(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】印刷物の真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェア
(51)【国際特許分類】
G07D 7/128 20160101AFI20240813BHJP
G07D 7/005 20160101ALI20240813BHJP
B42D 25/309 20140101ALI20240813BHJP
B41M 3/14 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
G07D7/128
G07D7/005
B42D25/309
B41M3/14
(21)【出願番号】P 2021010129
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
(72)【発明者】
【氏名】溝上 潤
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-147176(JP,A)
【文献】特開2007-013516(JP,A)
【文献】特開2018-199323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00- 7/207
B42D 15/02,
25/00-25/485
B41M 1/00- 3/18,
7/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度が所定値以上の要素が形成されることで、潜像模様が形成される第1の領域と、濃度が前記所定値より低く、前記第1の領域の要素と補色又は反対色の要素が形成されることで、前記潜像模様を相殺する相殺模様が形成される第2の領域から成るユニットが、マトリクス状に規則的に配置されて階調を有する潜像が不可視化された印刷物の真正を確認する確認装置であって、
前記印刷物における
前記潜像が含まれる領域を撮像して動画又は静止画の撮像データを入力する画像入力手段と、
前記画像入力手段から入力された前記撮像データに対して前記所定値より濃度が低い要素を除去し
た後に、濃度が前記所定値以上の要素の輪郭を、前記ユニット内で前記第1の領域から前記第2の領域に向かって膨張させる処理を行うことで生成された画像データを出力する画像処理手段と、
前記画像処理手段から出力された前記画像データを与えられて前記潜像を画像表示する画像表示手段を備えることを特徴とする印刷物の真正の確認装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、濃度が前記所定値以上の要素の輪郭を、前記ユニット内で前記第1の領域から前記第2の領域に向かって膨張させた後に、濃度が前記所定値以上の前記要素の濃度と前記輪郭が膨張した部分の濃度とを平均化する処理を更に行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷物の真正の確認装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記印刷物に存在するいずれかの情報に基づいて前記潜像に関連する関連情報を取得し、
前記画像表示手段は、前記関連情報を更に表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物の真正の確認装置。
【請求項4】
前記画像データに、表示すべき前記潜像が含まれていない場合は、前記画像表示手段は、情報のない画像を表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の印刷物の真正の確認装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記画像データを用いて、前記印刷物の真正の判断を更に行い、
前記画像表示手段は、前記印刷物の真正の判断の結果を更に表示することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷物の真正の確認装置。
【請求項6】
前記印刷物の真正を、請求項1に記載された前記確認装置を用いて確認する方法であって、
前記画像入力手段により、前記印刷物における前記潜像が含まれる領域を撮像して動画又は静止画の撮像データを取得するステップと、
前記画像処理手段により、前記撮像データに対して前記所定値より濃度が低い要素を除去した後に、濃度が前記所定値以上の要素の輪郭を、前記ユニット内で前記第1の領域から前記第2の領域に向かって膨張させた画像データを生成するステップと、
前記画像表示手段により、前記画像データを用いて前記潜像の画像表示を行うステップを備えることを特徴とする印刷物の真正の確認方法。
【請求項7】
前記印刷物の真正を、請求項2に記載された前記確認装置を用いて確認する方法であって、
濃度が前記所定値以上の要素の輪郭を、前記ユニット内で前記第1の領域から前記第2の領域に向かって膨張させるステップの後に、濃度が前記所定値以上の前記要素の濃度と前記輪郭が膨張した部分の濃度とを平均化するステップを更に備えることを特徴とする請求項6に記載の印刷物の真正の確認方法。
【請求項8】
前記印刷物の真正を、請求項3に記載された前記確認装置を用いて確認する方法であって、
前記画像表示を行うステップにおいて、前記印刷物に存在するいずれかの情報に基づいて前記潜像に関連する関連情報を表示するステップを更に備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の印刷物の真正の確認方法。
【請求項9】
前記印刷物の真正を、請求項4に記載された前記確認装置を用いて確認する方法であって、
前記画像データに、表示すべき前記潜像が含まれていない場合は、前記画像表示を行うステップにおいて、情報のない画像を表示することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の印刷物の真正の確認方法。
