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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240808BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20240808BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240808BHJP
   H04N 25/40 20230101ALI20240808BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20240808BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 A
H01L27/146 E
H04N23/45
H04N23/55
H04N25/40
H04N25/70
G02B5/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020121702
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018538
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】室井 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】高木 友望
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘毅
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0231650(US,A1)
【文献】特開2019-102623(JP,A)
【文献】特開2009-130239(JP,A)
【文献】国際公開第2018/201219(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 23/45
H04N 23/55
H04N 25/40
H04N 25/70
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換部と前記光電変換部が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路とを有する複数の撮像素子を上下に積層して備え、前記複数の撮像素子よりも光の入射側に、複数の開口が配置された開口パターンを2以上に切り替え可能な符号化開口をさらに備えて、前記複数の開口を経由した光を前記複数の撮像素子の上から入射させて撮像する撮像装置であって、
前記撮像素子の光電変換部は、当該光電変換部の下側に配置された他の前記撮像素子の光電変換部が電荷に変換する波長域の光の少なくとも一部を透過させ、
前記符号化開口は、前記開口パターンが、少なくとも1つの前記撮像素子の各画素に入射する光の一部を遮蔽するように、マトリクス状に配列したマスの一部が開口してなり、配列の行方向および列方向の一方または両方において、k番目(kは自然数)のマスの開口を経由した光を、前記撮像素子の(k-1)番目の画素とk番目の画素とに入射させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記符号化開口は、空間光変調器であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記撮像素子の光電変換部は、当該光電変換部の下側に配置された他の前記撮像素子の光電変換部が電荷に変換する波長域の光と同じ波長域の光を電荷に変換すると共に、前記波長域の光の一部を透過させる請求項1または請求項に記載の撮像装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記撮像素子の光電変換部は、当該光電変換部の下側に配置された他の前記撮像素子の光電変換部が電荷に変換する波長域の光とは異なる波長域の光を電荷に変換し、
複数の波長域を含む光を前記複数の撮像素子の上から入射する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
1以上の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換部と前記光電変換部が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路とを有する複数の撮像素子、および複数の開口が配置された開口パターンを有する符号化開口を備える撮像装置により、上下に積層された前記複数の撮像素子の上から前記複数の開口を経由した光を入射させて撮像する撮像方法であって、
前記符号化開口は、複数の開口パターンを周期的に切り替え、
前記複数の撮像素子の少なくとも1つは、前記符号化開口の開口パターン毎に露光し、
前記複数の撮像素子の少なくとも1つは、前記符号化開口の2以上の開口パターンにわたって露光することを特徴とする撮像方法。
【請求項6】
前記複数の撮像素子の少なくとも1つが、前記符号化開口の開口パターンの切替えの周期毎に1回露光することを特徴とする請求項に記載の撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、高精細化のための多画素化の一方で、小型化が要求されている。例えば、カラー撮像素子のように複数の波長域の光の情報を波長域毎に取得する撮像素子(イメージセンサ)において、ダイクロイックプリズム等で光を波長域別に光路を変えてそれぞれの撮像素子に入射する3枚式(多枚式)の撮像素子に対して、撮像素子またはその光電変換部を光軸方向に積層して小型化した垂直色分離型の撮像素子が開発されている。具体的には、長波長ほど光の進入深さが深くなるSiをベースとしたSiフォトダイオードを、Si基板に3層に積層したカラー撮像素子が開示されている(例えば、特許文献1,2)。また、固有の波長域の光を吸収して電荷に変換し、それ以外の光を透過する光電変換材料を備えた撮像素子を積層したカラー撮像素子が開示されている(例えば、特許文献3)。同様に、カラー画像と近赤外線画像をそれぞれ撮像する撮像素子を積層したカラー撮像素子が開示されている(例えば、特許文献4)。
【0003】
撮像装置はさらに、空間情報の取得、ぼけた画像の修復、画素数に対して高精細な画像を再構成する等、機能性の付加が要求されている。例えば、複数の撮像素子を光の入射方向に積層することにより、ぼけ量の異なる像を同時に取得し、レンズからそれぞれの撮像素子までの距離に基づいて、被写体の空間情報を取得する技術が知られている(例えば、特許文献5)。また、ダイクロイックミラーでカラー撮像素子までの光路長に色による差を設けて、ぼけ量の異なるR(赤),G(緑),B(青)の各画像を取得し、これら3枚の画像から深さ情報を推測する技術が知られている(例えば、非特許文献1)。また、ぼけを除去する手法の一つとして、撮像素子に光を導く開口(絞り)を、従来の円形ではなく符号化された開口(符号化開口)を用い、演算処理により、ぼけのない画像を復元する技術が知られている(例えば、特許文献6,7、非特許文献2)。さらに、複数の撮像素子を符号化開口から異なる距離に配置して、被写体の空間情報を取得する技術が知られている(例えば、特許文献8、非特許文献3)。また、可視光を透過して赤外線を開口以外で遮蔽する符号化開口と、カラーフィルタアレイの一部を赤外線のみを透過するフィルタとした単板式のカラー撮像素子とを用いて、可視光画像とぼけた赤外線画像とを同時に取得して、深度マップを生成する撮像装置が開示されている(例えば、特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-513145号公報
【文献】特許第5599617号公報
【文献】特開2019-102623号公報
【文献】特開2020-21855号公報
【文献】特許第5848177号公報
【文献】特許第5832353号公報
【文献】特許第5173665号公報
【文献】特許第2963990号公報
【文献】特許第5830348号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】出口美樹,村田滋,田中洋介,“時系列カラー画像を用いたdepth-from-defocusによる粒子奥行き位置と変位量の同時計測”,可視化情報学会論文集,Vol. 39,No. 6,p. 19-27,2019年
【文献】長原一,“符号化撮像”,情報処理学会研究報告,Vol. 2010-CVIM-171,No. 14,2010年
【文献】日浦慎作,“符号化撮像によるぶれ・ぼけの除去”,光学,Vol. 40,No. 10,p. 522-527,2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
符号化開口は、通常の画像取得に用いる円形開口(絞り)よりも開口率が低いので、撮像装置の光の利用効率が低下する。また、カラーフィルタを備えた単板式のカラー撮像素子に適用すると、R,G,Bそれぞれの情報が離散的にしか得られないので、演算により画像を再構成する際に画質劣化が発生するといった問題もある。
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、光の利用効率が高く、画素数に対して高解像度な画像を取得することのできる撮像装置および撮像方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、1以上の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換部と前記光電変換部が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路とを有する複数の撮像素子を上下に積層して備え、前記複数の撮像素子よりも光の入射側に、複数の開口が配置された開口パターンを2以上に切り替え可能な符号化開口をさらに備えて、前記複数の開口を経由した光を前記複数の撮像素子の上から入射させて撮像する撮像装置であって、前記撮像素子の光電変換部が、当該光電変換部の下側に配置された他の前記撮像素子の光電変換部が電荷に変換する波長域の光の少なくとも一部を透過させ、前記符号化開口は、前記開口パターンが、少なくとも1つの前記撮像素子の各画素に入射する光の一部を遮蔽するように、マトリクス状に配列したマスの一部が開口してなり、配列の行方向および列方向の一方または両方において、k番目(kは自然数)のマスの開口を経由した光を、前記撮像素子の(k-1)番目の画素とk番目の画素とに入射させることを特徴とする。
【0009】
かかる構成により、撮像装置は、ぼけのない画像を含む2以上の画像を同時に取得することができ、ぼけのない高解像度な画像を再構成して得ることができる。
【0010】
