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特許7535647処理方法、半導体装置の製造方法、処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】処理方法、半導体装置の製造方法、処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240808BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023501958
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007373
(87)【国際公開番号】W WO2022180793
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】越 保信
(72)【発明者】
【氏名】原田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】浦野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】野原 慎吾
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-064018(JP,A)
【文献】特開2018-157095(JP,A)
【文献】特開2021-027227(JP,A)
【文献】特開2012-019194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板を収容した処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する工程と、
(b)前記基板を収容していない前記処理容器内へフッ素含有ガスを供給し、前記処理容器内に付着した前記膜を含む堆積物を除去する工程と、
(c)前記基板を収容していない前記堆積物除去後の前記処理容器内へプリコートガスを供給し、前記処理容器内にプリコート膜を形成する工程と、
(d)基板を収容した前記プリコート膜形成後の前記処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する工程と、
を有し、
(c)では、前記処理容器内における残留フッ素濃度の分布に合わせて前記プリコート膜の膜厚分布を調整する処理方法。
【請求項2】
(c)では、前記処理容器内における残留フッ素濃度が最も高い第1部に形成する前記プリコート膜を、前記処理容器内における残留フッ素濃度が前記第1部よりも低い第2部に形成するプリコート膜よりも厚くする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
(c)における前記第2部の温度に対する前記第1部の温度の比を、(a)および(d)のうち少なくともいずれかにおける前記第2部の温度に対する前記第1部の温度の比よりも大きくする請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
(c)では、前記第1部の温度を、前記第2部の温度よりも高くする請求項2に記載の処理方法。
【請求項5】
(a)では、前記第1部の温度を、前記第2部の温度以下とする請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
(b)では、前記第1部の温度を、前記第2部の温度以下とする請求項4に記載の処理方法。
【請求項7】
(d)では、前記第1部の温度を、前記第2部の温度以下とする請求項4に記載の処理方法。
【請求項8】
(c)における前記第1部の温度を、(a)および(d)のうち少なくともいずれかにおける前記第1部の温度よりも高くする請求項2に記載の処理方法。
【請求項9】
前記処理容器内には、断熱板が配置される領域が設けられ、
前記第1部は、前記処理容器内における前記断熱板が配置される領域を含み、
前記第2部は、前記処理容器内における前記断熱板が配置されない領域を含む請求項2に記載の処理方法。
【請求項10】
前記処理容器内には、基板が配置される領域と、断熱板が配置される領域と、が設けられ、
前記第1部は、前記処理容器内における前記断熱板が配置される領域を含み、
前記第2部は、前記処理容器内における前記基板が配置される領域を含む請求項2に記載の処理方法。
【請求項11】
前記処理容器内には、複数枚の断熱板が配列される領域が設けられ、
前記第1部は、前記処理容器内における前記複数枚の断熱板が配列される領域を含み、
前記第2部は、前記処理容器内における前記複数枚の断熱板が配列されない領域を含む請求項2に記載の処理方法。
【請求項12】
前記処理容器内には、複数枚の基板が配列される領域と、複数枚の断熱板が配列される領域と、が設けられ、
前記第1部は、前記処理容器内における前記複数枚の断熱板が配列される領域を含み、
前記第2部は、前記処理容器内における前記複数枚の基板が配列される領域を含む請求項2に記載の処理方法。
【請求項13】
前記第1部は、前記処理容器内における下部領域であり、前記第2部は、前記処理容器内における上部領域および中央部領域のうち少なくともいずれかの領域である請求項2に記載の処理方法。
【請求項14】
前記第1部は、前記処理容器内における下部領域であり、前記第2部は、前記処理容器内における前記下部領域以外の領域である請求項2に記載の処理方法。
【請求項15】
前記第1部は、前記処理容器内におけるガス流の上流側の領域であり、前記第2部は、前記処理容器内におけるガス流の下流側および中流側のうち少なくともいずれかの領域である請求項2に記載の処理方法。
【請求項16】
前記第1部は、前記処理容器内におけるガス流の上流側の領域であり、前記第2部は、前記処理容器内におけるガス流の上流側の領域以外の領域である請求項2に記載の処理方法。
【請求項17】
前記処理容器は、前記処理容器内へ基板を搬送する基板搬送口を有し、
前記第1部は、前記処理容器内における前記基板搬送口側の領域であり、前記第2部は、前記処理容器内における前記基板搬送口側の領域と反対側の領域である請求項2に記載の処理方法。
【請求項18】
前記処理容器は、前記処理容器内へ基板を搬送する基板搬送口を有し、
前記第1部は、前記処理容器内における前記基板搬送口側の領域であり、前記第2部は、前記処理容器内における前記基板搬送口側の領域以外の領域である請求項2に記載の処理方法。
【請求項19】
(a)基板を収容した処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する工程と、
(b)前記基板を収容していない前記処理容器内へフッ素含有ガスを供給し、前記処理容器内に付着した前記膜を含む堆積物を除去する工程と、
(c)前記基板を収容していない前記堆積物除去後の前記処理容器内へプリコートガスを供給し、前記処理容器内にプリコート膜を形成する工程と、
(d)基板を収容した前記プリコート膜形成後の前記処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する工程と、
を有し、
(c)では、前記処理容器内における残留フッ素濃度の分布に合わせて前記プリコート膜の膜厚分布を調整する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板が処理される処理容器と、
前記処理容器内へ成膜ガスを供給する成膜ガス供給系と、
前記処理容器内へフッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給系と、
前記処理容器内へプリコートガスを供給するプリコートガス供給系と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
(a)基板を収容した前記処理容器内へ前記成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する処理と、(b)前記基板を収容していない前記処理容器内へ前記フッ素含有ガスを供給し、前記処理容器内に付着した前記膜を含む堆積物を除去する処理と、(c)前記基板を収容していない前記堆積物除去後の前記処理容器内へ前記プリコートガスを供給し、前記処理容器内にプリコート膜を形成する処理と、(d)基板を収容した前記プリコート膜形成後の前記処理容器内へ前記成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する処理と、を行わせ、(c)では、前記処理容器内における残留フッ素濃度の分布に合わせて前記プリコート膜の膜厚分布を調整するように、前記成膜ガス供給系、前記フッ素含有ガス供給系、前記プリコートガス供給系、および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する処理装置。
【請求項21】
(a)基板を収容した処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する手順と、
(b)前記基板を収容していない前記処理容器内へフッ素含有ガスを供給し、前記処理容器内に付着した前記膜を含む堆積物を除去する手順と、
(c)前記基板を収容していない前記堆積物除去後の前記処理容器内へプリコートガスを供給し、前記処理容器内にプリコート膜を形成する手順と、
(d)基板を収容した前記プリコート膜形成後の前記処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する手順と、
(c)において、前記処理容器内における残留フッ素濃度の分布に合わせて前記プリコート膜の膜厚分布を調整する手順と、
