(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】基板処理方法、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240809BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20240809BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/304 631
H01L21/304 601Z
(21)【出願番号】P 2020143517
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正行
(72)【発明者】
【氏名】中西 正行
(72)【発明者】
【氏名】山下 道義
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-167966(JP,A)
【文献】特開2006-352078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板を接合して製造される積層基板を回転させ、
前記第1基板の周縁部と、前記第2基板の周縁部との間の隙間に熱硬化性を有する充填剤を塗布し、
前記充填剤を硬化させ、
前記充填剤を塗布する工程と、前記充填剤を硬化させる工程は、同一の処理室内で連続して行われ
、
前記充填剤を塗布する工程は、搬送機構を用いて前記充填剤を前記隙間に搬送する工程であり、
前記搬送機構は、
吐出口を有し、充填剤が充填されたチューブと、
前記吐出口から延びて、前記隙間に近接するか、または接触する充填剤搬送部材と、を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記充填剤を硬化させる工程は、ランプヒータによって前記充填剤を硬化させる工程である、請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記ランプヒータは、1μm以上の波長を有する光を、前記積層基板の上方または下方から前記充填剤に向けて照射させる、請求項
2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記充填剤を硬化させる工程は、ヒートガンによって前記充填剤を硬化させる工程である、請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
第1基板と第2基板を接合して製造される積層基板を保持し、回転させる基板保持部と、
前記第1基板の周縁部と、前記第2基板の周縁部との間の隙間に熱硬化性を有する充填剤を塗布する塗布モジュールと、
前記充填剤を硬化させる硬化モジュールと、
前記基板保持部、前記塗布モジュール、および前記硬化モジュールが配置された処理室と、を備え、
前記充填剤の塗布および硬化は、前記処理室内で前記積層基板を回転させながら連続して行われ
、
前記塗布モジュールは、搬送機構を備えており、
前記搬送機構は、
吐出口を有し、充填剤が充填されたチューブと、
前記吐出口から延びて、前記隙間に近接するか、または接触する充填剤搬送部材と、を有する、基板処理装置。
【請求項6】
前記硬化モジュールは、ランプヒータを備えており、
前記ランプヒータは、
ランプと、
前記ランプからの熱を、前記隙間に塗布された充填剤に向ける光学機器と、を有している、請求項
5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ランプは、1μm以上の波長を有する光を発するように構成されており、
前記ランプヒータは、前記積層基板の上方または下方に配置される、請求項
6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記硬化モジュールは、前記充填剤に向けて熱風を吹き付けるヒートガンを備える、請求項
5に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板を接合して製造される積層基板の割れおよび欠けを抑制する基板処理方法に関する。さらに、本発明は、このような基板処理方法を実施可能な基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスのさらなる高密度化および高機能化を達成するために、複数の基板を積層して3次元的に集積化する3次元実装技術の開発が進んでいる。3次元実装技術では、例えば、集積回路および電気配線が形成された第1基板のデバイス面を、同様に集積回路および電気配線が形成された第2基板のデバイス面と接合する。さらに、第1基板を第2基板に接合した後で、第2基板が研磨装置または研削装置によって薄化される。このようにして、第1基板および第2基板のデバイス面に垂直な方向に集積回路を積層することができる。
【0003】
