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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】脂肪組織様食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240809BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240809BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20240809BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20240809BHJP
   A23J 3/26 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L13/00 A
A23J3/00 504
A23J3/16 501
A23J3/26 501
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024522621
(86)(22)【出願日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2024000219
【審査請求日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2023001598
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】岡田 歩美
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優希
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507939(JP,A)
【文献】特開2013-138670(JP,A)
【文献】国際公開第2022/187896(WO,A1)
【文献】LARISSA Echeverria, et al.,Characterization of okara and rice bran and their application as fat substitutes in chicken nugget formulations,LWT-Food Science and Technology,2022年03月31日,Vol.161,113383, pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉、植物性蛋白および油脂を含んでなる動物の脂肪組織様食品。
【請求項2】
油脂が植物性油脂を含む、請求項1に記載の脂肪組織様食品。
【請求項3】
植物性蛋白が大豆蛋白を含む、請求項1に記載の食品。
【請求項4】
植物性蛋白が分離大豆蛋白を含む、請求項1に記載の食品。
【請求項5】
米粉の含有量が1~15質量%であり、植物性蛋白の含有量が1~15質量%であり、さらに、油脂の含有量が20~60質量%である、請求項1に記載の食品。
【請求項6】
澱粉をさらに含有する、請求項1に記載の食品。
【請求項7】
オリゴ糖をさらに含有する、請求項1に記載の食品。
【請求項8】
増粘剤をさらに含有する、請求項1に記載の食品。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の食品を製造する方法であって、
米粉、植物性蛋白、油脂および水を混合して乳化物を調製する工程と、乳化物を加熱して凝固させる工程と、を含む、上記方法。
【請求項10】
米粉および植物性蛋白を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の食品を製造するための粉体組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の食品を製造するための、植物性蛋白、米粉、油脂および水を含有する乳化物。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の脂肪組織様食品を含んでなる加工食品。
【請求項13】
請求項1~8のいずれかに記載の脂肪組織様食品を肉代替食品と組み合わせることを含む、請求項12に記載の加工食品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の脂肪組織のような食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物の筋肉組織のような食品を植物性素材から作製しようとする試みが多くなされている。
【0003】
中でも、大豆蛋白などの植物性蛋白が肉代替食品の素材として広く検討されており、例えば、特許文献1には、大豆蛋白を膨化して得られた組織状蛋白を用いることによって加工食品にジューシー感を付与することが記載されている。また、特許文献2には、粒状大豆蛋白を用いて加工食品に肉のような食感を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-235461号公報