をコンピュータによって処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理方法、半導体装置の製造方法、処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、処理容器内に収容された基板上に膜を形成する成膜処理を行った後、この処理容器内をクリーニングする処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【文献】特開2012-216696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クリーニングを実施すると、クリーニング後に行う成膜処理において成膜レートが低下し、基板上に形成される膜の厚さが薄くなる現象(膜厚ドロップ)が、処理容器内において生じる場合がある。本開示は、クリーニング後の処理容器内における膜厚ドロップの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)基板を収容した処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する工程と、
(b)前記基板を収容していない前記処理容器内へフッ素含有ガスを供給し、前記処理容器内に付着した前記膜を含む堆積物を除去する工程と、
(c)前記基板を収容していない前記堆積物除去後の前記処理容器内へプリコートガスを供給し、前記処理容器内にプリコート膜を形成する工程と、
(d)基板を収容した前記プリコート膜形成後の前記処理容器内へ成膜ガスを供給し、前記基板上に膜を形成する工程と、
を有し、
(c)では、前記処理容器内における残留フッ素濃度の分布に合わせて前記プリコート膜の膜厚分布を調整する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、クリーニング後の処理容器内における膜厚ドロップの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理容器部分を縦断面図で示す図である。
図4図4は、本開示の一態様にて行われる半導体装置の製造工程の一工程におけるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
【0009】
以下、本開示の一態様について、主に、図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整部(加熱部)としてのヒータ206を有する。ヒータ206は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース251に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ206は、上部から順に、U(Upper)、CU(Center Upper)、C(Center)、CL(Center Lower)、L(Lower)の5つのゾーンに分割されており、それぞれのゾーンを個別に独立して温度制御することが可能なように構成されている。ヒータ206は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。ヒータ206の周囲および上部には、これらを覆うように断熱材208が設けられている。
【0011】
ヒータ206の内側には、ヒータ206と同心円状に、反応管としてのプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は、内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205と、を備えている。インナーチューブ204は、例えば、石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204の筒中空部には、基板としてのウエハ200に対する処理が行われる処理室201が形成されている。処理室201は、後述するボート217を収容可能なように構成されている。アウターチューブ205は、例えば、石英またはSiC等の耐熱性材料により構成され、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。
【0012】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204とアウターチューブ205とに係合しており、これらを支持するように構成されている。マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。プロセスチューブ203は、ヒータ206と同様に垂直に据え付けられている。主に、プロセスチューブ203とマニホールド209とにより、処理容器(反応容器)が構成される。プロセスチューブ203とマニホールド209とにより構成される処理容器内の空間を処理室201と呼ぶこともできる。
【0013】
なお、処理容器内におけるUゾーンに対応する領域を上部領域と称する場合がある。処理容器内におけるCUゾーンに対応する領域を上部領域に含めて考える場合もある。また、処理容器内におけるLゾーンに対応する領域を下部領域と称する場合がある。処理容器内におけるLゾーンよりも下方の領域、例えば、マニホールド209や、後述する断熱板216やシールキャップ219等が位置する領域を下部領域に含めて考える場合もある。処理容器内におけるCLゾーンに対応する領域を下部領域に含めて考える場合もある。また、処理容器内におけるCゾーンに対応する領域を中央部領域と称する場合がある。処理容器内におけるCUゾーンおよびCLゾーンのうち少なくともいずれかに対応する領域を中央部領域に含めて考える場合もある。
【0014】
マニホールド209には、ガス導入部としてのノズル230a,230bが、処理室201内に連通するように接続されている。ノズル230a,230bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0015】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、ガス供給源271,272、開閉弁であるバルブ262a,262b、流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241a,241b、バルブ261a,261bがそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管232a,232bのバルブ261a,262bよりも下流側には、ガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、ガス流の上流側から順に、ガス供給源273、バルブ262c,262d、MFC241c,241d、バルブ261c,261dがそれぞれ設けられている。
【0017】
ガス供給管232a,232bのバルブ261a,261bよりも下流側であって、さらにガス供給管232c,232dとの接続部よりも下流側には、ガス供給管232e,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232e,232fには、ガス流の上流側から順に、ガス供給源274、バルブ262e,262f、MFC241e,241f、バルブ261e,261fがそれぞれ設けられている。
【0018】
ガス供給管232a~232fは、SUS等の金属材料により構成されている。
【0019】
ガス供給管232aからは、原料ガスが、ガス供給源271、バルブ262a、MFC241a、バルブ261aを介して処理室201内へ供給される。本明細書では、便宜上、原料ガスを、原料と称する場合もある。
【0020】
ガス供給管232bからは、反応ガスが、ガス供給源272、バルブ262b、MFC241b、バルブ261bを介して処理室201内へ供給される。本明細書では、便宜上、反応ガスを、反応体と称する場合もある。
【0021】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、ガス供給源273、バルブ262c,262d、MFC241c,241d、バルブ261c,261dを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0022】
ガス供給管232e,232fからは、フッ素(F)含有ガスが、ガス供給源274、バルブ262e,262f、MFC241e,241f、バルブ261e,261fを介して処理室201内へ供給される。本明細書では、便宜上、F含有ガスを、クリーニングガスと称する場合もある。
【0023】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ261a,262aにより、原料ガス供給系が構成される。ガス供給源271を、原料ガス供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ261b,262bにより、反応ガス供給系が構成される。ガス供給源272を、反応ガス供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ261c,262c,261d,262dにより、不活性ガス供給系が構成される。ガス供給源273を、不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管232e,232f、MFC241e,241f、バルブ261e,262e,261f,262fにより、フッ素含有ガス供給系が構成される。ガス供給源274を、フッ素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0024】
なお、原料ガス、反応ガスのそれぞれ或いは両方を、成膜ガスとも称し、原料ガス供給系、反応ガス供給系のそれぞれ或いは両方を、成膜ガス供給系とも称する。また、成膜ガスを、後述するプリコートガスとして用いる場合、成膜ガス供給系を、プリコートガス供給系とも称する。また、F含有ガス供給系を、クリーニングガス供給系とも称する。
