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特許7536240NMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】NMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240813BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240813BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240813BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/53 Y
C12Q1/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021505138
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010909
(87)【国際公開番号】W WO2020184676
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019046531
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、再生医療実用化研究事業、「創薬のためのインビトロ脳機能評価法の確立と標準化ヒト神経細胞の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】白尾 智明
(72)【発明者】
【氏名】光岡 俊成
(72)【発明者】
【氏名】花村 健次
(72)【発明者】
【氏名】小金澤 紀子
(72)【発明者】
【氏名】関野 祐子
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/080976(WO,A1)
【文献】特開2016-040540(JP,A)
【文献】神経科学研究用試薬カタログ,富士フイルム和光純薬株式会社,2018年11月,17-18頁
【文献】MIAO, Shuchuan et al.,N-methyl-D-aspartate Receptor Mediates X-irradiation-induced Drebrin Decrease in Hippocampus,THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL,2018年,vol.68,pp.111-115
【文献】KOGANEZAWA, Noriko et al.,The role of drebrin in dendritic spines,Molecular and Cellular Neuroscience,2017年,vol.84,pp.85-92
【文献】SEKINO, Yuko et al.,Activation of N-methyl-D-aspartate receptor induces a shift of drebrin distribution: Disappearance from dendritic spines and appearance in dendritic shafts,Molecular and Cellular Neuroscience,2006年,vol. 31,pp.493-504
【文献】MITSUOKA, Toshinari et al.,Assessment of NMDA receptor inhibition of phencyclidine analogues using a high-throughput drebrin immunocytochemical assay,Journal of Pharmacological and Toxicological Methods,2019年,vol.99, no.106583,pp.1-6
【文献】HANAMURA, Kenji et al.,High-content imaging analysis for detecting the loss of drebrin clusters along dendrites in cultured hippocampal neurons,Journal of Pharmacological and Toxicological Methods,2019年,vol.99, no.106607,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G01N 33/15
C12Q 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMDA受容体阻害活性の評価方法であって、
(A)培養神経細胞に、被験物質を接触させる工程と、
(B)前記培養神経細胞に、グルタミン酸溶液を接触させる工程と、
(C)前記培養神経細胞を固定する工程と、
(D)前記培養神経細胞の樹状突起スパインのドレブリンクラスターを可視化する工程と、
(E)前記ドレブリンクラスターの樹状突起に沿った線密度を測定し、前記線密度が、前記被験物質に接触させていない培養神経細胞の線密度と比較して高い場合に、前記被験物質がNMDA受容体阻害作用を有すると判定する工程と、
(F)工程(A)で培養神経細胞に接触させた被験物質の濃度と、工程(E)で測定したドレブリンクラスターの線密度との相関に基づいて、前記被験物質のIC 50 を算出する工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
凍結ニューロンから前記培養神経細胞を用意する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養神経細胞にシトシンβ-D-アラビノフラノシド(Ara)を加えて培養する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程()で算出した被験物質のIC50を、既知のNMDA受容体阻害剤のIC50と比較することにより、前記被験物質と、前記既知のNMDA受容体阻害剤とのNMDA受容体阻害活性比を算出する工程(G)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
培養神経細胞が、海馬神経細胞由来であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
