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特許7536039基板洗浄装置、研磨装置、バフ処理装置、基板洗浄方法、基板処理装置、および機械学習器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】基板洗浄装置、研磨装置、バフ処理装置、基板洗浄方法、基板処理装置、および機械学習器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240809BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01L21/304 644C
H01L21/304 648G
H01L21/304 621D
H01L21/304 622R
B08B3/02 B
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2021563952
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045509
(87)【国際公開番号】W WO2021117685
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2019225242
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知淳
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-515171(JP,A)
【文献】特開2015-220402(JP,A)
【文献】特開2015-185571(JP,A)
【文献】特開2016-92158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
B08B 3/04
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
洗浄液の存在下で前記基板に摺接することで前記基板を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、
前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定する制御部と、を備え、
前記表面性状測定装置は、所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該洗浄具の表面データを取得し、
前記制御部は、取得された表面データの差分に基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記表面データの差分に対する所定の閾値を予め記憶しており、前記差分が前記所定の閾値に到達した場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記表面性状測定装置は、前記表面データを取得する撮像装置と、前記撮像装置を移動させるカメラ移動機構とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄具を、該洗浄具が前記基板の表面に接触する洗浄位置と、該洗浄具が前記基板の表面から離れた待機位置との間で移動させる洗浄具移動ユニットをさらに備え、
前記表面性状測定装置は、前記待機位置に移動された前記洗浄具の表面データを取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記洗浄具を新しい洗浄具に交換した後にブレークイン確認動作を実行するように構成されており、
前記ブレークイン確認動作は、
所定枚数のダミー基板を前記新しい洗浄具でスクラブ洗浄するごとに、前記表面性状測定装置を用いて、前記新しい洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該新しい洗浄具の表面データを取得し、
取得された表面データの差分に基づいて、前記新しい洗浄具のブレークインの完了を決定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記表面データは、二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、および偏光画像データのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記表面データは、前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフであり、
所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも大きくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項6に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項7に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
基板を保持する基板保持部と、
洗浄液の存在下で前記基板に摺接することで前記基板を洗浄する洗浄具と、
前記洗浄具の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、
前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定する制御部と、を備え、
前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、
前記制御部は、
所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の1つの測定ポイントにおける前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを前記洗浄具の表面データとして取得し、
所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項10】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項9に記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
洗浄液を基板に供給しつつ、前記洗浄液の存在下で洗浄具を前記基板に摺接させることにより、前記基板を洗浄し、
所定枚数の前記基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該洗浄具の表面データを取得し、
取得された表面データの差分に基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項12】
前記表面データの差分を、所定の閾値と比較し、
前記差分が前記所定の閾値に到達した場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項11に記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記表面データを、カメラ移動機構によって移動される撮像装置によって取得することを特徴とする請求項11または12に記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
前記表面データは、前記洗浄具が前記基板の表面から離れた待機位置で取得されることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
前記洗浄具を新しい洗浄具に交換した後にブレークイン確認動作を実行し、
前記ブレークイン確認動作は、
所定枚数のダミー基板を前記新しい洗浄具でスクラブ洗浄するごとに、前記新しい洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該新しい洗浄具の表面データを取得し、
取得された表面データの差分に基づいて、前記新しい洗浄具のブレークインの完了を決定することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。
【請求項16】
前記表面データを取得する工程は、前記測定ポイントにおける前記洗浄具の二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、および偏光画像データのうちのいずれかを取得する工程であることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。
【請求項17】
前記表面データを取得する工程は、前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを取得する工程であり、
所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも大きくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項16に記載の基板洗浄方法。
【請求項18】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項17に記載の基板洗浄方法。
【請求項19】
洗浄液を基板に供給しつつ、前記洗浄液の存在下で洗浄具を前記基板に摺接させることにより、前記基板を洗浄し、
所定枚数の前記基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の1つの測定ポイントで前記洗浄具の表面データを取得し、
取得された表面データの差分に基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定する工程を含み、
前記表面データを取得する工程は、撮像装置によって取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを取得する工程であり、
前記洗浄具の交換時期を決定する工程は、所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する工程であることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項20】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項19に記載の基板洗浄方法。
【請求項21】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、
前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記研磨パッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、
前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、 前記表面性状測定装置は、所定枚数の基板を研磨するごとに、前記研磨パッドの少なくとも2つの測定ポイントで該研磨パッドの表面データを取得し、
前記表面データは、撮像装置よって取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフであり、
前記制御部は、所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも大きくなった場合に、前記研磨パッドが交換時期に達したと決定することを特徴とする研磨装置。
【請求項22】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記研磨パッドが交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項21に記載の研磨装置。
【請求項23】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、
前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記研磨パッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、
前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、
前記制御部は、
所定枚数の基板を研磨するごとに、前記研磨パッドの1つの測定ポイントにおける前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを前記研磨パッドの表面データとして取得し、
所定枚数の基板を研磨するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記研磨パッドが交換時期に達したと決定することを特徴とする研磨装置。
【請求項24】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記研磨パッドが交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項23に記載の研磨装置。
【請求項25】
基板を保持するバフテーブルと、
前記基板よりも小径であり、前記基板に接触させて仕上げ処理を行うバフ部材と、
前記バフ部材を保持するバフヘッドと、
前記バフ部材の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、
前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記バフヘッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、
前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、 前記表面性状測定装置は、所定枚数の基板を仕上げ処理をするごとに、前記バフ部材の少なくとも2つの測定ポイントで該バフ部材の表面データを取得し、
前記表面データは、撮像装置よって取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフであり、
前記制御部は、所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記バフ部材が交換時期に達したと決定することを特徴とするバフ処理装置。
【請求項26】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記バフ部材が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項25に記載のバフ処理装置。
【請求項27】
基板を保持するバフテーブルと、
前記基板よりも小径であり、前記基板に接触させて仕上げ処理を行うバフ部材と、
前記バフ部材を保持するバフヘッドと、
前記バフ部材の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、
前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記バフヘッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、
前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、
前記制御部は、
所定枚数の基板を仕上げ処理するごとに、前記バフ部材の1つの測定ポイントにおける前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを前記バフ部材の表面データとして取得し、
所定枚数の基板を研磨するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記バフ部材が交換時期に達したと決定することを特徴とするバフ処理装置。
【請求項28】
さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記バフ部材が交換時期に達したと決定することを特徴とする請求項27に記載のバフ処理装置。
【請求項29】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の基板洗浄装置、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の研磨装置、および請求項25乃至28のいずれか一項に記載のバフ処理装置の少なくともいずれかを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項30】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の基板洗浄装置に設けられた洗浄具の交換時期、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の研磨装置に設けられた研磨パッドの交換時期、および請求項25乃至28のいずれか一項に記載のバフ処理装置に設けられたバフ部材の交換時期の少なくとも1つを学習する機械学習器であって、
前記表面データを少なくとも含む状態変数を取得する状態観測部と、
前記状態変数に関連付けて、前記洗浄具を交換すべきか否か、前記研磨パッドを交換すべきか否か、および前記バフ部材を交換すべきか否かの少なくとも1つを判定した交換データを取得する交換データ取得部と、
前記状態変数および前記交換データとの組み合わせからなる訓練データセットに基づいて、前記洗浄具の適切な交換時期、前記研磨パッドの適切な交換時期、および前記バフ部材の適切な交換時期の少なくとも1つを学習する学習部と、を備えたことを特徴とする機械学習器。
【請求項31】
前記状態変数には、前記洗浄具を回転自在に支持する軸受に取り付けられた振動計の出力値がさらに含まれることを特徴とする請求項30に記載の機械学習器。
【請求項32】
前記状態変数には、前記洗浄具を回転させる電動機に設けられたトルクセンサの出力値がさらに含まれることを特徴とする請求項30または31に記載の機械学習器。
【請求項33】
前記状態変数には、洗浄具洗浄装置の洗浄槽から排出される洗浄液内のパーティクルの数を測定するパーティクルカウンタの測定値がさらに含まれることを特徴とする請求項30乃至32のいずれか一項に記載の機械学習器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、ガラス基板、液晶パネルなどの基板に洗浄液を供給しながら、該基板を洗浄具でスクラブ洗浄する基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。さらに、本発明は、基板の表面を研磨する研磨装置に関する。さらに、本発明は、研磨処理後の基板に対して基板よりも小径の接触部材を基板に押し付けて相対運動させながら、基板をわずかに追加研磨したり、基板の付着物を除去および洗浄したりするバフ処理装置に関する。さらに、本発明は、基板洗浄装置、研磨装置、およびバフ処理装置の少なくともいずれかを搭載した基板処理装置に関する。さらに、本発明は、洗浄具の交換時期、研磨パッドの交換時期、およびバフ部材の交換時期の少なくとも1つを学習する機械学習器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板、ガラス基板、液晶パネルなどの基板の表面を洗浄する方法として、基板の表面に洗浄液(例えば、薬液または純水)を供給しつつ、該基板の表面に洗浄具(例えば、ロールスポンジ、ペンスポンジ、または洗浄ブラシ)を擦り付けるスクラブ洗浄方法が用いられている(例えば、特許文献1、および特許文献2参照)。スクラブ洗浄は、基板と洗浄具の少なくともいずれか一方を回転させた状態で、洗浄液を基板に供給しつつ、洗浄具を基板に摺接させることによって行われる。例えば、基板の一例であるウエハの研磨処理後に、該ウエハの表面に純水(洗浄液)を供給しつつ、回転するウエハの表面に回転するロールスポンジ(洗浄具)を摺接させることにより、研磨屑および研磨液に含まれる砥粒などのパーティクル(汚染物質)をウエハの表面から除去している。基板の表面から除去されたパーティクルは、洗浄具内に蓄積されるか、または洗浄液とともに基板から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6600470号公報
【文献】特開2015-220402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクラブ洗浄は、洗浄具を基板に直接接触させて洗浄を行うため、パーティクルの除去率、すなわち、洗浄効率が高いという利点を有している。その一方で、基板のスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、洗浄具が劣化していく。洗浄具の劣化は基板の洗浄効率の低下につながる。また、洗浄具の劣化が大きく進むと、基板のスクラブ洗浄中に洗浄具から摩耗粉が発生して、基板の表面に付着することがある。この場合、洗浄具から発生した摩耗粉によって基板が汚染されてしまう。
【0005】
さらに、洗浄具を長期間使用すると、洗浄具に一旦蓄積されたパーティクルが、基板のスクラブ洗浄中に洗浄具から離れて、基板の表面に再付着してしまうことがある。すなわち、スクラブ洗浄では、洗浄具に蓄積されたパーティクルによって、基板の逆汚染が生じてしまうおそれがある。このような基板の汚染および洗浄効率の低下を抑制するためには、洗浄具を適切なタイミングで新しい洗浄具に交換する必要がある。
【0006】
従来の基板洗浄装置では、洗浄具の交換時期は、主として、品質管理(QC:Quality Control)および/または作業員の経験則に基づいて予め決定されていた。この理由は、主として、基板の洗浄プロセスおよび洗浄レシピに応じて、洗浄具の交換時期が異なること、および実際にスクラブ洗浄に用いられている洗浄具の表面性状を基板洗浄装置内で測定することが難しかったからである。すなわち、洗浄具の適切な交換時期を精度よく決定するためには、様々な洗浄プロセスおよび洗浄レシピにしたがって実際にスクラブ洗浄を行っている洗浄具の表面性状を観察および/または測定する必要がある。しかしながら、洗浄具の表面性状を基板処理装置内で観察および/または測定する具体的な手法が確立されていなかったため、適切な交換時期を決定することが難しかった。
【0007】
洗浄具を予め決定された交換時期に基づいて交換する場合、洗浄具の使用時間が洗浄具を交換すべき適切な時期を超えてしまうおそれがある。この場合、既に交換時期に到達した洗浄具によって基板がスクラブ洗浄されるため、基板の逆汚染が発生して、歩留まりが低下するおそれがある。あるいは、未だ洗浄具が使用可能であるにもかかわらず、洗浄具の交換を実施してしまうこともある。この場合、基板洗浄装置のランニングコストが増加してしまう。さらに、洗浄具を交換するために基板洗浄装置を停止させると、基板洗浄装置のスループットが低下して、基板の製造コストが増加するおそれもある。
【0008】
さらに、基板のスクラブ洗浄を行う前に行われる基板の研磨処理の一例として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理が知られている。このCMP処理を行うCMP装置では、回転する研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押し付けて基板の表面を研磨する。基板の化学的機械的研磨処理を繰り返すにつれて、研磨パッドも劣化していくため、研磨パッドも適切なタイミングで新しい研磨パッドに交換する必要がある。そして、適切な研磨性能の確保は、高いスループットの確保とトレードオフの関係にある。すなわち、適切な研磨性能を確保するために、頻繁に研磨パッドを交換すると、スループットが低下してしまう。そのため、適切な研磨性能と、高いスループットとの両者を実現可能なタイミングで、研磨パッドを交換することが求められる。
