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特許7535461圧力制御システム、圧力制御方法、及び、圧力制御プログラム
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  • 特許-圧力制御システム、圧力制御方法、及び、圧力制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】圧力制御システム、圧力制御方法、及び、圧力制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/20 20060101AFI20240808BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G05D16/20 A
G05D7/06 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021005110
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109675
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】徳永 和弥
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-89115(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110066(WO,A1)
【文献】特開2002-91573(JP,A)
【文献】特開2003-84840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉空間を構成する流路に流体抵抗が設けられており、当該流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブを制御して前記閉空間の圧力を制御する圧力制御システムであって、
前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、前記上流側バルブを全閉した場合の前記閉空間の収束圧力を演算する収束圧力演算部と、
演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、前記上流側バルブを全閉するバルブ制御部とを備える、圧力制御システム。
【請求項2】
前記バルブ制御部は、演算された収束圧力が所定の目標収束圧力以上となった場合に、前記上流側バルブを全閉する、請求項1に記載の圧力制御システム。
【請求項3】
前記流路において前記流体抵抗の下流側に設けられた下流側バルブを更に備えており、当該下流側バルブを全閉することにより前記流体抵抗の下流側に閉空間が形成されるものであり、
前記収束圧力演算部は、前記流体抵抗の上流側圧力と、前記流体抵抗の下流側圧力と、前記流体抵抗及び前記上流側バルブの間の流路容積と、前記流体抵抗及び前記下流側バルブの間の流路容積とを用いて、前記収束圧力を演算するものである、請求項1又は2に記載の圧力制御システム。
【請求項4】
前記収束圧力演算部は、以下の式を用いて前記収束圧力を演算するものである、請求項3に記載の圧力制御システム。
ここで、PCONVは前記収束圧力であり、Pは前記流体抵抗の上流側圧力であり、Pは前記流体抵抗の下流側圧力であり、Vは前記流体抵抗及び前記上流側バルブの間の流路容積であり、Vは前記流体抵抗及び前記下流側バルブの間の流路容積である。
【請求項5】
前記流路において前記流体抵抗の下流側に密閉容器が接続されることにより前記流体抵抗の下流側に閉空間が形成されるものであり、
前記収束圧力演算部は、前記流体抵抗の上流側圧力と、前記流体抵抗の下流側圧力と、前記流体抵抗及び前記上流側バルブの間の流路容積と、前記流体抵抗の下流側の流路及び前記密閉容器の容積とを用いて、前記収束圧力を演算するものである、請求項1又は2に記載の圧力制御システム。
【請求項6】
前記収束圧力演算部は、前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、リアルタイムで前記収束圧力を演算する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項7】
前記収束圧力演算部は、前記閉空間又は前記流路の容積の経時変化を補正して前記収束圧力を演算する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項8】
前記上流側バルブには、弁座に対する弁体の位置を検出するポジションセンサが設けられている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項9】
前記下流側バルブには、弁座に対する弁体の位置を検出するポジションセンサが設けられている、請求項3若しくは4、又は、請求項3若しくは4を引用する請求項6乃至8の何れか一項に記載の圧力制御システム。
【請求項10】
閉空間を構成する流路に流体抵抗が設けられており、当該流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブを制御して前記閉空間の圧力を制御する圧力制御方法であって、
前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、前記上流側バルブを全閉した場合の前記閉空間の収束圧力を演算する収束圧力演算ステップと、
演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、前記上流側バルブを全閉するバルブ制御ステップとを備える、圧力制御方法。
【請求項11】
