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特許7535250フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法、及び、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法、及び、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20240808BHJP
   G01N 11/00 20060101ALI20240808BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N3/40 B
G01N11/00 E
G01N33/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021013584
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022045878
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020151377
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第74回セメント技術大会公演要旨(発行日:令和2年5月18日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚
(72)【発明者】
【氏名】西 元央
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-010570(JP,B1)
【文献】特開2013-101070(JP,A)
【文献】特開昭52-099868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/40
G01N 11/00
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリートのワーカビリティを評価する方法であって、
上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程と、
容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程と、
得られた貫入力を貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程と、
を有し、
前記貫入抵抗値が7894Pa以下である、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法。
【請求項2】
前記貫入針が、直径35mm以上100mm以下の円形断面を有する、請求項1に記載のフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法。
【請求項3】
前記フレッシュモルタルが、フレッシュコンクリートをウェットスクリーニングしたモルタルである、請求項1又は2に記載のフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法。
【請求項4】
前記フレッシュモルタルの水結合材比(W/B)が、15%以上40%以下である、請求項1~3のいずれか一つに記載のフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法を用いて、フレッシュコンクリートのワーカビリティを評価する装置であって、
フレッシュモルタルを充填する容器と、
前記フレッシュモルタルに貫入させる貫入針と、
前記貫入針に貫入力を与える貫入力付与機構と、を備え、
前記貫入針の断面積が、900mm以上8000mm以下である、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法、及び、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーカビリティとは、コンクリートの変形及び流動性に対する抵抗性と材料分離に対する抵抗性を合わせた性質とされている。コンクリートのワーカビリティは、従来、スランプ試験やスランプフロー試験等の結果により評価されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、コンクリートのワーカビリティは、使用する材料や配合条件、環境条件などの様々な要因により変化するため、同一のスランプやスランプフローのコンクリートであっても、人が感じる扱いやすさには個人差がある。そこで、同一のスランプやスランプフローであっても、ワーカビリティを定量的に評価することが可能な方法について、検討が進められている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、回転粘度計を用いたレオロジー試験による方法が提案されている。レオロジー試験では、コンクリートのワーカビリティを評価する際に重要な降伏値や塑性粘度といったレオロジー定数を測定することができる。また、非特許文献2では、ベーンせん断試験による方法が提案されている。非特許文献2では、ベーンせん断試験で得られた最大せん断応力と、フレッシュモルタルをさじで撹拌した際のハンドリング(ワーカビリティ)との関係性が考察され、ベーンせん断試験の測定値が大きいものほどハンドリングは扱いにくいという結果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-53944号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】三島直生、畑中重光、大村修太朗「試料の変形状態が回転粘度計の測定結果に及ぼす影響に関する基礎的実験」、コンクリート工学年次論文集、コンクリート工学協会、Vol.29、No.2、pp.37-42、2007
【文献】平野修也、西祐宜、「ベーンせん断試験によるフレッシュコンクリートのハンドリングの評価に関する実験的検討」、コンクリート工学年次論文集、コンクリート工学協会、Vol.40、No.1、pp.1107-1112、2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レオロジー試験では試験装置が大掛かりであり、施工現場に適用することは困難である。また、ベーンせん断試験は特定の試験装置を用いて測定する必要がある。そのため、これらの方法を用いることでワーカビリティを評価できるものの、簡易的に評価できる方法とは言い難い。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、フレッシュコンクリートのワーカビリティを簡易的かつ定量的に評価することが可能なフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法、及び、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、フレッシュコンクリートのワーカビリティを評価する方法であって、上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程と、容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程と、得られた貫入力を貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程と、を有する。
【0009】
前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、得られた貫入抵抗値から、ワーカビリティを定量的に評価することができる。また、貫入力は、貫入針を貫入させる機構を備えていれば測定することができるため、特定の試験装置を用いる必要がなく、また、装置の規模を小さくすることができる。これにより、前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、簡易的にワーカビリティを評価することができる。
【0010】