【請求項10】
前記印刷物の真正を、請求項5に記載された前記確認装置を用いて確認する方法であって、
前記画像データを用いて、前記印刷物の真正の判断を行うステップを更に備え、
前記画像表示を行うステップにおいて、前記印刷物の真正の判断を行った結果を更に表示することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の印刷物の真正の確認方法。
【請求項11】
前記確認装置が備えるコンピュータに、請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の印刷物の真正の確認方法を実行させるための確認用ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物に施された二次元コードや印刷物に埋め込まれた電子透かしをカメラ等で読み取り、埋め込まれた情報をコンピュータ上の文字列として判別するものがあった。しかしながらこの技術は、印刷物に埋め込まれた情報に基づいて、リンクさせたいホームページのアドレスやURL、画像の副情報などへ繋ぐインターフェイス手段や、紐づけられた別情報を検索する手段に使われるものであり、印刷物に施された潜像を直接可視化するものではなかった。
【0003】
また、偽造防止印刷物として、例えば本願と同一出願人による特許文献1で提案されたような位相変調系の潜像を撮影して画像データを取得して画像表示を行うことにより、潜像の読取りを行う印刷物の読取検査方法、装置があった。この技術では、潜像が埋め込まれた印刷物をカメラで撮影して潜像を可視化させることはできるが、潜像を構成する画線や網点の輪郭を強調して位相変調点(エッジ)を抽出し、潜像の輪郭を捉える技術であった。そのため、印刷物に施される潜像が簡単な文字や図形等ではなく、顔画像や風景等のように階調を有するような場合は、潜像を鮮明に可視化させることはできなかった。
【0004】
あるいはまた、コピー機を用いて偽造防止印刷物をコピーし、印刷物に埋め込まれた潜像を可視化するものもあった。コピー機の替わりに透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズを印刷物上に載置し、潜像を可視化するもの、IRビューアを用いて赤外線を印刷物上に照射し、潜像を可視化するものもあった。
【0005】
しかしながら、コピー機、万線フィルムやレンチキュラーレンズ、IRビューアといった潜像を可視化する判別具や装置は、いずれも日常的に携行するものではない。よって、誰もが簡易に印刷物の潜像を可視化し真正を確認することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1による技術では、複雑な潜像を鮮明に可視化させることができないという課題があった。また、潜像を可視化する道具や装置として従来用いられていたコピー機、万線フィルムやレンチキュラーレンズ、IRビューア等は、いずれも日常的に携行するものではなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、日常的に携行し得るものを用いて簡易かつ鮮明に印刷物の潜像を可視化し真正を確認することができる印刷物の真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の印刷物の真正を確認する確認装置は、印刷物における潜像が含まれる領域を撮像して動画又は静止画の撮像データを入力する画像入力手段と、画像入力手段から入力された撮像データに対して所定値より濃度が低い要素を除去した画像データを出力する画像処理手段と、画像処理手段から出力された画像データを与えられて潜像を画像表示する画像表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の印刷物の真正を確認する確認装置における画像処理手段は、所定値より濃度が低い要素を除去した後に、濃度が所定値以上の要素の輪郭を膨張させる処理を更に行うものであってもよい。
【0011】
また、本発明の印刷物の真正を確認する確認装置における画像処理手段は、濃度が所定値以上の要素の輪郭を膨張させた後に、濃度が所定値以上の要素の濃度と輪郭が膨張した部分の濃度とを平均化する処理を更に行うものであってもよい。
【0012】
また、本発明の印刷物の真正を確認する確認装置における画像処理手段は、印刷物に存在するいずれかの情報に基づいて潜像に関連する関連情報を取得し、画像表示手段は、関連情報を更に表示するものであってもよい。
【0013】
また、本発明の印刷物の真正を確認する確認装置は、画像データに表示すべき潜像が含まれていない場合、画像表示手段が、情報のない画像を表示するものであってもよい。
【0014】
また、本発明の印刷物の真正を確認する確認装置における画像処理手段は、画像データを用いて、印刷物の真正の判断を更に行い、画像表示手段は、印刷物の真正の判断の結果を更に表示するものであってもよい。
【0015】
本発明の印刷物の真正を、上記確認装置を用いて確認する方法は、画像入力手段により、印刷物における潜像が含まれる領域を撮像して動画又は静止画の撮像データを取得するステップと、画像処理手段により、撮像データに対して所定値より濃度が低い要素を除去した画像データを生成するステップと、画像表示手段により、画像データを用いて潜像の画像表示を行うステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の印刷物の真正を、上記確認装置を用いて確認する方法は、所定値より濃度が低い要素を除去するステップの後に、除去した要素の領域を埋めるように、濃度が所定値以上の要素の輪郭を膨張させるステップを更に備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の印刷物の真正を、上記確認装置を用いて確認する方法は、要素の輪郭を膨張させるステップの後に、濃度が所定値以上の要素の濃度と輪郭が膨張した部分の濃度とを平均化するステップを更に備えてもよい。
