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特許7535399III族窒化物積層物、半導体素子およびIII族窒化物積層物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】III族窒化物積層物、半導体素子およびIII族窒化物積層物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20240808BHJP
   C30B 25/02 20060101ALI20240808BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20240808BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240808BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240808BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240808BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20240808BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/02 Z
C23C16/34
H01L29/80 H
H01L21/324 C
H01L21/205
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020117719
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015092
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 序章
(72)【発明者】
【氏名】今野 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 健司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037507(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143653(WO,A1)
【文献】特開2015-199663(JP,A)
【文献】特開2020-97510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C30B 25/02
C23C 16/34
H01L 21/338
H01L 21/324
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
前記第1層上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第2層の厚さは、1μm未満であり、
前記第2層の主面における転位密度は、5×10 cm -2 以下である
III族窒化物積層物。
【請求項2】
前記第2層は、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下である
請求項1に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項3】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
前記第1層上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第2層は、厚さが1μm未満であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下である
III族窒化物積層物。
【請求項4】
前記第1層は、全域にわたってアルミニウム面である上面を有する
請求項1~3のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項5】
前記第2層中の酸素濃度は、前記第2層全体に亘って、1×1016cm-3以下である
請求項1~のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項6】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなり、全域にわたってアルミニウム面である上面を有する第1層と、
前記第1層の前記上面上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第2層中の酸素濃度は、前記第2層全体に亘って、1×10 16 cm -3 以下である
III族窒化物積層物。
【請求項7】
前記第2層中のシリコン濃度は、前記第2層全体に亘って、1×1016cm-3以下である
請求項1~のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項8】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなり、全域にわたってアルミニウム面である上面を有する第1層と、
前記第1層の前記上面上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第2層中のシリコン濃度は、前記第2層全体に亘って、1×10 16 cm -3 以下である
III族窒化物積層物。
【請求項9】
前記第2層中の鉄濃度および炭素濃度のそれぞれは、1×1016cm-3以下である
請求項1~のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項10】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなり、全域にわたってアルミニウム面である上面を有する第1層と、
前記第1層の前記上面上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第2層中の鉄濃度および炭素濃度のそれぞれは、1×10 16 cm -3 以下である
III族窒化物積層物。
【請求項11】
前記第1層は、厚さが200nm以上700nm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下である
請求項1~10のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項12】
前記第2層上に設けられ、窒化ガリウムよりも広いバンドギャップを有するIII族窒化物からなる第3層をさらに有する
請求項1~11のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項13】
前記下地基板は、炭化シリコンからなり、
前記第2層は、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有し、
27℃における前記第2層の<11-20>軸方向の歪み量は、+0.05%以上+0.3%以下である
請求項1~12のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項14】
前記下地基板は、サファイアからなり、
前記第2層は、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有し、
27℃における前記第2層の<11-20>軸方向の歪み量は、-0.2%以上+0.2%以下である
請求項1~12のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のIII族窒化物積層物が有する前記第2層を、動作層の少なくとも一部として備える、半導体素子。
【請求項16】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第1層は、窒化ガリウムからなる第2層が形成される上面を有し、
前記第1層の前記上面は、前記第2層の厚さを1μm未満としつつ、前記第2層の主面における転位密度が5×10 cm -2 以下となるように、前記第2層を成長させることが可能に構成されている
III族窒化物積層物。
【請求項17】
炭化シリコンまたはサファイアからなる下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下であり、
前記第1層は、窒化ガリウムからなる第2層が形成される上面を有し、
前記第1層の前記上面は、前記第2層の厚さを1μm未満としつつ、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下となるように、前記第2層を成長させることが可能に構成されている
III族窒化物積層物。
【請求項18】
下地基板上に、窒化アルミニウムからなる第1層を形成する工程と、
水素ガスを含む雰囲気下で、前記第1層の熱処理を行う工程と、
前記第1層上に、窒化ガリウムからなる第2層を形成する工程と、
を有し、
前記第1層を形成する工程では、
前記第1層の厚さを100nm超1μm以下としつつ、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下となるように、前記第1層を形成する
III族窒化物積層物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物積層物、半導体素子およびIII族窒化物積層物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)は、携帯電話の基地局用のパワーアンプとして広く用いられている(例えば特許文献1)。III族窒化物系のHEMTでは、従来用いられてきたSi系デバイスと比較して、1素子あたりに投入できる電力を大幅に増加させることができる。これにより、基地局を小型化することができ、設置コストを大幅に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-286741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、デバイス特性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
前記第1層上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下である
III族窒化物積層物が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
上述の態様に記載のIII族窒化物積層物が有する前記第2層を、動作層の少なくとも一部として備える、半導体素子が提供される。
【0007】
本発明の更に他の態様によれば、
下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下である
III族窒化物積層物が提供される。
【0008】
本発明の更に他の態様によれば、
下地基板上に、窒化アルミニウムからなる第1層を形成する工程と、
水素ガスを含む雰囲気下で、前記第1層の熱処理を行う工程と、
前記第1層上に、窒化ガリウムからなる第2層を形成する工程と、
を有し、
前記第1層を形成する工程では、
前記第1層の厚さを100nm超1μm以下としつつ、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下となるように、前記第1層を形成する
III族窒化物積層物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デバイス特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るIII族窒化物積層物を示す概略断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る半導体素子を示す概略断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るIII族窒化物積層物の製造方法および半導体素子の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態に係るIII族窒化物積層物を示す概略断面図である。
図5】実験1において、AlN層の厚さに対するAlNの(0002)回折および(10-12)回折のそれぞれの半値幅を示す図である。
