(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240808BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G03G15/08 220
G03G21/00 510
(21)【出願番号】P 2020192610
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077410(JP,A)
【文献】特開2019-215478(JP,A)
【文献】特開2009-198697(JP,A)
【文献】特開2010-237239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 15/095
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/04
G03G 21/10-21/12
G03G 21/14
G03G 21/20
G03G 9/00- 9/113
G03G 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体に担持した二成分現像剤で静電潜像を現像する画像形成装置において、
前記現像剤担持体の幅方向を仮想的に複数の領域に分割した各仮想分割領域それぞれにつき、現像した画像の画像面積率を求める分割画像面積率演算手段と、
前記現像剤担持体の全幅について現像した画像の画像面積率を求める全幅画像面積率演算手段と、
前記全幅画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値以上で、かつ、前記分割画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値以下の前記仮想分割領域が存在するというものであるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が肯定する判断をしたとき、前記現像剤担持体上の、前記所定の閾値以下の仮想分割領域にある前記現像剤担持体の表面のトナーを除去する動作を行う制御手段と、を設け
、
前記制御手段は、前記現像剤担持体を現像動作以外のタイミングで回転させる空回転制御を行うことを特徴とする画像形成装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の画像形成装置において、
前記現像剤担持体を電気的にフロート状態にして前記空回転制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の画像形成装置において、
添加剤として酸化チタンを含まないトナーを含む二成分現像剤を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記全幅画像面積率演算手段の演算結果についての前記所定の閾値は10%であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記分割画像面積率演算手段の演算結果についての前記所定の閾値は5%であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、現像剤担持体に担持した二成分現像剤で静電潜像を現像する画像形成装置が知られている。
例えば、特許文献1には、乾式二成分現像剤を用いた現像装置と静電潜像を形成する像担持体を備え、像担持体上の静電潜像を現像剤で可視化して給紙された記録媒体上に転写する画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、入力された画像データから、トナーを付着すべき画素である印字画素数をカウントする印字画素カウント手段を有し、入力された画像データを主走査方向で分割し、分割されたそれぞれの領域の印字画素数をカウントする分割印字画素カウント手段を備えている。そして、作像動作中の記録媒体への印字がなされない所定のタイミングで、印字画素数に応じて像担持体にトナー像を形成する。これにより、現像スリーブ(現像剤担持体)へのトナー固着を減らし、そのトナー固着が原因で画質が劣化するのを防止できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、現像剤担持体へのトナー固着を効率的に減少させるための改良の余地が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、現像剤担持体に担持した二成分現像剤で静電潜像を現像する画像形成装置において、前記現像剤担持体の幅方向を仮想的に複数の領域に分割した各仮想分割領域それぞれにつき、現像した画像の画像面積率を求める分割画像面積率演算手段と、前記現像剤担持体の全幅について現像した画像の画像面積率を求