【0018】
また、本発明の印刷物の真正を、上記確認装置を用いて確認する方法は、画像表示を行うステップにおいて、印刷物に存在するいずれかの情報に基づいて潜像に関連する関連情報を表示するステップを更に備えてもよい。
【0019】
また、本発明の印刷物の真正を、上記確認装置を用いて確認する方法は、画像データに表示すべき潜像が含まれていない場合は、画像表示を行うステップにおいて、情報のない画像を表示することもできる。
【0020】
また、本発明の印刷物の真正を、上記確認装置を用いて確認する方法は、画像データを用いて、予め登録されている情報と比較・照合することで印刷物の真正の判断を行うステップを更に備え、画像表示を行うステップにおいて、印刷物の真正の判断を行った結果を更に表示することもできる。
【0021】
本発明の印刷物の真正を確認する確認用ソフトウェアは、コンピュータに、上記印刷物の真正の確認方法を実行させるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の印刷物の真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアによれば、誰もが日常的に携行し得るものを用いて、簡易かつ鮮明に印刷物の潜像を可視化し真正を確認することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアで真正の確認の対象となる印刷物の一例を示す図。
【
図2】同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアで真正の確認の対象となる印刷物の一例を示す図。
【
図3】
図2における画線12及び13の一部を拡大して示す部分拡大図。
【
図4】同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアで真正の確認の対象となる印刷物の一例を示す図。
【
図5】同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアで真正の確認の対象となる印刷物の一例を示す図。
【
図6】同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアで真正の確認の対象となる印刷物の一例を示す図。
【
図7】同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアで真正の確認の対象となる印刷物の一例を示す図。
【
図8】通常のカラー複写機における入出力の濃度の関係を示すグラフ。
【
図9】同実施の形態による印刷物において、印刷模様の最小単位であるユニットの構成を示す図。
【
図10】印刷模様の最小単位であるユニットをマトリクス状に配置した例を示す図。
【
図11】同実施の形態による印刷物において、潜像の原画となる顔写真を含む画像の一例を示す図。
【
図12】同印刷物において、黒の階調及び赤の階調を5段階で示した図。
【
図13】同印刷物において、顔写真の基本色成分である黒と赤のそれぞれの階調を5段階で表した場合のユニットの構成を示す図。
【
図14】同印刷物において、顔写真の基本色成分である黒と赤のそれぞれの階調を3段階で表す場合のCMYKの濃度を示す図。
【
図15】同印刷物において、
図14で示された黒と赤のそれぞれの3段階の階調において補色により模様のないフラットなグレー単色にするためのCMYKの濃度割り当てを示す図。
【
図16】同印刷物において、
図15で示された黒と赤のそれぞれ3段階の階調の分解画像に網点を適用した状態を示す図。
【
図17】同印刷物において、
図16で示された黒と赤のそれぞれ3段階の階調の分解画像を遠くから見た時の濃度が約20%の模様のないフラットなグレー単色を示す図。
【
図18】本発明の実施の形態による真正の確認装置の構成を示すブロック図。
【
図19】本発明の実施の形態による真正の確認装置の構成の一例を示す図。
【
図20】本発明の実施の形態による真正の確認方法における処理の手順を示すフローチャート。
【
図21】
図20に示された真正の確認方法において、入力した画像データによる画像の一例を示す図。
【
図22】同真正の確認方法において、濃度が所定より低い要素を除去する処理を行った画像の一例を示す図。
【
図23】同真正の確認方法において、輪郭を膨張する処理を行った画像の一例を示す図。
【
図30】印刷物に形成された画像と、本発明の実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアにより出力された画像の一例を示す図。
【
図31】印刷物に形成された画像と、同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアにより出力された画像の一例を示す図。
【
図32】印刷物に形成された画像と、同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアにより出力された画像の一例を示す図。
【
図33】印刷物に形成された画像と、同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアにより出力された画像の一例を示す図。
【
図34】印刷物に形成された画像と、同実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアにより出力された画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施の形態による印刷物の真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアについて、図面を参照して説明する。本発明は、以下に述べる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる様々な形態が含まれる。
