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特許7535920処理液吐出量の測定用容器及び処理液吐出量の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】処理液吐出量の測定用容器及び処理液吐出量の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240809BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20240809BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240809BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01L21/30 564Z
G03F7/16 502
B05C11/00
B05D3/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020194246
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083023
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】東 龍之介
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098414(JP,A)
【文献】特開平01-135565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/16
B05C 11/00
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の液処理装置における処理液ノズルからの処理液吐出量の測定用容器であって、
処理液を受け止めるための凹部を有する容器本体と、
前記容器本体の凹部を覆う蓋と、を備え、
前記蓋は、前記処理液ノズルが挿入される貫通孔を有し、
前記貫通孔の径は、前記容器本体の凹部の径よりも小さい、測定用容器。
【請求項2】
前記蓋は、
第1の蓋体と、
前記第1の蓋体を覆う第2の蓋体と、
前記第1の蓋体と前記第2の蓋体のいずれか一方に形成された凸部と他方に形成された前記凸部を受容する凹部が嵌合する嵌合部と、を有し、
前記貫通孔は、前記第1の蓋体のみを貫通し、
前記第2の蓋体は、前記嵌合部を中心として回転するように構成されている、請求項1に記載の測定用容器。
【請求項3】
前記嵌合部は、前記第1の蓋体の中心に位置し、
前記貫通孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔を有し、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔の各々は、前記第1の蓋体と前記第2の蓋体を貫通し、
前記第1の貫通孔は、前記嵌合部に形成され、
前記第2の貫通孔は、前記第1の蓋体の中心とは異なる位置に形成されている、請求項2に記載の測定用容器。
【請求項4】
前記第1の蓋体の側面と前記第2の蓋体の側面の各々に、前記第2の貫通孔を構成する前記第1の蓋体の開口部と前記第2の蓋体の開口部が重なることを示す目印が設けられている、請求項3に記載の測定用容器。
【請求項5】
前記第2の貫通孔は、前記嵌合部を中心として回転する方向に延びた形状である、請求項3又は4に記載の測定用容器。
【請求項6】
前記容器本体の径は、前記基板を保持する前記液処理装置の基板保持部の径と同一である、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定用容器。
【請求項7】
前記容器本体の凹部における当該容器本体の表面は、前記基板と同じ材質で形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定用容器。
【請求項8】
前記容器本体の凹部における当該容器本体の厚さは、前記基板と同じ厚さである、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定用容器。
【請求項9】
基板の液処理装置における処理液ノズルからの処理液吐出量の測定方法であって、
処理液を受け止めるための凹部を有する容器本体と、
前記容器本体の凹部を覆う蓋と、を備え、
前記蓋は、前記容器本体の凹部の径よりも小さく、かつ、前記処理液ノズルの外径よりも大きい貫通孔を有した測定用容器を用い、