める全幅画像面積率演算手段と、前記全幅画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値以上で、かつ、前記分割画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値以下の前記仮想分割領域が存在するというものであるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段が肯定する判断をしたとき、前記現像剤担持体上の、前記所定の閾値以下の仮想分割領域にある前記現像剤担持体の表面のトナーを除去する動作を行う制御手段と、を設け、前記制御手段は、前記現像剤担持体を現像動作以外のタイミングで回転させる空回転制御を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、現像剤担持体へのトナー固着を効率的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1に示すプロセスユニット10の構成を説明する断面図。
【
図3】複写機100の電気回路の一部を示すブロック図。
【
図7】互いにMPIが異なる各種トナーについて、地汚れ濃度を測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を画像形成装置としての複写機(以下、「複写機100」という)に適用した、実施形態について説明する。
図1は、複写機100の概略構成図である。複写機100はプリンタ部20、プリンタ部20の下方に配置された給紙部60、及びプリンタ部20の上方に配置された画像読取部40等を備える。プリンタ部20は、ドラム状の潜像担持体である感光体11と現像手段である後述する現像装置13とを一体に備えたプロセスカートリッジとしてのプロセスユニット10、及び転写手段としての転写ローラ31を備えた転写ユニット30等を備える。
【0008】
プロセスユニット10の
図1中の左側には潜像形成手段である光書込装置50を備える。光書込装置50の上方には、プロセスユニット10の現像装置に供給するトナー(フレッシュトナー)を収容するためのトナーボトル93が配置されている。光書込装置50の下方には、プロセスユニット10の回収手段で回収されたトナーを溜める廃トナーボトル94が配置されている。感光体11と転写ローラ31とが対向する転写ニップの上方には、定着部80が配置されている。給紙部60は、記録媒体としての用紙Pが積層して収容された給紙トレイ61(a、b)、給紙ローラ対70(a、b)及び搬送ローラ対71(a、b)等を備える。
【0009】
画像形成時には、プリンタ部20では、画像読取部40によって読み取られた画像情報(画像データ)や外部装置から入力された画像情報に基づいて、光書込装置50から照射される露光光によって感光体11の表面上に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置13によりトナー像として可視像化される。
【0010】
一方、給紙部60では、選択されたいずれかの給紙トレイ61からピックアップローラによって用紙Pが一枚ずつ給紙される。そして、給紙ローラ対70(a、b)及び搬送ローラ対71(a、b)によってレジストローラ対72に向けて搬送される。レジストローラ対72に達した用紙Pは、斜めずれを修正された後、感光体11上のトナー像に対する位置が一致するタイミングで、転写ニップに送られる。
【0011】
転写ニップでは、転写ローラ31に転写バイアスが印加され、感光体11上のトナー像が用紙Pに静電力で転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着部80に送られ、ここで熱と圧力とによりトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙Pは排紙ローラ対91により画像読取部40の下方に位置する排紙トレイ92に排出されてスタックされる。
【0012】
図2は、
図1に示すプロセスユニット10の構成を説明する断面図である。
図2に示すように、プロセスユニット10には、感光体11の他に、帯電部12、現像装置13、及びクリーニング部14等を備える。帯電部12は、
図1に示す光書込装置50による露光工程の前段で感光体11の表面を一様に帯電し、クリーニング部14は、図に示す転写ニップでの転写後の感光体11の表面をクリーニングする。クリーニング部14のクリーニングにより感光体11の表面から除去されたトナーは、回収トナー搬送スクリュ15で搬送され、回収トナーとして
図1に示す廃トナーボトル94へ搬送され、あるいはリサイクルトナーとして現像装置13に供給される。
【0013】