培養神経細胞が、げっ歯類由来であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程()の可視化が、抗ドレブリン抗体による免疫染色であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記被験物質の薬理学的評価および/または毒性評価に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットであって、グルタミン酸溶液を含む、前記キット。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法に使用するための、グルタミン酸溶液を含むNMDA受容体阻害活性の検査薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養神経細胞の樹状突起スパインのドレブリンクラスターの樹状突起に沿った線密度を指標として用いる、NMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新精神作用物質(New psychoactive substances;NPS、日本では「危険ドラッグ」とも呼ばれる)が、「リーガル・ハイ」、「バスソルト」、「リサーチケミカル」等の用語を使って販売されている。しかしながら、それらは国際的に規制されている薬物と同様の効果を持つ乱用物質である。NPSの出現は世界中の100以上の国と地域で報告されており、NPSの広がりが、多くの国で公衆衛生上の懸念を高めている(非特許文献1)。したがって、リスク評価プロセスを通じてこれらの物質を速やかに規制するために、NPSに対して利用可能な関連データ及び分析結果を蓄積していくことが極めて重要である。
【0003】
メトキセタミンやジフェニジン等の、NMDA受容体阻害活性を有するNPSが報告されている(非特許文献2~5等)。NMDA受容体は、中枢神経系の学習と記憶に主に関与する受容体であり、NMDA受容体の活動が低下すると、健忘症、知覚の変化、幻覚及び妄想が起こることが知られている。このように、NMDA受容体は、知覚的及び精神的現象に大いに関連しているため、NMDA受容体阻害剤が乱用薬物として使用される可能性、及び、NMDA受容体阻害剤が麻薬と同様の危険な効果を持つ可能性が高いことが示唆されている(非特許文献6)。しかしながら、中枢神経系に対して作用する化合物の安全性薬理試験法は、ネズミ個体を用いた行動解析のみであり、コスト、時間がかかるという問題点がある。そのため、規制当局は、新規化合物についてインシリコで構造の類似性を判定し、規制するか否かを判断しているのが現状である。
【0004】
上述の状況から、NMDA受容体阻害活性を有するNPSを、機能的側面から既存の薬物との類似度を評価して迅速に規制できるようにするため、NMDA受容体阻害活性を検出、測定する方法が求められている。現状では、NMDA受容体阻害活性の検出、測定方法として、2つの方法が提案されている。第一はカルシウムイメージング法であり(非特許文献7、8)、第二はトリチウム標識したMK801を用いた置換アッセイである(非特許文献9)。しかしながら、これらの方法は、NMDA受容体に対する作用を直接測定することができないうえ、操作が煩雑であり、放射性同位体を使用しなければならない場合もあり、NMDA受容体阻害作用の直接的且つ簡便、迅速な測定には不向きである。
【0005】
培養神経細胞は、培養を行うと樹状突起を徐々に伸ばし、ニューロン間の成熟シナプスを形成する。その後、培養3週間で、きのこ型の頭部を持つ「樹状突起スパイン」と呼ばれる構造が完成する。樹状突起スパインにおいて、ドレブリンはアクチンフィラメントに高濃度で蓄積され、樹状突起スパインにおける受容体及び足場タンパク質の動態を安定化させる(非特許文献10、11)。このように樹状突起スパインに蓄積されたドレブリンは、ドレブリンクラスターと呼ばれる。培養神経細胞に対するグルタミン酸処理は、樹状突起スパインから樹状突起への急速なドレブリン流出を誘導する(非特許文献12、13)。投与されたグルタミン酸は、AMPA型グルタミン酸レセプター(AMPAR)とNMDA受容体の両方を活性化するが、ドレブリンクラスターからのドレブリンの流出は、NMDA受容体活性化によって誘導され、定量的である(非特許文献13~15)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】UNODC. UNODC report-Global Synthetic Drugs Assessment-Amphetamine-type stimulants and new psychoactive substances. (2017). https://www.unodc.org/unodc/en/scientists/global-synthetic-drugs-assessment-2017.html.
【文献】Kikura-Hanajiri, R., Uchiyama, N., Kawamura, M., & Goda, Y. (2014). Changes in the prevalence of new psychoactive substances before and after the introduction of the generic scheduling of synthetic cannabinoids in Japan.Drug Testing and Analysis, 6, 832-839. https://do.org/10.1002/dta.1584.
【文献】Kikura-Hanajiri, R. (2017). Changes in the prevalence substances and their legal status in Japan. Folia Pharmacol. Jpn., 150, 1-6.
【文献】Hondebrink, L., Kasteel, E., Tukker, A., Wijnolts, F., Verboven, A., & Westerink, R. (2017). Neuropharmacological characterization of the new psychoactive substance methoxetamine. Neuropharmacology, 123, 1, 1-9.
【文献】Roth, B., Gibbons, S., Arunotayanun, W., Huang, X., Setola, V., & Treble, R. (2013). The Ketamine Analogue Methoxetamine and 3- and 4-Methoxy Analogues of Phencyclidine Are High Affinity and Selective Ligands for the Glutamate NMDA. Les Iversen published.
【文献】Morris, H., & Wallach, J. (2014). From PCP to MXE: a comprehensive review of the non‐medical use of dissociative drugs. Drug Testing and Analysis, 6, 614-632.