閉空間を構成する流路に流体抵抗が設けられており、当該流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブを制御して前記閉空間の圧力を制御する圧力制御システムに用いられる圧力制御プログラムであって、
前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、前記上流側バルブを全閉した場合の前記閉空間の収束圧力を演算する収束圧力演算部と、
演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、前記上流側バルブを全閉するバルブ制御部と、としての機能をコンピュータに発揮させる、圧力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御システム、圧力制御方法、及び、圧力制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、流体が流れる流路に設けられた流体抵抗の上流側に上流側バルブ、及び、流体抵抗の下流側に下流側バルブを設けた構成において、上流側バルブ及び下流側バルブを制御することにより、流路を流れる流体の流量をコントロールする流体制御装置が考えられている。
【0003】
この流体制御装置では、流路を遮断する場合には、上流側バルブ及び下流側バルブの両方を全閉にする。ここで、その後の流量制御を開始する場合に、上流側バルブ及び下流側バルブの間(流体抵抗を含む閉空間)の圧力がその都度ばらついていると、流量制御を鑑定して開始することができない。そのため、流量制御を安定して開始する場合には、上流側バルブ及び下流側バルブの間(流体抵抗を含む閉空間)の圧力を所定の収束圧力にしておくことが望ましい。
【0004】
このため従来では、上流側バルブ及び下流側バルブの両方を全閉にした後に、上流側バルブを開けて流体を流し込み、流体抵抗の上流側圧力が所定の目標圧力に到達した時点で上流側バルブを閉じることが行なわれている。
【0005】
しかしながら、流体抵抗の上流側圧力が所定の目標圧力に到達した時点で上流側バルブを閉じる構成では、流体抵抗の下流側において流体が流れる流路が閉塞されているので、流体抵抗を含む閉空間の圧力が所定の収束圧力を超えてしまう(図4(a)参照)。なお、所定の収束圧力を超えた状態で流量制御を開始すると、流量測定の精度が悪くなってしまい、その結果、流量制御の制御性が悪くなってしまう。また、上流側圧力が所定の収束圧力を超えないように、上流側バルブをオンオフ制御することも考えられるが、そうすると、上流側圧力を収束圧力に収束させるまでの時間が長くなってしまう(図4(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-280688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、流体抵抗が設けられた閉空間の収束圧力を、流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブにより、オーバーシュートを抑えつつ高速で制御することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る圧力制御システムは、閉空間を構成する流路に流体抵抗が設けられており、当該流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブを制御して前記閉空間の圧力を制御する圧力制御システムであって、前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、前記上流側バルブを全閉した場合の前記閉空間の収束圧力を演算する収束圧力演算部と、演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、前記上流側バルブを全閉するバルブ制御部とを備える。
【0009】
このような圧力制御システムであれば、流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、上流側バルブを全閉した場合の閉空間の収束圧力を演算し、演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、上流側バルブを全閉するので、閉空間の収束圧力のオーバーシュートを抑えつつ高速で制御することができる。ここで、所定の目標収束圧力は、バルブを開けて流量制御を開始した直後からフルスケール(100%)の設定流量を流すことができる圧力に基づいて設定される。
【0010】
前記バルブ制御部は、演算された収束圧力が所定の目標収束圧力以上となった場合に、前記上流側バルブを全閉することが望ましい。
【0011】
本発明の圧力制御システムは、前記流路において前記流体抵抗の下流側に設けられた下流側バルブを更に備えており、当該下流側バルブを全閉することにより前記流体抵抗の下流側に閉空間が形成されるものであることが考えられる。
この構成において、前記収束圧力演算部は、前記流体抵抗の上流側圧力と、前記流体抵抗の下流側圧力と、前記流体抵抗及び前記上流側バルブの間の流路容積と、前記流体抵抗及び前記下流側バルブの間の流路容積とを用いて、前記収束圧力を演算するものであることが望ましい。
【0012】
前記収束圧力演算部は、以下の式を用いて前記収束圧力を演算するものであることが望ましい。
【0013】
【数1】
ここで、PCONVは前記収束圧力であり、Pは前記流体抵抗の上流側圧力であり、Pは前記流体抵抗の下流側圧力であり、Vは前記流体抵抗及び前記上流側バルブの間の流路容積であり、Vは前記流体抵抗及び前記下流側バルブの間の流路容積である。
【0014】