【0025】
本発明は、銀行券、株券、債券等の有価証券、旅券、運転免許証等の各種証明書及び重要書類、チケット等の偽造防止や改ざん防止が求められる印刷物に適用される。まず、本実施の形態において真正の確認の対象となる印刷物の幾つかの例について説明する。ただし、本発明で真正の確認の対象となる印刷物はこれらの例には限定されない。
【0026】
(1 網点の大小により潜像が形成された印刷物)
特開平4-170569号公報に開示された印刷物の概略構成について説明する。
図1(a)に示された画像の一部を拡大したものを
図1(b)に示す。スクリーン線数が100lines/inchで網点パーセントが10%の部分(1)と、スクリーン線数が200lines/inchで網点パーセントが10%の菊の花の潜像(2)と、白抜きの円形模様(3)とが形成されており、網点の大小により潜像(2)が形成されている。このような印刷物を肉眼で一見すると、
図1(c)に示されるように白抜きの円形模様(3)が均一に並んだ網点印刷物に見える。この印刷物に対して、潜像(2)を形成する小さい網点を除去するように処理すると、
図1(d)に示されるように菊の花の潜像(2)が視認される。
【0027】
(2 画線の分岐により潜像が形成された印刷物)
特開平8-197828号公報に開示された印刷物の概略構成について説明する。
図2に示された画線の一部を拡大したものを
図3に示す。曲画線の集合模様を、潜像を施さない部分の画線(12)を一本線、潜像を施した部分の画線(13)を二本線以上の複数の画線で表現し、画線(12)の画線幅と画線(13)の画線幅とが等しく形成されている。この印刷物に対して、複数の画線で表現した潜像を施した部分(13)を除去するように処理すると、潜像が顕像化される。
【0028】
(3 画線の分断により潜像が形成された印刷物)
同一出願人による特開平8-300800号公報に開示された印刷物の概略構成について説明する。
図4に示されたように、曲線状の集合模様を、潜像を施さない部分の画線(12)を連続線、潜像を施した部分の画線(13)を、画線の長手方向に沿って一定間隔で分断したように配列された分断線で表現し、画線面積が等しくなるように形成されている。この印刷物に対して、分断した画線(13)で表現した潜像を施した部分を除去するように処理すると、潜像が顕像化される。
【0029】
(4 画線の分岐、分断により潜像が形成された印刷物)
同一出願人による特開2000-185457号公報に開示された印刷物の概略構成について説明する。
図5に示されたように、曲線状の集合模様を、潜像を施さない部分の画線(12)を1本の画線、潜像を施した部分の画線(13)を、画線の長手方向と直交する方向に複数に分岐し、画線の長手方向に沿って分断した画線で表現し、画線面積が等しくなるように形成されている。この印刷物に対して、分岐、分断した画線(13)で表現した潜像を施した部分を除去するように処理すると、潜像が顕像化される。
【0030】
(5 潜像が形成された領域とカムフラージュ画線が形成された領域とを有する印刷物)
同一出願人による特開2016-172340号公報に開示された印刷物の概略構成について説明する。
図6に示されたように、連続階調画像を、潜像を施した部分の画線(21)を1本の連続した画線、可視光下で画線(21)による潜像を視認できないようにするためのカムフラージュ部を分断した複数の画線(22)、(23)で構成している。この印刷物に対して、画線(22)、(23)を除去するように処理すると潜像が顕像化される。
【0031】
(6 潜像が形成された印刷物)
同一出願人による特開2020-8997号公報及び特願2020-138484に記載された印刷物の概略構成について説明する。
この印刷物において潜像が形成された領域を、通常光下で肉眼により観察した状態を
図7(a)に示す。一見すると、模様のないフラットでグレー単色の印刷が施されているように観察される。この印刷物を通常のカラー複写機により複写したり、万線フィルタ又はレンチキュラーレンズを載置して観察したり、赤外線を照射して観察すると、
図7(b)に示されたように潜像が出現する。更に、本発明の一実施の形態による真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアによれば、
図7(b)に示されたような潜像が画像表示される。
【0032】
本実施の形態では、前述した特願2020-138484に記載された印刷物の構成を用いて詳細に説明する。この例の印刷物は、
図7(a)に示すように、一見すると模様のないフラットでグレー単色の印刷物であるが、カラー複写機により複写すると、複写物に
図7(b)に示されたような潜像がカラーで出現するものであり、前述した万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具を載置しても同様の潜像がカラーで可視化され、更に、赤外線視においても潜像が視認される印刷物である。
【0033】
カラー複写機による複写において、潜像がカラーで出現する原理を説明するため、
図8に、通常のカラー複写機における入出力の明度の関係、即ち原本の濃度と複写物の濃度との関係の一例を示す。通常のカラー複写機では、原本の濃度と複写物の濃度とが点線で示されたリニアの関係にはなく、実線で示されたように、原本の濃度が50%より低い段階では複写物の濃度はより低く、原本の濃度が50%より高い段階では複写物の濃度はより高く設定されている。本実施の真正の確認に用いられる印刷物は、このようなカラー複写機の入出力の濃度特性を利用して潜像の全体の濃度、即ち画線面積率を5~40%、望ましくは例えば20%というように低く設定されている。
【0034】
