(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】シリコンロッドの保護構造体およびシリコンロッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/035 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
C01B33/035
(21)【出願番号】P 2021527521
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021089
(87)【国際公開番号】W WO2020255664
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019111967
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阪井 純也
(72)【発明者】
【氏名】川口 一博
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0214864(US,A1)
【文献】特開平10-102644(JP,A)
【文献】特開平11-303082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237678(US,A1)
【文献】特開2010-047470(JP,A)
【文献】特表2011-525472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C30B 1/00 - 35/00
E04B 2/00 - 2/54
E04B 2/72 - 2/86
E04H 17/00 - 17/26
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンロッドを収容する反応器の底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、
前記枠体から鉛直上方に延び、前記シリコンロッドの収納空間を形成する保護壁面と、を備え、
前記保護壁面は、
メッシュの大きさが2~10メッシュで構成されたメッシュ構造を有していることを特徴とするシリコンロッドの保護構造体。
【請求項2】
前記枠体と、前記反応器の前記底板との間において、前記底板の周囲を囲むように延び、なおかつ水平方向に広がる平面を有する保護板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンロッドの保護構造体。
【請求項3】
前記保護壁面が、前記枠体における複数の点のそれぞれから鉛直上方に延びる分割線に沿って、分割可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコンロッドの保護構造体。
【請求項4】
前記保護壁面には、前記反応器に収容された前記シリコンロッドを取り出すための取り出し窓が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシリコンロッドの保護構造体。
【請求項5】
シリコンロッドを収容する反応器を形成する底板から、前記反応器を前記底板とともに形成する蓋を取り外す取り外し工程を含むシリコンロッドの製造方法であって、
前記底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、前記枠体から鉛直上方に延び、
メッシュの大きさが2~10メッシュで構成されたメッシュ構造を有する保護壁面とを備える保護構造体を設置して前記シリコンロッドの収納空間を形成した後、前記取り外し工程を行うことを特徴とするシリコンロッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンロッドの製造時に用いられる保護構造体およびシリコンロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度ポリシリコンは、半導体用のチョクラルスキー法(CZ法)やフロートゾーン法(FZ法)による単結晶シリコンの生産原料として有用であり、太陽電池用の一方向凝固法によるキャスト法多結晶シリコンの原料としても有用である。
【0003】
ポリシリコンは、通常、シーメンスプロセス(Siemensプロセス)により生産される。シーメンスプロセスでは、シリコン含有ガスと水素とを反応器に投入し、投入したシリコン含有ガスと水素とが、反応器内で通電加熱されているシリコン芯線上で反応して、シリコン芯線上にポリシリコンが析出される。シリコン含有ガスとしては、モノシラン(SiH4)や、トリクロロシラン(SiHCl3)が使用される。
【0004】
最も一般的な反応器は、冷却できる金属製の底板とベル型のシェルで構成され、底板にシリコン芯線を立設する多数の電極と、原料ガスを導入する導入口と、反応器内のガスを排出する排出口と、が設けられている。
【0005】
シリコン芯線は、通常、2本の鉛直棒と1本の水平ブリッジ棒とでコの字型に組まれ、反応器の底板に設けられた電極に垂直に逆U字状に立設される。ポリシリコンをシリコン芯線上に析出させることにより、ポリシリコンは時間と共にそのシリコン芯線の直径方向に成長する。ポリシリコンが所定の直径に達したら、反応を終了させる。成長を終了したシリコンロッド(ポリシリコン)は通常室温まで冷却される。これにより得られる逆U字型シリコンロッドは、高さが数mで、1つのシリコンロッドの重量が数10kgである。
【0006】
