(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】軟X線スキャタロメトリに依拠するオーバレイ計測方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240807BHJP
G01N 23/201 20180101ALI20240807BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/201
(21)【出願番号】P 2022541623
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021012236
(87)【国際公開番号】W WO2021141933
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-12-04
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェグロフ アンドレイ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】グットマン ナダブ
(72)【発明者】
【氏名】クズネツォフ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジェリノー アントニオ
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0320319(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0242970(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0350699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/201
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量システムであって、
基板上に配された計測ターゲットの第1インスタンスを、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有するSXR輻射ビームで以て照明するよう構成された軟X線(SXR)照明源を備え、前記計測ターゲットが、前記基板の上方、第1高さに作成されている第1層内に配された第1構造と、前記基板の上方、第2高さに作成されている第2層内に配された第2構造とを有し、
前記
SXR輻射ビームに応じ前記計測ターゲットから散乱されてくる一群のX線輻射のうち、一
つ又は複
数の非0次回折波にそれぞれ係る複
数の強度を、検出するよう構成されたX線検出器を備え、
情報処理システムを備え、その情報処理システムが、
前記計測ターゲット又は対応するインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差値を、前記一
つ又は複
数の非0次回折波それぞれにおける前記複
数の検出強度に基づき推定するよう、構成されている計量システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計量システムであって、前記X線検出器が、更に、前記
SXR輻射ビームに応じ前記計測ターゲットから散乱されてくる前記一群のX線輻射のうち、0次回折波に係る強度を検出するよう構成されており、前記情報処理システムが、更に、
前記計測ターゲットの形状を特徴付ける1個又は複数個のパラメータの値を、前記0次回折波における前記検出強度、前記一
つ又は複
数の非0次X線回折波それぞれにおける前記複
数の検出強度、或いはそれらの何らかの組合せに基づき推定し、
前記計測ターゲットのエッジ配置誤差の値を、
推定した前記オーバレイ
誤差値と、前記計測ターゲットの前記形状を特徴付ける前記1個又は複数個のパラメータ
の推定値とに基づき推定するよう、
構成されている計量システム。
【請求項3】
請求項1に記載の計量システムであって、前記SXR照明源が、更に、前記基板上に配された前記計測ターゲットの第2インスタンスを、前記SXR輻射ビームで以て照明するよう構成されており、前記計測ターゲットの前記第1インスタンスの前記第1構造が、前記計測ターゲットの前記第1インスタンスの前記第2構造から、前記第1層に揃う方向にてあるオフセット距離分だけオフセットしており、前記計測ターゲットの前記第2インスタンスの前記第1構造が、前記計測ターゲットの前記第2インスタンスの前記第2構造から、前記第1層に揃う方向とは逆方向にて前記オフセット距離分だけオフセットしており、前記X線検出器が、前記
SXR輻射ビームに応じ前記計測ターゲットの前記第2インスタンスから散乱されてくる一群のX線輻射のうち、一
つ又は複
数の非0次回折波にそれぞれ係る複
数の強度を検出するよう構成されており、前記計測ターゲットに係る前記オーバレイ誤差値の前記推定が、前記計測ターゲットの前記第1インスタンスに係る+1次回折波及び-1次回折波における前記検出強度間の差異と、前記計測ターゲットの前記第2インスタンスに係る前記+1次回折波及び前記-1次回折波における前記検出強度間の差異とに基づくものである計量システム。
【請求項4】
請求項1に記載の計量システムであって、前記計測ターゲットに係る前記オーバレイ誤差値の前記推定が、物理的に根拠のある計測モデルによる、前記一
つ又は複
数の非0次回折波における前記検出強度の当て嵌め分析に基づくものである計量システム。
【請求項5】
請求項1に記載の計量システムであって、前記SXR輻射ビームが、それぞれ別々の定格入射角、別々の定格アジマス角又はその双方での複数の計測インスタンスにて、前記計測ターゲット上に入射する計量システム。
【請求項6】
請求項5に記載の計量システムであって、前記計測ターゲットに係る前記オーバレイ誤差値の前記推定が、前記複数の計測インスタンスそれぞれでの、前記一
つ又は複
数の非0次回折波における前記複
数の強度の変調に基づくものである計量システム。
【請求項7】
請求項1に記載の計量システムであって、前記計測ターゲット又は前記対応するインダイターゲットに係る前記オーバレイ誤差値が、訓練済の機械学習式計測モデルにより、前記一
つ又は複
数の非0次回折波における前記検出強度から直接決定される計量システム。
【請求項8】
請求項7に記載の計量システムであって、前記計測ターゲットが周期的でない計量システム。
【請求項9】
請求項7に記載の計量システムであって、前記軟X線(SXR)照明源が、更に、複数個の実験計画法(DOE)計測ターゲットを、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有する前記SXR輻射ビームで以て照明するよう構成されており、前記X線検出器が、更に、前記
SXR輻射ビームに応じ前記複数個のDOE計測ターゲットそれぞれから散乱されてくる一群のX線輻射のうち、一
つ又は複
数の非0次回折波にそれぞれ係る複数の強度を検出するよう構成されており、前記情報処理システムが、更に、前記DOE計測ターゲット又は対応するインダイターゲットそれぞれに係る既知値のオーバレイ誤差及び前記検出された複
数の強度に基づき前記機械学習式計測モデルを訓練するよう構成されている計量システム。
【請求項10】
請求項9に記載の計量システムであって、前記既知値のオーバレイ誤差が、参照計量システムによる前記DOE計測ターゲット又は対応するインダイターゲットの計測をもとに決定されている計量システム。
【請求項11】
請求項1に記載の計量システムであって、前記対応するインダイ能動デバイス構造に係る前記オーバレイ誤差値の前記
推定が、前記一
つ又は複
数の非0次回折波それぞれにおける前記複数の検出強度に基づいており前記計測ターゲットに係る前記オーバレイ誤
差値と、補正値との総和を伴うものである計量システム。
【請求項12】
請求項1に記載の計量システムであって、前記第1層がレジスト層である計量システム。
【請求項13】
請求項1に記載の計量システムであって、前記計測ターゲットが、スクライブライン内に配されたデザインルールターゲット、或いはインダイ能動デバイス構造である計量システム。
【請求項14】
請求項1に記載の計量システムであって、前記対応するインダイ能動デバイス構造が周期的でない計量システム。
【請求項15】
基板上に配されたデザインルールターゲットの第1インスタンスを、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有する軟X線(SXR)輻射ビームで以て照明し、但し前記デザインルールターゲットを多層ターゲットとし、
前
記SXR輻射ビームに応じ前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスから散乱されてくる一群のSXR輻射のうち、±1次回折波に係る第1の複
数の強度を検出し、
前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスに係る第1オーバレイ誤差値を、前記±1次回折波における前記第1の複
数の検出強度に基づき推定し、
第1インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差値を、走査型電子顕微鏡による前記第1インダイ能動デバイス構造の計測を踏まえて推定し、但し前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスと前記第1インダイ能動デバイス構造とが同じ製造プロセスルールに従い作成されており、
前記第1インダイ能動デバイス構造に係る前記オーバレイ誤差値と、前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスに係る前記第1オーバレイ誤差値とに基づきオーバレイ校正値を決定する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、更に、
前記デザインルールターゲットの第2インスタンスを、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有するSXR輻射ビームで以て照明し、
前
記SXR輻射ビームに応じ前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスから散乱されてくる一群のSXR輻射のうち、±1次回折波にそれぞれ係る第2の複
数の強度を検出し、
前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスに係るオーバレイ誤差値を、前記±1次回折波における前記
第2の複
数の検出強度に基づき推定し、
第2インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差値を、前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスに係る前記オーバレイ誤差値と、前記オーバレイ校正値との総和に基づき推定する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、更に、
前
記SXR輻射ビームに応じ前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスから散乱されてくる一群のSXR輻射のうち、0次回折波に係る強度を検出し、
前記デザインルールターゲットの形状を特徴付ける1個又は複数個のパラメータの値を、前記0次回折波に係る検出強度、前記±1次回折波における前記複
数の検出強度、またはこれらの組み合わせに基づき推定し、
前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスのエッジ配置誤差の値を、前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスに係る前記オーバレイ誤差値と、前記デザインルールターゲットの前記第2インスタンスの前記形状を特徴付ける前記1個又は複数個のパラメータの前記値とに基づき推定する、方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記オーバレイ校正値が、前記第1インダイ能動デバイス構造に係る前記オーバレイ誤差値と、前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスに係る前記第1オーバレイ誤差値との間の差異である方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、更に、
前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスに係る第2オーバレイ誤差値を、前記走査型電子顕微鏡による前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスの計測を踏まえて推定する方法であり、前記オーバレイ校正値の前記決定が、前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスに係る前記第1・第2オーバレイ誤差値間の差異と、前記第1インダイ能動デバイス構造に係る前記オーバレイ誤差値と前記デザインルールターゲットの前記第1インスタンスに係る前記第2オーバレイ誤差値との間の差異とに基づくものである方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、前記デザインルールターゲットが、スクライブライン内に配されており、或いはインダイ能動デバイス構造である方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、前記
第1インダイ能動デバイス構造が周期的でない方法。
【請求項22】
計量システムであって、
基板上に配された計測ターゲットの第1インスタンスを、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有するSXR輻射ビームで以て照明するよう構成された軟X線(SXR)照明源を備え、前記計測ターゲットが、前記基板の上方、第1高さに作成されている第1層内に配された第1構造と、前記基板の上方、第2高さに作成されている第2層内に配された第2構造とを有し、
前記
SXR輻射ビームに応じ前記計測ターゲットから散乱されてくる一群のX線輻射のうち、一
つ又は複
数の非0次回折波にそれぞれ係る複
数の強度を検出するよう構成されたX線検出器を備え、