【0009】
さらに、基板の研磨処理と洗浄処理との間で、基板よりも小径の接触部材を基板に押し付けて相対運動させながら、基板をわずかに追加研磨したり、基板の付着物を除去および洗浄したりするバフ処理を行うことがある。バフ処理を実施するバフユニットでは、回転するバフテーブルに保持された基板に、バフヘッドに保持されたバフパッドと称される接触部材を押しつけることで、基板の表面をわずかに処理したり、基板の表面に付着した異物を除去したりする。バフ処理を繰り返すにつれて、バフパッドも劣化していくため、バブパッドも適切なタイミングで新しいバフパッドに交換する必要がある。そして、適切なバフ性能の確保も、高いスループットの確保とトレードオフの関係にある。すなわち、適切なバフ性能を確保するために、頻繁にバフパッドを交換すると、スループットが低下してしまう。そのため、適切なバフ性能と、高いスループットとの両者を実現可能なタイミングで、バフパッドを交換することが求められる。
【0010】
従来のCMP装置には、研磨パッドを採用した研磨ユニット、バフパッドを採用したバフユニット、および洗浄具を採用した洗浄ユニットが一体になって構成されているものがある。このようなCMP装置において、研磨パッド、バフパッド、洗浄具のいずれか1つを交換するためだけにCMP装置全体を停止させると、CMP装置全体のスループットが低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明においては、性能およびスループットの観点の両面で改善された基板洗浄装置、研磨装置、バフ処理装置、基板処理装置、およびこれらのいずれかに用いられる機械学習器、並びに基板洗浄方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様では、洗浄具の適切な交換時期を決定することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。さらに、本発明の一態様では、研磨パッドの適切な交換時期を決定することができる研磨装置を提供することを目的とする。さらに、本発明の一態様では、バフパッドの適切な交換時期を決定することができるバフ処理装置を提供することを目的とする。さらに、本発明の一態様では、このような基板洗浄装置、研磨装置、およびバフ処理装置のいずれかを備えた基板処理装置を提供することを目的とする。さらに、本発明の一態様では、洗浄具の適切な交換時期を予測することが可能な機械学習器を提供することを目的とする。さらに、本発明の一態様では、研磨パッドの適切な交換時期を予測することが可能な機械学習器を提供することを目的とする。さらに、本発明の一態様では、バフパッドの適切な交換時期を予測することが可能な機械学習器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、基板を保持する基板保持部と、洗浄液の存在下で前記基板に摺接することで前記基板を洗浄する洗浄具と、前記洗浄具の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定する制御部と、を備え、前記表面性状測定装置は、所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該洗浄具の表面データを取得し、前記制御部は、取得された表面データの差分に基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定することを特徴とする基板洗浄装置が提供される。
【0013】
一態様では、前記制御部は、前記表面データの差分に対する所定の閾値を予め記憶しており、前記差分が前記所定の閾値に到達した場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する。
一態様では、前記表面性状測定装置は、前記表面データを取得する撮像装置と、前記撮像装置を移動させるカメラ移動機構とを備える。
一態様では、前記洗浄具を、該洗浄具が前記基板の表面に接触する洗浄位置と、該洗浄具が前記基板の表面から離れた待機位置との間で移動させる洗浄具移動ユニットをさらに備え、前記表面性状測定装置は、前記待機位置に移動された前記洗浄具の表面データを取得する。
【0014】
一態様では、前記制御部は、前記洗浄具を新しい洗浄具に交換した後にブレークイン確認動作を実行するように構成されており、前記ブレークイン確認動作は、所定枚数のダミー基板を前記新しい洗浄具でスクラブ洗浄するごとに、前記表面性状測定装置を用いて、前記新しい洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該新しい洗浄具の表面データを取得し、取得された表面データの差分に基づいて、前記新しい洗浄具のブレークインの完了を決定することを特徴とする基板洗浄装置が提供される。
一態様では、前記表面データは、二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、および偏光画像データのうちのいずれかである。
一態様では、前記表面データは、前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフであり、所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも大きくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する。
一態様では、さらに、スペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きの変化量が所定の閾値以下になった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する。
【0015】
一態様では、基板を保持する基板保持部と、洗浄液の存在下で前記基板に摺接することで前記基板を洗浄する洗浄具と、前記洗浄具の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定する制御部と、を備え、前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、前記制御部は、所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の1つの測定ポイントにおける前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを前記洗浄具の表面データとして取得し、所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定することを特徴とする基板洗浄装置が提供される。
【0016】
一態様では、洗浄液を基板に供給しつつ、前記洗浄液の存在下で洗浄具を前記基板に摺接させることにより、前記基板を洗浄し、所定枚数の前記基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該洗浄具の表面データを取得し、取得された表面データの差分に基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定することを特徴とする基板洗浄方法が提供される。
【0017】
一態様では、前記表面データの差分を、所定の閾値と比較し、前記差分が前記所定の閾値に到達した場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する。
一態様では、前記表面データを、カメラ移動機構によって移動される撮像装置によって取得する。
一態様では、前記表面データは、前記洗浄具が前記基板の表面から離れた待機位置で取得される。
【0018】
一態様では、前記洗浄具を新しい洗浄具に交換した後にブレークイン確認動作を実行し、前記ブレークイン確認動作は、所定枚数のダミー基板を前記新しい洗浄具でスクラブ洗浄するごとに、前記新しい洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで該新しい洗浄具の表面データを取得し、取得された表面データの差分に基づいて、前記新しい洗浄具のブレークインの完了を決定することを特徴とする基板洗浄方法が提供される。
一態様では、前記表面データを取得する工程は、前記測定ポイントにおける前記洗浄具の二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、および偏光画像データのうちのいずれかを取得する工程である。
一態様では、前記表面データを取得する工程は、前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを取得する工程であり、
所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも大きくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する。
【0019】
一態様では、洗浄液を基板に供給しつつ、前記洗浄液の存在下で洗浄具を前記基板に摺接させることにより、前記基板を洗浄し、所定枚数の前記基板をスクラブ洗浄するごとに、前記洗浄具の1つの測定ポイントで前記洗浄具の表面データを取得し、取得された表面データの差分に基づいて、前記洗浄具の交換時期を決定する工程を含み、前記表面データを取得する工程は、撮像装置によって取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを取得する工程であり、前記洗浄具の交換時期を決定する工程は、所定枚数の基板をスクラブ洗浄するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記洗浄具が交換時期に達したと決定する工程であることを特徴とする基板洗浄方法が提供される。
【0020】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨パッドの表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記研磨パッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、前記表面性状測定装置は、所定枚数の基板を研磨するごとに、前記研磨パッドの少なくとも2つの測定ポイントで該研磨パッドの表面データを取得し、前記表面データは、撮像装置よって取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフであり、前記制御部は、所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも大きくなった場合に、前記研磨パッドが交換時期に達したと決定することを特徴とする研磨装置が提供される。
【0021】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨パッドの表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記研磨パッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、前記制御部は、所定枚数の基板を研磨するごとに、前記研磨パッドの1つの測定ポイントにおける前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを前記研磨パッドの表面データとして取得し、所定枚数の基板を研磨するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記研磨パッドが交換時期に達したと決定することを特徴とする研磨装置が提供される。
【0022】
一態様では、基板を保持するバフテーブルと、前記基板よりも小径であり、前記基板に接触させて仕上げ処理を行うバフ部材と、前記バフ部材を保持するバフヘッドと、前記バフ部材の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記バフヘッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、前記表面性状測定装置は、所定枚数の基板を仕上げ処理をするごとに、前記バフ部材の少なくとも2つの測定ポイントで該バフ部材の表面データを取得し、前記表面データは、撮像装置よって取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフであり、前記制御部は、所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記バフ部材が交換時期に達したと決定することを特徴とするバフ処理装置が提供される。
【0023】
一態様では、基板を保持するバフテーブルと、前記基板よりも小径であり、前記基板に接触させて仕上げ処理を行うバフ部材と、前記バフ部材を保持するバフヘッドと、前記バフ部材の表面性状を表す表面データを非接触式に取得する表面性状測定装置と、前記表面性状測定装置に接続され、前記表面データに基づいて、前記バフヘッドの交換時期を決定する制御部と、を備え、前記表面性状測定装置は、ハイパースペクトル画像データを取得可能な撮像装置であり、前記制御部は、所定枚数の基板を仕上げ処理するごとに、前記バフ部材の1つの測定ポイントにおける前記ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを前記バフ部材の表面データとして取得し、所定枚数の基板を研磨するごとに得られる、前記測定ポイントでの所定の波長における前記スペクトル強度の差分が所定の閾値よりも小さくなった場合に、前記バフ部材が交換時期に達したと決定することを特徴とするバフ処理装置が提供される。
【0024】
一態様では、上記基板洗浄装置、上記研磨装置、および上記バフ処理装置の少なくともいずれかを備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0025】
一態様では、上記基板洗浄装置に設けられた洗浄具の交換時期、上記研磨装置に設けられた研磨パッドの交換時期、および上記バフ処理装置に設けられたバフ部材の交換時期の少なくとも1つを学習する機械学習器であって、前記表面データを少なくとも含む状態変数を取得する状態観測部と、前記状態変数に関連付けて、前記洗浄具を交換すべきか否か、前記研磨パッドを交換すべきか否か、および前記バフ部材を交換すべきか否かの少なくとも1つを判定した交換データを取得する交換データ取得部と、前記状態変数および前記交換データとの組み合わせからなる訓練データセットに基づいて、前記洗浄具の適切な交換時期、前記研磨パッドの適切な交換時期、および前記バフ部材の適切な交換時期の少なくとも1つを学習する学習部と、を備えたことを特徴とする機械学習器が提供される。
【0026】
一態様では、前記状態変数には、前記洗浄具を回転自在に支持する軸受に取り付けられた振動計の出力値がさらに含まれる。
一態様では、前記状態変数には、前記洗浄具を回転させる電動機に設けられたトルクセンサの出力値がさらに含まれる。
一態様では、前記状態変数には、洗浄具洗浄装置の洗浄槽から排出される洗浄液内のパーティクルの数を測定するパーティクルカウンタの測定値がさらに含まれる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、実際にスクラブ洗浄に用いられている洗浄具の表面性状(表面形状、および汚染度など)を表す表面データを、劣化具合の異なる少なくとも2つの測定ポイントで取得し、その差分に基づいて洗浄具の交換時期を判断する。したがって、洗浄具の適切な交換時期を決定することができる。
さらに、本発明によれば、実際に基板の研磨に用いられている研磨パッドの表面性状(表面形状、および汚染度など)を表す表面データを、劣化具合の異なる少なくとも2つの測定ポイントで取得し、その差分に基づいて研磨パッドの交換時期を判断する。したがって、研磨パッドの適切な交換時期を決定することができる。
さらに、本発明によれば、実際に基板のバフ処理に用いられているバフパッドの表面性状(表面形状、および汚染度など)を表す表面データを、劣化具合の異なる少なくとも2つの測定ポイントで取得し、その差分に基づいてバフパッドの交換時期を判断する。したがって、バフパッドの適切な交換時期を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、一実施形態に係る基板洗浄装置を備えた基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図2図2は、第1洗浄ユニットを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す上側ロールスポンジを回転自在に支持する上側ロールアームの一例を模式的に示す側面図である。
図4図4は、洗浄具移動ユニットの一例を示す概略斜視図である。
図5A図5Aは、図2に示す上側ロールスポンジを模式的に示す斜視図である。
図5B図5Bは、図5Aに示す上側ロールスポンジの変形例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、スクラブ洗浄中の上側ロールスポンジと基板との関係を示す概略斜視図である。
図7図7は、スクラブ洗浄中の上側ロールスポンジと基板との関係を示す概略平面図である。
図8A図8Aは、順方向洗浄エリアにおける基板と上側ロールスポンジをそれらの回転速度と共に示す概略図である。
図8B図8Bは、逆方向洗浄エリアにおける基板と上側ロールスポンジをそれらの回転速度と共に示す概略図である。
図9A図9Aは、基板上に該基板の回転速度と上側ロールスポンジの回転速度の相対速度の大きさがゼロとなる逆転点Tが生じる場合における、上側ロールスポンジの長手方向に沿った相対速度の変化の一例を示した模式図である。
図9B図9Bは、基板上に該基板の回転速度と上側ロールスポンジの回転速度の相対速度の大きさがゼロとなる逆転点Tが生じない場合における、上側ロールスポンジの長手方向に沿った相対速度の変化の一例を示した模式図である。
図10A図10Aは、図9Aに示す逆転点Tが発生する実施形態において、未使用の上側ロールスポンジにおけるポイントPAおよびポイントPBでのノジュールの先端を示した模式図である。
図10B図10Bは、所定枚数の基板をスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュールの先端を示した模式図である。
図10C図10Cは、さらに所定枚数の基板をスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュールの先端を示した模式図である。
図11A図11Aは、図9Bに示す逆転点Tが発生しない実施形態において、未使用の上側ロールスポンジにおけるポイントPAおよびポイントPBでのノジュールの先端を示した模式図である。
図11B図11Bは、所定枚数の基板をスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュールの先端を示した模式図である。
図11C図11Cは、さらに所定枚数の基板をスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュールの先端を示した模式図である。
図12図12は、一実施形態に係る表面性状測定装置を示す模式図である。
図13A図13Aは、未使用の上側ロールスポンジのノジュールの二極化画像データの一例である。
図13B図13Bは、所定枚数の基板をスクラブ洗浄した後の上側ロールスポンジのノジュールの二極化画像データの一例である。
図14図14は、撮像装置によって作成されたスペクトルパターンの一例を示す模式図である。
図15図15は、測定ポイントの暗部の面積と測定ポイントの暗部の面積との差分の一例を示した表である。
図16図16は、図15を参照して説明された上側ロールスポンジの交換時期を決定する方法の変形例を説明するためのグラフである。
図17A図17Aは、所定の枚数の基板をスクラブ洗浄した後の2つの測定ポイントにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示す図である。
図17B図17Bは、さらに所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後の2つの測定ポイントPA,PBにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示す図である。
図18図18は、1つの測定ポイントPAで取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフの変化を示す図である。
図19図19は、図18の実線と一点鎖線との交点、および一点鎖線と二点鎖線との交点の近傍を拡大して示す図である。
図20図20は、所定の枚数の基板をスクラブ洗浄した後で、1つの測定ポイントで取得されたスペクトル強度の変化の一例を示した表である。
図21図21は、他の実施形態に係る表面性状測定装置を示す模式図である。
図22図22は、洗浄具洗浄装置の一例を示す模式図である。
図23図23は、基板を鉛直姿勢に保持しながら、該基板の表面をロールスポンジで洗浄する例を示した模式図である。
図24図24は、基板をその表面が傾斜した状態で保持しながら、該基板の表面をロールスポンジで洗浄する例を示した模式図である。
図25図25は、図1に示す基板処理装置の第2洗浄ユニットを模式的に示す斜視図である。
図26A図26Aは、ペンスポンジの表面データを取得する表面性状測定装置の一例を示す模式図である。
図26B図26Bは、図26Aに示すペンスポンジの下面図である。
図26C図26Cは、図26Aに示す表面性状測定装置の変形例を示す模式図である。
図27図27は、機械学習器の一例を示す模式図である。
図28図28は、ニューラルネットワークの構造の一例を示す模式図である。
図29A図29Aは、エルマンネットワークの時間軸展開を示す模式図である。
図29B図29Bは、誤差逆伝播法のバックプロパゲーションスルータイムを示す模式図である。
図30図30は、一実施形態に係る研磨ユニット(研磨装置)を模式的に示す斜視図である。
図31図31は、研磨パッド上を揺動する研磨ヘッドの様子を示す模式図である。
図32図32は、表面性状測定装置の2つの撮像装置が研磨パッドの半径方向に異なる2つの測定ポイントで表面データを取得している様子を示す模式図である。
図33図33は、一実施形態に係るバフ処理装置を示す模式図である。
図34図34は、表面性状測定装置の2つの撮像装置がバフパッドの半径方向に異なる2つの測定ポイントで表面データを取得している様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0030】
図1は、一実施形態に係る基板洗浄装置を備えた基板処理装置1の全体構成を示す平面図である。図1に示す基板処理装置1は、基板(ウエハ)の表面を研磨し、研磨後の基板を洗浄し、洗浄後の基板を乾燥させる一連の研磨プロセスを実行するように構成されている。以下では、図1に示す基板処理装置1を、一実施形態に係る基板洗浄装置を備えた基板処理装置の一例として説明する。
【0031】