図6】実験2において、GaNの(0002)回折および(10-12)回折のそれぞれの半値幅が所定条件を満たすときの、AlN層の厚さおよびGaN層の厚さの範囲を示す図である。
図7A】実験3の実施例の半導体素子を示す概略断面図である。
図7B】実験3の実施例のSIMS結果を示す図である。
図8A】実験3の比較例1の半導体素子を示す概略断面図である。
図8B】実験3の比較例1のSIMS結果を示す図である。
図9A】実験3の比較例2の半導体素子を示す概略断面図である。
図9B】実験3の比較例2のSIMS結果を示す図である。
図10A】実験3の比較例3の半導体素子を示す概略断面図である。
図10B】実験3の比較例3のSIMS結果を示す図である。
図11A】従来の半導体素子におけるゲート電圧に対するドレイン電流の一例を示す図である。
図11B】実験3において、ストレス印加後の閾値電圧変動に対するバッファリーク電流を示す図である。
図12】実験4において、電子走行層におけるGaNの(10-12)回折の半値幅に対する素子寿命を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明者等の得た知見>
まず、本発明者等が得た知見について説明する。
【0012】
III族窒化物系のHEMTは、例えば、所定の下地基板と、窒化アルミニウム(AlN)からなる第1層と、窒化ガリウム(GaN)からなる第2層と、ワイドバンドギャップを有する第3層と、を有する。このようなIII族窒化物系のHEMTにおけるデバイス特性としては、例えば、高移動度、素子の高信頼性、低バッファリーク電流が求められる。
【0013】
しかしながら、III族窒化物系のHEMTでは、以下のような理由により、デバイス特性を最適化するのが困難となっていた。
【0014】
高移動度および高信頼性を得るためには、GaNからなる第2層の転位密度を低減することが求められる。この方法としては、例えば、AlNからなる第1層上に第2層を成長させる初期段階に、第2層を3次元成長させる方法が考えられる。当該方法では、第2層の3次元成長の過程で、転位同士を会合させることで消失させる。これにより、第2層の転位密度を低減することができる。第2層の転位密度を低減することで、例えば、ゲート電極の劣化を抑制することができる。その結果、高移動度と高信頼性とを実現することができる。この場合、第2層の膜厚は、転位密度を充分に低減させるための3次元成長の膜厚と、その後に第2層を平坦化させるための膜厚とを含めて、およそ1μm以上が必要となる。
【0015】
しかしながら、上述の第2層を3次元成長させる方法では、第2層の3次元成長の過程で、島状結晶における傾斜した結晶面(ファセット)を介して、酸素(O)等の不純物が混入する。第2層中にOが混入した部分では、Oがn型不純物(ドナー)となるため、局所的に自由電子濃度が上昇する。このため、第2層における第1層側の領域(すなわち、第2層内の3次元成長した領域)に流れるリーク電流(バッファリーク電流ともいう)が増大する。第2層の2次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electron Gas)をピンチオフしたときに上述のバッファリーク電流が増大すると、On/Off電流比が低下する可能性がある。また、バッファリーク電流が大きい場合には、隣接する一対の素子において、一方の素子の動作が、他方の素子の動作に影響を与えてしまう可能性もある。
【0016】
なお、上述の第2層の3次元成長を抑制し、平坦な第2層を薄く成長させる場合では、第2層の転位密度を充分に低減することができない。このため、ゲートリークを充分に抑制することができない。その結果、HEMTの素子としての信頼性が低下する可能性がある。
【0017】
一方で、上述のバッファリーク電流を抑制するため、AlNからなる第1層とGaNからなる第2層との界面近傍において、深いエネルギー準位を形成する鉄(Fe)および炭素(C)などの不純物を高濃度にドープする方法が考えられる。
【0018】
しかしながら、当該方法では、深いエネルギー準位を形成する不純物が帯電および放電することに伴って、ピンチオフ電圧が大きな時定数を持って変化し、いわゆるヒステリシスが生じうる。このため、動作電流が安定しない可能性がある。したがって、上述のバッファリーク電流の抑制と、ヒステリシスを抑制した安定動作との間に、深刻なトレードオフが生じることとなる。
【0019】
以上のように、従来のIII族窒化物系のHEMTでは、デバイス特性として、高移動度、高信頼性、低バッファリーク電流のうち少なくともいずれかを実現することが困難となっていた。
【0020】
本発明は、発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0021】
[本発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<本発明の第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
(1)III族窒化物積層物
図1を用い、本実施形態に係るIII族窒化物積層物(III族窒化物積層基板)について説明する。図1は、本実施形態に係るIII族窒化物積層物を示す概略断面図である。
【0024】
なお、以下では、ウルツ鉱構造を有するIII族窒化物半導体などの結晶において、<0001>軸を「c軸」といい、(0001)面を「c面」という。なお、(0001)面を「+c面(III族元素極性面)」といい、(000-1)面を「-c面(窒素(N)極性面)」ということがある。また、<1-100>軸(例えば[1-100]軸)を「m軸」といい、{1-100}面を「m面」という。また、<11-20>軸(例えば[11-20]軸)を「a軸」といい、{11-20}面を「a面」という。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のIII族窒化物積層物1(以下、「積層物1」ともいう)は、例えば、下地基板10と、核形成層(第1層)20と、電子走行層(第2層)30と、電子供給層(第3層)40と、を有している。なお、積層物1は、さらにキャップ層(第4層)50を有していてもよい。ただし、後述するように、キャップ層50は設けられていなくてもよい。
【0026】
(下地基板)
下地基板10は、例えば、炭化シリコン(SiC)またはサファイア(Al)からなっている。ここでは、下地基板10は、例えば、SiC基板である。下地基板10としてのSiC基板のポリタイプは、限定されるものではないが、例えば、4H、6Hまたは3Cである。また、下地基板10としてのSiC基板は、半絶縁性であることが好ましい。
【0027】
下地基板10は、下地面(主面)11を有している。本実施形態において、下地面11に対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面((0001)面、Si面)である。
【0028】
下地基板10のc軸は、下地面11の法線に対して所定のオフ角で傾斜していてもよい。下地面11のオフ角の大きさは、例えば、0°超1°以下であることが好ましく、0°超0.1°以下であることがより好ましい。下地面11のオフ角は、上述の範囲内で面内に分布を有していてもよい。また、下地面11のオフ角の傾斜方向(オフ方向)は、限定されるものではないが、例えば、a軸方向であってもよいし、或いは、m軸方向であってもよい。
【0029】
下地基板10は、例えば、半導体素子を製造する際の生産性を向上させるために大面積を有していることが好ましい。具体的には、下地基板10の直径は、例えば、2インチ(50.8mm)以上であり、好ましくは4インチ(100mm)以上であり、より好ましくは6インチ(150mm)以上である。
【0030】
下地基板10の厚さは、特に限定されるものではないが、下地基板10の直径に依存する。具体的には、直径2インチの下地基板10の厚さは、例えば、300μm以上500μm以下(典型的には430μm)であり、直径4インチの下地基板10の厚さは、例えば、400μm以上1000μm以下(典型的には500μm)であり、直径6インチの下地基板10の厚さは、例えば、400μm以上1500μm以下(典型的には600μm)である。
【0031】
また、下地基板10の下地面11の5μm角領域を原子間力顕微鏡(AFM)により測定した二乗平均平方根粗さRMSは、例えば、1nm以下、好ましくは0.5nm以下である。
【0032】
(核形成層)
核形成層20は、例えば、後述の電子走行層30を成長させるための結晶核を生成するよう構成されている。具体的には、核形成層20は、例えば、AlNからなっている。また、核形成層20は、例えば、下地基板10上に設けられている。核形成層20は、例えば、下地基板10の下地面11上にAlNの単結晶をヘテロエピタキシャル成長させることにより形成されている。
【0033】
核形成層20は、主面21を有している。ここでいう「主面21」は、表面側の面のことを意味する(後述の主面31および主面41も上記と同様に表面側の面のことを意味する)。本実施形態において、核形成層20が下地基板10のc面からなる下地面11上にエピタキシャル成長していることから、核形成層20の主面21に対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面((0001)面、Al面)である。
【0034】
核形成層20の厚さは、例えば、100nm超1μm以下である。従来技術においては、核形成層20としてのAlN層の厚さは100nm以下とされてきた。このため、下地基板10から核形成層20を介して後述の電子走行層30に向けて、不純物が拡散する可能性があった。具体的には、下地基板10としてSiC基板を用いた場合には、SiC基板から電子走行層30へのSiの拡散が不可避であった。このため、従来技術においては、たとえ電子走行層30の3次元成長を行わない場合でも、AlNからなる核形成層20とGaNからなる電子走行層30との界面近傍に、深いエネルギー準位を形成する鉄(Fe)および炭素(C)などの不純物を高濃度にドープしない限り、バッファリークが抑制できないという課題があった。これに対し、本実施形態では、核形成層20の厚さを100nm超とすることで、下地基板10から核形成層20を介して電子走行層30に向けた不純物の拡散を抑制することができる。具体的には、下地基板10がSiC基板である場合には、下地基板10から電子走行層30に向けたSiの拡散を抑制することができる。これにより、AlNからなる核形成層20とGaNからなる電子走行層30との界面近傍に、深いエネルギー準位を形成するFeおよびCなどの不純物を高濃度にドープしなくても、バッファリークを抑制することができる。
【0035】
一方で、核形成層20の厚さが1μm超であると、核形成層20と他の層との主に線膨張係数差に起因して、積層物1が反ったり、核形成層20などにクラックが生じたりする可能性がある。これに対し、本実施形態では、核形成層20の厚さを1μm以下とすることで、核形成層20と他の層との線膨張係数差に起因した積層物1の反りおよび核形成層20などのクラックを抑制することができる。
【0036】
また、後述する製造方法を適用した核形成層20の厚さに対して、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの所定結晶面回折の半値幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)をプロットしたときに、AlNのX線回折半値幅は、下に凸の傾向を示す。このため、核形成層20の厚さが100nm以下であると、AlNのX線回折半値幅が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態では、核形成層20の厚さを100nm超とすることで、AlNのX線回折半値幅の増大を抑制することができる。すなわち、核形成層20の結晶性の低下を抑制することができる。
【0037】
さらに、核形成層20の厚さは、例えば、200nm以上700nm以下であることが好ましく、300nm以上500nm以下であることがより好ましい。核形成層20の厚さを上記範囲内とすることで、AlNのX線回折半値幅をより小さくすることができる。すなわち、核形成層20の結晶性を向上させることができる。
【0038】
具体的には、核形成層20は、例えば、厚さが100nm超1μm以下であるとき、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が500秒以下である。