現像装置13は、キャリアとトナーからなる乾式二成分現像剤を収容する現像剤容器であるケーシング5を備える。ケーシング5は、現像剤を収容する下ケース5aと、下ケース5aの開口側を覆う上ケース5bとから構成されている。下ケース5aには、ケーシング5内の現像剤を撹拌しながら搬送する搬送部材としての供給スクリュ1及び攪拌スクリュ2が配置されている。
【0014】
上ケース5bには、現像剤担持体である現像ローラ3と、現像ローラ3上の現像剤の層厚(量)を規制する現像剤規制部材としての板状のドクタブレード4とが保持されている。現像ローラ3は、現像剤を表面上に担持して
図2中の矢印Aで示す方向に回転し、対向配置され
図2中の矢印B方向に回転する感光体11に担持する現像剤中のトナーを供給する。ドクタブレード4は、現像ローラ3の表面との間にある一定の間隔の現像ギャップを形成するように、ケーシング5の上ケース5bに固定されている。
【0015】
下ケース5aの内部は、供給スクリュ1が配置された供給路21と、攪拌スクリュ2が配置された攪拌路22とに、仕切り板23によって仕切られている。供給スクリュ1及び攪拌スクリュ2は、それぞれ供給軸受1c及び攪拌軸受2cによって下ケース5aに回転自在に支持されている。仕切り板23の長手方向の奥側端部及び手前側端部には、それぞれ奥側開口部及び手前側開口部が形成されており、これらの二つの開口部によって供給路21と攪拌路22とが連通している。現像剤は現像装置13内の供給路21と攪拌路22との間を循環する経路が形成されている。
【0016】
供給路21内の現像剤は、供給スクリュ1の回転によって軸方向に搬送されつつ、現像ローラ3の内部のマグネットローラの磁力によって汲み上げられ、現像ローラ3の表面上に供給される。現像ローラ3の表面上に汲み上げられた現像剤は、ドクタブレード4により一定の高さ(層厚)に規制され、現像領域において感光体11の表面上の静電潜像の現像に用いられる。現像領域を通過した現像ローラ3の表面上の現像剤は、マグネットローラの磁力によって形成される分離極の作用によって現像ローラ3の表面上から分離し、供給路21内に戻る。
【0017】
図3は、複写機100の電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、メイン制御部200は、プリンタ内の各機器の駆動制御を司るものである。メイン制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)などを有している。そして、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、各種の機器の駆動を制御したり、所定の演算処理を実行したりする。
【0018】
メイン制御部200には、プロセスモータ209、帯電バイアス電源210、現像バイアス電源211、転写バイアス電源212、レジストクラッチ213などが接続されている。また、操作表示部215、トナー固着判定部216、画素カウント部217、光書込制御部218、画像情報受信部219なども接続されている。
【0019】
画像情報受信部219は、画像読取部40からの画像情報を受信して、メイン制御部200や光書込制御部18に送るものである。ユーザによって操作されるパーソナルコンピューターやスキャナから送られてくる画像情報も受信し、メイン制御部200や光書込制御部218に送る。光書込制御部218は、画像情報受信部219から送られてくる画像情報に基づいて光書込装置50の駆動を制御する。
【0020】
プロセスモータ209は、感光体11、現像装置13、各種ローラなどの駆動源になっているモータである。プロセスモータ209の回転駆動力は、レジストクラッチ213を介してレジストローラ対72にも伝えられる。
【0021】
帯電バイアス電源210などの各種電源の出力電圧例は次のとおりである。帯電バイアス電源210で感光体11を-800[V]に帯電する(地肌部電位Vd)。光書込装置50による書込で静電潜像電位(潜像電位Vl)を-50[V]にする。現像バイアス電源211で、-400[V]の現像バイアスが現像ローラに印加される。転写バイアス電源212からの転写バイアスは記録シートと感光体11の静電潜像との間に転写電界を形成する。
【0022】
操作表示部215は、タッチパネルやテンキーなどを具備しており、タッチパネルに画像を表示したり、タッチパネルやテンキーなどによって入力された情報をメイン制御部200に送ったりするものである。トナー固着判定部216や画素カウント部217の役割については、後に詳述する。
【0023】
従来、画像形成装置において、トナーの経時劣化での地汚れなどの画像品質を改善するため、フッ素含有化合物で表面処理した金属酸化物粉体をトナーの外添剤としてトナーに添加することが知られている(特許文献2)。環境負荷低減の一環で金属酸化物である酸化チタンの添加を抑制しようとの考えから、この酸化チタンの代わりにアルミナ粉体を添加することが検討されている。
