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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】栄養障害型表皮水疱症治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20240813BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240813BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20240813BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240813BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P17/00
A61P43/00 107
C07K14/78 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/09 110
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020566497
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001433
(87)【国際公開番号】W WO2020149395
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019007201
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 克人
(72)【発明者】
【氏名】菊池 康
(72)【発明者】
【氏名】玉越 智樹
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/161180(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0142262(US,A1)
【文献】国際公開第2018/213502(WO,A1)
【文献】KUHL, T., et al.,High Local Concentrations of Intradermal MSCs Restore Skin Integrity and Facilitate Wound Healing in,Mol. Ther.,2015年,Vol.23, No.8,pp.1368-1379,doi: 10.1038/mt.2015.58
【文献】玉井 克人,表皮水疱症に対する再生医療と遺伝子治療:現状と展望,医学のあゆみ,2018年05月05日,Vol.265, No.5,pp.463-468
【文献】EL-DAROUTI, M., et al.,Treatment of dystrophic epidermolysis bullosa with bone marrow non-hematopoietic stem cells: a rando,Dermatologic Therapy,2016年,Vol.29,pp.96-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
A61K 48/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養障害型表皮水疱症の治療に用いるための組成物であって、COL7A1遺伝子を導入することによりVII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された栄養障害型表皮水疱症患者の細胞を含み、前記細胞が間葉系幹細胞であり、水疱内に投与される、組成物。
【請求項2】
COL7A1遺伝子が、配列番号1の核酸配列と90%以上の配列同一性を有する核酸配列からなるか、配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
間葉系幹細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞で最も多い細胞である、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
水疱内に注入することにより、水疱内に投与される、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
栄養障害型表皮水疱症の治療に用いるための組成物であって、VII型コラーゲンを産生する細胞を含み、治療に有効な量で水疱内に投与される、組成物。
【請求項7】
細胞が、COL7A1遺伝子を導入することによりVII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された細胞である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
COL7A1遺伝子が、配列番号1の核酸配列と90%以上の配列同一性を有する核酸配列からなるか、配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
細胞が、栄養障害型表皮水疱症患者の細胞である、請求項6のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
細胞が、骨髄から得た細胞である、請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
細胞が、間葉系幹細胞である、請求項10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
間葉系幹細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞で最も多い細胞である、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
細胞が、ケラチノサイトまたは皮膚線維芽細胞である、請求項6~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
水疱内に注入することにより、水疱内に投与される、請求項6~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
COL7A1遺伝子を導入することによりVII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された栄養障害型表皮水疱症患者の細胞を含み、前記細胞が間葉系幹細胞であり、水疱内に投与される、組成物。
【請求項17】