【0025】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ261a~261f,262a~262fやMFC241a~241f等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ261a~261f,262a~262fの開閉動作やMFC241a~241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0026】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231は、SUS等の金属材料により構成されている。排気管231は、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に配置されており、筒状空間250に連通している。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ242は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ242、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0027】
マニホールド209の下端開口は、処理容器内外すなわち処理室201内外へウエハ200を搬送する基板搬送口209aとして用いられる。マニホールド209の下方には、処理室201内に後述するボート217を搬入した状態で、基板搬送口209aを気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えば、SUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端に当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、ボート217を回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、例えば、SUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構254は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0028】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、基板搬送口209aを気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219aが設けられている。シャッタ219aは、例えば、SUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219aは、昇降及び回動することで、マニホールド209の下端を気密に閉塞するように構成されている。シャッタ219aの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219aの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、図2に示すシャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0029】
基板保持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に配置させる(支持する)ように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、石英やSiC等の耐熱性材料により構成されている。ボート217は、ウエハ200を配列させる領域よりも下方側(マニホールド209側)の領域において、複数枚、例えば2~20枚の断熱板216を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に配置させる(支持する)ように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。断熱板216は、例えば、石英やSiC等の耐熱性材料により構成されている。ウエハ200を配列させる領域よりも下方側に断熱板216が設けられることにより、ヒータ206からの熱がマニホールド209側に伝わりにくくなっている。
【0030】
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づき、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合を独立して調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、プロセスチューブ203の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図2に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122や、外部記憶装置123が接続可能に構成されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ、後述するクリーニング処理の手順や条件等が記載されたクリーニングレシピ、後述するプリコート処理の手順や条件等が記載されたプリコートレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。クリーニングレシピは、後述するクリーニング処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。プリコートレシピは、後述するプリコート処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピ、クリーニングレシピ、プリコートレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピ、クリーニングレシピ、プリコートレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ261a~261f,262a~262f、圧力センサ245、APCバルブ242、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ206、回転機構254、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ261a~261f,262a~262fの開閉動作、APCバルブ242の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ242による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ206の温度調整動作、回転機構254によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219aの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)成膜処理(クリーニング前)
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200に対し処理を行うシーケンス例、すなわち、ウエハ200上に膜を形成する成膜シーケンス例について、主に、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0037】
本態様における成膜シーケンスでは、ウエハ200を収容した処理容器内へ成膜ガスを供給し、ウエハ200上に膜を形成する。
【0038】
以下では、膜として、窒化膜を形成する例について説明する。ここで、窒化膜とは、シリコン窒化膜(SiN膜)の他、炭素(C)や酸素(O)や硼素(B)等を含む窒化膜をも含む。すなわち、窒化膜は、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン硼酸炭窒化膜(SiBOCN膜)、シリコン硼酸窒化膜(SiBON膜)等を含む。以下では、窒化膜としてSiN膜を形成する例について説明する。
【0039】
また、以下では、成膜処理において、ウエハ200に対して成膜ガスとして原料ガスを供給するステップと、ウエハ200に対して成膜ガスとして反応ガスを供給するステップと、を含むサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行う例について説明する。なお、原料ガスを供給するステップと、反応ガスを供給するステップと、を交互に、すなわち、非同時に行うこともでき、また、これらのステップを同時に行うこともできる。本明細書では、これらのステップを、非同時に行う処理シーケンス、および、同時に行う処理シーケンスを、便宜上、それぞれ、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。以下、本態様では、一例として、これらのステップを同時に行う例、すなわち、後者の処理シーケンス例について説明する。
【0040】
(原料ガス→反応ガス)×m
(原料ガス+反応ガス)×m
【0041】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0042】
(ウエハチャージ)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219aが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。
【0043】
(ボートロード)