本発明に係る撮像方法は、1以上の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換部と前記光電変換部が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路とを有する複数の撮像素子、および複数の開口が配置された開口パターンを有する符号化開口を備える撮像装置により、上下に積層された前記複数の撮像素子の上から前記複数の開口を経由した光を入射させて撮像する撮像方法であって、前記符号化開口が複数の開口パターンを周期的に切り替え、前記複数の撮像素子の少なくとも1つが、前記符号化開口の開口パターン毎に露光し、前記複数の撮像素子の少なくとも1つが、前記符号化開口の2以上の開口パターンにわたって露光することを特徴とする。
【0011】
かかる手順により、ぼけのない画像を含む2以上の画像を同時に取得することができ、また、光の利用効率が高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る撮像装置および撮像方法によれば、光の利用効率が高く、ぼけのない高解像度な画像や、画像と共に奥行き情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る撮像装置の構成を説明する模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の概念を説明する模式図であり、図1の部分拡大図である。
図3】本発明に係る撮像装置における撮像素子の画素と符号化開口の開口パターンとの対応を説明する分解図である。
図4】撮像装置を構成する撮像素子の1画素の等価回路図である。
図5】撮像装置を構成する撮像素子の1画素の等価回路図である。
図6】撮像装置を構成する撮像素子の1画素の等価回路図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の構造を模式的に説明する部分断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る撮像方法における符号化開口の開口パターンの模式図および切替えのタイミング、ならびに露光のタイミングを説明するタイムチャートである。
図9】本発明の実施形態の変形例に係る撮像方法における符号化開口の開口パターンの模式図および切替えのタイミング、ならびに露光のタイミングを説明するタイムチャートである。
図10】本発明の第2実施形態に係る撮像装置の概念を説明する模式図であり、図1の部分拡大図である。
図11】本発明の実施形態の変形例に係る撮像方法における符号化開口の開口パターンの模式図および切替えのタイミング、ならびに露光のタイミングを説明するタイムチャートである。
図12】本発明の第3実施形態に係る撮像装置の概念を説明する模式図であり、図1の部分拡大図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る撮像装置の概念を説明する模式図であり、図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る撮像装置および撮像方法を実施するための形態について、図を参照して説明する。図面に示す撮像装置およびその要素は、説明を明確にするために、大きさや位置関係等を誇張していることがあり、また、形状を単純化していることがある。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る撮像装置100は、光(可視光を含む光を指す)Lの入射側(被写体OBの側)から順に、第1撮像素子11、第2撮像素子12、および第3撮像素子13(適宜まとめて、撮像素子11,12,13)を積層してなるカラー撮像素子10、ならびに、カラー撮像素子10のさらに光の入射側に配置した透過型の空間光変調器(符号化開口)8および光学系71,72を備える。第1撮像素子11は、1以上の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換部51、および光電変換部51が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路21を有する。同様に、第2撮像素子12は光電変換部52および読出回路22を有し、第3撮像素子13は光電変換部53および読出回路23を有する。また、カラー撮像素子10における空間光変調器8から最も遠い第3撮像素子13以外の第1撮像素子11および第2撮像素子12は、入射した光の一部を光電変換部51,52が吸収し、その余を透過させる。撮像装置100はさらに、撮像素子11,12,13および空間光変調器8を駆動する駆動装置91、撮像素子11,12,13が出力した電気信号から画像を再構成する復号化装置92を備える。なお、1つの波長域の光とは、撮像素子11,12,13が個別に画像データの信号として出力する光であり、本実施形態においては、後記するように光の三原色の1つである。
【0016】
被写体OBから撮像装置100に入射した光L(図1では、被写体OBにおける一点からの光を示す)は、光学系71によって空間光変調器8で結像し、さらに空間光変調器8に形成された複数の微小な開口(図1の白抜き部分)を透過して、光学系72によって収束しながらカラー撮像素子10に入射する。光Lは、空間光変調器8から最も近い第1撮像素子11に入射すると、一部が光電変換部51に吸収されて電荷に変換され、その他は透過して第2撮像素子12に入射する。第2撮像素子12に入射した光Lは、さらにその一部が光電変換部52に吸収されて電荷に変換され、その他は透過して空間光変調器8から最も遠い第3撮像素子13に入射し、光電変換部53に吸収されて電荷に変換される。その結果、撮像装置100は、光Lの光軸方向における位置の異なる3箇所における画像を同時に取得し、個別に電気信号に変換して出力する。以下、撮像装置100の各構成について説明する。
【0017】
(カラー撮像素子)
カラー撮像素子10は、入射する光に含まれる青色光LB(ピーク波長λB=450nm)、緑色光LG(ピーク波長λG=500~540nm)、および赤色光LR(ピーク波長λR=650nm)を、それぞれ個別に電気信号に変換して出力する。そのために、図1および図2に示すように、光の入射側に最も近い層(以下、最上層という)の第1撮像素子11は、青色光LB(網掛けを付した矢印で表す)を吸収して電荷に変換し、かつ緑色光LG(白抜き矢印で表す)および赤色光LR(黒く塗り潰した矢印で表す)を透過する光電変換膜(光電変換部)51と、光電変換膜51が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路を構成する回路層21と、を有する。第2撮像素子12は、緑色光LGを吸収して電荷に変換し、かつ赤色光LRを透過する光電変換膜(光電変換部)52と、光電変換膜52が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路を構成する回路層22と、を有する。光の入射側から最も遠い層(以下、最下層という)の第3撮像素子13は、赤色光LRを吸収して電荷に変換するフォトダイオード(光電変換部)53と、フォトダイオード53が変換した電荷を電気信号として出力させる読出回路を構成する回路部23と、を有する。すなわち、撮像素子11,12,13はそれぞれ、1つの波長域の光(単色光)の撮像素子である。なお、図2は、撮像装置100におけるカラー撮像素子10およびその近傍の部分拡大図であり、光の入射側を上に向けて示す。本明細書において、別途記載のない限り、形式的に、光の入射側を上と表す。
【0018】
前記したように、撮像素子11,12,13はそれぞれ、1つの波長域の光の撮像素子であり、図3に示すように、構造上の最小単位である画素が二次元配列されている。図3において、撮像素子11,12,13に、画素間の境界を一点鎖線で付す。さらに、本実施形態では、撮像素子11,12,13のそれぞれの画素が、同じピッチ(画素長)かつ同じ配列数であり、平面(光の入射面)視における位置を揃えて配列されている。図3においては、簡潔に説明するために、カラー撮像素子10(撮像素子11,12,13)は、4列×4行の16個の画素が配列されている。また、最上層の第1撮像素子11の読出回路21(図1図2参照)は、画素同士を区切るように配置した水平方向と垂直方向の信号線SL,OLのみを示す。第1撮像素子11および第2撮像素子12は、1画素が、例えば図4または図5に示す等価回路図で表され、第3撮像素子13は、1画素が、例えば図6に示す等価回路図で表される。そして、撮像素子11,12,13は、それぞれの読出回路21,22,23が、画素の配列方向に延設した信号線を備え、水平信号線が駆動装置91の垂直走査回路に、垂直信号線が駆動装置91の水平走査回路に、それぞれ接続される。図3では、読出回路21について、水平方向と垂直方向に1本ずつの信号線SL,OLを示すが、後記するように、読出回路21,22,23の構成に応じて信号線が増加する。
【0019】
図4は、フォトダイオードPDおよび選択トランジスタT1を備える最も簡易な構成の画素を示す。フォトダイオードPDは、撮像素子11,12における一対の電極33,34に挟まれた1画素分の光電変換膜51,52であり、フォトダイオードPDの端子が電極33,34である。そして、フォトダイオードPDの画素電極33に接続する側が選択トランジスタT1のソースまたはドレインに接続される。フォトダイオードPDは、逆バイアスに接続されてコンデンサとして機能し、受光により電荷を蓄積する。図4では、アノードが選択トランジスタT1に接続され、カソードが駆動装置91(図1参照)の共通の電源PSに接続されている。前記したように、駆動装置91の垂直走査回路に画素選択線SLが、水平走査回路に読出線OLが、それぞれ接続される。垂直走査回路によって画素選択線SLで選択トランジスタT1が選択されると、蓄積した電荷が選択トランジスタT1を経由して読出線OLに電気信号として出力される。
【0020】
図5は、3つのトランジスタT1,T2,T3を備える1画素3T型のイメージセンサの画素を示し、選択トランジスタT1には増幅トランジスタT2が接続され、フォトダイオードPDが増幅トランジスタT2のゲートに接続されている。このような構成により、ドレイン電源VDDから増幅トランジスタT2と選択トランジスタT1を経由して、フォトダイオードPDの電気信号が電圧として出力される。リセットトランジスタT3は、フォトダイオードPDに蓄積された電荷を、リセット選択線RLで選択されたときに初期化する。なお、リセット電源VRSTはドレイン電源VDDと共通でもよい。
【0021】
図6は、4つのトランジスタT1,T2,T3,T4を備える1画素4T型の、埋込みフォトダイオードを備える相補型金属-酸化物半導体(Complementary Metal-Oxide Semiconductor:CMOS)イメージセンサの画素の一例を示し、フォトダイオードPDは、第3撮像素子13におけるフォトダイオード53である。第3撮像素子13は、図5に示す1画素3T型の第1撮像素子11のフォトダイオードPDと増幅トランジスタT2のゲートとの間に、転送トランジスタT4を挿入し、フォトダイオードPDのアノードとカソードを入れ替えてアノードをGNDに接続した構成である。転送トランジスタT4は、フォトダイオードPDの浮遊拡散層(FD)に蓄積された電荷を、転送選択線TLで選択されたときに完全に転送し、これによって残留電荷による残像とノイズの発生をなくす。なお、第1撮像素子11や第2撮像素子12についても、1画素4T型の画素としてもよく、この場合、図5のフォトダイオードPDと増幅トランジスタT2のゲートとの間に転送トランジスタT4を挿入する。