【文献】特開2018-126094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、植物性素材を用いて動物の筋肉組織のような食品を作製しようとする試みが多くなされている一方、植物性素材を用いて動物の脂肪組織のような食品を作製しようとする試みはあまり知られておらず、そのような食品は市場に流通していない。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、植物由来の材料を用いて、動物の脂肪組織のような食品を製造する技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題について鋭意検討したところ、米粉、植物性蛋白、油脂を用いて動物の脂肪組織のような食品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
これに限定されるものではないが、本発明は、下記の発明を包含する。
[1] 米粉、植物性蛋白、油脂を含んでなる動物の脂肪組織様食品。
[2] 油脂が植物性油脂を含む、[1]に記載の脂肪組織様食品。
[3] 植物性蛋白が大豆蛋白を含む、[1]に記載の食品。
[4] 植物性蛋白が分離大豆蛋白を含む、[1]に記載の食品。
[5] 米粉の含有量が1~15質量%、植物性蛋白の含有量が1~15質量%、油脂の含有量が20~60質量%である、[1]に記載の食品。
[6] 澱粉をさらに含有する、[1]に記載の食品。
[7] オリゴ糖をさらに含有する、[1]に記載の食品。
[8] 増粘剤をさらに含有する、[1]に記載の食品。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の食品を製造する方法であって、米粉、植物性蛋白、油脂、水を混合して乳化物を調製する工程と、乳化物を加熱して凝固させる工程と、を含む、上記方法。
[10] 米粉および植物性蛋白を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の食品を製造するための粉体組成物。
[11] [1]~[8]のいずれかに記載の食品を製造するための、植物性蛋白、米粉、油脂、水を含有する乳化物。
[12] [1]~[8]のいずれかに記載の脂肪組織様食品を含んでなる加工食品。
[13] [1]~[8]のいずれかに記載の脂肪組織様食品を肉代替食品と組み合わせることを含む、[12]に記載の加工食品を製造する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、植物由来の材料を用いて、動物の脂肪組織のような食品を得ることができる。本発明によって得られる食品は、肉類代替食品として特に好適である。また、このような食品の開発は、家畜の飼育にともなう水の使用や温室効果ガスの排出などを抑えることに繋がる可能性があり、環境負荷低減への貢献も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、動物の脂肪組織様食品の外観写真である。
図2図2は、唐揚げ様食品用具材の外観写真である(左:全体図、右:断面図)。
図3図3は、鶏の唐揚げ様食品の外観写真である(左:全体図、右:断面図)。
図4図4は、サラダチキン様食品の外観写真である。
図5図5は、豚の角煮様食品の外観写真(断面)である。
図6図6は、豚の角煮様食品の外観写真(断面)である。
図7図7は、チャーシュー様食品の外観写真(断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、動物の脂肪組織のような食品(脂肪組織様食品)に関する。本発明においては、米粉、植物性蛋白、油脂、水などの原料を混合して加熱することによって、動物の脂肪組織のような食品を得ることができる。従来、肉の筋繊維のような食感や肉のようなしっかりとした噛み応えを実現できるような肉代替食品は広く検討がなされてきたが、本発明によれば、動物肉の筋組織ではなく、脂肪組織のような食感や油感を備えた食品を得ることができる。
【0012】
米粉
本発明に係る脂肪組織様食品は米粉を含有し、これにより、保形性に優れ、動物の脂肪組織のような口どけや油感を備えた食品を実現することができる。好ましい態様において、本発明に係る脂肪組織様食品は15質量%以下の米粉を含有し、1~12質量%や2~10質量%の米粉を含有してもよい。
【0013】
本発明において使用する米粉は、米を製粉したものであれば特に制限されず、例えば、うるち米やもち米を原料として用いることができる。米の品種は特に限定されないが、例えば、ジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種などを好適に使用することができ、また、例えば、精白米、5分搗き米、玄米、屑米などから米粉を製造してもよい。もち米を原料とする米粉として、例えば、白玉粉(寒ざらし粉)、餅粉または求肥粉、道明寺粉、寒梅粉、落雁粉など、うるち米を原料とする米粉として、例えば、上新粉(上用粉)、かるかん粉などを挙げることができる。