また、本発明の圧力制御システムは、前記流路において前記流体抵抗の下流側に密閉容器が接続されることにより前記流体抵抗の下流側に閉空間が形成されるものであり、前記収束圧力演算部は、前記流体抵抗の上流側圧力と、前記流体抵抗の下流側圧力と、前記流体抵抗及び前記上流側バルブの間の流路容積と、前記流体抵抗の下流側の流路及び前記密閉容器の容積とを用いて、前記収束圧力を演算するものであっても良い。
【0015】
前記収束圧力演算部は、前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、リアルタイムで前記収束圧力を演算することが望ましい。
【0016】
前記収束圧力演算部は、前記閉空間又は前記流路の容積の経時変化を補正して前記収束圧力を演算することが望ましい。
【0017】
前記上流側バルブに、弁座に対する弁体の位置を検出するポジションセンサが設けられていることが望ましい。また、下流側バルブを有する構成の場合には、当該下流側バルブに、弁座に対する弁体の位置を検出するポジションセンサが設けられていることが望ましい。
【0018】
また、本発明に係る圧力制御方法は、閉空間を構成する流路に流体抵抗が設けられており、当該流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブを制御して前記閉空間の圧力を制御する圧力制御方法であって、前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、前記上流側バルブを全閉した場合の前記閉空間の収束圧力を演算する収束圧力演算ステップと、演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、前記上流側バルブを全閉するバルブ制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る圧力制御プログラムは、閉空間を構成する流路に流体抵抗が設けられており、当該流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブを制御して前記閉空間の圧力を制御する圧力制御システムに用いられる圧力制御プログラムであって、前記流路における前記流体抵抗の上流側圧力又は下流側圧力の少なくとも一方を用いて、前記上流側バルブを全閉した場合の前記閉空間の収束圧力を演算する収束圧力演算部と、演算された収束圧力と所定の目標収束圧力とを比較して、その比較結果に基づいて、前記上流側バルブを全閉するバルブ制御部と、としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上に述べた本発明によれば、流体抵抗が設けられた閉空間の収束圧力を、流体抵抗の上流側に設けられた上流側バルブにより、オーバーシュートを抑えつつ高速で制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る流体制御装置(圧力制御システム)を示す模式図である。
図2】同実施形態の収束圧力の制御方法を示すグラフである。
図3】変形実施形態に係る流体制御装置(圧力制御システム)を示す模式図である。
図4】従来の収束圧力の制御方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の圧力制御システムを有する流体制御装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
<装置構成>
本実施形態の流体制御装置100は、例えば半導体製造プロセスにおいてチャンバ300に対して流体であるガスを設定流量で供給するために用いられるものである。ここで、設定流量は、ある流量値から別の流量値へ階段状に立ち上がる、又は、立ち下がるステップ信号である。このような設定流量に対して流体制御装置100が実現する流量が所定時間内に追従するとともに、定常状態におけるノイズの大きさが許容範囲内となるようにしてある。
【0024】
具体的に流体制御装置100は、図1に示すように、ガスが流れる流路200に設けられたセンサ及びバルブ等の流体機器10a~10fと、当該流体機器10a~10fの制御を司る制御機構COMとを備えている。
【0025】
本実施形態の流体機器10a~10fは、供給圧センサ10a、上流側バルブ10b、上流側圧力センサ10c、流体抵抗10d、下流側圧力センサ10e、及び、下流側バルブ10fであり、これらが流路200に対して上流側から順番に設けてある。ここで、流体抵抗Rは例えば層流素子であり、その前後に流れるガス流量に応じた差圧を発生するものである。
【0026】
供給圧センサ10aは、上流側から供給されるガスの圧力をモニタリングするためのものである。なお、供給圧センサ10aについては供給圧が安定していることが保証されている場合等には省略してもよい。
【0027】
上流側圧力センサ10cは、流路200における流体抵抗10dの上流側圧力Pを測定するものである。具体的に上流側圧力センサ10cは、流路200において上流側バルブ10bと流体抵抗10dとの間の容積である上流側容積V内にチャージされているガスの圧力である上流側圧力Pを測定するものである。
【0028】
下流側圧力センサ10eは、流路200における流体抵抗10dの下流側圧力Pを測定するものである。具体的に下流側圧力センサ10eは、流路200において流体抵抗10dと下流側バルブ10fとの間の容積である下流側容積Vにチャージされているガスの圧力である下流側圧力Pを測定するものである。
【0029】
上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fは、本実施形態では同型のものであり、例えばピエゾ素子等のアクチュエータによって弁体が弁座に対して接離可能に駆動されるピエゾバルブである。上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fはそれぞれ操作量として入力される電圧に応じて弁開度が変更される。また、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fには、弁座に対する弁体の位置を検出するポジションセンサ101が設けられている。このポジションセンサ101の検出位置を用いることにより、上流側バルブ10b又は下流側バルブ10fによる流量制御を高精度に行うことができる。