3次元実装技術では、3枚以上の基板が接合されてもよい。例えば、第1基板に接合された第2基板を簿化した後で、第3基板を第2基板に接合し、第3基板を簿化してもよい。本明細書では、互いに接合された複数の基板の形態を「積層基板」と称することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、基板の外周面は、割れ(クラック)や欠け(チッピング)を防止するために、丸みを帯びた形状に予め研磨されている。このような丸みを帯びた外周面を有する第2基板を研削すると、その結果として第2基板には鋭角な端部が形成される。この鋭角な端部(以下、ナイフエッジ部という)は、研削された第2基板の裏面と第2基板の外周面とにより形成される。このようなナイフエッジ部は、物理的な接触により欠けやすく、積層基板の搬送時に積層基板自体が破損することがある。また、第1基板と第2基板の接合が十分でないと、第2基板が研削中に割れることもある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の基板を接合して製造される積層基板の割れおよび欠けを抑制するための基板処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記方法を実施可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、第1基板と第2基板を接合して製造される積層基板を回転させ、前記第1基板の周縁部と、前記第2基板の周縁部との間の隙間に熱硬化性を有する充填剤を塗布し、前記充填剤を硬化させ、前記充填剤を塗布する工程と、前記充填剤を硬化させる工程は、同一の処理室内で連続して行われる、基板処理方法が提供される。
【0008】
一態様では、前記充填剤を塗布する工程は、シリンジ機構を用いて前記充填剤を前記隙間に注入する工程であり、前記シリンジ機構は、前記充填剤が充填されたシリンジ本体と、前記シリンジ本体内を移動可能なピストンと、を有し、前記シリンジ本体の先端開口は、前記隙間に対向している。
一態様では、前記充填剤を塗布する工程は、射出機構を用いて前記充填剤を前記隙間に射出する工程であり、前記射出機構は、前記充填剤が充填された射出機を有し、前記射出機は、前記隙間に対向する射出口を有する。
一態様では、前記充填剤を塗布する工程は、搬送機構を用いて前記充填剤を前記隙間に搬送する工程であり、前記搬送機構は、吐出口を有し、充填剤が充填されたチューブと、前記吐出口から延びて、前記隙間に近接するか、または接触する充填剤搬送部材と、を有する。
【0009】
一態様では、前記充填剤を硬化させる工程は、ランプヒータによって前記充填剤を硬化させる工程である。
一態様では、前記ランプヒータは、1μm以上の波長を有する光を、前記積層基板の上方または下方から前記充填剤に向けて照射させる。
一態様では、前記充填剤を硬化させる工程は、ヒートガンによって前記充填剤を硬化させる工程である。
【0010】
一態様では、第1基板と第2基板を接合して製造される積層基板を保持し、回転させる基板保持部と、前記第1基板の周縁部と、前記第2基板の周縁部との間の隙間に熱硬化性を有する充填剤を塗布する塗布モジュールと、前記充填剤を硬化させる硬化モジュールと、前記基板保持部、前記塗布モジュール、および前記硬化モジュールが配置された処理室と、を備え、前記充填剤の塗布および硬化は、前記処理室内で前記積層基板を回転させながら連続して行われる、基板処理装置が提供される。
【0011】
一態様では、前記塗布モジュールは、シリンジ機構を備えており、前記シリンジ機構は、前記充填剤が充填されたシリンジ本体と、前記シリンジ本体内を移動可能なピストンと、を有し、前記シリンジ本体の先端開口は、前記隙間に対向している。
一態様では、前記塗布モジュールは、射出機構を備えており、前記射出機構は、前記充填剤が充填された射出機を有し、前記射出機は、前記隙間に対向する射出口を有する。
一態様では、前記塗布モジュールは、搬送機構を備えており、前記搬送機構は、吐出口を有し、充填剤が充填されたチューブと、前記吐出口から延びて、前記隙間に近接するか、または接触する充填剤搬送部材と、を有する。
【0012】
一態様では、前記硬化モジュールは、ランプヒータを備えており、前記ランプヒータは、ランプと、前記ランプからの熱を、前記隙間に塗布された充填剤に向ける光学機器と、を有している。
一態様では、前記ランプは、1μm以上の波長を有する光を発するように構成されており、前記ランプヒータは、前記積層基板の上方または下方に配置される。
一態様では、前記硬化モジュールは、前記充填剤に向けて熱風を吹き付けるヒートガンを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1基板の周縁部と第2基板の周縁部との間の隙間で硬化された充填剤によって第2基板の周縁部に形成されたナイフエッジ部が保護される。その結果、積層基板の割れおよび欠けを抑制することができる。さらに、第1基板の周縁部と第2基板の周縁部が硬化された充填剤を介して互いに支持される。その結果、積層基板の強度が増加し、第2基板を薄化する際に、積層基板の割れおよび欠けが発生することを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。
【
図2】
図2(a)は、2枚のウエハを接合した積層基板の一例を示す模式図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す第2ウエハを薄化した後の積層基板を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、2枚のウエハを接合した積層基板の他の例を示す模式図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す第2ウエハを薄化した後の積層基板を示す模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る基板処理装置を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す基板処理装置を模式的に示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態にかかる塗布モジュールを示す模式図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る硬化モジュールを示す模式図である。