その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0044】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合、すなわち、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合が独立してフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構254によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0045】
(成膜処理)
その後、以下のステップ1,2を順次実行する。
【0046】
[ステップ1]
ステップ1では、処理室201内のウエハ200に対して成膜ガスとして原料ガスおよび反応ガスを同時に供給する。
【0047】
具体的には、バルブ261a,262a,261b,262bを開き、ガス供給管232a,232b内へ原料ガス、反応ガスをそれぞれ流す。原料ガス、反応ガスは、それぞれMFC241a,241bにより流量調整され、ノズル230a,230bを介して処理室201内へ供給される。処理室201内へ供給された原料ガス、反応ガスは、処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250へ流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231より排気される。この過程において、原料ガスと反応ガスとが混合され、ウエハ200に対して、混合された原料ガスと反応ガスとが供給される(成膜ガス供給)。このとき、バルブ261c,262c,261d,262dを開き、ノズル230a,230bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0048】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:600~850℃、好ましくは650~800℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは13~1333Pa
原料ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.05~0.2slm
反応ガス供給流量:0.1~10slm、好ましくは0.5~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~5slm
各ガス供給時間:1~600分、好ましくは1~60分
が例示される。
【0049】
ここで、本明細書における「1~2666Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~2666Pa」とは「1Pa以上2666Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0050】
原料ガスとして、例えば、後述するクロロシラン系ガスを用い、反応ガスとして、例えば、後述する窒化ガスを用い、上述の処理条件下でステップ1を行うことにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、熱CVD反応によって、SiおよびNを含む層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。
【0051】
原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0052】
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0053】
原料ガスとしては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF)ガス、ジフルオロシラン(SiH)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス、ジブロモシラン(SiHBr)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス、ジヨードシラン(SiH)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0054】
原料ガスとしては、これらの他、例えば、Siおよびアミノ基を含むガス、すなわち、アミノシラン系ガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンからHを除去した1価の官能基のことであり、-NH,-NHR,-NRのように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NRの2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH[N(C]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0056】
反応ガスとしては、例えば、窒化ガス(窒化剤)である窒素(N)及び水素(H)含有ガスを用いることができる。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。N及びH含有ガスは、N-H結合を有することが好ましい。
【0057】
反応ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0058】
反応ガスとしては、これらの他、例えば、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)含有ガスを用いることもできる。N,C及びH含有ガスとしては、例えば、アミン系ガスや有機ヒドラジン系ガスを用いることができる。N,C及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、C含有ガスでもあり、H含有ガスでもあり、N及びC含有ガスでもある。
【0059】
反応ガスとしては、例えば、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)ガス、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)ガス、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、モノメチルアミン(CHNH、略称:MMA)ガス、ジメチルアミン((CHNH、略称:DMA)ガス、トリメチルアミン((CHN、略称:TMA)ガス等のメチルアミン系ガスや、モノメチルヒドラジン((CH)HN、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH(CH)H、略称:TMH)ガス等の有機ヒドラジン系ガス等を用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0060】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0061】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、バルブ261a,262a,261b,262bを閉じ、処理室201内への原料ガス、反応ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ261c,262c,261d,262dを開き、処理室201内へパージガスを供給し、排気管231より排気するようにしてもよい。
【0062】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:1~20Pa、好ましくは1~10Pa
パージガス供給流量:0~10slm、好ましくは0~5slm
パージ時間:1~60分、好ましくは1~10分
が例示される。他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様な処理条件とすることができる。なお、パージガスとしては、上述の反応ガスや不活性ガスを用いることができる。
【0063】
[所定回数実施]
上述のステップ1,2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面上に、膜として、例えば、所望の厚さのシリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiN層を積層することで形成されるSiN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。なお、反応ガスとして、N,C及びH含有ガスを用いる場合、ウエハ200の表面上に、膜として、例えば、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することもできる。
【0064】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上への膜の形成が終了した後、ノズル230a,230bのそれぞれからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0065】
(ボートアンロード)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端開口からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219aが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219aによりシールされる(シャッタクローズ)。
【0066】
(ウエハディスチャージ)