以下、カラー撮像素子10の各要素について詳細に説明する。
【0022】
第1撮像素子11および第2撮像素子12はそれぞれ、光電変換膜51,52が色選択性および光電変換効率に優れた有機材料からなり、また、回路層21,22が、各画素におけるより広い領域で光LB,LG,LRを透過するように薄膜トランジスタ(TFT)構造を有すると共に、電子移動度の高い半導体材料で形成される。撮像素子11,12は、図7に示すように、光電変換膜51,52それぞれの上下面に接続する画素毎に分離した画素電極33と全面に形成された対向電極34、および対向電極34を被覆する保護膜(絶縁膜)43をさらに備える。第3撮像素子13は、裏面照射型CMOSイメージセンサ(例えば、特許第3759435号公報、特開2015-56518号公報参照)であり、図7に示すように、フォトダイオード53と回路部23のトランジスタ54とがSi基板50に形成されている。そして、Si基板50の表面上(図7における下側)に回路部23の配線35および絶縁層45が形成されている。
【0023】
第3撮像素子13を土台として、Si基板50の裏面上に絶縁膜44を挟んで第2撮像素子12が製造される。一方、第1撮像素子11は、透明な基板40を土台として製造される。そして、カラー撮像素子10は、第1撮像素子11と第2撮像素子12および第3撮像素子13とを、それぞれの最上層の絶縁膜43同士が接合して組み立てられる(特許文献3参照)。したがって、カラー撮像素子10において、第1撮像素子11と第2撮像素子12とは、積層順が逆になる。本実施形態においては、第1撮像素子11と第2撮像素子12とは、光電変換膜51,52の材料以外は同一構造であり、また、平面視で重複するように、それぞれの製造時におけるレイアウトが互いに鏡像に設計されている。すなわち、カラー撮像素子10は、光の入射側から順に、基板40、回路層21、画素電極33、光電変換膜51、対向電極34、絶縁膜43、対向電極34、光電変換膜52、画素電極33、回路層22、絶縁膜44、Si基板50、配線35および絶縁層45を備える。なお、図7に、カラー撮像素子10の画素間の境界を一点鎖線で表す。
【0024】
カラー撮像素子10は、このような構成により、最下層の読出回路23以外の、光を透過させる読出回路21,22にも、電子移動度の高い高温プロセスによる半導体材料を適用することができる。撮像素子11,12,13は、応答速度が高速であることが好ましく、露光と信号出力を合わせて1フレームの1/2以内で可能とし、1/3以内で可能とすることが好ましい。それと共に、カラー撮像素子10は、色選択性および光電変換効率に優れるが耐熱性の劣る有機材料からなる光電変換膜51,52、および広い分光感度を有するSiからなるフォトダイオード53の計3つの光電変換部51,52,53を、互いの間隔を広く設けることなく光Lの進行方向に積層して備えることができる。具体的には、カラー撮像素子10は、光電変換膜51の受光面からフォトダイオード53の受光面までの距離(厚さ方向長)を、最短で10μm以下に形成することができる。カラー撮像素子10において、光電変換膜51と光電変換膜52、および光電変換膜52とフォトダイオード53の、それぞれの受光面同士の距離(厚さ方向長)d1,d2は、その合計(d1+d2)が焦点深度δ以下であることが好ましい。許容錯乱円径がカラー撮像素子10の画素長と等しいと仮定して、焦点深度δは画素長の2倍であり、それ以下に合計(d1+d2)が設計されることが好ましく、光電変換膜51の受光面からフォトダイオード53の受光領域の最深部(例えば受光面の1μm下)までの距離が焦点深度δ以下であることがより好ましい。例えばカラー撮像素子10の画素長が5μmの場合には、光電変換膜51の受光面からフォトダイオード53の受光面までの距離(d1+d2)が10μm以下に設計されることが好ましい。
【0025】
(光電変換膜)
光電変換膜51,52は、固有の波長域の光に感度を有してこれを吸収して電荷に変換し、その他の波長域の光を透過させる有機材料からなる。最下層(フォトダイオード53)以外の光電変換部にこのような材料を適用することにより、光の入射側からR,G,Bの各色の光を任意の順序で受光することができる。本実施形態においては、間に配置された第2撮像素子12の光電変換膜52に、視感度の高い緑色光LGに感度を有する有機材料を適用する。また、最も光の入射側寄りに配置される光電変換膜51に、青色光LBに感度を有する有機材料を適用する。光電変換膜51,52は、膜厚が50nm以上であることが好ましく、光吸収極大波長での吸収率が90%以上、すなわち吸光度A(A=-log(I/I0)、(I/I0:透過率))が1.0以上であることが好ましい。一方で、光電変換膜51,52は、過剰に厚いと、入射した光をすべて吸収してしまいそれ以上の効果がなく、また、透過させる光(光電変換膜51においては赤色光LRおよび緑色光LG、光電変換膜52においては赤色光LR)の透過率によってはこれらの光の透過量が低下する。さらに、光電変換膜51と光電変換膜52、および光電変換膜52とフォトダイオード53の、それぞれの受光面同士の距離d1,d2が長くなる。したがって、光電変換膜51,52は、それぞれの膜厚が1μm以下であることが好ましい。
【0026】
青色光のみに感度を有し、かつ緑色光および赤色光を透過する有機材料としては、クマリン誘導体、ポルフィリン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体が挙げられる。緑色光のみに感度を有し、かつ青色光および赤色光を透過する有機材料としては、キナクリドン誘導体やペリレン誘導体が挙げられる。赤色光のみに感度を有し、かつ青色光および緑色光を透過する有機材料としては、フタロシアニン誘導体やナフタロシアニン誘導体が挙げられる。その他に、アクリジン、シアニン、スクエアリリウム、オキサジン、キサンテントリフェニルアミン、ベンジジン、ピラゾリン、スチリルアミン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、カルバゾール、ポリシラン、チオフェン、ポリアミン、オキサジアゾール、トリアゾール、トリアジン、キノキサリン、フェナンスロリン、フラーレン、アルミニウムキノリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリチオール、ポリピロール、ポリチオフェン、およびこれらの誘導体等を単独で、あるいはこれらに代表される有機材料を2種類以上混合または積層することにより、青色光、緑色光、または赤色光のみに感度を有する光電変換材料を調製することが可能である。
【0027】
光電変換膜51,52は、暗電流(光が入射されていない時に出力される電流)の低減や当該光電変換膜51,52の量子効率向上のために、電子輸送材料、正孔輸送材料、電子注入阻止(電子ブロッキング)材料、正孔注入阻止(正孔ブロッキング)材料等を、前記有機材料(有機光電変換材料)に混合または積層して備えてもよい。電子注入阻止材料としては、トリフェニルアミン系化合物、スチリルアミン系化合物、カルバゾール系化合物等が挙げられ、正孔注入阻止材料としては、フェナンスロリン系化合物、アルミニウムキノリン系化合物、オキサジアゾール系化合物、シロール系化合物等が挙げられ、一般に有機デバイスで扱われている材料を適用することができる。電子注入阻止材料、正孔注入阻止材料についてはさらに、酸化ガリウム、酸化ニッケル等の無機材料を用いることもできる。これらの材料を備える場合、有機光電変換層の片面に電子注入阻止層または正孔注入阻止層を、あるいは上下から挟むように電子注入阻止層と正孔注入阻止層をそれぞれの面に積層することが好ましい。
【0028】
(画素電極、対向電極)
画素電極33と対向電極34は、光電変換膜51,52のそれぞれの両面に接続される一対の電極である。画素電極33は、カラー撮像素子10の画素毎に区画、離間したパターンに形成され、回路層21,22のトランジスタ(図4のトランジスタT1、図5のトランジスタT3)に電気的に接続する。対向電極34は、全面に形成され、駆動装置91の電源やGNDに接続する。画素電極33および対向電極34は、必要な導電性が得られる膜厚以上に形成され、具体的には、それぞれの膜厚が1~100nmであることが好ましい。
【0029】
画素電極33は、光を第3撮像素子13のフォトダイオード53まで到達させるために、可視光の透過率の高い透明電極材料で形成される。透明電極材料としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等が挙げられ、また、これらの膜を2種類以上積層してもよい。あるいは、画素電極33は、Al,Cu,Au,Ag,Pt,Pd,Fe,Co,Ni,Cr,Ti,W,Mo,V,Mn,Ta,Ru等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料で、光を十分に透過する厚さ10nm以下の薄膜に形成されてもよい。対向電極34は、画素電極33と同様に光を透過するように、前記の電極材料で形成することができる。ただし、対向電極34は、光電変換膜51,52の上に成膜されるため、無加熱(室温等)成膜でも比較的良好な導電性が得られるITO,IZO等が好適である。また、対向電極34は、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系に代表される導電性高分子を用いることもできる。
【0030】
光電変換膜51,52と対向電極34との間にバッファ層を備えてもよい(図示せず)。バッファ層が設けられていることによって、対向電極34が成膜される際に、光電変換膜51,52へのダメージを低減することができる。バッファ層は、膜厚が10~500nmであることが好ましい。バッファ層としては、ジピラジノ[2,3-f:2',3'-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)や、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)等を適用することができる。
【0031】
(回路層)
回路層21および回路層22は、それぞれTFT構造を有し、公知の構造とすることができ(例えば、特許文献3,4参照)、前記した通り、レイアウトが互いに鏡像に設計されていること以外は同一構造である。回路層21,22はそれぞれ、一例として、図7に示すように、ゲート電極31と、ゲート絶縁膜41と、半導体層2と、ソース・ドレイン電極32と、水平信号線(図4および図5に示す画素選択線SL、リセット選択線RL)および垂直信号線(図4および図5に示す読出線OL、VDD電源配線、VRST電源配線)と、絶縁膜42と、を備える。回路層21および回路層22は、画素毎に平面視で重複する少なくとも一部の領域が、光を透過する構造とし、より高い面積率で光を透過することが好ましい。そのために、光を透過しない部材、例えば金属電極材料で形成された水平信号線および垂直信号線は、画素間に配置されることが好ましい(図3のSL,OL)。また、図7では、回路層21と回路層22とは、それぞれの形成時におけるレイアウトが互いに鏡像に設計されている。なお、光を透過する領域の平面視で重複する部分が十分に広ければ、回路層21と回路層22とは、異なるレイアウト、さらには異なる回路であってもよい。なお、図7においては、撮像素子11,12,13は、半導体層2等を有するTFT構造を形成された部分の断面を示す。