命令が格納されている非一時的コンピュータ可読媒体を備え、それら命令が1個又は複数個のプロセッサにより実行されたときに、その1個又は複数個のプロセッサにより、
前記計測ターゲット又は対応するインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差値が、前記一
つ又は複
数の非0次回折波それぞれにおける前記複
数の検出強度に基づき推定される計量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載の諸実施形態は計量システム及び方法に関し、より具体的には計測正確度が改善された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本件特許出願では、「軟X線スキャタロメトリによるオーバレイ及びエッジ配置誤差計測システム及び方法」(System and Method for Measuring Overlay and Edge Placement Error With Soft X-ray Scatterometry)と題する2020年1月7日付米国仮特許出願第62/958089号に基づき米国特許法第119条の規定による優先権を主張し、参照によりその主題の全容を本願に繰り入れる。
【0003】
半導体デバイス、例えば論理デバイス及びメモリデバイスは、通常、一連の処理工程を試料に適用することで製造される。それら半導体デバイスの様々なフィーチャ(外形特徴)及び複数個の構造階層が、それらの処理工程によって形成される。例えば、その中でもリソグラフィは、半導体ウェハ上でのパターン生成を伴う半導体製造プロセスの一つである。半導体製造プロセスの更なる例としては、これに限られるものではないが化学機械研磨、エッチング、堆積及びイオンインプランテーションがある。複数個の半導体デバイスを単一の半導体ウェハ上に作成した上で、それらを分けて個別の半導体デバイスにすることができる。
【0004】
計量プロセスが、ウェハ上の欠陥を検出することで歩留まり向上を促進するため、半導体製造プロセス中の様々な工程にて用いられている。多数の計量依拠技術、例えばスキャタロメトリ(散乱計測法)及びリフレクトメトリ(反射計測法)の装置並びにそれらに関連する分析アルゴリズムが、限界寸法、膜厚、組成、オーバレイその他、ナノスケール構造のパラメータを解明するため広く用いられている。
【0005】
諸デバイス(例.論例デバイス及び記憶デバイス)がより小さなナノメートルスケール寸法へと移行しつつあり、それに伴い特性解明・特徴付けが困難化している。デバイスに複雑な三次元幾何が取り入れられ、また多様な物理特性を有する素材が取り入られたことで、特性解明困難性が助長されている。例えば、昨今のメモリ構造は高アスペクト比三次元構造であることが多く、そのために光学輻射が下層へと浸透しにくくなっている。光学計量ツールで利用されているのは赤外~可視光であり、多くの半透明素材層に浸透させることができるが、良好な浸透深度がもたらされる長めの波長にすると、小異常に対して十分な感度が得られなくなる。同様に、電子式計量ツールでも、標本の損傷なしでは、煩わしいことに浸透深度が不適切となる。加えて、パラメータの個数を増やさないと、複合的な構造(例.FinFET)を特徴付けることができないことが、パラメータ相関の増大につながっている。結果として、そのターゲットを特徴付ける諸パラメータを、往々にして、利用可能な計測結果から高信頼分離できない。ある種の構造パラメータ、例えばエッジ配置誤差(EPE)に関しては、現在のところ、高スループットな(例.光学的)計測ソリューションが存在していない。
【0006】
現在のところ、幾つかのテクノロジがオーバレイ及び限界寸法(CD)の計測に利用されており、その成功度合いは異なっている。光学及び電子ビーム計量技術がCD及びオーバレイ計測、典型的には専用計量ターゲットに対するそれの実行に利用されている。
【0007】
オーバレイの光学計測は、主に、光学イメージング又は非イメージング回折(スキャタロメトリ)に依拠している。しかしながら、これらの手法では、多くの先進的ターゲット(例.複雑な3D構造、10nm未満の構造、不透明素材を利用する構造)の計測及び計測アプリケーション(例.ラインエッジ粗さ及びライン幅粗さ計測)に係る根本的難題を信頼性良く克服することができていない。
【0008】
既存方法を用いる場合、オーバレイ誤差は、通常、リソグラフィツールによりそのウェハ上の様々な個所に形成された専用ターゲット構造の計測を踏まえ評価される。ある種の例では、空間分離格子群を利用しイメージング式光学オーバレイ計測が行われている。他のある種の例では、ボックスインボックス構造群を利用しイメージング式光学オーバレイ計測が行われている。この形態ではボックスがウェハのうちある層上に生成され、より小さな第2のボックスが別の層上に生成される。局所的なオーバレイ誤差が、それら2個のボックスの中心間でアライメント(整列具合)を比較することにより計測される。そうした計測結果が、そのウェハ上にありターゲット構造を利用可能な諸個所にて採取される。ある種の例では、重複(オーバラップ)格子群又は間挿(インタリーブ)格子群を利用しスキャタロメトリ式光学オーバレイ計測又は電子ビームオーバレイ計測が行われている。
【0009】
これらの専用ターゲット構造は、その電子デバイスを生成するのに利用されている個別的な半導体製造プロセスのデザインルールに、適合していないことが多い。そのことが、その適用可能なデザインルールに従い製造される実デバイス構造に係るオーバレイ誤差推定の誤差につながっている。
【0010】
例えば画像式光学オーバレイ計量は、光学波長でのイメージングの分解能によって厳しく制約される。即ち、そのデザインルールよりかなり大きなフィーチャを有するターゲットしか計測することができない。画像式光学オーバレイ計量では、そのパターンを光学顕微鏡で以て解像する必要上、デザインルール限界寸法をはるかに上回る限界寸法を有する太線が必要とされることが多い。
【0011】
また例えば、0次回折に依拠するスキャタロメトリ式光学オーバレイ計量では、周期的ターゲットのピッチにつれてその感度が低下するため、小さなオーバレイ誤差に対する感度が非常に低い。このことがもとで、ピッチが、そのデバイスのデザインルールよりもかなり大きな寸法とされている。更に、この計測手法の正確度は、オーバレイが計測される層のうち何れかに何らかの非対称性が存在していると、劇的に劣化する。加えて、この手法では、正のオーバレイ誤差と負のそれとを1回の計測で区別することができない。
【0012】
また例えば、0次超の回折に依拠するスキャタロメトリ式光学オーバレイ計量でも、非0次伝搬回折波にて十分な信号を生成するには、比較的大きなピッチのターゲットが必要とされる。通常は、オーバレイ非対称性を示す光学信号が、照明光の光学波長に比肩するパターンピッチを有する周期的ターゲットから発生する。ある種の例によれば、500~800nmの範囲内のピッチ値を用いることができる。その一方で、論理又はメモリアプリケーション向け実デバイスピッチ(デザインルール寸法)はかなり小さく、例えば100~400nmの範囲内であり、100nm未満であることさえある。加えて、この手法の正確度は、オーバレイが計測される層のうち何れかに何らかの非対称性が存在していると、劇的に劣化する。照明の光学波長を短くして深紫外及び真空紫外域にすることは、そうした光子が減衰してしまい多層構造内に十分浸透せず、オーバレイ及びエッジ配置誤差を評価することが必要な下側パターンに到達しないため、助けとならない。
【0013】
電子式計量技術、例えば走査型電子顕微法(SEM)及び電子ビーム計量であれば、ナノメートルスケールフィーチャを解像することや、非周期的構造例えばランダムロジックを計測することができる。しかしながら、電子式計量システムは破壊的であるので、実デバイスの計測に利用することができない。加えて、電子式計量システムは低スループットである。計測時間が計測サイト1個所当たり数秒のオーダとなりかねない。加えて、電子式計量システムはトップダウンイメージングシステムであるので、非常に限定的な三次元計測能力しか提供してくれない。例えば、SEMを利用し重複格子間オーバレイを計測する場合、浸透深度につれて点拡がり関数が増大するため、CD及びEPEを計測する能力が失われる。更なる詳細が、Gutman et al.に対し付与されKLA-Tencor Corporationに譲受された特許文献1に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。一般に、SEMでは、中間的分解能レベルが達成されるものの、その標本を破壊することなく十分な深さまで構造内に浸透することができない。加えて、余儀なき試料帯電がイメージング性能に悪影響を及ぼす。
【0014】
原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型トンネリング顕微鏡(STM)では、原子分解能が達成されうるものの、試料の表面しか探査することができない。加えて、AFM顕微鏡やSTM顕微鏡では長い走査時間が必要となる。
【0015】
透過型電子顕微鏡(TEM)では、高い分解能レベルが達成され且つ任意深さまで探査可能であるが、TEMではその試料の破壊的分断が必須となる。
【0016】
オーバレイ及びEPE計測向け光学及び電子式計量の幾つかの制約を克服するため、絶対レジストレーション(位置揃え)計測技術を利用することができる。正確な並進ステージであり、任意の2パターン間の空間的間隔に等しいレンジを有するものを利用し、フィーチャ間絶対距離を計測すればよい。その結果を利用し、オーバレイ、CD及びEPEの評価を支援することができる。不運なことに、この絶対レジストレーション計測技術では、正確なステージが必要とされ、計測ツールの複雑性が増し、そしてスループットが制限される。更に、この技術は、パターンオーバパターンターゲット上やデバイス構造上ではうまく働き得ない。更なる詳細が、Shchegrov et al.により発明されKLA-Tencor Corporationに譲受された特許文献2に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0017】
まとめると、論理デバイス及び先進DRAM並びに垂直又はプレーナNANDデバイス向けの20ナノメートル未満デバイス製造ノードでの半導体デバイス歩留まりは、膜厚、パターン化ラインのプロファイルパラメータ、オーバレイ誤差及びエッジ配置誤差(EPE)を初めとする多くのパラメータの複雑な関数である。無論、EPEが最も厳しいプロセスウインドウを有しており、CD及びオーバレイの計量及び制御を必要としている。現状では、EPE計測及び多くのデザインルールオーバレイ計測アプリケーション向けの、高スループット光学計量ソリューションが存在していない。加えて、適切な計量の欠如により、制御方式を定めてデバイス歩留まりを改善することが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第10473460号明細書
【文献】国際公開第2019/173171号パンフレット
【文献】米国特許第8941336号明細書
【文献】米国特許第8749179号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/0215940号明細書
【文献】米国特許第7929667号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0110249号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0169861号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0003609号明細書
【文献】米国特許第7826071号明細書
【文献】米国特許第7478019号明細書
【文献】米国特許第10352876号明細書
【文献】国際公開第2016/176502号パンフレット(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
将来の計量アプリケーションで現れる計量関連困難事には、分解能条件の更なる精細化、多パラメータ相関、幾何構造の更なる複雑化、並びに不透明素材使用の増加によるものがある。従って、改善されたオーバレイ及び形状計測方法及びシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
軟X線(SXR)スキャタロメトリ計測データに基づきオーバレイ及びエッジ配置誤差を計測する方法及びシステムが、本願にて提示される。短波長SXR輻射を小さな照明スポットサイズにて集束させることで、デザインルールターゲット、即ち付近のインダイ能動デバイス構造と同じかほぼ同じピッチを有するターゲットや、インダイ能動デバイス構造自体の計測を可能とするものである。オーバレイ計量能力がもたらされるのに加え、本願記載の諸方法及び諸システムでは、計測される構造の幾何パラメータを強くデコリレート(相関解除)することによって、形状パラメータ計測の精度及び正確度が増強される。
【0021】
SXR照明輻射であるので、ターゲットの不透明エリア内及び下層内への浸透が可能である。ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリ計測が、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有するSXR輻射で以て実行される。典型的には、回折限界その他の光学効果により、形状及びオーバレイ計測向けに最小利用可能ターゲットサイズが制御される。SXR照明の波長が比較的短いため、SXRスキャタロメトリ計測を、比較的小さなターゲットエリアを有する計量ターゲットを対象にして実行することができる。
【0022】
SXRが下層に浸透するので、SXRスキャタロメトリ計測では、オーバレイ、CD及びEPEを推定するのに必要な信号に対する感度が比較的高くなりうる。更に、デザインルールターゲットのSXRスキャタロメトリオーバレイ計測では、かなり大きなピッチを有する旧来のオーバレイターゲットのそれに比べ密に、実デバイスオーバレイが表現される。その又はそれらの照明波長が、計測されるデザインルールターゲットの周期よりも短いため、SXRスキャタロメトリでは、デザインルールターゲットを対象としたオーバレイ計測が可能である。結果として、SXR波長での計測により、プロセスデザインルールでのターゲット設計が可能となる。
【0023】
ある種の例では、オーバレイのSXRスキャタロメトリ計測が、実デバイス構造例えばSRAMの直接計測に基づくものとされる。