本発明に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、前記貫入針が、直径35mm以上100mm以下の円形断面を有していてもよい。
【0011】
斯かる構成により、前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、ワーカビリティをより精度良く評価することができる。
【0012】
本発明に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、前記フレッシュモルタルが、フレッシュコンクリートをウェットスクリーニングしたモルタルであってもよい。
【0013】
斯かる構成により、前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、フレッシュモルタルを容易に得ることができるため、作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、前記フレッシュモルタルの水結合材比(W/B)が、15%以上40%以下であってもよい。
【0015】
斯かる構成により、前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、ワーカビリティをより精度良く評価することができる。
【0016】
本発明に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置は、フレッシュコンクリートのワーカビリティを評価する装置であって、フレッシュモルタルを充填する容器と、前記フレッシュモルタルに貫入させる貫入針と、前記貫入針に貫入力を与える貫入力付与機構と、を備え、前記貫入針の断面積が、900mm以上8000mm以下である。
【0017】
前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置は、得られた貫入抵抗値から、ワーカビリティを定量的に評価することができる。また、貫入力は、貫入力付与機構を備えていれば測定することができるため、特定の試験装置を用いる必要がなく、また、装置の規模を小さくすることができる。これにより、前記フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置は、簡易的にワーカビリティを評価することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フレッシュコンクリートのワーカビリティを簡易的かつ定量的に評価することが可能なフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法、及び、フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法>
以下、本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法について説明する。
【0020】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、容器にフレッシュモルタルを充填する工程(充填工程)と、貫入力を測定する工程(貫入力測定工程)と、貫入抵抗値を算出する工程(貫入抵抗値算出工程)と、を有する。以下、各工程を具体的に説明する。
【0021】
[充填工程]
充填工程は、上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程である。フレッシュモルタルは、例えば、JIS A 1147に記載の試験方法に従い、容器に充填することができる。
【0022】
容器は、フレッシュモルタルを収容する収容空間を形成するとともに、収容空間を上方へ向けて開放する開口部を備える。容器の形状及び材質は、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 1147に記載の容器を使用することができる。
【0023】
フレッシュモルタルは、作業性を向上させる観点から、フレッシュコンクリートをウェットスクリーニングしたモルタルであることが好ましい。ウェットスクリーニングには、例えば、JIS Z 8801-1に規定される5mmの網ふるいを使用することができる。フレッシュモルタルは、例えば、セメントと、水と、細骨材と、混和材と、混和剤と、を含む。
【0024】
セメント(C)としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられる。また、前記ポルトランドセメントにフライアッシュ、高炉スラグ等を混合した各種混合セメントも使用することができる。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
水(W)は、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。
【0026】
水結合材比(W/B)は、ワーカビリティをより精度良く評価する観点から、15%以上40%以下であることが好ましい。
【0027】
細骨材(s)とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。細骨材としては、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される山砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂、再生骨材、人工軽量骨材、回収骨材等が挙げられる。なお、これらの細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
混和剤としては、例えば、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、増粘剤、防せい剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、消泡剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
混和材としては、例えば、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、セメントキルンダスト、高炉フューム、転炉スラグ微粉末、無水石膏、半水石膏、二水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ウェットスクリーニングする前のフレッシュコンクリートは、さらに、粗骨材を含む。粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。粗骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。なお、粗骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
[貫入力測定工程]
貫入力測定工程は、容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程である。具体的には、まず、貫入力を測定する装置に貫入針を取り付け、フレッシュモルタルを充填した容器を、貫入針の下部に設置する。次に、容器に充填されたフレッシュモルタルに、上方から貫入針が10秒間で25mm貫入されるように装置を操作することにより、貫入力を測定することができる。
【0032】
貫入力は、貫入針を貫入させる機構(貫入力付与機構)により測定される。貫入力付与機構は、特に限定されるものではなく、例えば、後述する貫入力付与機構を用いることができる。
【0033】
貫入針の形状及び材質は、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 1147に記載の貫入針と同様の形状及び材質の貫入針を使用することができる。
【0034】
貫入針の断面積は、900mm以上8000mm以下であり、1900mm以上8000mm以下であることが好ましく、4000mm以上8000mm以下であることがより好ましい。なお、貫入針の断面積は、上述の範囲内で、使用材料や配合条件等に応じて適宜変更することができる。
【0035】