シリコンロッドを室温まで冷却した後、シリコンロッドは反応器から取り出される。シーメンスプロセスは、連続プロセスではなく、バッチプロセスであるため、反応器は析出が終了したら一旦運転を停止し、反応器を開放して、得られたシリコンロッドを反応器から取り出す必要がある。反応器の開放は、通常、ベル状の反応器の蓋を、ゆっくり上方に吊り上げることにより行う。シリコンロッドの反応器からの取出しは、逆U字のシリコンロッドを1つずつ吊り上げて反応器の外に移動させ、キャリー台等に載せて運び出す。
【0007】
シリコンロッドを反応器から取り出す際に用いられる保護壁についての技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、通気性のない保護壁を反応器の周囲に設置することにより、反応器の開放時にシリコンロッドの表面が外気により汚染されることを防ぐことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2015/039841(2015年3月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述のような従来技術はシリコンロッドの汚染を防ぐことが目的とされているため、保護壁の外側から内側への視認性が考慮されておらず、保護壁の外側から、反応器の内部にあるシリコンロッドの転倒状態を確認しつつ、反応器を開放することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、シリコンロッドの転倒状況を確認しつつ、反応器の開放作業を行うことができる保護構造体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシリコンロッドの保護構造体は、シリコンロッドを収容する反応器の底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、前記枠体から鉛直上方に延び、前記シリコンロッドの収納空間を形成する保護壁面と、を備え、前記保護壁面は、メッシュ構造を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係るシリコンロッドの製造方法は、シリコンロッドを収容する反応器を形成する底板から、前記反応器を前記底板とともに形成する蓋を取り外す取り外し工程を含むシリコンロッドの製造方法であって、前記底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、前記枠体から鉛直上方に延び、メッシュ構造を有する保護壁面とを備える保護構造体を設置して前記シリコンロッドの収納空間を形成した後、前記取り外し工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、シリコンロッドの転倒状況を確認しつつ、反応器の開放作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る棒状体が底板側穴および蓋側穴に挿入された状態において、反応器の蓋を反応器の底板から取り外す様子を示す側面図である。
【
図2】前記棒状体が底板側穴および蓋側穴に挿入された状態を示す断面図である。
【
図3】前記反応器に突起部がある場合を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例1を説明する図であり、棒状体の治具の概略構成を説明する断面図である。
【
図5】前記治具が反応器の蓋に取り付けられている状態を示す反応器の上面図の一部である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例2を説明する図であり、棒状体の変形例を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る保護構造体が反応器の周囲に配置された状態において、反応器の蓋を反応器の底板から取り外す様子を示す側面図である。
【
図9】前記保護構造体を説明するための図であり、
図7から反応器の蓋を取り外した状態を示す模式図である。
【
図10】前記保護構造体を説明するための図であり、
図9において取り出し窓を開放した状態を示す模式図である。
【
図11】前記保護構造体を説明するための図であり、前記保護構造体を分割している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態の変形例において実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。なお、実施形態中では便宜上、反応器100において、蓋103側を上側、底板101側を下側として上下の方向を示すものとする。なお、以下に示す上下方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に対しこれらの方向に限定されることはない。
【0016】
(反応器の構成)
図1に基づき、反応器100の概略構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る棒状体10が底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入された状態において、反応器100の蓋103を反応器100の底板101から取り外す様子を示す側面図である。
図1における反応器100は、蓋103が底板101から少し吊り上げられた状態を示している。
【0017】
反応器100は、シーメンスプロセス(Siemensプロセス)により、内部に設置したシリコン芯線にポリシリコンを析出させ、シリコンロッド110を生成させる装置である。反応器100は、底板101と、蓋103と、を備えている。
【0018】