この例の印刷物では、潜像の原画として個人情報を想定し、その代表的なものとして顔写真を想定しており、顔の基本色成分を赤と黒としている。なお、本発明においては、潜像の原画は顔写真には限定されず、また原画の基本色成分は赤と黒には限定されない。
【0035】
図9に、この印刷物に形成された潜像の構成を拡大して示す。ここで、縦の寸法(Sv)及び横の寸法(Sh)は400~600μmの範囲であって、例えば、423μmというように1mm以下の大きさである。また、画像解像度を、例えば1200dpiとし、縦横20ピクセルとしている。
【0036】
図9に示された構成は、ユニットと称される最小単位であり、ユニット構成の一例を示すと中央に配置された第1の領域(A)と、第1の領域(A)を上下に挟持するように配置された第2の領域(B)とを備えている。第1の領域(A)は潜像模様が形成される潜像模様領域に相当し、第2の領域(B)は、潜像模様を相殺する相殺模様を形成するための相殺模様領域に相当する。なお、中心線(L1)は、前述した万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具を印刷物上に載置する際にその位置を規定するものである。
【0037】
このようなユニットが、印刷物上において複数個マトリクス状に規則的に配置されて形成される。その配置の例としては、
図10(a)に示すように、横方向に隣接するユニット間で第1の領域(A)及び第2の領域(B)が横一直線状に連結されるものが挙げられる。また、
図10(b)のように第1の方向(S1)にブロック状に配置されてもよいし、
図10(c)に示すように、正方形のユニットが配置されてもよい。また、
図10(d)に示すように、ユニットが縦方向に配置されてもよいし、
図10(e)のように縦方向かつブロック状に配置されてもよい。更に、
図10(a)から(e)は、第1の領域(A)を上下に挟持するように第2の領域(B)が配置されているが、ユニットは、
図10(f)、
図10(g)で示すように、第1の領域(A)と第2の領域(B)を横方向あるいは縦方向に交互に配置する構成でもよい。
【0038】
第1の領域(A)は、赤外線吸収性色素(例えば、カーボン)を含むブラック(K)の色材で形成され、第2の領域(B)は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで形成されている。また、各ユニットにおいて、第1の領域(A)と第2の領域(B)とが存在することで可視光の波長領域では、肉眼視において画線面積率20%程度の模様のないフラットなグレー単色となって視認される。
【0039】
なお、
図9では第1の領域(A)は一定の画線面積率で示されているが、潜像模様の構成に応じて可変する。また第2の領域(B)は、潜像模様及び可視模様の構成に応じて可変する。
【0040】
図11に、印刷物における潜像の原画となる顔写真(32)を含む画像(31)を示す。 画像(31)は、例えば、8bitのカラースケール画像で写真階調を有する。
【0041】
図12に、顔写真で基本色成分とした黒の5段階の階調を上段の5個のユニットに示し、赤の5段階の階調を下段の5個のユニットに示す。
【0042】
図13は、上段の5個の各ユニットにおいて、中央に配置された第1の領域(A)に黒の5段階の階調を示し、その上下に潜像模様を相殺するための第2の領域(B)を配置し、第2の領域(B)に第1の領域(A)の色彩の補色又は反対色を5段階の階調で示したものである。例えば、一方が黒のとき、他方は白、一方がグレー色のとき、他方はグレー色という関係である。
【0043】
更に、下段の5個の各ユニットにおいて、中央に配置された第1の領域(A)に赤の5段階の階調を示し、その上下に潜像模様を相殺するための第2の領域(B)を配置し、第2の領域(B)に第1の領域(A)の色彩の補色又は反対色を5段階の階調で示す。
【0044】
このような第1の領域(A)と第2の領域(B)とが配置されたことで、全体として通常の可視光下では肉眼では潜像模様は視認されない。しかし、カラー複写を行うと、第2の領域(B)は第1の領域(A)よりもユニット内に占める面積が大きく、かつ第2の領域(B)の画線面積率の平均値は第1の領域(A)の画線面積率の平均値よりも相対的に低いため出力されず、黒の潜像模様及び赤の潜像模様のみが出力されて、潜像模様が出現する。
【0045】
図14に、上段に配置され、より簡約化された3段階の黒の階調を示す3個のユニットと、下段に配置され赤の階調を示す3個のユニットとが配置されたときの、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のデータを示す。上段の3個の各ユニット全体において、黒の3段階の階調が示され、ブラック(K)のデータが左から右へ向かって順に0、50、100のデータとなっている。この場合のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータはいずれも0である。下段の3個の各ユニット全体において、赤の3段階の階調が示され、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが左から右へ向かって順に0、50、100のデータとなっている。この場合のシアン(C)、ブラック(K)のデータはいずれも0である。
【0046】
図15に、上段に配置され3段階の黒の階調を示す3個のユニットと、下段に配置され赤の階調を示す3個のユニットとが配置され、更に各ユニットの中央に第1の領域(A)が配置され、その上下に第2の領域(B)が配置されたときのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のデータを示す。上段の3個の各ユニットにおいて、中央に配置された第1の領域(A)に黒の3段階の階調が示され、ブラック(K)のデータが左から右へ向かって順に0、50、100となっている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータは全て0である。その上下に配置された第2の領域(B)には、第1の領域(A)における色彩の補色又は反対色がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成される。具体的には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが左から右へ向かって順に25、13、0となっており、ブラック(K)のデータは全て0である。