【0039】
また、核形成層20は、例えば、厚さが200nm以上700nm以下であるとき、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下である。
【0040】
さらに、核形成層20は、例えば、厚さが300nm以上500nm以下であるとき、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が180秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が380秒以下である。
【0041】
このように核形成層20の結晶性を向上させることで、核形成層20上に形成する後述の電子走行層30の結晶性を、電子走行層30の成長時に3次元成長を導入しなくても、向上させることができる。
【0042】
核形成層20は、例えば、本実施形態のようにHVPE法などを用いて高品質に該核形成層20を形成した場合には、下地面11に沿った方向(例えばa軸方向)に歪みを有している。核形成層20のa軸方向の歪み量は、例えば、下地基板10と核形成層20との線膨張係数差(および格子定数差)に依存する。
【0043】
なお、ここでいう「a軸方向の歪み量」は、例えば、所定層を構成する結晶のa軸長(a軸方向の格子定数)が、無歪みのバルク結晶のa軸長から変化した割合を意味する。歪み量が正の値の場合は、結晶が引張歪みを有していることを意味し、歪み量が負の値の場合は、結晶が圧縮歪みを有していることを意味する。
【0044】
核形成層20のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、以下の式(1)で求められる。
ε=(a-aAlN)/aAlN×100・・・(1)
ただし、aは、核形成層20を構成するAlN結晶のa軸長であり、aAlNは、無歪みのバルクAlN結晶のa軸長である。
【0045】
なお、核形成層20のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、以下の手順で求めることができる。まず、X線回折測定(2θ-ωスキャン)により核形成層20の(0002)面の回折角を測定し、核形成層20のc軸長(c軸方向の格子定数)、cを求める。核形成層20のc軸長cと、AlNのポアソン比νと、核形成層20のa軸方向の歪み量εとは、以下の式(2)を満たす。
(c-cAlN)/cAlN=-2ν/(1-ν)×ε ・・・(2)
【0046】
AlNにおけるポアソン比νは0.2とされているため、以下の式(3)により、c軸長cの変化に基づいて、核形成層20のa軸方向の歪み量εを求めることができる。
ε=-2(c-cAlN)/cAlN ・・・(3)
【0047】
具体的には、本実施形態の下地基板10がSiCからなる場合では、(室温27℃における)核形成層20のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、+0.1%以上+0.5%以下である。なお、歪み量が正の値であることから、核形成層20を構成するAlN結晶が引張歪みを有していることを意味する。
【0048】
(電子走行層)
電子走行層30は、例えば、後述のように、電子供給層40側に位置する領域に2次元電子ガス(2DEG)を生成させ、半導体素子2を駆動させたときに電子を走行可能に構成されている。具体的には、電子走行層30は、例えば、GaNからなっている。また、電子走行層30は、例えば、核形成層20上に設けられている。電子走行層30は、例えば、核形成層20の主面21上にGaNの単結晶をヘテロエピタキシャル成長させることにより形成されている。
【0049】
電子走行層30は、例えば、主面31を有している。本実施形態において、電子走行層30の主面31に対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面((0001)面、Ga面)である。
【0050】
本実施形態では、電子走行層30の厚さは、例えば、1μm未満である。電子走行層30の厚さが1μm以上であると、電子走行層30と他の層との主に線膨張係数差に起因して、積層物1が反る可能性がある。このため、リソグラフィの際にパターン不良が生じる可能性がある。また、電子走行層30を構成するGaN自体は、従来技術のようにFeまたはCをドーピングしない限り、僅かながら導電性を有している材料である。このため、電子走行層30の厚さが1μm以上である場合のように、電子走行層30の厚さを不必要に厚くすると、バッファリーク電流を増加させる可能性がある。これに対し、本実施形態では、電子走行層30の厚さを1μm未満とすることで、電子走行層30と他の層との線膨張係数差に起因した積層物1の反りを抑制することができる。これにより、リソグラフィ精度を向上させることができる。また、本実施形態では、電子走行層30の厚さを1μm未満とすることで、電子走行層30を構成するGaN自体の僅かな導電性に起因したバッファリーク電流を抑制することができる。
【0051】
なお、電子走行層30の厚さの下限値は、限定されるものではない。ただし、電子走行層30に所定の2DEGを生成させる観点では、電子走行層30の厚さは、例えば、100nm以上であることが好ましい。
【0052】
本実施形態では、核形成層20の結晶性を向上させるとともに、後述の熱処理工程S30において核形成層20の主面21に点欠陥を導入することで、核形成層20上に電子走行層30を成長させるときの電子走行層30の歪みを緩和することができる。その結果、本実施形態では、電子走行層30を3次元成長させなくても、高品質な電子走行層30を成長させることが可能となる。
【0053】
ここで、核形成層20がAlNであり、且つ、電子走行層30がGaNである場合には、これらの間に大きな格子不整合(およそ2.5%)が生じ、これに起因した歪(格子歪)が生じる。このため、電子走行層30を成長する際には、一般的には、転位の導入による格子歪の緩和が不可避である。
【0054】
従来において、GaN層を3次元成長させ高品質なGaNを得る場合には、3次元成長により、GaN/AlN界面で生じた転位を相互に会合させることで(いわゆる対消滅により)、GaN層上部に達する貫通転位密度を10cm-2台に低減することができる。この場合に得られるGaN層は、成長中では、転位の導入により格子歪が緩和されるため、無歪に近い状態であるのに対して、当該GaN層は、室温では、成長後の降温時に生じる熱膨張係数差に起因した歪(熱歪み)を持った状態となる。
【0055】
一方、従来において、GaN層の3次元成長を行わない場合には、AlN層上にGaN層を成長した際に、GaN層中に転位が導入され、格子歪みが緩和されるため、GaN層は無歪の状態となる。このときのGaN層の転位密度は、GaNの成長厚の増大とともに、上述の対消滅により徐々に減少する。しかしながら、この場合における転位密度の減少の度合いは、GaN層を3次元成長させる場合よりも著しく低い。具体的には、GaN層厚が1~2μm程度である場合には、10~1010cm-2程度の転位がGaN層表面に残留することとなる。この場合に得られるGaN層も、成長中では、転位の導入により格子歪みが緩和され、無歪に近い状態である。一方で、当該GaN層は、室温では、成長後の降温時に生じる熱膨張係数差に起因した熱歪を持った状態となりうるが、当該GaN層が比較的多くの転位を有するため、これらの転位の効果により熱歪の一部が緩和され、残留歪は比較的小さくなる。
【0056】
これに対し、本実施形態では、AlNからなる核形成層20の結晶性を向上させるとともに、後述の熱処理工程S30において核形成層20の主面21に点欠陥を導入することで、GaNからなる電子走行層30の成長中における格子歪の発生を抑制することができる。これにより、電子走行層30/核形成層20の界面(すなわちGaN/AlN界面)における転位の発生自体を抑制することができる。その結果、成長中の電子走行層30を格子歪が抑制されているにも関わらず、電子走行層30の転位密度を後述のように5×10cm-2以下とすることが可能となる。なお、この場合に得られる電子走行層30は、成長中では、転位の発生を抑制しつつ無歪に近い状態であるのに対して、室温では、成長後の降温時に生じる熱膨張係数差に起因した熱歪を持った状態となる。
【0057】
なお、電子走行層30のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、以下の式(4)で求められる。
ε=(a-aGaN)/aGaN×100・・・(4)
ただし、aは、電子走行層30を構成するGaN結晶のa軸長であり、aGaNは、無歪みのバルクGaN結晶のa軸長である。
【0058】
本実施形態の下地基板10がSiCからなる場合では、(室温27℃における)電子走行層30のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、+0.05%以上+0.3%以下である。
【0059】
本実施形態では、高品質な核形成層20上に電子走行層30を成長させるときの電子走行層30の格子歪を緩和することで、電子走行層30は、薄くても、高い結晶性を有している。具体的には、電子走行層30の厚さが上述の範囲内であっても、電子走行層30は、例えば、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下、好ましくは150秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下、好ましくは300秒以下、より好ましくは200秒以下、さらに好ましくは150秒以下である。
【0060】
本実施形態では、高品質な核形成層20上に電子走行層30を成長させるときの電子走行層30の格子歪を緩和することで、電子走行層30を3次元成長させず、且つ、厚く成長させなくても、上述のように、電子走行層30の転位密度が低減されている。具体的には、電子走行層30の厚さが上述の範囲内であっても、電子走行層30の主面31における転位密度は、例えば、5×10cm-2以下、好ましくは1×10cm-2未満、より好ましくは7×10cm-2以下である。これにより、半導体素子2を駆動したときのゲートリークを低減することができる。なお、電子走行層30の主面31における転位密度は、例えば、多光子励起顕微鏡などにより測定することができる。
【0061】
なお、電子走行層30の主面31における転位密度の下限値は、3次元成長をさせない方法を採用することから、例えば、1×10cm-2となると考えられる。
【0062】
本実施形態では、後述の製造方法により、電子走行層30を3次元成長させることなく、c面成長(横方向成長)させることで、c面以外のファセットを介したOなどの不純物の混入が抑制されている。具体的には、電子走行層30中のO濃度は、例えば、電子走行層30全体に亘って、1×1016cm-3以下である。このように、電子走行層30中でn型不純物(ドナー)となるOの混入を抑制することで、電子走行層30中の自由電子濃度の上昇を抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、下地基板10がSiC基板である場合に、核形成層20の厚さを100nm超とすることで、下地基板10から電子走行層30に向けたSiの拡散が抑制されている。具体的には、電子走行層30中のSi濃度は、例えば、電子走行層30全体に亘って、1×1016cm-3以下である。このように、電子走行層30中でn型不純物(ドナー)となるSiの混入を抑制することで、電子走行層30中の自由電子濃度の上昇を抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、上述のように、電子走行層30中でn型不純物となるSiおよびOの混入を抑制することで、電子走行層30中に、深いエネルギー準位を形成するFeおよびCなどの不純物を高濃度にドープする必要が無い。具体的には、電子走行層30中のFe濃度およびC濃度のそれぞれは、例えば、1×1016cm-3以下である。これにより、半導体素子2の駆動時に、深いエネルギー準位を形成する不純物の帯電および放電を抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、後述の製造方法により、電子走行層30を横方向成長させることで、電子走行層30は、良好な表面平坦性を有している。具体的には、電子走行層30の主面31の5μm角領域を原子間力顕微鏡(AFM)により測定した二乗平均平方根粗さRMSは、例えば、1nm以下、好ましくは0.5nm以下である。