底板101は金属製であり、略円形である。底板101には底板101の周囲を取り囲むように底板側フランジ102が設けられている。底板側フランジ102には、底板側穴102aが複数、底板101の周方向に向けて略等間隔に設けられている。底板側穴102aは底板側フランジ102を上下方向に貫通するように設けられている。また、底板101にはシリコン芯線を立設するための多数の電極105が設けられている。シリコン芯線は、通常、2本の鉛直棒と1本の水平ブリッジ棒とでコの字型に組まれており、電極105において底板101に対して垂直に、逆U字状に立設される。前述したように、シリコン芯線にポリシリコンを析出させることでシリコンロッド110が生成される。なお、図の簡略化のため、
図1にはシリコンロッド110および電極105を、1セットのみ図示している。
【0019】
蓋103は、金属製でありベル型形状である。蓋103の下部には蓋103の周囲を取り囲むように蓋側フランジ104が設けられている。蓋側フランジ104には、蓋側穴104aが複数、蓋103の周方向に向けて略等間隔に設けられている。蓋側穴104aは蓋側フランジ104を上下方向に貫通するように設けられ、底板側穴102aに対向する位置に配置されている。
【0020】
なお、もともと底板側フランジ102および蓋側フランジ104に設けられているボルト穴を利用して、底板側穴102aおよび蓋側穴104aとしてもよい。これにより、底板101および蓋103に、新たに底板側穴102aおよび蓋側穴104aを設ける工程を省略することができる。底板側フランジ102に設けられているボルト穴と、蓋側フランジ104に設けられているボルト穴とが対向するように底板101と蓋103の下端とを当接させ、当該ボルト穴にボルトを通して締めることで、反応器100を密閉することができる。
【0021】
(棒状体)
棒状体10について、
図1および
図2に基づき説明する。
図2は、
図1における二点鎖線で囲まれた部分を説明する断面図であり、棒状体10が底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入された状態を示す断面図である。
図2において、点線L1で囲まれた図は、蓋103が吊り上げられる前の状態、点線L2で囲まれた図は、蓋103が底板101から少し吊り上げられた状態を示している。棒状体10(全倒ガイド)は、シリコンロッド110が直立して収容される反応器100を形成する底板101から、反応器100を底板101とともに形成する蓋103を吊り上げ、底板101から取り外す際に用いられる。
【0022】
棒状体10は、
図2のL1に示すように、底板101の周囲に配置された底板側穴102aに挿入される第1部位11と、蓋103の周囲において底板側穴102aに対向する位置に配置された蓋側穴104aに挿入される第2部位12と、を有している。棒状体10には、第1部位11よりも下端部側に、棒状体10の周囲を囲むように棒状体10の軸方向に延伸する抜け防止部13が着脱自在に設けられている。
図2のL2に示すように、抜け防止部13の棒状体10の径方向の長さw2は、底板側穴102aの径w1よりも大きい。
【0023】
また、
図1に示すように、棒状体10を底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入した状態における、底板101から棒状体10の上端までの高さh2は、底板101から直立するシリコンロッド110の上端までの高さh1よりも高いことが好ましく、特には、高さh2は、前記高さh1よりも200~500mm高いことが好ましい。
【0024】
(蓋の取り外し方法)
シリコンロッド110が直立して収容される反応器100を形成する底板101から、反応器100を底板101とともに形成する蓋103を取り外すための取り外し方法の一例について説明する。
【0025】
まず、底板101の周囲に配置された底板側穴102aと、蓋103の周囲において底板側穴102aに対向する位置に配置された蓋側穴104aとに、棒状体10を挿入する(挿入工程)。この挿入工程では、棒状体10を前記底板側穴102aと蓋側穴104aとに挿通する際には、棒状体10の第1部位11よりも下端部側には、抜け防止部13が装着されていない状態で挿通し、挿通後、棒状体10に同部材を装着させる。また、挿入工程において、底板101および蓋103の各周囲に対する棒状体10の挿入を、底板101および蓋103の周方向に対して略等間隔を空けて、少なくとも2箇所以上で行う。棒状体10は、通常6本、好ましくは3本、特に好ましくは2本挿入する。例えば、棒状体10を2本挿入する場合は、反応器100の直径の両端に位置する底板側穴102aおよび蓋側穴104aに棒状体10を挿入する。
【0026】
次に、棒状体10が底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入された状態で、蓋103を上方(
図1における矢印方向)に吊り上げる(吊り上げ工程)。
【0027】
蓋103を吊り上げる際、蓋103の内壁に倒れかかったシリコンロッドの重量により、蓋103が横揺れすることが問題となる。具体的には、蓋103の横揺れにより(1)反応器100内に直立しているシリコンロッド110に蓋103が当たり、当該シリコンロッド110を倒してしまう、または、(2)反応器100の周囲に配置した保護壁に蓋103が当たり、蓋103をそれ以上引き上げることができなくなる等の問題が起こる。
【0028】
しかし、棒状体10を底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入したまま蓋103を吊り上げることにより、蓋103が棒状体10に沿って吊り上げられるため、蓋103を略鉛直方向に沿うように吊り上げることができる。その結果、シリコンロッド110が反応器100の内壁に接触している場合であっても、蓋103を吊り上げる際の蓋103の横揺れを防止し、底板101上に直立しているシリコンロッド110より高い位置まで蓋103を吊り上げることができる。