【0047】
下段の3個の各ユニットにおいて、中央に配置された第1の領域(A)に赤の3段階の階調が示され、シアン(C)、ブラック(K)のデータが全て0となっており、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが0、50、100となっている。その上下に配置された第2の領域(B)に、第1の領域(A)における色彩の補色又は反対色がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成される。具体的には、シアン(C)が全て25、ブラック(K)が全て0、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のデータが左から右へ向かって順に25、13、0となっている。
【0048】
ここで、前述した補色又は反対色について説明する。色彩には、赤、青、黄色などの色みを持つ有彩色と、白、黒、そのグラデーション上に位置するグレーといった色みのない無彩色があり、この例の印刷物は、有彩色及び無彩色のどちらも用いることができる。有彩色において、補色は色相環で正反対に位置する関係の色の組合せであり、例えば、赤の補色は緑であり、青の補色は橙色である。一方、無彩色は、色相及び彩度がなく明度が異なるのみなので、補色の概念はないが、白の反対色は黒、黒の反対色は白と表せる。これらを印刷物に適用したものであり、例えば、無彩色の場合、
図15の上段右側に示すようにユニットの中央に配置された第1の領域(A)が「黒」の場合は、ユニットの上下に配置された第2の領域(B)には、黒の反対色である「白」として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)が全て0で表される。同様に、
図15の上段左側に示すように、第1の領域(A)が「白」の場合は、ユニットの上下に配置された第2の領域(B)に白の反対色である「黒」が配置されるが、このとき、ブラック(K)を用いずに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)をそれぞれ25で形成する。
【0049】
続いて、上記で相殺模様の第2の領域(B)にブラック(K)ではなく、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成する理由について説明する。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインキは赤外吸収色素を含まないが、ブラック(K)のインキは赤外吸収色素を含むため、印刷物を赤外線視した際にブラック(K)インキで印刷した画像が出現する。この例の印刷物は、赤外線視した際に第1の領域(A)に形成されたブラック(K)インキが潜像画像として出現するところに、第2の領域(B)にブラック(K)インキが形成されると、出現する潜像画像が不鮮明になるためである。同様に、有彩色の例として、
図15の下段右側に示すように、第1の領域(A)は、マゼンタ(M)が100、イエロー(Y)が100で構成される「赤」の場合は、ユニットの上下に配置された第2の領域(B)にその補色としてシアン(C)25のみで形成される。
【0050】
次に、
図15に示された上下3個ずつのユニットにおいて、第1の領域(A)の領域にはシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)によりベタで塗りつぶし、第2の領域(B)には網点を配置した状態を
図16に示す。なお、画線配置について、第1の領域(A)をベタ画線で、第2の領域(B)を網点で配置したが、印刷物(1)を複写する際、複写物に潜像が再現され、相殺模様が再現されないように画線や網点が配置されば上記構成に限定されない。
【0051】
図16に示されたユニットで構成された画像領域全体を視認すると、
図17に示されたようにブラック(K)の画線面積率が約20%で視認される。
【0052】
なお、印刷物を構成する色彩は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)に限定されるものではなく、他の色であってもよい。ただし、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)を用いる構成は、各色の合成によって表現できる色の範囲が広いことから好ましい。
【0053】
以上で説明したような印刷物に対して、以下に説明する本発明の実施の形態による印刷物の真正の確認装置、確認方法、確認用ソフトウェアを用いることにより、
図11に示された顔写真(32)のような潜像をカラー画像で表示することができる。また、本発明の印刷物の真正の確認装置、確認方法及び確認用ソフトウェアによれば、潜像をカラーで可視化できるため、モノクロ、単色カラーはもちろんのこと、モノクロ連続階調画像、フルカラー連続階調等、さまざまな表現が可能である。
【0054】
(印刷物の真正の確認装置)
本発明の実施の形態による印刷物の真正の確認装置について説明する。この印刷物の真正の確認装置の構成を
図18に示す。この確認装置は、画像入力手段(M1)、データ受信手段(M2)、画像処理手段(M3)、記憶手段(M4)、画像表示手段(M5)、データ送信手段(M6)を備えており、例えば、いわゆるPC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、タブレット型端末等の多機能端末で実現してもよい。