水疱内に注入することにより、水疱内に投与される、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、日本国特許出願第2019-007201号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本開示は、栄養障害型表皮水疱症の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮水疱症は、皮膚組織の接着を担っている接着構造分子が欠損または消失していることにより、皮膚に力が加わると、表皮が真皮から剥がれて水ぶくれ(水疱)や皮膚潰瘍を生じる疾患である。このうち、表皮が千切れて水疱ができる病型は単純型表皮水疱症、表皮と基底膜の間が剥がれて水疱ができる病型は接合部型表皮水疱症、基底膜と真皮の間が剥がれる病型は栄養障害型表皮水疱症と称される。
【0003】
栄養障害型表皮水疱症は表皮水疱症全体の約5割と最も多い病型であり、VII型コラーゲンをコードするCOL7A1遺伝子の変異を原因とする遺伝性疾患である。皮膚の構造において、表皮の一番下にある表皮基底細胞は、基底膜と称されるシート様の構造体と結合している。VII型コラーゲンは、真皮内でアンカリングフィブリルという線維を形成し基底膜と真皮をつなげている。このため、VII型コラーゲン遺伝子に異常があると基底膜と真皮の接着機能が損なわれ基底膜と真皮の間で水疱ができる栄養障害型表皮水疱症となる。栄養障害型表皮水疱症のなかでも、重症劣性栄養障害型表皮水疱症は、生直後より全身熱傷様皮膚症状が続き、30歳前後より高率に皮膚有棘細胞癌(瘢痕癌)が多発して死に至る、極めて重篤な遺伝性水疱性皮膚疾患である。
【0004】
表皮水疱症に対して、現在有効な治療法はなく、根治的に水疱形成を抑制する遺伝子治療法の開発が求められている。このような遺伝子治療として、患者の皮膚細胞を採取し、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子操作した後、培養して皮膚シートを形成し、患者に移植する治療技術が開示されている(特許文献1参照)。また、VII型コラーゲンの活性が失活している間葉系幹細胞に対してゲノム編集を施し、VII型コラーゲンを産生可能となった間葉系幹細胞をケラチノサイトや線維芽細胞に分化させると共に、培養して皮膚シートを形成し、患者の治療に用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/120147号公報
【文献】国際公開第2018/154413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚シートは、高度な工程管理や培養技術が必要であることから製造の難易度が高く、高コストとなることから、より製造容易な治療薬が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様において、本開示は、栄養障害型表皮水疱症の治療に用いるための組成物であって、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された栄養障害型表皮水疱症患者の細胞を含み、前記細胞が間葉系幹細胞である組成物に関する。
【0008】
別の態様において、本開示は、栄養障害型表皮水疱症の治療に用いるための組成物であって、VII型コラーゲンを産生する細胞を含み、水疱内に投与される組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、栄養障害型表皮水疱症の治療薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、設計したsgRNA(sgAAVS1-#1~#3)によるゲノムDNAの切断およびその切断効率を示す。
図2図2は、AAVS1領域にCOL7A1遺伝子を導入するゲノム編集の説明図である。HA-RおよびHA-Lは相同配列部分、SAはスプライスアクセプター配列、T2AはT2AペプチドをコードするT2A配列、Puroはピューロマイシン耐性遺伝子、CAGはCAGプロモーター配列を示す。野生型ゲノム(上)でのF2からR2までの長さは1952bp、COL7A1遺伝子が導入されたゲノム(下)でのF1からR1までの長さは1246bp、F2からR2までの長さは14249bpである。
図3図3は、間葉系幹細胞(MSC)におけるCRISPR-Cas9システムによる遺伝子導入効率と遺伝子導入後の細胞生存率を示す。破線がゲノム編集された細胞数、カラムが細胞生存率を示す。
図4図4は、ゲノム編集によるCOL7A1遺伝子の導入を確認した結果を示す。
図5図5は、MSCにおけるVII型コラーゲンの発現を示す。「(-)」はゲノム編集を行っていないコントロール、「COL7A1-Donor」はゲノム編集によってCOL7A1遺伝子を導入した遺伝子改変MSCである。左の写真は細胞の免疫染色、右のグラフは細胞の培養上清のウェスタンブロッティングの結果を示す
図6図6は、表皮水疱症モデルマウスの作製の説明図である。右側の写真は、形成された水疱を示す。
図7図7は、遺伝子改変MSCを皮内または水疱内注入した表皮水疱症モデルマウスの皮膚断層画像を示す。上の写真はDAPI染色とVII型コラーゲンに対する免疫染色の結果を重ねたものであり、下の写真はVII型コラーゲンに対する免疫染色の結果を示す。矢印がVII型コラーゲンの発現を示す。
図8図8は、遺伝子改変MSCを皮下注入した表皮水疱症モデルマウスの皮膚断層画像を示す。
図9図9は、遺伝子改変MSCを水疱内注入した表皮水疱症モデルマウスの皮膚の電子顕微鏡観察画像を示す。矢印はアンカリングフィブリルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に具体的な定めのない限り、本開示で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本開示で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本開示において、一般的な理解に優先する。
【0012】