【文献】Ring, A., & Tanso, R. (2007). Measurements with fluorescent probes in primary neural cultures; improved multiwell techniques. Journal of Pharmacological and Toxicological Methods 56, 300-307.
【文献】Sato, K., Takahashi, K., Shigemoto-Mogami, Y., Chujo, K., & Sekino, Y. (2016). Glypican 6 Enhances N-Methyl-D-Aspartate Receptor Function inHuman-Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Neurons. Frontiers in Cellular Neuroscience, 10(259).
【文献】Reynolds, I. J. (2001). [3H] (+)MK801 radioligand binding assay at the N-methyl-D-aspartate receptor. Curr. Protoc. Pharmacol. Chap. 1: Unit 1.20.
【文献】Sekino, Y., Kojima, N., & Shirao, T. (2007). Role of actincytoskeleton in dendritic spine morphogenesis. Neurochemistry International, 51, 92-104.
【文献】Shirao, T., Hanamura, K., Koganezawa, N., Ishizuka, Y., Yamazaki, H., & Sekino, Y. (2017). The role of drebrin in neurons. Journal of Neurochemistry, 141(6), 819-834.
【文献】Sekino, Y., Tanaka, S., Hanamura, K., Yamazaki, H., Sasagawa, Y., Xue, Y., Hayashi, K., & Shirao, T. (2006). Activation of N-methyl-d-aspartate receptor induces a shift of drebrin distribution: Disappearance from dendritic spines and appearance in dendritic shafts. Molecular Cellular Neuroscience,31, 493-594.
【文献】Mizui, T., Sekino, Y., Yamazaki, H., Ishizuka, Y., Takahashi, H., Kojima, N., Kojima, M., and Shirao, T. (2014). Myosin II ATPase activitymediates the long-term potentiation-induced exodus of stable F-actin bound by drebrin A from dendritic spines. PLoS One, 9, e85367.
【文献】Sekino, Y., Koganezawa, N., Mizui, T., & Shirao, T. (2017). Role of Drebrin in Synaptic Plasticity, Advances in Experimental Medicine and Biology-Drebrin, 1006 (183-201).
【文献】Koganezawa, N., Hanamura, K., Sekino, Y., & Shirao, T. (2017). The role of drebrin in dendritic spines. Molecular and Cellular Neuroscience, 84, 85-92.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、NMDA受容体阻害剤の、直接的且つ迅速、簡便な阻害活性の評価方法は未だ構築されておらず、機能面からの新規NMDA受容体阻害剤の規制は行われていないのが現状である。本発明は、以上の事情に鑑みなされたものであり、NMDA受容体阻害活性の直接的且つ迅速、簡便なハイスループット評価方法を確立することにより、NMDA受容体阻害剤の迅速な規制、及び新規治療薬としてのNMDA受容体阻害剤のスクリーニング及び活性評価を可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、既知のNMDA受容体阻害剤であるフェンシクリジン(PCP)と、PCPアナログ2種(3-MeO-PCMo及び3-MeO-PCP)を用い、これらの化合物を成熟した培養神経細胞に接触させることで、グルタミン酸処理によるドレブリンクラスターの線密度減少が抑制されることを見いだした。さらに、かかるドレブリンクラスターの線密度減少が、化合物濃度と相関すること、並びに該相関に基づいて算出した50%阻害濃度(IC50)の比が、これらの化合物の阻害定数(K)の比と良好な相関関係を示すことを見いだした。本発明は、これらの知見により完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の事項により特定されるとおりのものである。