【0024】
ある種の実施形態では、そのデザインルールターゲットが、それぞれある基本周期を呈する複数個の層を有するものとされる。SXRスキャタロメトリでは、多層デザインルールターゲット計測に際し、下層パターンに対する感度が高くなりうる。それらの実施形態のうちあるものでは、そのデザインルールターゲットの上層がフォトレジスト層とされる。この形態ではSXRスキャタロメトリにより現像後検査(ADI)プロセス監視を行える。
【0025】
ある態様では、SXRスキャタロメトリシステムが、デザインルール計量ターゲットの別々な層間又はインダイ能動デバイス構造間のオーバレイ誤差を、その計測下構造から散乱されてきた非0次回折波をもとに推定するよう構成される。SXR輻射の波長が比較的短いため、非0次回折波、とりわけ±1次回折波により、オーバレイ誤差に対する比較的高い感度がもたらされる。
【0026】
ある種の実施形態では、オーバレイ及び形状パラメータのSXRスキャタロメトリ計測が、同じ計量ターゲットから収集されたSXRスキャタロメトリ計測結果をもとに同時実行される。これによりエッジ配置誤差(EPE)例えばエンドライン短縮、ライン対コンタクト距離等の計測が可能となる。結果として、SXRスキャタロメトリでは、エッジ配置誤差(EPE)計測を、オーバレイ及びCD計測が別々のターゲットを対象にして実行されたときに生じるターゲットバイアスによる誤差無しで、行うことができる。加えて、その同じ計量ターゲットをもとにしたオーバレイ及びCD構造パラメータの同時計測により、計測正確度及びスループットの双方が改善される。
【0027】
ある種の実施形態では、計量ターゲットに備わりそれぞれ逆方向の定格オフセットを有する2個のセルからのSXRスキャタロメトリ計測信号を利用し、オーバレイ誤差が解明される。
【0028】
ある種の例では、SXRスキャタロメトリに依拠する計量に際し、注目パラメータ例えばオーバレイ誤差、形状パラメータ等が決定され、計測で得たSXRスキャタロメトリデータで以て所定の計測モデルを逆解することでその標本の特性が解明される。こうして、計測された散乱X線強度とモデル化結果との間の誤差が最小になるパラメータ化計測モデル値に関し解くことにより、ターゲットパラメータが推定される。
【0029】
ある種の実施形態では、計測ターゲット又はインダイターゲットに係るオーバレイ誤差値が、訓練済の機械学習式計測モデルに依拠し、一通り又は複数通りの非0次回折波における検出強度から直に決定される。これらの実施形態では、訓練済機械学習式モデルにより、オーバレイ誤差がSXR計測データから直に抽出される。
【0030】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリ依拠オーバレイ計測に際し、SXR輻射で以て標本が照明され、発生する諸次回折波の強度が、複数通りの対標本入射角、複数通りの波長又はその双方に関連付けて検出される。更に、その計測ターゲットに係るオーバレイ誤差が、複数の計測インスタンス(実施回)それぞれで、その一通り又は複数通りの非0次回折波それぞれにおける複数通りの強度の変調を踏まえ、決定される。
【0031】
別のある態様では、その実デバイスターゲットが非周期的なものとされる。参照計測を基準としてオーバレイ計測を校正することでSXRスキャタロメトリ技術を適用することができ、それにより、十分な周期性を有するデザインルールターゲットの計測を踏まえて非周期的構造のオーバレイを推定することができる。これにより、計測されるターゲットが周期的又はほぼ周期的であることが必要である、というスキャタロメトリ的計測の制約が実効的に克服される。
【0032】
ある種の実施形態では、多層オーバレイ計量ターゲットを設計する際に、ある層にて生じたある次数の回折波が別の層における別の次数の回折波と強調干渉することとなるよう、別々な層でのピッチを別々なピッチとする。逆に、別々な次数対にて検出される強度計測結果はオーバレイの強調干渉に供されず、形状パラメータにより支配される。即ち、ある種の実施形態によれば、計量オーバレイターゲットを設計する際に独特な格子構造を付加することで、特定の格子次数対にてオーバレイに対する感度を高めることができ、形状パラメータ値の推定に役立つ強度データをもたらすこともできる。
【0033】
ある種の実施形態では、多層オーバレイ計量ターゲットを設計する際に、ある層にて生じたある次数の回折波が別の層における別の次数の回折波と強調干渉することとなるよう、別々の層でのピッチ方向を別々な方向とする。一般に、別々の周期(例.別々の格子ピッチ)、別々のピッチ方向又はそれらの何らかの組合せを有する一組の層では、それぞれ別々の層に係る散乱ベクトルが一組発生する。オーバレイ計量ターゲットは、それら散乱ベクトルのうち所定のサブセットが整列するよう設計される。こうすることで、その所定サブセットの散乱ベクトルに対応する諸層間のオーバレイに対する感度が増強される。
【0034】
以上は概要であり、従って随所に単純化、一般化及び細部省略が含まれているので、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には察せられる通り、この概要は専ら例証的なものであり如何様であれ限定的なものではない。本願記載の装置及び/又はプロセスの他の態様、独創的特徴及び長所については、本願中で説明される非限定的詳細記述にて明らかとされよう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】マイクロ電子チップの静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)エリア10内に作成されたライン構造11のハードマスクパターンを表す図である。
【
図2】
図1記載のライン構造パターンの頂部上に配された下側抗反射被覆(BARC)層12及びレジスト層13を表す図である。
【
図3】本願にて提示される方法例に従い試料の特性を計測する軟X線(SXR)計量ツール100の一実施形態を表す図である。
【
図4】能動フィールド401~404、ゲート405~408及びコンタクト409~420を有するデバイス構造400の上面外観を表す図である。
【
図5A】ある方向に沿った定格オフセット即ち+OFFSETと、オーバレイ誤差OVLと、の和に等しい距離分だけ積層格子構造同士がオフセットしているセルを示す図である。
【
図5B】
図5A記載の定格オフセットとは逆の方向に沿った定格オフセット即ち-OFFSETと、オーバレイ誤差OVLと、の和に等しい距離分だけ積層格子構造同士がオフセットしているセルを示す図である。
【
図6】本願記載の通りモデル当て嵌め分析を踏まえオーバレイを推定するよう構成されたモデル構築兼分析エンジン180を表す図である。
【
図7】ある入射角及びアジマス角のX線輻射ビームにより照明されている計量ターゲット120を有するウェハ101を表す図である。
【
図8】別々の層内のライン151及び152からなる2個の周期的アレイを有する多層計量ターゲット150を示す図である。
【
図9】
図8に描かれている計量ターゲットに関し、ある角度範囲に亘り、簡略化強度モデル及び対応する-2次及び+2次回折波計測値の当て嵌めのシミュレーションを表すプロット170を示す図である。
【
図10】能動デバイスエリア内に作成された能動デバイス構造と、スクライブラインエリア内に作成されたデザインルール計量ターゲットと、を有する半導体ダイを表す図である。
【
図11】本願記載の通り校正済SXR計測結果に基づきオーバレイを推定する方法の例200を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の背景例及びある種の実施形態でありその諸例が添付図面に描かれているものを、詳細に参照する。
【0037】
図1に、マイクロ電子チップの静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)エリア10内に作成されたライン構造11のハードマスクパターンを示す。複雑なレイアウトを有する能動領域の生成は、複数通りのパターニング技術をカットマスクと組み合わせることで行われる。カットマスクはハードマスク層の諸部分を選択的に除去するものであり、基板を諸能動領域の態へとパターニングするのにそのハードマスク層が用いられる。
図2に、
図1記載のライン構造パターンの頂部上に配された下側抗反射被覆(BARC)層12及びレジスト層13を示す。そのレジスト層を用い、ハードマスクパターンのうちレジスト層13の開口14下にある部分を、選択的に除去することができる。
図1記載の通り、ライン構造11のハードマスクパターンはBARC層12により埋め立てられており、レジスト層13の開口14内でさえもそうなっている。
【0038】
このカットマスクプロセスに関し適切な歩留まりを提供するため、形状パラメータ(例.CD、HT、SWA、プロファイルパラメータ等)、膜厚及びオーバレイに関する高信頼計測が求められる。オーバレイの計算で明らかになる通り、これはクワドルプル(四重)パターニングプロセスの先行諸工程に由来する多くの構造パラメータの関数である。そのカットのエッジと隣のライン構造との間のギャップの分布、ひいてはそのプロセスの歩留まりは、それらプロセスパラメータ全ての複雑な相互作用により左右される。
【0039】
また例えば、エッジ配置距離(EPD)及びそれに関連するエッジ配置誤差(EPE)は、デバイスの電気的コンタクトが作成された後に監視及び制御される重要なパラメータである。所望EPD・実EPD間差異のことをEPEと呼ぶ。EPD及びEPEはオーバレイ及びCD誤差双方の関数である。
【0040】
軟X線(SXR)スキャタロメトリ計測データに基づき構造及び素材のオーバレイ及びエッジ配置誤差を実行する方法及びシステムが、提示される。短波長SXR輻射を小さな照明スポットサイズにて集束させることで、デザインルールターゲット、即ち付近のインダイ能動デバイス構造と同じかほぼ同じピッチを有するターゲットや、インダイ能動デバイス構造自体の計測を、可能とするものである。本願提示の諸方法及び諸システムは、機能ダイ内外に所在する二次元及び三次元デザインルール計量ターゲットに適用することができる。オーバレイ計量能力がもたらされるのに加え、本願記載の諸方法及び諸システムでは、計測される諸構造の幾何パラメータを強くデコリレートすることによって、形状パラメータ計測の精度及び正確度が増強される。
【0041】
SXR照明輻射であるので、ターゲットの不透明エリア内及び下層内への浸透が可能である。SXRスキャタロメトリを用い計測可能な幾何パラメータの例には、ポアサイズ、ポア密度、ラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、側壁角、プロファイル、限界寸法、オーバレイ、エッジ配置誤差及びピッチがある。計測可能な素材パラメータの例には、電子密度、元素種別及び組成がある。ある種の例によれば、SXRスキャタロメトリにより、10nm未満のフィーチャ並びに先進的半導体構造例えばスピン注入磁化反転MRAMのうち、幾何パラメータ及び素材パラメータの計測が必要なものの計測が可能となる。
【0042】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリ計測が、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有するSXR輻射で以て実行される。典型的には、回折限界その他の光学効果により、形状及びオーバレイ計測向けに最小利用可能ターゲットサイズが制御される。SXR照明の波長が比較的短いため、SXRスキャタロメトリ計測は、比較的小さなターゲットエリアを有する計量ターゲットを対象にして実行することができる。ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリ計測が、5マイクロメートル未満の最大拡がり寸法を有するエリアに亘る計量ターゲットを対象にして、実行される。ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリ計測が、2マイクロメートル未満の最大拡がり寸法を有するエリアに亘る計量ターゲットを対象にして、実行される。
【0043】
ある種の実施形態では、そのデザインルールターゲットが、それぞれある基本周期を有する複数個の層を有するものとされる。SXRスキャタロメトリでは、多層デザインルールターゲットの計測に際し、下層パターンに対する感度が高くなりうる。それらの実施形態のうちあるものでは、そのデザインルールターゲットの上層がフォトレジスト層とされる。この形態ではSXRスキャタロメトリにより現像後検査(ADI)プロセス監視を行える。
【0044】
SXRが下層に浸透するので、SXRスキャタロメトリ計測に際しては、オーバレイ、CD及びEPEを推定するのに必要な信号に対する感度が比較的高くなりうる。更に、デザインルールターゲットのSXRスキャタロメトリオーバレイ計測では、かなり大きなピッチを有する旧来のオーバレイターゲットのそれに比べて密に、実デバイスオーバレイが表現される。ある種の例では、オーバレイのSXRスキャタロメトリ計測が、実デバイス構造例えばSRAMの直接計測に基づくものとされる。
【0045】
ある態様では、SXRスキャタロメトリシステムが、デザインルール計量ターゲットの別々な層間又はインダイ能動デバイス構造間のオーバレイ誤差を、その計測下構造から散乱されてきた非0次回折波をもとに推定するよう構成される。
【0046】
図3には、少なくとも1個の新規態様に従い試料の特性を計測するSXRスキャタロメトリツール100の一実施形態が描かれている。
図3に示す通り、本システム100を用い、試料101のうち入射照明ビームスポットにより照明される計測エリア102上で、SXRスキャタロメトリ計測を実行することができる。
【0047】
図示実施形態では、計量ツール100がX線照明源110、集束光学系111、ビーム発散制御スリット112及びスリット113を有している。X線照明源110は、SXRスキャタロメトリ計測に適するSXR輻射を生成するよう構成されている。ある種の実施形態では、X線照明源110が多色高輝度大エタンデュ光源とされる。ある種の実施形態では、X線照明源110が、10~5000電子ボルトの範囲内のX線輻射を生成するよう構成される。一般に、十分に高スループットインライン計量が可能な光束レベルにて高輝度SXRを生成しうる好適な高輝度X線照明源は皆、SXR計測向けX線照明の供給用に想定することができる。
【0048】