【
図8】
図8(a)は、
図2(a)に示す積層基板の第1ウエハの周縁部と第2ウエハの周縁部の隙間で硬化された充填剤を示す模式図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示す積層基板の第2ウエハが薄化された状態を示す模式図である。
【
図9】
図9(a)は、
図3(a)に示す積層基板の第1ウエハの周縁部と第2ウエハの周縁部の隙間で硬化された充填剤を示す模式図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示す積層基板の第2ウエハが薄化された状態を示す模式図である。
【
図10】
図10は、他の実施形態に係る塗布モジュールを示す模式図である。
【
図11】
図11は、さらに他の実施形態に係る塗布モジュールを示す模式図である。
【
図12】
図12は、他の実施形態に係る硬化モジュールを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)および
図1(b)は、基板の一例であるウエハの周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、
図1(a)はいわゆるストレート型のウエハの断面図であり、
図1(b)はいわゆるラウンド型のウエハの断面図である。
図1(a)のウエハWにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成されるウエハWの最外周面(符号Bで示す)である。
【0016】
図1(b)のウエハWにおいては、ベベル部は、ウエハWの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部E1は、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する領域であって、かつデバイスが形成される領域Dよりも半径方向外側に位置する平坦部である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。ボトムエッジ部E2は、トップエッジ部E1とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部である。これらトップエッジ部E1およびボトムエッジ部E2は、総称してニアエッジ部と呼ばれることもある。
【0017】
図2(a)は、2枚のウエハを接合した積層基板の一例を示す模式図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す第2ウエハを薄化した後の積層基板を示す模式図である。
図2(a)に示す積層基板Wsは、
図1(b)に示すラウンド型の第1ウエハW1と第2ウエハW2とを接合することにより製造される。
【0018】
図2(b)に示すように、第2ウエハW2を薄化すると、第2ウエハW2の周縁部にナイフエッジ部NEが形成される。このナイフエッジ部NEは、物理的な接触により欠けやすく、積層基板Wsの搬送時、および積層基板Wsのさらなるプロセス処理時に積層基板Wsが割れたり、欠けたりさせる要因となることがある。また、第1ウエハW1と第2ウエハW2の接合が十分でないと、第2ウエハW2の研削プロセス(すなわち、薄化プロセス)中に、該第2ウエハW2が割れたり、欠けたりすることもある。積層基板Wsが
図1(a)に示すスクエア型の第1ウエハW1と第2ウエハW2とを接合することにより製造される場合も、第2ウエハW2を薄化すると、第2ウエハW2の周縁部にナイフエッジ部が形成される。
【0019】
図3(a)は、2枚のウエハを接合した積層基板の他の例を示す模式図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す第2ウエハを薄化した後の積層基板を示す模式図である。
図3(a)に示す積層基板Wsも、
図1(b)に示すラウンド型の第1ウエハW1と第2ウエハW2とを接合することにより製造されるが、第2ウエハW2の周縁部は、該第2ウエハW2を第1ウエハW1に接合する前に研磨されている。そのため、第2ウエハW2の周縁部には、その全周にわたって、段差部Sが形成されている。さらに、段差部Sを形成するために第2ウエハW2の周縁部を研磨する際に、該段差部Sよりも半径方向内側の第2ウエハW2の表面にロールオフ部ROが形成されることがある。
【0020】
図3(b)に示すように、このロールオフ部ROは、第2ウエハW2を薄化した後で鋭角な端部であるナイフエッジ部NEとなりうる。そのため、第2ウエハW2の周縁部を予め研磨しておいても、積層基板Wsの割れおよび欠けを抑制するには十分ではない。
【0021】
そこで、本実施形態では、積層基板Wsの第1ウエハW1と第2ウエハW2との間に充填剤を塗布し、この充填剤を硬化させることで、ナイフエッジ部NEを効果的に保護する。
【0022】
図4は、一実施形態に係る基板処理装置を模式的に示す平面図であり、
図5は、
図4に示す基板処理装置を模式的に示す縦断面図である。
図4および
図5に示す基板処理装置は、積層基板WsのウエハW1,W2の間に形成された隙間に充填剤を塗布し、さらに硬化させる装置である。なお、