【0030】
制御機構COMは、例えばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、入出力手段等を具備するいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されている流量制御プログラムが実行されて各種機器が協働することにより、少なくとも流量算出部20、バルブ制御部30としての機能を発揮する。
【0031】
流量算出部20は、上流側圧力P及び下流側圧力Pから流量値を算出するものである。ここで、流量算出部20は、上流側圧力P及び下流側圧力Pから既存の算出式を用いて流体抵抗10dを流れるガス流量である抵抗流量を算出する。その他、流量算出部20は、抵抗流量及び上流側圧力Pに基づいて上流側バルブ10bを流れるガス流量である上流側バルブ流量を算出しても良いし、抵抗流量及び下流側圧力Pに基づいて下流側バルブ10fを流れるガス流量である下流側バルブ流量を算出しても良い。
【0032】
バルブ制御部30は、流量算出部20で算出された流量値が、予め定められた流量目標値に近づくように上流側バルブ10b又は下流側バルブ10fの少なくとも一方をフィードバック制御するものである。その他、バルブ制御部30は、上流側バルブ10bを流量制御することなく、上流側圧力センサ10cにより得られた上流側圧力Pが予め定められた圧力目標値に近づくように上流側バルブ10bをフィードバック制御しても良い。また、バルブ制御部30は、下流側バルブ10fを流量制御することなく、下流側圧力センサ10eにより得られた下流側圧力Pが予め定められた圧力目標値に近づくように下流側バルブ10fをフィードバック制御しても良い。
【0033】
<閉空間の収束圧力制御>
然して、本実施形態の流体制御装置100の制御機器COMは、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fを全閉した場合に形成される閉空間の収束圧力を制御する機能を有している。ここで、閉空間の収束圧力は、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fを閉じた後に、所定時間経過後に安定した圧力である。
【0034】
具体的に制御機器COMは、流路200における流体抵抗10dの上流側圧力P又は下流側圧力Pの少なくとも一方を用いて、上流側バルブ10bを全閉した場合の閉空間の収束圧力PCONVを演算する収束圧力演算部40をさらに備えている。そして、バルブ制御部30は、演算された収束圧力PCONVと所定の目標収束圧力PT_CONVとを比較して、その比較結果に基づいて、上流側バルブ10bを全閉する。
【0035】
収束圧力演算部40は、流路200における流体抵抗10dの上流側圧力P又は下流側圧力Pの少なくとも一方を用いて、プロセス制御中に逐次(リアルタイムで)収束圧力PCONVを演算する。具体的に収束圧力演算部40は、流体抵抗10dの上流側圧力とP、流体抵抗10dの下流側圧力Pと、流体抵抗10d及び上流側バルブ10bの間の流路容積(上流側容積)Vと、流体抵抗10d及び下流側バルブ10fの間の流路容積(下流側容積)Vとを用いて、収束圧力PCONVを演算する。
【0036】
本実施形態の収束圧力演算部40は、以下の式を用いて、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fの間に形成される閉空間の収束圧力PCONVを演算する。なお、収束圧力演算部50による収束圧力PCONVの演算は、以下の演算式を用いたものに限られず、ルックアップテーブルを用いたものであっても良い。ここで、ルックアップテーブルを用いる場合には、上流側圧力P、下流側圧力P、閉空間の収束圧力PCONVの3つのパラメータを各軸にとったものを使用することが考えられる。
【0037】
【数1】
ここで、PCONVは閉空間の収束圧力であり、Pは流体抵抗10dの上流側圧力であり、Pは流体抵抗10dの下流側圧力であり、Vは流体抵抗10d及び上流側バルブ10bの間の流路容積であり、Vは流体抵抗10d及び下流側バルブ10fの間の流路容積である。
【0038】
バルブ制御部30は、図2に示すように、演算された収束圧力PCONVが所定の目標収束圧力PT_CONV以上となった場合に、上流側バルブ10bを全閉する。ここで、所定の目標収束圧力PT_CONVは、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fを開けた直後からフルスケール(100%)の設定流量を流すことができる圧力に基づいて設定される。
【0039】
次に、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fの間の閉空間を目標収束圧力PT_CONVに制御する一連の動作について説明する。
【0040】
まず、流路200にガスが流れている通常のガス供給状態から上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fを全閉にすることによってガスの流れを遮断する。ここでは、上流側バルブ10bを全閉にした後に下流側バルブ10fを全閉にしている。
【0041】
そして、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fを全閉して流路200を遮断した後に、上流側バルブ10bを開けて、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fの間の空間にガスを流し込む。このとき、上流側圧力センサ10cは上流側圧力Pを検出し、下流側圧力センサ10eは下流側圧力Pを検出している。