(1)以下のステップ(A)~(E)を順次備えたことを特徴とするNMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法。
(A)培養神経細胞に、被験物質を接触させるステップ;
(B)前記培養神経細胞に、グルタミン酸溶液を接触させるステップ;
(C)前記培養神経細胞を固定するステップ;
(D)前記培養神経細胞の樹状突起スパインのドレブリンクラスターを可視化するステップ;
(E)前記ドレブリンクラスターの樹状突起に沿った線密度を測定し、前記線密度が、前記被験物質に接触させていない培養神経細胞の線密度と比較して高い場合に、前記被験物質がNMDA受容体阻害作用を有すると判定するステップ;
(2)以下のステップ(F)を、ステップ(E)の後に備えたことを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(F)ステップ(A)で培養神経細胞に接触させた被験物質の濃度と、ステップ(E)で測定したドレブリンクラスターの線密度との相関に基づいて、前記被験物質のIC50を算出するステップ;
(3)以下のステップ(G)を、ステップ(F)の後に備えたことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(G)ステップ(F)で算出した被験物質のIC50を、既知のNMDA受容体阻害剤のIC50と比較することにより、前記被験物質と、前記既知のNMDA受容体阻害剤とのNMDA受容体阻害活性比を算出するステップ;
(4)培養神経細胞が、海馬神経細胞由来であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)培養神経細胞が、げっ歯類由来であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)ステップ(D)の可視化が、抗ドレブリン抗体による免疫染色であることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便且つ短時間で実施することのできる、NMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例のセクション2-1の結果を示す図である。
図2】実施例のセクション2-2の結果を示す図である。
図3】実施例のセクション2-3の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明におけるNMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法とは、(A)培養神経細胞に、被験物質を接触させるステップ;(B)前記培養神経細胞に、グルタミン酸溶液を接触させるステップ;(C)前記培養神経細胞を固定するステップ;(D)前記培養神経細胞の樹状突起スパインのドレブリンクラスターを可視化するステップ;及び(E)前記ドレブリンクラスターの樹状突起に沿った線密度を測定し、前記線密度が、前記被験物質に接触させていない培養神経細胞の線密度と比較して高い場合に、前記被験物質がNMDA受容体阻害作用を有すると判定するステップ;を順次備えた方法である。
【0013】
本発明の方法は、培養神経細胞の樹状突起に沿って形成されたドレブリンクラスターの線密度変化を指標として、被験物質のNMDA受容体阻害活性を評価する方法である。ここで、培養神経細胞としては、NMDA受容体の活性化によりドレブリンクラスターが減少する細胞であればよく、例えば、初代培養神経細胞、神経芽細胞腫と神経膠腫のハイブリドーマ、神経芽細胞腫や、多能性幹細胞(胚性幹細胞、人工多能性幹細胞)に由来する培養神経細胞等を挙げることができ、海馬由来の初代培養神経細胞を好適に使用することができる。また、培養神経細胞の由来は、ヒトのNMDA受容体の阻害活性評価に用いることができるものであることが好ましく、例えば哺乳類由来、より好ましくは霊長類由来、さらに好ましくはヒト由来を挙げることができるが、マウスやラット等、げっ歯類由来の培養神経細胞を用いることもできる。また、上記培養神経細胞は、ヒト胎児由来の培養神経細胞であってもよい。
【0014】