ボートアンロード後、すなわち、シャッタクローズ後、処理済のウエハ200は、ボート217に支持された状態で、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却される(ウエハ冷却)。ウエハ冷却後、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却された処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0067】
(3)クリーニング処理
上述の成膜処理を行うと、膜を含む堆積物が、処理容器内の部材の表面、例えば、プロセスチューブ203の内壁面やボート217の表面等に付着する。そこで、上述の成膜処理を所定回数(1回以上)実行した後、ウエハ200を収容していない処理容器内へF含有ガスを供給し、処理容器内に付着した膜を含む堆積物を除去する処理を実施する。以下、このクリーニング処理のシーケンス例、すなわち、クリーニングシーケンス例について、主に、図4を用いて説明する。以下の説明においても、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0068】
(空ボートロード)
シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219aが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、表面に膜を含む堆積物が付着している空のボート217、すなわち、ウエハ200を保持していないボート217が、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、表面に膜を含む堆積物が付着している処理室201内へ搬入(空ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。なお、空のボート217は、ウエハ200を保持しないが、例えば、断熱板216を保持する場合、すなわち、断熱板216を保持したままの状態とする場合がある。
【0069】
(圧力調整および温度調整)
空ボートロードが終了した後、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の処理温度となるように、ヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合、すなわち、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合が独立してフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構254による空のボート217の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、処理室201内の加熱、ボート217の回転は、いずれも、少なくともクリーニング処理が終了するまでの間は継続して行われる。なお、ボート217は回転させなくてもよい。
【0070】
(F含有ガス供給)
その後、ウエハ200を収容していない処理室201内へF含有ガスを供給する。
【0071】
具体的には、バルブ261e,262e,261f,262fを開き、ガス供給源274からガス供給管232e,232f内へF含有ガスを流す。F含有ガスは、MFC241e,241fにより流量調整され、ノズル230a,230bをそれぞれ介して処理室201内へ供給される。処理室201内へ供給されたF含有ガスは、処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250へ流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231より排気される。この過程において、処理容器内の部材の表面に、F含有ガスが供給される(F含有ガス供給)。このとき、バルブ261c,262c,261d,262dを開き、ノズル230a,230bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0072】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:300~500℃、好ましくは350~450℃
処理圧力:1~60000Pa、好ましくは5000~20000Pa
F含有ガス供給流量:1~20slm、好ましくは1~10slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~5slm
各ガス供給時間:1~600分、好ましくは1~80分
が例示される。
【0073】
F含有ガスとして、後述するガスを用い、上述の処理条件下でF含有ガスを供給することにより、処理容器内に付着した膜を含む堆積物を、F含有ガスとの熱化学反応(エッチング反応)によって除去することができる。
【0074】
F含有ガスとしては、例えば、フッ素(F)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、一フッ化塩素(ClF)ガス、三フッ化窒素(NF)ガス、フッ化水素(HF)ガス、フッ化ニトロシル(FNO)ガス、Fガス+酸化窒素(NO)ガス、ClFガス+NOガス、ClFガス+NOガス、NFガス+NOガス等のフッ素(F)含有ガスを用いることができる。F含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、本明細書において「NFガス+NOガス」というような2つのガスの併記記載は、NFガスとNOガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0075】
(アフターパージ)
処理容器内に付着した膜を含む堆積物の除去が終了した後、バルブ261e,262e,261f,262fを閉じ、処理室201内へのF含有ガスの供給を停止する。そして、ノズル230a,230bのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。
【0076】
(4)プリコート処理
上述のように、クリーニング処理においては、処理容器内に付着した膜を含む堆積物の除去が終了した後、処理容器内からF含有ガス等を除去する処理であるアフターパージが行われる。ただし、アフターパージを行っても、クリーニング処理直後のタイミングにおいては、処理容器内に、所定の濃度でFが残留する場合がある。処理容器内に残留しているF(以下、残留F成分)は、次の成膜処理において成膜ガスを消費させ、ウエハ200に対して供給される成膜ガスの量を減少させることがある。すなわち、処理容器内における残留F成分は、膜の形成に寄与することなく消費される成膜ガスの量を増やし、成膜レートを低下させる場合がある。つまり、処理容器内における残留F成分は、次の成膜処理において、ウエハ200上に形成される膜の厚さを薄くさせる現象、すなわち、膜厚ドロップを引き起こす要因となりうる。
【0077】
そこで、本態様では、クリーニング処理を実行した後、ウエハ200を収容していない堆積物除去後の処理容器内へプリコートガスを供給し、処理容器内にプリコート膜を形成する処理を実施する。このプリコート処理を行うことにより、処理容器内における残留F成分をプリコートガスと反応させ、処理容器内から残留F成分を除去し、処理容器内に残留しているFの濃度(以下、残留F濃度)を低下させることが可能となる。その結果、次の成膜処理において、膜厚ドロップの発生を抑制することが可能となる。
【0078】
しかしながら、上述のプリコート処理を行ったとしても、その処理条件等によっては、次の成膜処理において、処理容器内の一部の領域で局所的に膜厚ドロップが生じる場合があることを、本件開示者等は見いだした。本件開示者等の鋭意研究によれば、この現象は、クリーニング処理直後のタイミングにおいて、処理容器内における残留F濃度が、処理容器内の全体にわたり均一ではない(不均一である)ことに起因することが判明した。すなわち、クリーニング処理直後のタイミングにおいては、処理容器内に、残留F濃度が最も高くなる第1部211と、残留F濃度が第1部211よりも低くなる第2部222と、が存在する。このように、処理容器内に第1部211、第2部222が存在する状況下において、処理容器内の全域において、例えば、均一な処理条件(均一な温度分布等)下でプリコート処理を行った場合、残留F濃度が比較的低い第2部222において残留F成分を十分に低減させることができたとしても、残留F濃度が比較的高い第1部211においては残留F成分を十分に低減させることができない場合が生じ得る。この状態で次の成膜処理を行うと、残留F成分を十分に低減させることができた第2部222において膜厚ドロップの発生を防止できたとしても、残留F成分を十分に低減させることができなかった第1部211においては局所的に膜厚ドロップが生じ、結果として、ウエハ200上に形成される膜の膜厚均一性、特に、ウエハ間膜厚均一性を低下させる場合がある。
【0079】
このような課題に対し、例えば、プリコート処理の時間を長く確保し、処理容器内の全域にわたってプリコート膜を厚く形成することにより、第2部222だけでなく、第1部211においても残留F成分を十分に低減させる方法も考えられる。ただし、この方法では、基板処理装置のダウンタイムが長くなり、半導体装置の生産性を低下させる場合がある。また、プリコート膜が処理容器内の全域に過剰に厚く形成されることで、クリーニング処理の実施頻度の増加や、半導体装置の製造コストの増加を招く場合もある。
【0080】
そこで、本態様におけるプリコート処理では、処理容器内における残留F濃度の分布に合わせてプリコート膜の膜厚分布を調整する。好ましくは、プリコート処理では、処理容器内における残留F濃度が最も高い第1部211に形成するプリコート膜を、処理容器内における残留F濃度が第1部211よりも低い第2部222に形成するプリコート膜よりも厚くする。以下、処理容器内にプリコート膜を形成するシーケンス例、すなわち、プリコートシーケンス例について、主に、図4を用いて説明する。以下の説明においても、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0081】