図1に示すように、基板処理装置1は、略矩形状のハウジング10と、多数の基板(ウエハ)を収容する基板カセットが載置されるロードポート12を備えている。ロードポート12は、ハウジング10に隣接して配置されている。ロードポート12には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIF、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0032】
ハウジング10の内部には、基板を研磨する複数(この実施形態では4つ)の研磨ユニット14a~14dと、研磨された基板を洗浄する第1洗浄ユニット16及び第2洗浄ユニット18と、洗浄された基板を乾燥させる乾燥ユニット20が収容されている。研磨ユニット14a~14dは、基板処理装置1の長手方向に沿って配列され、洗浄ユニット16,18及び乾燥ユニット20も基板処理装置1の長手方向に沿って配列されている。
【0033】
なお、本実施形態では、基板処理装置1は、複数の研磨ユニット14a~14dを備えているが、本発明は、この例に限定されない。例えば、基板処理装置1は、1つの研磨ユニットを有していてもよい。さらに、基板処理装置1は、基板の周縁部(ベベル部とも称される)を研磨するベベル研磨ユニットを、複数のまたは1つの研磨ユニットに代えて、または複数のまたは1つの研磨ユニットに加えて備えていてもよい。
【0034】
ロードポート12、研磨ユニット14a、及び乾燥ユニット20に囲まれた領域には、第1基板搬送ロボット22が配置され、また研磨ユニット14a~14dと平行に、基板搬送ユニット24が配置されている。第1基板搬送ロボット22は、研磨前の基板をロードポート12から受け取って基板搬送ユニット24に渡すとともに、乾燥された基板を乾燥ユニット20から受け取ってロードポート12に戻す。基板搬送ユニット24は、第1基板搬送ロボット22から受け取った基板を搬送して、各研磨ユニット14a~14dとの間で基板の受け渡しを行う。各研磨ユニット14a~14dは、研磨面に研磨液(砥粒を含むスラリー)を供給しながら、基板を研磨面に摺接させることで、基板の表面を研磨する。
【0035】
第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18の間に位置して、これらの洗浄ユニット16,18および基板搬送ユニット24の間で基板を搬送する第2基板搬送ロボット26が配置され、第2洗浄ユニット18と乾燥ユニット20との間に位置して、これらの各ユニット18,20の間で基板を搬送する第3基板搬送ロボット28が配置されている。更に、ハウジング10の内部に位置して、基板処理装置1の各ユニットの動作を制御する制御部30が配置されている。
【0036】
本実施形態では、第1洗浄ユニット16として、薬液の存在下で、基板の表裏両面にロールスポンジを擦り付けて基板をスクラブ洗浄する基板洗浄装置が使用されており、第2洗浄ユニット18として、ペン型スポンジ(ペンスポンジ)を用いた基板洗浄装置が使用されている。一実施形態では、第2洗浄ユニット18として、薬液の存在下で、基板の表裏両面にロールスポンジを擦り付けて基板をスクラブ洗浄する基板洗浄装置を使用してもよい。また、乾燥ユニット20として、基板を保持し、移動するノズルからIPA蒸気を噴出して基板を乾燥させ、更に高速で回転させることによって基板を乾燥させるスピン乾燥装置が使用されている。
【0037】
一実施形態では、第1洗浄ユニット16または第2洗浄ユニット18として、基板の表面(または裏面)に二流体ジェット流を噴射することにより、該基板の表面(または裏面)を洗浄しつつ、基板の裏面(または表面)に洗浄具(例えば、ロールスポンジ、ペンスポンジ、または洗浄ブラシ)を押し付けて、該基板の裏面(または表面)をスクラブ洗浄する基板洗浄装置を使用してもよい。さらに、一実施形態では、第1洗浄ユニット16または第2洗浄ユニット18として、基板の表面および裏面のいずれか一方のみを洗浄具でスクラブ洗浄する基板洗浄装置を使用してもよい。
【0038】
基板は、研磨ユニット14a~14dの少なくとも1つにより研磨される。研磨された基板は、第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18により洗浄され、さらに洗浄された基板は乾燥ユニット20により乾燥される。一実施形態では、研磨された基板を、第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18のいずれか一方で洗浄してもよい。
【0039】
図2は、図1に示す第1洗浄ユニット16を模式的に示す斜視図である。図2に示す第1洗浄ユニット16は、本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置である。図3は、図2に示す上側ロールスポンジを回転自在に支持する上側ロールアームの一例を模式的に示す側面図である。なお、図示はしないが、第1洗浄ユニット16は、下側ロールスポンジ78を回転自在に支持する下側ロールアームも有する。下側ロールアームの構成は、例えば、下側ロールスポンジ78が基板Wの下面に摺接可能なように、後述する上側ロールアームの構成を上下反転させた構成を有する。なお、本明細書において、特に説明がない限り、「上」または「下」との記載は、基板を起点とした、洗浄部材などの構成要素の位置または方向を意味する。また、洗浄部材などの構成要素に関する「上面」や「表面」との記載は、該構成要素における基板に接触する側の面を意味する。さらに、これらの位置または方向についての説明は、図面中の実例に関するものであり、それ故、本発明の範囲を限定するものとは見なされない。
【0040】
図2に示すように、第1洗浄ユニット16は、基板(ウエハ)Wを水平姿勢に保持して回転させる4つの保持ローラー71,72,73,74と、基板Wの上下面にそれぞれ接触する円柱状の上側ロールスポンジ(洗浄具)77および下側ロールスポンジ(洗浄具)78と、基板Wの表面にリンス液(例えば純水)を供給する上側リンス液供給ノズル85と、基板Wの表面に薬液を供給する上側薬液供給ノズル87とを備えている。図示しないが、基板Wの下面にリンス液(例えば純水)を供給する下側リンス液供給ノズルと、基板Wの下面に薬液を供給する下側薬液供給ノズルが設けられている。本明細書では、薬液およびリンス液を総称して洗浄液ということがあり、薬液供給ノズル87およびリンス液供給ノズル85を総称して洗浄液供給ノズルということがある。ロールスポンジ77,78は、多孔質構造を有しており、このようなロールスポンジ77,78は、例えば、PVA、またはナイロンなどの樹脂から構成されている。
【0041】
保持ローラー71,72,73,74は図示しない駆動機構(例えばエアシリンダ)によって、基板Wに近接および離間する方向に移動可能となっている。4つの保持ローラーのうちの2つの保持ローラー71,74は、基板回転機構75に連結されており、これら保持ローラー71,74は基板回転機構75によって同じ方向に回転されるようになっている。一実施形態では、各保持ローラー71,72,73,74に連結する複数の基板回転機構75を設けてもよい。4つの保持ローラー71,72,73,74が基板Wを保持した状態で、2つの保持ローラー71,74が回転することにより、基板Wはその軸心まわりに回転する。本実施形態では、基板Wを保持して回転させる基板保持部は、保持ローラー71,72,73,74と基板回転機構75から構成される。
【0042】
図3に示すように、上側ロールスポンジ77は、上側ロールアーム48に回転自在に支持されている。上側ロールアーム48は、上側ロールスポンジ77の上方で該上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って延びるアーム部48aと、該アーム部48aの両端から下方に延びる一対の支持部48bとを備える。
【0043】
各支持部48bには、複数の(図3では、2つの)軸受90aを備えた軸受装置90が配置されており、この軸受装置90に、上側ロールスポンジ77の両端からそれぞれ延びる回転軸95が回転自在に支持されている。さらに、一方の支持部48bには、上側ロールスポンジ77を回転させる電動機93が配置されており、電動機93の駆動軸93aがカップリング94を介して一方の回転軸95に連結されている。電動機93は、上側ロールスポンジ77を回転させる回転駆動機構である。電動機93を駆動すると、駆動軸93a、およびカップリング94を介して上側ロールスポンジ77の回転軸95に回転トルクが伝達され、これにより上側ロールスポンジ77が回転する。
【0044】
図3に示す例では、各軸受装置90は、2つの軸受90aを有しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、各軸受装置90は、上側ロールスポンジ77の回転軸95を支持する1つの軸受、または3つ以上の軸受を有していてもよい。
【0045】
本実施形態では、電動機93は、駆動軸93aを回転させるトルク(すなわち、回転軸95を介して上側ロールスポンジ77に与えられるトルク)を測定するトルクセンサ93bを有している。また、軸受装置90の各軸受90aには、振動計97が取り付けられており、該振動計97は、上側ロールスポンジ77が回転している間に軸受90aに発生する振動を測定する。トルクセンサ93bおよび振動計97は、制御部30(図1参照)に接続されており、駆動軸93aを回転させるトルクの測定値および、および軸受90aに発生した振動の測定値を制御部30に送信する。トルクセンサ93bおよび振動計97の作用および目的については後述する。
【0046】
第1洗浄ユニット16は、洗浄具(例えば、上側ロールスポンジ77または下側ロールスポンジ78)を待避位置から洗浄位置に、および洗浄位置から待避位置に移動させる洗浄具移動ユニットをさらに有している。図4は、第1洗浄ユニット16に設けられた洗浄具移動ユニットの一例を示す概略斜視図である。図4に示す洗浄具移動ユニット51は、上側ロールスポンジ77を待避位置から洗浄位置に、および洗浄位置から待避位置に移動させるように構成されている。図示はしないが、第1洗浄ユニット16は、下側ロールスポンジ78を待避位置から洗浄位置に、および洗浄位置から待避位置に移動させる洗浄具移動ユニットも有している。なお、本明細書において、洗浄具の洗浄位置を、洗浄具が基板Wの表面を洗浄するために、該基板Wに接触している位置と定義し、洗浄具の待避位置を、洗浄具が基板Wの表面から離間した位置と定義する。図2は、上側ロールスポンジ77および下側ロールスポンジ78がそれぞれ洗浄位置に移動された状態を示している。
【0047】
図4に示す洗浄具移動ユニット51は、上側ロールスポンジ77と一体に上側ロールアーム48を上下方向に移動させる昇降機構53と、該昇降機構53とともに、上側ロールアーム48を水平方向に移動させる水平移動機構58とを備えている。
【0048】
図示した例では、昇降機構53は、上側ロールアーム48の上下方向の動きをガイドするガイドレール54と、上側ロールアーム48をガイドレール54に沿って移動させる昇降駆動機構55とを備える。上側ロールアーム48は、ガイドレール54に取り付けられている。昇降駆動機構55は、例えば、エアシリンダ、またはボールねじ機構などの直動機構である。昇降駆動機構55を作動させると、上側ロールスポンジ77が上側ロールアーム48とともに、ガイドレール54に沿って上下方向に移動される。
【0049】
水平移動機構58は、例えば、昇降機構53に連結されたエアシリンダ、またはボールねじ機構などの直動機構である。水平移動機構58を駆動すると、上側ロールアーム48(すなわち、上側ロールスポンジ77)が昇降機構53とともに水平方向に移動される。
【0050】
図4に示すように、昇降駆動機構55を作動することにより、洗浄位置にある上側ロールスポンジ77は、基板Wの表面から上方に離間した待避位置P1に移動する。次いで、水平移動機構58を作動することにより、上側ロールスポンジ77は、待避位置P1から、基板Wの側方に位置する待避位置P2に移動する。一実施形態では、洗浄具移動ユニット51は、昇降機構53のみを有していてもよい。この場合、洗浄具移動ユニット51によって、上側ロールスポンジ77が基板Wの表面に接触する洗浄位置と、基板Wの表面から上方に離間した待避位置P1との間で移動される。
【0051】
次に、図2を参照して、基板Wを洗浄する工程について説明する。まず、保持ローラー71,72,73,74により基板Wをその軸心まわりに回転させる。次いで、図4に示す洗浄具移動ユニット51を用いて、ロールスポンジ77,78を待避位置P2(またはP1)から図2に示す洗浄位置に移動させる。次いで、上側薬液供給ノズル87および図示しない下側薬液供給ノズルから基板Wの表面及び下面に薬液が供給される。この状態で、ロールスポンジ(洗浄具)77,78がその水平に延びる軸心周りに回転しながら基板Wの上下面に摺接することによって、基板Wの上下面をスクラブ洗浄する。ロールスポンジ77,78は、基板Wの直径(幅)よりも長く、基板Wの上下面全体に接触するようになっている。
【0052】
スクラブ洗浄後、ロールスポンジ77,78を基板Wの上下面に摺接させながら、回転する基板Wの表面及び下面にリンス液として純水を供給することによって基板Wの濯ぎ(リンス)が行われる。
【0053】
図5Aは、図2に示す上側ロールスポンジ77を模式的に示す斜視図であり、図5Bは、図5Aに示す上側ロールスポンジ77の変形例を模式的に示す斜視図である。下側ロールスポンジ78は、図5Aまたは図5Bに示す上側ロールスポンジ77と同様の形状を有しているため、その重複する説明を省略する。
【0054】
図5Aに示す上側ロールスポンジ77は、円筒形状の芯材77Aと、芯材77Aの外周面に被せられたスクラブ部材77Bとからなる。スクラブ部材77BはPVAなどの樹脂で構成され、その表面には、円柱形状を有する複数の突起(以下、「ノジュール」と称する)77Cが形成されている。上側ロールスポンジ77は、該上側ロールスポンジ77の長手方向(軸方向)で一列に等間隔で整列した複数のノジュール77Cからなるノジュール群を複数有する。複数のノジュール群は、上側ロールスポンジ77の周方向に等間隔に離間して配置されている。図5Aでは、隣接するノジュール群GR1,GR2を、上側ロールスポンジ77の周方向に配列されるノジュール群の例としてハッチングを付して示している。
【0055】
ノジュール群GR1に属する各ノジュール77Cの位置と、ノジュール群GR2に属する各ノジュール77Cの位置とは、上側ロールスポンジ77の長手方向に対して互いにずれている。上側ロールスポンジ77が回転しながら、基板Wの表面に接触すると、隣接するノジュール群GR1,GR2にそれぞれ属する複数のノジュール77Cの先端が基板Wの表面に隙間なく接触し、これにより基板Wの表面全体が洗浄される。
【0056】
図5Bに示す上側ロールスポンジ77は、ノジュール77Cが省略されている点で、図5Aに示す上側ロールスポンジ77と異なる。このように、上側ロールスポンジ77はノジュール77Cを有していなくてもよい。この場合、基板Wの表面と面接触するスクラブ部材77Bの表面によって、基板Wの表面全体が洗浄される。
【0057】
図6は、スクラブ洗浄中の上側ロールスポンジ77と基板Wとの関係を示す概略斜視図であり、図7は、スクラブ洗浄中の上側ロールスポンジ77と基板Wとの関係を示す概略平面図である。スクラブ洗浄中の下側ロールスポンジ78と基板Wとの関係は、図6および図7に示す上側ロールスポンジ77と基板Wとの関係と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、上側ロールスポンジ77の長さは、基板Wの直径より僅かに長く設定されており、上側ロールスポンジ77は、その中心軸(回転軸)CL1が基板Wの回転軸CL2とほぼ直交するように配置されている。この場合、基板Wと上側ロールスポンジ77は、基板Wの直径方向の全長に亘って直線状に延びる、長さLの洗浄エリア32で互いに接触する。このような構成によれば、上側ロールスポンジ77は、基板Wの全表面を同時に、かつ効率的に洗浄することができる。なお、図6および図7では、上側ロールスポンジ77の長手方向(軸方向)に対応する洗浄エリア32と平行にX軸を設定し、該X軸に直交する方向にY軸を設定し、X-Y平面の原点を、基板Wの回転軸CL2に一致させている。このことは、以下同様である。
【0059】
図7で太い2点鎖線で示すように、洗浄エリア32に沿った基板Wの回転速度Vwの大きさの絶対値は、基板Wの回転軸CL2上でゼロとなり、基板Wの周縁に向かって徐々に大きくなる。さらに、基板Wの回転速度Vwの向きは、回転軸CL2を挟んで互いに逆である。これに対し、図7で太い実線で示すように、洗浄エリア32に沿った上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの大きさは、洗浄エリア32の全長に亘って一定であり、回転速度Vrの向きも同じである。
【0060】
このため、洗浄エリア32は、基板Wの回転軸CL2を挟んで、基板Wの回転速度Vwの向きと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの向きが同じとなる、長さLfの順方向洗浄エリア34と、基板Wの回転速度Vwの向きと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの向きが互いに逆向きとなる、長さLiの逆方向洗浄エリア35に分けられる。
【0061】
順方向洗浄エリア34では、図8Aに示すように、基板Wの回転速度Vwと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの相対速度(相対回転速度)Vsの大きさが、両者の回転速度の大きさの差の絶対値となって、相対的に低くなる。一方、逆方向洗浄エリア35では、図8Bに示すように、基板Wの回転速度Vwと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの相対速度(相対回転速度)Vsの大きさが、両者の回転速度の大きさの和の絶対値となって、相対的に高くなる。このため、図7に示すように、基板Wの回転速度Vwの大きさと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの大きさの関係次第で、相対速度Vsの大きさがゼロ(Vw=Vr)となる逆転点Tが生じることがある。具体的には、上側ロールスポンジ77の回転速度Vrが基板Wの最外周部における回転速度Vwよりも小さい場合に、基板W上に、相対速度Vsの大きさがゼロ(Vw=Vr)となる逆転点Tが生じる。この場合、逆転点Tを挟んで、上側ロールスポンジ77による基板Wの洗浄方向が逆転する。
【0062】
上側ロールスポンジ77の回転速度Vrが基板Wの最外周部における回転速度Vw以上である場合は、相対速度Vsの大きさがゼロとなる逆転点Tは基板W上に生じない。すなわち、基板W上の洗浄エリア32全体にわたって、上側ロールスポンジ77による基板Wの洗浄方向が逆転しない。ただし、相対速度Vsの大きさの絶対値は、順方向洗浄エリア34から逆方向エリア35に向かって徐々に大きくなる。
【0063】
図9Aは、基板W上に基板Wの回転速度Vwと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの相対速度Vsの大きさがゼロとなる逆転点Tが生じる場合における、上側ロールスポンジ77の長手方向に沿った相対速度Vsの変化の一例を示した模式図である。図9Bは、基板W上に基板Wの回転速度Vwと上側ロールスポンジ77の回転速度Vrの相対速度Vsの大きさがゼロとなる逆転点Tが生じない場合における相対速度Vsの変化の一例を示した模式図である。図9Aおよび図9Bにおいて、X軸に沿って変化する相対速度Vsの大きさが太い実線で描かれている。
【0064】
図9Aおよび図9Bに示すように、上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って、相対速度Vsは変化する。したがって、基板Wのスクラブ洗浄中に、あるノジュール群(例えば、図5Aに示すノジュール群GR1またはGR2)に属する各ノジュール77Cが回転する基板Wの表面に接触する時間は、それぞれ、上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って異なる。これは、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて進む上側ロールスポンジ77の劣化具合(または、劣化速度)が上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って異なることを意味する。
【0065】
例えば、図9Aに示す逆転点Tが存在する実施形態では、洗浄エリア34にあるポイントPAにおける上側ロールスポンジ77の基板Wとの接触時間は、逆洗浄エリア35にあるポイントPBにおける上側ロールスポンジ77の基板Wとの接触時間よりも長い。そのため、ポイントPAにおける上側ロールスポンジ77の劣化具合は、ポイントPBにおける上側ロールスポンジ77の劣化具合よりも大きい。
【0066】
さらに、図9Aに示す逆転点Tが発生する実施形態では、逆転点Tを挟んで順方向洗浄エリア34側にあるポイントPAでノジュール77Cが基板Wに接触する態様は、逆転点Tを挟んで逆方向洗浄エリア35側にあるポイントPBでノジュール77Cが基板Wに接触する態様と異なる。より具体的には、ポイントPAにおけるノジュール77Cの先端は、上側ロールスポンジ77の回転方向の下流側に位置する領域だけでなく、上流側に位置する領域でも比較的長く基板Wの表面に接触する。そのため、ポイントPAにおけるノジュール77Cの先端は、ポイントPBにおけるノジュール77Cの先端と比較して、上側ロールスポンジ77の回転方向の上流側に位置する領域でも劣化が進行する。ここで、ノジュール77Cにおける上側ロールスポンジ77の回転方向の上流側/下流側とは、ノジュール77Cの中心を基準として、該基準から上側ロールスポンジ77の回転方向の逆向き側/順向き側を言う。以下で説明する図10A乃至10Cに示す例では、これら図におけるノジュール77Cの先端の上半分が基準位置であるノジュール77Cの中心から見た上流側であり、ノジュール77Cの先端の下半分が基準位置であるノジュール88の中心から見た下流側である。回転する上側ロールスポンジ77に設けられたノジュール77Cの先端は、該ノジュール77Cにおける上側ロールスポンジ77の回転方向の下流側から上流側に向かって基板Wに接触していく。これは、以下で説明する図11A乃至図11Cに示す例でも同様である。
【0067】
図10A乃至図10Cは、図9Aに示す逆転点Tが発生する実施形態において、ポイントPAにおけるノジュール77Cの先端の劣化具合と、ポイントPBにおけるノジュール77Cの先端の劣化具合の一例を示す模式図である。より具体的には、図10Aは、未使用の上側ロールスポンジ77におけるポイントPAおよびポイントPBでのノジュール77Cの先端を示した模式図であり、図10Bは、所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュール77Cの先端を示した模式図であり、図10Cは、さらに所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュール77Cの先端を示した模式図である。
【0068】