【0029】
なお、シリコンロッド110の製造方法において、反応器100を底板101とともに形成する蓋103を取り外す取り外し工程として、前記挿入工程と前記吊り上げ工程とを含むことで、下記の効果を奏するシリコンロッド110の製造方法を実現することができる。すなわち、シリコンロッド110が反応器100の内壁に接触している場合であっても、蓋103を吊り上げて反応器100を開放することができるシリコンロッド110の製造方法を実現することができる。
【0030】
(棒状体の設計)
発明者は、棒状体10について種々の解析を行い、棒状体10について下記に基づき設計することにより、蓋103の吊り上げの際の横揺れが最適に防止できることを見出した。
【0031】
詳しくは、棒状体10の直径は、底板側穴102aおよび蓋側穴104aの径に対して、85%~98%、好ましくは90~95%、特に好ましくは92~94%とすることが望ましい。底板側穴102aおよび蓋側穴104aの径に対する棒状体10の直径が、大きすぎると棒状体10が底板側穴102aおよび蓋側穴104aに引っ掛かって、棒状体10の該底板側穴102aおよび蓋側穴104aへの挿通が円滑に行えなくなり、さらには蓋103が円滑に吊り上がらない。底板側穴102aおよび蓋側穴104aの径に対する棒状体10の直径が、小さすぎると、蓋103の横振れ幅が許容範囲以上に大きくなる他、棒状体10の強度が弱くなる。
【0032】
棒状体10の直径は、前記に限らず、蓋側フランジ104下面の横揺れが、底板側フランジ102上面に対して、±100mm以内、好ましくは±70mm以内、特に好ましくは±40mm以内であれば、特に制限はない。底板101上に数十本のシリコン芯線を直立させて数十本のシリコンロッド110を成長させる反応器100では、多数のシリコン芯線を多数の同心円上に立てて成長させる。蓋103に最も近い円周上に立っているシリコン芯線が100~200mmの太さのシリコンロッド110に成長すると、シリコンロッド110と蓋103の内壁との距離は、通常、数100mm程度となる。そのため、蓋103がシリコンロッド110に接触しないようにするためには、蓋103の横揺れは±100mm以内とすることが求められる。
【0033】
また、棒状体10のたわみを考慮する場合、棒状体10の直径は、10~50mm、好ましくは15~45mm、特に好ましくは20~40mmとすることが望ましい。棒状体10の直径が10mmより細いと棒状体10のたわみが大きくなり、蓋103の吊り上げ時の横揺れが大きくなる。棒状体10の直径が50mmより太いと棒状体10が重くなり、作業性が悪くなる。棒状体10の長さは、反応器100で成長したシリコンロッド110の上端より上に蓋103を吊り上げられる長さであれば特に制限はないが、前記したように底板101から棒状体10の上端までの高さh2が、底板101から直立するシリコンロッド110の上端までの高さh1よりも200~500mm高いことが好ましい。棒状体10の通常の長さは、500~3000mmである。
【0034】
(変形例1)
図3および
図4に基づき、本発明の変形例1について説明する。
図3は、反応器100に突起部106がある場合を示す側面図である。
図4は、本発明の変形例1を説明する図であり、棒状体10の治具50・60の概略構成を説明する断面図である。
【0035】
反応器100の蓋103の形状は各種の形状のものが使用されており、例えば、
図3に示すように、蓋103の側壁面103a(外壁)に突起部106が設けられている場合がある。突起部106は、例えば、ノズル、点検用マンホール等の突起構造物等としての機能を有する。
【0036】
蓋103に突起部106がある場合であっても、
図3に示すように、距離w3が距離w4よりも長ければ問題ない。距離w3は、底板101の外縁から底板側穴102aまでの距離、および蓋102の外壁から蓋側穴104aまでの距離である。距離w4は、蓋103の外壁から、蓋103の外壁に設けられた突起部106の蓋103の外壁とは反対側の端部までの距離である。
【0037】
しかしながら、距離w3が距離w4よりも短い場合、底板側フランジ102に設けられた底板側穴102aおよび蓋側フランジ104に設けられた蓋側穴104aに棒状体10を通そうとしても、場所によっては棒状体10が突起部106にぶつかる。その場合、棒状体10を底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入できず、蓋103を鉛直方向に吊り上げることができない。そのため、蓋103に突起部106が設けられ、距離w3が距離w4よりも短い場合、治具50・60を利用する。
【0038】
図4に示すように、治具50は、棒状体10を挿入する底板側穴102aを底板101の周囲に配置するため、底板101の周囲に取り付けられる取付部51を有しているとともに、底板側穴102aとして機能する穴50aが形成されている。また、治具50の下部には、棒状体10の下端部を支持する支持部52が設けられている。治具50を利用する場合、取付部51を底板側フランジ102に形成されている底板側穴102aに下から挿入することで治具50を底板側フランジ102に装着し、棒状体10の第1部位11は、底板側穴102aとして機能する穴50aに挿入される。
【0039】
治具60は、棒状体10を挿入する蓋側穴104aを蓋103の周囲に配置するため、蓋103の周囲に取り付けられる取付部61を有しているとともに、蓋側穴104aとして機能する穴60aが形成されている。治具60を利用する場合、取付部61を蓋側フランジ104に形成されている蓋側穴104aに上から挿入することで治具60を蓋側フランジ104に装着し、棒状体10の第2部位12は、蓋側穴104aとして機能する穴60aに挿入される。治具60の装着例を