【0014】
本発明において使用する米粉の粒子径は特に制限されないが、例えば、粒子径の累積分布における中位径(D50)を、例えば、20~110μmとすることができ、30~100μmや40~90μmとしてもよい。このような粒径であると、米粉を扱う際のハンドリング性に優れ、他の材料と混合しやすい。ここで、米粉などの粒度分布は、例えば、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定することができ、中位径(D50)は、小粒径から積算した粒子の体積分率が50%になった際の粒子径を意味する。
【0015】
また、本発明において使用する米粉の損傷澱粉量は特に制限されないが、例えば、損傷澱粉量を8質量%以上とすることができ、10質量%以上としてもよく、15質量%以上としてもよく、20質量%以上としてもよい。また、米粉の損傷澱粉量は、例えば、50質量%以下とすることができ、45質量%以下としてもよく、40質量%以下としてもよい。ここで、損傷澱粉量(質量%)とは、米粉全量中の、損傷を受けた澱粉の量をいい、また、損傷澱粉とは、米を粉砕する時の圧力や衝撃等により、澱粉粒が機械的な損傷を受けた澱粉のことをいう。損傷澱粉量(質量%)は、AACC Method 76-31に従って測定することができる。具体的には、試料中に含まれている損傷澱粉のみをカビ由来α-アミラーゼでマルトサッカライドと限界デキストリンに分解し、次いで、アミログルコシダーゼでグルコースにまで分解し、生成されたグルコースを定量することにより測定する。また、市販のキット(例えば、Starch Damage Assay Kit(メガザイム社製)など)を用いて測定してもよい。
【0016】
本発明において使用する米粉は、原料米を公知の方法で製粉して製造すればよく、製粉方法は特に制限されない。一つの態様において、せん断粉砕や摩擦粉砕によって生米を粉砕すればよく、粉砕装置として、例えば、石臼などを備えた粉砕機、ボールミルなどが挙げられる。市販の粉砕機として、「臼挽き職人」(カンリウ工業)、「ミクロ・パウダー」(ウエスト製)、「ボールミル」(レッチェ社)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
植物性蛋白
本発明に係る脂肪組織様食品は、米粉とともに植物性蛋白を含有し、これにより、保形性に優れ、動物の脂肪組織のような口どけや油感を備えた食品を実現することができる。好ましい態様において、本発明に係る脂肪組織様食品は15質量%以下の植物性蛋白を含有し、1~12質量%や2~10質量%の植物性蛋白を含有してもよい。
【0018】
植物性蛋白の原料は特に制限されず、種々の植物を用いることができるが、例えば、大豆などの豆類、小麦、菜種などを好適に使用することができ、豆類を使用することが好ましい。豆類としては、例えば、ダイズ属、ササゲ属、インゲンマメ属、ソラマメ属、エンドウ属、ラッカセイ属、ヒヨコマメ属、ヒラマメ属などの豆類が挙げられ、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、緑豆蛋白が好ましい。また、植物性蛋白として大豆蛋白を用いる場合、例えば、脱脂大豆粉、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、豆乳などの粉末を用いることができ、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白を用いることが好ましい。
【0019】
本発明に係る植物性蛋白の蛋白質含量は70%以上であることが好ましく、例えば、75~99%や80~98%であってもよい。なお、植物性蛋白の蛋白質含量はケルダール法で測定することができる(窒素換算係数6.25)。
【0020】
本発明においては、脂肪組織様食品を製造するための必須原料のうち、米粉と植物性蛋白を予め混合して粉体組成物としておいてもよい。粉体組成物中には、後述するその他の成分を適宜配合することができる。
【0021】
油脂
本発明に係る脂肪組織様食品は、米粉、植物性蛋白に加えて、油脂を必須成分として含有する。本発明に用いる油脂は、食用油脂であれば特に制限されず、1種類の油脂を使用してもよいし、複数の油脂を併用してもよい。油脂の使用量は特に制限されず、用途に応じて適宜調製すればよいが、脂肪組織様食品の20~60質量%とすることが好ましく、25~55質量%や30~50質量%としてもよい。
【0022】