【0024】
このアルミナ粉体を酸化チタンの代わりに添加したトナーを用いた場合、次の不具合が確認された。現像ローラ表面にトナーが固着することで実効的な現像バイアスが印可されずに地汚れになってしまうという不具合である。
【0025】
一般に、特許文献1に記載のように現像担持体へのトナー固着を防止する技術は知られているが、現像剤担持体へのトナー固着を効率的に減少させるための改良の余地が残っていた。特許文献1では、トナー固着を減少させるため、作像動作中の記録媒体への印字がなされない所定のタイミングで、印字画素数に応じた像担持体へのトナー像の形成を行うが、具体的な制御は、次のとおりである。
【0026】
その明細書の段落0019~0021に記載されているように、画像パターンを10枚印刷した時の入力された画像データを主走査方向で分割し、分割されたそれぞれの領域の印字画素の数を分割印字画素カウント手段でカウントして記憶している。一定のカウント数に満たなかった現像スリーブ位置に、画像10枚印字が行なわれた画像域直後の感光体上にトナー像を形成する。このように、分割された各領域に着目し、その領域のカウント数のみに基づいてトナー像の形成を行うものである。
【0027】
ところが、鋭意研究したところ、トナー固着量には、分割された各領域のカウント数のみならず、現像剤担持体の領域全体(現像剤担持体の全幅)のカウント数もトナー固着量を左右することが判明した。現像剤担持体の全幅とは、その画像形成装置で画像形成可能な最大幅の画像に対応した幅であり、実際の印字する対象画像の画像幅ではない。
【0028】
図4の上部の(a)を付したものが1枚の用紙P上の出力画像の例を示す。P1~P5の主走査方向Xに間隔を置いたトナー付着部を有する。トナー付着部はそれぞれ副走査方向Yに延びる。副走査方向の長さは、主走査方向X中央の付着部P3が最も長く、その両側の付着部P2,P4が最も短い。
【0029】
図4の上下中央の(b)を付したものが、現像剤担持体の領域全体(現像剤担持体の全幅)のカウント数が後述する「全幅画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値」以上に対応するものになった例の、現像ローラ3上のトナー固着状態を示す。トナー付着部P1~P5の間隔に相当する箇所にトナー固着が生じている。
【0030】
図4の下部の(c)に示すものが、現像剤担持体の領域全体(現像剤担持体の全幅)のカウント数が後述する「全幅画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値」未満に対応するものになった例の、現像ローラ3上の状態を示す。
図4(a)の各付着部P1~P5の付着量領域の大きさは同じで、トナー付着量が少なく、カウント数がすくない場合である。この場合には、トナー付着部P1~P5の間隔に相当する箇所にトナー固着が生じていない。
【0031】
図4(b)と
図4(c)とでは、トナー付着部P1~P5の間隔に相当する現像ローラ3の幅方向の領域箇所はともに画素のカウント数が0であるにもかかわらず、現像ローラ3の全幅でのカウント数によって、当該領域箇所にトナー固着が生じるか否かが異なる。このように、トナー固着量は、分割された各領域のカウント数のみならず、現像剤担持体の領域全体(現像剤担持体の全幅)のカウント数にも左右される。具体的には、現像剤担持体の領域全体(現像剤担持体の全幅)のカウント数が多いほど、トナー固着量も多くなる。
【0032】
これは次の理由によると考えられる。すなわち、現像剤担持体の領域全体(現像剤担持体の全幅)のカウント数が多いほど、トナー消費量が多く、現像ローラが保持している現像剤のトナーが常に新しいトナーに入れ変わる。新しいトナー中にトナー以外に固着を誘発する材料が含まれている。アルミナ粉体を酸化チタンの代わりに添加したトナーを用いた場合には特にこの傾向がある。このため、トナー消費量が多いほど、新たなトナーによって固着を誘発する材料が供給されることで、固着が起こりやすくなっていると考えられる。
【0033】
本実施形態では、現像剤担持体の幅方向を仮想的に複数の領域に分割した各仮想分割領域それぞれにつき、現像した画像の画像面積率を求める分割画像面積率演算手段と、現像剤担持体の全幅について現像した画像の画像面積率を求める全幅画像面積率演算手段とを設ける。分割画像面積率演算手段は、
図3に示す画素カウント部217に構成する。
図4(c)の下方に、現像像剤担持体の幅方向を仮想的に複数の領域に分割した各仮想分割領域D1~D8の例を示す。この例では8分割している。分割数はこれには限られない。各仮想分割領域に対向する感光体上の画像部分の画素をカウントする。
【0034】