本発明において、被験物質とは、NMDA受容体の阻害活性を有し得る化合物であればよく、NPSの候補化合物や、麻酔等の医薬品候補化合物を例示することができ、フェンシクリジン、メトキセタミン、ジフェニジン等の既知のNPSの類縁化合物や、ケタミン等のNMDA受容体拮抗薬の類縁化合物であってもよい。上記ステップ(A)における被験物質の終濃度は、IC50を算出するために適した濃度を常法に基づいて決定することができるが、例えば阻害率50%を挟む濃度が得られるように、被験物質を段階希釈した希釈系列を用いることが望ましい。また、上記ステップ(A)における接触時間は、被験物質がNMDA受容体まで到達するために十分な時間であればよく、例えば2~20分間、好ましくは5~15分間、より好ましくは8~12分間を例示することができる。
【0015】
上記ステップ(B)は、NMDA受容体を活性化させ、ドレブリンクラスターの減少を引き起こすために、グルタミン酸溶液を接触させるステップである。ここで、グルタミン酸溶液の終濃度及び接触時間は、被験物質のIC50を算出するために適切なNMDA受容体活性化を引き起こす濃度及び接触時間であればよい。上記濃度としては例えば1μM~500μM、好ましくは10μM~300μM、より好ましくは50μM~200μM、さらに好ましくは80μM~150μMを挙げることができ、上記接触時間としては、例えば2~20分間、好ましくは5~15分間、より好ましくは8~12分間を例示することができる。また、グルタミン酸溶液に代えて、NMDA受容体活性化を引き起こすことのできるいかなる化合物を用いてもよい。
【0016】
上記ステップ(C)における培養神経細胞の固定は、固定後のドレブリンクラスターの可視化が効率的に行える条件であればいかなる公知の方法を用いてもよく、固定化試薬としては、例えばメタノール、アセトン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド(PFA)、エタノール、グルタルアルデヒド、スベルイミノ酸ジメチルを挙げることができ、固定化試薬は、冷凍庫(-20±2℃)又は冷蔵庫(4±2℃)で冷却したものや、室温のものを使用することができる。
【0017】
上記ステップ(D)において、培養神経細胞のドレブリンクラスターの可視化は、いかなる公知の方法により可視化してもよく、ドレブリンに対して特異的に結合し得る分子を用いて可視化する方法を例示することができる。上記ドレブリンに対して特異的に結合し得る分子としては、例えば抗ドレブリン抗体を挙げることができ、検出の簡便性や、他の培養神経細胞マーカーを用いて共染色した場合や、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を用いて細胞を染色した場合における識別性の観点から、蛍光標識された抗ドレブリン抗体を用いることが好ましい。ここで、蛍光標識としては、FITC、Cy3、Cy5、Rhodamine、Alexa fluor(登録商標、インビトロジェン社製)等の蛍光物質を挙げることができる。抗ドレブリン抗体は、直接標識してもよく、これらに対する二次抗体を用いて検出してもよい。本発明で用いる抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよく、市販のものを使用できる他、常法により作製することもできる。また、抗MAP2抗体等の他の培養神経細胞マーカーを用いて、培養神経細胞を共染色してもよい。
【0018】
一態様では、ドレブリンクラスターの可視化は、例えば培養神経細胞において抗ドレブリン抗体(抗ドレブリンラクダVHH抗体等)を発現させ、該抗ドレブリン抗体の集積を検出することにより行うこともできる。抗ドレブリン抗体は、二次抗体で検出してもよいが、蛍光タンパク質等の標識物質を結合させた抗ドレブリン抗体を培養神経細胞内で発現させ、標識物質を検出することにより、生細胞を用いたリアルタイムイメージングを行うことができる。また、一態様において、あらかじめ蛍光タンパク質等の標識物質を結合させたドレブリン又はドレブリン断片を培養神経細胞内で発現させると、発現した標識ドレブリン又はドレブリン断片がドレブリンクラスターを形成する。この態様においては、該標識ドレブリン又はドレブリン断片を検出することにより、追加の可視化ステップなしにドレブリンクラスターを検出することができる。これらの態様においては、ステップ(C)における培養神経細胞の固定は行っても行わなくてもよい。
【0019】
上記ステップ(E)におけるドレブリンクラスターの線密度は、上記ステップ(D)により可視化されたドレブリン陽性シグナルの個数を手動又は自動で計数し、樹状突起の単位長さ当たりのドレブリン陽性シグナルの個数を算出することにより測定される。かかる線密度の測定は、IN Cell Developer Toolbox(GEヘルスケア社製)等の公知の画像解析ソフトウェアを用いて自動測定することが好ましい。
【0020】
本発明の方法は、上記ステップ(E)の後に、上記ステップ(A)で培養神経細胞に接触させた被験物質の濃度と、ステップ(E)で測定したドレブリンクラスターとの線密度の相関に基づいて、前記被験物質のIC50を算出するステップ(F)を備えてもよい。IC50の算出は、常法に基づいて行うことができ、例えば、被験物質の濃度に対する阻害活性値をプロットした阻害曲線を作成して算出することができる。また、本発明の方法により得られたIC50は、K値と良好な相関関係にあるため、上記ステップ(F)で得られた被験物質のIC50を、既知のNMDA受容体阻害剤のIC50と比較して阻害活性比を算出することで、前記被験物質の活性を迅速且つ簡便な方法にて評価することができる。