【0032】
回路層21,22の各要素は、前記した通り、公知のTFT構造のものとすることができる。特に、半導体層2は、可視光(光LR,LG,LB)を吸収して半導体のスイッチング応答が変化することを防止するために、3.0eV以上のバンドギャップを有する材料が好ましく、透明度の高い材料が好ましい。半導体層2はさらに、電子移動度が5cm2/V・s以上が好ましく、10cm2/V・s以上がさらに好ましい。このような半導体材料として、酸化亜鉛(ZnO)やアモルファス酸化物半導体(インジウム・ガリウム・酸化亜鉛:InGaZnO4)等が挙げられ、電子移動度を高くするために、材料等によるが、成膜温度やアニール温度が300~450℃程度で形成される。また、第2撮像素子12の回路層22の各要素は、第3撮像素子13(Si基板50、配線35)の耐熱温度以下で形成されるように材料を選択される。さらに回路層22は、厚さが最大1μm以下であることが好ましい。
【0033】
(保護膜)
保護膜43は、対向電極34を保護する絶縁膜であり、また、第1撮像素子11と第2撮像素子12との貼り合わせ前における当該保護膜43の表面を平坦な面とするための平坦化膜である。保護膜43は、光電変換膜51,52の形成後に成膜されるので、対向電極34と同様、150℃以下の低温で成膜可能な、光を透過する材料で形成される。具体的には、SiO2,SiN,Al23,TiO2等の無機材料が挙げられ、これらの材料を2種以上積層してもよい。あるいは、ポリシラン、ポリビニルカルバゾール、ポリイミド、ポリパラキシレンビニレン等の樹脂材料で形成することができる。保護膜43は、膜厚が0.1μm以上であることが好ましく、成膜後にCMP(化学機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)法で表面を平滑に加工されて形成される場合には、最小で1μm以上であることが好ましい。一方で、第1撮像素子11と第2撮像素子12との受光面間の距離d1を短くするために、膜厚が最大で3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0034】
(Si基板)
Si基板50は、回路部23のトランジスタT1,T2,T3,T4(図6参照)を構成するトランジスタ54、およびフォトダイオード53の材料であり、これらを形成するための土台である。本実施形態では、トランジスタ54がMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)で形成されるため、Si基板50は、単結晶シリコン基板を材料とすることが好ましく、ここでは、フォトダイオード53の構成に対応して、p型Si基板(p-sub)を適用する。また、第3撮像素子13が裏面照射型CMOSイメージセンサであることから、Si基板50は、下側(光の入射側の反対側)の表層にトランジスタ54が形成され、裏面からの研削により厚さが数μm~数十μmに薄化され、研削された裏面が上に向けられている。
【0035】
(フォトダイオード)
フォトダイオード53は、Si基板50に形成された埋込みフォトダイオード(Pinned Photodiode)である。Siは、可視領域を含む広い分光感度を有するので、第3撮像素子13は、いずれの波長域の光(LB,LG,LR)も電荷に変換することができる。カラー撮像素子10においては、青色光LBが光電変換膜51に吸収され、緑色光LGが光電変換膜52に吸収されているので、フォトダイオード53は赤色光LRを入射されて受光する。そのために、フォトダイオード53は、Si基板50の上面から少なくとも3μm程度の深さの領域に形成される。本実施形態では、p型のSi基板50において下から順に、n-エピタキシャル層(図7中、「n-epi」)50n、p-エピタキシャル層(図7中、「p-epi」)50pが積層されたnp二重エピタキシャル基板でフォトダイオード53が形成される。また、Si基板50は、n-エピタキシャル層50n内に、画素毎に当該画素を囲うようにpウェル(図7中、「p-well」)54pが形成されている。フォトダイオード53はさらに、Si基板50の下側表層に、n-エピタキシャル層50nのpウェル54pに囲われた領域を覆うn+拡散層(図7中、「n+」)53n、およびn+拡散層53nに積層されたp+拡散層(図7中、「p+」)53pを備える。また、Si基板50のp+層(図7中、「p-sub」)50sは、フォトダイオード53のアノードとして、GNDに接続されるために、カラー撮像素子10の周縁部において、Si基板50の上面に接続する電極(図示省略)が形成されている。
【0036】
(回路部)
トランジスタ54は、Si基板50に形成されたpウェル54p、pウェル54p内に形成されたn+拡散層(図7中、「n+」)54n、およびSi基板50の下面に薄い酸化膜(ゲート酸化膜)を挟んで形成されたpoly-Si膜からなるゲート54gからなる。さらに、pウェル54p内には、pウェル54pをGND(0V)に電気的に接続するためのp+拡散層(図示省略)が形成されている。そして、ゲート54g、n+拡散層54n、およびp+拡散層には、配線35が接続される。なお、図7においては、回路部23の一部の、n型MOS(NMOS)からなるトランジスタを示す。p型MOS(PMOS)は、pウェル54p内にnウェル(n-well)を形成し、このnウェル内にさらにp+拡散層を形成して、トランジスタのソース、ドレインとする。
【0037】
配線35は、トランジスタ54に接続するゲート電極およびソース・ドレイン電極、ならびに回路部23の水平信号線および垂直信号線(図6に示す画素選択線SL、読出線OL、リセット選択線RL、転送選択線TL、VDD電源配線、VRST電源配線)を構成し、Si基板50の下側に形成される。配線35は、一般的な金属電極材料で形成することができ、特に、半導体素子の配線に一般に適用されるAlやCuが好ましく、さらに必要に応じてTi,W等からなるバリア膜(バリアメタル膜)が設けられる。ここでは、配線35は、耐熱性に比較的優れ、加工の容易なAlまたはAl合金で形成される。このような構成により、第3撮像素子13の耐熱温度は450℃程度となり、第2撮像素子12の回路層22(半導体層2)を高温プロセスで形成することができる。
【0038】
絶縁層45は、Si基板50の下面を被覆し、配線35、トランジスタ54間や配線35同士等を絶縁する。絶縁層45は、半導体装置の層間絶縁膜に適用される絶縁材料を適用することができる。具体的には、SiO2,SiN,SiON,Al23,MgO,MgF2,SiC(シリコンカーバイド)等の無機材料が挙げられる。SiO2には、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)、PSG(Phosphorus Silicon Glass)も含まれる。絶縁層45は、単一の材料でなくてよく、層や領域によって異なる材料で形成されてもよい。
【0039】
(絶縁膜)
絶縁膜44は、第2撮像素子12の回路層22と第3撮像素子13のSi基板50との間に設けられる。絶縁膜44は、上に回路層22の半導体層2を形成されるための耐熱性を有し、また、赤色光LRを透過するように、絶縁層45等と同様の無機絶縁材料で形成することができる。絶縁膜44の膜厚は、0.1μm以上であることが好ましく、第2撮像素子12と第3撮像素子13との受光面間の距離d2を短くするために、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0040】
(基板)
基板40は、第1撮像素子11を形成するための土台であり、光の入射側と反対側の面(下面)上に第1撮像素子11が形成される。基板40は、カラー撮像素子10において最上層に設けられるため、光(可視光)を透過し、さらに回路層21(半導体層2)を形成するための耐熱温度を有する絶縁材料で形成される。具体的には、SiO2(酸化ケイ素、ガラス)、MgO(酸化マグネシウム)、サファイア、GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)等が挙げられる。
【0041】
フォトダイオード53を構成するSiは、可視領域外の光(近赤外線、紫外線等)にも感度を有するので、カラー撮像素子10は、このような光を吸収するフィルタを、Si基板50よりも上に、特に最上層(第1撮像素子11上)に備えることが好ましい(図示省略)。あるいは、撮像装置100において、カラー撮像素子10の光の入射側にフィルタを備えてもよい。
【0042】
カラー撮像素子10は、必要に応じて、第3撮像素子13の下に、これを支持するための土台として支持基板を備える(図示省略)。支持基板は、Si基板50を裏面研削で薄化する際に、表側の絶縁層45の表面に貼り合わされる。支持基板は、第2撮像素子12、特に半導体層2を形成されるための耐熱性を有する、公知の基板材料が適用される。
【0043】
(空間光変調器)
符号化開口は、マトリクス状に配列したマスの一部が開口した開口パターンを有し、被写体OBからカラー撮像素子10の各画素に入射する光の一部を遮蔽する。本実施形態においては、明暗(白黒)2階調の空間光変調器(SLM)8を符号化開口に適用する。空間光変調器8は、その1画素が開口パターンの1マスに対応して、「明」表示の画素を微小な開口として任意の開口パターンを電気的手段により形成し、さらに2通り以上に開口パターンを切り替えることができる。空間光変調器8は、液晶ディスプレイ(LCD)等の透過型の液晶光変調器を適用することができる。詳しくは、空間光変調器8は、第1撮像素子11のように透明な基板上にTFTおよび画素電極が形成され、対向電極を成膜した別の基板との間に液晶材料が封入され、さらに両側の基板のそれぞれの外側に、位相差板および偏光板が配置される。TFTは、回路層21等と同様に、画素の配列方向に延設した水平信号線(走査線)と垂直信号線(ソース線)を備え、それぞれ駆動装置91の垂直走査回路と水平走査回路に接続される。また、空間光変調器8は、応答速度が、撮像のフレームレートの2倍以上、好ましくは3倍以上であり、そのために、応答速度が高速な強誘電性液晶(FLC:Ferroelectric Liquid Crystal)によるものが好ましい。
【0044】