本態様におけるプリコートシーケンスでは、ウエハ200を収容していない堆積物除去後の処理容器内へプリコートガスを供給し、処理容器内にプリコート膜を形成する。
【0082】
以下では、プリコート膜として、窒化膜を形成する例について説明する。上述のように、窒化膜は、SiN膜の他、CやOやB等を含む窒化膜をも含む。すなわち、窒化膜は、SiN膜、SiCN膜、SiON膜、SiOCN膜、SiBCN膜、SiBN膜、SiBOCN膜、SiBON膜等を含む。以下では、窒化膜としてSiN膜を形成する例について説明する。
【0083】
また、以下では、プリコート処理において、処理容器内へプリコートガスとして原料ガスを供給するステップと、処理容器内へプリコートガスとして反応ガスを供給するステップと、を含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う例について説明する。なお、以下に示す処理シーケンスのように、原料ガスを供給するステップと、反応ガスを供給するステップと、を交互に、すなわち、非同時に行うこともでき、また、これらのステップを同時に行うこともできる。以下、本態様では、一例として、これらのステップを同時に行う例、すなわち、後者の処理シーケンス例について説明する。
【0084】
(原料ガス→反応ガス)×n
(原料ガス+反応ガス)×n
【0085】
また、以下に、第1部211、第2部222の態様の一例を、図3を用いて説明する。ただし、以下に示す態様は、あくまでも一例にすぎず、処理容器内において第1部211、第2部222となり得る領域は、処理容器の構造、クリーニング処理の処理手順、処理条件等の種々の要素によって決定され、図3に示す態様とは一致しない場合があることに留意されたい。
【0086】
本態様のように、処理容器内に、断熱板216が配置される領域が設けられている場合、第1部211は、処理容器内における断熱板216が配置される領域を含み、第2部222は、処理容器内における断熱板216が配置されない領域を含む場合がある。また、本態様のように、処理容器内に、ウエハ200が配置される領域と、断熱板216が配置される領域と、が設けられている場合、第1部211は、処理容器内における断熱板216が配置される領域を含み、第2部222は、処理容器内におけるウエハ200が配置される領域を含む場合がある。図3では、断熱板216を実線で、ウエハ200を点線で示している。なお、ウエハ200が配置される領域とは、成膜処理時に処理容器内にウエハ200が配置される領域のことを意味する。
【0087】
また、本態様のように、処理容器内に、複数枚の断熱板216が配列される領域が設けられている場合、第1部211は、処理容器内における複数枚の断熱板216が配列される領域を含み、第2部222は、処理容器内における複数枚の断熱板216が配列されない領域を含む場合がある。また、本態様のように、処理容器内に、複数枚のウエハ200が配列される領域と、複数枚の断熱板216が配列される領域と、が設けられている場合、第1部211は、処理容器内における複数枚の断熱板216が配列される領域を含み、第2部222は、処理容器内における複数枚のウエハ200が配列される領域を含む場合がある。なお、複数枚のウエハ200が配列される領域とは、成膜処理時に処理容器内に複数枚のウエハ200が配列される領域のことを意味する。
【0088】
また、本態様のように、処理容器内に、下部領域、中央部領域、上部領域が設けられている場合、第1部211は、処理容器内における下部領域であり、第2部222は、処理容器内における上部領域および中央部領域のうち少なくともいずれかの領域である場合がある。また、本態様のように、処理容器内に、下部領域と、下部領域以外の領域が設けられている場合、第1部211は、処理容器内における下部領域であり、第2部222は、処理容器内における下部領域以外の領域である場合がある。
【0089】
また、本態様のように、処理容器内に、ガス流の上流側の領域、中流側の領域、下流側の領域が設けられている場合、第1部211は、処理容器内におけるガス流の上流側の領域であり、第2部222は、処理容器内におけるガス流の下流側および中流側のうち少なくともいずれかの領域である場合がある。また、本態様のように、処理容器内に、ガス流の上流側の領域、上流側以外の領域が設けられている場合、第1部211は、処理容器内におけるガス流の上流側の領域であり、第2部222は、処理容器内におけるガス流の上流側の領域以外の領域である場合がある。なお、本態様においては、ガスは、処理容器内を、上述の下部領域側から上部領域側に向かって流れることから、ガス流の上流側の領域、中流側の領域、下流側の領域は、それぞれ、上述の下部領域、中央部領域、上部領域に相当することとなる。
【0090】
また、本態様のように、処理容器が、処理容器内へウエハ200を搬送する基板搬送口209aを有する場合、第1部211は、処理容器内における基板搬送口209a側の領域であり、第2部222は、処理容器内における基板搬送口209a側と反対側の領域である場合がある。また、第1部211は、処理容器内における基板搬送口209a側の領域であり、第2部222は、処理容器内における基板搬送口209a側の領域以外の領域である場合がある。
【0091】
なお、第1部211、第2部222が上述の各領域を含む一つの理由としては、処理容器内におけるガスのコンダクタンス、すなわち、流動抵抗の相違が挙げられる。上述のように、クリーニング処理は、空のボート217、例えば、断熱板216のみを保持したボート217を処理容器内に収容した状態で行われる。そのため、クリーニング処理の実行中、処理容器内における断熱板216が配置或いは配列された領域では、断熱板216によってF含有ガスの流れが妨げられ、この領域には、F含有ガスが滞留して残留しやすくなる。これに対し、クリーニング処理の実行中、処理容器内における成膜処理時にウエハ200が配置或いは配列される領域では、ウエハ200が存在しないことからF含有ガスの流れは妨げられにくく、F含有ガスの滞留や残留は生じにくくなる。結果として、クリーニング処理直後のタイミングにおいて、第1部211は、処理容器内における断熱板216が配置或いは配列される領域を含むことになり、また、第2部222は、処理容器内における断熱板216が配置或いは配列されない領域(処理容器内における成膜処理時にウエハ200が配置或いは配列される領域)を含むことになる。
【0092】
また、第1部211、第2部222が上述の各領域を含む一つの理由としては、処理容器内におけるF含有ガスが吸着し得る部材の表面積の相違が挙げられる。上述のように、クリーニング処理は、空のボート217、例えば、断熱板216のみを保持したボート217を処理容器内に収容した状態で行われる。そのため、クリーニング処理の実行中、処理容器内における断熱板216が配置或いは配列された領域では、F含有ガスが吸着し得る部材の表面積が比較的大きくなり、F含有ガスの吸着量が多くなる。これに対し、クリーニング処理の実行中、処理容器内における成膜処理時にウエハ200が配置或いは配列される領域では、ウエハ200が存在しないことからF含有ガスが吸着し得る部材の表面積が比較的小さくなり、F含有ガスの吸着量が少なくなる。結果として、第1部211は、処理容器内における断熱板216が配置或いは配列される領域を含むことになり、また、第2部222は、処理容器内における断熱板216が配置或いは配列されない領域(処理容器内における成膜処理時にウエハ200が配置或いは配列される領域)を含むことになる。
【0093】
また、第1部211、第2部222が上述の各領域を含む一つの理由としては、処理容器内での温度分布が挙げられる。クリーニング処理の実行中、処理容器内におけるガス流の上流側の領域(基板搬送口209a側の領域)においては、処理容器内におけるガス流の下流側および中流側のうち少なくともいずれかの領域(ガス流の上流側の領域以外の領域、基板搬送口209a側の領域と反対側の領域)に比べて低温となり、部材の表面に吸着したF含有ガスが部材の表面から脱離しにくい傾向がある。これに対し、クリーニング処理の実行中、処理容器内におけるガス流の下流側および中流側のうち少なくともいずれかの領域(ガス流の上流側の領域以外の領域、基板搬送口209a側の領域と反対側の領域)では、処理容器内におけるガス流の上流側の領域(基板搬送口209a側の領域)に比べて高温となり、部材の表面に吸着したF含有ガスが部材の表面から脱離しやすい傾向がある。結果として、第1部211は、処理容器内におけるガス流の上流側の領域(基板搬送口209a側の領域)を含むこととなり、また、第2部222は、処理容器内におけるガス流の下流側および中流側のうち少なくともいずれかの領域(ガス流の上流側の領域以外の領域、基板搬送口209a側の領域と反対側の領域)を含むことになる。
【0094】
(圧力調整および温度調整)
クリーニング処理が終了した後、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の処理温度となるように、ヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合、すなわち、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合が独立してフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構254による空のボート217の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、処理室201内の加熱、ボート217の回転は、いずれも、少なくともクリーニング処理が終了するまでの間は継続して行われる。なお、ボート217は回転させなくてもよい。