図10Aに示すように、未使用の上側ロールスポンジ77では、ポイントPAのノジュール77Cの先端、およびポイントPBのノジュール77Cの先端には、劣化領域は発生していない。図10Bに示すように、上側ロールスポンジ77を所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄に用いると、ポイントPAおよびポイントPBともに、上側ロールスポンジ77の回転方向の下流側に位置する先端位置に劣化領域Fua1およびFub1が生じる。しかしながら、劣化領域Fua1の大きさは、劣化領域Fub1の大きさよりも大きい。さらに、ポイントPAのノジュール77Cには、上側ロールスポンジ77の回転方向の上流側に位置する先端位置に劣化領域Fia1が生じ、ポイントPBのノジュール77Cにも、上側ロールスポンジ77の回転方向の上流側に位置する先端位置に劣化領域Fib1が生じる。しかしながら、劣化領域Fib1は、劣化領域Fia1よりも遙かに小さい。なお、劣化領域Fua1は、劣化領域Fia1よりも大きい。
【0069】
上側ロールスポンジ77でさらに所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄すると、図10Cに示すように、ポイントPAおよびポイントPBの各ノジュール77Cの先端の劣化が進行する。具体的には、ポイントPAのノジュール77Cには、劣化領域Fua1よりも大きな劣化領域Fua2と、劣化領域Fia1よりも大きな劣化領域Fia2が生じる。さらに、劣化領域Fia2は、劣化領域Fua2よりも遙かに大きくなる。すなわち、ノジュール77の先端は、その上流側での劣化の進行具合が下流側での劣化の進行具合よりも大きい。ポイントPBのノジュール77Cには、劣化領域Fub1よりも大きな劣化領域Fub2と、劣化領域Fib1よりも大きな劣化領域Fib2が生じる。
【0070】
図10B図10Cの比較から明らかなように、ポイントPAにおけるノジュール77Cの劣化の進行具合は、ポイントPBにおけるノジュール77Cの劣化の進行具合に比べて大きい。すなわち、図10Bに示すポイントPAでのノジュール77Cの劣化総領域FTa1(=Fua1+Fia1)に対する、図10Cに示すノジュール77Cの劣化総領域FTa2(=Fua2+Fia2)の割合Ca(=FTa2/FTa1)は、図10Bに示すポイントPBでのノジュール77Cの劣化総領域FTb1(=Fub1+Fib1)に対する、図10Cに示すノジュール77Cの劣化総領域FTb2(=Fub2+Fib2)の割合Cb(=FTb2/FTb1)よりも大きい。したがって、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、ポイントPAにおけるノジュール77Cの劣化の進行具合は、ポイントPBにおけるノジュール77Cの劣化の進行具合に比べて加速度的に増えていく。
【0071】
また、劣化領域Fua1,Fia1,Fua2,Fia2,Fub1,Fib1,Fub2,Fib2は、それぞれ、研磨屑および研磨液に含まれる砥粒などのパーティクル(汚染物質)が多く堆積される領域でもある。したがって、ポイントPAにおけるノジュール77Cの汚染度は、ポイントPBにおけるノジュール77Cの汚染度に比べて加速度的に増えていく。すなわち、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、上側ロールスポンジ77の劣化具合および汚染度は、該上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って大きく異なっていく。
【0072】
この現象は、図9Bに示す逆転点Tが発生しない実施形態でも同様に発生する。図11A乃至図11Cは、図9Bに示す逆転点Tが発生しない実施形態において、ポイントPAにおけるノジュール77Cの先端の劣化具合と、ポイントPBにおけるノジュール77Cの先端の劣化具合の一例を示す模式図である。より具体的には、図11Aは、未使用の上側ロールスポンジ77におけるポイントPAおよびポイントPBでのノジュール77Cの先端を示した模式図であり、図11Bは、所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュール77Cの先端を示した模式図であり、図11Cは、さらに所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後のポイントPAおよびポイントPBでのノジュール77Cの先端を示した模式図である。
【0073】
図9Bに示す逆転点Tが発生しない実施形態では、図11Bおよび図11Cの比較から明らかなように、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、ポイントPBにおけるノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度は、ポイントPAにおけるノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度に比べて加速度的に増えていく。
【0074】
図10A乃至図10C、および図11A乃至図11Cに示すように、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、上側ロールスポンジ77の劣化具合および汚染度は、該上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って大きく異なっていく。さらに、基板Wの洗浄レシピによっても、基板Wの劣化具合および汚染度は異なる。そのため、上側ロールスポンジ77の一つの測定ポイントで、上側ロールスポンジ77の表面性状を観察および/または測定しても、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定することは難しい。
【0075】
そこで、本実施形態では、上側ロールスポンジ(洗浄具)77の少なくとも2つの測定ポイントで該上側ロールスポンジ77の表面データを取得し、該2つの表面データの差分に基づいて、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定する。例えば、上側ロールスポンジ77の長手方向に沿って離れた少なくとも2つの測定ポイント(例えば、図9Aおよび図9Bに示すポイントPA,PB)の表面性状を表す表面データをそれぞれ取得し、該表面データの差分に基づいて上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定する。下側ロールスポンジ78についても同様に、下側ロールスポンジ(洗浄具)78の少なくとも2つの測定ポイントで該下側ロールスポンジ78の表面データを取得し、該2つの表面データの差分に基づいて、下側ロールスポンジ78の適切な交換時期を決定する。以下では、上側ロールスポンジ(洗浄具)77の少なくとも2つの測定ポイントで該上側ロールスポンジ77の表面データを取得する表面性状測定装置が説明される。下側ロールスポンジ78の表面データを取得する表面性状測定装置の構成は、上側ロールスポンジ77の表面データを取得する表面性状測定装置の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0076】
図12は、一実施形態に係る表面性状測定装置を示す模式図である。図12に示す表面性状測定装置60は、待避位置P1または待避位置P2(図4参照)に移動された上側ロールスポンジ77の表面性状を表す表面データを非接触式に、かつ直接的に取得する装置である。この表面性状測定装置60は、測定ポイントPAおよびPBにおける上側ロールスポンジ(洗浄具)77の表面性状を表す表面データを取得する撮像装置61A,61Bを備える。撮像装置61Bは、撮像装置61Aと同様の構成を有するため、以下では、特に区別する必要がない限り、撮像装置61A,61Bを単に撮像装置61と称する。
【0077】
撮像装置61は、上記した制御部30に接続されており、撮像装置61によって取得された上側ロールスポンジ77の表面データは制御部30に送られる。撮像装置61は、測定ポンイントPA(または、測定ポイントPB)における上側ロールスポンジ77の実際の画像データを直接的に取得し、該画像データを、上側ロールスポンジ77の表面性状(すなわち、劣化具合および汚染度)を表す表面データに変換する。
【0078】
撮像装置61が取得する表面データは、例えば、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)の二極化画像データにおける暗部(または、明部)の面積、または上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)に赤外光を照射したときに得られる反射光または透過光の赤外吸収スペクトルのスペクトルパターンである。あるいは、撮像装置61が取得する表面データは、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)にレーザ光を照射することで得られる上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)の三次元画像データであってもよいし、上側ロールスポンジ77に所定の圧力を加えたときに生じる歪みを可視化した歪み画像データであってもよい。
【0079】
さらに、撮像装置61が取得する表面データは、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)を、光を多数の波長(例えば、10以上の波長)ごとに分光して撮影することで得られる分光画像データであってもよい。さらに、撮像装置61が取得する表面データは、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)を、光を近赤外線領域の波長を含む多数の波長ごとに分光して撮影することで得られるハイパースペクトル画像データであってもよい。ハイパースペクトル画像データは、人間の目やカラーカメラ画像では判別できない不可視領域(近赤外線領域)における画像データの違いを可視化できる。
【0080】
さらに、撮像装置61が取得する表面データは、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)の偏光画像データであってもよい。偏光画像データは、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)からの反射光の偏光方向と偏光度の情報を含む画像データである。
【0081】
現在市場で入手可能な撮像装置を用いて、二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、および偏光画像データなどの表面データを取得可能である。このような撮像装置は、回転する上側ロールスポンジ77の動画を撮影し、該動画からフレーム画像を抽出して、該フレーム画像から上側ロールスポンジ77の上記表面データを取得することができる。すなわち、撮像装置は、待避位置P1(または、P2)に移動された上側ロールスポンジ77を回転させた状態で表面データを取得することができる。表面データを、上側ロールスポンジ77を回転させた状態で取得する場合、撮像装置は、高感度のハイスピードカメラユニットを備えているのが好ましい。なお、撮像装置は、当然に、静止状態にある上側ロールスポンジ77からその表面データを取得可能である。
【0082】
図13Aは、未使用の上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの二極化画像データの一例であり、図13Bは、所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後の上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの二極化画像データの一例である。図13Bに示す二極化画像データは、図13Aに示す二極化画像データと同じ測定ポイントで取得されている。
【0083】
このような二極化画像データは、撮像装置61のカメラユニット(図示せず)が撮影した上側ロールスポンジ77の(ノジュール77Cの)写真を明部と暗部とに分ける二極化処理を施すことで得られる。撮像装置61は、カメラユニットが取得した写真に二極化処理を実行し、得られた二極化画像データから暗部(または、明部)の面積を演算する画像処理ユニット(図示せず)を備えている。
【0084】
図13Aおよび図13Bから分かるように、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すと、上側ロールスポンジ77の表面がすり減っていくため、暗部の面積が減少していき、明部の面積が上昇していく。すなわち、上側ロールスポンジ77の劣化具合に応じて、暗部の面積が減少していく。そのため、所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄を行うたびに表面データとして取得した暗部の面積を比較することで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0085】
図14は、撮像装置61によって作成されたスペクトルパターンの一例を示す模式図である。図14において、縦軸は吸光度を表し、横軸は波数を表す。撮像装置61が取得する表面データが赤外吸収スペクトルのスペクトルパターンである場合は、撮像装置61は、上側ロールスポンジ77の表面に赤外線を照射し、該赤外線の反射光または透過光から赤外吸収スペクトルを取得し、該赤外吸収スペクトルに基づいてスペクトルパターンを作成するように構成される。
【0086】
図14に示すように、上側ロールスポンジ77が劣化して、該上側ロールスポンジ77の表面形状が変化したり、上側ロールスポンジ77の表面に汚染物質が堆積したりすると、撮像装置61が取得するスペクトルパターンが変化する。例えば、特徴的なピークSP1の吸光度が変化したり、該ピークSP1が現れる波数が変化したりする。あるいは、特徴的な2つのピークSP1、SP2の相対的な位置関係(例えば、2つのピークSP1、SP2の波数の差分の絶対値)が変化する。そのため、所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄を行うたびに表面データとして取得したスペクトルパターンを比較する(例えば、ピークP1の吸光度および波数の変化量、ピークP2の吸光度および波数の変化量、または2つのピークSP1、SP2の波数の差分の絶対値の変化量を算出する)ことで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0087】
撮像装置61が取得する表面データが上側ロールスポンジ77の三次元画像データである場合は、撮像装置61は、投光部(図示せず)から上側ロールスポンジ77にレーザ光を照射し、その反射レーザ光を受光部(図示せず)で受光することで上側ロールスポンジ77の三次元画像データを取得する。さらに、撮像装置61はレーザ変位計の機能を有する。より具体的には、撮像装置61は、最初に、未使用の上側ロールスポンジ77の三次元画像データを取得する。上側ロールスポンジ77が基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すと、上側ロールスポンジ77の表面形状が変化し、その結果、撮像装置61によって取得される三次元画像データが変化する。撮像装置61は、未使用の上側ロールスポンジ77の三次元画像データと、使用後の上側ロールスポンジ77の三次元画像データを比較して(例えば、重ね合わせて)、その変化量(例えば、ノジュール77Cの先端の表面積の減少量)を演算可能に構成されている。
【0088】
三次元画像データの変化量は、上側ロールスポンジ77の劣化具合に対応している。そのため、所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄を行うたびに表面データとして取得した三次元画像データを比較する(例えば、ノジュール77Cの先端の表面積の減少量を算出する)ことで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0089】
撮像装置61が取得する表面データが上側ロールスポンジ77の歪みを可視化した歪み画像データである場合は、上側ロールスポンジ77の表面に所謂「スペックルパターン」と称される規則的なまたは不規則な模様を付する必要がある。さらに、表面性状測定装置60は、待避位置P2(または、待避位置P1)に移動された上側ロールスポンジ77に所定の圧力を加える押圧装置(図示せず)を備える。押圧装置は、例えば、上側ロールスポンジ77の両端から該上側ロールスポンジ77の軸方向に押圧力を加える(すなわち、上側ロールスポンジ77を所定の押圧力で軸方向に圧縮する)装置である。
【0090】
撮像装置61は、押圧装置によって変形される前後の上側ロールスポンジ77の画像データを撮影するカメラユニット(図示せず)と、デジタル画像相関法(DIC)を用いて上側ロールスポンジ77の歪みを可視化する画像処理ユニット(図示せず)を備えている。デジタル画像相関法は、カメラユニットによって撮影された上側ロールスポンジ77の変形前後の画像データを解析演算することで、スペックルパターンの変位を計測し、これにより、上側ロールスポンジ77に発生した歪みを可視化する方法である。
【0091】
上側ロールスポンジ77が基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すと、上側ロールスポンジ77の表面形状が変化し、その結果、使用後の上側ロールスポンジ77に発生する歪み量は未使用の上側ロールスポンジ77に発生する歪み量と異なる。この歪みの変化量は、上側ロールスポンジ77の劣化具合に対応している。そのため、所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄を行うたびに表面データとして取得した歪み画像データを比較する(すなわち、歪みの変化量を算出する)ことで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0092】
撮像装置61が取得する表面データが上側ロールスポンジ77の分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データである場合は、撮像装置61は、所謂「マルチスペクトルカメラ」、または「ハイパースペクトルカメラ」として構成されるカメラユニットを備える。マルチスペクトルカメラ、またはハイパースペクトルカメラによれば、分光数に応じた数の分光画像(例えば、グレースケール画像)を取得可能であり、さらに、これら分光画像が重なった二次元画像データを取得できる。特に、ハイパースペクトルカメラによれば、不可視領域である近赤外線領域における分光画像を取得することが可能である。さらに、ハイパースペクトルカメラは、取得された複数の分光画像をそれぞれ異なる色で表示し、これら他色表示された分光画像を重ね合わせることができる。
【0093】
上側ロールスポンジ77が基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すと、上側ロールスポンジ77の表面形状が変化し、その結果、撮像装置61によって取得される分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データが変化する。撮像装置61は、未使用の上側ロールスポンジ77の分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データと、使用後の上側ロールスポンジ77の分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データを比較して(例えば、重ね合わせて)、その変化量(例えば、ノジュール77Cの先端の表面積の減少量、および/または汚染度)を演算可能に構成されている。
【0094】
分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データの変化量は、上側ロールスポンジ77の劣化具合に対応している。さらに、分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データによれば、上側ロールスポンジ77の表面に付着した汚染物質を、上側ロールスポンジの材料(すなわち、PVAなどの樹脂)と区別することができる。そのため、所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄を行うたびに表面データとして取得した分光画像データ、またはハイパースペクトル画像データを比較する(例えば、ノジュール77Cの先端の表面積の減少量と、汚染物質が付着している表面積の増加量を算出する)ことで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0095】
撮像装置61がハイパースペクトルカメラとして構成されるカメラユニットを備える場合は、撮像装置61は、上側ロールスポンジ77の劣化具合および汚染度(例えば、ノジュール77Cの先端の汚染度)を表す表面データを演算により入手することができる。例えば、撮像装置61は、上側ロールスポンジ77の劣化具合および汚染度に応じて変化するハイパースペクトル画像データを、各波長に対するスペクトル強度のグラフに変換することができる。この場合、撮像装置61は、ハイパースペクトル画像データを、各波長に対するスペクトル強度のグラフに変換する画像処理ユニット(図示せず)を備えている。本明細書では、各波長に対するスペクトル強度のグラフを、「スペクトル強度グラフ」と称することがある。
【0096】
上側ロールスポンジ77が劣化して、該上側ロールスポンジ77の表面形状が変化したり、上側ロールスポンジ77の表面に汚染物質が堆積したりすると、撮像装置61が取得するハイパースペクトル画像データが変化する。その結果、ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフも変化する。撮像装置61は、未使用の上側ロールスポンジ77のスペクトル強度グラフと、使用後の上側ロールスポンジ77のスペクトル強度グラフを比較して(例えば、重ね合わせて)、所定の波長におけるスペクトル強度の変化量を演算可能に構成されている。このスペクトル強度の変化量を算出することで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0097】
さらに、撮像装置61は、スペクトル強度グラフにおける接戦の傾きを演算可能に構成されてもよい。上側ロールスポンジ77による基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、上側ロールスポンジ77の劣化とパーティクルによる汚染が進行していく。しかしながら、ある程度上側ロールスポンジ77の劣化および汚染が進行すると、得られるハイパースペクトル画像データの変化が乏しくなってくる。すなわち、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、スペクトル強度グラフの変化が乏しくなってくる。撮像装置61は、所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄するたびに、スペクトル強度グラフにおける接戦の傾きを演算(例えば、スペクトル強度グラフの微分演算)により入手し、この接戦の傾きの変化量(例えば、接戦の傾きの最大値の変化量)を算出することで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0098】
撮像装置61が取得する表面データが上側ロールスポンジ77の偏光画像データである場合は、撮像装置61は、所謂「偏光カメラ」として構成されるカメラユニットを備える。偏光カメラによれば、上側ロールスポンジ77(のノジュール77C)からの反射光の偏光方向と偏光度の情報を含む偏光画像データを取得できる。偏光画像データを取得可能な偏光カメラは、カラー画像データを取得する通常のカメラでは認識しづらい被写体の詳細な表面状態を可視化することができる。