ある種の実施形態ではX線源に可調モノクロメータに組み込まれ、X線源から届けるX線輻射の波長を様々に選択可能とされる。ある種の実施形態では1個又は複数個のX線源が利用され、計測下試料内への十分な浸透が可能な波長にてそのX線源から確と光が供給される。
【0049】
ある種の実施形態では照明源110が高次高調波生成(HHG)X線源とされる。他のある種の実施形態では照明源110がウィグラ/アンジュレータシンクロトロン輻射源(SRS)とされる。ウィグラ/アンジュレータSRSの例が特許文献3及び4に記載されているので、参照によりそれらの全容を本願に繰り入れることにする。
【0050】
他のある種の実施形態では照明源110がレーザ生成プラズマ(LPP)光源とされる。この種の実施形態のうちあるものでは、そのLPP光源内に、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン及び窒素発光素材のうち何れかが組み込まれる。一般に、好適LPPターゲット素材の選択は、共鳴SXR域における輝度との関連で最適化される。例えば、クリプトンに発するプラズマはシリコンKエッジにて高輝度となる。また例えば、キセノンに発するプラズマは、10~5000eVなるSXR域全体を通じ高輝度となる。
【0051】
LPPターゲット素材選択を、高信頼長寿命光源動作に鑑み最適化してもよい。貴ガスターゲット素材、例えばキセノン、クリプトン及びアルゴンは不活性であり、最低限のデコンタミネーション(汚染除去)処理で以て又はそれ無しで、閉ループ動作の態で再使用することができる。SXR照明源の例が、Khodykin et al.により発明されKLA-Tencor Corporationに譲受された特許文献5に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0052】
ある種の実施形態では、照明源(例.照明源110)により放射される波長が選択可能とされる。ある種の実施形態では、照明源110がLPP光源とされ、それを情報処理システム130により制御することで、一通り又は複数通りの選択スペクトル域での光束が最大化される。ターゲット素材におけるレーザピーク強度によりプラズマ温度、ひいては放射輻射のスペクトル域が制御される。レーザピーク強度は、パルスエネルギ、パルス幅又はその双方を調整することにより変化させる。一例としては、100ピコ秒なるパルス幅がSXR輻射の生成に適している。
図3記載の通り、情報処理システム130は、コマンド信号136を照明源110に送ることで、照明源110にて、照明源110から放射される波長のスペクトル範囲を調整させる。一例としては、照明源110をLPP光源とし、そのLPP光源にてパルス持続時間、パルス周波数及びターゲット素材組成のうち何れかを調整することで、そのLPP光源から放射される波長につき所望のスペクトル範囲を実現することができる。
【0053】
非限定的な例によれば、粒子加速器線源、液体アノード線源、回動アノード線源、静止固体アノード線源、マイクロフォーカス線源、マイクロフォーカス回動アノード線源、プラズマ式線源及び逆コンプトン線源のうち何れかを、X線照明源110として利用することができる。
【0054】
X線源の例としては、固体又は液体ターゲットを砲撃することでX線輻射を誘導放出させるよう構成された電子ビーム源を有するものがある。高輝度液体金属X線照明生成方法及びシステムが、KLA-Tencor Corp.に対し2011年4月19日付で発行された特許文献6に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0055】
X線照明源110は、横方向寸法が有限な(即ちビーム軸に直交する寸法が非0の)線源エリア上でX線放射を発生させる。ある実施形態は、照明源110の線源エリアが、20マイクロメートル未満の横方向寸法であることを特徴とする。ある種の実施形態は、その線源エリアが10マイクロメートル以下の横方向寸法であることを特徴とする。小さな線源サイズとすることで、その試料上の小さなターゲットエリアの照明を高輝度で行うこと、ひいては計測精度、正確度及びスループットを改善することが可能となる。
【0056】
一般に、X線光学系はX線輻射を整形して試料101に向かわせる。ある種の例では、そのX線光学系にて、多層X線光学系を用いX線ビームが平行化又は集束され、1ミリラジアン未満の発散となって試料101の計測エリア102上に至る。ある種の実施形態では、そのX線光学系に、1個又は複数個のX線平行化鏡、X線アパーチャ、X線ビームストップ、屈折型X線光学系、回折光学系例えばゾーンプレート、シュバルツシルド光学系、カークパトリックバエズ光学系、モンテル光学系、ウォルター光学系、鏡面反射型X線光学系例えば楕円面鏡、ポリキャピラリ光学系例えば中空キャピラリX線導波路、多層光学系又はシステム、或いはそれらの何らかの組合せが組み込まれる。更なる詳細が特許文献7に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0057】
図3記載の通り、集束光学系111は、試料101上に所在する計量ターゲット上へと線源輻射を集束させる。その横方向線源寸法が有限であるため、そのターゲット上でのスポットサイズ102が有限サイズとなり、またそのサイズが、その線源のエッジに発する光線116でありビームスリット112及び113で行われる何らかのビーム整形を受けたものにより定まる。
【0058】
ある種の実施形態では、集束光学系111に楕円形集束性光学素子が組み込まれる。
図3記載の実施形態では、その楕円の中心における集束光学系111の倍率が約1とされている。結果として、試料101の表面上に投射された照明スポットのサイズが、照明源のサイズを定格入射角Gによるビーム拡がりとの関連で調整したものと、ほぼ同サイズとなる。
【0059】
更なる態様では、集束光学系111により線源放射が収集され、一通り又は複数通りの離散的な波長又はスペクトル帯が選択され、その選択された光が所望の定格入射角にて試料101上へと集束される。
【0060】
その定格入射角を適宜選択することで、計量ターゲットにつき所望の浸透を達成し、計量ターゲット境界内に保ちつつ信号情報コンテンツを最大化させることができる。硬X線の臨界角は非常に小さいけれども、軟X線の臨界角はかなり大きめである。この付加的な計測柔軟性の結果、SXR計測では、その定格入射角の精密値に対する感度がより小さくなり、その構造内へとより深く探査されることとなる。
【0061】
ある種の実施形態では、集束光学系111に傾斜付多層が組み込まれ、それにより所望波長又波長域が試料101上への投射向けに選択される。ある種の例では、集束光学系111に組み込まれた傾斜付多層構造(例.層又は被覆)によってある波長が選択され、その選択された波長がその定格入射角を含む入射角域に亘り試料101上に投射される。ある種の例では、集束光学系111に組み込まれた傾斜付多層構造によってある波長域が選択され、それら選択された波長がある入射角にて試料101上に投射される。ある種の例では、集束光学系111に組み込まれた傾斜付多層構造によってある波長域が選択され、それら選択された波長がある入射角域に亘り試料101上に投射される。
【0062】
傾斜付多層光学系により、望ましいことに、単層格子構造が過剰に深い場合に生じる光損失を最小化することができる。一般に、多層光学系では反射波長が選択される。選択された波長群のスペクトル帯域幅により、試料101に供給される光束、ひいては計測された諸次回折波中の情報コンテンツが最適化され、その検出器における回折ピーク重複及び角度分散を通じた信号劣化が防止される。加えて、傾斜付多層光学系を利用し発散を制御することができる。各波長における角度発散が、その検出器における最小空間重複及び光束との関連で最適化される。
【0063】
ある種の例によれば、傾斜付多層光学系での波長選択によって、個別素材界面又は構造寸法に由来する回折信号の情報コンテンツ及びコントラストを増強することができる。例えば、それら選択波長を、元素固有共鳴域(例.シリコンKエッジ、窒素、酸素Kエッジ等)に亘るよう選択することができる。加えて、これらの例によれば、その照明源をチューニングすることで、その選択スペクトル域における光束を最大化させることもできる(例.HHGスペクトルチューニング、LPPレーザチューニング等)。
【0064】
ある種の実施形態では、集束光学系111に、それぞれ楕円的表面形状を有する複数個の反射性光学素子が組み込まれる。各反射性光学素子が、基板と、別々の波長又は別々の範囲の波長群を反射するようチューニングされた多層被覆とを、有するものとされる。ある種の実施形態では、それぞれ別々の波長又は別々の範囲の波長群を反射する複数個(例.2~5個)の反射性光学素子が、個々の入射角にて配列される。更なる実施形態では、それぞれ別々の波長又は別々の範囲の波長群を反射する複数組(例.2~5組)の反射性光学素子が、別々の定格入射角にて配列される。ある種の実施形態では、それら複数組の反射性光学素子により、計測中に試料101上へと照明光が同時投射される。他のある種の実施形態では、それら複数組の反射性光学素子により、計測中に試料101上へと照明光が順次投射される。これらの実施形態では、能動シャッタ又はアパーチャを利用することで、試料101上へと投射される照明光が制御される。
【0065】
ある種の実施形態では、同じ計量エリア上に投射される波長、AOI、アジマス又はそれらの何らかの組合せの範囲が、その集束光学系に備わる1個又は複数個の鏡素子を能動位置決めすることによって調整される。
図3記載の通り、情報処理システム130は、コマンド信号137をアクチュエータシステム115に送ることで、アクチュエータシステム115により、集束光学系111に備わる光学素子のうち1個又は複数個の素子の位置、アライメント又はその双方を調整させ、ひいては試料101上に投射される波長、AOI、アジマス又はそれらの何らかの組合せにつき所望の範囲を達成させる。
【0066】
一般に、入射角を波長毎に選択することで、その計測下計量ターゲットによる照明光の吸収及び浸透を最適化することができる。多くの例では多層構造が計測されるので、入射角の選択によって、その所望注目層に係る信号情報を最大化することができる。オーバレイ計量の例では、その又はそれらの波長及び入射角の選択によって、前層からの散乱と現層からのそれとの間の干渉に由来する信号情報を、最大化することができる。加えて、アジマス角の選択により信号情報コンテンツを最適化することもできる。加えて、アジマス角の選択により、その検出器における回折ピークの角度分離を確保することができる。
【0067】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリシステム(例.計量ツール100)に1個又は複数個のビームスリット又はアパーチャが組み込まれ、それによって、試料101上に入射する照明ビーム114が整形され、また照明光のうち、さもなければ計測下計量ターゲットを照明していたであろう部分が選択的に阻止される。1個又は複数個のビームスリットによりビームのサイズ及び形状が定まるので、そのX線照明スポットをその計測下計量ターゲットのエリア内にフィットさせることができる。加えて、1個又は複数個のビームスリットにより照明ビーム発散を画定し、その検出器上における諸次回折波の重複を最小化させることができる。
【0068】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリシステム(例.計量ツール100)に1個又は複数個のビームスリット又はアパーチャが組み込まれ、それによって、計測下計量ターゲットを同時照明する一組の照明波長が選択される。これらの実施形態では、1個又は複数個のスリットが、複数通りの照明波長を含む照明を通すように構成される。一般に、計測下計量ターゲットの同時照明により、好ましくも、信号情報及びスループットを増大させることができる。とはいえ、実際には、その検出器における諸次回折波の重複によって、照明波長の範囲が制限される。ある種の実施形態では、1個又は複数個のスリットが、別々の照明波長を順次通すように構成される。ある種の例では、ビーム発散が大きめなときの同時照明に比べ順次照明に係る信号対雑音比が高めになるため、大きめなビーム発散での順次照明にして高めのスループットが提供される。計測が順次実行される場合、諸次回折波の重複の問題は論点にならない。これにより計測柔軟性が高まり信号対雑音比が改善される。
【0069】
図3に示すビーム発散制御スリット112は集束光学系111・ビーム整形スリット113間ビーム路に所在している。ビーム発散制御スリット112は、計測下試料に供給される照明の発散を制限する。ビーム整形スリット113はビーム発散制御スリット112・試料101間ビーム路に所在している。ビーム整形スリット113は入射ビーム114を更に整形し、入射ビーム114の照明波長(群)を選択する。ビーム整形スリット113の在処はそのビーム路上、試料101の直前である。ある種の実施形態では、ビーム整形スリット113を構成するスリット群を試料101のすぐ近くに所在させることで、有限な線源サイズにより定まるビーム発散を原因とする入射ビームスポットサイズの拡大を最小化させる。
図3記載の通り、情報処理システム130は、コマンド信号138をビーム発散制御スリット112に送ることで、そのビーム発散制御スリット112に備わる能動素子群により、ビーム発散制御スリット112に備わる光学素子のうち1個又は複数個の素子の位置、アライメント又はその双方を調整させ、ひいては所望のビーム発散を達成する。同様に、
図3記載の通り、情報処理システム130は、コマンド信号139をビーム整形スリット113に送ることで、そのビーム整形スリット113に備わる能動素子群により、ビーム整形スリット113に備わる光学素子のうち1個又は複数個の素子の位置、アライメント又はその双方を調整させ、ひいては試料101上への所望形状ビームの投射を達成する。
【0070】
ある種の実施形態では、ビーム整形スリット113が、複数個の独立駆動型ビーム整形スリットを有するものとされる。ある実施形態では、ビーム整形スリット113が4個の独立駆動型ビーム整形スリットを有するものとされる。それら4個のビーム整形スリットにより、入来ビームのうち一部分が効果的に阻止され、箱状照明断面を有する照明ビーム114が生成される。
【0071】