前記測定用容器の質量を測定する工程と、
前記基板を保持する基板保持部に前記測定用容器を載置し、前記貫通孔に前記処理液ノズルを挿入して前記容器本体の凹部に前記処理液を吐出する工程と、
前記処理液が吐出された前記測定用容器の質量を測定することで前記処理液の吐出量を測定する工程と、を有する、測定方法。
【請求項10】
前記蓋は、
第1の蓋体と、
前記第1の蓋体を覆う第2の蓋体と、
前記第1の蓋体と前記第2の蓋体のいずれか一方に形成された凸部と他方に形成された前記凸部を受容する凹部が嵌合する嵌合部と、を有し、
前記貫通孔は、前記第1の蓋体のみを貫通し、
前記処理液を吐出する工程において、前記貫通孔に前記処理液ノズルを挿入して前記容器本体の凹部に前記処理液を吐出し、前記嵌合部を中心として前記第2の蓋体を回転させて前記貫通孔を塞ぐ、請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記嵌合部は、前記第1の蓋体の中心に位置し、
前記貫通孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔を有し、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔の各々は、前記第1の蓋体と前記第2の蓋体を貫通し、
前記第1の貫通孔は、前記嵌合部に形成され、
前記第2の貫通孔は、前記第1の蓋体の中心とは異なる位置に形成され、
前記処理液を吐出する工程において、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔に前記処理液ノズルを挿入して前記容器本体の凹部に前記処理液を吐出し、前記嵌合部を中心として前記第2の蓋体を回転させて前記第2の貫通孔を塞ぐ、請求項10に記載の測定方法。
【請求項12】
前記第1の蓋体の側面と前記第2の蓋体の側面の各々に、前記第2の貫通孔を構成する前記第1の蓋体の開口部と前記第2の蓋体の開口部が重なる位置を示す目印が設けられ、
前記第1の蓋体の目印と前記第2の蓋体の目印が合うように前記嵌合部を中心として前記第2の蓋体を回転させた後、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔に前記処理液ノズルを挿入して前記容器本体の凹部に前記処理液を吐出する、請求項11に記載の測定方法。
【請求項13】
前記第2の貫通孔は、前記嵌合部を中心として回転する方向に延びた形状である、請求項11又は12に記載の測定方法。
【請求項14】
前記容器本体の径は、前記基板保持部の径と同一である、請求項9~13のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項15】
前記容器本体の凹部における当該容器本体の表面は、前記基板と同じ材質で形成されている、請求項9~14のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項16】
前記容器本体の凹部における当該容器本体の厚さは、前記基板と同じ厚さである、請求項9~15のいずれか一項に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理液吐出量の測定用容器及び処理液吐出量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、略静止した基板の略中心上に、溶剤を供給する溶剤供給工程と、溶剤供給工程の後に、基板の略中心上であって溶剤の上にレジスト液を供給しつつ、第1の回転数で基板を回転させる第1の工程と、第1の工程の後に、第1の回転数よりも低い第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、第2の工程の後に、第1の回転数よりも低く第2の回転数よりも高い第3の回転数で基板を回転させる第3の工程とを有するレジスト塗布方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-207788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板の液処理を行う液処理装置における処理液ノズルからの処理液吐出量を測定する際に処理液の揮発量を低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板の液処理装置における処理液ノズルからの処理液吐出量の測定用容器であって、処理液を受け止めるための凹部を有する容器本体と、前記容器本体の凹部を覆う蓋と、を備え、前記蓋は、前記処理液ノズルが挿入される貫通孔を有し、前記貫通孔の径は、前記容器本体の凹部の径よりも小さい