【0099】
偏光画像データの変化量も、上側ロールスポンジ77の劣化具合に対応している。そのため、所定枚数の基板Wのスクラブ洗浄を行うたびに表面データとして取得した偏光画像データを比較する(例えば、ノジュール77Cの先端の表面積の減少量と、汚染物質が付着している表面積の増加量を算出する)ことで、上側ロールスポンジ77の劣化具合を把握することができる。
【0100】
次に、表面性状測定装置60を用いた上側ロールスポンジ(洗浄具)77の交換時期を決定する方法について説明する。以下では、撮像装置61が二極化画像データにおける暗部の面積を表面データとして取得する例が説明される。しかしながら、撮像装置61が赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、または偏光画像データを表面データとして取得する場合も、同様な方法で、上側ロールスポンジ(洗浄具)77の交換時期を決定することができる。
【0101】
上述したように、測定ポイントPAにおける上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度は、測定ポイントPBにおける上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度と異なる。例えば、図10A乃至図10Cに示す例では、測定ポイントPAにおける上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度は、測定ポイントPBにおける上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度に比べて加速度的に増えていく。図11A乃至図11Cに示す例では、測定ポイントPBにおける上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度が、測定ポイントPAにおける上側ロールスポンジ77のノジュール77Cの劣化の進行具合および汚染度に比べて加速度的に増えていく。
【0102】
そこで、本実施形態では、制御部30は、所定枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄するごとに、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61B(図12参照)を用いて、測定ポイントPA,PBの暗部の面積を表面データとして取得し、測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分を算出する。そして、制御部30は、算出された差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0103】
基板Wの所定枚数NAは、上側ロールスポンジ77の表面データを表面性状測定装置60で取得するか否かを決定するために用いられる値であり、任意に設定可能である。例えば、基板Wの所定枚数NAは、「1」であってもよい。基板Wの所定枚数NAが「1」に設定される場合は、制御部30は、基板Wがスクラブ洗浄されるたびに、上側ロールスポンジ77の表面データを取得する。
【0104】
差分が所定の閾値以上である場合に、制御部30は、上側ロールスポンジ77が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、第1洗浄ユニットへの基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wを第1洗浄ユニット16に搬送し、上側ロールスポンジ77を用いた基板Wのスクラブ洗浄を継続する。
【0105】
図15は、測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分の一例を示した表である。以下では、図15を参照して、上記した上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する方法をより詳細に説明する。
【0106】
図15に示すように、制御部30は、未使用の上側ロールスポンジ77の測定ポイントPA,PBの暗部の面積を表面データとして取得し、測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分を算出する。図15に示す例では、差分は「1」であり、測定ポイントPAの暗部の面積は、測定ポイントPBの暗部の面積と同等であることがわかる。未使用の上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAの暗部の面積が測定ポイントPBの暗部の面積と大きく異なる場合は、上側ロールスポンジ77および/または表面性状測定装置60(特に、撮像装置61A,61B)に何らかの不具合が発生していることが疑われる。そのため、この場合は、制御部30は、上側ロールスポンジ77および/または表面性状測定装置60の状態を確認することを促す警報を発してもよい。
【0107】
次いで、制御部30は、基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA(図15では、説明の便宜上「NA1」と記載する)に到達したか否かを判断する。基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA1に到達している場合、制御部30は、基板Wの処理枚数Nをゼロに戻すとともに、表面性状測定装置60を用いて、上側ロールスポンジ77の測定ポイントPA,PBの暗部の面積を表面データとして取得し、測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分を算出する。さらに、制御部30は、算出された差分と所定の閾値Dtを比較する。図15に示す例では、所定の閾値Dtは22に設定されており、基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA1に到達したときの差分は「4」である。したがって、制御部30は、再度、基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA(図15では、説明の便宜上「NA2」と記載する)に到達するまで、基板Wのスクラブ洗浄を実行する。
【0108】
基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA2に到達すると、制御部30は、再度、基板Wの処理枚数Nをゼロに戻すとともに、表面性状測定装置60を用いて、上側ロールスポンジ77の測定ポイントPA,PBの暗部の面積を表面データとして取得し、測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分を算出する。制御部30は、算出された差分と所定の閾値Dtを比較し、この差分が所定の閾値Dt以上であるか否かを決定する。制御部30は、これらの処理ステップを、差分が所定の閾値Dt以上になるまで繰り返す。差分が所定の閾値Dt以上になると(図15では、所定の処理枚数NAnに到達したとき)、制御部30は、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報(第1警報)を発するとともに、第1洗浄ユニット16への次の基板Wの搬送動作を停止する。これにより、作業者は、上側ロールスポンジ77による基板Wの逆汚染が生じる前に、上側ロールスポンジ77を新しいロールスポンジに交換することができる。
【0109】
制御部30に予め記憶される所定の閾値Dtは、洗浄具(上述した実施形態では、上側ロールスポンジ77)の適切な交換時期を決定するための重要な値である。上述したように、洗浄具を基板Wに擦り付けるスクラブ洗浄を繰り返すと、洗浄具の表面の摩耗、および洗浄具に蓄積されたパーティクルによって基板Wの逆汚染が生じるおそれがある。そのため、洗浄具の交換時期を判断するための閾値を決定するためには、洗浄効率、パーティクル発生量などを考慮する必要がある。
【0110】
例えば、基板Wの表面に付着するパーティクルの数が大きく増加する基板Wの処理枚数を実験により見つけ出し、この処理枚数に対応する上記差分を所定の閾値Dtとして決定する。あるいは、基板Wの洗浄効率が大きく減少する基板Wの処理枚数に対応する差分を所定の閾値Dtとして決定してもよい。一実施形態では、基板Wの表面に付着するパーティクルの数が大きく増加する基板Wの処理枚数に対応する差分を、基板Wの洗浄効率が大きく減少する基板Wの処理枚数に対応する差分と比較してもよい。この場合、小さい方の差分が、所定の閾値Dtとして決定される。
【0111】
図16は、図15を参照して説明された上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する方法の変形例を説明するためのグラフである。図16に示すグラフでは、縦軸は測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分を表し、横軸は基板Wの処理枚数を表す。
【0112】
図16に示す例では、所定の閾値(第1閾値)Dtから所定値(Δt)を減算することによって事前閾値(第2閾値)Dt’を予め決定しておく。この事前閾値Dt’も制御部30に予め記憶されている。制御部30は、測定ポイントPAの暗部の面積と測定ポイントPBの暗部の面積との差分が事前閾値Dt’以上となったとき(図15では、基板Wの処理枚数がNd’に到達したとき)に、第2警報を出力する。第2警報は、上側ロールスポンジ77を直ちに交換する必要はないが、まもなく上側ロールスポンジ77の使用期間が交換時期に達することを作業者に知らせる警報である。第2警報によって、作業者は新しい上側ロールスポンジ77を予め用意しておくことができる。一実施形態では、第2警報が発せられたときに、上側ロールスポンジ77を交換してもよい。この場合、基板Wの逆汚染の発生をより効果的に防止できる。
【0113】
次に、上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する他の方法の例を説明する。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する方法と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0114】
上述したように、撮像装置61がハイパースペクトルカメラとして構成されるカメラユニットを備える場合は、撮像装置61は、上側ロールスポンジ77の劣化具合を、ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフから把握することができる。本実施形態では、ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを利用して上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する。
【0115】
図17Aは、所定の枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄した後の2つの測定ポイントPA,PBにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示す図であり、図17Bは、さらに所定枚数の基板Wをスクラブ洗浄した後の2つの測定ポイントPA,PBにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示す図である。図17Aおよび図17Bにおいて、縦軸は、スペクトル強度を示し、横軸は、波長を示す。図17Aおよび図17Bにおいて、実線は、測定ポイントPAにおけるハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度であり、一点鎖線は、測定ポイントPBにおけるハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度である。図17Aおよび図17Bに示すグラフでは、上に行くにつれて光が吸収され、下にいくにつれて光が反射することを示す。
【0116】
図17Aおよび図17Bに示すように、劣化具合の異なる2つの測定ポイントPA,PBで取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを重ね合わせると、得られた2つのグラフは互いに相違する。したがって、所定の波長λpにおける2つの測定ポイントPA,PBのスペクトル強度SA,SBの間には差分が存在する。
【0117】
本実施形態では、制御部30は、所定枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄するごとに、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61B(図12参照)を用いて、測定ポイントPA,PBで取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、所定の波長λpにおける測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との差分(=SB-SA)を算出する。そして、制御部30は、算出された差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0118】
差分が所定の閾値以上である場合に、制御部30は、上側ロールスポンジ77が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、第1洗浄ユニットへの基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wを第1洗浄ユニット16に搬送し、上側ロールスポンジ77を用いた基板Wのスクラブ洗浄を継続する。
【0119】
図16を参照して説明したように、所定の閾値(第1閾値)Dtから所定値(Δt)を減算することによって事前閾値(第2閾値)Dt’を予め決定しておいてもよい。この場合、制御部30は、所定の波長λpにおける測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との差分が事前閾値Dt’以上となったときに、上記第2警報を出力する。
【0120】
本実施形態において、所定の波長λpにおける差分の変化量の絶対値が小さい場合には、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定しづらかったり、誤ったりするおそれがある。そこで、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける接戦の傾きと、測定ポイントPBのスペクトル強度グラフにおける接戦の傾きのそれぞれの変化にも着目して、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定してもよい。例えば、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける接戦の傾きの最大値の変化量と、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける接戦の傾きの最大値の変化量と、に基づいて、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定する。本明細書では、スペクトル強度グラフにおいて接線の傾きが最大値となる点を、「変曲点」と称することがある。
【0121】
上述したように、上側ロールスポンジ77の劣化とパーティクルによる汚染が進行していくと、得られるハイパースペクトル画像データの変化が乏しくなってくる。すなわち、所定枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄するごとに取得される測定ポイントPAのスペクトル強度グラフおよび測定ポイントPBのスペクトル強度グラフのいずれにおいても、変曲点における接線の傾きが変化しなくなってくる。本実施形態では、この現象を利用して、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定する。
【0122】
図17Aに示すように、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける変曲点Ipa1の接戦の傾きは、Sta1であり、測定ポイントPBのスペクトル強度グラフにおける変曲点Ipb1の接戦の傾きは、Stb1である。図17Bに示すように、所定の処理枚数NAをスクラブ洗浄した後では、測定ポイントPAの変曲点は、Sta2に移動し、この変曲点Sta2での接戦の傾きは、Sta2である。同様に、所定の処理枚数NAをスクラブ洗浄した後では、測定ポイントPBの変曲点は、Stb2に移動し、この変曲点Stb2での接戦の傾きは、Stb2である。
【0123】
制御部30は、所定枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄するごとに、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61B(図12参照)を用いて、測定ポイントPA,PBで取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量(=Sta2-Sta1)と、測定ポイントPBのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量(=Stb2-Stb1)を算出する。そして、制御部30は、算出された各差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0124】
各変化量が所定の閾値以下である場合に、制御部30は、上側ロールスポンジ77が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、第1洗浄ユニットへの基板Wの搬送動作を停止してもよい。各変化量が所定の閾値よりも大きい場合は、制御部30は、次の基板Wを第1洗浄ユニット16に搬送し、上側ロールスポンジ77を用いた基板Wのスクラブ洗浄を継続する。
【0125】
一実施形態では、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量および測定ポイントPBのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量のいずれか一方が所定の閾値以下である場合に、制御部30は、上側ロールスポンジ77が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定してもよい。さらに、一実施形態では、制御部30は、所定の波長λpにおける測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との上記差分と、測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量および測定ポイントPBのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量の少なくとも一方とに基づいて、上側ロールスポンジ77が交換時期を決定してもよい。例えば、制御部30は、上記差分が所定の閾値以上であり、かつ測定ポイントPAのスペクトル強度グラフにおける変曲点の接戦の傾きの変化量が所定の閾値以下である場合に、上側ロールスポンジ77が交換時期に到達したと決定してもよい。この場合、上側ロールスポンジ77の劣化および汚染の進行度合いをより正確に判定することができるので、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期をより正確に決定することができる。
【0126】
一実施形態では、1つの測定ポイントPA(またはPB)で取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを利用して上側ロールスポンジ77の交換時期を決定してもよい。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0127】
図18は、1つの測定ポイントPAで取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフの変化を示す図である。図18において、縦軸は、スペクトル強度を示し、横軸は、波長を示す。図18において、実線は、所定の枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄した後の1つの測定ポイントPAにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示し、一点鎖線は、さらに所定の枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄した後の1つの測定ポイントPAにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示し、二点鎖線は、さらに所定の枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄した後の1つの測定ポイントPAにおけるハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを示す。図19は、図18の実線と一点鎖線との交点、および一点鎖線と二点鎖線との交点の近傍を拡大して示す図である。
【0128】
図18に示すように、所定の枚数NAのスクラブ洗浄を繰り返すたびに、ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフは全体的に変化していくが、図19に示すように、実線と一点鎖線の交点C1および一点鎖線と二点鎖線との交点C2の近傍では、スペクトル強度の変化量が小さく、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を正確に決定すること困難である。一方で、交点C1,C2よりも大きい所定の波長λpにおけるスペクトル強度に着目してみると、所定の波長λpにおける一点鎖線上のスペクトル強度S’と、二点鎖線上のスペクトル強度S’’との間の差分は、所定の波長λpにおける実線上のスペクトル強度Sと、一点鎖線上のスペクトル強度S’との間の差分よりも小さい。そこで、本実施形態では、この差分の変化量に基づいて、上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する。
【0129】
本実施形態では、制御部30は、所定枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄するごとに、表面性状測定装置60の撮像装置61A(図12参照)を用いて、測定ポイントPAで取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、今回取得された測定ポイントPAでの所定の波長λpにおけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長λpにおける測定ポイントPAのスペクトル強度との差分を算出する。そして、制御部30は、この差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0130】