【0021】
本発明の一態様において、本発明の方法は、NMDA受容体活性化を引き起こす物質のスクリーニング及び活性評価に用いることもできる。かかる態様において、被験物質の濃度とドレブリンクラスターの線密度の減少との相関に基づいて、被験物質のNMDA受容体活性化能が評価される。
【0022】
本発明の一態様において、ドレブリンクラスターの線密度に代えて、或いはドレブリンクラスターの線密度と共に、ドレブリンA及び/又はドレブリンEの発現量変化を、被験物質の活性評価に用いてもよい。かかる態様は、被験物質が神経細胞に与える長期的影響を評価するのに有効である可能性がある。
【0023】
本発明は、従来のNMDA受容体阻害活性の測定方法と比較して迅速且つ簡便に、定量性、再現性良く、高精度にNMDA受容体阻害活性の評価を行うことができる。そのため、従来は機能面からの評価及び規制が困難であったNPSの迅速な規制や、NMDA受容体をターゲットとした治療薬のハイスループットスクリーニングへの応用が期待される。
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例
【0025】
1.方法
1-2 動物実験
動物実験は、群馬大学昭和キャンパス(群馬県前橋市)の動物実験委員会によって設定されたガイドラインに従って行い、研究における動物の使用に関するNIHガイドラインに準拠した。動物の苦しみを最小限に抑え、使用される動物の数を減らすためにあらゆる努力を払った。妊娠ウィスターラットは、日本チャールス・リバー株式会社から入手した。動物は標準的な動物施設条件下で飼料と水を自由に摂取させて飼育した。
【0026】
1-2 海馬神経細胞培養
18日目胚のラットの海馬から調製した凍結ニューロンを、ポリリジンであらかじめコーティングした96ウェルプレート(Thermo 96 Well Black Poly Bottom Poly-Lysine、Thermo Fisher Scientific社製)に、3.0×10細胞/cmの密度で播種した。B27サプリメント、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びL-アラニル-L-グルタミン(Glutamax-I;Thermo Fisher Scientific社製)を含むNeurobasal Medium(Thermo Fisher Scientific社製)を使用して、37℃、5%CO環境下でインキュベートした。
4DIV(インビトロでの培養日数)に、シトシンβ-D-アラビノフラノシド(Sigma社製)を最終濃度0.2μMになるように加えてグリア細胞の増殖を抑制した。ニューロンを21DIV培養した後、それらを薬理学的に処理した。
【0027】
1-3 被験物質の投与
PCP、3-MeO-PCMo、及び3-MeO-PCP(Cayman Chemical社製)を0.1%DMSO溶液により所定の濃度に希釈し、96ウェルプレートのうち、培養神経細胞が培養されている所定のウェルに投与した。被験物質の投与から10分後に、ウェル内の最終濃度が100μMとなるようにグルタミン酸溶液(和光純薬株式会社製)を調製し、薬液投与10分後に投与した。ドレブリンクラスター密度の用量反応曲線を得るための実験のために、最終グルタメート濃度は1、3、10、30、50又は100μMであった。いくつかの培養神経細胞は、グルタミン酸塩処理の前に、NMDA受容体に対する競合アンタゴニストであるD-2-アミノ-5-ホスホノバレリン酸(APV;50、100又は500μM)で10分間処理した。
【0028】
1-4 免疫細胞化学
培養神経細胞を、リン酸緩衝液中4%パラホルムアルデヒドで固定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.1%トリトンX-100で5分間浸透処理した後、培養神経細胞をPBS中3%ウシ血清アルブミン(PBSA) で室温(RT)にて1時間ブロッキングし、次いで一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。抗ドレブリン抗体(マウスモノクローナル、M2F6、1:1)及び抗MAP2抗体(ウサギポリクローナル、1:2000)(Merck Millipore社製)を一次抗体として使用した。PBSで洗浄した後、細胞を二次抗体及び4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI、1:1000、Thermo Fisher Scientific社製)と共に室温で1時間インキュベートした。使用した二次抗体は、Alexa Fluor 488ロバ抗マウスIgG(1:250)及びAlexa Fluor 594ロバ抗ウサギIgG(1:250、Jackson Immuno Research Laboratories社製)であった。