【0042】
これら上流側圧力P及び下流側圧力Pを取得した収束圧力演算部40は、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fの間の空間にガスが流れ込んでいる間、リアルタイムで収束圧力PCONVを演算する。バルブ制御部30は、収束圧力演算部40により演算された収束圧力PCONVを逐次取得して、所定の目標収束圧力PT_CONVと比較する。そして、バルブ制御部30は、演算された収束圧力PCONVが所定の目標収束圧力PT_CONVとなったときに、上流側バルブ10bに全閉にする(図2参照)。これにより、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fの間の閉空間の圧力が、所定時間経過後に、所定に目標収束圧力PT_CONVに収束する。なお、その後、チャンバへのガスの供給を開始する場合には、所定の設定流量に基づいて上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fの制御が開始される。
【0043】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の流体制御装置100によれば、流体抵抗10dの上流側圧力P又は下流側圧力Pの少なくとも一方を用いて、上流側バルブ10bを全閉した場合の閉空間の収束圧力PCONVを演算し、演算した収束圧力PCONVと所定の目標収束圧力PT_CONVとを比較して、その比較結果に基づいて、上流側バルブ10bを全閉するので、閉空間の収束圧力PCONVのオーバーシュートを抑えつつ高速で制御することができる。
【0044】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態では、流体抵抗10dの上流側圧力Pと、流体抵抗10dの下流側圧力Pと、流体抵抗10d及び上流側バルブ10bの間の流路容積Vと、流体抵抗10d及び下流側バルブ10fの間の流路容積Vとを用いて収束圧力PCONVを演算しているが、流体抵抗10dの上流側圧力P又は流体抵抗10dの下流側圧力Pの一方のみを用いて収束圧力PCONVを演算するようにしても良い。この場合、流体抵抗10dの上流側圧力P又は流体抵抗10dの下流側圧力Pの一方と収束圧力PCONVとの関係を予め求めておき、その関係に基づいて収束圧力PCONVを演算することになる。
【0045】
また、前記実施形態では、収束圧力を制御する際に、演算された収束圧力PCONVが所定の目標収束圧力PT_CONVと一致した場合に、上流側バルブ10bを全閉する構成であったが、演算された収束圧力PCONVが目標収束圧力PT_CONVを超えた場合や、所定の目標収束圧力PT_CONVを基準とした判定幅を設定しておき、演算した収束圧力PCONVが判定幅に入った場合に、上流側バルブ10bを全閉にする構成としても良い。
【0046】
さらに、前記実施形態では、下流側バルブ10fを全閉にすることによって上流側バルブ10bから下流側に閉空間が形成される構成であったが、下流側バルブ10fを全閉することなく、上流側バルブ10bの下流側に閉空間が形成される構成であっても良い。例えば、図3に示すように、流体抵抗10dが設けられた流路200が密閉容器400に接続されている構成であり、これにより流体抵抗10dの下流側に閉空間が形成される構成であっても良い。この構成の場合、収束圧力演算部40は、流体抵抗10dの上流側圧力と、流体抵抗10dの下流側圧力と、流体抵抗10d及び上流側バルブ10bの間の流路容積と、流体抵抗10dの下流側の流路及び密閉容器400の容積とを用いて、収束圧力PCONVを演算するものであっても良い。
【0047】
前記実施形態の収束圧力演算部40は、閉空間又は流路200の容積の経時変化を補正して、収束圧力PCONVを演算しても良い。また、閉空間又は流路200の容積の経時変化を考慮して、目標収束圧力を変更しても良い。さらに、演算された収束圧力に基づいて収束圧力を制御した結果、閉空間の収束圧力が目標収束圧力に対して所定値以上の差がある場合に、アラーム信号を出力するアラーム出力部を備えさせても良い。
【0048】
また、流体抵抗(層流素子)の加工精度により流体抵抗の端部の位置精度が変わり、結果として上流側容積V及び下流側容積Vに変動が生じる場合がある。この場合には、収束圧力演算部40は、流体抵抗(層流素子)の加工精度による前後の容積変化を補正するように構成しても良い。
【0049】
その上、前記実施形態では、上流側バルブ10b及び下流側バルブ10fを有するツインバルブ方式のものであったが、上流側バルブ10bのみを有するシングルバルブ方式のものであっても良い。
【0050】
加えて、前記実施形態では、圧力制御システムが組み込まれた流体制御装置について説明したが、流体制御装置に組み込まれていない圧力制御システム単体であっても良い。
【0051】
さらに加えて、前記実施形態の流体抵抗Rは、層流素子であったが、流路に差圧を生じさせる抵抗体であればよく、例えばオリフィスであっても良い。
【0052】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0053】
100・・・流体制御装置(圧力制御システム)
200・・・流路
10b・・・上流側バルブ
10c・・・上流側圧力センサ
10d・・・流体抵抗
10e・・・下流側圧力センサ
10f・・・下流側バルブ
101・・・ポジションセンサ
30・・・バルブ制御部
40・・・収束圧力演算部
・・・上流側圧力
・・・下流側圧力
CONV・・・収束圧力
T_CONV・・・目標収束圧力
・・・上流側容積
・・・下流側容積
図1
図2
図3
図4