【0095】
(プリコート処理)
その後、以下のステップ3,4を順次実施する。
【0096】
[ステップ3]
ステップ3では、ウエハ200を収容していない処理室201内へプリコートガスとして原料ガスおよび反応ガスを同時に供給する。
【0097】
具体的な処理手順については、上述の成膜処理におけるステップ1の処理手順と同様とすることができる。原料ガスとしては、上述の成膜処理で例示した原料ガスのうち1以上を用いることができる。反応ガスとしては、上述の成膜処理で例示した反応ガスのうち1以上を用いることができる。処理室201内へ供給された原料ガス、反応ガスは、処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250へ流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231より排気される。この過程において、原料ガスと反応ガスとが混合され、処理容器内の部材の表面に、混合された原料ガスと反応ガスとが供給される(プリコートガス供給)。このとき、バルブ261c,262c,261d,262dを開き、ノズル230a,230bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0098】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:600~850℃、好ましくは700~800℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは13~1333Pa
原料ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.05~0.5slm
反応ガス供給流量:0.1~10slm、好ましくは0.5~5slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~5slm
各ガス供給時間:1~120分、好ましくは1~60分
が例示される。
【0099】
原料ガスとして、例えば、上述のクロロシラン系ガスを用い、反応ガスとして、例えば、上述の窒化ガスを用い、上述の処理条件下でステップ3を行うことにより、処理容器内の部材の最表面上に、熱CVD反応によって、SiおよびNを含む層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。なお、この過程において、処理容器内における残留F成分は、プリコートガスと反応することで除去され、処理容器内から排出される。なお、処理容器内の部材は、例えば、プロセスチューブ203、ボート217、断熱板216、マニホールド209、回転軸255、シールキャップ219等のうち少なくともいずれかを含む。
【0100】
[ステップ4]
ステップ3が終了した後、成膜処理におけるステップ2と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除し、処理室201内をパージする。このとき、ステップ2と同様、処理室201内へパージガスを供給するようにしてもよい。パージガスとしては、ステップ2と同様、上述の反応ガスや不活性ガスを用いることができる。
[所定回数実施]
上述のステップ3,4を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、処理容器内の部材の表面上に、プリコート膜として、例えば、所望の厚さのシリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい点や、反応ガスとして、N,C及びH含有ガスを用いる場合、処理容器内の部材の表面上に、プリコート膜としてSiCN膜を形成することもできる点は、上述の成膜処理と同様である。
【0101】
上述のように、本態様におけるプリコート処理では、クリーニング処理を実行した後の処理容器内における残留F濃度の分布に合わせてプリコート膜の膜厚分布を調整する。好ましくは、本態様におけるプリコート処理では、処理容器内における残留F濃度が最も高い第1部211に形成するプリコート膜を、処理容器内における残留F濃度が第1部211よりも低い第2部222に形成するプリコート膜よりも厚くする。
【0102】
本態様では、プリコート膜における上述の膜厚分布を実現するため、好ましくは、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合を独立して調整し、プリコート処理における第2部222の温度に対する第1部211の温度の比を、上述の成膜処理(クリーニング前)、および、後述の成膜処理(プリコート後)のうち少なくともいずれかにおける第2部222の温度に対する第1部211の温度の比よりも大きくする。
【0103】
また、本態様では、プリコート膜における上述の膜厚分布を実現するため、好ましくは、プリコート処理では、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合を独立して調整し、第1部211の温度を、第2部222の温度よりも高くする。
【0104】
また、本態様では、プリコート膜における上述の膜厚分布を実現するため、好ましくは、ヒータ206が有する5つのゾーン(L,CL,C,CU,U)のそれぞれへの通電具合を独立して調整し、プリコート処理における第1部211の温度を、上述の成膜処理(クリーニング前)、および、後述の成膜処理(プリコート後)のうち少なくともいずれかにおける第1部211の温度よりも高くする。
【0105】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
処理容器内へのプリコート膜の形成が終了した後、ノズル230a,230bのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0106】
(空ボートアンロード)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、空のボート217がマニホールド209の下端開口(基板搬送口209a)からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219aが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219aによりシールされる(シャッタクローズ)。
【0107】
(5)成膜処理(プリコート後)
プリコート処理を実行した後、新たなウエハ200に対し、上述の成膜処理(クリーニング前)と同様の成膜処理を再び行う。すなわち、新たなウエハ200を収容したプリコート膜形成後の処理容器内へ成膜ガスを供給し、新たなウエハ200上に膜を形成する処理を再び行う。このときの処理手順、処理条件は、上述の成膜処理(クリーニング前)における処理手順、処理条件と同様とすることができる。原料ガスとしては、成膜処理(クリーニング前)で例示した原料ガスのうち1以上を用いることができる。反応ガスとしては、成膜処理(クリーニング前)で例示した反応ガスのうち1以上を用いることができる。
【0108】
(6)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0109】
(a)プリコート処理では、処理容器内における残留F濃度の分布に合わせてプリコート膜の膜厚分布を調整することにより、成膜処理(プリコート後)において、処理容器内で残留F成分と成膜ガスとの反応が局所的に生じることを抑制することができる。それにより、成膜処理(プリコート後)において、ウエハ200上への膜の形成に寄与することなく消費される成膜ガスの量が局所的に多くなることを抑制することができ、膜厚ドロップの局所的な発生を抑制することが可能となる。
【0110】
(b)プリコート処理では、第1部211に形成するプリコート膜を、第2部222に形成するプリコート膜よりも厚くすることにより、成膜処理(プリコート後)において、処理容器内で残留F成分と成膜ガスとの反応が、残留F濃度が最も高い部分において、局所的に過度に生じることを抑制することができる。それにより、成膜処理(プリコート後)において、ウエハ200上への膜の形成に寄与することなく消費される成膜ガスの量がその部分において局所的に多くなることを抑制することができ、膜厚ドロップがその部分において局所的に過度に生じることを抑制することが可能となる。
【0111】
(c)プリコート処理における第2部222の温度に対する第1部211の温度の比を、成膜処理(クリーニング前)および成膜処理(プリコート後)のうちの少なくともいずれかにおける第2部222の温度に対する第1部211の温度の比よりも大きくすることにより、プリコート処理において、第1部211に形成するプリコート膜を、第2部222に形成するプリコート膜よりも厚くすることを容易となる。
【0112】
(d)プリコート処理では、第1部211の温度を、第2部222の温度よりも高くすることにより、プリコート処理において、第1部211に形成するプリコート膜を、第2部222に形成するプリコート膜よりも厚くすることが可能となる。
【0113】
(e)プリコート処理における第1部211の温度を、成膜処理(クリーニング前)における第1部211の温度よりも高くすることにより、プリコート処理において、第1部211に形成するプリコート膜を、第2部222に形成するプリコート膜よりも厚くすることが容易となる。
【0114】
(f)第1部211および第2部222が、図3を用いて例示した上述の態様である場合においても、上述した各種効果のうち1つ又は複数の効果が得られる。
【0115】