今回取得された所定の波長λpにおけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長λpにおけるスペクトル強度との差分が所定の閾値よりも小さい場合に、制御部30は、上側ロールスポンジ77が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、第1洗浄ユニットへの基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wを第1洗浄ユニット16に搬送し、上側ロールスポンジ77を用いた基板Wのスクラブ洗浄を継続する。
【0131】
本実施形態でも、所定の波長λpにおける差分の変化量の絶対値が小さい場合には、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定しづらかったり、誤ったりするおそれがある。そこで、所定の枚数NAのスクラブ洗浄を繰り返すたびに、ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフの接線の傾きの変化量と、上記差分とに基づいて、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定してもよい。この方法についてより詳細に説明する。
【0132】
実線の変曲点CP1における接線の傾きSta1、一点鎖線の変曲点CP2における接線の傾きSta2、二点鎖線の変曲点C3における接線の傾きSta3の間には、関係式:Sta1>Sta2> Sta3が成立する。しかしながら、ハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフがほとんど変化しなくなると、前々回取得されたSta1と前回取得されたSta2との第1差分は、前回取得されたSta2と今回取得されたSta1との第2差分とほぼ等しくなる。言い換えれば、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、第1差分と第2差分との間の差分が0に近づいていく。この現象を利用して、制御部30は、所定の波長λpに対するスペクトル強度の変化量(すなわち、今回取得された所定の波長λpにおけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長λpにおけるスペクトル強度との差分)が所定の閾値以下であり、かつ第1差分と第2差分との間の差分が所定の閾値以下である場合に、上側ロールスポンジ77が交換時期に到達したと決定する。この場合、上側ロールスポンジ77の劣化および汚染の進行度合いをより正確に判定することができるので、上側ロールスポンジ77の適切な交換時期をより正確に決定することができる。
【0133】
本発明者らがスペクトル強度グラフの変化に着目して上側ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定する方法を鋭意検討した結果、以下の知見を得た。具体的には、発明者らは、上側ロールスポンジ77の劣化とパーティクルによる汚染が進行すると、前回取得したスペクトル強度グラフと今回取得したスペクトル強度グラフの交点(図19の交点CP1,CP2参照)が横軸方向に移動しなくなる(すなわち、交点CP1の波長値と交点CP2の波長値がほぼ同一となる)ということを見いだした。そこで、一実施形態では、スペクトル強度グラフにおける交点の波長値の変化が所定の閾値以下となった場合に、上側ロールスポンジ77が交換時期に到達したと決定してもよい。
【0134】
図20は、所定の枚数NAの基板Wをスクラブ洗浄した後で、1つの測定ポイントPAで取得されたスペクトル強度の変化の一例を示した表である。以下では、図20を参照して、1つの測定ポイントPAで取得されたスペクトル強度の差分に基づいて上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する方法について説明する。
【0135】
図20に示すように、制御部30は、未使用の(または、上側ロールスポンジ77のセルフクリニーングを行った後の)上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAのハイパースペクトル画像から変換されたスペクトル強度グラフを表面データとして取得し、該グラフにおける所定の波長λpのスペクトル強度を記憶する。次いで、制御部30は、基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA(図20では、説明の便宜上「NA1」と記載する)に到達したか否かを判断する。基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA1に到達している場合、制御部30は、基板Wの処理枚数Nをゼロに戻すとともに、表面性状測定装置60を用いて、上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAのハイパースペクトル画像から変換されたスペクトル強度グラフを表面データとして取得し、該グラフにおける所定の波長λpのスペクトル強度を記憶する。さらに、制御部30は、未使用の上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAでの所定の波長λpのスペクトル強度と、所定の処理枚数NA1の基板Wをスラブ洗浄した後の上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAでの所定の波長λpのスペクトル強度との差分を算出する。図20に示す例では、この差分は、「16」である。さらに、制御部30は、算出された差分と所定の閾値Dtを比較する。図20に示す例では、所定の閾値Dtは2に設定されており、基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA1に到達したときの差分は「16」である。したがって、制御部30は、再度、基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA(図20では、説明の便宜上「NA2」と記載する)に到達するまで、基板Wのスクラブ洗浄を実行する。
【0136】
基板Wの処理枚数Nが所定の処理枚数NA2に到達すると、制御部30は、再度、基板Wの処理枚数Nをゼロに戻すとともに、表面性状測定装置60を用いて、上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAのハイパースペクトル画像から変換されたスペクトル強度グラフを表面データとして取得し、該グラフにおける所定の波長λpのスペクトル強度を記憶する。さらに、制御部30は、所定の処理枚数NA1の基板Wをスラブ洗浄した後の上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAでの所定の波長λpのスペクトル強度と、所定の処理枚数NA2の基板Wをスクラブ洗浄した後の上側ロールスポンジ77の測定ポイントPAでの所定の波長λpのスペクトル強度との差分を算出する。図20に示す例では、この差分は、「15」である。
【0137】
一実施形態では、制御部30は、所定の波長λpにおけるスペクトル強度の差分(変化量)を算出するのと同時に、所定の処理枚数NA1の基板Wをスクラブ洗浄した後のスペクトル強度グラフの変曲点CP1における接線の傾きSpa1と、処理枚数NA2の基板Wをスクラブ洗浄した後のスペクトル強度グラフの変曲点CP2における接線の傾きSpa2の差分(変曲点における接線の傾きの変化量)を算出し、所定の閾値と比較してもよい。
【0138】
制御部30は、これらの処理ステップを、差分が所定の閾値Dtよりも小さくなるまで、または差分が所定の閾値Dtよりも小さく、かつ接線の傾きの変化量が所定の閾値よりも小さくなるまで繰り返す。差分が所定の閾値Dtよりも小さくなると(図20では、所定の処理枚数NAnに到達したとき)、または差分が所定の閾値Dtよりも小さく、かつ接線の傾きの変化量が所定の閾値よりも小さくなると、制御部30は、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報を発するとともに、第1洗浄ユニット16への次の基板Wの搬送動作を停止する。これにより、作業者は、上側ロールスポンジ77による基板Wの逆汚染が生じる前に、上側ロールスポンジ77を新しいロールスポンジに交換することができる。
【0139】
一実施形態では、制御部30は、差分が所定の閾値Dtよりも小さくなってから、所定の処理枚数NBの基板Wをスクラブ洗浄した後で、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報を発するとともに、第1洗浄ユニット16への次の基板Wの搬送動作を停止してもよい。
【0140】
上述した例では、表面性状測定装置60は、2つの測定ポイントPA,PBで上側ロールスポンジ77の表面データを取得しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、3つ以上の測定ポイントで上側ロールスポンジ77の表面データを取得してもよい。
【0141】
例えば、図12に仮想線(2点鎖線)で示すように、相対速度Vsがゼロとなる逆転点Tに測定ポイントPCを設定し、表面性状測定装置60は、さらに、この測定ポイントPCにおける表面データを取得する撮像装置61Cを備えていてもよい。さらに、表面性状測定装置60は、撮像装置61A,61Bを上側ロールスポンジ77の長手方向に移動させるカメラ移動機構63A、63Bを備えていてもよい。カメラ移動機構63A,63Bは、例えば、エアシリンダ、またはボールねじ機構などの直動機構である。この構成によれば、撮像装置61A,61Bを上側ロールスポンジ77の長手方向にそれぞれ移動させることで、撮像装置61A,61Bが表面データを取得する測定ポイントPA,PBの位置を変更することができる。したがって、撮像装置61A,61Bは、複数の測定ポイントで表面データを取得することができる。
【0142】
撮像装置61Aがカメラ移動機構63Aに接続される場合、撮像装置61B(および撮像装置61C)を省略してもよい。この場合、カメラ移動機構63Aが撮像装置61Aを上側ロールスポンジ77の長手方向に移動させることで、撮像装置61Aが複数の測定ポイント(例えば、測定ポイントPA,PB,PC)で表面データを取得可能である。
【0143】
3つ以上の測定ポイントで表面データを取得する場合、制御部30は、2つの測定ポイントの全ての組み合わせから上記差分を算出してもよい。例えば、3つの測定ポイントPA,PB,PCが設定される場合は、制御部30は、測定ポイントPAと測定ポイントPBで取得された表面データの差分D1と、測定ポイントPAと測定ポイントPCで取得された表面データの差分D2と、測定ポイントPBと測定ポイントPCで取得された表面データの差分D3を算出してもよい。この場合、制御部30は、上記3つの差分D1,D2,D3にそれぞれ対応する3つの所定の閾値Dt1,Dt2,Dt3を予め記憶している。制御部30は、上記3つの差分D1,D2,D3を、所定の閾値Dt1,Dt2,Dt3とそれぞれ比較する。
【0144】
制御部30は、3つの差分D1,D2,D3の全てが所定の閾値Dt1,Dt2,Dt3以上となったときに、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報を発してもよいし、3つの差分D1,D2,D3のうちの1つまたは2つが所定の閾値以上となったときに、上側ロールスポンジ77の交換を促す警報を発してもよい。一実施形態では、制御部30は、3つの差分D1,D2,D3のうちの1つが所定の閾値以上となったときに上記第2警報を発してもよい。
【0145】
図21は、他の実施形態に係る表面性状測定装置を示す模式図である。特に説明しない構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0146】
図21に示す表面性状測定装置60は、上側ロールスポンジ77の画像データを取得するためのカメラユニット62A,62Bと、該カメラユニット62A,62Bが取得した画像データを表面データに変換処理する画像処理ユニット65を備える。カメラユニット62A,62Bは、ケーブル(例えば、光ファイバー)64A,64Bを介して画像処理ユニット65に連結される。
【0147】
画像処理ユニット65は、制御部30に接続されており、画像データから変換された表面データを制御部30に送る。上述したように、制御部30は、測定ポイントPA,PBでカメラユニット62A,62Bが取得した画像データから変換された表面データの差分に基づいて、上側ロールスポンジ77の交換時期を決定する。
【0148】
図21に示すように、表面性状測定装置60は、測定ポイントPCの画像データを取得するカメラユニット62Cを備えていてもよい、この場合、カメラユニット62Cは、ケーブル(例えば、光ファイバー)64Cを介して画像処理ユニット65に連結される。
【0149】
第1洗浄ユニット16は、ロールスポンジ77,78に付着した汚染物質を洗浄する洗浄具洗浄装置を含んでいてもよい。図22は、洗浄具洗浄装置の一例を示す模式図である。
【0150】
図22に示す洗浄具洗浄装置100は、図4に示す待避位置P2の下方に配置され、純水等の洗浄液を収容する洗浄槽102と、該洗浄槽102内で回転する上側ロールスポンジ77に当接して該上側ロールスポンジ77を押圧洗浄する当接部材(洗浄部材)104と、該当接部材104を上側ロールスポンジ77に接近または離間させる駆動装置112と、洗浄槽102から洗浄液を排出する排液管113と、排液管113に接続されたパーティクルカウンタ114と、を備える。洗浄液は、図示しない供給管から洗浄槽102に供給される。洗浄具移動ユニット51によって待避位置P2(図4参照)に移動された上側ロールスポンジ77は、洗浄具移動ユニット51の昇降機構53によって、洗浄槽102内に移動(下降)される。
【0151】
当接部材104は、例えば、石英板であり、該当接部材104の全長は、上側ロールスポンジ77の全外周面を洗浄可能なように上側ロールスポンジ77の全長と略等しくなっている。この洗浄部材洗浄装置100では、基板Wのスクラブ洗浄を実施した上側ロールスポンジ77を、洗浄槽102内の洗浄液に浸し、さらに、当接部材104を回転する上側ロールスポンジ77に所定の押圧力で押し付けることで、該上側ロールスポンジ77を洗浄する。これにより、上側ロールスポンジ77に付着したパーティクル(汚染物質)が該上側ロールスポンジ77から除去される。図22に示すように、洗浄具洗浄装置100は、洗浄槽102内の洗浄液などに超音波を与える超音波発信器122を有していてもよい。
【0152】
パーティクルカウンタ114は、洗浄槽102から排出される洗浄液内のパーティクルの数を測定する装置である。パーティクルカウンタ114の測定値は、上側ロールスポンジ(洗浄具)77の汚染度に対応する。すなわち、パーティクルカウンタ114の測定値が高い場合は、上側ロールスポンジ77の汚染度が高いことを意味し、パーティクルカウンタ114の測定値が低い場合は、上側ロールスポンジ77の汚染度が低いことを意味する。
【0153】
このパーティクルカウンタ114は、制御部30(図1参照)に接続されており、パーティクルカウンタ114の測定値は、制御部30に送られる。制御部30は、パーティクルカウンタ114の測定値に基づいて、洗浄液の汚染度(すなわち、上側ロールスポンジ77の汚染度)を監視している。さらに、制御部30は、洗浄液の汚染度に基づいて駆動装置121をフィードバック制御する。具体的には、洗浄液の汚染度が高い(すなわち、上側ロールスポンジ77の汚染度が高い)場合は、制御部30は、駆動装置21に所定の制御信号を送信して、当接部材104が上側ロールスポンジ77を洗浄するための洗浄条件を変更する。
【0154】
洗浄槽102の底部には、ガラス等の透明材料で形成された平板状の観察壁105が設置され、その下部には、上述した表面性状測定装置60が配置されている。図22では、表面性状測定装置60の撮像装置61(または、カメラユニット62)が描かれている。さらに、図22では、画像処理ユニット65が仮想線(点線)で描かれている。このように、表面性状測定装置60の撮像装置61(または、カメラユニット62)は、観察壁105を介して洗浄槽102内の上側ロールスポンジ77の表面の表面データ(または、画像データ)を取得するように洗浄具洗浄装置100に取り付けられている。表面性状測定装置60の撮像装置61(または、カメラユニット62)は、洗浄具洗浄装置100の洗浄槽102内で回転するか、または静止する上側ロールスポンジ77の表面データを取得する。
【0155】
上述した実施形態では、第1洗浄ユニット(基板洗浄装置)16は、基板保持部の複数の(図2では、4つの)保持ローラー71,72,73,74で基板Wを水平姿勢に保持しながら、該基板Wの両面(上下面)を洗浄具であるロールスポンジ77,78で洗浄しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、図23に示すように、第1洗浄ユニット16は、基板保持部の複数の保持ローラーで基板Wを鉛直姿勢に保持しながら、該基板Wの両面をロールスポンジで洗浄してもよい。あるいは、図24に示すように、第1洗浄ユニット16は、基板保持部の複数の保持ローラーで基板Wをその表面が傾斜した状態で保持しながら、該基板Wの両面をロールスポンジで洗浄してもよい。
【0156】
図23に示す実施形態では、第1洗浄ユニット16は、基板Wを鉛直姿勢に支持し、かつ回転させる2つの保持ローラー72,73と、該保持ローラー72,73に支持された基板Wの一方の表面に接触するロールスポンジ77と、基板Wの一方の表面にリンス液(例えば純水)を供給するリンス液供給ノズル85と、基板Wの一方の表面に薬液を供給する薬液供給ノズル87とを備えている。図23に示す基板Wの裏面側には、基板Wの他方の表面に接触するロールスポンジと、基板Wの他方の表面にリンス液(例えば純水)を供給するリンス液供給ノズルと、基板Wの他方の表面に薬液を供給する薬液供給ノズルが設けられている。
【0157】
図24に示す実施形態では、第1洗浄ユニット16は、基板Wをその表面が傾斜した状態で保持し、かつ回転させる4つの保持ローラー(図24には、4つの保持ローラーのうちの2つの保持ローラー73,74が示されている)と、4つの保持ローラーに支持された基板Wの両面に接触するロールスポンジ77、78と、基板Wの一方の表面にリンス液(例えば純水)を供給するリンス液供給ノズル85Aと、基板Wの一方の表面に薬液を供給する薬液供給ノズル87Aと、基板Wの他方の表面にリンス液(例えば純水)を供給するリンス液供給ノズル85Bと、基板Wの他方の表面に薬液を供給する薬液供給ノズル87Bと、を備えている。
【0158】
図23および図24に示す実施形態でも、ロールスポンジ77(および、ロールスポンジ78)で基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すにつれて、ロールスポンジ77の劣化具合および汚染度は、該ロールスポンジ77(および、ロールスポンジ78)の長手方向に沿って大きく異なっていく。そのため、図23および図24に示す第1洗浄ユニット16でも、制御部30は、上述した方法を用いて、ロールスポンジ77(および、ロールスポンジ78)の適切な交換時期を決定する。
【0159】
具体的には、ロールスポンジ77(および、ロールスポンジ78)を基板Wの表面から離間した待避位置に移動させる。次いで、図12または図17に示すように、表面性状測定装置60の撮像装置61(または、カメラユニット62)でロールスポンジ77の少なくとも2つの測定ポイントで表面データを取得し、該2つの表面データの差分に基づいて、ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定する。上述したように、撮像装置61(または、カメラユニット62)が取得する表面データの例としては、二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパースペクトル画像データ、または偏光画像データが挙げられる。撮像装置61(または、カメラユニット62)は、待避位置に移動されたロールスポンジ77を回転させた状態で、または静止させた状態で表面データを取得することができる。
【0160】
本実施形態でも、実際にスクラブ洗浄に用いられているロールスポンジ77(および、ロールスポンジ78)の表面性状を表す表面データを、劣化具合の異なるロールスポンジ77の少なくとも2つの測定ポイントで取得し、その差分に基づいてロールスポンジ77の交換時期を判断する。したがって、ロールスポンジ77の適切な交換時期を決定することができる。
【0161】
図25は、図1に示す基板処理装置1の第2洗浄ユニット18を模式的に示す斜視図である。図25に示す第2洗浄ユニット18は、本発明の他の実施形態に係る基板洗浄装置である。図25に示すように、ペン型の基板洗浄装置は、基板(ウエハ)Wを保持して回転させる基板保持部41と、基板Wの表面に接触するペンスポンジ(洗浄具)42と、ペンスポンジ42を保持するアーム44と、基板Wの表面にリンス液(通常は純水)を供給するリンス液供給ノズル46と、基板Wの表面に薬液を供給する薬液供給ノズル47とを備えている。ペンスポンジ42は、アーム44内に配置された洗浄具回転機構(図示せず)に連結されており、ペンスポンジ42は鉛直方向に延びるその中心軸線まわりに回転されるようになっている。
【0162】
基板保持部41は、基板Wの周縁部を保持する複数の(図25では4つの)ローラー45を備えている。これらのローラー45は、それぞれ同じ方向に同じ速度で回転するように構成されている。ローラー45が基板Wを水平に保持した状態で、ローラー45が回転することにより、基板Wはその中心軸線まわりに矢印で示す方向に回転される。
【0163】
アーム44は基板Wの上方に配置されている。アーム44の一端にはペンスポンジ42が連結され、アーム44の他端には旋回軸50が連結されている。ペンスポンジ42は、アーム44および旋回軸50を介して洗浄具移動機構51に連結されている。より具体的には、旋回軸50には、アーム44を旋回させる洗浄具移動機構51が連結されている。洗浄具移動機構51は、旋回軸50を所定の角度だけ回転させることにより、アーム44を基板Wと平行な平面内で旋回させるようになっている。アーム44の旋回により、これに支持されたペンスポンジ42がウエハWの半径方向に移動(揺動)する。さらに、洗浄具移動機構51は、旋回軸50を上下動させることが可能に構成されており、これによりペンスポンジ42を所定の圧力で基板Wの表面に押し付けることができる。ペンスポンジ42の下面は、平坦なスクラブ面を構成しており、このスクラブ面が基板Wの表面に摺接する。
【0164】
基板Wは次のようにして洗浄される。まず、基板Wをその中心軸線まわりに回転させる。次いで、洗浄液供給ノズル47から基板Wの表面に洗浄液が供給される。この状態で、ペンスポンジ42が回転しながら基板Wの表面に押し付けられ、さらにペンスポンジ42が基板Wの半径方向に揺動する。洗浄液の存在下でペンスポンジ42が基板Wの表面に摺接することにより、基板Wがスクラブ洗浄される。スクラブ洗浄後、基板Wから洗浄液を洗い流すために、リンス液供給ノズル46から回転する基板Wの表面にリンス液が供給される。
【0165】
ペンスポンジ42は、例えば、PVAなどの樹脂から構成されており、多孔質構造を有する。このため、基板Wのスクラブ洗浄を繰り返すと、ペンスポンジ42の内部に砥粒や研磨屑などの汚染物質が蓄積し、洗浄性能が低下するとともに、基板Wの逆汚染が生じることがある。そこで、ペンスポンジ42から汚染物質を取り除くために、第2洗浄ユニット18はペンスポンジ42を洗浄するための洗浄部材80をさらに備えている。