本発明に使用する油脂としては、例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油を含む)、コーン油、ヒマワリ油、紅花油、綿実油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、オリーブ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂などの植物性油脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、鯨油、アザラシ脂などの動物性油脂、藻類油などが挙げられる。また、遺伝子組換えの技術を用いて品種改良した植物から抽出したものであってもよく、例えば、菜種油、ヒマワリ油、紅花油、大豆油などでは、オレイン酸含量を高めたハイオレイックタイプの品種から得られた油脂を使用することができる。また、本発明においては、加工油脂も適宜使用することができる。例えば、水素添加油脂、グリセリンと脂肪酸のエステル化油、エステル交換油、分別油脂なども適宜使用することができ、具体的には、ショートニング、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。本発明に係る脂肪組織様食品は、脂肪組織様食品を製造する際にほかの原料との混合がしやすく作業性がよい点で、油脂として植物性油脂を含むことが好ましい。植物性油脂は、常温(20℃)で液状であることが好ましく、例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油を含む)、コーン油、ヒマワリ油、米糠油、オリーブ油、ゴマ油などが好ましい。
【0023】
本発明に係る油脂は、一般的な工程によって製造することができ、例えば、採油工程、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程、脱ロウ工程などが挙げられる。採油工程は、種子や動物の脂身などの原料に対して圧搾、溶剤抽出、溶出などを行うことで実施でき、複数の採油工程を行う場合、各採油工程で得られた油脂を混合してもよい。
【0024】
本発明に係る脂肪組織様食品に植物性油脂を使用する場合、動物性油脂、藻類油、合成油を併用することも許容される。動物性油脂や藻類油を用いる場合、例えば、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、アザラシ脂、藻類油などを単独または組み合わせて使用することができ、豚の脂肪組織から精製した油脂であるラードを好適に使用できる。
【0025】
本発明に係る油脂には、必要に応じて通常用いられる添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、保存安定性向上、酸化安定性向上、熱安定性向上、低温下での結晶抑制、乳化安定性向上、粘度調整、着色、着香、消泡等を目的としたものなどがあり、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリソルベート、レシチン等の乳化剤、トコフェロール、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、茶抽出物、コエンザイムQ、オリザノール等の抗酸化剤、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩類、β-カロテン等の色素、香料、シリコーンなどが挙げられる。
【0026】
その他の成分
本発明に係る脂肪組織様食品は、澱粉、オリゴ糖、単糖などの糖質、食物繊維、色素、調味料、香料、乳化剤、増粘剤、有機酸類、塩類、ビタミン類などの副材料を含有していてもよく、これら副材料は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0027】
本発明の好ましい態様において、脂肪組織様食品は澱粉を含有する。澱粉を脂肪組織様食品に含有させることによって、脂肪組織様食品の口どけや保形性をより向上させることができる。澱粉の使用量は特に制限されず、実施態様に応じて調整すればよいが、例えば、脂肪組織様食品の10質量%以下とすることが好ましく、0.1~8質量%や0.5~5質量%とすることができる。澱粉の原料についても特に制限はなく、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、甘薯澱粉、コーンスターチなどが挙げられ、これらはワキシー種やハイアミロース種でもよい。澱粉は、特に加工されていない未加工澱粉であっても、未加工澱粉に物理的または化学的(酵素処理も含む)に加工を施した加工澱粉であってもよく、加工澱粉としては、例えば、α化澱粉;油脂加工澱粉;湿熱処理澱粉;酸化澱粉;漂白澱粉;酸処理澱粉;アセチル化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、リン酸澱粉などのエステル化澱粉;ヒドロキシプロピル澱粉などのエーテル化澱粉;リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉などの架橋澱粉;これらの加工を複数組み合わせた加工澱粉;未加工澱粉または加工澱粉を消化酵素の消化作用に抵抗性を有するように加工した難消化性澱粉などを好適に使用することができる。未加工澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、α化澱粉が好ましく、オクテニルコハク酸澱粉がより好ましい。