ビーム整形スリット113に備わるスリット群は、散乱が最小化され且つ入射輻射が効果的に阻止される素材で構成されている。素材例としては単結晶素材、例えばゲルマニウム、砒化ガリウム、燐化インジウム等がある。通常、スリット素材を鋸断するのではなく結晶方向に沿い劈開させることで、構造境界を跨ぐ散乱を最少化することができる。加えて、そのスリットが、入来輻射とそのスリット素材の内部構造との間の相互作用で生じる散乱が最小量となるよう、入来ビームを基準として向き決めされている。それら結晶が、そのスリットの片側におけるX線ビームの完全な阻止を期し、高密度素材(例.タングステン)製の各スリットホルダに装着されている。
【0072】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリシステムの集束光学系によって、照明源の像が計測下試料上へと、少なくとも5なる縮小率(即ち0.2以下の拡大率)で以て投射される。ある種の実施形態では、本願記載のSXRスキャタロメトリシステムにて、横方向寸法が20マイクロメートル以下であること(即ち線源サイズが20マイクロメートル以下であること)を特徴とする線源エリアを有するSXR照明源が利用される。ある種の実施形態では、少なくとも5なる縮小率を有する(即ちその線源サイズよりも5倍小さな線源像をウェハ上に投射する)集束光学系を利用し、4マイクロメートル以下の入射照明スポットサイズで以て試料上へと照明が投射される。
【0073】
ある種の実施形態では、照明源110が、10マイクロメートル以下の線源サイズを有するLPP光源とされ、集束光学系111が、約10なる縮小率を有するものとされる。これによって、SXRスキャタロメトリツールにより、1~2マイクロメートルの寸法を有する計量ターゲット上へと照明光を集束させることが可能となる。1~2マイクロメートルの寸法を有するターゲットを計測しうる能力があるので、専用計量ターゲットに委ねるウェハエリアが減ることとなる。加えて、1~2マイクロメートルの寸法を有するターゲットを計測しうる能力があるので、専用計量ターゲットではなくデバイス構造の直接計測が可能となる。デバイス構造を直に計測することで、ターゲット対デバイスバイアスが解消される。これによって計測品質がかなり改善される。加えて、インダイターゲットの計測によりダイ内パラメータ変動の解明が可能となる。注目パラメータの例としては限界寸法、オーバレイ及びエッジ配置誤差がある。
【0074】
X線検出器119は、試料101から散乱されてきたX線輻射118を集め、試料101の特性のうち入射X線輻射に対し敏感な特性を示す出力信号135をSXRスキャタロメトリ計測方式に従い生成する。ある種の実施形態では、試料位置決めシステム140により試料101を所在決め及び向き決めしつつX線検出器119により散乱X線118を集めることで、散乱X線の角度分解が行われる。
【0075】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリシステムに、広いダイナミックレンジ(例.105超のそれ)を有する1個又は複数個の光子計数型検出器が組み込まれる。ある種の実施形態では、単一の光子計数型検出器により、検出された光子の位置及び個数が検出される。
【0076】
ある種の実施形態では、そのX線検出器により一通り又は複数通りのX線光子エネルギが分解され、その試料の特性を示す信号がX線エネルギ成分毎に生成される。ある種の実施形態では、そのX線検出器119が、CCDアレイ、マイクロチャネルプレート、フォトダイオードアレイ、マイクロストリップ比例計数器、ガス封入型比例計数管、シンチレータ及び蛍光物質のうち何れかを有するものとされる。
【0077】
この構成では、検出器内X線光子相互作用が、画素位置及び計数値に加えエネルギにより識別される。ある種の実施形態では、そのX線光子相互作用が、そのX線光子相互作用のエネルギを所定の上閾値及び所定の下閾値と比較することによって識別される。ある実施形態では、その情報が出力信号135を介し情報処理システム130へと送られ、更なる処理及び格納に供される。
【0078】
複数通りの照明波長による周期的ターゲットの同時照明がもとで生じる回折パターンは、回折に際する角度分散により検出器平面にて分離されることとなる。これらの実施形態では積分型検出器が利用される。回折パターンがエリア検出器、例えば真空コンパチブルな背面CCD又はハイブリッド画素アレイ検出器を用い計測される。角度標本化がブラッグピーク積分に関し最適化される。画素レベルモデル当て嵌めを利用する場合は、角度標本化が信号情報コンテンツに関し最適化される。標本化速度は、0次信号の飽和が防止されるように選択される。
【0079】
ある種の例によれば、望ましいことに、広範囲の波長、入射角及びアジマス角にて計測を実行することで、計測パラメータ値の精度及び正確度を高めることができる。この手法では、分析に利用可能なデータセットの個数及び多様性を増強することによって、パラメータ間相関が低減される。
【0080】
回折輻射強度はウェハ表面法線を基準としたX線入射角及び照明波長の関数であり、その計測結果が収集される。複数の諸次回折波に含まれている情報は、通常、考慮下にある各モデルパラメータ間でユニークである。即ち、X線散乱により、注目パラメータ値に関する推定結果が、小誤差及び低パラメータ相関で以てもたらされる。
【0081】
ある種の実施形態では、計量ツール100が、ウェハ101を固定的に支持しており試料位置決めシステム140に結合されているウェハチャック103を、有するものとされる。試料位置決めシステム140は、照明ビーム114を基準として6自由度に亘り試料101を能動的に位置決めするよう構成されている。ある例では、情報処理システム130により、試料101の所望位置を指図するコマンド信号(図示せず)が試料位置決めシステム140に送られる。これに応じ、試料位置決めシステム140にて、試料位置決めシステム140に備わる様々なアクチュエータに対するコマンド信号が生成され、試料101の所望の位置決めがそれらにより達成される。
【0082】
更なる態様では、SXRスキャタロメトリシステムを利用し、散乱光の一通り又は複数通りの次数の回折波に依拠して試料の特性(例.構造パラメータ値)が判別される。
図3記載の通り、計量ツール100は情報処理システム130を有しており、それを利用することで、検出器119により生成された信号135を捕捉することができ且つその捕捉した信号に少なくとも部分的に基づきその試料の特性を判別することができる。
【0083】
計測される構造の周期よりも照明波長(群)の方が短いため、SXRスキャタロメトリではデザインルールターゲットに対するオーバレイ計測が可能となる。これにより、それらデザインルールターゲットより大きなものを対象にしてオーバレイが計測される既存テクノロジに勝る、顕著な利益がもたらされる。SXR波長の使用により、プロセスデザインルールでのターゲット設計、即ち「非0オフセット」なしでのそれが可能になる。非0オフセットの低減は、パターン配置誤差が低減されたこと及びプロセスがそのデバイスピッチでのパターニング向けに最適化されたことの結果である。パターン配置誤差は、そのパターンピッチにより進められる製造プロセスにより左右される。パターンピッチが縮小されるとパターン配置誤差も減少する。更に、製造プロセスがそのデバイスピッチにつき最適化されているため、デバイス特有パターン(例.デバイス様パターン)の局所的非対称変形が減少する。
【0084】
SXR計測用オーバレイ計量ターゲットは、一次元的周期的アレイを有するものとも、二次元的周期的アレイを有するものともすることができる。一次元的ターゲットでは、入射面に沿い大きな角度発散が現れて光束及びスループットが増大する。二次元的ターゲットでは、回折の角度分散が2本の面内軸で同等でない。即ち、入射面に対し平行な標本方向に関しては、付加的な超周期をもたせることができる。これらの例では、そのウェハを回動させ、同じターゲットに対し単一のサブシステムにより順次直交計測を実行するのが、有利であろう。
【0085】
ある態様では、SXRスキャタロメトリ信号を利用し、非0次回折波に基づきオーバレイ誤差が解明される。SXR輻射の波長が比較的短いため、非0次回折波、とりわけ±1次回折波により、比較的高い感度がオーバレイ誤差に対して提供される。
【0086】
一般に、ターゲット設計及びそれに関連する計測アルゴリズムは、利用するのが0次スキャタロメトリかそれとも1次スキャタロメトリかにより違ってくる。0次スキャタロメトリでは、計量ターゲットの各計測エリア即ちセルから、波長、入射角及びアジマス角の関数たる単一の0次信号がもたらされる。他方の1次スキャタロメトリでは、計量ターゲットの各計測エリア即ちセルから、波長、入射角及びアジマス角の関数たる2個の信号、即ち+1次回折信号及び-1次回折信号がもたらされる。即ち、ある種の例によれば、1次スキャタロメトリに依拠し、より少数のセルだけで十分な信号情報を抽出して、注目パラメータ例えばオーバレイ又は形状パラメータを解明することができる。これらの例では小さめな計量ターゲットを利用することができる。実効的なものとするには、1次スキャタロメトリでは比較的高い瞳均一性が必要とされる。瞳不均一性の影響を低減するための校正方法論が、Mieher et al.により発明されKLA-Tencor Corporationに譲受された特許文献8にて提示されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることとする。
【0087】
更なる態様では、0次、非0次又はそれらの何らかの組合せのSXRスキャタロメトリ信号を利用し、計測下構造を特徴付ける形状パラメータ、例えばCD、H、SWA、プロファイルパラメータ等の値が解明される。ある種の実施形態では、オーバレイのSXRスキャタロメトリ計測と形状パラメータのそれとが、同じ計量ターゲットから収集されるSXRスキャタロメトリ計測結果をもとに同時実行される。これによりエッジ配置誤差(EPE)、例えばエンドライン短縮、ライン対コンタクト距離等の計測が可能となる。結果として、SXRスキャタロメトリによりエッジ配置誤差(EPE)計測が可能となり、オーバレイ及びCD計測の計測が別々のターゲットを対象にして実行されたときに生じるターゲットバイアスを原因とした誤差もない。加えて、同じ計量ターゲットをもとにしたオーバレイ及びCD構造パラメータの同時計測により、計測正確度及びスループットの双方が改善される。
【0088】
ある例では、層間エッジ配置誤差が、本願記載のオーバレイ計測と、複数通りの別々な入射角及び複数通りの別々なアジマス角にて計測された各次X線回折波における強度計測結果に基づく形状パラメータ計測とを踏まえ、推定される。エッジ配置誤差(EPE)は、オーバレイ誤差と形状パラメータ(例.CD)誤差の組合せである。ある例では、EPEが、CD値(例.
図8記載の幅W)・オーバレイ値(例.
図8記載のオーバレイD)間の差異とされる。即ち、本願記載の情報処理的に効率的なオーバレイ計測を利用すること及び同じ強度計測データを用いCDパラメータ値を推定することで、EPEの計測がストリームライン化される。
【0089】
図4に、能動フィールド401~404、ゲート405~408及びコンタクト409~420を有するデバイス構造400の上面外観を示す。
図4にはゲート407・コンタクト418間エッジ配置距離EPD
1が描かれている。
図4には、ゲート408・コンタクト418間エッジ配置距離EPD
2や、ゲート406・コンタクト414間エッジ配置距離EPD
3も描かれている。高いデバイス歩留まりを確保するためには、これらエッジ配置距離を注意深く制御する必要がある。これらのエッジ配置距離のうち何れかに係るエッジ配置誤差が大き過ぎると、そのデバイスが不具合となる。
図4描出の通り、オーバレイ誤差及びCD誤差の双方がEPEに寄与する。例えば、そのコンタクトに係る諸層がゲートに係る諸層に対し誤整列していると、EPEが発生する。同様に、それらコンタクト構造に係るCDが定格寸法から外れていると、EPEが発生する。例えばコンタクト413及び416は大き過ぎる。その結果が、各コンタクトとそれに対応するゲート構造との間の重複であり、またデバイス不具合である。更に、計測される構造それぞれの三次元形状が一役を買う。事例によっては、側壁角を無視しえないことがある。そうした例のうちある種のものでは、単一のCD寸法ではなく上部CD寸法及び下部CD寸法により、構造が特徴付けされる。
【0090】
EPE計測に関する付加的な詳細が、Shchegrov et al.による特許文献9に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることとする。
【0091】
ある種の実施形態では、計量ターゲットに備わりそれぞれ逆方向の定格オフセットを有する2個のセルに発するSXRスキャタロメトリ計測信号を利用し、オーバレイ誤差が解明される。
【0092】
図5Aに、別の格子構造162Aの上方に積層された格子構造161Aを有するセル160Aを示す。格子構造161A及び162Aは同じピッチを有しているが、格子構造161Aは格子構造162Aからオフセットしており、その距離が、ある方向の定格オフセット即ち+OFFSETと、オーバレイ誤差OVLと、の和に等しくなっている。
【0093】
図5Bに、別の格子構造162Bの上方に積層された格子構造161Bを有するセル160Bを示す。格子構造161B及び162Bは同じピッチを有しているが、格子構造161Bは格子構造162Bからオフセットしており、その距離が、計量ターゲット160Aに比し逆方向の定格オフセット即ち-OFFSETと、オーバレイ誤差OVLと、の和に等しくなっている。定格上、計量ターゲット160A及び160Bは同じものであるが、下側格子構造に対する上側格子構造のオフセット方向が逆となっている。
【0094】
計測ターゲットに係るオーバレイ誤差OVLの値は、セル160Aに係る+1次回折波検出強度・-1次回折波検出強度間差異と、セル160Bに係る+1次回折波検出強度・-1次回折波検出強度間差異と、に基づき定まる。ある例では、情報処理システム130が、等式(1)により表されている通り差分信号D
1及びD
2を求める;但し、I
A
+1はセル160Aからの+1次の計測強度、I
A
-1はセル160Aからのー1次の計測強度、I
B
+1はセル160Bからの+1次の計測強度、I
B
-1はセル160Bからのー1次の計測強度である。
【0095】
差分信号値・実オフセット間関係が線形であると仮定した上で、等式(2)により表されている通りそれら差分信号から直にオーバレイ誤差を求める;但し、OFFSETは前述した定格オフセット距離の大きさである。
オーバレイ誤差=OFFSET((D1+D2)/(D1-D2)) (2)
【0096】