【0055】
画像入力手段(M1)はカメラ等の撮像手段を有し、印刷物における潜像が含まれる領域を撮像して画像データを入力する。ここでは、画像入力手段(M1)は動画を入力するが、静止画であってもよい。
【0056】
データ受信手段(M2)は、後述するようにインターネット等の各種ネットワークから必要なデータを受信する。
【0057】
画像処理手段(M3)は、画像入力手段(M1)が入力した画像データを与えられて、濃度が所定値以上の部分を抽出し、所定値より低い部分を除去する処理を行う。濃度が所定値より高い部分を抽出する処理としては、例えば、所定濃度以上の部分を抽出してもよいし、所定の画線サイズ以上の部分を抽出してもよい。なお、濃度の所定値は、潜像が施されている印刷物の画線構成により設定できる。
【0058】
記憶手段(M4)は、画像入力手段(M1)、データ受信手段(M2)からそれぞれ出力されたデータ、並びに画像処理手段(M3)によって処理されたデータを与えられて格納し、要求に応じて出力する。
【0059】
画像表示手段(M5)は、画像処理手段(M3)から出力された画像データを与えられて画像表示を行う。即ち、画像入力手段(M1)によって撮像された画像データに対し、画像処理手段(M3)によって濃度が所定値以上の部分を抽出して得られた画像を表示する。これにより、印刷物に形成されている潜像がカラーで表示される。
【0060】
データ送信手段(M6)は、後述するようにインターネット等の各種ネットワークに対し、画像処理手段(M3)が出力した画像データ等、必要なデータを送信する。
【0061】
本発明の実施の形態による印刷物の真正の確認装置は、上述したように、画像入力手段(M1)、データ受信手段(M2)、画像処理手段(M3)、記憶手段(M4)、画像表示手段(M5)、データ送信手段(M6)を備えるスマートフォン、タブレット型端末等の多機能端末で実現してもよいし、別の実施形態として、
図19に示すように、上記手段(M1からM6)の一部を、スマートフォン、タブレット型端末等の多機能端末(T)にネットワーク(N)を介して接続されたサーバなどの他の装置(S)、例えば、インターネット上にサーバを配置したクラウド環境に作られたクラウド・サーバを利用して実現してもよい。
【0062】
(印刷物の真正の確認方法)
上述した確認装置を用いて印刷物の真正の確認を行う方法について、
図20のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0063】
ステップS11において、画像入力手段(M1)が印刷物における潜像が含まれる領域を撮像して、動画又は静止画の画像データを入力する。入力した画像の一例を
図21に示す。この画像は、
図9~
図17を用いて説明した画線の構成を有するカラー画像に相当する。また、必要に応じてデータ受信手段(M2)が、インターネット等の各種ネットワークから必要なデータを受信する。
【0064】
ステップS12において、画像処理手段(M3)が、画像入力手段(M1)から画像データを与えられて濃度が所定値以上の要素を抽出し、所定値より低い要素を除去する処理を行う。なお、本発明における要素とは、画像入力手段(M1)から入力された画像データにおける一つ一つの画線及び網点に相当するものであり、例えば、前述した印刷物の例において
図16で示したように、潜像模様として第1の領域(A)の全域に配置したベタ画線、第1の領域(A)の一部に配置した画線も要素であり、相殺模様として第2の領域(B)に配置した網点も要素である。
図22に、濃度が所定値より低い要素を除去した画像の一例を示す。上述したように、所定濃度以上の要素を抽出したり、あるいは所定の画線サイズ以上の要素を抽出してもよい。
【0065】
画像処理手段(M3)はこの後、ステップS21として、輪郭膨張処理を行うか否かを判断し、行う場合はステップS22、行わない場合はステップS31へ移行する。
【0066】
ステップS22において、画像処理手段(M3)が、抽出した所定濃度以上の要素の輪郭を膨張する処理を行う。この処理は、所定濃度より低く除去された要素のあった部分を埋めるために行われる。
図22に示された画像に対して、所定濃度以上の要素の輪郭を膨張する処理を行った画像を
図23に示す。また、
図21における部分Aを部分的に拡大した画像を
図24に示し、
図22における部分Aを部分的に拡大した画像を
図25に示し、
図23における部分Aを部分的に拡大した画像を
図26に示す。
【0067】
輪郭を膨張する処理を行った要素の幾つかの例について説明する。
図27(a)、
図28(a)、
図29(a)に当該処理を施す前の要素を示し、
図27(b)、
図28(b)、
図29(b)に当該処理を施した後のそれぞれの要素を示す。
図27(b)に示された例では、要素が長方形形状を維持した状態で膨張している。
図28(b)に示された例では、要素が楕円形状に膨張している。
図29(b)に示された例では、要素が長方形形状を維持しつつ要素の輪郭部分の濃度が低下した状態で膨張している。ただし、
図27~
図29に示された例は一例に過ぎずこれらに限られるものではなく、様々な形状や濃度で要素の輪郭を膨張する処理が可能である。
【0068】
ステップS31において、画像処理手段(M3)が、平均化処理を行うか否かを判断し、行う場合はステップS32、行わない場合はステップS41へ移行する。なお、ステップS22において要素の輪郭を膨張する処理を行った場合、あるいは行わなかった場合のいずれであっても、平均化処理は行わずにステップS41へ移行する場合がある。ただし、平均化処理を行う場合には、その前にステップS22において要素の輪郭を膨張する処理が行われている必要がある。
【0069】