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の液処理を行う液処理装置における処理液ノズルからの処理液吐出量を測定する際に処理液の揮発量を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる液処理装置の構成の概略を模式的に示す側面断面図である。
図2】本実施形態にかかる処理液吐出量の測定用容器の構成の概略を示す側面断面図である。
図3図2の測定用容器の分解図である。
図4】第1の蓋体の上面図である。
図5】第2の蓋体の上面図である。
図6】第1の蓋体と第2の蓋体が重なった状態の上面図である。
図7】第1の蓋体と第2の蓋体が重なった状態の上面図である。
図8】第1の蓋体と第2の蓋体の各々の側面に設けられた目印の説明図である。
図9】処理液吐出量の測定方法を示す説明図である。
図10】処理液吐出量の他の測定方法を示す説明図である。
図11】他の実施形態にかかる測定用容器の構成例を示す上面図である。
図12】他の実施形態にかかる測定用容器の構成例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスには、レジストパターンを形成するためにレジスト液を基板に塗布する処理がある。この処理では、例えばスピンチャックに保持された半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を回転させながら、このウェハの中心部に処理液としてレジスト液を吐出する。
【0009】
レジスト液をウェハに塗布する処理では、レジスト液の吐出量を高精度に制御することが求められる。このため、レジスト液をウェハに塗布する処理を行う前には、処理液ノズルからのレジスト液の吐出量の測定と、測定結果に基づいたレジスト液の吐出量の調節が行われる。そのようなレジスト液の吐出量の測定は以下のようにして行われる。
【0010】
まず、レジスト液が吐出される測定用容器の質量をレジスト塗布装置の外部に配置された電子天秤で測定する。この測定用容器は、レジスト液を受け止めるための容器本体と、容器本体を覆う蓋で構成されており、測定用容器の質量は容器本体と蓋を含む質量である。測定用容器の質量を測定した後、作業者はレジスト塗布装置に測定用容器を運び、スピンチャックに容器本体を載置する。次いで、処理液ノズルから容器本体にレジスト液を吐出する。その後、容器本体内のレジスト液の揮発を防ぐため、作業者が容器本体の上に蓋を被せる。作業者はその状態の測定用容器を電子天秤に運び、レジスト液が吐出された測定用容器の質量を測定する。そして、レジスト液を吐出する前と後の測定用容器の質量差に基づいてレジスト液の吐出量が測定される。
【0011】
従来の測定用容器を用いて上記のような吐出量測定を行う場合、容器本体にレジスト液を吐出してから蓋を被せるまでの間、容器本体の上部が開放されているためにレジスト液の揮発が起こりやすい。レジスト液の揮発量が多いと、レジスト液が揮発した分だけ測定用容器の質量が軽くなるため、測定結果として得られる吐出量は実際のレジスト液の吐出量よりも少なくなる。このため、レジスト液の吐出量の測定を精度良く行う観点からは、容器本体にレジスト液を吐出した後のレジスト液の揮発量が少ないことが好ましい。特に、レジスト液の消費量削減を目的として行われるレジスト液の少量吐出(低レート吐出)による塗布処理では、レジスト液の吐出量の管理をより厳格に行う必要があり、吐出量の測定精度を向上させることが求められる。この観点からも、レジスト液の吐出量の測定時においてはレジスト液の揮発量を低減させる必要がある。
【0012】
そこで、本開示にかかる技術は、基板の液処理を行う液処理装置における処理液ノズルからの処理液吐出量を測定する際に処理液の揮発量を低減させる。
【0013】
以下、本実施形態にかかる処理液吐出量の測定用容器及び処理液吐出量の測定方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
本実施形態にかかる測定用容器を説明するにあたり、まずは処理液吐出量の測定が必要となる液処理装置について説明する。図1は、本実施形態にかかる液処理装置の構成の概略を示す側面断面図である。
【0015】