【0166】
図25に示すように、洗浄部材80は、基板保持部41に保持された基板Wに隣接して配置されている。図25に示す洗浄部材80は、円錐台形の形状を有している。この洗浄部材80の上面は、ペンスポンジ42の下面(スクラブ面)に接触する洗浄面81を構成する。洗浄部材80の洗浄面81は、円形の中央部81aと、この中央部81aから外側に広がりつつ下方に傾斜する傾斜部81bとを有している。この傾斜部81bは、環状の形状を有している。
【0167】
ペンスポンジ42が洗浄部材80の上方位置に到達するまで、アーム44は洗浄具移動機構51によって基板Wの半径方向外側に移動される。さらに、ペンスポンジ42は、その軸心まわりに回転しながら、洗浄具移動機構51によって洗浄部材80の洗浄面81に押し付けられる。洗浄部材80に隣接して純水供給ノズル70が配置されており、洗浄部材80に接触しているペンスポンジ42に純水供給ノズル70から純水が供給される。
【0168】
洗浄部材80の中央部81aは、上方に突出しており、中央部81aの周囲の他の部分(すなわち傾斜部81b)よりも高い位置にある。したがって、ペンスポンジ42が下降すると、ペンスポンジ42の下面の中央部が洗浄面81の突出した中央部81aに接触する。ペンスポンジ42がさらに下降すると、ペンスポンジ42の下面の外周部は、洗浄面81の傾斜部81bに接触する。このようにして、ペンスポンジ42の下面全体が洗浄部材80の洗浄面81に接触する。洗浄部材80は、石英、樹脂、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどから構成される。
【0169】
洗浄部材80は、円錐台形状を有しているので、洗浄部材80の中央部81aは、その周囲の他の部分(すなわち傾斜部81b)よりも高い位置にある。したがって、ペンスポンジ42の中央部は、その他の部分よりも洗浄部材80に強く押し付けられ、ペンスポンジ42の中央部内部に入り込んだ砥粒や研磨屑などのパーティクルを除去することができる。ペンスポンジ42から一旦除去されたパーティクルは、純水とともに洗浄部材80の傾斜部81b上を速やかに流下する。したがって、パーティクルがペンスポンジ42に再付着することが防止される。
【0170】
本実施形態では、基板Wの表面を洗浄するために、回転するペンスポンジ42を、回転する基板W上で揺動させる。ペンスポンジ42の回転速度の大きさは、該ペンスポンジ42の回転軸上でゼロとなり、ペンスポンジ42の周縁に向かって徐々に大きくなる。そのため、ペンスポンジ42のスクラブ面の劣化具合および汚染度は、その半径方向に異なる。
【0171】
そこで、本実施形態でも、表面性状測定装置60は、ペンスポンジ(洗浄具)42の少なくとも2つの測定ポイントで該ペンスポンジ42の表面データを取得し、該2つの表面データの差分に基づいて、ペンスポンジ42の適切な交換時期を決定する。
【0172】
図26Aは、ペンスポンジ42の表面データを取得する表面性状測定装置60の一例を示す模式図であり、図26Bは、図26Aに示すペンスポンジ42の下面図であり、図26Cは、図26Aに示す表面性状測定装置60の変形例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0173】
図26Aおよび図26Bに示すように、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61B(または、カメラユニット62A,62B)は、ペンスポンジ42のスクラブ面の半径方向に離間した2つの測定ポイントPA,PBで該ペンスポンジ42の表面データを取得する。この例では、撮像装置61A,61B(または、カメラユニット62A,62B)は、洗浄部材80の上方に位置する待避位置でペンスポンジ42の表面データを取得する。
【0174】
図26Bに示した例では、測定ポイントPAはペンスポンジ42のスクラブ面の中心にある。表面性状測定装置60が撮像装置61A,61B(または、カメラユニット62A,62B)を、ペンスポンジ42の半径方向に移動させるカメラ移動機構63A、63Bを有する場合は、スクラブ面上の測定ポイントPA,PBの位置を任意に変更することができる。
【0175】
さらに、図26Cに示すように、表面性状測定装置60は、ペンスポンジ42の側面に設定された測定ポイントPCの表面データを取得する撮像装置61C(または、カメラユニット62C)を有していてもよい。ペンスポンジ42は、撮像装置61A,61B(または、カメラユニット62A,62B)がペンスポンジ42のスクラブ面の表面データを取得した後で、洗浄部材80に接触される。撮像装置61C(または、カメラユニット62C)は、洗浄部材80に押し付けられているペンスポンジ42の側面の表面データを取得する。表面性状測定装置60が撮像装置61C(または、カメラユニット62C)を、鉛直方向に移動させるカメラ移動機構63Cを有する場合は、ペンスポンジ42の側面上の測定ポイントPCの位置を任意に変更することができる。
【0176】
本実施形態でも、実際にスクラブ洗浄に用いられているペンスポンジ42の表面性状を表す表面データを、劣化具合の異なるペンスポンジ42の少なくとも2つの測定ポイントで取得し、その差分に基づいてペンスポンジ42の交換時期を判断する。したがって、ペンスポンジ42の適切な交換時期を決定することができる。
【0177】
上述した実施形態では、制御部30は、表面性状測定装置60が取得した少なくとも2つの表面データの差分に基づいてロールスポンジ77,78、およびペンスポンジ42の交換時期を決定する。同様の方法を用いて、制御部30は、ロールスポンジ77,78、およびペンスポンジ42の「初期慣らし(ブレークイン)」の完了を決定してもよい。
【0178】
従来から、洗浄具を新しい洗浄具に交換した後で、該新しい洗浄具を製品基板と同一形状を有するダミー基板に擦り付けるブレークイン動作を所定枚数だけ繰り返す初期運転を実施している。初期運転時に洗浄具が擦り付けられる基板の数は、従来の洗浄具の交換時期を判別していた方法と同様に、品質管理および/または作業者の経験則に基づいて決定されていた。この場合、所定枚数の基板に擦り付けられた洗浄具の表面状態(例えば、洗浄具の表面の削れ程度、または洗浄具の表面に施されたコーティングの剥離の程度)が未だ目標となる表面状態に到達していなければ、洗浄具は適切な洗浄能力を発揮することができない。この場合、製品基板の洗浄不良が発生するおそれがある。あるいは、所定枚数の基板に擦り付けられた洗浄具の表面状態が目標となる表面状態を大きく超えてしまっていると、該洗浄具が洗浄可能な基板の枚数が減少してしまい、基板洗浄装置のランニングコストの上昇につながる。
【0179】
一方で、ブレークイン動作を繰り返すにつれて、洗浄具の表面性状が変化する。このブレークイン動作時の表面性状の変化も、洗浄具の劣化具合および汚染度と同様に、表面データを取得する測定ポイントに応じて異なる。そこで、本実施形態では、制御部30は、洗浄具の交換時期を決定する方法と同様の方法を用いて、ブレークイン確認動作を実行する。ブレークイン確認動作は、洗浄部(ロールスポンジ77,78、またはペンスポンジ42)を新しい洗浄具に交換した後で、該洗浄具の「初期慣らし(ブレークイン)」の完了を決定するために実行される処理である。
【0180】
具体的には、図12図17A図17B、または図26A乃至図26Cに示すように、新しい洗浄具(ロールスポンジ77,78、またはペンスポンジ42)を基板Wの表面から離間した待避位置に移動させ、表面性状測定装置60の撮像装置61(または、カメラユニット62)で洗浄具の少なくとも2つの測定ポイントで表面データを取得し、該2つの表面データの差分に基づいて、洗浄具の初期慣らしの完了を決定する。上述したように、撮像装置61(または、カメラユニット62)が取得する表面データの例としては、二極化画像データ、赤外吸収スペクトルのスペクトルパターン、歪み画像データ、三次元画像データ、分光画像データ、ハイパーペクトル画像データ、および偏光画像データが挙げられる。撮像装置61(または、カメラユニット62)は、待避位置に移動された洗浄具を回転させた状態で、または静止させた状態で表面データを取得することができる。
【0181】
基板処理装置1、または基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)16,18は、洗浄具(ロールスポンジ77,78、またはペンスポンジ42)の適切な交換時期を、以下で説明する機械学習器で機械学習を行うことで構築された学習済モデルを用いて予測乃至決定してもよい。
【0182】
機械学習は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)のアルゴリズムである学習アルゴリズムによって実行され、機械学習によって、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を予測する学習済モデルが構築される。学習済モデルを構築する学習アルゴリズムは特に限定されない。例えば、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を学習するための学習アルゴリズムとして、「教師あり学習」、「教師なし学習」、「強化学習」、「ニューラルネットワーク」などの公知の学習アルゴリズムを採用できる。
【0183】
図27は、機械学習器の一例を示す模式図である。図27に示す機械学習器300は、制御部30に連結され、基板処理装置1の洗浄ユニット16,18に設けられた洗浄具77,78,42の適切な交換時期を学習する装置である。機械学習器300は、状態観測部301と、交換データ取得部302と、学習部303とを備えている。図示はしないが、制御部30は、図27に示す機械学習器300を内蔵してもよい。この場合、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を予測する学習済モデルは、制御部30のプロセッサ30aを用いて構築される。
【0184】
状態観測部301は、機械学習の入力値としての状態変数を観測する。この状態変数は、表面性状装置60が取得した表面データを少なくとも含んでいる。一実施形態では、状態変数は、軸受装置90の軸受90a(図3参照)に取り付けられた振動計97の出力値、および/または電動機93のトルクセンサ93b(図3参照)の出力値をさらに含んでいてもよい。さらに、状態変数は、洗浄具洗浄装置100に設けられたパーティクルカウンタ114の測定値を含んでいてもよい。
【0185】
交換データ取得部302は、交換判定部310から交換データを取得する。交換データは、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を予測する学習済モデルを構築する際に使用されるデータであり、洗浄具77,78,42を交換すべきか否かを公知の判定方法にしたがって判定したデータである。交換データは、状態観測部301に入力される状態変数に関連付けられている(結びつけられている)。
【0186】
機械学習器300によって実行される機械学習の一例は以下の通りである。最初に、状態観測部301が少なくとも表面データを含む状態変数を取得し、交換データ取得部302が、状態観測部301が取得した状態変数に関連付けられた洗浄具77,78,42の交換データを取得する。学習部303は、状態観測部52から取得した状態変数と、交換データ取得部51から取得した交換データとの組合せである訓練データセットに基づいて洗浄具77,78,42の適切な交換時期を学習する。機械学習器300で実行される機械学習は、機械学習装置300が洗浄部77,78,42の適切な交換時期を出力するまで繰返し実行される。
【0187】
一実施形態では、機械学習装置300の学習部303が実行する機械学習は、ニューラルネットワークを用いた機械学習、特に、ディープラーニングであってもよい。ディープラーニングは、隠れ層(中間層ともいう)が多層化されたニューラルネットワークをベースとする機械学習法である。本明細書では、入力層と、二層以上の隠れ層と、出力層で構成されるニューラルネットワークを用いた機械学習をディープラーニングと称する。
【0188】
図28は、ニューラルネットワークの構造の一例を示す模式図である。図28に示すニューラルネットワークは、入力層350と、複数の隠れ層351と、出力層352を有している。ニューラルネットワークは、状態観測部301によって取得された状態変数と、該状態変数に関連付けられ、交換データ取得部302によって取得された交換データとの多数の組合せからなる訓練データセットに基づいて、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を学習する。すなわち、ニューラルネットワークは、状態変数と洗浄具77,78,42の交換時期との関係を学習する。このような機械学習は所謂「教師あり学習」と称される。教師あり学習では、状態変数と、この状態変数に関連付けられた交換データ(ラベル)の組み合わせを大量にニューラルネットワークに入力することで、それらの関係性を帰納的に学習する。
【0189】
一実施形態では、ニューラルネットワークは、所謂「教師無し学習」によって洗浄具77,78,42の適切な交換時期を学習してもよい。教師無し学習とは、例えば、状態変数のみを大量にニューラルネットワークに入力し、該状態変数がどのように分布をしているか学習する。そして、教師無し学習では、状態変数に対応する教師出力データ(交換データ)をニューラルネットワークに入力しなくても、入力された状態変数に対して圧縮・分類・整形などを行い、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を出力するための学習済モデルを構築する。すなわち、教師無し学習では、ニューラルネットワークは、大量に入力された状態変数を、ある似た特徴を有するグループにクラス分けする。そして、ニューラルネットワークは、クラス分けされた複数のグループに対して、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を出力するための所定の基準を設け、それらの関係が最適化されるように学習済モデルを構築することで、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を出力する。
【0190】
さらに、一実施形態では、学習部303で実行される機械学習は、状態変数の経時的な変化を学習済モデルに反映するために、所謂「リカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)」を使用してもよい。リカレントニューラルネットワークは、現時刻だけの状態変数だけでなく、これまでに入力層351に入力された状態変数も利用する。リカレントニューラルネットワークでは、時間軸に沿った状態変数の変化を展開して考えることで、これまでに入力された状態変数の遷移を踏まえて、洗浄具77,78,42の適切な交換時期を推定する学習済モデルを構築することができる。
【0191】
図29Aおよび図29Bは、リカレントニューラルネットワークの一例である単純再帰型ネットワーク(エルマンネットワーク:Elman Network)を説明するための展開図である。より具体的には、図29Aは、エルマンネットワークの時間軸展開を示す模式図であり、図29Bは、誤差逆伝播法(「バックプロパゲーション」とも称される)のバックプロパゲーションスルータイムを示す模式図である。
【0192】
図29Aおよび図29Bに示すようなエルマンネットワークでは、通常のニューラルネットワークと異なり、時間を遡るように誤差が伝搬する(図29B参照)。このようなリカレントニューラルネットワーク構造を、学習部303が実行する機械学習のニューラルネットワークに適用することで、これまで入力された状態変数の遷移を踏まえた洗浄具77,78,42の適切な交換時期を出力する学習済モデルを構築することができる。
【0193】
このように構築された学習済モデルは、制御部30の記憶装置30b(図27参照)に格納されている。制御部30は、記憶装置30bに電気的に格納されたプログラムに従って動作する。すなわち、制御部30のプロセッサ30aは、表面性状測定装置60から制御部30に送信された表面データを少なくとも含む状態変数を、学習済モデルの入力層351に入力し、入力された状態変数(および、状態変数の経時的な変化量)から、洗浄具77,78,42の表面データが所定の閾値Dtに到達するまでの基板Wの処理枚数を予測して、該予測された処理枚数を出力層352から出力するための演算を実行する。すなわち、制御部30は、洗浄具77,78,42の交換時期(すなわち、寿命)に到達するまでに処理可能な基板Wの枚数(以下、予測処理枚数)を取得することができる。さらに、制御部30は、洗浄具77,78,42の使用を開始してからの処理枚数に、出力層303から出力された予測処理枚数を加算することで、洗浄具77,78,42の交換時期(すなわち、洗浄具77,78,42の寿命)を取得することができる。
【0194】
出力層352から出力された洗浄具の予測処理枚数、および制御部30が取得した洗浄具77,78,42の交換時期が正常データと同等であると判断された場合、制御部30は、この処理枚数および洗浄具の交換時期を追加の教師データとして交換判定部310に蓄積してもよい。この場合、機械学習器300は、教師データおよび追加の教師データを基にした機械学習を通じて、学習済モデルを更新していく。これにより、学習済モデルから出力される予測時間および洗浄具の交換時期の精度を向上させることができる。
【0195】
上側ロールスポンジ77の劣化が進行すると、軸受装置90の軸受90a(図3参照)に取り付けられた振動計97の出力値が上昇し、電動機93のトルクセンサ93b(図3参照)の出力値も上昇する。この現象は、下側ロールスポンジ78でも同様に発生する。したがって、上記ニューラルネットワークの入力層351に、ロールスポンジ77,78が基板Wをスクラブ洗浄しているときの振動計97の出力値および/またはトルクセンサ93bの出力値を状態変数として入力することで、洗浄具77,78,42の予測処理枚数をより精度よく出力層352から出力する学習済モデルを構築することができる。
【0196】
さらに、上側ロールスポンジ77の汚染度が高まると、パーティクルカウンタ114(図22参照)の測定値が上昇する。この現象は、下側ロールスポンジ78でも同様に発生する。したがって、上記ニューラルネットワークの入力層351に、パーティクルカウンタ114の測定値を状態変数として入力することで、洗浄具77,78の予測処理枚数をより精度よく出力層352から出力する学習済モデルを構築することができる。
【0197】
上述した実施形態では、基板処理装置1は、複数の研磨ユニット14a~14dを備えた基板研磨装置であるが、基板処理装置1は、これらの実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置1は、少なくとも1つのめっき槽を有し、該めっき槽で基板にめっき処理を施す基板めっき装置であってもよい。この場合、めっき槽に浸漬する前の基板および/または浸漬した後の基板を洗浄するために、上述した基板洗浄ユニット(基板洗浄装置)を使用することができる。あるいは、基板処理装置1は、様々なプロセスが施された後の基板を洗浄するための基板洗浄装置であってもよい。この場合、基板洗浄装置には、上述した基板洗浄ユニットが組み込まれる。
【0198】
さらに、上述した実施形態では、円形状を有する基板であるウエハを洗浄具によってスクラブ洗浄しているが、基板保持装置に保持された基板を洗浄具でスクラブ洗浄する限り、基板は、円形状を有するウエハに限定されない。例えば、基板は、矩形形状を有するガラス基板、または液晶パネルであってもよい。この場合、基板保持装置は、ガラス基板、または液晶パネルを回転させなくてもよい。さらに、上述した実施形態では、洗浄具は、ロールスポンジまたはペンスポンジであるが、洗浄具は、洗浄ブラシであってもよい。
【0199】
さらに、上述した実施形態では、表面性状測定装置60が取得した表面データに基づいて、洗浄具の適切な交換時期を決定しているが、表面性状測定装置60を研磨ユニット(研磨装置)14a~14dの少なくとも1つに配置して、研磨パッドの適切な交換時期を決定してもよい。
【0200】
図30は、一実施形態に係る研磨ユニット(研磨装置)を模式的に示す斜視図である。図1に示す基板研磨装置の研磨ユニット14a~14dの少なくとも1つが、図30に示す研磨ユニット(研磨装置)である。
【0201】
図30に示す研磨ユニットは、研磨面133aを有する研磨パッド133が取り付けられた研磨テーブル135と、基板Wを保持しかつ基板Wを研磨テーブル135上の研磨パッド133に押圧する研磨ヘッド(トップリングとも称される)137と、研磨パッド133に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル138と、研磨パッド133の研磨面133aのドレッシングを行うためのドレッサ141を有するドレッシング装置140と、を備えている。一実施形態では、ドレッシング装置140を省略してもよい。
【0202】
研磨テーブル133は、テーブル軸135aを介してその下方に配置されるテーブルモータ131に連結されており、このテーブルモータ131により研磨テーブル135が矢印で示す方向に回転されるようになっている。この研磨テーブル135の上面には研磨パッド133が貼付されており、研磨パッド133の上面が基板Wを研磨する研磨面133aを構成している。研磨ヘッド137はヘッドシャフト136の下端に連結されている。研磨ヘッド137は、真空吸引によりその下面に基板Wを保持できるように構成されている。ヘッドシャフト136は、上下動機構(図示せず)により上下動するようになっている。
【0203】
ヘッドシャフト136は、ヘッドアーム142に回転自在に支持されており、ヘッドアーム142は、ヘッド旋回モータ154に駆動されて、ヘッド旋回軸143を中心として旋回するように構成されている。ヘッド旋回モータ154を駆動することにより、研磨ヘッド137は、研磨パッド33上を該研磨パッド33の略半径方向に揺動することができる。さらに、ヘッド旋回モータ154を駆動することにより、研磨ヘッド137は、研磨パッド133の上方の研磨位置と、研磨パッド133の側方の待機位置との間を移動する。
【0204】
基板Wの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド137および研磨テーブル135をそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル138から研磨パッド133上に研磨液(スラリー)を供給する。この状態で、研磨ヘッド137は、基板Wを研磨パッド133の研磨面133aに押し付ける。基板Wの表面は、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用と研磨液の化学的作用により研磨される。研磨終了後は、ドレッシング装置140による研磨面133aのドレッシング(コンディショニング)が行われる。
【0205】
図30に示す研磨ユニットでは、基板Wの研磨中に、ヘッド旋回モータ154を駆動することにより、研磨ヘッド137を、研磨パッド133上を該研磨パッド133の略半径方向に揺動させる。図31は、研磨パッド133上を揺動する研磨ヘッド137の様子を示す模式図である。図31に示すように、研磨ヘッド137は、その下面に保持された基板Wが研磨パッド133の中心CPと外縁との間で移動するように、研磨パッド133の略半径方向に揺動する。