【0028】
本発明においては、脂肪組織様食品に、オリゴ糖を含有させることが風味の観点などから好ましい。本発明におけるオリゴ糖とは、単糖が2~10個結合した糖質である。特に、イソマルトオリゴ糖が好ましい。イソマルトオリゴ糖とは、イソマルトース、イソマルトトリオース、パノースなど、グルコースで構成されるα-1,6結合を有するオリゴ糖のことを意味する。オリゴ糖は、1~6質量%配合することが好ましく、1.3~5質量%、1.6~4.5質量%配合してもよい。
【0029】
また、脂肪様組織様食品には、増粘剤を含有させることもできる。増粘剤としては、ペクチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロー、グルコマンナン、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、アラビアガム、トレメルガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル(アルギン酸プロピレングリコール)、アルギン酸カルシウム、サイリウムシードガム、ジェランガム、カードランなどが挙げられる。増粘剤の配合量は、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1.5質量%や0.3~1質量%としてもよい。
【0030】
本発明に係る脂肪組織様食品は、好ましい態様において水分率が20~70質量%であり、30~65質量%や40~60質量%であってもよい。このような水分率であると、脂肪組織様食品において動物の脂肪組織のような口どけと滑らかさを実現しやすくなる。
【0031】
脂肪組織様食品の製造
本発明に係る脂肪組織様食品は、米粉、植物性蛋白、油脂、水などの原料を混合して加熱することによって製造することができる。すなわち、本発明に係る脂肪組織様食品は、米粉、植物性蛋白、油脂、水を混合して乳化物を調製した上で、その乳化物を加熱して凝固させることによって得ることができる。
【0032】
本発明において混合方法や加熱方法は特に制限されず、公知の方法によることができる。原料を混合する場合、公知の撹拌装置を用いることができ、例えば、フードプロセッサー、サイレントカッター、ハンドミキサー、縦型ミキサーなど、撹拌羽によって原料を混合する装置を用いることができる。混合は、すべての原料を一度に混合してもよいし、段階的に原料を投入して混合してもよい。また、原料の混合物を加熱する際は、例えば、容器などに入れた上で、湯煎、電子レンジ、蒸し器、スチームコンベクションオーブンなどの方法で加熱すればよい。加熱する際の容器は特に制限されず、樹脂製の可撓性容器などを好適に使用することができる。
【0033】
本発明に係る脂肪組織様食品は、所望の大きさに容易に調整することができる。脂肪組織様食品の大きさは、原料の混合物を加熱する際の量や容器によって調整してもよいし、加熱した後に大きさを適宜調整してもよい。脂肪組織様食品を製造した後に大きさを調整する場合は、例えば、手で大きさを調整したり、裁断機などの公知の装置を用いたりすればよい。
【0034】
本発明に係る脂肪組織様食品は、殺菌などのために加熱処理をしてもよく、また、保管などのために冷蔵・冷凍してもよい。本発明に係る脂肪組織様食品は、包装容器に収容して保管してもよく、真空包装やガス置換包装などを行うこともできる。包装容器としては、例えば、トレー状、パック状、カップ状、袋状などの形態が挙げられ、紙、樹脂、金属など適宜素材を選択すればよい。また、缶詰や瓶詰にしてもよい。本発明に係る脂肪組織様食品は、そのままの状態で喫食することができるが、公知の方法で調理して喫食してもよい。加熱調理する場合、その方法は特に限定されないが、例えば、焼き、蒸し、湯せん、煮込み、油ちょう、燻製、電子レンジ調理、レトルト調理などを挙げることができる。
【0035】
脂肪組織様食品の使用
本発明に係る脂肪組織様食品を加工食品に含有させることで、脂肪組織のような食感や油感を加工食品に付与することができる。本発明においては、肉を含有する加工食品に使用して脂肪組織のような食感や油感を増強することもできるし、また、肉を含有しない加工食品に使用して脂肪組織のような食感や油感を加工食品に付与することもできる。ここで、本発明における肉とは、典型的には、ウシ、ブタ、トリなどの肉を意味し、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの哺乳類、ニワトリ、カモなどの鳥類、魚類などの可食性部分を含む概念である。
【0036】
脂肪組織様食品を加工食品に含有させる方法は特に制限されず、例えば、脂肪組織様食品を製造した後に他の材料と組み合わせて加工食品を調製してもよいし、脂肪組織様食品を製造する際に他の材料と組み合わせて加工食品を調製してもよい。本発明の一つの態様において、脂肪組織様食品を製造した後、適宜大きさを調整し、加工食品に用いられるその他の材料と組み合わせてもよい。また別の態様において、米粉、植物性蛋白、油脂、水などを混合した乳化物の状態(加熱凝固する前の状態)で他の材料と混合し、その後の加熱によって脂肪組織様食品を含有した加工食品を調製してもよい。