本実施形態における液処理装置は、基板としてのウェハWに処理液としてレジスト液を塗布して液処理を行うレジスト塗布装置100である。レジスト塗布装置100は、図1に示すように内部を密閉可能な処理容器101を有している。処理容器101の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。
【0016】
処理容器101内には、ウェハWを保持する基板保持部としてスピンチャック102が設けられている。このスピンチャック102は、保持したウェハWを回転させることができる。スピンチャック102は、例えばモータ等のアクチュエータを有するチャック駆動部103により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部103には、例えばシリンダ等の昇降駆動機構が設けられており、スピンチャック102は昇降自在になっている。
【0017】
また、処理容器101内には、スピンチャック102の外側に配置された、スピンチャック102に保持されるウェハWを囲むカップ104が設けられている。カップ104は、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止めて回収するアウターカップ105と、アウターカップ105の内周側に位置するインナーカップ106と、を含む。アウターカップ105の上面には、スピンチャック102に対するウェハWの受け渡しの前後にウェハWが通過する開口107が形成されている。
【0018】
さらに、処理容器101内には、レジスト液をウェハWに吐出するためのノズルユニット108が上下方向及び水平方向に移動自在に設けられている。このノズルユニット108は、レジスト液を吐出する複数本(本実施形態では5本)の処理液ノズル109を備えており、各処理液ノズルは一列に並んで配置されている。
【0019】
また、レジスト塗布装置100は、制御部200を備えている。制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、レジスト塗布装置100におけるウェハWのレジスト塗布処理を制御する各種のプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。記憶媒体Hは一時的記憶媒体か非一時的記憶媒体かを問わない。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0020】
図2は、液処理装置における処理液吐出量の測定用容器1の構成の概略を示す側面断面図である。図3は、図2の容器1の分解図である。図2及び図3に示すように、測定用容器1(以下、単に「容器」という)は、レジスト液を受け止めるための凹部11を備えた容器本体10と、その凹部11を覆う蓋20を備えている。
【0021】
本実施形態における容器本体10は、円板状の底板部12と、突起部13を有している。突起部13は、底板部12から上方に延びており、上面視において円環状に形成されている。容器本体10は、そのような突起部13で囲まれた領域を有しており、当該領域がレジスト液を受け止める凹部11として機能する。
【0022】
容器本体10の径は特に限定されないが、スピンチャック102の径と同一であることが好ましい。処理液吐出量の測定時において容器本体10をスピンチャック102に載置する際には、容器本体10の中心位置とスピンチャック102の中心位置を一致させることが望ましいが、容器本体10の径がスピンチャック102の径と同一であれば、そのような位置合わせがしやすくなる。例えば容器本体10の径がスピンチャック102の径と同一であれば、スピンチャック102と容器本体10の各々の側面を揃えるようにして容器本体10を載置することができるため、スピンチャック102に対する容器本体10の位置合わせがしやすくなる。また、スピンチャック102がウェハWの吸引吸着が可能な構造であれば、スピンチャック102に容器本体10を載置した際に容器本体10の吸引を行うことで、吸引状況に鑑みて容器本体10とスピンチャック102の中心位置が互いに一致しているか判断できる。例えば容器本体10の吸引時に吸引不良が生じていれば、それはスピンチャック102の上面に形成されている吸引孔(図示せず)が容器本体10によって覆われていないことを意味するため、容器本体10とスピンチャック102の中心位置がずれていることを確認できる。なお、容器本体10の径とは、厳密には容器本体の10の、スピンチャック102の上面に接触する面の径であり、スピンチャック102の径とは当該スピンチャック102の上面の径である。スピンチャック102の径は例えば100~200mmである。