図5は、後述する塗布モジュール1Aおよび硬化モジュール1Bの図示を省略している。
【0023】
図4および
図5に示すように、この基板処理装置100は、その中央部に、複数のウエハW1,W2が積層された積層基板Ws(
図2(a)または
図3(a)参照)を水平に保持し、回転させる回転保持機構(基板保持部)3を備えている。
図4においては、回転保持機構3が積層基板Wsを保持している状態を示している。回転保持機構3は、積層基板Wsの裏面を真空吸着により保持する皿状の保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結された中空シャフト5と、この中空シャフト5を回転させるモータM1とを備えている。積層基板Wsは、搬送機構のハンド(図示せず)により、積層基板Wsの中心が中空シャフト5の軸心と一致するように保持ステージ4の上に載置される。
【0024】
中空シャフト5は、ボールスプライン軸受(直動軸受)6によって上下動自在に支持されている。保持ステージ4の上面には溝4aが形成されており、この溝4aは、中空シャフト5を通って延びる連通路7に連通している。連通路7は中空シャフト5の下端に取り付けられたロータリジョイント8を介して真空ライン9に接続されている。連通路7は、処理後の積層基板Wsを保持ステージ4から離脱させるための窒素ガス供給ライン10にも接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、積層基板Wsを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0025】
中空シャフト5は、この中空シャフト5に連結されたプーリーp1と、モータM1の回転軸に取り付けられたプーリーp2と、これらプーリーp1,p2に掛けられたベルトb1を介してモータM1によって回転される。モータM1の回転軸は中空シャフト5と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ4の上面に保持された積層基板Wsは、モータM1によって回転される。
【0026】
ボールスプライン軸受6は、中空シャフト5がその長手方向へ自由に移動することを許容する軸受である。ボールスプライン軸受6は円筒状のケーシング12に固定されている。したがって、本実施形態においては、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下に直線動作ができるように構成されており、中空シャフト5とケーシング12は一体に回転する。中空シャフト5は、エアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、エアシリンダ15によって中空シャフト5および保持ステージ4が上昇および下降できるようになっている。
【0027】
ケーシング12と、その外側に同心上に配置された円筒状のケーシング14との間にはラジアル軸受18が介装されており、ケーシング12は軸受18によって回転自在に支持されている。このような構成により、回転保持機構3は、積層基板Wsをその中心軸Crまわりに回転させ、かつ積層基板Wsを中心軸Crに沿って上昇下降させることができる。
【0028】
図4に示すように、基板処理装置100は、回転保持機構3に保持された積層基板Wsの周囲に配置された塗布ジュール(塗布部)1Aと、硬化モジュール(硬化部)1Bと、と備えている。硬化モジュール1Bは、積層基板Wsの回転方向において塗布モジュール1Bの下流側に位置している。
【0029】
塗布モジュール1Aは、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に充填剤を塗布する装置であり、硬化モジュール1Bは、塗布モジュール1Aによって積層基板Wsに供給された充填剤を硬化させる装置である。本実施形態において、充填剤は、熱硬化性を有する充填剤である。このような充填剤の例はとしては、熱硬化性の樹脂が挙げられる。
【0030】
塗布モジュール1Aと硬化モジュール1Bとは、隔壁20によって仕切られた処理室21内に配置されており、処理室21は、隔壁20によって外部から隔離されている。塗布モジュール1A、硬化モジュール1B、および保持ステージ4は処理室21内に配置されている。すなわち、処理中の積層基板Wsは、処理室内21に収容される。
【0031】
中空シャフト5がケーシング12に対して昇降した時にボールスプライン軸受6やラジアル軸受18などの機構を処理室21から隔離するために、
図5に示すように、中空シャフト5とケーシング12の上端とは上下に伸縮可能なベローズ19で接続されている。
図5は中空シャフト5が下降している状態を示し、保持ステージ4が処理位置にあることを示している。充填剤の塗布および硬化処理後には、エアシリンダ15によりウエハWを保持ステージ4および中空シャフト5とともに搬送位置まで上昇させ、この搬送位置でウエハWを保持ステージ4から離脱させる。
【0032】
隔壁20は、積層基板Wsを処理室21に搬入および搬出するための搬送口20bを備えている。搬送口20bは、水平に延びる切り欠きとして形成されている。したがって、搬送機構に把持された積層基板Wsは、水平な状態を保ちながら、搬送口20bを通って処理室21内を横切ることが可能となっている。隔壁20の上面には開口20cおよびルーバー40が設けられ、下面には排気口(図示せず)が設けられている。充填剤の塗布および硬化処理時は、搬送口20bは図示しないシャッターで閉じられるようになっている。したがって、排気口から図示しないファン機構により排気をすることで処理室21の内部には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。このファン機構は、処理室21内の圧力を陽圧に保つ圧力調整装置として機能する。この状態において積層基板Wsが処理されるので、処理室21の上部空間を清浄に保ちながら積層基板Wsの処理をすることができる。