【0066】
(電子供給層)
電子供給層40は、例えば、電子走行層30内に2DEGを生成させるよう構成されている。具体的には、電子供給層40は、電子走行層30を構成するGaNよりも広いバンドギャップと、GaNの格子定数よりも小さい格子定数とを有するIII族窒化物からなっている。電子供給層40を構成するIII族窒化物としては、例えば、AlN、AlGaN、InAlN、またはAlInGaNが挙げられ、AlInGa1-x-yN(ただし、0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成式で表される。電子供給層40は、例えば、電子走行層30上に設けられている。電子供給層40は、例えば、電子走行層30の主面31上に上述のIII族窒化物の単結晶をヘテロエピタキシャル成長させることにより形成されている。
【0067】
電子供給層40は、主面41を有している。本実施形態において、電子供給層40の主面41に対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面((0001)面、III族元素極性面)である。
【0068】
電子供給層40の厚さは、例えば、5nm以上50nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下である。電子供給層40の厚さが5nm未満であると、ゲートリーク電流が大きくなる可能性がある。これに対し、電子供給層40の厚さを5nm以上とすることにより、ゲートリーク電流を低減することができる。さらに、電子供給層40の厚さを10nm以上とすることにより、ゲートリーク電流を安定的に低減することができる。一方で、電子供給層40の厚さが50nm超であると、閾値電圧が大きくなり、スイッチング特性が悪くなる可能性がある。これに対し、電子供給層40の厚さを50nm以下とすることにより、閾値電圧を所定値以下とし、スイッチング特性を向上させることができる。電子供給層40の厚さを30nm以下とすることにより、スイッチング特性を安定的に向上させることができる。
【0069】
本実施形態では、電子供給層40は、電子走行層30と同様に、良好な表面平坦性を有している。具体的には、電子供給層40の主面41の5μm角領域を原子間力顕微鏡(AFM)により測定した二乗平均平方根粗さRMSは、例えば、電子走行層30のそれと同等である。
【0070】
(キャップ層)
キャップ層50は、例えば、成長後の降温時に電子供給層40の主面41からのGa成分またはIn成分の蒸発を抑制するよう構成されている。具体的には、キャップ層50は、例えば、例えば、GaNからなっている。キャップ層50は、例えば、電子供給層40上に設けられている。キャップ層50は、例えば、電子供給層40の主面41上にGaNの単結晶をヘテロエピタキシャル成長させることにより形成されている。このようにGaNからなるキャップ層50を電子供給層40の主面41上に形成することで、例えば、電子供給層40がAlGaNからなる場合に、成長後の降温時にAlGaN表面からGaが選択的に蒸発することを抑制し、AlリッチなAlGaN層が形成されるのを抑制することができる。
【0071】
キャップ層50の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下である。キャップ層50の厚さが1nm未満であると、Ga成分またはIn成分の蒸発を抑制することが困難となる。これに対し、キャップ層50の厚さを1nm以上、好ましくは2nm以上とすることで、Ga成分またはIn成分の蒸発を安定的に抑制することができる。一方で、キャップ層50の厚さが10nm超であると、半導体素子2を作製した際に、キャップ層50内を流れる電流成分が顕著となり、デバイス動作を阻害してしまう可能性がある。これに対し、キャップ層50の厚さを10nm以下、好ましくは5nm以下とすることで、キャップ層50内を流れる電流成分の発生を抑制することができる。これにより、キャップ層50に起因したデバイス動作の阻害を抑制することができる。
【0072】
以上のように構成される積層物1では、上述のように電子走行層30の厚さを薄くすることで、当該積層物1の反りを小さくすることができる。具体的には、積層物1の長さ50.8mmあたりの反りは、例えば、20μm以下、好ましくは10μm以下である。これにより、積層物1の反りに起因したリソグラフィ精度の低下を抑制することができる。その結果、半導体素子2の製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0073】
なお、積層物1の反りは、小さければ小さいほどよく、例えば、0μm以上である。
【0074】
(2)半導体素子
次に、図2を用い、本実施形態の半導体素子について説明する。図2は、本実施形態に係る半導体素子を示す概略断面図である。
【0075】
図2に示すように、本実施形態の半導体素子2は、例えば、上記した積層物1を用いて製造されるものであり、HEMTとして構成されている。具体的には、半導体素子2は、例えば、下地基板10と、核形成層20と、電子走行層30と、電子供給層40と、キャップ層50と、ゲート電極61と、ソース電極62と、ドレイン電極63と、を有している。すなわち、半導体素子2は、上述のGaNからなる電子走行層30を動作層の少なくとも一部として備えている。
【0076】
(電極)
ゲート電極61は、電子供給層40上に設けられている。ゲート電極61は、例えば、電子供給層40に接していてもよいし、或いは、キャップ層50を介して電子供給層40上に設けられていてもよい。ゲート電極61は、例えば、ニッケル(Ni)と金(Au)との複層構造(Ni/Au)からなっている。
【0077】
ソース電極62は、例えば、キャップ層50を介して電子供給層40上に設けられている。ソース電極62は、ゲート電極61から所定距離離れた位置に配置されている。ソース電極62は、例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)との複層構造(Ti/Al)からなっている。
【0078】
ドレイン電極63は、例えば、キャップ層50を介して電子供給層40上に設けられている。ドレイン電極63は、ゲート電極61を挟んでソース電極62と反対側にゲート電極61から所定距離離れた位置に配置されている。ドレイン電極63は、ソース電極62と同様に、例えば、TiとAlとの複層構造からなっている。なお、ソース電極62およびドレイン電極63では、Ti/Alの複層構造上にNi/Auの複層構造が積層されていてもよい。
【0079】
(3)III族窒化物積層物の製造方法および半導体素子の製造方法
次に、図1図3を用い、本実施形態に係るIII族窒化物積層物の製造方法および半導体素子の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係るIII族窒化物積層物の製造方法および半導体素子の製造方法を示すフローチャートである。
【0080】
本実施形態に係る半導体素子の製造方法は、例えば、下地基板準備工程S10と、核形成層形成工程S20と、熱処理工程S30と、電子走行層形成工程S40と、電子供給層形成工程S50と、キャップ層形成工程S60と、電極形成工程S70と、を有する。
【0081】
(S10:下地基板準備工程)
まず、下地基板10を準備する。下地基板10として、例えば、ポリタイプ4Hの半絶縁性SiC基板を準備する。
【0082】
(S20:核形成層形成工程)
次に、下地基板10の下地面11上に、AlNの単結晶からなる核形成層20をヘテロエピタキシャル成長させる。核形成層20の成長は、例えば、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法により行う。
【0083】
III族(Al)原料ガスとしては、例えば、一塩化アルミニウム(AlCl)ガスまたは三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを用いる。AlClガスまたはAlClガスは、HVPE装置内に設置した金属Al上へ塩化水素(HCl)ガスを供給することで生成することができる。N原料ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガスを用いる。これらの原料ガスを、水素(H)ガス、窒素(N)ガス、またはこれらの混合ガスを用いたキャリアガスと混合して供給してもよい。
【0084】
このとき、本実施形態では、核形成層20の結晶性が高くなるように、核形成層20を形成する。
【0085】
例えば、核形成層20の厚さを100nm超1μm以下としつつ、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が250秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が500秒以下となるように、核形成層20を形成する。
【0086】
好ましくは、例えば、核形成層20の厚さを200nm以上700nm以下としつつ、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下となるように、核形成層20を形成する。
【0087】
より好ましくは、例えば、核形成層20の厚さを300nm以上500nm以下としつつ、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が180秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が380秒以下となるように、核形成層20を形成する。
【0088】
このような高品質な核形成層20を形成するための方法としては、例えば、結晶成長条件を制御する。結晶成長条件としては、例えば、成長温度、V/III比、成長速度および成長圧力のうち少なくともいずれかを適切に制御する。これにより、高品質な核形成層20を成長させることができる。なお、ここでいう「V/III比」とは、III族(Al)原料ガスの供給量(分圧)に対するV族(N)原料ガスの供給量(分圧)の比である。
【0089】
具体的には、結晶成長条件を、例えば、以下のように設定する。
成長温度:900℃以上1300℃以下
V/III比:0.2以上200以下
成長速度:0.5nm/分以上3000nm/分以下
成長圧力:0.9気圧(atm)以上1.3気圧以下
【0090】
このとき、結晶成長時の圧力(成長圧力)を、上述のように、大気圧近傍の0.9気圧以上1.3気圧以下とするのが好ましい。成長圧力を0.9気圧以上とすることで、すなわち、減圧成長装置を用いた場合よりも高い圧力下で成長することで、高品質な核形成層20を容易に成長させることができる。一方で、成長圧力を1.3気圧超としても、結晶成長の観点からは不都合はないが、そのような高圧に耐える成長装置は耐圧構造を必要とするため、製造コストの観点からは成長圧力を1.3気圧以下とするのが好ましい。
【0091】
なお、このとき、HVPE装置の成長室内に各種ガスを導入するガス供給管のノズルへのAlNの付着を防止するために、HClガスを流してもよい。この場合、AlClガスまたはAlClガスに対するHClガスの供給量の比率を、例えば、0.1以上100以下とする。
【0092】
また、上述のような高品質な核形成層20を形成するための方法としては、例えば、核形成層20を成長させた後、Nガスを含む雰囲気下で熱処理(アニール処理)を行ってもよい。このとき、例えば、熱処理温度を、例えば、1400℃以上1700℃以下とすることが好ましい。
【0093】
以上のように結晶成長条件を制御することで、核形成層20の結晶性を向上させることができる。
【0094】
なお、本実施形態のように得られた核形成層20の結晶性が高い場合には、核形成層形成工程S20後の降温時、または後述の熱処理工程S30後の降温時に、下地基板10と核形成層20との線膨張係数差に起因して、核形成層20に引張歪みが生じることとなる。一方で、従来のように、核形成層20の結晶性が低い場合、すなわち、核形成層20が多くの転位を含む場合には、転位の存在により熱歪が緩和されるため、室温付近で残留する歪は比較的小さくなる。(+0.05%未満)。
【0095】
(S30:熱処理工程)
次に、核形成層20に対して熱処理を行う。当該熱処理工程S30は、例えば、核形成層形成工程S20後に温度を下げることなく、同一のHVPE装置の成長室内で連続的に行う。なお、熱処理工程S30は、核形成層形成工程S20後に、別の装置で熱処理を行ってもよい。