(g)上述の効果は、成膜処理(クリーニング前、プリコート後)において、上述の原料ガス、反応ガスを用いる場合や、プリコート処理において、上述の原料ガス、反応ガスを用いる場合や、クリーニング処理において、上述のF含有ガスを用いる場合や、これらの各処理において、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0116】
(7)変形例
本態様における各種処理は、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの各変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。なお、これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の各処理の各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0117】
(変形例1)
成膜処理(クリーニング前)では、第1部211の温度を、第2部222の温度以下としてもよい。本変形例によれば、成膜処理(クリーニング前)において、ウエハ200上に形成される膜の膜厚均一性、特に、ウエハ間膜厚均一性を向上させることが可能となる。なお、成膜処理(クリーニング前)では、第1部211の温度を、第2部222の温度よりも低くすることで、ここで述べた効果をより高めることが可能となる。
【0118】
(変形例2)
クリーニング処理では、第1部211の温度を、第2部222の温度以下としてもよい。本変形例によれば、クリーニング処理において、処理容器内に付着した膜を含む堆積物を均一に除去することが可能となる。なお、クリーニング処理では、第1部211の温度を、第2部222の温度よりも低くすることで、ここで述べた効果をより高めることが可能となる。
【0119】
(変形例3)
成膜処理(プリコート後)では、第1部211の温度を、第2部222の温度以下としてもよい。本変形例によれば、成膜処理(プリコート後)において、ウエハ200上に形成される膜の膜厚均一性、特に、ウエハ間膜厚均一性を向上させることが可能となる。なお、成膜処理(プリコート後)では、第1部211の温度を、第2部222の温度よりも低くすることで、ここで述べた効果をより高めることが可能となる。
【0120】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0121】
例えば、反応ガスとしては、上述のN及びH含有ガスや、N,C及びH含有ガスの他、例えば、エチレン(C)ガス、アセチレン(C)ガス、プロピレン(C)ガス等の炭素(C)含有ガスや、ジボラン(B)ガス、トリクロロボラン(BCl)ガス等の硼素(B)含有ガスや、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、プラズマ励起させたOガス(O )、Oガス+水素(H)ガス、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等の酸素(O)含有ガス等を用いることができる。
【0122】
そして、以下に示す成膜シーケンスにより、基板上に、SiN膜やSiCN膜の他、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)等のSiを含む膜を形成する場合にも、上述のクリーニング処理およびプリコート処理を好適に適用することができる。これらの場合においても、上述の態様で述べた効果のうち、少なくとも一部の効果を得ることができる。なお、原料ガス、反応ガスを供給する際の処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の各ステップにおけるそれらと同様とすることができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0123】
また例えば、原料ガスとして、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む原料ガスを用い、上述の成膜シーケンスにより、基板上に、アルミニウム窒化膜(AlN膜)、チタン窒化膜(TiN膜)、ハフニウム窒化膜(HfN膜)、ジルコニウム窒化膜(ZrN膜)、タンタル窒化膜(TaN膜)、モリブデン窒化膜(MoN)、タングステン窒化膜(WN)、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、チタン酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、モリブデン酸化膜(MoO)、タングステン酸化膜(WO)、チタン酸窒化膜(TiON膜)、チタンアルミニウム炭窒化膜(TiAlCN膜)、チタンアルミニウム炭化膜(TiAlC膜)、チタン炭窒化膜(TiCN膜)等の金属元素を含む膜を形成する場合にも、上述のクリーニング処理およびプリコート処理を好適に適用することができる。これらの場合においても、上述の態様で述べた効果のうち、少なくとも一部の効果を得ることができる。なお、原料ガス、反応ガスを供給する際の処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の各ステップにおけるそれらと同様とすることができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0124】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の成膜処理や、様々な膜に対応したクリーニング処理や、プリコート処理を、再現性よく行うことができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0125】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0126】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜処理、クリーニング処理、プリコート処理を行う例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜処理、クリーニング処理、プリコート処理を行う場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて成膜処理、クリーニング処理、プリコート処理を行う例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて成膜処理、クリーニング処理、プリコート処理を行う場合にも、好適に適用できる。
【0127】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0128】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例
【0129】
(実施例1)
図1に示す基板処理装置を用い、上述の態様における成膜処理、クリーニング処理、プリコート処理を行った。プリコート処理では、処理容器内の下部領域の温度を、処理容器内の上部領域および中央部領域の温度よりも高くした。プリコート膜の膜厚を測定したところ、処理容器内の下部領域に形成されたプリコート膜の膜厚Tは、処理容器内の上部領域および中央部領域に形成されたプリコート膜の膜厚Tよりも厚いことを確認した。TはTの1.2~1.4倍であった。プリコート処理後、プリコート膜が形成された処理容器内で、再度、成膜処理を行い、ウエハ上に形成された膜の膜厚を測定した。なお、成膜処理ではウエハ上にSiN膜を形成し、プリコート処理では処理容器内にプリコート膜としてSiN膜を形成した。
【0130】
(比較例1)
図1に示す基板処理装置を用い、上述の態様における成膜処理、クリーニング処理を行い、実施例1とは異なる処理条件でプリコート処理を行った。プリコート処理では、処理容器内の下部領域の温度を、処理容器内の上部領域および中央部領域の温度よりも低くした。プリコート膜の膜厚を測定したところ、処理容器内の下部領域に形成されたプリコート膜の膜厚Tは、処理容器内の上部領域および中央部領域に形成されたプリコート膜の膜厚Tよりも薄いことを確認した。TはTの0.7~0.9倍であった。プリコート処理後、プリコート膜が形成された処理容器内で、再度、成膜処理を行い、ウエハ上に形成された膜の膜厚を測定した。なお、成膜処理ではウエハ上にSiN膜を形成し、プリコート処理では処理容器内にプリコート膜としてSiN膜を形成した。
【0131】
なお、実施例1において処理容器内の下部領域に形成されたプリコート膜の膜厚Tは、比較例1において処理容器内の下部領域に形成されたプリコート膜の膜厚Tよりも厚いことを確認した。TはTの1.4~1.6倍であった。また、実施例1において処理容器内の上部領域および中央部領域に形成されたプリコート膜の膜厚は、比較例1において処理容器内の上部領域および中央部領域に形成されたプリコート膜の膜厚と同等の厚さであることを確認した。
【0132】
結果、比較例1では、プリコート処理後の成膜処理において、下部領域に配置されたウエハ上に形成された膜の膜厚が、上部領域および中央部領域のそれぞれに配置されたウエハ上に形成された膜の膜厚よりも薄くなることを確認した。すなわち、比較例1では、下部領域において膜厚ドロップが発生することを確認した。
【0133】
これに対し、実施例1では、プリコート処理後の成膜処理において、上部領域、中央部領域、および下部領域のそれぞれに配置されたウエハ上に形成された膜の膜厚は同等であることを確認した。すなわち、実施例1では、上部領域、中央部領域、および下部領域のいずれの領域においても膜厚ドロップが発生しないことを確認した。
【符号の説明】
【0134】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
図1
図2
図3
図4