【0033】
図6は、一実施形態にかかる塗布モジュールを示す模式図である。
図6に示す塗布モジュール1Aは、第1ウエハW1と第2ウエハW2との間の隙間に充填剤を注入するシリンジ機構45と、シリンジ機構45を積層基板Wsに近接または離間させる水平移動機構(図示せず)を有している。一実施形態では、水平移動機構を省略してもよい。この場合、充填剤が第1ウエハW1と第2ウエハW2との間の隙間に適切に注入可能なように、保持ステージ4に対するシリンジ機構45の位置が予め決定されている。
【0034】
シリンジ機構45は、中空構造を有するシリンジ本体46と、シリンジ本体46内を往復動可能なピストン48とを備えている。シリンジ本体46は、気体供給ライン50を介して気体供給源に接続されている。気体供給源から気体(例えば、ドライエアーまたは窒素ガス)をシリンジ本体46に供給すると、ピストン48がシリンジ本体46内を前進する。シリンジ本体46は、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に対向する先端開口を有している。シリンジ本体46には、充填剤Fが予め充填されており、ピストン48の前進によって、シリンジ本体46の先端開口から第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に充填剤Fが注入される。
【0035】
気体供給ライン50には、圧力調整装置(例えば、減圧弁)51と、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)53とが配置されている。気体供給源からシリンジ本体46に供給される気体の圧力および流量を調整することで、シリンジ本体46から吐出する充填剤Fの流量を調整することができる。
【0036】
第1ウエハW1と第2ウエハW2との間の隙間に充填剤Fを塗布する際には、最初に、積層基板Wsが保持された保持ステージ4を所定の回転速度で回転させる。次いで、シリンジ機構45を積層基板Wsに近接させ、さらに、気体供給源から気体をシリンジ本体46に供給する。この動作によって、回転する積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に充填剤Fが注入される。
【0037】
第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間にシリンジ機構45から注入される充填剤Fの量が多すぎると、隙間からあふれた充填剤Fが積層基板Wsの上面および下面を汚染するおそれがある。第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間にシリンジ機構45から注入される充填剤Fの量が少なすぎると、該隙間に十分な量の充填剤Fを塗布することができないおそれがある。そのため、本実施形態では、回転する積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に、必要十分な量の充填剤Fが供給されるように、シリンジ本体46から吐出される充填剤Fの流量、および保持ステージ4の回転速度が予め調整されている。
【0038】
図7は、一実施形態に係る硬化モジュールを示す模式図である。
図7に示す硬化モジュール1Bは、ランプヒータ55を有する光加熱モジュールとして構成されている。ランプヒータ55は、ランプ83と、ランプ83からの熱(輻射熱)を、第1ウエハW1と第2ウエハW2との間の隙間に塗布された充填剤Fに向ける光学機器85と、を備えている。図示はしないが、光学機器85は、例えば、ミラーおよび/またはレンズなどから構成される。
【0039】
図7に示すランプヒータ55は、積層基板Wsの第2ウエハW2の上方に配置されており、ランプ83は、波長が1μm以上の光を光学機器85を介して積層基板Wsの上方から照射する。ランプ83が1μm以上の波長を有する光を照射する場合、ランプ83から照射された光は、第2ウエハW2を透過するので、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に塗布された充填剤Fを直接加熱することができる。ランプ83を有する光加熱モジュールは、熱効率が高く、短時間で充填剤Fを加熱し、硬化させることができる。したがって、基板処理装置100のスループットを向上させることができる。
【0040】
積層基板Wsに対するランプヒータ55の位置は任意である。例えば、
図7の一点鎖線で示されるように、ランプヒータ55を、第1ウエハW1の下方に配置してもよい。この場合、ランプ83から照射された光は第1ウエハW1を透過して、充填剤Fを直接加熱する。あるいは、
図7の二点鎖線で示されるように、ランプ83が第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に対向するように、ランプヒータ55を配置してもよい。この場合、ランプ83は、積層基板Wsの側方から充填剤Fを加熱する。したがって、ランプ83から照射された光が第1ウエハW1または第2ウエハW2を透過する必要がないので、ランプ83として任意のランプを用いることができる。