図5に示す。
図5は、治具60が反応器100の蓋側フランジ104に取り付けられている状態を示す、反応器100の上面図の一部である。
【0040】
また、治具50・60を利用した場合、底板101の外縁から底板側穴102aとして機能する穴50aまでの距離、および蓋102の外壁から蓋側穴104aとして機能する穴60aまでの距離は、蓋103の外壁から、蓋103の外壁に設けられた突起部106の蓋103の外壁とは反対側の端部までの距離よりも長くなる。そのため、治具50・60を利用すると、突起部106に当たらない位置に、蓋103の側壁面103aに略平行かつ略鉛直方向に、棒状体10を配置することができる。これにより、蓋103をシリコンロッド110の上端の上方まで吊り上げることができる。
【0041】
なお、底板側穴102aとして機能する穴50aおよび蓋側穴104aとして機能する穴60aの径に対する棒状体10の直径は、底板側穴102aおよび蓋側穴104aの径に対する棒状体10の直径と同様の比率となるように設計する。
【0042】
(変形例2)
図6に基づき、本発明の変形例2について説明する。
図6は本発明の実施形態の変形例2を説明する断面図であり、棒状体10の変形例である棒状体10Aが底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入された状態を示す断面図である。
【0043】
蓋103の吊り上げ工程において、棒状体10は、蓋103の吊り上げ状態ごとに長さおよび太さを変更したものを用いてもよい。すなわち、前記
図1で説明した、底板101から棒状体10の上端までの高さh2が、底板101から直立するシリコンロッド110の上端までの高さh1よりも高く設計された長尺棒状体(棒状体10)よりも、短い長さの短尺棒状体(棒状体10A)を用意し、前記長尺棒状体と使い分ける、または併用してもよい。
【0044】
詳述すれば、前記反応器100において、底板101からの蓋103の取り外しに際して、底板側フランジ102と蓋側フランジ104とを固定するボルトを外していくと、該底板101と蓋103との間には位置ズレが生じ易くなる。また、底板101から蓋103を取り外す際には、底板側フランジ102と蓋側フランジ104が部分的に強く合着していることもありえ、この場合、底板側フランジ102と蓋側フランジ104との解離に強い負荷をかけることが要されることもある。さらに、蓋103の吊り上げの当初は、振幅しようとする負荷も特に大きい。したがって、前記ボルトの取り外しから、蓋103の吊り上げ当初までは、蓋103は位置安定性を特に高めておく必要性があり、こうした短尺の棒状体10Aを、前記長尺棒状体と使い分ける、または併用することが望ましい態様になる。
【0045】
棒状体10Aは、太くて短いことが望ましい。具体的には、棒状体10Aの長さは、例えば、300~400mmである。棒状体10Aの直径は、前述した前記底板側穴102aおよび蓋側穴104aの径に対する範囲の中にあっても、特に好ましい範囲である92~97%とすることが望ましく、実寸で示せば、20~30mmであることが望ましい。棒状体10Aは、
図6に示すように、第2部位12よりも上端部側に、棒状体10Aの周囲を囲むように棒状体10Aの軸方向に延伸する持ち手部10A1が設けられている。なお、棒状体10Aは、前記ボルトの取り外しから、蓋103の吊り上げ当初までの位置安定性を高める目的で使用されるため、前記棒状体10の第1部位11よりも下端部側に設けられる、抜け防止部13は必ずしも設ける必要はない。また、図示にはないが、蓋103を1m程度吊り上げた状態で作業を行いたい場合は、棒状体10Aよりも長い棒状体を用いてもよい。
【0046】
(保護構造体)
保護構造体200について、
図7~
図11に基づき説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る保護構造体200が反応器100の周囲に配置された状態において、反応器100の蓋103を反応器100の底板101から取り外す様子を示す側面図である。
図8は、保護構造体200の上面図である。
図9は保護構造体200を説明するための図であり、
図7から反応器100の蓋103を取り外した状態を示す模式図である。
図10は保護構造体200を説明するための図であり、
図9において取り出し窓207を開放した状態を示す模式図である。
図11は、保護構造体200を説明するための図であり、保護構造体200を分割している状態を示す図である。なお、
図9から
図11においては、図面の簡略化のため、保護構造体200において、保護壁面204、保護板205、分割線206および取り出し窓207以外の図示は省略している。
【0047】
保護構造体200は、蓋103を底板101から取り外す際に、底板101に直立しているシリコンロッド110が底板101の外側に倒れて床に飛散することを防ぐためのものである。保護構造体200は、反応器100の周囲に配置されている。保護構造体200は、シリコンロッド110が蓋103に倒れかかっている状態で、蓋103を吊り上げる場合のみに、反応器100の周囲に配置されるものであってもよい。保護構造体200は、
図7および
図8に示すように、第1枠体201(枠体)と、第2枠体202と、複数の第3枠体203と、保護壁面204と、を備えている。
【0048】
第1枠体201は、シリコンロッド110を収容する反応器100の底板101の周囲を取り囲む形状を有する。第1枠体201は、鉛直方向に延びる複数の第3枠体203に接続されており、複数の第3枠体203によって、底板101の周囲を取り囲む位置に支持されている。
【0049】