ある種の例では、SXRスキャタロメトリ依拠計量に際し、計測SXRスキャタロメトリデータで以て所定の計測モデルを逆解することにより、その標本を特徴付ける注目パラメータ、例えばオーバレイ誤差、形状パラメータ等を求める。その逆解方法としては、これに限られるものではないがモデル依拠回帰、トモグラフィ、機械学習又はそれらの何らかの組合せがある。こうしてパラメータ化計測モデルの値に関し解くことにより、計測された散乱X線強度とモデル化結果との間の誤差が最小になるターゲットパラメータが推定される。
【0097】
ある種の実施形態では、情報処理システム130が、試料の被計測構造の構造モデル(例.幾何モデル、素材モデル又は幾何素材複合モデル)を生成し、その構造モデルをもとにして少なくとも1個の幾何パラメータを含むSXR応答モデルを生成し、そのSXR応答モデルで以てSXR計測データの当て嵌め分析を実行することで少なくとも1個の試料パラメータ値を解明するよう、構成される。その分析エンジンを用い、シミュレーションで得たSXR信号を計測データと比較することで、その標本の幾何特性及び素材特性例えば電子密度の決定を行うことができる。
図3記載の実施形態では、情報処理システム130がモデル構築兼分析エンジンとして構成され、本願記載の通りモデル構築兼分析機能を担うようそのエンジンが構成される。
【0098】
図6は、情報処理システム130により実現されるモデル構築兼分析エンジン180の例を描いた図である。
図6記載の通り、モデル構築兼分析エンジン180は、試料の被計測構造の構造モデル182を生成する構造モデル構築モジュール181を有している。構造モデル182は、SXR応答関数構築モジュール183にて入力として受け取られる。SXR応答関数構築モジュール183は、その構造モデル182に少なくとも部分的に依拠し、SXR応答関数モデル184を生成する。ある種の例では、そのSXR応答関数モデル184が、構造ファクタとしても知られるX線フォームファクタ
【数1】
に基づくものとされる;但し、Fはフォームファクタ、qは散乱ベクトル、ρ(r)は球座標におけるその試料の電子密度である。そのX線散乱強度が更に、
【数2】
により与えられる。SXR応答関数モデル184は、当て嵌め分析モジュール185にて入力として受け取られる。当て嵌め分析モジュール185は、そのモデル化SXR応答をそれに対応する計測データ135と比較することで、その試料の幾何特性及び素材特性を求める。
【0099】
ある種の例では、実験データに対するモデル化データの当て嵌めが、χ二乗値を最小化することで達成される。例えば、SXR計測に関しては、χ二乗値を
【数3】
と定義することができる。
【0100】
但し、Sj
SXR experimentは「チャネル」jにて計測されたSXR信号135であり、指数jにより一組のシステムパラメータ、例えば回折次数、エネルギ、角度座標等が記述されている。Sj
SXR model(v1,…,vL)はその「チャネル」jに係るモデル化SXR信号Sjを一組の構造(ターゲット)パラメータv1,…,vLに関し見積もったものであり、それらのパラメータにより幾何(CD、側壁角、オーバレイ等)及び素材(電子密度等)が記述されている。σSXR,jは第jチャネルに係る不確定性である。NSXRはそのX線計量におけるチャネルの総数である。Lはその計量ターゲットを特徴付けるパラメータの個数である。
【0101】
等式(5)では、別々のチャネルに係る不確定性の間に相関がないことが仮定されている。別々のチャネルに係る不確定性が相関している例では、それら不確定性の間の共分散を計算すればよい。それらの例では、SXR計測に係るχ二乗値を
【数4】
と表すことができる。
【0102】
但し、VSXRはSXRチャネル不確定性の共分散行列であり、Tは転置を表している。
【0103】
ある種の例では、当て嵌め分析モジュール185にて、SXR応答モデル184で以てSXR計測データ135に対する当て嵌め分析を実行することにより、少なくとも1個の試料パラメータ値が解明される。ある種の例ではχSXR
2が最適化される。
【0104】
前述の通り、SXRデータの当て嵌めはχ二乗値の最小化により達成される。とはいえ、一般に、SXRデータの当て嵌めを他の関数により達成することもできる。
【0105】
SXR計量データの当て嵌めは、注目幾何及び/又は素材パラメータに対し感度を呈するどの種類のSXRテクノロジでも有益である。試料パラメータは、その試料とのSXRビーム相互作用を記述する適正なモデルが用いられる限り、決定論的なもの(例.CD、SWA等)でも統計的なもの(例.rms側壁高粗さ、粗さ相関長等)でも構わない。
【0106】
一般に、情報処理システム130は、リアルタイム限界寸法決め(RTCD)を利用しモデルパラメータにリアルタイムアクセスするよう構成されるが、事前算出モデルのライブラリにアクセスして試料101に係る少なくとも1個の試料パラメータ値を求めるのでもよい。一般に、ある種の形態のCDエンジンを、試料の割当CDパラメータと、被計測試料に係るCDパラメータと、の間の差異を評価するのに用いることができる。試料パラメータ値算出方法及びシステムの例が、KLA-Tencor Corp.に対し発行された2010年11月2日付特許文献10に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0107】
ある種の例では、モデル構築兼分析エンジン180にて、フィードサイドウェイ分析、フィードフォワード分析及びパラレル分析の何らかの組合せにより、被計測パラメータの正確度が改善される。フィードサイドウェイ分析とは、同じ試料の別々なエリア上で複数個のデータセットを採取し、第1データセットから求めた共通パラメータを第2データセット側に引き渡して分析に供することである。フィードフォワード分析とは、別々の試料上でデータセットを採取し、ステップ的コピーイグザクトパラメータフィードフォワード法を用い爾後の分析に共通パラメータを先渡しすることである。パラレル分析とは、複数個のデータセットに対する非線形当てはめ方法論の並列的又は同時的適用であり、当て嵌め中に少なくとも1個の共通パラメータが結合されるもののことである。
【0108】
複数ツール兼構造分析とは、フィードフォワード、フィードサイドウェイ又はパラレル分析であり、回帰に依拠するもの、ルックアップテーブルに依拠するもの(即ち「ライブラリ」マッチング)、或いは他の複数データセット当て嵌め手順に依拠するもののことである。複数ツール兼構造分析方法及びシステムの例が、KLA-Tencor Corp.に対し発行された2009年1月13日付特許文献11に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0109】
他の更なる態様では、1個又は複数個の注目パラメータの初期推定値が、計測ターゲットに対し入射X線ビームをある単一の向きにして実行されたSXR計測を踏まえ、決定される。それら初期推定値は、その注目パラメータの開始値として、複数通りの向きでのSXR計測により収集された計測データによる計測モデルの回帰用に、実装される。このようにすると、注目パラメータの密推定値が比較的少量の情報処理労力で以て求まり、またその密推定値をかなり大きなデータセットに亘る回帰用の開始点として実装することで、注目パラメータの精緻化推定値がより少量の総情報処理労力で以て得られることとなる。
【0110】
ある種の実施形態では、計測ターゲット又はインダイターゲットに係るオーバレイ誤差値が、訓練済機械学習式計測モデルに依拠し、一通り又は複数通りの非0次回折波における検出強度から直に決定される。これらの実施形態では、訓練済機械学習式モデルにより、SXR計測データからオーバレイ誤差が直に抽出される。
【0111】
ある種の実施形態によれば、そのSXR計量システムにより計測されるターゲットが周期的なものでなくても、その訓練済機械学習式計測モデルにより、SXR計測結果からオーバレイ誤差を抽出することができる。
【0112】
ある種の実施形態では、その機械学習式計測モデルが、既知値のオーバレイ誤差を有する実験計画法(DOE)ターゲットから収集されたSXR計測データに基づき、訓練される。ある種の実施形態では、それらターゲットに係るオーバレイ誤差が高信頼参照計量システム、例えば電子ビーム式計量システム、走査型電子顕微鏡等により計測される。ある種の実施形態では、それらDOEターゲットがデザインルール計量ターゲットとされる。ある種の実施形態では、それらDOEターゲットがインダイ能動デバイス構造とされる。
【0113】
ある種の例では、その機械学習式計測モデルがニューラルネットワークモデル、サポートベクタマシンモデル等とされる。付加的な詳細が、Shchegrov et al.に対し付与されKLA-Tencor Corporationに譲受された特許文献12に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0114】
他のある種の実施形態では、その機械学習式計測モデルが、実験計画法(DOE)ターゲット例えば周期的ターゲットから収集されたSXR計測データと、その計測されたDOEターゲットのすぐ近くにあるインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差の既知値とに基づき、訓練される。これらの実施形態では、それらインダイ能動デバイス構造に係るそのオーバレイ誤差が、高信頼参照計量システム例えば電子ビーム式計量システム、走査型電子顕微鏡等により計測される。こうして訓練された機械学習式計測モデルにより、付近のデザインルール計量ターゲットから収集されたSXRスキャタロメトリ計測データに基づき、インダイ能動デバイス構造のオーバレイ誤差が推定される。
【0115】
図10には、能動デバイスエリア191及びその能動デバイスエリアを取り巻くスクライブラインエリア192を有する、半導体ダイ190が描かれている。スクライブラインエリア192内には複数個のデザインルール計量ターゲット、例えばデザインルールターゲット193が作成されている。同様に、能動デバイスエリア191内には複数個の能動デバイス構造、例えば能動デバイス構造194が作成されている。ある種の実施形態では、訓練済機械学習式計測モデルにより、デザインルールターゲット193のSXRスキャタロメトリ計測を踏まえ、能動デバイス構造194に係るオーバレイ誤差が推定される。
【0116】
機械学習式計測モデルに関する付加的な詳細が、Shchegrov et al.による特許文献9に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0117】
他のある種の実施形態では、その機械学習式計測モデルが、実験計画法(DOE)ターゲットから収集されたSXR計測データと、そのSXR計測データに基づき決定された形状パラメータ値とに基づき、訓練される。ある種の例では、SXR計測データを利用し、前述の通り形状パラメータ(例.CD、H、SWA、プロファイルパラメータ等)の値が推定される。これらの形状パラメータ値及びSXR計測データ、並びに被計測DOEターゲットのすぐ近くにあるインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差の既知値を利用し、その機械学習式計測モデルが訓練される。この付加的構造情報により訓練済モデルの正確度が改善される。
【0118】
ある種の実施形態では、SXRスキャタロメトリ依拠オーバレイ計測に際し、SXR輻射で以て標本が照明され、生じる諸次回折波の強度が、その標本に対する複数通りの入射角、複数通りの波長又はその双方と関連付けて検出される。更に、その計測ターゲットに係るオーバレイ誤差が、複数の計測インスタンスそれぞれにてその一通り又は複数通りの非0次回折波それぞれにおける複数通りの強度の変調を踏まえ求められる。
【0119】
これらの実施形態では、計量ターゲットのSXRスキャタロメトリ計測が、複数通りの別々な入射角及びアジマス角にて実行される。
図7に、計量ターゲット120を有するウェハ101を示す。X線照明源が、ある入射角AOI及びアジマス角AzのX線輻射ビーム114で以て計量ターゲット120を照明している。その入射X線輻射ビームの入射角及びアジマス角は、試料101に固定されている座標系{
BX,
BY,
BZ}を基準として定義される。
図7記載の通り、計量ターゲット120は、
BY方向に延びており
BX方向に沿い周期的な格子構造を有している。入射角は、
BZ軸を基準とした、
BX
BZ平面上への入射ビーム投射角として定義される。その意味で、入射角変化を、ウェハ101の平面内にある
BY軸周りでのウェハ101の回動と見ることができる。同様に、アジマス角は、
BX軸を基準とした、
BX
BY平面上への入射ビーム投射角として定義される。その意味で、アジマス角変化を、ウェハ101に直交する
BZ軸周りでのウェハ101の回動と見ることができる。
【0120】
図3描出の通り、計量ツール100は、SXRスキャタロメータ(散乱計)を基準としてある広範囲の面外角度方向に亘り試料101を整列させ且つ試料101を向き決めするよう構成された、試料位置決めシステム140を有している。言い換えれば、試料位置決めシステム140は、試料101の表面に対し面内整列しておりまたそれに対し直交している1本又は複数本の回動軸周りである広い角度範囲に亘り試料101を回動させるよう、構成されている。この構成では、試料101の表面上の各個所を、試料101に対し固定されている座標系{
BX,
BY,
BZ}の諸軸周りで、ある回動範囲に亘り計測に利用することができる。
【0121】
図3記載の実施形態では、単一の入射X線輻射ビームが描かれている。ウェハに対するその単一ビームの向きは、単一の定格入射角及びアジマス角により定義される。単一の照明ビームを利用する諸実施形態では、複数通りの別々な入射角及びアジマス角に係るX線回折計測が順次実行される。とはいえ、一般に、複数通りの別々な入射角及びアジマス角に係るX線回折計測が同時実行されることもありうる。ある種の実施形態によれば、1個又は複数個のX線源及び一組又は複数組のX線光学系を利用し、その計量ターゲットが、入射角及びアジマス角が離散的か連続的かを問わず複数通りの方向から同時照明されるようにすることができる。
【0122】
計量ターゲットの別々な層内にある複数個の構造の垂直方向積層は、複数通りの別々な入射角及び複数通りの別々なアジマス角にて計測が行われる場合、X線回折信号に対し強く且つユニークな仕方で影響してくる。即ち、オーバレイ及び形状パラメータの値を、それら計測強度に基づき推定することができる。
【0123】