カウント画素数と画像面積率との関係は次のとおりである。画像数のカウントは、形成する画像のサイズ(A3,A4,B5など)や向き(縦長、横長)によらず、画像1枚毎にカウントする。分割画像面積率の計算では、計算する仮想分割領域について画像1枚毎にカウントする。全幅画像面積率の計算では、全幅の領域について画像1枚毎にカウントする。このカウントした画素数を分子とし、分母としては、副走査方向が最大幅のサイズ、たとえば、A3のサイズの全ベタ画像を形成したときの画素数をとる。
【0035】
全幅画像面積率演算手段は、
図3に示す画素カウント部217内に構成するか、各仮想分割領域についてのカウント画素数を合算する構成として、
図3に示すトナー固着判定部216内に構成してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、全幅画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値以上で、かつ、分割画像面積率演算手段の演算結果が所定の閾値以下の仮想分割領域が存在するというものであるか否かを判断する判断手段も設ける。この判断手段は、
図3に示すトナー固着判定部216に構成する。そして、判断手段が肯定する判断をしたとき、現像剤担持体上の、所定の閾値以下の仮想分割領域にある現像剤担持体表面のトナーを除去する動作を行う制御手段を設けた。
【0037】
現像剤担持体上の表面のトナーを除去する動作は、次のような動作である。まず、所定の閾値以下の仮想分割領域に対応するベタ画像を現像させる動作が挙げられる。ユーザに指示に基づいて形成する画像が形成されない感光体表面上の領域である非画像形成領域に、ベタ画像の潜像を形成し、それを現像装置で現像する。トナー消費抑制のためには、所定の閾値以下の仮想分割領域に対応する感光体表面上領域にのみベタ画像の潜像を形成することが望ましい。ベタ画像を形成することで現像ローラ表面のトナーが顕像化に供されることで汚れを抑制する。固着する前に剥ぎ取るのである。
【0038】
図4(d)は分割領域D1,D4,D5,D8のみが、所定の閾値以下の仮想分割領域に相当した場合に、その領域に対応させて形成したベタ画像を模式的に示すものである。
図4(b)では、以上の分割領域以外にも、分割領域D2とD3に跨ってトナー固着が生じ、また、分割領域D6とD7に跨ってもトナー固着が生じている。所定の閾値の設定の仕方や仮想分割領域の分割数によっては、このようにトナー固着を完全にはカバーしきれない部分も生じ得る。
【0039】
分割数を多くするほど、また、所定の閾値を小さくするほどトナー固着は軽減できる。反面、画素のカウントの演算やカウント結果の保存の処理は多くなり、トナー除去のための現像によるトナー消費は増え、トナー除去の動作頻度が高くなる。これらのデメリットも考慮して所定の閾値や仮想分割領域の分割数を設定する。
【0040】
また、現像剤担持体上の表面のトナーを除去する動作として現像装置の現像剤担持体を現像動作以外のタイミングで回転させる空回転制御が挙げられる。空回転によって現像剤担持体の表面が現像剤などで摺擦され、表面に付着しているトナーを除去できる。この空回転中に現像剤担持体が対向する感光体表面部分の電位状態は通常作像時と同じである。例えばマイナス450V~マイナス700Vに帯電する。
【0041】
また、この空回転中は、現像剤担持体を電気的にフロート状態にしてもよい。これによれば、現像剤中のトナーの移動を抑制することができるため、現像ローラに付着したトナーの除去を効率よく行うことができる。この空回転中に現像剤担持体が対向する感光体表面部分の電位状態も、通常作像時と同じである。
【0042】
図5は、トナー除去動作の制御のフローチャートである。
図5(a)はトナー除去要否判定のフローの例であり、1枚の画像形成動作毎に実行する。まず、形成する1枚の画像について、各仮想分割領域毎に画素をカウントする(S1)。全ての仮想物領域についてのカウント数を合算する(S2)。そして、これらのカウント値を全幅画像面積率演算手段の演算結果と比較する所定の閾値(画像面積率)に対応するカウント値の閾値αや、分割画像面積率演算手段の演算結果と比較する所定の閾値(画像面積率)に対応するカウント値の閾値βと比較する。
【0043】
具体的には、全幅のカウント数の合算値S(n)が閾値α以上で、かつ、カウント値C(n)が閾値β以下の仮想分割領域が存在するという条件を満足するか否かを判断する(S3)。この条件を満足する場合には、閾値β以下の仮想分割領域をセットする。閾値β以下の仮想分割領域を特定してトナー除去動作を行う場合には、仮想分割領域が複数存在する場合には、その全てを特定してセットする。閾値β以下の仮想分割領域の有無のみわかればよく、その特定を要しないトナー除去動作を行う場合には、閾値β以下の仮想分割領域が有ることのみのセットで足りる。
【0044】
図5(b)は、トナー除去動作の実行の要否判断のフローチャートである。一連の画像形成ジョブの終了後にトナー除去動作を行う場合には、一連の画像形成ジョブの終了後に、この