空間光変調器8は、カラー撮像素子10の各画素の一部の領域に光が入射させることが好ましく、そのために、理想的には、カラー撮像素子10の1画素に対して2×2以上の画素を有する。しかし、空間光変調器8は、画素数に比例して大型化し、さらに、カラー撮像素子10に対して大きくなるにしたがい合焦距離が長くなる傾向があるので、カラー撮像素子10との間隔を長く設けて配置される必要があり、撮像装置100が大型化する。また、空間光変調器8は、駆動方式によっては、画素数が多いと開口パターンの切替えに時間(応答時間)がかかる。そこで、本実施形態に係る撮像装置100は、図3に示すように、カラー撮像素子10と空間光変調器8とが、それぞれの画素が1対1で対応すると共に、空間光変調器8の「明」表示の1画素(図中、白抜きで表す)を透過した光Lが、カラー撮像素子10に、水平(H)方向、垂直(V)方向それぞれにおいてカラー撮像素子10の画素長の1/2ずれて入射するように配置される。詳しくは、水平方向、垂直方向それぞれにおいて、空間光変調器8のk番目の画素を透過した光Lは、カラー撮像素子10の(k-1)番目の画素とk番目の画素とにわたって入射する。kは、空間光変調器8、カラー撮像素子10の、水平方向、垂直方向における画素の配列数以下の任意の自然数である。したがって、空間光変調器8の「明」表示の1画素を透過した光Lは、カラー撮像素子10の2×2の4画素にわたって、それぞれの1/4((1/2)2)の領域に入射する。言い換えると、カラー撮像素子10の1画素に入射する光は、空間光変調器8の2×2の4画素のうちの「明」表示の画素を透過した光Lである。図3に、最上層の第1撮像素子11の光電変換部51の光の入射面(受光面)に、光Lが入射する領域を白抜きとして網掛けを付す。なお、図3においては、簡潔に表すために、空間光変調器8とカラー撮像素子10との画素長(画素ピッチ)を同じとし、さらに、光学系72を省略し、光Lを直進するように表す。このような構成により、空間光変調器8は、カラー撮像素子10と同数の画素を有しつつ、カラー撮像素子10のすべての画素に光を入射させ、かつそれぞれの画素に入射する光に符号化開口の効果を付与することができ、この効果は、カラー撮像素子10の1画素に対して空間光変調器8が2×2の4画素を有する場合と同等となる。
【0045】
図3に示すように、カラー撮像素子10の画素数(4×4)に対して、空間光変調器8の画素数(5×5)は、水平方向および垂直方向に1ずつ多い。したがって、カラー撮像素子10の入射面の端に配列された画素に対しても、空間光変調器8の2×2の4画素から選択された「明」表示の画素を透過した光Lを入射することができる。あるいは、空間光変調器8の画素数は、カラー撮像素子10の画素数に対して同数であってもよいし、水平方向や垂直方向に1ずつ少なくてもよい。この場合には、カラー撮像素子10の入射面の端に配列された画素に対しては、空間光変調器8の2×1または1×2の2画素のうちの「明」表示の画素を透過した光Lが入射し、すなわち、2×2の4画素における外側の2画素が常に非開口(「暗」表示)であることに相当する。
【0046】
空間光変調器8は、前記したように撮像装置100の大型化を抑制するために、全体の大きさ(長さ)が、カラー撮像素子10に対して大き過ぎないことが好ましく、具体的にはカラー撮像素子10の5倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。空間光変調器8は、前記したようにカラー撮像素子10と同じ画素数であるので、画素長がカラー撮像素子10の画素長の5倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。空間光変調器8は一方、画素が微細化すると、開口長(1画素(開口の最小単位)における開口領域の長さ)が小さくなって、カラー撮像素子10に入射する光の光量が低下するので、画素長が1μm以上であることが好ましい。
【0047】
(光学系)
光学系71,72はそれぞれ、1以上のレンズで構成され、図1では簡潔に、1枚の凸レンズで表す。光学系71は、空間光変調器8の光の入射側に設けられて、被写体OBからの光Lを空間光変調器8で結像させる。光学系72は、空間光変調器8とカラー撮像素子10との間に設けられて、空間光変調器8の開口(「明」表示の画素)から発散した光を収束させて、カラー撮像素子10で合焦させる。光Lの合焦する位置を、合焦面fpと称する。図1では、第2撮像素子12の光電変換膜52と第3撮像素子13の光電変換部53との間で、光が合焦している。光電変換膜51、光電変換膜52、および光電変換部(フォトダイオード)53は、それぞれの受光面の合焦面fpからの距離が、焦点深度δの1/2以下であることが好ましく、受光領域全体における合焦面fpからの距離がδ/2以下であることがより好ましい。そのために、光学系72は、焦点深度δが光電変換膜51の受光面から光電変換部53の受光面までの距離(d1+d2)以上となるように、レンズのF値等を設計することが好ましい。そして、光学系72は、光Lを、最上層の第1撮像素子11の光電変換膜51の受光面から最下層の第3撮像素子13の光電変換部53の受光面までの間で合焦させることが好ましく、撮像素子11,13の各受光面同士の中間または第2撮像素子12の受光面で合焦させることがより好ましい(図2参照)。また、光学系72は、空間光変調器8の1つの開口から出射した光を、合焦面fpにおいて、前記したように、カラー撮像素子10の1画素分(2×2の4画素の各1/4の領域)の範囲に入射させることが好ましい(図3参照)。
【0048】
(駆動装置、復号化装置)
駆動装置91は、電源、垂直走査回路、水平走査回路、およびこれらを制御する制御回路等を備えて、カラー撮像素子10の撮像素子11,12,13の各読出回路21,22,23、および空間光変調器8に接続し、これらを同期させて駆動する。復号化装置92は、読出回路21,22,23から駆動装置91を経由して電気信号を入力されて、画像を再構成する。駆動装置91および復号化装置92については、後記の撮像方法にて詳細に説明する。
【0049】
(撮像方法)
本発明の第1実施形態に係る撮像装置による撮像方法について、図1図2、および図8を参照して説明する。被写体OBから撮像装置100に入射した光Lは、空間光変調器8の開口のそれぞれから発散し、光学系72によって収束しながらカラー撮像素子10に入射する。光Lは、空間光変調器8の微小な開口を通ることにより、直接に(円形絞りのみを通って)結像するよりもぼけの小さい像をカラー撮像素子10で結像する。そして、光Lから青色光LB、緑色光LG、赤色光LRの順に、撮像素子11,12,13の光電変換部51,52,53に吸収されて電荷に変換される。図2に示すように、合焦面fpが第2撮像素子12の受光面に合わせられているので、緑色光LGは、第2撮像素子12の受光面で合焦して、ぼけのない画像(合焦画像)の信号が第2撮像素子12によって取得される。さらに、第1撮像素子11、第3撮像素子13の各受光面も焦点深度内に配置されているので、青色光LBおよび赤色光LRについても、実質的にぼけのない画像の信号が撮像素子11,13によってそれぞれ取得される。なお、図2において、光電変換部51,52,53に付した太線枠は、撮像素子11,12,13の画素の開口部(有効領域)を表す。被写体OBのある1点から照射された光Lにおいて、緑色光LGは、第2撮像素子12の受光面において、隣り合う2画素の各1/2の領域に、すなわち1画素分の領域に入射する。これに対して、青色光LBおよび赤色光LRは、撮像素子11,13の隣り合う2画素において広がるものの、これらの外側の画素までには及ばない。
【0050】
また、撮像装置100は、駆動装置91が、走査期間tscanにおいて、空間光変調器8の走査信号線(図8のSLM)を1本ずつ選択して、画素の1列(ライン)毎に電圧を印加する。なお、図8においては、空間光変調器8のすべての走査信号線を一つにまとめて示す。これにより、走査期間tscanの後、空間光変調器8に所望の開口パターンが形成され、被写体OBからの光Lが各開口を透過して発散する。図3を参照して前記したように、カラー撮像素子10の1画素に、空間光変調器8の2×2の4画素のうちの「明」表示の画素を透過した光が入射する。空間光変調器8は、カラー撮像素子10の各画素に入射する光についてその一部を遮蔽することが好ましい。したがって、開口パターンは、空間光変調器8におけるすべての2×2の4画素のうちの1ないし3画素が「明」表示であることが好ましく、1画素または対角上の2画素が「明」表示であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態では、符号化開口である空間光変調器8の開口パターンの形成を1フレーム期間tF内で3回実行して、図8に示す3通りの開口パターンCA1,CA2,CA3に切り替える。開口パターンCA1,CA2,CA3は、互いに、カラー撮像素子10の各画素の異なる部分を遮光することが好ましい。空間光変調器8が開口パターンを変化させることにより、撮像素子11,12,13のそれぞれの受光面に入射する光LB,LG,LRは、1画素内または隣り合う画素にわたる僅かに異なる部分に入射し、その結果、僅かに異なる画像の信号が取得される。そこで、図8に示すように、撮像装置100は、撮像時に、1フレーム期間内で、空間光変調器8を開口パターンCA1,CA2,CA3に切り替えると共に、開口パターン毎に、撮像素子11,12,13による露光(EXP(1)、EXP(2)、EXP(3))および信号出力を実行する(図8には、露光期間texpのみを示す)。すなわち、撮像素子11,12,13は、フレームレートの3倍速で駆動する。
【0052】
このような駆動方法により、1フレーム期間内に、色毎に3通り、計9の画像データが取得される。開口パターンCA1,CA2,CA3のぼけ関数(PSF:Point Spread Function、点拡がり関数)をf1,f2,f3、開口パターンCA1,CA2,CA3をそれぞれ透過して取得した単色の画像をy1,y2,y3と表すと、再構成像Xは、下式(1)で表される。なお、F(f1,f2,f3)、Y(y1,y2,y3)である。再構成像Xは、例えば、圧縮センシング(平林晃,北原大地,“圧縮センシングの基礎と画像取得への応用”,一般社団法人日本光学会,光学,46巻,10号,p.393~397,2017年)での演算で得られる。
X=F-1Y ・・・(1)
【0053】
空間光変調器8の開口パターン数は2以上とし、3以上が好ましく、多いほど再構成像Xの空間解像度が向上する。一方で、開口パターン数を多くすると、撮像素子11,12,13および空間光変調器8の各応答速度や、露光期間texpの限界によっては、フレームレートを遅くする必要があり、時間解像度が低下する。
【0054】
再構成像Xは、R,G,Bの各色の単色の画像であるから、これらを合成してカラー画像とする。このとき、色補正を施して再構成することが好ましく、一般的な色信号処理手法を用いることができる。例えば、まず、白い被写体を撮像した際に、白を表現する信号となるように各色の像信号のゲインを下式(2)で補正する。KR,KG,KBは補正係数である。さらに、下式(3)で、リニアマトリックス処理を施し、全体の色調を変化させて自然なカラー画像とする。Cは、補正係数である。
【数1】
【0055】
本実施形態に係る撮像装置100においては、光軸方向の位置の異なる撮像素子11,12,13が、色別に画像を取得するので、ぼけ関数Fは色別に求める。あるいは、各色の再構成像Xを光学的に補正して平行光線を得る。
【0056】
(変形例)
図9に示すように、撮像素子11,12,13の1つまたは2つは、図8と同様に空間光変調器8の開口パターン毎に露光し(EXP(3))、その他は、1フレーム毎に(EXP(1))または2つの開口パターンにわたって(EXP(2))露光してもよい。あるいは、撮像素子11,12,13の1つは、開口パターン毎に露光し(EXP(3))、別の1つは1フレーム毎に露光し(EXP(1))、残りの1つは2つの開口パターンにわたって露光し(EXP(2))てもよい。例えば、第1撮像素子11および第2撮像素子12は、1フレーム毎に露光して、開口パターンCA1,CA2,CA3の各画像y1,y2,y3を多重(三重)露光し、第3撮像素子13は開口パターン毎に露光する。撮像素子11,12が撮像した青色、緑色の多重露光画像は、第3撮像素子13が撮像した赤色の画像y1,y2,y3の差分に基づき再構成される。そして、再構成した画像を、前記実施形態と同様にさらに再構成する。