【0041】
このように構成された基板処理装置100では、最初に、積層基板Wsが回転保持機構3の保持ステージ4に真空吸着により保持される。次いで、積層基板Wsが保持ステージ4とともに回転される。次いで、塗布モジュール1Aにより、積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部の隙間に充填剤Fが塗布され、さらに、硬化モジュール1Bにより、充填剤Fが硬化される。充填剤Fの塗布処理および硬化処理は、同一の処理室21内で連続して行われる。したがって、積層基板Wsの割れおよび欠けを抑制するための基板処理を非常に短時間で行うことができる。
【0042】
その後、積層基板Wsは、基板処理装置100から搬出され、他の半導体製造装置で積層基板Wsの第2ウエハW2が薄化される。
【0043】
図8(a)は、
図2(a)に示す積層基板の第1ウエハの周縁部と第2ウエハの周縁部の隙間で硬化された充填剤を示す模式図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示す積層基板の第2ウエハが薄化された状態を示す模式図である。
図8(b)に示すように、第2ウエハW2を薄化しても、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間で硬化された充填剤Fによって第2ウエハW2の周縁部に形成されたナイフエッジ部NEが保護される。その結果、積層基板Wsの割れおよび欠けを抑制することができる。さらに、
図8(a)に示すように、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部が硬化された充填剤Fを介して互いに支持される。その結果、積層基板Wsの強度が増加し、第2ウエハW2を薄化する際に、積層基板Wsの割れおよび欠けが発生することを効果的に抑制することができる。
【0044】
図9(a)は、
図3(a)に示す積層基板の第1ウエハの周縁部と第2ウエハの周縁部の隙間で硬化された充填剤を示す模式図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示す積層基板の第2ウエハが薄化された状態を示す模式図である。
図9(a)に示すように、充填剤Fは、段差部Sおよびロールオフ部ROを含む、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間で硬化されている。そのため、積層基板Wsの強度が増加し、第2ウエハW2を薄化する際に、積層基板Wsの割れおよび欠けが発生することを効果的に抑制することができる。さらに、
図9(b)に示すように、ロールオフ部ROに達するまで第2ウエハW2が薄化される場合でも、充填剤Fによって第2ウエハW2の周縁部に形成されたナイフエッジ部NEが保護される。その結果、積層基板Wsの割れおよび欠けを抑制することができる。
【0045】
図4乃至
図7を参照して説明された実施形態では、塗布モジュール1Aはシリンジ機構45を有しているが、本実施形態はこの例に限定されない。塗布モジュール1Aの構成は、積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハのW2周縁部との間の隙間に充填剤Fを塗布できる限り任意である。
【0046】
図10は、他の実施形態に係る塗布モジュールを示す模式図である。
図10に示す塗布モジュール1Aは、シリンジ機構45に代えて、充填剤Fを積層基板Wsの第1ウエハの周縁部と第2ウエハの周縁部との間の隙間に射出する射出機構60を有する点で
図6に示す塗布モジュール1Aと異なる。
【0047】
図10に示す射出機構60は、射出口61aを有するチューブ状の射出機61を有する。射出口61aは、積層基板Wsの第1ウエハの周縁部と第2ウエハの周縁部との間の隙間に対向している。射出機61は、その内部に充填された充填剤Fを予め有しており、気体供給ライン50を介して気体供給源に接続されている。気体供給源から気体(例えば、ドライエアーまたは窒素ガス)を射出機61に供給すると、射出口61aから第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に充填剤Fが連続的に射出される。
【0048】
図示はしないが、射出機61は、ピストンシリンダ装置であってもよい。この場合、気体供給源から射出機61に供給された気体によって、ピストンがシリンダ内を前進し、該シリンダに充填された充填剤Fを射出口61aから連続的に射出する。
【0049】
気体供給ライン50には、圧力調整装置(例えば、減圧弁)51と、流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)53とが配置されている。気体供給源から射出機61に供給される気体の圧力および流量を調整することで、射出口61aから射出される充填剤Fの流量を調整することができる。本実施形態でも、回転する積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に、必要十分な量の充填剤Fが供給されるように、射出口61aから射出される充填剤Fの流量、および保持ステージ4の回転速度が予め調整されている。
【0050】
図11は、さらに他の実施形態に係る塗布モジュールを示す模式図である。
図11に示す塗布モジュール1Aは、シリンジ機構45に代えて、充填剤Fの搬送機構65を有する点で