【0037】
例えば、好ましい態様において、本発明に係る脂肪組織様食品を、動物肉の筋肉組織を模した従来のプラントベースの肉代替食品と組み合わせることによって、筋肉組織と脂肪組織を備えた本物の肉のような加工食品を植物原料のみから製造することができる。本発明に係る脂肪組織様食品と組み合わせる肉代替食品は特に制限されず、公知の肉代替食品を用いることができる。植物を原料とするプラントベースの肉代替食品としては、例えば、大豆やエンドウ豆などの豆類や麦を原料としたものが挙げられ、市販品としては、例えば、ダイズラボ(マルコメ社)、まめたん(昭和産業)などがあり、その他にも、ベジタリアンブッチャー社などから種々の肉代替食品が市販されている。本発明に係る脂肪組織様食品を、大豆蛋白などの植物性蛋白の非膨化押出成形物である肉代替食品と組み合わせることによって、肉のような食感を備えながらも、十分な油感を有するジューシーな加工食品を製造することができる。組み合わせる方法は特に制限されず、単に混合してもよいし、脂肪組織様食品と肉代替食品とをあわせて成形してもよい。例えば、塊状に丸めたり、層状に重ねたり、層状に重ねてからロール状に巻いたり、肉代替食品で脂肪組織様食品を包んだり、脂肪組織様食品で肉代替食品を包んだりすることができる。成形した後や成形して加熱した後に、任意の大きさや形状(ブロック状、スライス状、挽肉状など)に切断することもできる。肉代替食品は、あらかじめほぐしたり、ローラーで圧延処理などを行ったりすることによって、表面にひび割れがある状態にする処理を行うことが、脂肪組織様食品と組み合わせる際により成形しやすいため、好ましい。また、成形する際は、結着用の資材を使用してもよい。結着用の資材としては、たとえば、卵白粉などの蛋白系資材、トランスグルタミナーゼなどの酵素、澱粉、ゲル化剤などが挙げられ、粉末状のものをまぶしてもよく、水などの液体に分散させて塗布してもよい。
【0038】
一つの態様において、本発明は、脂肪組織様食品を配合した加工食品を含む。本発明においては、発明の効果を損ねない範囲内で、水、油脂、野菜、果物、海藻類、調味料、香辛料、増粘剤、ゲル化剤、糖質、食物繊維、着色料、香料、その他の植物性・動物性蛋白などを食品に配合してよい。野菜としては、例えば、タマネギ、ニンジン、ピーマンなどが挙げられ、調味料としては、例えば、ニンニク、ショウガ、トウガラシ、コショウ、醤油、味噌などが挙げられる。
【0039】
本発明に係る脂肪組織様食品は、必要に応じて、パン粉やバッター液などの衣をつけたり、包餡食品用皮やベーカリー生地などで包んだりすることで、目的とする加工食品を製造することもできる。また、脂肪組織様食品と肉代替食品を混合等したのち、衣、包餡食品用皮、ベーカリー生地などを使用して加工食品を製造することもできる。ここで、衣、包餡食品用皮、ベーカリー生地としては、例えば、小麦粉、ソバ粉、トウモロコシ粉などの穀粉類や、澱粉類を用いて調製されたものが挙げられる。
【実施例
【0040】
本発明の詳細を具体例に基づいてさらに説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0041】
実験1:脂肪組織様食品の製造と評価
1-1.脂肪組織様食品の製造
下記の材料を下表に示す配合でフードプロセッサーに投入し、均一な乳化液状もしくは滑らかなペースト状の乳化物になるまで3~5分間撹拌した。得られた乳化物約100gを樹脂製の袋に入れ、熱湯で約10分間ボイルして、動物の脂肪組織様食品を製造した(図1)。
(油脂)
・ハイオレイックヒマワリ油(オレインリッチ、昭和産業)
・ラード(純製ラード、雪印メグミルク)
(植物性蛋白)
・分離大豆蛋白(蛋白質含有量:86%、昭和フレッシュM-600、昭和産業)
・エンドウ豆蛋白(蛋白質含有量:80%、PP-CS、オルガノフードテック)
・緑豆蛋白(蛋白質含有量:82%、MP-AC、オルガノフードテック)
(穀粉)
・米粉A(市販品、中位径:約50μm、米粉パウダー、みたけ食品)
・米粉B(自製品、中位径:約40μm、損傷澱粉量14質量%):うるち米を気流式粉砕機(サイクロンミル;サイクロンミル250W、静岡プラント)で乾式粉砕したもの。
・米粉C(自製品、中位径:約80μm、損傷澱粉量22質量%):うるち米を臼式粉砕機(臼式粉砕機;臼挽き職人 KP091 カンリウ工業)で乾式粉砕したもの。
・小麦粉(クオリテ、昭和産業)
(澱粉)
・未加工澱粉(馬鈴薯澱粉、美幌地方農産加工農業協同組合連合会)
・オクテニルコハク酸澱粉(乳華L、日澱化學)
・ヒドロキシプロピル澱粉(SF-4000、昭和産業)
・α化澱粉(S600Y、昭和産業)
(その他)
・オリゴ糖シロップ(イソマルトオリゴ糖含有量:70%、マルミノース、昭和産業)
・増粘剤(メチルセルロース、ヒートゲル堅、ユニテックフーズ)
【0042】
1-2.脂肪組織様食品の評価