【0057】
このような方法によれば、撮像素子11,12,13の少なくとも1つを3倍速(2倍速以上)で駆動すればよいので、単結晶Siで形成された読出回路23を有して高速駆動が容易な第3撮像素子13を3倍速で駆動して、フレームレートを高速化することができ、時間解像度が向上する。あるいは、第1撮像素子11について、基板40に高耐熱ガラス等を適用して、高温(500~600℃程度)で回路層21(半導体層2)を形成して、高速駆動可能な構成とすることもできる。その結果、空間解像度および時間解像度が共に高いカラー画像が得られる。また、短露光によって赤色の画像y1,y2,y3にちらつき(フリッカ)を生じた場合には、長露光による青色、緑色の多重露光画像によって補正することができる。
【0058】
2つの開口パターンにわたって露光した場合には、開口パターンCA1,CA2の各画像y1,y2、開口パターンCA3,CA1の各画像y3,y1、および開口パターンCA2,CA3の各画像y2,y3を、それぞれ二重露光する。奇数フレーム目においては画像y1,y2の二重露光画像が、偶数フレーム目においては、画像y3,y1および画像y2,y3の2つの二重露光画像が、それぞれ撮像される。二重露光画像についても、前記の多重露光画像と同様に、開口パターン毎に露光して撮像された画像y1,y2、画像y2,y3、および画像y3,y1の各差分に基づき再構成される。また、空間光変調器8の開口パターンをCA1,CA2,CA3,CA4(図示省略)の4通りとして、第3撮像素子13を4倍速で駆動し、撮像素子11,12を2倍速で駆動して、開口パターンCA1,CA2の各画像y1,y2の二重露光と開口パターンCA3,CA4の各画像y3,y4の二重露光とを行うこともできる。
【0059】
前記したように、カラー撮像素子10は、R,G,Bの各色の光を任意の順序で受光するように構成することができる。例えば、最も入射側寄りに配置されて光を高効率で入射される第1撮像素子11の光電変換膜51は、視感度の高い緑色光LGに感度を有し、かつ青色光LBおよび赤色光LRを透過する有機材料が適用されてもよい。一方、第3撮像素子13のフォトダイオード53は、青色光LBまたは緑色光LGを受光する構成としてもよく、青色光LBを受光する場合にはSi基板50の上面から300nm程度の深さの領域に形成されるので、撮像素子12,13の受光面間距離d2を短くすることができる。また、最下層に配置される第3撮像素子13は、光電変換部53に、耐熱性が高く、可視領域全体に分光感度を有する光電変換材料として、結晶セレン(c-Se)や組成CuIn1-xGax(Se1-yy)のカルコパイライト構造の化合物半導体(CIGS)を適用することができる。
【0060】
また、カラー撮像素子10は、第1撮像素子11と第2撮像素子12の間や第2撮像素子12と第3撮像素子13の間に、画素毎にマイクロレンズを配列したマイクロレンズアレイを備えてもよい。マイクロレンズアレイにより、受光面間の距離d1,d2を光学的に短縮することができる。そこで、第3撮像素子13を、第1撮像素子11と同様に、有機材料からなる光電変換膜を読出回路23上に備える構成としてもよい。第3撮像素子13は、回路部23のトランジスタ54をSi基板50の表層に形成することができ、Si基板50上にトランジスタ54に接続する画素電極を金属電極材料で形成し、さらにその上に光電変換膜を成膜すればよい。この場合には、第2撮像素子12を基板40上に形成し、必要に応じて基板40の裏面を研削して薄肉化して、第3撮像素子13の上にマイクロレンズアレイを形成してその上に貼り合わせる。あるいは、第3撮像素子13は、表面照射型CMOSイメージセンサであってもよい。マイクロレンズアレイは、第3撮像素子13上に、画素毎にドーム状のマイクロレンズを高屈折率材料で形成し、その上に低屈折率材料で凹凸を埋めて平坦化して得られる。
【0061】
Si等の2以上の波長域にわたって分光感度を有する材料を適用した第3撮像素子13のフォトダイオード(光電変換部)53は、光電変換膜51,52が青色光LBや緑色光LGを完全に吸収せずに一部を透過すると、これらの光も吸収してしまう。このような場合には、カラー撮像素子10は、第2撮像素子12と第3撮像素子13との間に、赤色光LR以外の可視光を吸収するカラーフィルタを設けることが好ましい。カラーフィルタは、上に第2撮像素子12(半導体層2)を形成されるために、耐熱性を有する誘電体多層膜で形成された、フォトニック結晶構造による光学フィルタを適用されることが好ましい。あるいは、顔料等を含有する有機材料からなる一般的なカラーフィルタを適用することもできる。この場合には、カラーフィルタの上または下にマイクロレンズアレイを備えて受光面間の距離d2を光学的に短縮して、前記したように、基板40上に形成した第2撮像素子12を上に貼り合わせる。
【0062】
撮像装置100は、透過型の空間光変調器8を備えることにより、小型化をいっそう容易とするが、反射型の空間光変調器を備えることもできる。この場合、撮像装置100は、空間光変調器の反射面(光の入出射面)側の、その法線に対して傾斜した光軸上に、光学系72およびカラー撮像素子10を配置する(図示省略)。反射型の空間光変調器は、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)-SLMであり、透過型よりも応答速度が高速であり、また、トランジスタがMOSFETで形成されているので、画素長(ピッチ)を4μm以下に微細化することができる。あるいは、反射型の空間光変調器は、応答速度がより高速なDMD(Digital Micromirror Device)を適用することができる。
【0063】
撮像装置100は、空間光変調器8の1つの開口から出射した光が、カラー撮像素子10に、水平方向または垂直方向の一方のみにおいてカラー撮像素子10の画素長の1/2ずれて入射する、すなわちカラー撮像素子10の2×1または1×2の2画素にわたって、それぞれの1/2の領域に入射するように、カラー撮像素子10と空間光変調器8とが配置されていてもよい。あるいはさらに、空間光変調器8は、垂直方向または水平方向の一方において、画素の配列数をカラー撮像素子10の2倍としてもよい。詳しくは、空間光変調器8は、画素の配列数が、水平方向にカラー撮像素子10の2倍、垂直方向にカラー撮像素子10と同数またはその±1とする。そして、空間光変調器8の水平方向に隣り合う2つ(2×1)の画素が共に開口した状態と仮定して、この2×1の開口から出射した光が、カラー撮像素子10の垂直方向に隣り合う2つ(1×2)の画素にわたって、それぞれの1/2の領域に入射する。このような構成によれば、空間光変調器8は、開口パターンの形成時間(応答時間)に影響する走査線(水平信号線)の本数を倍増させることなく、前記実施形態と同様に、カラー撮像素子10の1画素に対して空間光変調器8が2×2の4画素を有する場合と同等の効果が得られる。さらに、空間光変調器8は、画素の水平方向の配列数を3倍以上(整数倍)とすることもできる。
【0064】
以上のように、本発明の第1実施形態およびその変形例に係る撮像装置は、撮像素子を多画素化等、大型化することなく、画素数を超える解像度の画像を取得することができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
本発明に係る撮像装置は、カラー撮像素子が波長域毎に撮像素子を備えなくてもよく、撮像素子の数を少なくすることができると共に、最上層から最下層までの受光面間距離を短くして、画素の微細化等により焦点深度が短縮されても容易に焦点深度内に収めることができる。以下、本発明の第2実施形態に係る撮像装置について、図10および図1を参照して説明する。第1実施形態(図1~9参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0066】
本発明の第2実施形態に係る撮像装置100は、図10に示すように、光Lの入射側から順に、第1撮像素子12、カラーフィルタアレイ60、および第2撮像素子13を積層してなるカラー撮像素子10A、ならびに、カラー撮像素子10Aのさらに光の入射側に配置した光学系71,72および空間光変調器8(図1参照)を備える。本実施形態に係る撮像装置100は、第1実施形態のカラー撮像素子10に代えてカラー撮像素子10Aを備える構成である。第1撮像素子12、第2撮像素子13はそれぞれ、第1実施形態における第2撮像素子12、第3撮像素子13と同様の構造である。すなわち、第1撮像素子12は緑色光LGに感度を有する光電変換膜52を備え、第2撮像素子13は可視領域全体に感度を有するSiからなるフォトダイオード53を備える。
【0067】
カラーフィルタアレイ60は、青色光LBを透過し、かつ赤色光LRを吸収するカラーフィルタ6bと、赤色光LRを透過し、かつ青色光LBを吸収するカラーフィルタ6rと、をカラー撮像素子10Aの画素に合わせて交互に配列した構造である。カラーフィルタ6b,6rの配列は、ストライプ状または市松状とすることができる。カラーフィルタアレイ60は、第2撮像素子13の受光面のより近くに配置されることが好ましく、第2撮像素子13のSi基板50の裏面上(図7における上側)に形成される。このような構成により、入射面に非垂直に入射してカラーフィルタ6b,6rを透過した光LB,LRが、第2撮像素子13の対応する画素から大きくずれることなく入射する。カラーフィルタアレイ60は、上に第1撮像素子12(半導体層2)を形成されるために、耐熱性を有するフォトニック結晶構造による光学フィルタを適用されることが好ましい。カラーフィルタ6b,6rはそれぞれ、屈折率の異なる2種類以上の膜を積層した誘電体多層膜であり、特定の波長域の光を透過し、それ以外の光を反射し、または打ち消すことができる。カラーフィルタ6b,6rは、例えば、高屈折率層とそれよりも屈折率の低い低屈折率層とを交互に計7層、積層した構造で、中心の1層の低屈折率層(欠陥層)を透過させる光の波長に対応した膜厚とし、それ以外はカラーフィルタ6b,6rで同じ膜厚とする。カラーフィルタアレイ60の上には、カラーフィルタ6b,6rの欠陥層の膜厚差による段差を平坦化するために、絶縁膜44が設けられ、さらにその上に第1撮像素子12の回路層22が形成される。
【0068】
本実施形態においては、第1実施形態(図2参照)と同様に、最上層の第1撮像素子12および最下層の第2撮像素子13の受光面間の距離dが、焦点深度δ以下であることが好ましく、光電変換膜52の受光面から光電変換部(フォトダイオード)53の受光領域の最深部までの距離が焦点深度δ以下であることがより好ましい。そして、それぞれの受光面の合焦面fpからの距離がδ/2以下であることが好ましい。
【0069】
(撮像方法)