【0096】
本実施形態では、例えば、Hガスを含む雰囲気下で、核形成層20の熱処理を行う。なお、Hガスは、Nガス、アルゴンガス(Arガス)等の不活性ガスと混合して供給してもよい。
【0097】
ガスを含む雰囲気下での当該熱処理を行うことで、核形成層20の主面21上に成長させる電子走行層30の歪みが緩和されるように、核形成層20の主面21を改質することができる。電子走行層30の歪み緩和のメカニズムは現状明らかではないが、例えば、以下のメカニズムが考えられる。すなわち、熱処理工程S30において、雰囲気内にHガスを含むことで、核形成層20を構成するAlN結晶中に、点欠陥が導入される。具体的には、AlN中のN原子が表面でHと結合して、NHとなって脱離する。このため、AlN中に多量のN空孔が形成され、N空孔が原子サイズのボイドとして働く。その結果、核形成層20上に成長させる電子走行層30の歪みを緩和できるものと考えられる。
【0098】
このとき、NHガスを実質的に含まない雰囲気下で、核形成層20の熱処理を行うことが好ましい。ここでいう「NHガスを実質的に含まない」とは、例えば、成長室内のNHガス分圧が、全圧に対して1%未満であることを意味する。具体的には、例えば、NHガスを成長室内に供給せずに本工程を行う。ここで、NHガスを含む雰囲気下で核形成層20の熱処理を行った場合には、核形成層20を構成するAlN結晶中に、点欠陥を充分に導入することが困難となる。このため、核形成層20上に成長させる電子走行層30の歪みを充分に緩和できない可能性がある。これに対し、本実施形態では、NHガスを実質的に含まない雰囲気下で核形成層20の熱処理を行うことで、核形成層20を構成するAlN結晶中に、点欠陥を充分に導入することができる。
【0099】
なお、核形成層形成工程S20後に同一のHVPE装置の成長室内で熱処理工程S30を連続的に行う場合には、核形成層形成工程S20にて導入したNHガスが成長室内に残留している可能性がある。このため、熱処理工程S30を行う前に、成長室内の気体をすべて排出(または置換)することが好ましい。
【0100】
なお、上述したように熱処理工程S30では、AlN中のN原子が表面でHと結合して、NHとなって脱離するものと考えられるが、脱離によって生成するNHはごく微量である。そのため、該脱離したNHによって、成長室内のNHガス分圧が全圧の1%以上になることはない。
【0101】
また、このとき、熱処理温度を、例えば、900℃以上1300℃以下とすることが好ましい。熱処理温度が900℃未満であると、核形成層20の主面21が改質され難い。これに対し、熱処理温度を900℃以上とすることで、核形成層20の主面21を充分に改質することができる。一方、熱処理温度が1300℃を超えると、核形成層20の主面21が分解されてしまう可能性がある。これに対し、熱処理温度を1300℃以下にすることで、核形成層20の主面21の分解を抑制することができる。
【0102】
また、このとき、熱処理時間を、例えば、10分以上120分以下とすることが好ましい。熱処理時間が10分未満であると、核形成層20の主面21が改質され難い。これに対し、熱処理時間を10分以上とすることで、核形成層20の主面21を充分に改質することができる。一方、熱処理時間が120分超であると、核形成層20の主面21の平坦性が低下してしまう可能性がある。これに対し、熱処理時間を120分以下にすることで、核形成層20の主面21の平坦性の低下を抑制することができる。
【0103】
さらに、熱処理時間を、例えば、30分以上90分以下とすることがより好ましく、60分とすることが最も好ましい。このように熱処理時間を適切に制御することで、核形成層20の主面21の表面状態を平坦に維持しつつ、核形成層20の主面21に適切な量の点欠陥を導入することができる。これにより、核形成層20上に形成する電子走行層30の結晶性をより安定的に向上させることができる。
【0104】
(S40:電子走行層形成工程)
次に、熱処理を行った核形成層20の主面21上に、GaNの単結晶からなる電子走行層30をヘテロエピタキシャル成長させる。電子走行層30の成長は、例えば、有機金属気相成長(MOVPE:Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法により行う。
【0105】
III族(Ga)原料ガスとしては、例えば、トリメチルガリウム(Ga(CH、TMG)ガスを用いる。N原料ガスとしては、例えば、NHガスを用いる。これらの原料ガスを、水素(H)ガス、窒素(N)ガス、またはこれらの混合ガスを用いたキャリアガスと混合して供給してもよい。
【0106】
なお、本実施形態では、下地基板10の下地面11がAlNからなる核形成層20で覆われている。これにより、MOVPE装置の成膜室内へのNHガスの供給から開始することができる。その結果、成膜室を事前にベーキングしなくてもよい。この点の効果については、後述する。
【0107】
本実施形態では、上述のように、核形成層形成工程S20において核形成層20の結晶性を向上させるとともに、熱処理工程S30において核形成層20の主面21に点欠陥を導入することで、核形成層20上に電子走行層30を成長させるときの電子走行層30の格子歪みを緩和することができる。これにより、電子走行層30の厚さを薄くしつつ、結晶性が高い電子走行層30を形成することができる。
【0108】
具体的には、例えば、電子走行層30の厚さを1μm未満としつつ、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下となるように、電子走行層30を形成することができる。
【0109】
また、本実施形態では、電子走行層30を3次元成長させることなく、横方向成長(2次元成長)させる。すなわち、電子走行層30において、c面以外のファセットを生じさせるとなく、c面のみを成長面として電子走行層30を成長させる(ステップフロー成長させる)。
【0110】
電子走行層30を横方向成長させるための結晶成長条件としては、例えば、成長温度、成長速度および成長圧力のうち少なくともいずれかを適切に制御する。
【0111】
具体的には、電子走行層30の成長温度を、典型的なGaNの結晶成長温度よりも高くし、例えば、1080℃以上1200℃以下、好ましくは1100℃以上1150℃以下とする。
【0112】
また、電子走行層形成工程S40での成長速度を、例えば、10nm/分以上30nm/分以下とする。
【0113】
また、電子走行層形成工程S40での成長圧力を、例えば、0.01気圧以上0.5気圧以下とする。
【0114】
なお、MOVPE法においては、意図的にC(カーボン)を導入しなくても、III族原料としての有機金属ガスからのCが成長膜に取り込まれる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、電子走行層30を3次元成長させない上述の条件下において、電子走行層形成工程S40でのV/III比を例えば3000以上とすることで、電子走行層30へのCの混入を1×1016cm-3以下とすることができる。
【0115】
本実施形態では、上述のように、高品質な核形成層20上に成長される電子走行層30の歪を緩和することで、電子走行層30を3次元成長させず、且つ、厚く成長させなくても、電子走行層30の転位密度を低減することができる。具体的には、例えば、電子走行層30の厚さを1μm未満としつつ、電子走行層30の主面31における転位密度が、5×10cm-2以下となるように、電子走行層30を形成することができる。
【0116】
本実施形態では、上述のように、電子走行層30を3次元成長させることなく、横方向成長させることで、c面以外のファセットを介したOなどの不純物の混入を抑制することができる。具体的には、例えば、電子走行層30中のO濃度が、電子走行層30全体に亘って、1×1016cm-3以下となるように、電子走行層30を形成することができる。
【0117】
本実施形態では、上述のように、電子走行層30中でn型不純物となるOなどの混入を抑制することで、電子走行層30中に、深いエネルギー準位を形成するFeおよびCなどの不純物を意図的にドープしない。具体的には、例えば、電子走行層30中のFe濃度およびC濃度のそれぞれが、1×1016cm-3以下となるように、電子走行層30を形成することができる。
【0118】
本実施形態では、上述のように、電子走行層30の厚さが薄いため、成長速度を遅くし、例えば、30nm/分以下とすることができる。ここで、成長膜へのCの取り込み量は、成長速度が速いほど増える傾向がある。そこで、本実施形態では、成長速度を上述のように遅くすることで、高純度な電子走行層30を容易に得ることができる。すなわち、MOVPE法を用いていても、上述のように、容易にC濃度を1×1016cm-3以下とすることができる。なお、この場合、成長時間が若干長くなるが、電子走行層30の厚さが薄いため、生産性の低下を抑制することができる。
【0119】
(S50:電子供給層形成工程)
次に、電子走行層30の主面31上に、電子走行層30を構成するGaNよりも広いバンドギャップを有するIII族窒化物の単結晶からなる電子供給層40をヘテロエピタキシャル成長させる。電子供給層40の成長は、例えば、MOVPE法により行う。したがって、当該電子供給層形成工程S50は、例えば、電子走行層形成工程S40後に、同一のMOVPE装置の成長室内で連続的に行うことが好ましい。
【0120】
本実施形態では、例えば、AlN、AlGaN、InAlN、またはAlInGaNの単結晶からなる電子供給層40を成長させる。
【0121】
なお、Al原料ガスとしては、例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH、TMA)ガスを用いる。In原料ガスとしては、例えば、トリメチルインジウム(In(CH、TMI)ガスを用いる。他のガスについては、電子走行層形成工程S40と同様のガスを用いる。
【0122】
また、電子供給層40の厚さを、例えば、5nm以上50nm以下とする。
【0123】
(S60:キャップ層形成工程)
次に、電子供給層40の主面41上に、GaNからなるキャップ層50を成長させる。キャップ層50の成長は、特に限定されないが、例えば、MOVPE法により行う。この場合、キャップ層形成工程S60も、電子供給層形成工程S50から連続的に行うことが好ましい。
【0124】
キャップ層50の厚さを、例えば、1nm以上10nm以下とする。
【0125】
以上により、本実施形態の積層物1が製造される。
【0126】
(S70:電極形成工程)
積層物1を製造したら、電子供給層40の上方に、ゲート電極61、ソース電極62およびドレイン電極63を形成する。
【0127】
具体的には、レジストパターニング、所定の金属膜形成およびリフトオフをこの順で行うことで、キャップ層50上の所定領域に、Ti/Alからなるソース電極62およびドレイン電極63を形成する。その後、N雰囲気下で積層物1を熱処理する(例えば、650℃3分間)。これにより、ソース電極62およびドレイン電極63のそれぞれをキャップ層50に対してオーミック接合させる。
【0128】
次に、平面視でゲート電極61の形成領域が開口となるようにレジストパターニングを行い、レジスト膜をマスクとして、ゲート電極61の形成領域におけるキャップ層50をエッチングする。キャップ層50のエッチング方法としては、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)エッチング、または電気化学エッチングが用いられる。
【0129】
所定領域のキャップ層50をエッチングしたら、所定の金属膜形成およびリフトオフをこの順で行うことで、電子供給層40の上記所定領域にゲート電極61を形成する。その後、N雰囲気下で積層物1を熱処理する(例えば、450℃10分間)。
【0130】
上述のように、ゲート電極61、ソース電極62およびドレイン電極63を形成したら、積層物1をダイシングし、所定の大きさのチップに切り分ける。
【0131】
以上により、本実施形態の半導体素子2が製造される。
【0132】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0133】
(a)本実施形態では、AlNからなる核形成層20は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が500秒以下である。このように核形成層20の結晶性を向上させることで、核形成層20上に形成する電子走行層30の結晶性を向上させることができる。その結果、半導体素子2の特性を向上させることが可能となる。
