することを示している。ガス状インクルージョンは、Cによって円で囲まれている。特に、図3Bでは、ガス状インクルージョン4は、ボンディング界面10のところで、ボンディングした基板の端部の近くに位置している。
【0043】
図4は、互いに直角でありそしてボンディング界面10の平面に平行な2つの軸x及びyに沿ったガスインクルージョン4の寸法Lx及びLy、並びに基板の端部に対する距離Dを模式的に示している。対応する値が、下記の表に与えられている。インクルージョンの面積S及びヘイズもまた与えられている。測定は、いくつかのガスインクルージョンに対して行われている。表は、これらのガスインクルージョンの様々な特性値の最小値(min)及び最大値(max)の平均値を与えている。
【表1】
【0044】
ボンディング界面の周辺部分と中央部分との間でのボンディング波の伝播の速度の違いを大きくすることを可能にさせる2つの実施形態がここで提示されるだろう。
【0045】
第1の実施形態によれば、ドナー基板1及び/又はレシーバ基板2は、ボンディングに先立って、ホルダ20すなわち「チャック」の支持表面21に設置される。
【0046】
このようなホルダ20が、図5及び図6に上からの視野で、図7及び図8に側面図で示されている。このホルダは、第1の基板と呼ばれる基板を受け入れるように構成され、この第1の基板は、ドナー基板1であってもレシーバ基板2であってもよく、その一方の面がホルダの支持表面21と接触する。ホルダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、特に商標名TEFLON(商標)により知られている)の層23でコーティングされた金属本体22を一般に含んでいる。TEFLON(商標)の層は、ボンディング層24を介して本体にボンディングされる。
【0047】
第1の基板21は、基板の端部を押す「プッシャ」と呼ばれるセンタリング部品25によってホルダ20上で中心位置に保たれる。
【0048】
スペーサと呼ばれるスペーシング部品26は、2つの基板がボンディングの前には互いに離れて保持されることを可能にする。スペーサ26は、図9及びボンディングの後の第1の基板1及び第2の基板2の位置を図示している図10に模式的にさらに示されている。
【0049】
図9を参照して、ボンディングの前に、第1の基板1が、ホルダ20の支持表面21に置かれ、第2の基板2がホルダにマウントされ、そのためボンディング界面を形成しようとする2つの基板の表面が互いに面している。2つの基板は、スペーサ26により互いに離れて保たれる。
【0050】
ホルダ20には、ノッチピン27が設けられ、ノッチピン27は、基板のためのストッパとして作用することに加えて、ノッチ5がノッチピン27を用いて2つの基板の位置を整列させるための基準として使用される状態に、ユーザが2つの基板を設置することを可能にする。第2のストッパ28もまた、プッシャ25のうちの1つの隣に設置される。ホルダの構造のおかげで、ユーザは、2つの基板がボンディングのために前記ホルダ上に正しく設置されることを確実にできる。
【0051】
図10を参照して、2つの基板がボンディングされることを可能にするために、スペーサ26が取り除かれる。ボンディング開始ゾーン13は、ホルダのノッチピン27のサイトのところに位置する。
【0052】
本発明によれば、ホルダ20は、その支持表面21にドナー基板1及び/又はレシーバ基板2を設置する前に変形される。より具体的に、ホルダは、その支持表面21が前記支持表面の残部に対して盛り上がったゾーン29を有するように変形される。この盛り上がったゾーン29は、ボンディング波が惹起されるゾーン13と直径方向に反対であり、ボンディング波が終わるゾーン14のサイトのところに配置される。
【0053】
盛り上がったゾーン29は、図11に図示したように、PTFE層を盛り上げることにより形成されることがある。ボンディングは、局所的に分離され、PTFE層23と本体22上に残っている接着剤との間での空隙30の形成を結果としてもたらす。
【0054】
図12は、ホルダの平面性の測定から結果としてもたらされるポイントクラウドであり、3つの軸x、y及びzに沿った、変形後のホルダの支持表面のプロファイルを図示している。支持表面21が、盛り上がったゾーン29の存在のために惹起ゾーン13よりもボンディング波が終わるゾーン14のサイトのところでz軸に沿ってさらに広がることが注目される。
【0055】
図13及び図14はまた、ボンディング波が終わるゾーン14のサイトのところのホルダの支持表面21の変形も図示し、この変形は、支持表面の残部については0mm~20mmの範囲である値に対して高さ(z軸)で約160mmに至るまで広がる。
【0056】
ドナーであるかレシーバであるかに拘わらず、第1の基板は、ホルダの支持表面に次に設置され、したがって変形される。第1の基板1のノッチ5は、ホルダのノッチピン27と位置を合わせられる。ボンディング界面を形成するものである第1の基板の露出した表面は、そのときには、露出した表面の残部に対して盛り上がっているゾーン29を有するようにホルダの支持表面と一致するように少なくとも部分的に成形される。
【0057】
第1の基板の露出した表面の盛り上がったゾーン29は、ホルダの支持表面の盛り上がったゾーンと縦に一致して位置する。
【0058】
第1の基板の露出した表面の盛り上がったゾーン29は、15μm~150μmだけ、有利には好ましくは20μmと100μmとの間だけ露出した表面の残部に対して盛り上げられることが好ましい。
【0059】
ホルダ20の所定の位置に留まっている第1の基板1は、そのときには第2の基板2にボンディングされる。ボンディング波は、第1の基板1と第2の基板2との間の接触部を介して2つの基板のノッチ5のサイトのところで惹起され、そして基板が一緒に結合されるにつれて第1の基板の露出した表面の盛り上がったゾーン29に達するまでボンディング界面10に沿って伝播する。
【0060】
ホルダの支持表面の一様でないプロファイルは、第1の基板の自由表面の一様でないプロファイルの対応する形成という結果をもたらす。ボンディング界面の盛り上がったゾーンと残部との間の前記自由表面の表面状態のこの変化は、ボンディング界面の中央部分と周辺部分との間のボンディング波の速度の違いを大きくする。このことが、第1の基板の盛り上がったゾーンと縦に一致するボンディング界面のところのガスインクルージョンの形成という結果をもたらす。
【0061】
第2の実施形態によれば、ボンディング波の伝播の速度は、ボンディング界面を形成しようとするドナー基板及び/又はレシーバ基板の露出した表面にプラズマを選択的に当てることによって制御される。
【0062】
基板の露出した表面の周辺部分に当てられるプラズマの量は、前記露出した表面の中央部分に当てられる量よりも多い。
【0063】
プラズマは、露出した表面の表面状態を変え、そしてボンディング波を局所的に加速する。表面状態の不均一な分布は、ボンディング界面の中央部分と周辺部分との間でのボンディング波の速度の違いを大きくし、第1の基板の盛り上がったゾーンと縦に一致するボンディング界面のところのガスインクルージョンの形成という結果をもたらす。
【0064】
本発明のプロセスは、「Tスプリッティング」として知られた高温熱アニーリングを使用している知られたプロセスよりも低い温度で行われる、このことが、ドナー基板及びレシーバ基板のストレスを低下させそして切り離しの後の構造体の自由表面の粗さを小さくする。RTAなどの後の平滑化処理を省略すること又は少なくとも限定することが、これゆえ可能になる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14