本発明の第2実施形態に係る撮像装置による撮像方法について、図1図8図9および図10を参照して説明する。被写体OBから撮像装置100に入射した光Lは、第1実施形態と同様に空間光変調器8の開口のそれぞれから発散し、光学系72によって収束しながらカラー撮像素子10Aに入射する。そして、光Lは、まず、第1撮像素子12に到達し、緑色光LGが光電変換膜52に吸収され、青色光LBおよび赤色光LRが透過してカラーフィルタアレイ60に到達する。そして、カラーフィルタアレイ60のカラーフィルタ6bからは青色光LBが透過し、その直下の第2撮像素子13の画素におけるフォトダイオード53に吸収される。カラーフィルタ6rからは赤色光LRが透過し、その直下の第2撮像素子13の画素におけるフォトダイオード53に吸収される。第1実施形態(図2参照)と同様に、第1撮像素子12、第2撮像素子13の各受光面が焦点深度内に配置されているので、第1撮像素子12は緑色の、第2撮像素子13は青色および赤色の、実質的にぼけのない画像を撮像する。特に、第2撮像素子13においては、受光面の合焦面fpからの距離が短いので、青色光LBおよび赤色光LRがほとんど広がらず、隣の色の異なる画素まで及び難い。さらに、図8に示す第1実施形態と同様に、撮像素子12,13それぞれについて、空間光変調器8の開口パターン毎に露光して信号を出力し、開口パターン毎の画像y1,y2,y3を取得することができる。第1実施形態と同様に、R,G,Bの各色の画像を再構成し、さらにこれらを合成してカラー画像とする。その結果、青色光LBおよび赤色光LRの各画素が第2撮像素子13の入射面の1/2ずつに設けられた疎な構成であっても、青色光LBおよび赤色光LRの高精度な情報を取得することができ、再構成像の劣化が抑制される。
【0070】
(変形例)
本実施形態においては、図9に示すように、第1撮像素子12は開口パターン毎に露光し(EXP(3))、第2撮像素子13は、1フレーム毎に(EXP(1))または2つの開口パターンにわたって(EXP(2))露光してもよい。第1実施形態の変形例と同様に、第2撮像素子13が取得した多重露光画像は、青色、赤色のそれぞれの単色画像について、第1撮像素子12が取得した緑色の画像y1,y2,y3の差分に基づき再構成される。このような方法によれば、第2撮像素子13において青色光LBおよび赤色光LRの各画素が入射面の1/2のみに設けられた疎な構成であっても、多重露光画像とすることで、空間光変調器8の開口を透過した光LB,LRがそれぞれの画素に到達し易く、再構成像を演算する際の画質の劣化が抑制されると共に、利用効率が低下しない。また、第1撮像素子12を高速駆動可能な構成とすることにより、フレームレートを高速化することができて、空間解像度と共に時間解像度が高いカラー画像が得られる。具体的には、第1撮像素子12に代えて第1実施形態のカラー撮像素子10の第1撮像素子11(図2図7参照)を適用し、第1撮像素子11と第2撮像素子13とをカラーフィルタアレイ60を挟んで貼り合わせてカラー撮像素子10Aを製造することにより、高耐熱の基板40上に高温で形成した回路層21を備えた高速駆動可能な第1撮像素子11を備えることができる。また、短露光によって緑色の画像y1,y2,y3にちらつき(フリッカ)を生じた場合には、長露光による青色、赤色の多重露光画像によって補正することができる。
【0071】
また、図11に示すように、第1撮像素子12は開口パターン毎に露光し(EXP(1))、第2撮像素子13は、各開口パターンの途中で露光を切り換えて(EXP(2))、開口パターンCA1,CA2の各画像y1,y2、開口パターンCA2,CA3の各画像y2,y3、および開口パターンCA3,CA1の各画像y3,y1をそれぞれ二重露光することもできる。第2撮像素子13が撮像した二重露光画像は、図9に示す長露光による多重露光画像と同様に、第1撮像素子12が取得した画像y1,y2,y3の差分に基づき再構成される。このような方法によれば、二重露光画像とすることで、空間光変調器8の開口を透過した光LB,LRが第2撮像素子13の入射面の1/2のみに設けられたそれぞれの画素に到達し易く、再構成像を演算する際の画質の劣化が抑制され、また、1フレーム期間内に3つの二重露光画像を撮像するので、空間解像度が向上する。
【0072】
さらに別の方法として、空間光変調器8の開口パターンの1つを全面開口、すなわち通常の絞り(円形開口)としてもよく、このときに第2撮像素子13を露光する。このような方法によれば、前記の多重露光による方法と同様に、青色光LBおよび赤色光LRの利用効率が低下せず、第1撮像素子12が取得した緑色の画像に基づいて、青色および赤色の各再構成像を取得することができる。
【0073】
本実施形態において、カラー撮像素子10Aは、光を高効率で入射される最上層の第1撮像素子12が視感度の高い緑色光LGをすべての画素で撮像して高解像度の画像を取得し、一方、第2撮像素子13が青色光LBおよび赤色光LRを入射面の1/2ずつの画素で撮像して単板式のカラー撮像素子よりは解像度の低下を抑制した画像を取得している。ただし、カラー撮像素子10Aは、R,G,Bの任意の1色の光を第1撮像素子12で、その他の2色の光を第2撮像素子13で撮像するように構成することができる。また、カラー撮像素子10Aにおいては、第2撮像素子13が、光電変換部53に結晶セレンやCIGSを適用されてもよい。また、カラー撮像素子10Aは、前記したように、第1撮像素子12を第1実施形態の第1撮像素子11(図2図7参照)に置き換え、第2撮像素子13の上に、基板40を上に向けた第1撮像素子11を、カラーフィルタアレイ60を挟んで貼り合わせて製造されてもよい。この場合には、第2撮像素子13の光電変換部53やカラーフィルタアレイ60に有機材料を適用することができる。光電変換部53を構成する有機材料膜は、第1実施形態で説明した青色光LBに感度を有する有機材料と赤色光LRに感度を有する有機材料とを混合して得られる。また、カラーフィルタアレイ60のカラーフィルタ6b,6rは、公知のカラーフィルタ材料である、感光性樹脂に顔料を分散させたカラーレジスト等で形成することができる。
【0074】
カラー撮像素子10Aは、カラーフィルタアレイ60を第1撮像素子12の上に配置してもよい。この場合には、カラーフィルタアレイ60のカラーフィルタ6b,6rはそれぞれ緑色光LGも透過するものとし、また、カラーフィルタアレイ60から第2撮像素子13の受光面までの距離を短くするために、撮像素子12,13の受光面間距離dをより短くすることが好ましい。カラーフィルタアレイ60は、第1撮像素子12の上に配置される場合、前記したように、感光性樹脂に顔料を分散させたカラーレジスト等で形成されてもよい。また、第1撮像素子12と第2撮像素子13の間に、第1実施形態の変形例と同様にマイクロレンズアレイを備えてもよく、受光面間距離dを光学的に短縮することができる。
【0075】
以上のように、本発明の第2実施形態およびその変形例に係る撮像装置は、第1実施形態に係る撮像装置と同様に撮像素子の画素数を超える解像度の画像を取得することができ、さらに、各色の画像データを取得する撮像素子の数を色数よりも少なくして、短い焦点深度内に配置することができ、画素の微細化に対応することができる。
【0076】
〔第3実施形態〕
本発明に係る撮像装置は、光軸方向の位置の異なる複数の撮像素子を備える。第1、第2実施形態に係る撮像装置は、これらすべての撮像素子について、その受光面を焦点深度内に配置することにより、ぼけのない画像を撮像しているが、一部の撮像素子を焦点深度の外に配置することにより、ぼけのない画像とぼけ画像を同時に撮像して、奥行き情報を有する画像を取得することができる。以下、本発明の第3実施形態に係る撮像装置について、図12および図1を参照して説明する。第1、第2実施形態(図1~11参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0077】
本発明の第3実施形態に係る撮像装置100は、図12に示すように、光Lの入射側から順に、第1撮像素子11B、第2撮像素子12、カラーフィルタアレイ60、および第3撮像素子13を積層してなる複合撮像素子10B、ならびに、複合撮像素子10Bのさらに光の入射側に配置した光学系71,72および空間光変調器8(図1参照)を備える。本実施形態に係る撮像装置100は、第1実施形態のカラー撮像素子10に代えて複合撮像素子10Bを備える構成である。また、複合撮像素子10Bは、第2実施形態に係る撮像装置のカラー撮像素子10A(図10参照)に、光の入射側に、可視領域全体の光を撮像する第1撮像素子11Bを追加した構成である。
【0078】
第1撮像素子11Bは、可視領域全体の光に感度を有する光電変換膜51Bを備えること以外は、第1実施形態の第1撮像素子11と同様の構造である。光電変換膜51Bは、第1実施形態で説明した、青色光LB、緑色光LG、および赤色光LRにそれぞれ感度を有する有機材料を混合して、可視領域全体の光に感度を有する構成とする。また、光電変換膜51Bは、複合撮像素子10Bに入射した光Lの青色光LB、緑色光LG、赤色光LRのそれぞれの一部、好ましくは1/2以下を吸収して残りを透過するように、膜厚が調整される。
【0079】
撮像素子12,13の受光面間の距離d2は、第2実施形態のカラー撮像素子10Aにおける受光面間の距離dと同様に、焦点深度δ以下であることが好ましく、光電変換膜52の受光面から光電変換部(フォトダイオード)の受光領域の最深部までの距離が焦点深度δ以下であることがより好ましい。一方、撮像素子11B,12の受光面間の距離d1は、δ/2よりも長いことが好ましく、焦点深度δ以上であることがより好ましい。後記するように、撮像素子11B,12の受光面間の距離d1は、短過ぎると奥行推定が困難となり、長くなると、画像の再構成が困難になるので、例えば複合撮像素子10Bの画素長が5μmの場合には、1000μm以下とすることが好ましい。撮像素子11B,12は、それぞれの絶縁膜43(図7参照)の膜厚を調整し、または互いを貼り合わせる際に間に光を透過する部材を設けて、受光面間の距離d1を調整することができる。そして、撮像素子12,13のそれぞれの受光面の合焦面fpからの距離がδ/2以下であることが好ましく、一方、第1撮像素子11Bの受光面の合焦面fpからの距離は、δ/2超であり、δ以上であることが好ましい。
【0080】
(撮像方法)
本発明の第3実施形態に係る撮像装置による撮像方法について、図1図8、および図12を参照して説明する。被写体OBから撮像装置100に入射した光Lは、第1実施形態と同様に、空間光変調器8の開口のそれぞれから発散し、光学系72によって収束しながら複合撮像素子10Bに入射する。そして、光Lは、まず、第1撮像素子11Bに到達し、青色光LB、緑色光LG、および赤色光LRのそれぞれの一部が光電変換膜51Bに吸収され、残りが第2撮像素子12に到達する。そして、光電変換膜51Bを透過した光Lは、第2実施形態と同様に、緑色光LGが光電変換膜52に吸収され、青色光LBおよび赤色光LRがカラーフィルタアレイ60のカラーフィルタ6b,6rを透過してその直下の第3撮像素子13の画素におけるフォトダイオード53に吸収される。図12に示すように、撮像素子12,13は各受光面が焦点深度内に配置されているので、第2実施形態と同様に、第2撮像素子12は緑色光LGの、第3撮像素子13は青色光LBおよび赤色光LRの、実質的にぼけのない画像を撮像する。一方、第1撮像素子11Bは、受光面が焦点深度の外に配置され、合焦面fpにおける光L(LB,LG,LR)に対して、隣り合う2画素のさらに外側の画素に広がって光Lが入射するので、ぼけのある白黒の画像を撮像する。第1撮像素子11Bが撮像した画像(ぼけ画像、非合焦画像)のぼけ量は、受光面の合焦面fpからの距離に依存し、撮像素子11B,12の受光面間の距離d1が焦点深度δに対して十分に長い場合には、距離d1にほぼ依存する。