ボイルした脂肪組織様食品について、訓練された10名のパネルによって官能評価を実施した。評価は、下記の基準に基づいて5段階で行い、平均点を算出した。
■保形性(外観評価)
5(非常に良好):よく固まっており、形状をよく維持している
4(良好) :固まっており、形状を維持している
3(やや良好) :ほぼ形状を維持している
2(悪い) :しっかりとは固まっておらず、形状がやや潰れる
1(非常に悪い):固まっておらず、形状が潰れる
■くちどけ
5(非常に良好):非常にきめ細かく滑らかであり、くちどけが非常によい
4(良好) :きめ細かく滑らかであり、くちどけがよい
3(やや良好) :わずかにザラつきが感じられるが、くちどけがよい
2(悪い) :ザラつきが感じられ、やや口に残る
1(非常に悪い):ザラつきが強く感じられ、口に残る
■油感
5(非常に良好):動物の脂肪組織のような油感が強く感じられる
4(良好) :動物の脂肪組織のような油感が感じられる
3(やや良好) :動物の脂肪組織のような油感がやや感じられる
2(悪い) :動物の脂肪組織のような油感がほとんど感じられない
1(非常に悪い):動物の脂肪組織のような油感がまったく感じられない
【0043】
【表1】
【0044】
上記の表に示したように、油脂、植物性蛋白、米粉から、動物の脂肪組織のような外観および食感を備えた食品を得ることができた。すなわち、サンプル1-2~1-6の結果から明らかなように、本発明に基づいて植物性蛋白と米粉を併用すると、動物の脂肪組織のような食感(口どけ、油感)を実現することができた。
【0045】
また、米粉の配合量が多くなると、保形性がやや低くなる傾向が見られた。特に、植物性蛋白(分離大豆蛋白)を使用せず、米粉のみを使用すると、脂肪組織様食品の保形性が悪く、形状がやや潰れてしまった(サンプル1-7、1-10)。さらに、米粉に代えて小麦粉を使用すると、動物の脂肪組織のような食感(口どけ、油感)を実現できなかった(サンプル1-8)。また、米粉を使用せず、植物性蛋白(分離大豆蛋白)のみを使用すると、動物の脂肪組織のような食感(口どけ、油感)を実現できなかった(サンプル1-1)。損傷澱粉が高い米粉を用いると、保形性、食感(口どけ、油感)がより良好であった。
【0046】
さらに、油脂、植物性蛋白、米粉に加えて澱粉を配合すると、保形性および食感(口どけ、油感)をより優れたものにすることができた(サンプル1-9、1-12~1-27)。さらにまた、オリゴ糖(マルミノース)を配合すると、保形性、口どけ、油感が良好で、さらに風味に優れた脂肪組織様食品を得ることができた(サンプル1-25、1-26)。
【0047】
油脂の配合量については、30~50質量部程度であると、保形性および食感(口どけ、油感)のいずれも特に優れたものとなった(サンプル1-15、1-23、1-24)。また、動物性油脂であるラードを油脂として用いても、保形性および食感(口どけ、油感)がよい脂肪組織様食品を得ることができた。さらに、増粘剤(メチルセルロース)を配合すると、保形性および食感(口どけ、油感)がよく、特に舌触りがよい脂肪組織様食品を得ることができた。
【0048】
実験2:加工食品の製造と評価(鶏の唐揚げ様食品)
実験1で製造した脂肪組織様食品(サンプル1-9)を用いて、鶏の唐揚げ様食品を製造した。具体的には、動物の筋肉組織様食品として、大豆を原料とする非膨化押出成形物を使用し、これを実験1で製造した脂肪組織様食品と組み合わせた鶏モモ肉様の生地から唐揚げを製造した。
【0049】
(筋肉組織様食品の製造) 脱脂大豆粉(昭和産業)80質量部および分離大豆蛋白(昭和フレッシュM-600、昭和産業)20質量部を混合した原料粉100質量部に対して、120質量部の水を二軸エクストルーダー(アルファライザEA-20、スエヒロEPM)に投入して混練した。二軸エクストルーダーにおいて、バレル前半は30~140℃に段階的に昇温し、バレル中央付近では140~180℃に温度を維持し、バレル後半は140~100℃に段階的に降温した。先端に取り付けた冷却ダイ(開口面積700mm、長さ600mm)に冷却水を循環させて組織化物の出口における中止温度が85℃となるように冷却しながら押し出して、押出方向に対して垂直に適宜切断し、筋肉組織様の肉類代替食品を製造した(断面積:700mm、長さ:200mm)。
【0050】
(鶏モモ肉様生地の調製) 上記のように製造した筋肉組織様食品(大豆を原料とする非膨化押出成形物)を1~4cm程度の大きさになるように手で割いてから、熱湯で30秒間下茹でした。次いで、下表に記載の材料を混合して鶏モモ肉様の生地を調製した。
【0051】
【表2-1】
【0052】
(鶏唐揚げ様食品の製造) 下表に記載の調味料を鶏モモ肉様生地と混合して味付けした後、球状に成形して合して唐揚げ用の具材を調製した(30g/個、直径:約4cm、図2)。
【0053】
【表2-2】
【0054】
上記のようにして調製した具材に、唐揚げ用バッター(唐揚げ粉100質量部に水100質量部を加えて混合したもの)を付着させ、170℃で5分間フライして唐揚げを製造した(図3)。
【0055】