【0134】
(b)本実施形態では、核形成層20の結晶性を向上させるとともに、熱処理工程S30において核形成層20の主面21に点欠陥を導入することで、核形成層20上に成長される電子走行層30の歪みを緩和することができる。すなわち、結晶性が高い核形成層20の主面21の上に電子走行層30を成長させることで、結晶軸(c軸)が揃った状態で電子走行層30を成長させることができる。さらに、熱処理工程S30において核形成層20の主面21に点欠陥を導入することで、核形成層20において点欠陥が導入された領域を、核形成層20と電子走行層30との間で生じる応力を緩和する応力緩衝領域として機能させることができる。これらの結果、電子走行層30の歪みを緩和することができる。
【0135】
(c)本実施形態では、高品質な核形成層20上に成長される電子走行層30の歪を緩和することで、電子走行層30の厚さが薄くても、電子走行層30の結晶性を向上させることができる。具体的には、電子走行層30は、厚さが1μm未満であり、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下である。このように電子走行層30の結晶性を向上させることで、電子走行層30の移動度を向上させるとともに、ゲート電極の劣化を抑制し、素子の信頼性を向上させることができる。
【0136】
(d)本実施形態では、高品質な核形成層20上に成長される電子走行層30の歪を緩和することで、電子走行層30を3次元成長させず、且つ、厚く成長させなくても、電子走行層30の転位密度を低減することができる。具体的には、電子走行層30の厚さが上述の範囲内であっても、電子走行層30の主面31における転位密度を、5×10cm-2以下とすることができる。これにより、半導体素子2を駆動したときのゲート電極の劣化を抑制することができる。その結果、HEMTとしての半導体素子2の信頼性を向上させることが可能となる。
【0137】
(e)本実施形態では、電子走行層30を3次元成長させることなく、横方向成長させることで、c面以外のファセットを介したOなどの不純物の混入を抑制することができる。具体的には、電子走行層30中のO濃度を、電子走行層30全体に亘って、1×1016cm-3以下とすることができる。
【0138】
また、本実施形態では、核形成層20の厚さを100nm超とすることで、下地基板10から核形成層20を介して電子走行層30に向けた不純物の拡散を抑制することができる。具体的には、下地基板10がSiC基板である場合には、下地基板10から電子走行層30に向けたSiの拡散を抑制することができる。これにより、電子走行層30中のSi濃度を、電子走行層30全体に亘って、1×1016cm-3以下とすることができる。
【0139】
このように、電子走行層30中でn型不純物となるSiおよびOの混入を抑制することで、電子走行層30中の自由電子濃度の上昇を抑制することができる。電子走行層30中の自由電子濃度の上昇を抑制することで、バッファリーク電流の増大を抑制することができる。第2層の2DEGをピンチオフしたときにバッファリーク電流の増大を抑制することで、On/Off電流比の低下を抑制することができる。また、バッファリーク電流の増大を抑制することで、素子間のリーク電流を抑制することができ、隣接する素子間での動作の干渉を抑制することができる。
【0140】
(f)本実施形態では、電子走行層30中でn型不純物となるSiおよびOの混入を抑制することで、電子走行層30中に、深いエネルギー準位を形成するFeおよびCなどの不純物を高濃度にドープする必要が無い。具体的には、電子走行層30中のFe濃度およびC濃度のそれぞれは、1×1016cm-3以下である。これにより、半導体素子2の駆動時に、深いエネルギー準位を形成する不純物の帯電および放電を抑制することができる。すなわち、不純物の帯電および放電することに伴うヒステリシスの発生を抑制することができる。その結果、半導体素子2を安定的に動作させることが可能となる。
【0141】
このように、本実施形態では、バッファリーク電流の抑制と、ヒステリシスを抑制した安定動作とを両立することが可能となる。
【0142】
(g)本実施形態では、電子走行層形成工程S40の開始時に、下地基板10の下地面11がAlNからなる核形成層20で覆われている。これにより、電子走行層形成工程S40において、気相成長装置の成膜室内へのNHガスの供給から開始することができる。すなわち、NHガスの供給から開始しても、SiCからなる下地基板10の下地面11が、III族窒化物の結晶成長を阻害する窒化シリコン(SiN)へと変質することを抑制することができる。
【0143】
成膜室内へのNHガスの供給から開始することで、該成長装置内に付着したGaをGaNへと変質させ、該Gaの気化を抑制し、下地基板10の下地面11へのGaの付着を抑制することができる。つまり、成長装置内に付着したGaを除去するために、気相成長装置の成膜室を事前にベーキングしなくてもよい。その結果、積層物1の製造時間を大幅に短縮することができ、積層物1の生産性を顕著に向上させることができる。
【0144】
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0145】
上述の第1実施形態では、積層物1が核形成層20上に少なくとも電子走行層30を有する場合について説明したが、本発明はこの場合に限られない。以下の本実施形態のように、積層物1の構成を変更してもよい。
【0146】
以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0147】
(1)III族窒化物積層物
図4を用い、本実施形態に係るIII族窒化物積層物について説明する。図4は、本実施形態に係るIII族窒化物積層物を示す概略断面図である。
【0148】
図4に示すように、本実施形態の積層物1は、例えば、下地基板10と、核形成層20と、を有している。言い換えれば、本実施形態の積層物1は、電子走行層30、電子供給層40およびキャップ層50を有しない点を除いて、第1実施形態の積層物1と同様である。
【0149】
核形成層20は、上述の第1実施形態の核形成層20と同様に高い結晶性を有している。すなわち、核形成層20は、例えば、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が500秒以下である。
【0150】
核形成層20は、例えば、GaNからなる電子走行層30が形成される主面21を有している。核形成層20の主面21には、例えば、熱処理工程S30が施され、点欠陥が導入されている。すなわち、核形成層20の主面21は、電子走行層30の歪みが緩和するように、電子走行層30を成長させることができるようになっている。
【0151】
すなわち、核形成層20の主面21は、電子走行層30の厚さが薄くても、結晶性が高い電子走行層30を成長可能に構成されている。具体的には、核形成層20の主面21は、例えば、電子走行層30の厚さを1μm未満としつつ、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下となるように、電子走行層30を成長させることが可能に構成されている。
【0152】
また、核形成層20の主面21は、電子走行層30の厚さが薄くても、転位密度が低くなるように電子走行層30を成長可能に構成されている。具体的には、核形成層20の主面21は、例えば、電子走行層30の厚さを1μm未満としつつ、電子走行層30の主面31における転位密度が5×10cm-2以下となるように、電子走行層30を成長させることが可能に構成されている。
【0153】
(2)本実施形態により得られる効果
本実施形態では、下地基板10および核形成層20のみを有する積層物1であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、下地基板10および核形成層20のみを有する積層物1を製造するメーカから、半導体素子2を製造するメーカに向けて、当該積層物1を提供したとしても、半導体素子2を製造するメーカにおいて、高品質な電子走行層30などを容易に成長させることができる。その結果、デバイス特性が良好な半導体素子2を容易に製造することが可能となる。
【0154】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。なお、「上述の実施形態」とは、第1実施形態および第2実施形態を含んでいる。
【0155】
上述の実施形態では、下地基板10がSiC基板である場合について説明したが、下地基板10は、サファイア基板であってもよい。この場合であっても、上述の製造方法により、電子走行層30の歪を緩和することができる。ただし、この場合では、各層の歪み量が上述の実施形態のそれと異なることになる。具体的には、核形成層20のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、-0.5%以上-0.1%以下である(すなわち、圧縮歪み)。電子走行層30のa軸方向の歪み量ε(%)は、例えば、-0.2%以上+0.2%以下である。
【0156】
上述の実施形態では、キャップ層50が設けられている場合について説明したが、キャップ層50はなくてもよい。
【0157】
上述の実施形態では、キャップ層50の上面のうち電極以外の領域には何も設けられていないように図示したが、キャップ層50の上面のうち電極以外の領域を覆うように、保護膜が設けられていてもよい。保護膜としては、例えば、窒化シリコン(SiN)などが挙げられる。
【0158】
上述の実施形態では、電子供給層40などの半導体層にゲート電極61が直接接するいわゆるMESゲート(Metal-Semiconducotr)型として半導体素子2が構成されている場合について説明したが、電子供給層40などの半導体層とゲート電極61との間に酸化シリコン(SiO)や酸化アルミニウム(Al)などからなる絶縁層が挿入されたいわゆるMISゲート(Metal-Insulator-Semiconductor)型として半導体素子2が構成されていても良い。
【0159】
上述の実施形態では、核形成層20の成長をHVPE法により行う場合について説明したが、核形成層20の成長をMOVPE法により行ってもよい。
【0160】
上述の実施形態では、電子走行層30の成長をMOVPE法により行う場合について説明したが、電子走行層30の成長をHVPE法により行ってもよい。
【0161】
上述の実施形態では、核形成層形成工程S20および熱処理工程S30をHVPE装置で行った後に、電子走行層形成工程S40を別のMOVPE装置で行う場合について説明したが、この場合に限られない。変形例として、核形成層20は、例えば、第1AlN層と第2AlN層とを有していてもよく、核形成層形成工程S20は、例えば、第1AlN層形成工程と第2AlN層形成工程とを有していてもよい。ここで、上述の実施形態のように、特に、核形成層形成工程S20および熱処理工程S30と、電子走行層形成工程S40とを別の装置で行う場合には、電子走行層30形成前における核形成層20の主面21に不純物が付着している恐れがある。これに対し、上述の変形例では、核形成層形成工程S20が第1AlN層形成工程と第2AlN層形成工程とに分けられていることで、まず、第1AlN層形成工程をHVPE装置で行い、その後、第2AlN層形成工程、熱処理工程S30、電子走行層形成工程S40を同一のMOVPE装置で行うことができる。これにより、電子走行層30形成前における第2AlN層の主面への不純物付着を抑制し、電子走行層30の汚染を抑制することができる。なお、変形例における第2AlN層の厚さは、例えば、10nm以上200nm以下である。
【実施例
【0162】
以下、本発明の効果を裏付ける各種実験結果について説明する。
【0163】
(1)実験1
(1-1)III族窒化物積層物の作製
以下の条件下で、核形成層の厚さが異なる複数の積層物を作製した。
【0164】
[積層物の作製条件]
(下地基板)
材質:SiC(半絶縁性)
直径:2インチ
厚さ:400μm
下地面に対して最も近い低指数の結晶面:c面(下地面のパターン加工なし)
ポリタイプ:4H
(核形成層)
材質:AlN
成長方法:HVPE法
成長温度:1020℃
成長圧力:0.987atm(100kPa)
AlCl分圧:0.8kPa
V/III比:50
成長速度:100nm/分
厚さ:約100nm以上1400nm以下の範囲内で異ならせた。