【0081】
さらに、図8に示す第1実施形態と同様に、撮像素子11B,12,13それぞれについて、空間光変調器8の開口パターン毎に露光して信号を出力して、開口パターン毎の画像を撮像することができる。特に第1撮像素子11Bは、開口パターン毎にぼけ特性の異なるぼけ画像を撮像することができる。撮像素子12,13が撮像したR,G,Bの各色の画像を、第1実施形態と同様に再構成、合成してカラー画像とする一方、第1撮像素子11Bが撮像したぼけ画像と受光面の合焦面fpからの距離とに基づき、奥行き情報をカラー画像に付加することができる。また、第3撮像素子13の入射面の1/2ずつに設けられた画素で撮像した青色光LBおよび赤色光LRの画像は、一般的な処理方法により補間することができるが、このとき、第1撮像素子11Bが撮像したぼけ画像を演算処理してぼけのない白黒画像を復元して、この白黒画像を補間処理に利用することができ、色再現性を高くすることができる。
【0082】
(変形例)
第2実施形態の変形例と同様、図9または図11に示すように、第1撮像素子11Bおよび第2撮像素子12は開口パターン毎に露光し、第3撮像素子13は、1フレーム毎や2つの開口パターンにわたって長露光し、または各開口パターンの途中で露光を切り換えて、多重露光してもよい。また、空間光変調器8の開口パターンの1つを全面開口として、このときに第3撮像素子13を露光してもよい。これらの方法により、第3撮像素子13の入射面の1/2ずつの画素で撮像した青色光LBおよび赤色光LRの画像データから再構成像を演算する際の画質の劣化が抑制される。
【0083】
本実施形態に係る撮像装置においては、複合撮像素子10Bは、第1撮像素子11Bの光電変換膜51Bが1つまたは2つの波長域の光の一部を吸収する構成としてもよい。ただし、撮像素子12,13が吸収する青色光LB、緑色光LG、および赤色光LRの光量が偏らないように、またはカラー画像の合成時に調整されるように構成する。
【0084】
本実施形態に係る撮像装置においては、複合撮像素子10Bは、第1実施形態のカラー撮像素子10(図2参照)の光の入射側にさらに第1撮像素子11Bを備える4板構造としてもよい。このような構成により、奥行き情報を有する高解像度のフルカラー画像を取得することができる。
【0085】
また、複合撮像素子10Bは、第1撮像素子11Bと単板式のカラー撮像素子とからなる2板構造としてもよく、単板式のカラー撮像素子は、第2撮像素子(第3撮像素子)13と、その光の入射側に配置した、R,G,Bの各色のカラーフィルタを画素に合わせてモザイク状に配列したカラーフィルタアレイとから構成される。第1撮像素子11Bと第2撮像素子13の受光面間距離は、δ/2超であることが好ましく、焦点深度δ以上であることが好ましい。そして、第2撮像素子13の受光面の合焦面fpからの距離が焦点深度δの1/2以下であることが好ましく、第1撮像素子11Bの受光面の合焦面fpからの距離は、δ/2超であり、焦点深度δ以上であることが好ましい。すなわち、本変形例においては、第2撮像素子13のみが焦点深度内に配置される。ここで、例えばベイヤー方式のカラーフィルタアレイを適用した場合、特に青色光LBおよび赤色光LRの各画素は第2撮像素子13の入射面の1/4のみに設けられた疎な構成であるので、空間光変調器8の開口を透過した光が到達する割合が低く、光の利用効率が特に低くなる。また、赤色光LR、青色光LBの各情報が離散的にしか取得されないので、再構成像を演算する際に画質の劣化を生じる。そこで、第2撮像素子13は、前記したように、図9または図11に示すように、1フレーム毎や2つの開口パターンにわたって長露光し、または各開口パターンの途中で露光を切り換えて、多重露光することが好ましい。さらに、前記実施形態と同様に、第1撮像素子11Bが撮像したぼけ画像から復元したぼけのない白黒画像を利用して、補間処理することができる。
【0086】
以上のように、本発明の第3実施形態およびその変形例に係る撮像装置は、第1、第2実施形態に係る撮像装置と同様に撮像素子の画素数を超える解像度の画像を取得することができ、さらに、画像に奥行き情報を付加することができる。
【0087】
〔第4実施形態〕
第3実施形態に係る撮像装置は、第1、第2実施形態と同様に、R,G,Bの各色の合焦画像を撮像し、合成してカラー画像を取得しているが、奥行き情報を取得するためのぼけ画像からぼけのない画像を復元することができることから、一部の波長域の光については合焦画像を撮像しなくても、ぼけのないカラー画像を奥行き情報と共に取得することができる。以下、本発明の第4実施形態に係る撮像装置について、図13および図1を参照して説明する。第1、第2、第3実施形態(図1~12参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0088】
本発明の第4実施形態に係る撮像装置100は、第1実施形態(図1図2参照)と同様の構成であり、カラー撮像素子10、ならびに、カラー撮像素子10のさらに光の入射側に配置した空間光変調器8および光学系71,72を備える。ただし、本実施形態においては、図13に示すように、最下層の第3撮像素子13は受光面が焦点深度の外に配置され、第1撮像素子11および第2撮像素子12は受光面が焦点深度内に配置されるように構成される。そこで、本実施形態においては、カラー撮像素子10は、第1撮像素子11と第3撮像素子13との受光面間距離(d1+d2)が焦点深度δの1/2よりも長いことから、最上層の第1撮像素子11の受光面で光Lが合焦するように構成されている。
【0089】
(撮像方法)
本発明の第4実施形態に係る撮像装置による撮像方法について、図1図8、および図13を参照して説明する。被写体OBから撮像装置100に入射した光Lは、第1実施形態と同様に、空間光変調器8の開口のそれぞれから発散し、光学系72によって収束しながらカラー撮像素子10に入射し、青色光LB、緑色光LG、赤色光LRの順に、撮像素子11,12,13の光電変換部51,52,53に吸収されて電荷に変換される。本実施形態においては、図13に示すように、第1撮像素子11および第2撮像素子12が各受光面を焦点深度内に配置されているので、青色光LBおよび緑色光LGは、ぼけのないまたは実質的にぼけのない画像の信号が撮像素子11,12によってそれぞれ取得される。これに対して、第3撮像素子13は受光面を焦点深度内に配置されているので、赤色光LRは、合焦面fpにおける光L(LB,LG,LR)に対して、隣り合う2画素のさらに外側の画素に広がって第3撮像素子13に入射し、第3撮像素子13によってその受光面の合焦面fpからの距離(d1+d2>δ/2)に応じたぼけ量のぼけ画像の信号が取得される。
【0090】
さらに、図8に示す第1実施形態と同様に、撮像素子11,12,13それぞれについて、空間光変調器8の開口パターン毎に露光して信号を出力して、開口パターン毎の画像を撮像することができる。特に第3撮像素子13は、開口パターン毎にぼけ特性の異なるぼけ画像を撮像することができる。第3撮像素子13が撮像した赤色のぼけ画像を演算処理してぼけのない赤色の画像を復元し、撮像素子11,12が撮像した青色、緑色の画像と共に、それぞれ第1実施形態と同様に再構成し、これらを合成してカラー画像とする。また、第3撮像素子13が撮像した赤色のぼけ画像と受光面の合焦面fpからの距離(d1+d2)とに基づき、奥行き情報をカラー画像に付加することができる。
【0091】
第1実施形態の変形例と同様、図9に示すように、撮像素子11,12,13(図2参照)の1つまたは2つは開口パターン毎に露光し(EXP(3))、その他は1フレーム毎や2つの開口パターンにわたって多重露光してもよい(EXP(1)、EXP(2))。特に、単結晶Siで形成された読出回路23を有して高速駆動が容易な第3撮像素子13は開口パターン毎に露光し、撮像素子11,12は1フレーム毎や2つの開口パターンにわたって露光することにより、フレームレートを高速化することができ、時間解像度が向上する。
【0092】
(変形例)
本実施形態においては、合焦面fpを最下層の第3撮像素子13の受光面に合わせて、第2撮像素子12および第3撮像素子13が、ぼけのないまたは実質的にぼけのない緑色および赤色の画像を撮像し、最上層の第1撮像素子11が受光面の合焦面fpからの距離(d1+d2)に応じたぼけ量の青色のぼけ画像を撮像してもよい。また、第1撮像素子11または第3撮像素子13のみが焦点深度内に配置されるように、合焦面fpを調整してもよい。例えば第1撮像素子11のみが焦点深度内に配置された場合には、撮像素子12,13は、それぞれの受光面の合焦面fpからの距離に応じてぼけ量の異なる緑色および赤色の画像を撮像するので、より詳細な奥行き情報を取得することができる。
【0093】
本実施形態においては、第1実施形態と同じ構成の撮像装置100を用いて、カラー撮像素子10において合焦面fpをずらして最上層または最下層の撮像素子11,13の一方の受光面を焦点深度の外としたが、例えば撮像素子12,13の受光面間距離d2が長い構成としてもよい。また、カラー撮像素子10Aを備える第2実施形態に係る撮像装置100(図10参照)を用いることもでき、第2撮像素子13が受光面を焦点深度内に、第1撮像素子12が受光面を焦点深度の外に、それぞれ配置されるように合焦面fpを調整する。このような構成により、第2撮像素子13が、ぼけのないまたは実質的にぼけのない青色および赤色の画像を撮像し、第1撮像素子12が受光面の合焦面fpからの距離に応じたぼけ量の緑色のぼけ画像を撮像する。
【0094】
以上のように、本発明の第4実施形態およびその変形例に係る撮像装置は、第3実施形態に係る撮像装置と同様に、撮像素子の画素数を超える解像度の奥行き情報を有する画像を取得することができ、さらに、奥行き情報を取得しない第1、第2実施形態に係る撮像装置のカラー撮像素子を適用することができる。
【0095】
以上、本発明に係る撮像装置および撮像方法を実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
100 撮像装置
10,10A カラー撮像素子
10B 複合撮像素子
11,11B 第1撮像素子
12 第2撮像素子、第1撮像素子
13 第3撮像素子、第2撮像素子
21 回路層(読出回路)
22 回路層(読出回路)
23 回路部(読出回路)
40 基板
43,44 絶縁膜
50 Si基板
51,51B 光電変換膜(光電変換部)
52,52B 光電変換膜(光電変換部)
53 フォトダイオード(光電変換部)
54 トランジスタ
60 カラーフィルタアレイ
6b,6r カラーフィルタ
71,72 光学系
8 空間光変調器(符号化開口)
91 駆動装置
92 復号化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13