【0023】
容器本体10の材質は特に限定されないが、凹部11における容器本体10の表面の材質はウェハWと同じ材質であることが好ましく、例えばシリコンやガラス等である。凹部11における容器本体10とウェハWが同じ材質であれば、レジスト液の吸収による容器本体10の膨潤が起こりにくくなり、処理液吐出量の測定のために同一の容器1を繰り返し使用したとしても容器本体10の体積は変化しにくい。すなわち、各測定における容器本体10の条件を同一条件とすることができ、処理液吐出量の測定バラツキを抑えることが可能となる。また、凹部11における容器本体10の表面の材質をウェハWと同じ材質とすることで、ウェハW上でのレジスト液の広がり方を容器本体10でも再現することができ、レジスト塗布処理時に近い条件で処理液吐出量の測定を行うことができる。なお、凹部11における容器本体10の表面の材質をウェハWと同じ材質とする場合、容器本体10の全体をウェハWと同じ材質としてもよいし、凹部11における容器本体10の表面に例えばシリコン系膜をコーティングすることによって容器本体10の凹部11の表面のみをウェハWと同じ材質にしてもよい。
【0024】
凹部11における容器本体10の厚さ(本実施形態では凹部11における底板部12の厚さ)は、ウェハWと同じ厚さであることが好ましい。凹部11における容器本体10の厚さとウェハWの厚さが互いに異なる場合、処理液吐出量の測定時とウェハWの塗布処理時で処理液ノズル109の適正高さが異なるため、処理液ノズル109の高さ調節作業が必要となる。一方、凹部11における容器本体10の厚さとウェハWの厚さが同じであれば、そのような処理液ノズル109の高さ調節作業を省略することができる。また、凹部11における容器本体10の厚さとウェハWの厚さが同じであれば、ウェハWのレジスト塗布処理に近い条件で容器本体10にレジスト液を吐出することができるため、処理液吐出量の測定精度を高めることができる。
【0025】
次に、容器本体10の凹部11を覆う蓋20について図2図6を参照しながら説明する。本実施形態における蓋20は、第1の蓋体30と、第1の蓋体30を覆う第2の蓋体40を備えている。なお、図4は、第1の蓋体30の上面図であり、図5は、第2の蓋体40の上面図であり、図6は、第1の蓋体30と第2の蓋体40が重なった状態の上面図である。
【0026】
本実施形態における第1の蓋体30は、円板状の天板部31と、突起部32を有している。突起部32は、天板部31から下方に延びており、突起部32は平面視において円環状に形成されている。第1の蓋体30の突起部32の内径は容器本体10の突起部13の外径よりも大きく、第1の蓋体30を容器本体10に被せる際には第1の蓋体30の突起部32の内面と容器本体10の突起部13の外面とが互いに接触または近接するようにして容器本体10の凹部11が覆われる。
【0027】
図3及び図4に示すように第1の蓋体30には、処理液ノズル109と本数と配置に合わせて5つの開口部33が列状に形成されている。本明細書では、第1の蓋体30の開口部33のうち、第1の蓋体30の中心部に形成された開口部33を中心開口部33aと称し、その中心開口部33a以外の開口部33を周辺開口部33bと称すことがある。本実施形態における中心開口部33aは円形の穴であり、周辺開口部33bは扇形の穴である。
【0028】
第1の蓋体30の材質は特に限定されないが、耐薬性がある材質であることが好ましい。第1の蓋体30の径は例えば90~190mmであり、第1の蓋体30の天板部31の厚さは例えば1~3mmである。なお、処理液吐出量の測定の後には次回の測定に備えて容器1の洗浄が行われるため、洗浄作業を容易に行うという観点からは、第1の蓋体30は容器本体10に対して着脱自在であることが好ましい。また、第1の蓋体30の形状は容器本体10の凹部11を覆うことができれば特に限定されない。
【0029】
本実施形態における第2の蓋体40は、第1の蓋体30の天板部31と同様に円板状に形成されている。図3及び図5に示すように第2の蓋体40には、処理液ノズル109と本数と配置に合わせて5つの開口部42が列状に形成されている。本明細書では、第2の蓋体40の開口部42のうち、第2の蓋体40の中心部に形成された開口部42を中心開口部42aと称し、その中心開口部42a以外の開口部42を周辺開口部42bと称すことがある。本実施形態における中心開口部42aは円形の穴であり、周辺開口部42bは扇形の穴である。
【0030】