(熱処理工程)
雰囲気:Hガス(NHガス分圧は全圧に対して1%未満)
熱処理温度:1220℃
熱処理時間:60分
【0165】
(1-2)評価
(X線ロッキングカーブ測定)
上述の実験1の積層物のそれぞれにおいて、AlNの(0002)回折のX線ロッキングカーブ測定、およびAlNの(10-12)回折のX線ロッキングカーブ測定を行った。その結果、AlNの(0002)回折の半値幅(FWHM)、およびAlNの(10-12)回折の半値幅を求めた。
【0166】
(1-3)結果
図5を用い、実験1のX線ロッキングカーブ測定の結果について説明する。図5は、実験1において、AlN層の厚さに対するAlNの(0002)回折および(10-12)回折のそれぞれの半値幅を示す図である。
【0167】
図5に示すように、上述の製造方法を適用した核形成層としてのAlN層の厚さに対して、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折および(10-12)回折のそれぞれの半値幅をプロットしたときに、AlNのX線回折半値幅は、下に凸の傾向を示した。
【0168】
核形成層としてのAlN層の厚さが100nm超1μm以下であるとき、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が500秒以下であることを確認した。
【0169】
核形成層としてのAlN層の厚さが200nm以上700nm以下であるとき、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定によるAlNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下であることを確認した。
【0170】
核形成層としてのAlN層の厚さが300nm以上500nm以下であるとき、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が180秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が380秒以下であることを確認した。
【0171】
(2)実験2
(2-1)III族窒化物積層物の作製
実験1の積層物を用い、実験2において、以下の条件下で、核形成層の厚さおよび電子走行層の厚さがそれぞれ異なる複数の積層物を作製した。
【0172】
[積層物の作製条件]
(下地基板、核形成層および熱処理条件)
実験1と同じ。
(電子走行層)
材質:GaN
成長方法:MOVPE法
成長条件:以下の横方向成長させる条件
成長温度:1120℃
成長圧力:0.4atm
TMG流量:50sccm
V/III比:5000
成長速度:20nm/分
なお、意図的な不純物のドープなし。
厚さ:約100nm以上2800nm以下の範囲内で異ならせた。
【0173】
(2-2)評価
(X線ロッキングカーブ測定)
上述の実験2の積層物のそれぞれにおいて、GaNの(0002)回折のX線ロッキングカーブ測定、およびGaNの(10-12)回折のX線ロッキングカーブ測定を行った。その結果、GaNの(0002)回折の半値幅(FWHM)、およびGaNの(10-12)回折の半値幅を求めた。
【0174】
(多光子励起顕微鏡による観察)
多光子励起顕微鏡を用い、AlNからなる核形成層の厚さを100nm超1μm以下とし、GaNからなる電子供給層の厚さを100nm以上1μm未満とした積層物において、電子供給層の主面を観察した。
【0175】
(2-3)結果
(X線ロッキングカーブ測定)
図6を用い、実験2のX線ロッキングカーブ測定の結果について説明する。図6は、実験2において、GaNの(0002)回折および(10-12)回折のそれぞれの半値幅が所定条件を満たすときの、AlN層の厚さおよびGaN層の厚さの範囲を示す図である。図6において、実線で囲まれた範囲のうち、一番外側の範囲は、GaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下かつGaNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下である範囲を示している。中間の範囲は、GaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下かつGaNの(10-12)回折の半値幅が300秒以下である範囲を示している。一番内側の範囲は、GaNの(0002)回折の半値幅が150秒以下かつGaNの(10-12)回折の半値幅が150秒以下である範囲を示している。
【0176】
図6に示すように、電子走行層としてのGaN層の厚さが所定値であるときに、GaNのX線回折半値幅は、核形成層としてのAlN層の厚さに依存していた。すなわち、AlN層の厚さが、AlNのX線回折半値幅が極小となる厚さに近づくにつれて、GaN層の結晶性が向上することを確認した。
【0177】
また、核形成層としてのAlN層の厚さが、AlNのX線回折半値幅が極小となる約300nmであるときに、電子走行層としてのGaN層の厚さがおよそ2600nm以下であれば、電子走行層としてのGaN層において、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下となることを確認した。
【0178】
これらの結果から、核形成層としてのAlN層の厚さを上述のAlNの結晶性が向上するように最適化すれば、電子走行層としてのGaN層の厚さを1μm未満としつつ、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定によるGaNの(10-12)回折の半値幅が400秒以下となるように、電子走行層を成長させることができることを確認した。
【0179】
(転位密度)
多光子励起顕微鏡による観察の結果、AlNからなる核形成層の厚さを100nm超1μm以下とし、GaNからなる電子供給層の厚さを100nm以上1μm未満とした積層物において、電子供給層の主面における転位密度が5×10cm-2以下となることを確認した。
【0180】
(3)実験3
(3-1)半導体素子の作製
実験3において、以下の条件下で、実施例、比較例1~3の半導体素子を作製した。
【0181】
以下、図7A図8A図9Aおよび図10Aを用いて、実施例、比較例1~比較例3の半導体素子の構造について説明する。図7A図8A図9Aおよび図10Aは、それぞれ、実験3の実施例、比較例1~比較例3の半導体素子を示す概略断面図である。なお、上記図面間でスケールは統一されていない。
【0182】
[実施例の半導体素子の作製条件]
(下地基板、核形成層、熱処理条件および電子走行層)
実験2と同じ。
すなわち、電子走行層の成長条件はノンドープで横方向成長させる条件とした。
ただし、
核形成層(AlN層)の厚さ:300nm
電子走行層(GaN層)の厚さ:400nm
(電子供給層)
組成:Al0.25Ga0.75
成長方法:MOVPE法
厚さ:25nm
(キャップ層)
材質:GaN
成長方法:MOVPE法
厚さ:2.5nm
(電極)
ゲート電極:Ni/Au、電子供給層に接するように形成した。
ソース電極およびドレイン電極:Ti/Al、キャップ層に接するように形成した。
ゲート長を10μmとし、ゲート幅を100μmとし、ゲート・ソース間距離を5μmとし、ゲート・ドレイン間距離を5μmとした。また、ソース電極の長さおよびドレイン電極の長さも、それぞれ100μmとした。なお、隣り合う素子において、一方の素子のソース電極と他方の素子のドレイン電極との間隔を50μmとした。
(素子分離)
積層物において、それぞれの半導体素子領域の周囲を囲むように、表面側から200nmの深さで幅10μmにわたってエッチングし、面内の複数の半導体素子同士を分離させた。
【0183】
[比較例1の半導体素子の作製条件]
(下地基板)
実施例と同じ。
(各層条件)
全層の成長方法:MOVPE法
核形成層(AlN層)の厚さ:10nm
電子走行層(アンドープGaN層)の厚さ:1500nm
なお、電子走行層の成長初期に3次元成長させた。
電子供給層(Al0.25Ga0.75N層)の厚さ:25nm(実施例と同じ)
キャップ層(GaN層)の厚さ:2.5m(実施例と同じ)
各電極:実施例と同じ
【0184】
[比較例2の半導体素子の作製条件]
(下地基板)
実施例と同じ。
(各層条件)
全層の成長方法:MOVPE法
核形成層(AlN層)の厚さ:10nm
半絶縁層(CドープGaN層)の厚さ:1000nm
電子走行層(アンドープGaN層)の厚さ:500nm
なお、電子走行層の成長初期に3次元成長させた。
電子供給層(Al0.25Ga0.75N層)の厚さ:25nm(実施例と同じ)
キャップ層(GaN層)の厚さ:2.5m(実施例と同じ)
各電極:実施例と同じ
なお、半絶縁層(CドープGaN層)の成長工程では、V/III比を約2000とした。これにより、半絶縁層中にCをドープした。
【0185】
[比較例3の半導体素子の作製条件]
(下地基板)
実施例と同じ。
(各層条件)
全層の成長方法:MOVPE法
核形成層(AlN層)の厚さ:10nm
半絶縁層(FeドープGaN層)の厚さ:800nm
電子走行層(アンドープGaN層)の厚さ:700nm
なお、電子走行層の成長初期に3次元成長させた。
電子供給層(Al0.25Ga0.75N層)の厚さ:25nm(実施例と同じ)
キャップ層(GaN層)の厚さ:2.5m(実施例と同じ)
各電極:実施例と同じ
【0186】
(3-2)評価
(二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry))
実施例、比較例1~比較例3のそれぞれの半導体素子の表面側からSIMSを行った。
【0187】
(デバイス特性:閾値電圧変動)
実施例、比較例1~比較例3のそれぞれの半導体素子において、ドレイン-ソース間電圧Vdsを50Vとした条件下で、初期特性として、ゲート電圧Vに対するドレイン電流Iを測定し、ドレイン電流Iが立ち上がるときのゲート電圧Vの閾値電圧Vthを求めた。次に、ゲート電圧Vを-5Vとし2DEGをピンチオフさせた状態とし、ドレイン-ソース間電圧Vdsを50Vとし、印加時間を30秒とした条件下で、それぞれの半導体素子にストレスを印加した。ストレス印加後、初期特性の測定と同様の条件下で、ゲート電圧Vに対するドレイン電流Iを測定し、外レス印加後のゲート電圧Vの閾値電圧Vth’を求めた。
【0188】
ここで、図11Aを用い、従来の半導体素子の一例におけるデバイス特性について説明する。図11Aは、従来の半導体素子におけるゲート電圧に対するドレイン電流の一例を示す図である。図11Aにおいて、「Before」とは、上述のストレスを印加する前の特性を示し、「After」とは、上述のストレスを印加した後の特性を示している。
【0189】
図11Aに示すように、従来の半導体素子では、ストレス印加に起因して、動作層の一部に混入した不純物の帯電および放電が生じるため、ストレス印加後のゲート電圧の閾値電圧に変動が生じる可能性がある。
【0190】
そこで、実施例、比較例1~比較例3のそれぞれの半導体素子において、上述のようにして求めたストレス印加前の閾値電圧Vthとストレス印加後の閾値電圧Vth’に基づいて、ゲート電圧Vの閾値電圧変動ΔVth(=Vth’-Vth)を求めた。
【0191】
(デバイス特性:バッファリーク電流)
実施例、比較例1~比較例3のそれぞれにおいて、隣り合う素子において、一方の素子のソース電極と他方の素子のドレイン電極との間(間隔50μm)に100Vを印加し、素子間でのバッファリーク電流を測定した。この場合、1つの半導体素子領域内でのエッチングしていない領域は2次元電子ガス(2DEG)で導通しているので、ソース電極およびドレイン電極のそれぞれの長さ100μmに相当する長さで、且つ、エッチング幅10μmの領域において、バッファリーク電流を測定していることになる。
【0192】
(3-3)結果
(SIMS)
図7B図8B図9Bおよび図10Bを用い、実験3のSIMSの結果について説明する。図7B図8B図9Bおよび図10Bは、それぞれ、実験3の実施例、比較例1、比較例2および比較例3のSIMS結果を示す図である。
【0193】