製造した唐揚げを試食したところ、噛み応えとジューシーな油感が感じられ、鶏モモ肉の唐揚げのような食感であった。
【0056】
実験3:加工食品の製造と評価(サラダチキン様食品)
実験1のサンプル1-9の配合で、材料をフードプロセッサーに投入して約4分間撹拌し、滑らかなペースト状の乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)を得た。また、筋肉組織様食品として、実験2で製造した筋肉組織様食品(大豆を原料とする非膨化押出成形物)を1~4cm程度の大きさになるように手で割いてから、熱湯で30秒間下茹でして使用した。次いで、下表に記載の配合で材料を混合してサラダチキン様食品用生地を調製した。
【0057】
【表3】
【0058】
上記のようにして調製した生地を成形し、樹脂製の袋に入れて密封し、熱湯で約10分間ボイルして、サラダチキン様食品を製造した(100g/個、図4)。
【0059】
製造したサラダチキン様食品を試食したところ、噛み応えと適度な多汁感が感じられ、しっとりとした食感であり、サラダチキンのような食感であった。
【0060】
実験4:加工食品の製造と評価
(1)豚の角煮様食品1
実験1のサンプル1-9の配合で、材料をフードプロセッサーに投入して約4分間撹拌し、滑らかなペースト状の乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)を得た。筋肉組織様食品として、実験2で製造した筋肉組織様食品(大豆を原料とする非膨化押出成形物、12cm×4.5cm×1.5cm、約100g)をパウンド型に入れ、加工澱粉(SF-1700、昭和産業)を等量の水に分散させたものを刷毛で塗布し、その上に乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)20gを塗り広げた。スチームコンベクションオーブンで10分間加熱したのち、4℃で60分間冷却した。次いで、下表の調味液で20分間煮込み、豚の角煮様食品を得た(図5、12cm×4.5cm×2cm)。
【0061】
製造した豚の角煮様食品を試食したところ、肉のような噛み応えと脂身のような油感がバランスよく感じられ、豚の角煮のような食感であった。
【0062】
【表4】
【0063】
(2)豚の角煮様食品2
実験1のサンプル1-9の配合で、材料をフードプロセッサーに投入して約4分間撹拌し、滑らかなペースト状の乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)を得た。筋肉組織様食品として、実験2で製造した筋肉組織様食品(大豆を原料とする非膨化押出成形物、12cm×4.5cm×1.5cm、約100g)をパウンド型に入れ、加工澱粉を薄くまぶし、その上に乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)10gを塗り広げた。さらにその上に筋肉組織様食品(12cm×4.5cm×0.3cm、約20g)を重ね、加工澱粉を薄くまぶし、乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)を7.5g塗り広げた。スチームコンベクションオーブンで10分間加熱したのち、4℃で60分間冷却した。次いで、上記の調味液で20分間煮込み、豚の角煮様食品を得た(図6、12cm×4.5cm×2.5cm)。
【0064】
製造した豚の角煮様食品を試食したところ、肉のような噛み応えと脂身のような油感がバランスよく感じられ、豚の角煮のような食感であった。また、筋肉組織様の部分と脂肪組織様の部分が多層状になっていることで、外観もより豚の角煮に近いものであった。
【0065】
(3)チャーシュー様食品
実験1のサンプル1-9の配合で、材料をフードプロセッサーに投入して約4分間撹拌し、滑らかなペースト状の乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)を得た。筋肉組織様食品として、実験2で製造した筋肉組織様食品(大豆を原料とする非膨化押出成形物、約160g)にローラーがけをして表面をひび割れさせたもの(25cm×5cm×1.5cm)を使用した。筋肉組織様食品に加工澱粉を薄くまぶし、乳化物(加熱凝固させていない脂肪組織様食品)30gを塗り広げた。乳化物を塗った面を内側にしてロール状に巻き、セルクル型に入れ、スチームコンベクションオーブンで10分間加熱し、4℃で60分間冷却した。次いで、上記の調味液で20分間煮込み、チャーシュー様食品を得た(図7、直径7cm×5cm)。
【0066】
製造したチャーシュー様食品を試食したところ、いずれも肉のような噛み応えと脂身のような油感がバランスよく感じられ、チャーシューのような食感であった。
【要約】
本発明の課題は、植物由来の材料を用いて、動物の脂肪組織のような食品を開発することである。
本発明に基づいて米粉、植物性蛋白、油脂を配合することによって動物の脂肪組織のような食品を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7