第2の蓋体40の材質も特に限定されないが、耐薬性がある材質であることが好ましい。第2の蓋体40の径は例えば90~190mmであり、第2の蓋体40の厚さは例えば1~3mmである。
【0031】
に示すように蓋20は、第1の蓋体30と第2の蓋体40を貫通する貫通孔A、Bを有している。本実施形態における貫通孔A、Bは、図3に示す第1の蓋体30に形成された開口部33と第2の蓋体40の形成された開口部42が重なることで構成されている。貫通孔A、Bは、容器本体10の凹部11の径よりも小さく、かつ、処理液ノズル109が通過できるよう処理液ノズル109の外径よりも大きい。なお、貫通孔の数や配置は処理液ノズル109の本数や配置によって適宜変更される。また例えば、処理液ノズル109の本数や配置が異なるノズルユニット108を用いた場合でも同一の容器1で処理液吐出量の測定ができるよう、貫通孔の数を多数形成して容器1に汎用性を持たせてもよい。
【0032】
本明細書では、蓋20に形成された貫通孔A、Bのうち、第1の蓋体30の中心開口部33aと第2の蓋体40の中心開口部42aが重なることで構成された貫通孔を第1の貫通孔Aと称し、第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bが重なることで構成された貫通孔を第2の貫通孔Bと称すことがある。前述のように第1の蓋体30の中心開口部33aと第2の蓋体40の中心開口部42aはそれぞれ円形であるため、これらの中心開口部33a、42aが重なることで形成される第1の貫通孔Aも円形である。また、第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bはそれぞれ扇形であるため、これらの周辺開口部33b、42bが重なることで形成される第2の貫通孔Bも扇形である。
【0033】
図3及び図6に示すように蓋20は、第1の蓋体30と第2の蓋体40を嵌合する嵌合部50を有しており、嵌合部50は第1の蓋体30の中心に位置している。本実施形態における嵌合部50は、第2の蓋体40の突起部41と第1の蓋体30の中心開口部33aで構成される。第2の蓋体40の突起部41は、第2の蓋体40の中心開口部42aの周縁から下方に延び、その突起部41が第1の蓋体30の中心開口部33aに受容される。これにより、第1の蓋体30に対する第2の蓋体40の半径方向の移動が制限され、第1の蓋体30と第2の蓋体40が嵌合した状態となる。なお、本実施形態における嵌合部50は第2の蓋体40の突起部41が第1の蓋体30の中心開口部33aに収まる構造であるため、第1の蓋体30の中心開口部33aの径が第2の蓋体40の中心開口部42aの径よりも大きい。ただし、嵌合部50の構造は特に限定されず、例えば本実施形態とは逆に第2の蓋体40の中心開口部42aの径が第1の蓋体30の中心開口部33aの径よりも大きく、第1の蓋体30に設けられた上方に延びる突起部(図示せず)が第2の蓋体40の中心開口部42aに受容される構造としてもよい。すなわち、嵌合部50は、第1の蓋体30と第2の蓋体40のいずれか一方に凸部が形成され、他方に当該凸部を受容する凹部が形成される構造であればよい。
【0034】
図7に示すように、第2の蓋体40は、上記の嵌合部50を中心として回転するように構成されている。図4に示す第1の蓋体30の周辺開口部33bと、図5に示す第2の蓋体40の周辺開口部42bが重なった図6のような状態から第2の蓋体40が回転すると、図7のように第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bが互いに重ならない状態となり、第2の貫通孔Bが塞がれた状態となる。なお、第2の蓋体40を回転させる具体的な手段については特に限定されないが、例えば作業者が第1の蓋体30の側面を押さえながら第2の蓋体40を回転させるようにしてもよい。また例えば第2の蓋体40の上面にノブ(図示せず)を設け、作業者がノブを掴んで第2の蓋体40を回転させるようにしてもよい。また例えば第1の蓋体30の周方向の回転を規制する回転規制部(図示せず)を設け、作業者が第1の蓋体30の側面を押さえずに第2の蓋体40を回転させるようにしてもよい。
【0035】