第2枠体202は、水平方向に延び、複数の第3枠体203の上端と接続されている。第2枠体202は、複数の第3枠体203によって、水平方向に延びるように支持されている。複数の第3枠体203は、それぞれ、第1枠体201および第2枠体202に接続されており、第1枠体201および第2枠体202を支持する。
【0050】
保護壁面204は、第1枠体201から鉛直上方に延び、シリコンロッド110の収納空間210を形成する。保護壁面204は、メッシュ構造を有している。
【0051】
保護構造体200には、第1枠体201と、反応器100の底板101との間においてリング状の保護板205が設けられている。保護板205は、底板101の周囲を囲むように延び、なおかつ水平方向に広がる平面を有する。保護板205は、例えば、反応器100の底板側フランジ102の下面の高さと同じ高さの位置に設けられる。このように、底板101と第1枠体201との間には保護板205が設けられているため、転倒したシリコンロッド110は保護板205上に飛散する。その結果、
図9に示すように、シリコンロッド110の保護構造体200によれば、反応器100の蓋103を取り外した場合であってもシリコンロッド110の床への飛散を防止することができる。
【0052】
保護壁面204には、反応器100に収容されたシリコンロッド110を取り出すための取り出し窓207が形成されている。取り出し窓207は、2本の第4枠体208と2本の第5枠体209とによって囲まれることで形成される。第4枠体208は、鉛直方向に延び、第1枠体201と第2枠体202との間に設けられている。第5枠体209は、水平方向に延び、2本の第4枠体208の間に設けられている。このように、保護壁面204に取り出し窓207が形成されることにより、
図10に示すように、取り出し窓207を開放することで、シリコンロッド110の保護構造体200を解体せずに設置したまま、取り出し窓207によりシリコンロッド110を取り出すことができる。
【0053】
また、保護構造体200は、第1枠体201における複数の点P1のそれぞれから鉛直上方に延びる分割線206に沿って、分割可能である。つまり、
図8の場合、保護構造体200は、
図11に示すように、6つに分割可能である。これにより、例えば、シリコンロッド110の保護構造体200を運搬および収納に適した大きさに分割することで、保護構造体200を効率的に組み立てることができる。
【0054】
以上により、シリコンロッド110の保護構造体200において、第1枠体201から鉛直上方に延び、シリコンロッド110の収納空間を形成する保護壁面204が、メッシュ構造を有している。そのため、シリコンロッド110の保護構造体200では、シリコンロッド110の保護構造体200の外側へのシリコンロッド110の飛散を防止しつつ、保護構造体200外部から内部への視認性を確保することができる。その結果、シリコンロッド110の保護構造体200によれば、例えば、シリコンロッド110の転倒状況を確認しつつ、反応器100の蓋103を吊り上げる作業を行うことができる。
【0055】
(保護構造体の設計)
高さが数mで、一つの重量が数十kgあるシリコンロッド110は、軽い衝撃でも破砕されやすく、蓋103を吊り上げる際に反応器100の外側に向けて倒れだす場合の衝撃や倒れた衝撃で、大きな分布の塊状または粉状のシリコンに破砕される。これらの破片は、ほぼ全量捕集する必要がある。
【0056】
発明者は、種々の解析を行い、反応器100の周辺に下記の設計条件を満たした保護構造体200を設けた状態で蓋103を吊り上げることで、倒れたシリコンロッド110およびその破砕物を保護構造体200で受け止めることができることを見出した。
【0057】
(保護壁面の設計)
通常、成長したシリコンロッド110はU字状であるが、直線状の長さに換算すると4メートルから6メートルとなり、太さが100~200mmである。比重を2.4g/cm3とすると、一つのシリコンロッド110の重量は、75~460kgとなり、18対ロッドの反応器100ではシリコンロッド110の総重量は、1300~8200kgとなる。そのため、保護構造体200の強度が十分でないとシリコンロッド110およびその破砕により発生する破片が保護構造体200を突き破り、開放作業の作業員に危害をおよぼす可能性がある。
【0058】
ここで、発明者は、シリコンロッド110の倒れ出す挙動について観察をした結果、シリコンロッド110は、以下のように保護構造体200内に飛散することを見出した。すなわち、(1)シリコンロッド110は、シリコンロッド110と電極105との接合部分を起点として、反応器100の外側に向かってゆっくりと倒れ込み、(2)保護構造体200にゆっくり寄りかかり、棒状のままでいるか、倒れかかった衝撃で崩壊し、(3)シリコンブロックやシリコン片に分割され、保護構造体200内に飛散する。
【0059】
前記挙動により、保護構造体200の内面のある一点A(図示なし)に、反応器100上のすべてのシリコンロッド110が倒れかかったときにかかる静圧は、保護構造体200と底板側フランジ102からの距離Lと、反応器100内のすべてのシリコンロッド110の重量Wとに依存することが分かる。つまり、距離Lおよび重量Wの値を定めれば、静圧の大きさを推定できる。例えば、保護構造体200の保護壁面204を反応器100の底板側フランジ102の外径より1m以内に設置した場合は、保護構造体200の保護壁面204が受ける静圧は、シリコンロッド110の総重量の半分以下となる。
【0060】
(保護壁面のメッシュ)