図6に示す塗布モジュール1Aと異なる。
【0051】
図11に示す搬送機構65は、吐出口66aを有するチューブ66と、吐出口66aに連結された充填剤搬送部材68と、を備えている。充填剤搬送部材68は、吐出口66aの下端部から斜め下方に延びる棒状の部材であり、充填剤搬送部材68の先端は、積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に近接するか、または接触する。充填剤搬送部材68は、親水性を有する材料から形成される。一実施形態では、充填剤搬送部材68の表面に、親水性を有する材料のコーティングなどの親水性処理を施してもよい。充填剤搬送部材68は、例えば、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に挿入可能な太さを有する。充填剤搬送部材68は、積層基板Wsを傷つけないように可撓性を有しているのが好ましい。
【0052】
チューブ66は、その内部に充填された充填剤Fを予め有しており、気体供給ライン50を介して気体供給源に接続されている。気体供給源から気体(例えば、ドライエアーまたは窒素ガス)をチューブ66に供給すると、充填剤Fが吐出口66aから流出して、充填剤搬送部材68の表面上を流れる。充填剤搬送部材68の先端は、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に近接するか、または接触しているので、充填剤Fを、充填剤搬送部材68を介して第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に搬送することができる。本実施形態でも、回転する積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に、必要十分な量の充填剤Fが供給されるように、チューブ66から流出される充填剤Fの流量、および保持ステージ4の回転速度が予め調整されている。このような構成によれば、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に供給される充填剤Fの量をより精密に制御することができる。
【0053】
図示はしないが、搬送機構65は、チューブ66に代えて、ピストンシリンダ装置を有していてもよい。この場合、充填剤搬送部材68は、ピストンシリンダ装置のシリンダの先端開口に連結される。気体を気体供給源からピストンシリンダ装置に供給すると、ピストンがシリンダ内を前進し、該シリンダに充填された充填剤Fをシリンダの先端開口から充填剤搬送部材68に供給する。
【0054】
図4乃至
図7を参照して説明された実施形態では、硬化モジュール1Bはランプ83を有する光加熱モジュールとして構成されているが、本実施形態はこの例に限定されない。塗布モジュール1Bの構成は、積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハのW2周縁部の隙間に塗布された充填剤Fを硬化させることが可能である限り任意である。
【0055】
図12は、他の実施形態に係る硬化モジュールを示す模式図である。
図12に示す硬化モジュール1Bは、ランプヒータ55に代えて、第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハW2の周縁部との間の隙間に塗布された充填剤Fに向けて熱風を吹き付けるヒートガン87を有している点で
図7に示す硬化モジュール1Bと異なる。
【0056】
図12に示すヒートガン87は、積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハのW2周縁部の隙間に塗布された充填剤Fに対向する射出口87aを有している。さらに、ヒートガン87は、その内部に配置されたヒータ(図示せず)と、ヒータにより加熱された気体を射出口87aに向けて送るファン装置(図示せず)などを有している。ヒートガン87は、その射出口87aから射出された熱風によって、充填剤Fを積層基板Wsの中心に向かって押し付けつつ、充填剤Fを硬化させる。
【0057】
図7に示すように、硬化モジュール1Bが光加熱モジュールである場合は、積層基板Wsの第1ウエハW1の周縁部と第2ウエハのW2周縁部との間の隙間に塗布された充填剤Fを瞬時に加熱及び硬化させることができる。しかしながら、充填剤Fの硬化速度が速すぎると、充填剤Fが急激に蒸発して、硬化後の充填剤F内に空隙が生じてしまうことがある。ヒートガン87は、射出口87aから吹き出す熱風の量、および熱風の温度を調整できるように構成されている。したがって、ヒートガン87は、ランプ83の光加熱よりもゆっくりと充填剤Fを加熱することができ、かつ熱風によって充填剤Fを積層基板Wsの中心に向かって適切に押し付けることができる。ヒートガン87のこの作用によって、硬化後の充填剤F内に空隙が生じてしまうことを効果的に抑制できる。
【0058】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1A 塗布モジュール
1B 硬化モジュール
3 回転保持機構(基板保持部)
4 保持ステージ
20 隔壁
21 処理室
45 シリンジ機構
46 シリンジ本体
48 ピストン
50 気体供給ライン
51 圧力調整装置
53 流量調整装置
55 ランプヒータ
60 射出機構
61 射出機
65 搬送機構
66 チューブ
68 充填剤搬送部材
83 ランプ
85 光学機器
87 ヒートガン
100 基板処理装置