なお、第1の貫通孔Aと第2の貫通孔Bの形状は特に限定されないが、第2の貫通孔Bは、嵌合部50を中心として回転する方向に延びた形状であることが好ましい。スピンチャック102に容器本体10を載置する際には、スピンチャック102の周方向における第2の貫通孔Bの位置が適正位置からずれることもあり得る。しかし、第2の貫通孔Bが本実施形態における扇形のように嵌合部50を中心として回転する方向に延びる形状であれば、周方向における第2の貫通孔Bの位置が適正位置から多少ずれていたとしても、第2の貫通孔Bに処理液ノズル109を挿入することができる。また、第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bの各々が、嵌合部50を中心として回転する方向に延びる形状であれば、第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bとが一部重なっていなくても、各周辺開口部33b、42bが重なっている領域については第2の貫通孔Bとして機能させることができる。すなわち、周辺開口部33b、42bの各々が、嵌合部50を中心として回転する方向に延びる形状であれば、容器本体10に蓋20を被せる際に第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bが厳密に重なるようにしておかなくてもよいため、処理液吐出量の測定時における事前の準備作業が容易になる。
【0036】
図5に示すように第2の蓋体40の上面には、十字状の目印51(以下「上面部目印」)が設けられていることが好ましい。この上面部目印51は、容器本体10に蓋20を被せる際に、周方向における第2の貫通孔Bの位置を定めるための目安となるものである。なお、上面部目印51は十字状であることに限定されない。
【0037】
図8に示すように第1の蓋体30の側面と第2の蓋体40の側面の各々には、第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bが重なることを示す目印52、53(以下「側面部目印」)が設けられていることが好ましい。図8の例における側面部目印52、53は、それぞれ鉛直方向に延びる直線である。図8のように第1の蓋体30の側面部目印52と第2の蓋体40の側面部目印53がずれている場合には、図7のように第1の蓋体30の周辺開口部33bと第2の蓋体40の周辺開口部42bがずれた状態にあるが、第2の蓋体40を回転させて各々の側面部目印52、53を一致させることで、周辺開口部33bと周辺開口部42bを重なった状態にすることができる。このような側面部目印52、53があることにより容器本体10に蓋20を被せる際の蓋20側の事前の準備を容易に行うことができる。特に、第1の蓋体30の周辺開口部33bが第2の蓋体40によって隠れることで、第2の蓋体40をどの程度回転させれば各周辺開口部33b、42bが重なるかが不明な場合には、側面部目印52、53が設けられていることが好ましい。
【0038】
本実施形態における容器1は以上のように構成されている。次に、この容器1を用いた処理液吐出量の測定方法について説明する。
【0039】
まず、処理液吐出量の測定を行うにあたり、測定に用いられる容器1(容器本体10と蓋20)の質量を電子天秤などで測定する。
【0040】
次に、図9(a)に示すようにスピンチャック102に容器本体10を載置する。この際、容器本体10の中心とスピンチャック102の中心が一致するように容器本体10を載置する。続いて、ノズルユニット108を下降させて処理液ノズル109の下端を容器本体10に近づけ、接液吐出が可能となる処理液ノズル109の高さを確認する。その後、ノズルユニット108を上昇させる。なお、測定に使用する容器1の厚さに応じた接液吐出が可能となる処理液ノズル109の高さを予め把握できていれば、図9(a)のような処理液ノズル109の高さ調節作業は省略してもよい。
【0041】
次に、図9(b)に示すようにスピンチャック102に載置された容器本体10の上に蓋20を被せる。この際、第1の蓋体30の開口部33と第2の蓋体40の開口部42が重なるように第2の蓋体40を回転させておく。
【0042】
次に、図9(c)に示すようにノズルユニット108を下降させ、処理液ノズル109を第1の貫通孔Aと第2の貫通孔Bに挿入して容器本体10の凹部11にレジスト液を吐出する。なお、図9の例では5本ある処理液ノズル109のうちの中央にある処理液ノズル109からのみレジスト液を吐出しているが、他の処理液ノズル109からレジスト液を吐出してもよい。いずれの処理液ノズル109からレジスト液を吐出するかは測定目的によって任意に設定される。
【0043】
次に、図9(d)に示すようにノズルユニット108を上昇させて退避させた後、作業者が第2の蓋体40を回転させて第2の貫通孔Bを塞ぐ。
【0044】