図8Bに示すように、比較例1では、電子走行層としてのアンドープGaN層の下地基板側に、1×1016cm-3超の濃度で、Siが検出された。上述のように、比較例1では、従来技術である薄い厚さ(10nm)を有するAlN層を核生成層として形成した。このため、下地基板としてのSiC基板からSiが拡散し、アンドープGaN層の下地基板側でSi濃度が1×1016cm-3超となったと考えられる。また、比較例1では、アンドープGaN層の成長初期にGaN結晶を3次元成長させたため、c面以外のファセットを介して、Oが混入し、アンドープGaN層の下地基板側に、1×1017cm-3に近い濃度で、Oが検出された。また、比較例1では、アンドープGaN層中には、深さ方向に均一に、およそ6×1015cm-3の濃度で、Cが検出された。
【0194】
図9Bに示すように、比較例2では、比較例1と同様に核形成層としてのAlN層の厚さが薄く、下地基板としてのSiC基板からSiが拡散したため、半絶縁層としてのCドープGaN層の下地基板側に、1×1016cm-3超の濃度で、Siが検出された。また、比較例2では、半絶縁層としてのCドープGaN層の成長初期にGaN結晶を3次元成長させたため、c面以外のファセットを介して、Oが混入していた。このため、半絶縁層の下地基板側に、1×1017cm-3に近い濃度で、Oが検出された。一方で、比較例2では、半絶縁層中にCをドープしたため、半絶縁層中に混入したSiおよびOのうち少なくとも一部を補償するように、8×1016cm-3超の濃度で、Cが検出された。
【0195】
図10Bに示すように、比較例3では、比較例1と同様に核形成層としてのAlN層の厚さが薄く、下地基板としてのSiC基板からSiが拡散したため、半絶縁層としてのFeドープGaN層の下地基板側に、1×1016cm-3超の濃度で、Siが検出された。また、比較例3では、半絶縁層としてのFeドープGaN層の成長初期にGaN結晶を3次元成長させたため、c面以外のファセットを介して、Oが混入していた。このため、半絶縁層の下地基板側に、1×1017cm-3に近い濃度で、Oが検出された。一方で、比較例3では、半絶縁層中にFeをドープしたため、半絶縁層中に混入したSiおよびOを十分に補償するように、1×1018cm-3超の濃度で、Feが検出された。
【0196】
これらに対し、図7Bに示すように、実施例では、核形成層としてのAlN層の厚さを100nm超としたことで、下地基板としてのSiC基板から電子走行層に向けたSiの拡散を抑制することができた。これにより、実施例では、電子走行層中のSi濃度を、電子走行層全体に亘って、1×1016cm-3以下とすることができたことを確認した。
【0197】
また、実施例では、電子走行層を3次元成長させることなく、横方向成長させることで、c面以外のファセットを介したOなどの不純物の混入を抑制することができた。これにより、実施例では、電子走行層中のO濃度を、電子走行層全体に亘って、1×1016cm-3以下とすることができたことを確認した。
【0198】
また、実施例では、電子走行層中にFeおよびCなどの不純物を意図的にドープしなかった。このため、実施例では、電子走行層中のFe濃度およびC濃度のそれぞれを、1×1016cm-3以下とすることができたことを確認した。
【0199】
(デバイス特性)
図11Bを用い、実験3のデバイス特性の結果について説明する。図11Bは、実験3において、ストレス印加後の閾値電圧変動に対するバッファリーク電流を示す図である。なお、図11Bでは、バッファリーク電流の値は、測定に用いたソース・ドレイン電極の単位長さあたりの電流値で記載している。
【0200】
図11Bに示すように、比較例2および比較例3では、深いエネルギー準位を形成するFeまたはCが帯電するため、ストレス印加後の閾値電圧変動ΔVthが大きくなっていた。一方で、比較例2および比較例3では、FeまたはCが、下地基板側におけるn型不純物としてのSiおよびOを補償するため、バッファリーク電流が小さくなっていた。
【0201】
これに対し、比較例1では、下地基板側におけるn型不純物としてのSiおよびOの混入に起因したバッファリーク電流が大きくなっていた。一方で、比較例1では、バッファリーク電流が大きくなるため、電子走行層中の不純物の帯電が生じにくく、ストレス印加後の閾値電圧変動ΔVthが小さくなっていた。
【0202】
以上の結果から、比較例1~3のような従来構造のHEMTでは、バッファリーク電流の抑制と、閾値電圧変動ΔVthを抑制した安定動作との両立が困難であることを確認した。
【0203】
これに対し、実施例では、核形成層としてのAlN層の厚さを100nm超としたことで、下地基板としてのSiC基板から電子走行層に向けたn型不純物としてのSiの拡散を抑制することができた。また、実施例では、電子走行層を3次元成長させることなく、横方向成長させることで、n型不純物としてのOなどの不純物の混入を抑制することができた。これらにより、実施例では、バッファリーク電流が小さくなっていたことを確認した。また、実施例では、FeおよびCなどの不純物を意図的にドーピングしなかった。これにより、実施例では、不純物の帯電および放電することに伴う閾値電圧変動ΔVthが小さくなっていたことを確認した。
【0204】
以上の結果、実施例では、バッファリーク電流の抑制と、閾値電圧変動ΔVthを抑制した安定動作とを両立できたことを確認した。
【0205】
(4)実験4
(4-1)半導体素子の作製
実験4において、以下の条件下で、実験3の実施例に相当する半導体素子を作製した。
【0206】
[半導体素子の作製条件]
図6に従い、電子走行層におけるGaNの結晶性を異ならせた点を除いて、実験3の実施例と同様に半導体素子を作製した。
【0207】
(4-2)評価
(X線ロッキングカーブ測定)
上述の実験4の半導体素子のそれぞれにおいて、電子走行層におけるGaNの(10-12)回折のX線ロッキングカーブ測定を行った。その結果、電子走行層におけるGaNの(10-12)回折の半値幅を求めた。
【0208】
(デバイス特性:素子寿命)
実験4の半導体素子において、温度を150℃とし、ゲート電圧Vを-2Vとし、ドレイン-ソース間電圧Vdsを50Vとした条件下で、半導体素子を駆動した。その後、ゲート電流(ゲートリーク電流)Iが1×10-8A/mm未満の初期値から1×10-4A/mmを超えたときの時間を素子寿命として評価した。当該ゲートリーク電流の値は、ゲート電極の幅が単位長さ(1mm)当たりの値である。
【0209】
(4-3)結果
図12を用い、実験4の結果について説明する。図12は、実験4において、電子走行層におけるGaNの(10-12)回折の半値幅に対する素子寿命を示す図である。
【0210】
図12に示すように、半導体素子の電子走行層におけるGaNの(10-12)回折の半値幅が小さくなるにつれて(図中左側に行くにつれて、すなわち、結晶性が向上するにつれて)、上述の素子寿命が単調増加する傾向を示した。つまり、核形成層の結晶性を向上させ、核形成層上に形成する電子走行層の結晶性を向上させることで、素子寿命を長くすることができることを確認した。具体的には、電子走行層におけるGaNの(10-12)回折の半値幅を400秒以下とすることで、上記駆動条件下における素子寿命を、半導体素子として実用に耐える寿命に相当する10000時間超とすることができることを確認した。
【0211】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0212】
(付記1)
下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
前記第1層上に設けられ、窒化ガリウムからなる第2層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下である
III族窒化物積層物。
【0213】
(付記2)
前記第2層の厚さは、1μm未満であり、
前記第2層の主面における転位密度は、5×10cm-2以下である
付記1に記載のIII族窒化物積層物。
【0214】
(付記3)
前記第2層は、厚さが1μm未満であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下である
付記1又は2に記載のIII族窒化物積層物。
【0215】
(付記4)
前記第2層中の酸素濃度は、前記第2層全体に亘って、1×1016cm-3以下である
付記1~3のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0216】
(付記5)
前記第2層中のシリコン濃度は、前記第2層全体に亘って、1×1016cm-3以下である
付記1~4のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0217】
(付記6)
前記第2層中の鉄濃度および炭素濃度のそれぞれは、1×1016cm-3以下である
付記1~5のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0218】
(付記7)
前記第1層は、厚さが200nm以上700nm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下である
付記1~6のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0219】
(付記8)
前記第1層は、厚さが300nm以上500nm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が180秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が380秒以下である
付記1~7のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0220】
(付記9)
前記下地基板は、炭化ケイ素またはサファイアからなる
付記1~8のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0221】
(付記10)
前記第2層上に設けられ、窒化ガリウムよりも広いバンドギャップを有するIII族窒化物からなる第3層をさらに有する
付記1~9のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物。
【0222】
(付記11)
付記1~10のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層物が有する前記第2層を、動作層の少なくとも一部として備える、半導体素子。
【0223】
(付記12)
下地基板と、
前記下地基板上に設けられ、窒化アルミニウムからなる第1層と、
を有し、
前記第1層は、厚さが100nm超1μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下である
III族窒化物積層物。
【0224】
(付記13)
前記第1層は、窒化ガリウムからなる第2層が形成される主面を有し、
前記第1層の前記主面は、前記第2層の厚さを1μm未満としつつ、前記第2層の主面における転位密度が5×10cm-2以下となるように、前記第2層を成長させることが可能に構成されている
付記12に記載のIII族窒化物積層物。
【0225】
(付記14)
前記第1層は、窒化ガリウムからなる第2層が形成される主面を有し、
前記第1層の前記主面は、前記第2層の厚さを1μm未満としつつ、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が200秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が400秒以下となるように、前記第2層を成長させることが可能に構成されている
付記12又は13に記載のIII族窒化物積層物。
【0226】
(付記15)
下地基板上に、窒化アルミニウムからなる第1層を形成する工程と、
水素ガスを含む雰囲気下で、前記第1層の熱処理を行う工程と、
前記第1層上に、窒化ガリウムからなる第2層を形成する工程と、
を有し、
前記第1層を形成する工程では、
前記第1層の厚さを100nm超1μm以下としつつ、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が250秒以下となり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が500秒以下となるように、前記第1層を形成する
III族窒化物積層物の製造方法。
【符号の説明】
【0227】
1 III族窒化物積層物(積層物)
2 半導体素子
10 下地基板
20 核形成層
30 電子走行層
40 電子供給層
50 キャップ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12