【0206】
研磨パッド133も樹脂から構成されており、基板Wの研磨を繰り返すにつれて、研磨パッド133の表面が劣化する。したがって、研磨パッド133を適切なタイミングで、新たな研磨パッドに交換する必要がある。
【0207】
そこで、本実施形態では、上述した表面性状測定装置60を用いて、研磨パッド133の適切な交換時期を決定する。特に説明しない本実施形態の表面性状測定装置60の構成は、上述した表面性状測定装置60の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0208】
図30に示す研磨装置では、基板Wの研磨中、研磨ヘッド137が研磨パッド133の略半径方向に揺動する。そのため、研磨パッド133の劣化具合および汚染度は、該研磨パッド133の半径方向で異なる。したがって、研磨パッド137の適切な交換時期を決定するために、表面性状測定装置60は、研磨パッド133の半径方向で異なる2つの測定ポイントで該研磨パッド133の表面データを取得し、該2つの表面データの差分に基づいて、研磨パッド133の適切な交換時期を決定する。
【0209】
図32は、表面性状測定装置60の2つの撮像装置61A,61Bが研磨パッド133の半径方向に異なる2つの測定ポイントPA,PBで表面データを取得している様子を示す模式図である。
【0210】
図32に示すように、研磨パッド133は、中心CPから該研磨パッド133の半径の半分の位置にある境界線Lで、中央領域CRpと外縁領域ERpに分割される。一方の撮像装置61Aは、境界線L上またはその近傍付近の表面データを取得し、他方の撮像装置61Bは、外縁領域ERp上の表面データを取得する。一実施形態では、他方の撮像装置61Bは、中央領域CRp上の表面データを取得してもよい(図32の二点鎖線参照)。図示はしないが、表面性状測定装置60が撮像装置61Aを研磨パッド133の半径方向に移動させるカメラ移動機構を有している場合は、撮像装置61Bを省略してもよい。
【0211】
本実施形態では、表面性状測定装置60の撮像装置61は、ハイパースペクトルカメラとして構成されるカメラユニット(図示せず)と、ハイパースペクトルカメラが取得したハイパースペクトル画像データを、各波長に対するスペクトル強度のグラフに変換する画像処理ユニット(図示せず)を備えている。
【0212】
上述した基板洗浄装置の実施形態と同様に、撮像装置61は、所定の波長におけるスペクトル強度の変化量を算出することで、研磨パッド133の劣化具合を把握することができる。制御部30は、所定枚数NAの基板Wを研磨するごとに、研磨ヘッド137を待機位置に移動させ(図32参照)、その後、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61Bを用いて、測定ポイントPA,PBで取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、所定の波長における測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との差分を算出する。そして、制御部30は、算出された差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0213】
差分が所定の閾値以上である場合に、制御部30は、研磨パッド133が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、研磨パッド133の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、研磨ユニットへの基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wを研磨ユニットに搬送し、基板Wの研磨処理を継続する。
【0214】
一実施態様では、差分が所定の第1の閾値以上である場合に、制御部30は、研磨パッド133を目立てする時期(すなわち、ドレッシング時期)に到達したと決定し、研磨パッド133のドレッサ141によるドレッシング処理を開始してもよい。この場合、ドレッシング処理後に、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61Bを用いて、測定ポイントPA,PBで取得されたハイパースペクトル画像データから変換されたスペクトル強度グラフを表面データとして取得し、ドレッシング前後の測定ポイントPA,PBのスペクトル強度の差分に変化がなければ、制御部30は、研磨パッド133が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定してもよい。
【0215】
さらに、一実施形態では、制御部30は、接線の傾きに基づいて洗浄具の適切な交換時期を決定する上述した方法を、研磨パッド133に適用してもよい。この場合、制御部30は、接線の傾きの変化量と比較される所定の閾値を予め記憶しており、接線の傾きの変化量と上記差分とに基づいて、研磨パッド133適切な交換時期を決定する。
【0216】
図16を参照して説明したように、所定の閾値(第1閾値)Dtから所定値(Δt)は減算することによって事前閾値(第2閾値)Dt’を予め決定しておいてもよい。この場合、制御部30は、所定の波長における測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との差分が事前閾値Dt’以上となったときに、第2警報を出力する。第2警報は、研磨パッド133を直ちに交換する必要はないが、まもなく研磨パッド133の使用期間が交換時期に達することを作業者に知らせる警報である。第2警報によって、作業者は新しい研磨パッド133を予め用意しておくことができる。
【0217】
上述した基板洗浄装置の実施形態と同様に、1つの測定ポイントPA(またはPB)で取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを利用して研磨パッド133の交換時期を決定してもよい。より具体的には、所定の枚数NAの基板Wの研磨処理を繰り返すごとに、表面性状測定装置60の撮像装置61Aを用いて、測定ポイントPAで取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、今回取得された測定ポイントPAでの所定の波長におけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長における測定ポイントPAのスペクトル強度との差分を算出する。そして、制御部30は、この差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0218】
今回取得された所定の波長におけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長におけるスペクトル強度との差分が所定の閾値よりも小さい場合に、制御部30は、研磨パッド133が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、研磨パッド133の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施態様においては、今回取得された所定の波長におけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長におけるスペクトル強度との差分が所定の閾値よりも小さく、かつ、今回取得されたスペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きと、前回取得されたスペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きとの差分が所定の閾値よりも小さい場合に、制御部30は、研磨パッド133が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定してもよい。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、研磨ユニットへの基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wを研磨ユニットに搬送し、基板Wの研磨処理を継続する。
【0219】
一実施形態では、制御部30は、差分が所定の閾値よりも小さくなってから、所定の処理枚数NBの基板Wを研磨した後で、研磨パッド133の交換を促す警報を発するとともに、研磨ユニットへの次の基板Wの搬送動作を停止してもよい。
【0220】
基板処理装置は、研磨処理後の基板Wに対して基板Wよりも小径の接触部材を基板に押し付けて相対運動させながら、基板Wをわずかに追加研磨したり、基板の付着物を除去および洗浄したりするバフ処理装置を有していてもよい。バフ処理装置は、例えば、図1に示す第1洗浄ユニット16に代えて基板処理装置に配置されてもよいし、研磨ユニット14a~14dと、第1洗浄ユニット16との間に配置されてもよい。
【0221】
図33は、一実施形態に係るバフ処理装置を示す模式図である。図33に示すバフ処理装置は、基板Wが設置されるバフテーブル200と、バフ処理コンポーネント250と、バフ処理液を供給するための液供給系統270と、バフパッド(バフ部材)252のコンディショニング(目立て)を行うためのコンディショニング部280と、を備える。バフ処理コンポーネント250は、基板Wの処理面にバフ処理を行うためのバフパッド252が取り付けられたバフヘッド255と、バフヘッド255を保持するバフアーム256と、を備える。
【0222】
バフ処理液は、DIW(純水)、洗浄薬液、及び、スラリーのような研磨液、の少なくとも1つを含む。バフ処理の方式としては主に2種類ある。1つは、基板W上に残留するスラリーや研磨生成物の残渣といった汚染物をバフパッド252との接触時に除去する方式である。もう1つの方式は上記汚染物が付着した基板Wを研磨等により一定量除去する方式である。前者においては、バフ処理液は洗浄薬液やDIWが好ましく、後者においては研磨液が好ましい。また、バフパッド252は、例えば発泡ポリウレタン系のハードパッド、スウェード系のソフトパッド、又は、スポンジなどで形成される。バフパッド252の種類は基板Wの表面の材質や除去すべき汚染物の状態に対して適宜選択すればよい。また、バフパッド252の表面には、例えば、同心円状溝やXY溝、渦巻き溝、放射状溝といった溝形状が施されていてもよい。さらに、バフパッド252を貫通する穴を少なくとも1つ以上バフパッド252内に設け、本穴を通してバフ処理液を供給してもよい。また、バフパッド252を、例えば、PVAスポンジのような、バフ処理液が浸透可能なスポンジ状の材料から構成してもよい。これらにより、バフパッド面内でのバフ処理液の流れ分布の均一化やバフ処理で除去された汚染物の速やかな排出が可能となる。
【0223】
バフテーブル200は、基板Wを吸着する機構を有する。また、バフテーブル200は、図示していない駆動機構によって回転軸A周りに回転できるようになっている。一実施形態では、バフテーブル200は、図示しない駆動機構によって、基板Wに角度回転運動、又は、スクロール運動をさせるようになっていてもよい。バフパッド252は、バフヘッド255の基板Wに対向する面に取り付けられる。バフヘッド255は、図示しない駆動機構によって回転軸B周りに回転できるようになっている。また、バフヘッド255は、図示しない駆動機構によってバフパッド252を基板Wの処理面に押圧できるようになっている。バフアーム256は、バフヘッド255を矢印Cに示すように基板Wの半径もしくは直径の範囲内で移動可能である。また、バフアーム256は、バフパッド252がコンディショニング部280に対向する位置までバフヘッド255を揺動できるようになっている。
【0224】
コンディショニング部280は、バフパッド252の表面をコンディショニングするための部材である。コンディショニング部280は、ドレステーブル281と、ドレステーブル281に設置されたドレッサ282と、を備える。ドレステーブル281は、図示しない駆動機構によって回転軸D周りに回転できるようになっている。また、ドレステーブル281は、図示しない駆動機構によってドレッサ282にスクロール運動をさせるようになっていてもよい。
【0225】
バフ処理装置は、バフパッド252のコンディショニングを行う際には、バフパッド252がドレッサ282に対向する位置になるまでバフアーム256を旋回させる。バフ処理装置は、ドレステーブル281を回転軸D周りに回転させるとともにバフヘッド255を回転させ、バフパッド252をドレッサ282に押し付けることによって、バフパッド252のコンディショニングを行う。
【0226】
液供給系統270は、基板Wの表面に純水(DIW)を供給するための純水ノズル271と、基板Wの表面に薬液を供給するための薬液ノズル272と、基板Wの表面にスラリーを供給するためのスラリーノズル273と、を備える。
【0227】
バフ処理装置は、基板Wに処理液を供給するとともにバフテーブル200を回転軸A周りに回転させ、バフパッド252を基板Wの表面に押圧し、バフヘッド255を回転軸B周りに回転させながら矢印C方向に揺動することによって、基板Wにバフ処理を行う。こで、バフ処理とは、バフ研磨処理とバフ洗浄処理の少なくとも一方を含む。
【0228】
バフ研磨処理とは、基板Wに対してバフパッド252を接触させながら、基板Wとバフパッド252を相対運動させ、基板Wとバフパッド252との間にスラリーなどの研磨剤を介在させることにより基板Wの表面をわずかに削り取る処理である。バフ研磨処理によって、汚染物が付着した表層部の除去、研磨ユニット14a~14dにおける主研磨で除去できなかった箇所の追加除去、又は主研磨後のモフォロジー改善、を実現することができる。
【0229】
バフ洗浄処理とは、基板Wに対してバフパッド252を接触させながら、基板Wとバフパッド252を相対運動させ、基板Wとバフパッド252との間に洗浄液(例えば、薬液、又は、薬液と純水)を介在させることにより、基板Wの表面の汚染物を除去したり、表面を改質したりする処理である。
【0230】
バフパッド252も樹脂から構成されており、基板Wのバフ処理を繰り返すにつれて、バフパッド252の表面が劣化する。したがって、バフパッド252を適切なタイミングで、新たなバフパッド252に交換する必要がある。
【0231】
そこで、本実施形態では、上述した表面性状測定装置60を用いて、バフパッド252の適切な交換時期を決定する。特に説明しない本実施形態の表面性状測定装置60の構成は、上述した表面性状測定装置60の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0232】
図34は、表面性状測定装置60の2つの撮像装置61A,61Bがバフパッド252の半径方向に異なる2つの測定ポイントPA,PBで表面データを取得している様子を示す模式図である。
【0233】
図34に示すように、バフパッド252は、中心CPから該バフパッド252の半径の半分の位置にある境界線L’で、中央領域CRbと外縁領域ERbに分割される。一方の撮像装置61Aは、境界線L’上またはその近傍付近の表面データを取得し、他方の撮像装置61Bは、外縁領域ERb上の表面データを取得する。一実施形態では、他方の撮像装置61Bは、中央領域CRb上の表面データを取得してもよい(図34の二点鎖線参照)。図示はしないが、表面性状測定装置60が撮像装置61Aをバフパッド252の半径方向に移動させるカメラ移動機構を有している場合は、撮像装置61Bを省略してもよい。
【0234】
本実施形態でも、表面性状測定装置60の撮像装置61は、ハイパースペクトルカメラとして構成されるカメラユニット(図示せず)と、ハイパースペクトルカメラが取得したハイパースペクトル画像データを、各波長に対するスペクトル強度のグラフに変換する画像処理ユニット(図示せず)を備えている。
【0235】
上述した基板洗浄装置の実施形態と同様に、撮像装置61は、所定の波長におけるスペクトル強度の変化量を算出することで、バフパッド252の劣化具合を把握することができる。制御部30は、所定枚数NAの基板Wをバフ処理するごとに、バフパッド252をドレッサ282の上方に移動させ、その後、表面性状測定装置60の撮像装置61A,61Bを用いて、測定ポイントPA,PBで取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、所定の波長における測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との差分を算出し、算出された差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0236】
差分が所定の閾値以上である場合に、制御部30は、バフパッド252が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、バフパッド252の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、バフ処理装置への基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wをバフ処理装置に搬送し、基板Wのバフ処理を継続する。
【0237】
図16を参照して説明したように、所定の閾値(第1閾値)Dtから所定値(Δt)を減算することによって事前閾値(第2閾値)Dt’を予め決定しておいてもよい。この場合、制御部30は、所定の波長における測定ポイントPAのスペクトル強度と測定ポイントPBのスペクトル強度との差分が事前閾値Dt’以上となったときに、第2警報を出力する。第2警報は、バフパッド252を直ちに交換する必要はないが、まもなくバフパッド252の使用期間が交換時期に達することを作業者に知らせる警報である。第2警報によって、作業者は新しいバフパッド252を予め用意しておくことができる。
【0238】
さらに、一実施形態では、制御部30は、接線の傾きに基づいて洗浄具の適切な交換時期を決定する上述した方法を、バフパッド252に適用してもよい。この場合、制御部30は、接線の傾きの変化量と比較される所定の閾値を予め記憶しており、接線の傾きの変化量と上記差分とに基づいて、バフパッド252適切な交換時期を決定する。
【0239】
上述した基板洗浄装置の実施形態と同様に、1つの測定ポイントPA(またはPB)で取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを利用してバフパッド252の交換時期を決定してもよい。より具体的には、所定の枚数NAの基板Wのバフ処理を繰り返すごとに、表面性状測定装置60の撮像装置61Aを用いて、測定ポイントPAで取得されたハイパースペクトル画像データから変換された、各波長に対するスペクトル強度のグラフを表面データとして取得する。さらに、制御部30は、今回取得された測定ポイントPAでの所定の波長におけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長における測定ポイントPAのスペクトル強度との差分を算出する。そして、制御部30は、この差分を所定の閾値と比較する。この閾値は、実験などにより予め定められており、制御部30に予め記憶されている。
【0240】
今回取得された所定の波長におけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長におけるスペクトル強度との差分が所定の閾値よりも小さい場合に、制御部30は、バフパッド252が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定し、バフパッド252の交換を促す警報(第1警報)を出力する。一実施態様においては、今回取得された所定の波長におけるスペクトル強度と、前回取得された所定の波長におけるスペクトル強度との差分が所定の閾値よりも小さく、かつ、今回取得されたスペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きと、前回取得されたスペクトル強度グラフの変曲点における接線の傾きとの差分が所定の閾値よりも小さい場合に、制御部30は、バフパッド252が交換時期(すなわち、寿命)に到達したと決定してもよい。一実施形態では、制御部30は、第1警報を発するとともに、バフ処理装置への基板Wの搬送動作を停止してもよい。差分が所定の閾値よりも小さい場合は、制御部30は、次の基板Wをバフ処理装置に搬送し、基板Wのバフ処理を継続する。
【0241】
一実施形態では、制御部30は、差分が所定の閾値よりも小さくなってから、所定の処理枚数NBの基板Wをバフ処理した後で、バフパッド252の交換を促す警報を発するとともに、バフ処理装置への次の基板Wの搬送動作を停止してもよい。
【0242】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。例えば、上述した基板洗浄装置は、CMP装置に組み込まれない独立した装置であってもよい。また、上述した洗浄具の交換時期を学習する機械学習器の実施形態を、研磨パッドおよび/またはバフパッドの交換時期を学習する機械学習器に適用させることもできる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明は、半導体基板、ガラス基板、液晶パネルなどの基板に洗浄液を供給しながら、該基板を洗浄具でスクラブ洗浄する基板洗浄装置および基板洗浄方法に利用可能である。さらに、本発明は、基板の表面を研磨する研磨装置に利用可能である。さらに、本発明は、研磨処理後の基板に対して基板よりも小径の接触部材を基板に押し付けて相対運動させながら、基板をわずかに追加研磨したり、基板の付着物を除去および洗浄したりするバフ処理装置に利用可能である。さらに、本発明は、基板洗浄装置、研磨装置、およびバフ処理装置の少なくともいずれかを搭載した基板処理装置に利用可能である。さらに、本発明は、洗浄具の交換時期、研磨パッドの交換時期、およびバフ部材の交換時期の少なくとも1つを学習する機械学習器に利用可能である。
【符号の説明】
【0244】
1 基板処理装置
14a,14b,14c,14d 研磨ユニット
17 第1洗浄ユニット(第1基板洗浄装置)
18 第2洗浄ユニット(第2基板洗浄装置)
20 乾燥ユニット
22 第1基板搬送ロボット
24 基板搬送ユニット
26 第2基板搬送ロボット
28 第3基板搬送ロボット
30 制御部
41 基板保持部
42 ペンスポンジ(洗浄具)
51 洗浄具移動機構
60 表面性状測定装置
61A,61B,61C 撮像装置
62A,62B,62C カメラユニット
65 画像処理ユニット
77,78 ロールスポンジ(洗浄具)
90 軸受装置
90a 軸受
93 電動機
93b トルクセンサ
97 振動センサ
114 パーティクルカウンタ
300 機械学習器
301 状態観測部
302 交換データ取得部
303 学習部
310 交換判定部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図14
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図17A
図17B
図18
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図26B
図26C
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図29B
図30
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図34