【0029】
1-5 画像の自動取得と解析
96ウェルプレートで培養された海馬神経細胞の三重染色像は、IN Cell Analyzer 2200(GE Healthcare社製)の自動焦点機能を使用することによって自動的に取得された(20倍レンズ、開口数0.45)。全てのデータは16ビット/ピクセルで2048×2048の解像度で収集された。画像内の単一の画素は、標本面内の325nmの正方形に対応していた。Zスタック画像は、ハイコンテント画像ソフトウェアであるIN Cell Developer Toolbox v1.9(GE Healthcare社製)を用いて拡張焦点変換プロトコル(extended focus transformation protocol)により処理され、Zシリーズスタックからの焦点があった単一の2次元画像を生成した。培養神経細胞の細胞体は、MAP2及びDAPI染色に基づいて認識された。培養神経細胞の細胞体を特定するために、セグメンテーション機能により、異なるカーネルサイズ及び感度を有するコントラストベースのセグメンテーションアルゴリズムを介して、MAP2陽性シグナルの蛍光強度に基づいて蛍光体を局在化させた。Erosion(収縮)、Sieve(ふるい)、Dilation(拡張)のコマンド及びDAPI陽性領域を用いて、培養神経細胞の細胞体を同定した。培養神経細胞の樹状突起を識別するために、セグメンテーション機能、並びにDilation及びErosionコマンドを、MAP2陽性シグナルについての別個のパラメーターと共に使用し、その後培養神経細胞の細胞体領域を差し引いた。ドレブリンクラスターを同定するために、セグメンテーション機能により、異なるカーネルサイズ及び感度を有するコントラストベースのセグメンテーションアルゴリズムを介して、ドレブリン陽性シグナルの蛍光強度に基づいて蛍光物体を局在化させた。偽陽性のバックグラウンドシグナルを除去するためにSieveコマンドを使用した。加えて、Dilationコマンドによって決定される、樹状突起までの定義された距離内に位置するドレブリン陽性斑点のみを、樹状突起に沿ったドレブリンクラスターとしてカウントした。神経細胞体、樹状突起及びドレブリンクラスター、視野当たりの細胞数、視野当たりの樹状突起長を同定した後、ドレブリンクラスターの線密度が自動的に算出された。
【0030】
1-6 統計
データは、ANOVA(エクセル統計Statcel4、有限会社オーエムエス出版製)に従ってt検定又はターキー-クレイマー検定によって統計的に分析した。全てのデータは平均値±平均値の標準誤差(SEM)として示した。市販のソフトウェア(GraphPad Prism 8、GraphPad Software社製)を用いて用量適合曲線を描き、IC50を計算した。
【0031】
2.結果
2-1 グルタミン酸処理は、NMDA受容体活性化を介してドレブリンクラスター密度を減少させた
まず、グルタミン酸がドレブリンクラスター密度に及ぼす影響を、ハイスループットイメージングシステムを用いて調べた。21インビトロ培養日数(DIV)のラット海馬培養神経細胞を、いくつかの濃度のグルタミン酸溶液(1μM、N=61;3μM、N=97;10μM、N=88;30μM、N=97;50μM、N=20;100μM、N=106)で処理した。上記1-4の免疫細胞化学の処理を行った後、画像取得及び分析は自動的に行われた。得られたドレブリンクラスター密度のグルタミン酸用量反応曲線を図1Aに示す。EC50は10.4μMであり、95%信頼区間(CI)は6.29μM~17.4μMの範囲であった。
【0032】
また、グルタミン酸刺激によるドレブリンクラスター密度の減少は、APV(50μM、N=4;100μM、N=7;500μM、N=6)によって阻害されることを確認した(図1B)。ここでの結果により、当該実験系が、グルタミン酸刺激によるドレブリンクラスター密度の減少、及び、NMDA受容体競合的アンタゴニストによるドレブリンクラスター密度減少の阻害を検出することができることが示された。
【0033】
2-2 グルタミン酸誘発ドレブリンクラスター密度の減少に対するPCP、3-MeO-PCMo及び3-MeO-PCPの阻害効果
まず、本発明者らは、100μMグルタミン酸溶液を用いてドレブリンクラスターの密度をどの程度減少させるかを決定した(対照、N=95;グルタミン酸100μM、N=77)。図2Aに示されるように、100μMグルタミン酸溶液処理により、対照群と比較してドレブリンクラスター密度が約40%減少した(対照0.538±0.0143;100μMグルタミン酸0.319±0.0035)。
【0034】
次に、グルタミン酸を用いたNMDA受容体刺激によるドレブリンクラスターの密度の低下に対する、NMDA受容体の非競合的拮抗薬であるPCPの抑制効果を調べた(0~10 μM、N=18)。対照群に対する各投与群の平均阻害率を計算することにより、用量依存的効果を分析した。図2Bより、PCPが100μMグルタメートのNMDAR刺激によって1μM以上の濃度でドレブリンクラスターの減少を有意に抑制し、PCPが用量依存的にドレブリンクラスターの減少を抑制することが示された。