これらの実施形態では、オーバレイ推定に際し、一組の基底関数又はその比により低周波形状変調が記述され且つそのオーバレイを示すパラメータを含むアフィン円関数により高周波オーバレイ変調が記述されるよう、共通次の強度変調のパラメータ記述が行われる。
【0124】
ある例では、そのパラメータ記述が、標準的オーバレイ問題の分析によって導出される。
図8には2個の周期的アレイを有する多層計量ターゲット150が示されており、それら周期的アレイがライン151,152で構成されていてそれぞれ周期Pを有している。それらラインアレイは距離Sで以て垂直方向に分離されており、またそれらラインアレイがオーバレイ距離D分だけオフセットしている。各ラインアレイの高さ,幅は、順にパラメータH,Wにより与えられる。
【0125】
加えて、上側ラインの電子密度はパラメータδ0、下側ラインのそれはδ1により与えられる。その計量ターゲット150が、波長λを有するX線輻射ビームによって照明される。この入射X線輻射ビームは、入射角θ及びアジマス角φにてその計量ターゲット上に射突する;但し、その光線の投射方向がその格子の周期方向に対し垂直な場合にφ=0であるとする。そうした格子に関しては、波数がk0=2π/λとして定義され、その1D周期方向における格子数がkx=2π/Pとして定義される;但しmは次数である。入射角はそのウェハに対し直交する軸から測られる。
【0126】
その回折強度の分析によって、等式(7)に表される通り、各次数の強度の近似値が得られる。
【数5】
【0127】
等式(7)は、入射角θを変化させることだけでなくアジマス角φを変化させることによっても次数別強度の変調が生じることを表している。言い換えれば、入射角を変化させることによって、BXに揃う格子周期次元の投射からBZに揃う方向への、諸次回折波の変調を期待することができる。加えて、アジマス角を変化させることによって、BXに揃う格子周期次元の投射からBYに揃う方向への、諸次回折波の変調を期待することができる。加えて、入射角変化とアジマス角変化とを協調させることで、そのオーバレイ信号を際立たせることができる。例えば、アジマス角を変化させることで、入射角変化による形状及びオーバレイ変調を、スケーリングファクタcos(φ)分だけ低速化させることができる。そして、等式(7)は、形状パラメータW及びHによる次数別強度の変調が、通常、等式(7)の最終項により記述されるオーバレイ変調に比し低空間周波数のものであることをも、表している。
【0128】
形状による変調の空間周波数が比較的低いので、その変調を低次多項式、例えば線形又は二次関数によりモデル化することができる。そして、分離距離S及びオーバレイDによる変調を、等式(7)中に表されている余弦項により表現することができる。即ち、次数別強度の簡略化モデルは、順に等式(8a),(8b)により表される加算形,乗算形を採る。
【数6】
【0129】
等式(8a)の第1項により定義される形状関数及び等式(8b)の第1係数は、形状変調を、その形状についての明示知識抜きで、パラメータajにより加重された基底関数θjの線形結合としてモデル化している。等式(8a)及び(8b)に表されている通り、単項式基底を利用し形状変化が記述されている。しかしながら、一般に、あらゆる多項式、有理式、或いはあらゆる種類の基底集合を利用することができる。
【0130】
パラメータbにより変調深さが定まる。パラメータD及びSによりオーバレイが定まる。入射角、アジマス角又はその双方を変化させることで、任意の次数に関しもたらされるデータを、何らかの好適な曲線当て嵌めルーチンを用いこれらパラメータaj、b、D及びSに当て嵌めることができる。オーバレイはパラメータDに係る当て嵌めにより与えられる。
【0131】
前述したオーバレイ計測向け簡略化モデルは、入射角及びアジマス角の変化に基づき諸次回折波の強度変動をモデル化する現象論的手法の例示である。一般に、そのモデルを他の波形及び非多項式基底関数に基づくものとすることができる。
【0132】
計測強度信号を現象論的で単純な関数に当て嵌めることで、複数個の層に係るオーバレイオフセットを、情報処理的に効率的な要領で推定することができる。結果として、比較的低い情報処理コストにて且つ外部参照計量無しで計測が実行されるため、SEM、光学計量、或いはその他の推奨されるX線計量技術に依拠する現行方法の制限が克服されることとなる。
【0133】
図9に、
図8記載の計量ターゲット150に関し当て嵌め結果のシミュレーションを表すプロット170を示す。プロットライン171は、ある角度範囲における-2次回折波の正規化強度のシミュレーションを表している。プロットライン172は、それと同じ角度範囲における+2次回折波の正規化強度のシミュレーションを表している。プロットライン173は、シミュレーションで得られた回折強度の当て嵌めの結果であり、等式(8)を参照して述べた種類のモデルによるものを表している。
図9描出の通り、等式(8)を参照して述べた簡略化モデルにより、シミュレーションで得られた強度値に対する密な当て嵌めが実現される。
【0134】
等式(8)により表されている通り、オーバレイ変調は回折次数の偶関数である。即ち、正次数由来のデータと負次数由来のデータとを平均すること、或いは一緒に当て嵌めることができる。加えて、複数次を一緒に当て嵌めることができる。ある種の例によれば、別々な回折次数毎に別々な角度空間範囲を利用することができる。付加的な詳細が、Hench et al.により発明されKLA-Tencor Corporationに譲受された特許文献13に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0135】
ある種の実施形態では実デバイスターゲットが非周期的なものとされる。参照計測を基準にオーバレイ計測を校正することにより、SXRスキャタロメトリ技術を適用することができ、それにより、十分な周期性を有するデザインルールターゲットの計測を踏まえて非周期的構造のオーバレイを推定することができる。これにより、被計測ターゲットが周期的又はほぼ周期的なものでなければならない、というスキャタロメトリ的計測の制限が効果的に克服される。
【0136】
ある種の実施形態では、校正済のSXR計測結果を利用し、現像後検査(ADI)プロセス監視の一環として、インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が推定される。ある種の実施形態では、それらインダイ能動デバイス構造が非周期的な論理デバイスとされる。
【0137】
ある種の実施形態では、単一のオーバレイ誤差校正値を利用し、SXRスキャタロメトリ依拠オーバレイ計測が校正される。参照計量システム例えばSEMを利用し、インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が計測される。加えて、SXRスキャタロメトリシステム例えばSXRスキャタロメトリツール100を利用し、付近のデザインルール計量ターゲットが計測される。そのSXRスキャタロメトリシステムにより計測されたオーバレイ誤差と、その参照計量システムにより計測されたオーバレイ誤差と、の間の差異がオーバレイ誤差校正値とされる。諸デザインルール計量ターゲットについての以後のオーバレイ計測は、そのオーバレイ誤差校正値により調整され、それにより付近のインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が推定される。より具体的には、そのオーバレイ誤差校正値を、そのSXRスキャタロメータにより計測されたオーバレイ誤差に加算することで、そのインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が推定される。この手法の限界は、参照計測がSXR計測でのそれとは別のターゲットを対象にして実行される、という事実により引き起こされるターゲット誤差が、補償されないことである。
【0138】
ある例では、この限界が、そのインダイ能動デバイス構造のSXR計測へとSEM校正をフィードバックすることにより克服される。この手法は、そのSXR計測がその被計測ターゲットに対し何ら物理的変化を及ぼさない場合に実行可能である。
【0139】
別のある例では、2個のオーバレイ誤差校正値を利用し、SXRスキャタロメトリ依拠オーバレイ計測が校正される。これらの実施形態では、参照計量システム例えばSEMを利用し、インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が計測され、且つ付近のデザインルール計量ターゲットに係るオーバレイ誤差が計測される。加えて、SXRスキャタロメトリシステム例えばSXRスキャタロメトリツール100を利用し、付近のデザインルール計量ターゲットに係るオーバレイ誤差が計測される。そのインダイ能動デバイス構造に係りその参照計量システムにより計測されたオーバレイ誤差と、付近のデザインルール計量ターゲットに係るオーバレイ誤差と、の間の差異が第1オーバレイ誤差校正値とされる。そのデザインルールターゲットに係りその参照計量システムにより計測されたオーバレイ誤差と、そのデザインルールターゲットに係りSXRスキャタロメトリシステムにより計測されたオーバレイ誤差と、の間の差異が第2オーバレイ誤差校正値とされる。諸デザインルール計量ターゲットについての以後のオーバレイ計測は、それら第1及び第2オーバレイ誤差校正値双方により調整され、ひいては付近のインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が推定される。より具体的には、それら第1及び第2オーバレイ誤差校正値を、そのSXRスキャタロメータにより計測されたオーバレイ誤差に加算することで、そのインダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差が推定される。
【0140】
電子ビームツールにより実行される参照計測を、例えば10kV以上の高電圧にて実行することで、1個又は複数個の下地層をイメージングしてもよい。一般に、電子ビームツールの入射エネルギを適宜調整することで、イメージング性能を最大化させることができる。
【0141】
本願記載のSXRスキャタロメトリツールにより、半導体製造に関連する多種多様な計測を実行することができる。例えば、SXRスキャタロメトリツールを利用し、1個又は複数個のターゲットの特性、例えば限界寸法、オーバレイ、側壁角、膜厚、プロセス関連パラメータ(例.焦点及び/又は照射量)等を計測することができる。計測されるターゲットには、周期的な注目領域、例えばメモリダイ内格子を含めることができる。計測ターゲットは複数個の層を有するものとすることができ、1個又は複数個の層の厚みをSXRスキャタロメトリツールにより計測することができる。計測ターゲットはスクライブライン内やダイそれ自体の内部に所在させることができる。ある種の実施形態では、参照によりその全容が本願に繰り入れられるところの特許文献11に記載の通り、複数個のターゲットが1個又は複数個の計量ツールによって同時又は順次計測される。そうした計測に発するデータを組み合わせ半導体製造プロセスにて用いること、例えばそのプロセス(例.リソグラフィ、エッチング)に対するフィードフォワード、フィードバック及びフィードサイドウェイ補正に用いることができる。
【0142】
注目パラメータの計測には、通常、複数通りのアルゴリズムが関わる。ある種の実施形態では、入射ビームと標本との相互作用が電磁ソルバを用いモデル化され、例えばRCWA、FEM、モーメント法、表面積分法、体積積分法、FDTD、ボルン近似(BA)、歪波BA(DWBA)その他といったアルゴリズムが用いられる。モデル依拠計測では、通常、注目ターゲットが幾何エンジンを用いモデル化され、場合によってはプロセスモデル化エンジンを用いモデル化され、或いは両者の組合せを用いモデル化される。幾何エンジンは、例えば、KLA Corporation(米国カリフォルニア州ミルピタス)から入手可能なAcuShape(登録商標)ソフトウェアにて実現される。
【0143】
収集されたデータは、ライブラリ、高速次数低減モデル、回帰、機械学習アルゴリズム例えばニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)等、次元縮小アルゴリズム例えばPCA(主成分分析)、ICA(独立成分分析)、LLE(局所線形埋込)等、スパース表現例えばフーリエ又はウェーブレット変換等、カルマンフィルタ、同種又は異種ツール間マッチングを促進するアルゴリズムその他を初め、複数のデータ当て嵌め及び最適化技術及びテクノロジにより分析することができる。収集されたデータを、モデル化、最適化及び/又は当て嵌めによるその構造の寸法及び素材情報の抽出を行わないゴリズムにより、分析することもできる。
【0144】
ある種の実施形態では、各二層組合せ間の分離パラメータのセットが個々別々なものとなるよう、且つその計量ターゲットの全体高に対し制約が課される条件下で全ての層組合せ間の最小分離距離が最大化されるよう、多層オーバレイ計量ターゲットが設計される。
【0145】
ある種の実施形態によれば、別々な層が別々なピッチを有する態で多層オーバレイ計量ターゲットを設計することで、ある層にて生じるある次数の回折波を、別の層における別の次数の回折波と強調干渉させることができる。ある実施形態では、第1層内に所在する周期的な格子構造のピッチを2Aに等しくする;但しAは任意の正値定数である。別の層内に所在する別の周期的構造のピッチを3Aに等しくする。この例では、第1層の2次回折波と第2層の3次回折波とが強調干渉する。即ち、これらの次数対にて検出される強度計測結果が、それら二層間のオーバレイにより支配されることとなる。逆に、オーバレイの強調干渉に関わらない別の次数対にて検出される強度計測結果は、形状パラメータにより支配されることとなる。即ち、ある種の実施形態では、ある特定の格子次数対にてオーバレイに対する感度が増大し且つ形状パラメータ値の推定に役立つ強度データをももたらす特定の格子構造付で、オーバレイ計量ターゲットが設計される。
【0146】
同様に、別々な層が別々なピッチ方向を有する態で多層オーバレイ計量ターゲットを設計することで、ある層にて生じるある次数の回折波を、別の層における別の次数の回折波と強調干渉させることができる。一般に、別々な周期性(例.別々な格子ピッチ)、別々なピッチ方向或いはそれらの組合せを有する一組の層では、それぞれ別々の層に係る散乱ベクトルが一組発生する。このオーバレイ計量ターゲットは、それら散乱ベクトルのうち所定のサブセットが整列するように設計される。こうすることで、それら散乱ベクトルの所定サブセットに対応する諸層間のオーバレイに対する感度が増強される。
【0147】