その後、作業者はレジスト液が吐出された状態の容器1を電子天秤まで運び、再度容器1の質量を測定する。そして、レジスト液吐出後の容器1の質量と、レジスト液吐出前の容器1の質量差からレジスト液の吐出量を算出する。これにより処理液吐出量の測定が完了する。
【0045】
本実施形態における容器1を用いた場合であっても、図9(c)に示すレジスト液の吐出後からレジスト液の揮発が始まるが、本実施形態における容器1によれば、レジスト液が容器本体10に吐出された段階では既に容器本体10に蓋20が被せられた状態にある。このため、処理液ノズル109を退避させた後に容器本体10に蓋20を被せる場合に比べ、レジスト液の揮発量を低減させることができ、処理液吐出量の測定を精度良く行うことが可能となる。
【0046】
また、本実施形態における容器1の場合、図9(d)に示すように第2の貫通孔Bを塞ぐことができるため、レジスト液の揮発量をより低減することが可能となる。さらに本実施形態における容器1の場合は、容器1から処理液ノズル109を退避させた後、第2の蓋体40を回転させるだけで速やかに第2の貫通孔Bを塞ぐことができるため、レジスト液の揮発抑制効果が高まる。
【0047】
なお、本実施形態では第2の蓋体40に開口部42を設けているが、開口部42については設けなくてもよい。この場合、貫通孔A、Bは第1の蓋体30のみを貫通した状態となる。そのような容器1を用いた処理液吐出量の測定は図10のようにして行われる。詳述すると、図10(a)に示すように処理液ノズル109の高さ調節を行った後、図10(b)に示すようにスピンチャック102に第1の蓋体30のみを被せる。続いて、図10(c)に示すように第1の蓋体30の貫通孔A、Bに処理液ノズル109を挿入し、容器本体10の凹部11にレジスト液を吐出する。その後、図10(d)に示すように第1の蓋体30の上に第2の蓋体40を被せて、その状態の容器1の質量測定を行う。このような方法であってもレジスト液の揮発低減効果を得ることができる。
【0048】
また、第2の蓋体40に開口部42が設けられていない場合、第1の蓋体30と第2の蓋体40の嵌合部50の位置は例えば図11のように第1の蓋体30の中心に位置していなくてもよい。図11の例では、第2の蓋体40は長方形状の平板であって、嵌合部50は、第1の蓋体30の周辺開口部33bよりも第1の蓋体30の半径方向外側に位置している。このような構造の容器1の場合、図10(c)のように第1の蓋体30の貫通孔A、Bに処理液ノズル109を挿入してレジスト液を吐出した後、図11に示す長方形状の第2の蓋体40を、嵌合部50を中心として回転させることで、図10(d)のように貫通孔A、Bを塞ぐことができる。すなわち、開口部42を有しない第2の蓋体40が第1の蓋体30の開口部33を覆うことができる形状であって、処理液ノズル109と干渉しない位置に嵌合部50が設けられた容器1であっても、レジスト液の揮発低減効果を得ることができる。
【0049】
また、図12に示すように、蓋20は、第2の蓋体40を第1の蓋体30に対して一方向にスライドさせて、第1の蓋体30の開口部33を覆う状態と覆わない状態とを切替可能に構成されてもよい。図12の例においては、図10(c)のように第1の蓋体30の貫通孔A、Bに処理液ノズル109を挿入してレジスト液を吐出した後、第2の蓋体40をスライドさせることで、図10(d)のように貫通孔A、Bを塞ぐことができる。
【0050】
また、蓋20を構成する第2の蓋体40は必須の構成要素ではない。第1の蓋体30のみであっても、第1の蓋体30に貫通孔A、Bが設けられていれば、容器本体10を第1の蓋体30で覆った状態でレジスト液を吐出することができる。つまり、第1の蓋体30のみであっても、容器本体10にレジスト液が吐出された段階では、既に容器本体10が第1の蓋体30で覆われた状態にあるため、レジスト液の吐出後に蓋20を被せる場合に比べてレジスト液の揮発量を低減することができる。
【0051】
また、本開示にかかる容器は、半導体ウェハ以外の処理対象基板、例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)基板の液処理装置における処理液吐出量の測定にも適用できる
【0052】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 測定用容器
10 容器本体
11 凹部
20 蓋
100 レジスト塗布装置
102 スピンチャック
109 処理液ノズル
A、B 貫通孔
W ウェハ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12