【0035】
同様の方法により、PCPアナログである3-MeO-PCMo及び3-MeO-PCPの阻害作用を調べた(0~10μM;3-MeO-PCMo、N=29;3-MeO-PCMo、N=30)。図2Cは、3-MeO-PCPが、333nM以上の濃度で100μMグルタミン酸によるドレブリンクラスターの減少を有意に阻害したことを示す。図2Dは、3 -MeO-PCMoが、3.33μM以上の濃度で100μMグルタミン酸によるドレブリンクラスターの減少を有意に阻害したことを示す。さらに、3-MeO-PCP及び3-MeO-PCMoの両方が、用量依存的にドレブリンクラスターの減少を阻害した。
【0036】
2-3 PCP、3-MeO-PCMo及び3-MeO-PCPのIC50
分析の定量的信頼性を高めるために、測定値に基づいて曲線近似した用量作用曲線を作成した(図3)。図3より、3-MeO-PCPの阻害活性がPCPの阻害活性と同程度であり、3-MeO-PCMoの阻害活性がPCPのそれよりも低いことが示された。IC50は、PCP=2.02μM(95%CI:1.39~2.97μM)、3-MeO-PCP=1.51μM(95%CI:1.16~1.99μM)、3-MeO-PCMo=26.7μM(95%CI:20.0~37.3μM)であった。
【0037】
3.考察
上記2-3で算出したIC50に基づく阻害活性の順は、活性が大きい方から3-MeO-PCP>PCP>3-MeO-PCMoであった。最近なされたNMDA受容体に対する結合アッセイの報告によれば、PCPの阻害定数(K)値は22.1nM(Colestock et al. (2018)、Drug Testing and Analysis, 10, 272-283)及び57.9nM(Wallach, J. (2014). Structure activity relationship (SAR) studies of arylcyclohexylamines as N-methyl-D-aspartate receptor antagonists. PhD dissertation. University of the Sciences, Philadelphia)であると報告されており、3-MeO-PCPのK値は38.1nMであると報告されている(Wallach, J. (2014))。これは、3-MeO-PCPが、PCPの平均よりもNMDA受容体に対してわずかに高い親和性を有することを示す。一方で、3-MeO-PCMoのK値は252.9nMであり、PCPのK値と比べて1/12であると報告されている(Colestock et al. (2018))。
【0038】
上記のK値からPCPに対する親和性比を計算したところ、PCP=1としたときに、3-MeO-PCP=0.73(Wallach, J. (2014)のK値からの再計算)、3-MeO-PCMo=11.4(Colestock et al. (2018)のK値からの再計算)であった。まとめると、親和性の順序は、3-MeO-PCP>PCP>3-MeO-PCMoで、本発明の方法により得られたIC50に基づく活性の順序と同じであった。
【0039】
同一の作用機序を有する阻害剤の場合、それらのIC50値を比較することにより、相対的な阻害活性を評価するのに有用であるとの報告がある(Cheng&Prusoff (1973) Biochemical Pharmacology, 22(23), 3099-3108;Cer et al. (2009) Nucleic Acids Res. 1(37): W441-W445)。PCP及び他の高親和性NMDA受容体アンタゴニストは、NMDARと同様の阻害メカニズムを有することが示唆されている(Lodge&Mercier (2015) Br. J. Pharmacol, 172, 4254-4276)。かかる知見に基づいて、本研究で得られたIC50値からPCPに対する効力比を計算したところ、PCP=1としたときに、3-MeO-PCP=0.75、3-MeO-PCMo=13.2であり、上記K値から計算した効力比と類似していた。この結果より、本発明によって得られるIC50値は、NMDA受容体阻害作用を反映しており、NMDA受容体阻害活性を有する化合物(NPS候補化合物や、新規治療剤等)の薬理学的評価(毒性評価)に使用することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、簡便且つ短時間で実施することのできる、NMDA受容体阻害活性のハイスループット評価方法を提供することができる。かかる評価方法により、従来は機能面からの評価及び規制が困難であったNPSの迅速な規制や、NMDA受容体をターゲットとした治療薬のハイスループットスクリーニング及び機能評価が可能になるため、産業上の有用性は極めて高い。
図1
図2
図3