一般に、オーバレイ計量ターゲットは、1D周期構造即ちある方向に沿い周期性があり別の方向では定常的な構造、2D周期構造即ち二方向沿いで周期的な構造、或いはそれらの何らかの組合せを、有するものとすることができる。2D周期ターゲットでは、それら二通りの周期方向を、互いに垂直なものにすることもそうでないものにすることもできる。更に、各組成構造のピッチを、同じにすることも別々なものとすることもできる。
【0148】
認識されるべきことに、本件開示の随所に記載されている様々なステップを、単一コンピュータシステム130により実行してもよいし、それに代え複数コンピュータシステム130により実行してもよい。更に、本システム100の様々なサブシステム、例えば試料位置決めシステム140に、本願記載の諸ステップのうち少なくとも一部分を実行するのに適したコンピュータシステムを組み込んでもよい。従って、前掲の記述は、本発明に対する限定としてではなく単に例証として解されるべきである。更に、その1個又は複数個の情報処理システム130を、本願記載の何れの方法実施形態の何れの他ステップ(群)を実行するように構成してもよい。
【0149】
加えて、そのコンピュータシステム130を、検出器119及び照明光学系110に対し本件技術分野で既知な何れの要領で可通信結合させてもよい。例えば、その1個又は複数個の情報処理システム130を、それぞれ検出器119,照明光学系110に係る情報処理システムに結合させてもよい。別のある例によれば、検出器119及び照明光学系110のうち何れかを、コンピュータシステム130に結合された単一コンピュータシステムにより直に制御することができる。
【0150】
コンピュータシステム130を、伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより、本システムの諸サブシステム(例.検出器119、照明光学系110等)からのデータ又は情報を受領及び/又は獲得するよう構成してもよい。この構成では、その伝送媒体を、コンピュータシステム130と本システム100の他サブシステムとの間のデータリンクとして働かせることができる。
【0151】
計量システム100のコンピュータシステム130を、他システムからのデータ又は情報(例.計測結果、モデル化入力、モデル化結果等)を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。こうした場合、その伝送媒体を、コンピュータシステム130と他システム(例.計量システム100のオンボードメモリ、外部メモリ又は他の外部システム)との間のデータリンクとして働かせることができる。例えば、その情報処理システム130を、データリンクを介し格納媒体(即ちメモリ132又は190)から計測データ(例.信号135)を受け取るよう構成することができる。例えば、検出器119により収集されたスキャタロメトリデータを、恒久的又は半恒久的メモリデバイス(例.メモリ132又は190)内に格納させることができる。この構成によれば、それら計測結果をオンボードメモリから、或いは外部メモリシステムからインポートすることができる。更に、そのコンピュータシステム130から伝送媒体を介し他システムにデータを送ってもよい。例えば、コンピュータシステム130によって求められたオーバレイ値186を恒久的又は半恒久的メモリデバイス(例.メモリ190)内に格納させることができる。この構成によれば、計測結果を他システムにエキスポートすることができる。
【0152】
情報処理システム130には、これに限られるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサその他、本件技術分野で既知なあらゆる装置が包含されうる。一般に、語「情報処理システム」は、記憶媒体から得た命令を実行するプロセッサを1個又は複数個有するデバイス全てが包括されるよう、広く定義することができる。
【0153】
方法例えば本願記載のそれらを実現するプログラム命令134を、伝送媒体例えばワイヤ、ケーブル又は無線伝送リンク上で伝送させてもよい。例えば、
図3描出の通り、メモリ132に格納されているプログラム命令を、バス133上を経てプロセッサ131へと伝送させる。プログラム命令134はコンピュータ可読媒体(例.メモリ132)内に格納されている。コンピュータ可読媒体の例としては、リードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気又は光ディスク、並びに磁気テープがある。
【0154】
ある種の実施形態では、本願記載のスキャタロメトリ分析が製造プロセスツールの一部分として実現される。製造プロセスツールの例としては、これに限られるものではないがリソグラフィ露出ツール、膜堆積ツール、インプランテーションツール及びエッチングツールがある。こうすれば、SXRスキャタロメトリ分析の結果を用い製造プロセスを制御することができる。ある例では、1個又は複数個のターゲットから収集されたSXRスキャタロメトリ計測データが製造プロセスツールに送られる。そのSXRスキャタロメトリ計測データを本願記載の通り分析し、その結果を用いることで、その製造プロセスツールの動作を調整することができる。
【0155】
本願記載のスキャタロメトリ計測を用い、様々な半導体構造の特性を判別することができる。構造の例としては、これに限られるものではないがFinFET、低次元構造例えばナノワイヤ又はグラフェン、サブ10nm構造、リソグラフィック構造、スルー基板ビア(TSV)、メモリ構造例えばDRAM、DRAM 4F2、FLASH、MRAM及び高アスペクト比メモリ構造がある。構造特性の例としては、これに限られるものではないが、幾何パラメータ例えばラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、ポアサイズ、ポア密度、側壁角、プロファイル、限界寸法、ピッチや、素材パラメータ例えば電子密度、組成、粒構造、モルフォロジ、応力、歪及び元素種別がある。
【0156】
図11には、本発明の計量システム100による実施に適する方法200が描かれている。ある態様によれば、認識頂けるように、方法200の諸データ処理ブロックを、予めプログラミングされているアルゴリズムを情報処理システム130に備わる1個又は複数個のプロセッサにより実行することを通じて、実行することができる。計量システム100の文脈に沿い以下の記述が提示されているが、本願での認識によれば、計量システム100の具体的な構造的諸側面は限定を表すものではなく、専ら例証として解されるべきである。
【0157】
ブロック201では、基板上に配されたデザインルールターゲットの第1インスタンス(実現物)を、10~5000電子ボルトの範囲内のエネルギを有する軟X線(SXR)輻射ビームで以て照明する。そのデザインルールターゲットを多層ターゲットとする。
【0158】
ブロック202では、その入射SXR輻射ビームに応じ、そのデザインルールターゲットの第1インスタンスから散乱されてくる一群のSXR輻射のうち±1次回折波に係る第1の複数通りの強度を、検出する。
【0159】
ブロック203では、そのデザインルールターゲットの第1インスタンスに係る第1オーバレイ誤差値を、その±1次回折波における第1の複数通りの検出強度に基づき推定する。
【0160】
ブロック204では、第1インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差値を、走査型電子顕微鏡によるその第1インダイ能動デバイス構造の計測を踏まえて推定する。そのデザインルールターゲットの第1インスタンスと、第1インダイ能動デバイス構造は、同じ製造プロセスルールに従い作成されたものとする。
【0161】
ブロック205では、その第1インダイ能動デバイス構造に係るオーバレイ誤差値と、そのデザインルールターゲットの第1インスタンスに係る第1オーバレイ誤差値とに基づき、オーバレイ校正値を決定する。
【0162】
本願記載の語「限界寸法」には、構造のあらゆる限界寸法(例.下部限界寸法、中部限界寸法、上部限界寸法、側壁角、格子高さ等)、任意の2個以上の構造間の限界寸法(例.2個の構造間の距離)、並びに2個以上の構造間のずれ(例.重なり合う格子構造間のオーバレイ位置ずれ等)が包含される。構造の例としては三次元構造、パターン化構造、オーバレイ構造等があろう。
【0163】
本願記載の語「限界寸法アプリケーション」や「限界寸法計測アプリケーション」にはあらゆる限界寸法計測が包含される。
【0164】
本願記載の語「計量システム」には、限界寸法アプリケーション及びオーバレイ計量アプリケーションを初め、その態様を問わず試料の解明に少なくとも部分的に利用されるシステム全てが包含される。とはいえ、こうした技術用語により本願記載の語「計量システム」の範囲が限定されるわけではない。加えて、本願記載の計量システムをパターン化ウェハの計測向けに構成しても、及び/又は、無パターンウェハの計測向けに構成してもよい。その計量システムを、LED検査ツール、エッジ検査ツール、背面検査ツール、マクロ検査ツール又はマルチモード検査ツール(1個又は複数個のプラットフォームから同時にデータを得るものを含む)その他、計測下構造のイメージングから利を受けるどのような計量又は検査ツールとして構成してもよい。
【0165】
本願では、試料を処理するのに使用されうる半導体処理システム(例.計量システムやリソグラフィシステム)に関し様々な実施形態が記述されている。本願で用いられている語「試料」は、本件技術分野で既知な手段により処理(例.印刷又は欠陥検査)されうるウェハ、レティクルその他、あらゆる標本を指している。
【0166】
本願中の用語「ウェハ」は、総じて、半導体又は非半導体素材で形成された基板のことを指している。その例としては、これに限られるものではないが単結晶シリコン、ヒ化ガリウム及び燐化インジウムがある。そうした基板は、広く、半導体製造設備にて見出されうるし及び/又は処理されうる。場合によっては、ウェハが基板のみで構成されていることがある(いわゆるベアウェハ)。そうではなく、ウェハが、基板上に形成された1個又は複数個の異種素材層を有していることもある。ウェハ上に形成された1個又は複数個の層が「パターニング」されていることも「未パターニング」なこともありうる。例えば、ウェハ内に複数個のダイがありそれらが可反復パターンフィーチャを有していることがありうる。
【0167】
「レティクル」は、レティクル製造プロセスのどの段階にあるレティクルでもよいし、レティクルの完成品でもよいし、また半導体製造設備での使用向けにリリースされていてもいなくてもよい。レティクル或いは「マスク」は、一般に、その上にほぼ不透明な領域が形成されておりその領域がパターンの態で構成されているほぼ透明な基板として、定義される。その基板は、例えば、ガラス素材例えばアモルファスSiO2を含有するものとすることができる。レジストで覆われたウェハの上方にレティクルを配してリソグラフィプロセスのうち露出工程を行うことで、そのレティクル上のパターンをそのレジストへと転写することができる。
【0168】
ウェハ上に形成される1個又は複数個の層がパターンをなしていてもよいし、なしていなくてもよい。例えば、ウェハが複数個のダイを有していて、そのそれぞれが可反復パターンフィーチャを有するのでもよい。そうした素材層の形成及び処理によって、最終的にはデバイスの完成品が得られよう。多種多様なデバイスがウェハ上に形成されうるところ、本願中の用語ウェハは、その種類を問わず本件技術分野で既知なデバイスがその上に作成されるウェハを包括することを意図している。
【0169】
1個又は複数個の例示的実施形態によれば、前述の機能をハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの何らかの組合せにて実現することができる。ソフトウェアでの実現時には、それらの機能を、1個又は複数個の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納すること又はその媒体上で伝送することができる。コンピュータ可読媒体にはコンピュータ格納媒体及び通信媒体の双方、例えばコンピュータプログラムをある場所から別の場所へと転送するのに役立つ媒体全てが包含される。格納媒体は、汎用又は専用コンピュータによるアクセスが可能な何れの入手可能媒体とすることもできる。例えば、限定するものではないが、そうしたコンピュータ可読媒体を構成しうるものには、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMその他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージその他の磁気格納装置、或いは他の何らかの媒体であって、命令又はデータ構造の形態を採る所望のプログラムコード手段の搬送又は格納に用いることができ、且つ汎用又は専用コンピュータ或いは汎用又は専用プロセッサによりアクセスされうるものがある。また、どのような接続であれコンピュータ可読媒体と称して差し支えない。例えば、そのソフトウェアをウェブサイト、サーバその他のリモートソースから送信するに当たり同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、ディジタル加入者線(DSL)又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波が用いられるのであれば、それら同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数及びマイクロ波は、媒体の定義に収まる。本願中の用語ディスク(disk/disc)には、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、XRF(登録商標)ディスク、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピーディスク及びブルーレイ(登録商標)ディスクを初め、通常はデータが磁気的に再生されるディスク(disk)及びレーザで以てデータが光学的に再生されるディスク(disc)が包含される。上掲のものの組合せもまたコンピュータ可読媒体の範囲内に包含されるべきである。
【0170】
ある種の具体的諸実施形態を教示目的で上述したが、本件特許出願の教示は一般的な適用可能性を有するものであり、上述の具体的諸実施形態に限定されるものではない。従って、特許請求の範囲中で説明されている発明の技術的範囲から離隔することなく、上述の諸実施形態の諸特徴につき様々な修正、適合化並びに組合せを実施することができる。