作業効率を高める必要性から、軽量であるほど設置する作業が容易となるので、保護壁面204は金属製のメッシュ構造とすることが好ましい。保護構造体200の軽量化のため、保護壁面204のメッシュの大きさは、成長したシリコンロッド110の崩壊テストを行い、崩壊により発生するシリコン片の分布を求め、シリコン片の99%以上を捕集できるメッシュの大きさとすることが望ましい。メッシュがあまり小さくなりすぎると、保護構造体200外部から内部への視認性が悪くなるため、具体的には、最適な保護壁面204のメッシュの大きさは2~10メッシュ、好ましくは3~7メッシュ、特に好ましくは3~5メッシュであることが望ましい。
【0061】
また、前述の静圧に基づき、保護構造体200のメッシュの金網の太さを決定することが望ましい。具体的には、保護壁面204の金網の太さは、16番線~20番線、好ましくは17番線~19番線、特に好ましくは18番線とすることが望ましい。前記構成とすることで、シリコンロッド110の倒れ込みよる静圧を許容することができる。
【0062】
(分割の設計)
析出したシリコンロッド110が蓋103の内壁に倒れかかっているかどうかは、蓋103の側壁面103aに設けられた覗き窓(図示なし)から確認する、または蓋103を少し吊り上げてその隙間から確認するしか方法がない。したがって、シリコンロッド110が蓋103の内壁への倒れかかっていることが確認された場合は、蓋103の吊り上げを中止して、速やかに保護構造体200を組み立てる必要があり、保護構造体200の組み立て作業の迅速性が必要となる。
【0063】
保護構造体200を分割構造にすることにより、分割された保護構造体200の個々の重量はさらに軽量となり、保護構造体200の設置作業が容易となる。保護構造体200の移動性をよくするために分割式とする際の分割数の選定では、人力で運搬できる重量を目安として分割数を選定することが望ましい。具体的には、分割された保護構造体200の各重量が80~180kg、好ましくは100~160kg、特に好ましくは120~150kgとなるように分割数を決定することが望ましい。
【0064】
分割形式の保護構造体200の組み立て例を説明する。反応器100の周辺をリング状に囲むように、各分割した保護構造体200を密接させて設置し、隣接している分割した保護構造体200の接合部を、クイックカップリングで固定し、一体化した保護構造体200を組み立てる。
【0065】
(第1枠体の設計)
保護構造体200の第1枠体201が形成する円の直径は、反応器100の底板側フランジ102および蓋側フランジ104の外径より大きければよい。具体的には、第1枠体201が形成する円の直径を、底板側フランジ102および蓋側フランジ104の外径より0~1000mm、好ましくは200~700mm、特に好ましくは300~600mm、だけ大きい半径とすることが望ましい。これにより、蓋103を保護構造体200内でスムーズに吊り上げることができ、シリコンロッド110が保護壁面204に倒れかかることにより受ける保護壁面204に対する静圧を小さくすることができる。
【0066】
また、保護構造体200に倒れた衝撃で崩壊したシリコンロッド110は、シリコンブロックやシリコン片に分割され、保護構造体200内に飛散する。発生したシリコン片の粒径または保護構造体200の高さによっては、保護構造体200の上を飛び越えるシリコンブロックやシリコン片があることが発明者により発見された。
【0067】
そこで、発明者はシリコンロッド110の倒壊の衝撃で発生するシリコンブロックやシリコン片のサイズの分布を測定した。その結果、長さが数mで、径が100~200mmのシリコンロッド110が倒壊して破砕した場合に発生するシリコン片の最小サイズは10mm程度以上であることが判明した。このような飛散するシリコンロッド110をすべて受け止めるためには、保護構造体200の内面から反応器100の外面までの距離が500mm、好ましくは300mm、特に好ましくは250mm、となるように第1枠体201を設計することが望ましい。
【0068】
(保護構造体の高さ)
保護構造体200の高さは、反応器100設置されている反応器室内の床から、倒壊せずに反応器100の底板101に直立しているシリコンロッド110の上端までの高さH(図示なし)より高ければよい。保護構造体200の高さが高さHよりも高すぎると、保護構造体200内のシリコンロッド110を、該保護構造体200を超えて取り出そうとした際に、吊り上げる高さを過度に高くしなければならず、作業性が悪くなり好ましくない。
【0069】
また、保護構造体200の高さが高さHよりも低すぎると、シリコンロッド110が反応器100の外側に向かってに倒れたときに、シリコンロッド110の破砕で発生するシリコン片の保護構造体200の飛び越しを受け止めることができない。そのため、保護構造体200の高さは、高さHよりも-200mm~800mm、好ましくは、0mm~500mm、特に好ましくは0~200mm高い高さとすることが望ましい。
【0070】
(シリコン片の分布の評価方法)
シリコンロッド110の崩壊により発生するシリコン片の分布の評価は以下の通り行った。反応器100内で倒壊せずに正常に反応器100から取出されたシリコンロッド110を平らな床に起立させ、そのシリコンロッド110をシリコンロッド110の下端を起点として倒し、その倒壊で発生するシリコン片のサイズの重量分布を測定した。倒れたシリコンロッド110が直接床面に接触しないように、平らな床において倒すシリコンロッド110の周辺には、他のシリコンロッド110を横倒して敷き詰めた。
【0071】
(保護構造体を用いた場合のシリコンロッドの製造方法)
保護構造体200を用いた場合のシリコンロッドの製造方法の一例について説明する。まず、シリコンロッド110の析出が終了した後、反応器100の底板側フランジ102と蓋側フランジ104のボルト締めを開放する。その後、底板101の周囲に配置された底板側穴102aと、蓋103の周囲において底板側穴102aに対向する位置に配置された蓋側穴104aとに、棒状体10を挿入する。