ステップS32において、画像処理手段(M3)が、除去された要素のあった部分を埋めるために、抽出された要素の輪郭を膨張する処理を行った要素に対し、元からあった要素と、除去された要素のあった領域を埋めるために膨張された要素との濃度が平均化されるように行う。
【0070】
ステップS41において、画像処理手段(M3)が、ステップS31又はステップS32までに得られた画像データと関連する情報を参照するか否かを判断し、行う場合はステップS42、行わない場合はステップS51へ移行する。
【0071】
ステップS41において、画像処理手段(M3)が、ステップS31又はステップS32までに得られた画像データと関連する情報、例えば潜像が所定の個人を表す場合はその個人情報等を参照すると判断した場合、ステップS42において、データ受信手段(M2)がインターネット等の各種ネットワークやから関連情報を受信し、画像処理手段(M3)が、その関連情報を参照する。
【0072】
ステップS51において、画像処理手段(M3)が、ステップS41又はS42までに得られた画像データを用いて、当該印刷物は真正なものであるかを判断するか否かを判断し、行う場合はステップS52、行わない場合はステップS61へ移行する。
【0073】
ステップS52において、画像処理手段(M3)が、ステップS41又はS42にまでに得られた画像データを用いて、当該印刷物は真正なものであるかを判断する。具体的には、予めデータベースに真正か否かを比較するための情報が登録されており、照合のための所定の処理を行うプログラムにより、データベースに登録された情報と、ステップS41又はS42にまでに得られた画像データとの照合を行う。そして、条件を満たしていれば、真正と判定し、所定の条件を満たさない場合に、偽物として判定する。
【0074】
ステップS61において、ステップS51又はS52までに得られたデータを用いて、処理結果の画像表示を行う。ステップS41において関連データを参照せず、ステップS51において真正か否かを判断しないと判断した場合は、得られた潜像をカラー表示する。ステップS41において関連データを参照すると判断した場合は、潜像に加えて関連データを表示する。また、ステップS51において真正か否かを判断すると判断した場合は、潜像に加えて判断結果を表示する。
【0075】
図30~
図34に、印刷物に形成された画像と、ステップS61において表示される画像とを対比して示す。
【0076】
図30(a)は、印刷物に形成された、一見すると模様のないフラットなグレー単色の画像であり、通常光下で肉眼では視認されない潜像(顔画像)が形成されている。この印刷物に形成された画像は、
図30(b)に示されたようにカラーの潜像(顔画像)が可視化されて表示される。
【0077】
図31(a)は、印刷物に形成された、フラットなグレー単色の中に可視画像「JPN」が形成された画像であり、通常光下では、可視画像「JPN」のみが肉眼で視認され、肉眼では視認されない潜像(顔画像)が形成されている。この印刷物に形成された画像は、
図31(b)に示されたように、カラーの潜像(顔画像)が可視化されて表示され、可視画像「JPN」は表示されない。これは、可視画像「JPN」は所定濃度より低い要素により形成されており、ステップS12において除去されるためである。
【0078】
図32(a)に示された例は、
図30(a)と同様に印刷物に形成された、一見すると模様のないフラットなグレー単色の画像であり、通常光下で肉眼では視認されない潜像(顔画像)が形成されている。その印刷物が真正か否かを判断してその結果を表示する場合、
図32(b)に示されたように潜像(顔画像)と真正か否かの判断結果(例えば、「本物」)とが表示される。
【0079】
また、別の形態として、
図33(a)に示された例は、
図31(a)と同様に潜像(顔画像)及び可視画像「JPN」が形成され、通常光下では可視画像「JPN」のみが肉眼で視認される場合であって、潜像に形成された個人と関連する情報を表示する場合は、
図33(b)に示されたように潜像(顔画像)と関連情報(例えば、個人情報「AB12345」)とが表示される。
【0080】
図34(a)に示されたように、潜像が形成されておらず可視画像のみが形成されている場合は、
図34(b)に示されたように可視画像を構成する要素が除去されて何も表示されない。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態によれば、日常的に携行し得るものを用いて簡易かつ鮮明に印刷物の潜像を可視化し真正を確認することが可能である。
本実施の形態によれば、潜像をカラーで可視化できるため、モノクロ、単色カラーはもちろんのこと、モノクロ連続階調画像、フルカラー連続階調等で潜像を可視化することができる。
【0082】
(確認用ソフトウェア)
本実施の形態による確認用ソフトウェアは、本実施の形態による印刷物の真正の確認方法を、本実施の形態による印刷物の真正の確認装置に実行させるものであり、例えば印刷物の真正の確認装置として動作するPC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、タブレット型端末等の多機能端末に本実施の形態による印刷物の真正の確認方法を実行させるものであってもよいし、前記多機能端末にネットワークを介して接続されたサーバなどの他の装置、例えば、インターネット上にサーバを配置したクラウド環境に作られたクラウド・サーバにおいて、本実施の形態による印刷物の真正の確認方法を実行させるものであってもよい。
【0083】
本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 網点パーセントが10%の部分
2 潜像
3 円形模様
12 潜像を施さない部分の画線
13、21 潜像を施した部分の画線
22、23 カムフラージュ部の画線
31 画像
32 顔写真
M1 画像入力手段
M2 データ受信手段
M3 画像処理手段
M4 記憶手段
M5 画像表示手段
M6 データ送信手段