貫入針の断面形状は、例えば、円形、四角形、三角形等とすることができる。これらの中でも、貫入針は、直径35mm以上100mm以下の円形断面を有することが好ましい。前記直径は、50mm以上100mm以下であることがより好ましく、75mm以上100mm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
[貫入抵抗値算出工程]
貫入抵抗値の算出工程は、貫入力の測定工程で得られた貫入力を、貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程である。
【0037】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、斯かる構成により、得られた貫入抵抗値から、ワーカビリティを定量的に評価することができる。また、貫入力は、貫入針を貫入させる機構を備えていれば測定することができるため、特定の試験装置を用いる必要がなく、また、装置の規模を小さくすることができる。これにより、本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、簡易的にワーカビリティを評価することができる。
【0038】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、前記貫入針が、直径35mm以上100mm以下の円形断面を有することにより、ワーカビリティをより精度よく評価することができる。
【0039】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、前記フレッシュモルタルが、フレッシュコンクリートをウェットスクリーニングしたモルタルであることにより、フレッシュモルタルを容易に得ることができるため、作業性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、前記フレッシュモルタルの水結合材比(W/B)が、15%以上40%以下であることにより、ワーカビリティをより精度良く評価することができる。
【0041】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価方法は、例えば、水結合材比(W/B)が15%以上40%以下であって、スランプフローが37.5cm以上72.5cm以下のフレッシュコンクリートに適用することができる。なお、スランプフローは、JIS A 1150:2014に基づいて求められるものである。
【0042】
<フレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置>
以下、本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置について説明する。
【0043】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置は、フレッシュコンクリートのワーカビリティを評価する装置であって、フレッシュモルタルを充填する容器と、前記フレッシュモルタルに貫入させる貫入針と、前記貫入針に貫入力を与える貫入力付与機構と、を備え、前記貫入針の断面積が、900mm以上8000mm以下である。
【0044】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置に用いられる容器及び貫入針としては、前述の容器及び貫入針を用いることができる。
【0045】
貫入力付与機構では、例えば、油圧やスプリングを介して貫入針に貫入力を与えることができる。貫入力付与機構の操作方法は、特に限定されるものではなく、例えば、レバー等の入力機器を手動で操作してもよいし、自動で操作してもよい。
【0046】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置は、斯かる構成により、得られた貫入抵抗値から、ワーカビリティを定量的に評価することができる。また、貫入力は、貫入力付与機構を備えていれば測定することができるため、特定の試験装置を用いる必要がなく、また、装置の規模を小さくすることができる。これにより、本実施形態に係るフレッシュコンクリートのワーカビリティ評価装置は、簡易的にワーカビリティを評価することができる。
【実施例
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(フレッシュモルタルの作製)
表1及び表2に示す配合で各実施例及び比較例のフレッシュモルタルを作製した。具体的には、練上り直後におけるミニスランプフローがそれぞれ150±20mm、200±20mm、250±20mm、300±20mm、及び、350±20mm、空気量が2.0±1.5%となるように混和剤の添加量を調整し、各フレッシュモルタルを作製した。なお、表1及び表2における結合材(B)は、セメント(C)及びシリカフューム(SF)である。
【0049】
フレッシュモルタルの製造は、温度20℃の恒温環境下でホバートミキサを用いて行い、1バッチ当たりの練混ぜ量が2Lとなるようにした。練混ぜ方法は、セメント及び細骨材を15秒間空練りした後に、混和剤を含む水を投入し、3~13分間本練り(ミキサの回転数200rpm)を行った。各水結合材比における混和剤を含む水を投入してからの本練り時間は、W/Bが30%及び40%では3分間、W/Bが20%及び24%では5分間、W/Bが16%では13分間とした。
【0050】
表1及び表2に示す各成分の詳細を以下に示す。
セメント(OPC):普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
セメント(LPC):低熱ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
水(W):上水道水(千葉県船橋市)
細骨材(S):山砂(静岡県掛川市産)
混和材(シリカフューム(SF)):マイクロシリカ940U(エルケムジャパン社製)
混和剤(高性能AE減水剤(SP1)):マスターグレニウムSP8SV(BASFジャパン社製)
混和剤(高性能減水剤(SP2)):チューポールSSP-104(竹本油脂社製)
【0051】
(ミニスランプフローの測定)
ミニスランプフローは、JIS A 1171に基づき、ミニスランプコーン(上端φ50mm、下端φ100mm、高さ150mm)を用いて測定した。測定結果を表2に示す。
【0052】
(貫入抵抗値の測定)
貫入抵抗値は、デジタル式プロクター貫入抵抗試験機(ロードセル容量1kN、出力0.1N)を用いて測定した。まず、フレッシュモルタルを入れた容器(φ100mm×高さ75mm)に、表2に示す断面積及び直径の円形断面を有する貫入針を10秒間で25mm貫入させて貫入力を測定した。次に、得られた貫入力を貫入針の断面積で除して貫入抵抗値を求めた。測定結果を表2に示す。なお、貫入針の断面積が本発明の構成要件を満たさない各比較例のフレッシュモルタルでは、貫入力の測定を試みたが、検知することができなかった。
【0053】
(最大せん断応力の測定)
最大せん断応力は、ベーンせん断試験機を用いて最大トルク値を測定して算出した。最大トルク値は、フレッシュモルタルを入れた容器(φ100mm×高さ75mm)に断面が十字形状の羽根(ベーン幅30mm×高さ60mm)のロッドを挿入し、せん断速度が6rpmとなるように手動で回転させ、測定した。最大せん断応力は、得られた最大トルク値を式(1)に代入し、算出した。
【0054】
τmax=Mmax/π(DH/2+D/6) (1)
式中、τmaxは最大せん断応力(Pa)、Mmaxは最大トルク値(cN・m)、Dはベーン幅(mm)、Hはベーン高さ(mm)を意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すように、貫入抵抗値は同一ミニスランプフローにおいて比較すると、配合条件(W/B及びs/c)により異なる値を示すことが分かった。また、貫入抵抗値は、従来ワーカビリティを定量的に評価する方法として知られている最大せん断応力と、高い相関性を有することが確認された。したがって、貫入抵抗値は、ミニスランプフローでは評価することができないワーカビリティを簡易的かつ定量的に評価することができると言える。