【0072】
次に、蓋103の内壁にシリコンロッド110が倒れかかっているかいないかを確認する。蓋103の内壁にシリコンロッド110が倒れかかっている場合、底板101の周囲を取り囲む形状を有する第1枠体201と、第1枠体201から鉛直上方に延び、メッシュ構造を有する保護壁面204とを備える保護構造体200を反応器100の周囲に設置してシリコンロッド110の収納空間210を形成する。その後、棒状体10が底板側穴102aおよび蓋側穴104aに挿入された状態で、蓋103を上方に吊り上げる。
【0073】
これにより、蓋103の吊り上げ時に、蓋103の内壁にシリコンロッド110が倒れかかった状態の蓋103をほぼ横振れさせることなく吊り上げることができるので、横振れにより、蓋103が保護構造体200に引っかかることを防止することができる。そのため、蓋103の内壁にシリコンロッド110が倒れかかった状態であっても、保護構造体200を反応器100の周囲に設置したまま蓋103の吊り上げ作業を行うことができる。その結果、保護構造体200の外側へのシリコンロッド110の飛散を防止しつつ、蓋103の吊り上げ作業を行うことができる。
【0074】
また、蓋103をほぼ横振れさせることなく吊り上げることができるので、底板101内のシリコンロッド110のドミノ倒しを防止できる。また、シリコンロッド110の収穫率を下げることなく、シリコンロッド110の崩壊により発生するシリコン片の反応器室の床への飛散を防止することができ、開放作業の作業員の危険性を回避できる。さらに、蓋103の開放作業が短時間で終了し、次の析出反応を速やかに行うことができ、生産性が向上する。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るシリコンロッドの保護構造体は、シリコンロッドを収容する反応器の底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、前記枠体から鉛直上方に延び、前記シリコンロッドの収納空間を形成する保護壁面と、を備え、前記保護壁面は、メッシュ構造を有していることを特徴とする。
【0076】
前記構成によれば、シリコンロッドの保護構造体において、枠体から鉛直上方に延び、シリコンロッドの収納空間を形成する保護壁面が、メッシュ構造を有している。そのため、前記シリコンロッドの保護構造体では、シリコンロッドの保護構造体の外側へのシリコンロッドの飛散を防止しつつ、当該保護構造体外部から内部への視認性を確保することができる。その結果、前記シリコンロッドの保護構造体によれば、例えば、シリコンロッドの転倒状況を確認しつつ、反応器の蓋を吊り上げる作業を行うことができる。
【0077】
また、前記シリコンロッドの保護構造体では、前記枠体と、前記反応器の前記底板との間において、前記底板の周囲を囲むように延び、なおかつ水平方向に広がる平面を有する保護板が設けられていてもよい。
【0078】
前記構成によれば、反応器の底板と枠体との間には保護板が設けられているため、転倒したシリコンロッドは当該保護板上に飛散する。その結果、前記シリコンロッドの保護構造体によれば、シリコンロッドの床への飛散を防止することができる。
【0079】
さらに、前記シリコンロッドの保護構造体では、前記保護壁面が、前記枠体における複数の点のそれぞれから鉛直上方に延びる分割線に沿って、分割可能であってもよい。
【0080】
前記構成によれば、前記シリコンロッドの保護構造体は、分割線に沿って分割することができる。これにより、例えば、前記シリコンロッドの保護構造体を運搬および収納に適した大きさに分割することで、効率的に組み立てることができる前記シリコンロッドの保護構造体を実現することができる。
【0081】
また、前記シリコンロッドの保護構造体では、前記保護壁面には、前記反応器に収容された前記シリコンロッドを取り出すための取り出し窓が形成されていてもよい。
【0082】
前記構成によれば、シリコンロッドの保護構造体を解体せずに設置したまま、取り出し窓によりシリコンロッドを取り出すことができる。
【0083】
本発明の一態様に係るシリコンロッドの製造方法は、シリコンロッドを収容する反応器を形成する底板から、前記反応器を前記底板とともに形成する蓋を取り外す取り外し工程を含むシリコンロッドの製造方法であって、前記底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、前記枠体から鉛直上方に延び、メッシュ構造を有する保護壁面とを備える保護構造体を設置して前記シリコンロッドの収納空間を形成した後、前記取り外し工程を行うことを特徴とする。
【0084】
前記構成によれば、前記シリコンロッドの製造方法における取り外し工程は、底板の周囲を取り囲む形状を有する枠体と、枠体から鉛直上方に延び、メッシュ構造を有する保護壁面とを備える保護構造体を設置してシリコンロッドの収納空間を形成した後、行われる。これにより、取り外し工程において、シリコンロッドの保護構造体の外側へのシリコンロッドの飛散が防止され、シリコンロッドの転倒状況を確認しつつ、反応器の蓋の取り外し作業を行うことができる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
10・10A 棒状体
11 第1部位
12 第2部位
50・60 治具
51・61 取付部
100 反応器
101 底板
102 底板側フランジ
102a 底板側穴
103 蓋
103a 側壁面(外壁)
104 蓋側フランジ
104a 蓋側穴
105 電極
106 突起部
110 シリコンロッド
200 保護構造体
201 第1枠体(枠体)
204 保護壁面
205 保護板
206 分割線
207 取り出し窓
210 収納空間