図5(b)のフローを実行する。まず、
図5(a)のS4でセットされている仮想分割領域の有無を判断する(S1)。有る場合には、トナー除去動作を実行する(S2)。このフロートは異なり、トナー除去動作を、一連の画像形成ジョブの途中で実行したり、その他のタイミングで実行したりしてもよい。このような制御を、画素カウント部217やトナー固着判定部216を用いてメイン制御部200が行う。
【0045】
以下、閾値の具体例について説明する。この具体例では、アルミナ粉体を酸化チタンの代わりに添加したトナーを用いた。トナーの現像ローラの表面に付着し易さを次のようにして測定した。まず特許文献3で言及されているマグロールミルを用いた。
図6(a)に示すように、マグロールミルは小型の現像剤撹拌装置である。蓋301と中空有底の円筒上のマグロール302とからなる容器に二成分現像剤を収容し、磁場を掛けた状態で容器を回転させる。
【0046】
マグロールを回転させるための支持台に設けられ、マグロールに磁場を作用させるように配置された、マグロール回転ローラの下部に設けられた磁石で容器内下部に常に一定の磁場を形成する。磁場150mT、回転数300rpm、600秒間攪拌する。その後、現像剤を抜いた後、容器の内壁に付着したトナーを、
図6(b)に示すようにテープTにより周方向のぐるっと4方向(上下、左右のように)でサンプリングした。そのテープの濃度の平均値をMPIとした。テープとしては日東電工株式会社製、プリンタック(登録商標)を用いた。
【0047】
図7は互いにMPIが異なる各種トナーについて、地汚れ濃度を測定した結果を示すグラフである。MPI≧0.6であるトナーで地汚れ濃度が許容範囲である0.12以上になってしまっている。よって、トナー除去動作を行うのは、このようなMPI≧0.6であるトナー、特に、チタンレスのトナーに有効である。
【0048】
【表1】
表1はトナー除去動作を行わない場合の、全幅でのトナー消費量(現像ローラ全幅での画像面積率)を行にとり、列に、仮想分割領域における画像面積率が0,3,5の各パーセントの場合の地汚れ表面化の結果を記載した表である。使用したトナーは、
図7に示すMPI≧0.6のトナーである。白丸は地汚れなし。×は地汚れ有りを示す。全幅トナー消費量が10%や20%、かつ、仮想分割領域0%で×である。全幅トナー消費量がより多い30%では仮想分割領域0%に加え、3%でも×になる。全幅トナー消費量がより多い50%では仮想分割領域5%でも×になる。これらのことから、トナー除去動作の要否を判定する閾値としては、安全を見て、全幅トナー消費量が10%、仮想分割領域については5%を用いることが好ましい。例えば、全幅トナー消費量が10%以上、かつ、仮想分割領域の画像面積率は5%以下を要否判定の基準にすることが好ましい。
【0049】
【表2】
表2は表1に対し、全幅トナー消費量が10%以上、かつ、仮想分割領域の画像面積率は5%以下の場合に、5%以下の仮想分割領域に対応するベタ画像の潜像を非画像領域に形成して現像した場合の評価結果を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 :供給スクリュ
1c :供給軸受
2 :攪拌スクリュ
2c :攪拌軸受
3 :現像ローラ
4 :ドクタブレード
5 :ケーシング
5a :下ケース
5b :上ケース
10 :プロセスユニット
11 :感光体
12 :帯電部
13 :現像装置
14 :クリーニング部
15 :回収トナー搬送スクリュ
17 :画素カウント部
18 :光書込制御部
19 :段落
20 :プリンタ部
21 :供給路
22 :攪拌路
23 :仕切り板
30 :転写ユニット
31 :転写ローラ
40 :画像読取部
50 :光書込装置
60 :給紙部
61 :給紙トレイ
70 :給紙ローラ対
71 :搬送ローラ対
72 :レジストローラ対
80 :定着部
91 :排紙ローラ対
92 :排紙トレイ
93 :トナーボトル
94 :廃トナーボトル
100 :複写機
200 :メイン制御部
209 :プロセスモータ
210 :帯電バイアス電源
211 :現像バイアス電源
212 :転写バイアス電源
213 :レジストクラッチ
215 :操作表示部
216 :トナー固着判定部
217 :画素カウント部
218 :光書込制御部
219 :画像情報受信部
A :矢印
B :矢印
P :用紙
P2 :付着部
P3 :付着部
P4 :付着部
Vd :地肌部電位
Vl :潜像電位
X :主走査方向
Y :副走査方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【文献】特開2001-312126号公報
【文献】特開昭60-93455号公報
【文献】特開2007-310340公報