栄養障害型表皮水疱症は、VII型コラーゲンをコードするCOL7A1遺伝子の変異を原因とする遺伝性疾患であり、VII型コラーゲンが全く産生されないか、変異により機能の低下したVII型コラーゲンが産生されることが、その特徴として知られている。VII型コラーゲンは、真皮内でアンカリングフィブリルという線維を形成し、基底膜と真皮とをつないでいる。VII型コラーゲンは、N末端から、第一非コラーゲン領域、コラーゲン領域、および第二非コラーゲン領域を含み、グリシン-X-Yの繰り返し配列を特徴とするコラーゲン領域部分で3本鎖を形成し、C末端で2分子が結合し、N末端が基底膜に結合する。変異には、コラーゲン領域のグリシンが他のアミノ酸に置換される変異、タンパク質の翻訳が止まる終始コドン変異、スプライス部位変異などがある。変異は、対立遺伝子の一方にある場合と、両方にある場合がある。栄養障害型表皮水疱症には、優性栄養障害型と劣性栄養障害型とが含まれ、劣性栄養障害型には、重症汎発型と、比較的症状の軽いその他の汎発型が含まれる。本明細書における栄養障害型表皮水疱症は、いずれの病型の栄養障害型表皮水疱症であってもよく、また、如何なるCOL7A1遺伝子の変異を原因とするものであってもよい。
【0013】
本開示においては、VII型コラーゲンを産生する細胞が用いられる。本開示における「VII型コラーゲンを産生する細胞」とは、機能的な(すなわち、アンカリングフィブリルを形成しうる)VII型コラーゲンを産生する細胞を意味する。VII型コラーゲンを産生する細胞は、天然にVII型コラーゲンを産生する細胞であっても、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された細胞であってもよい。
【0014】
本開示において、細胞の遺伝子改変とは、細胞のゲノムの遺伝子を改変することと、ゲノム外の核酸構築物(例えば、ベクター)から遺伝子を発現するよう細胞を改変することのいずれをも意味する。すなわち、「VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変する」との表現には、ゲノム中のCOL7A1遺伝子からVII型コラーゲンを発現するよう細胞を改変すること、およびゲノム外の核酸構築物のCOL7A1遺伝子からVII型コラーゲンを発現するよう細胞を改変することが含まれる。また、「VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された細胞」には、ゲノム中のCOL7A1遺伝子からVII型コラーゲンを発現する細胞と、ゲノム外の核酸構築物のCOL7A1遺伝子からVII型コラーゲンを発現する細胞とが含まれる。
【0015】
細胞の遺伝子改変は、COL7A1遺伝子を導入することにより、またはゲノムのCOL7A1遺伝子の変異を修正することにより、行うことができる。COL7A1遺伝子の導入は、細胞のゲノムにCOL7A1遺伝子を導入することによっても、ゲノム外の核酸構築物からCOL7A1遺伝子を発現するよう、COL7A1遺伝子を含む核酸構築物を細胞内に存在させることによっても、行うことができる。COL7A1遺伝子を細胞のゲノムに導入する場合、特定の位置に導入してもよく、ランダムに導入してもよい。ある実施形態において、COL7A1遺伝子は、ゲノムのCOL7A1遺伝子座、またはAAVS1領域のようなセーフ・ハーバーに導入される。
【0016】
細胞は、その細胞が投与される栄養障害型表皮水疱症患者の細胞(すなわち、自家細胞)であっても、患者以外の対象の細胞(すなわち、他家細胞)であってよい。患者以外の対象としては、健常人、特にHLAの適合する健常人、または患者の母親が挙げられる。ある実施形態において、細胞は、栄養障害型表皮水疱症患者の細胞である。栄養障害型表皮水疱症患者の細胞には、VII型コラーゲンを産生しない細胞と、VII型コラーゲンを産生するが変異によりその機能が低下している細胞とがあるが、本開示における「栄養障害型表皮水疱症患者の細胞」は、そのいずれであってもよい。
【0017】
細胞は、患者に投与された場合に表皮基底膜近傍でVII型コラーゲンを産生しうる細胞であればよい。細胞は、皮膚、骨髄、または血液(例えば末梢血)から得た細胞でありうる。ある実施形態において、細胞は、ケラチノサイト、皮膚線維芽細胞、または間葉系幹細胞である。別の実施形態において、細胞は、患者または患者以外の対象の細胞から誘導されるiPS細胞または当該iPS細胞から誘導される細胞である。このように、細胞は、患者または患者以外の対象から取得された細胞であっても、取得された細胞から誘導された細胞であってもよい。細胞が患者または患者以外の対象から取得された細胞から誘導された細胞を遺伝子改変したものである場合、遺伝子改変は、その誘導の前であっても後であってもよい。
【0018】
本開示において、細胞は、必要に応じて増殖させたものを包含する意味で用いられる。細胞の増殖は、細胞を培養することによって行うことができる。例えば、「患者の細胞または患者以外の対象の細胞」は、患者または患者以外の対象から取得された後に増殖させたものを包含し、「遺伝子改変された細胞」は、遺伝子改変操作により得られた細胞を増殖させたものを包含する。遺伝子改変を行う場合、遺伝子改変に必要な量を得るまで、細胞を増殖させてもよい。また、遺伝子改変後に、治療に必要な量を得るまで、細胞を増殖させてもよい。
【0019】
ケラチノサイトおよび皮膚線維芽細胞は、当業界に知られるいずれの方法で取得してもよい。例えば、皮膚生検組織を酵素処理および/または機械的処理することにより表皮と真皮を分離し、分離した表皮および真皮をそれぞれさらに酵素処理する。ケラチノサイトは表皮試料から、皮膚線維芽細胞は真皮試料から、それぞれ得ることができる。
【0020】
ある実施形態において、細胞は、間葉系幹細胞である。間葉系幹細胞は、患者に投与された場合に、ケラチノサイトや皮膚線維芽細胞よりも長く患者組織に存在しうると考えられる。また、患者がこれまで産生していなかったタンパク質が遺伝子改変細胞から産出されると炎症反応が生じることが予想されるところ、間葉系幹細胞には炎症抑制効果があることから、ケラチノサイトや皮膚線維芽細胞よりも有利であると考えられる。
【0021】
間葉系幹細胞(本明細書中、MSCとも記載する)は、固相(例えばプラスチック製培養容器)への接着性を有し、自己複製能と、間葉系組織(骨、軟骨、脂肪、筋肉など)への分化能とを併せ持つ細胞である。ある実施形態において、間葉系幹細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞および脂肪細胞の少なくとも一つへの分化能を有する細胞である。ある実施形態において間葉系幹細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞および脂肪細胞への分化能を有する細胞である。細胞集団が前記の能力を有する場合、間葉系幹細胞を含むと理解される。間葉系幹細胞は、骨髄またはその他の組織(血液、例えば臍帯血および末梢血、並びに皮膚、脂肪、歯髄など)から得ることができる。ある実施形態において、間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞(本明細書中、BM-MSCとも記載する)である。骨髄由来間葉系幹細胞は、大腿骨、椎骨、胸骨、腸骨、脛骨等のいずれの部位から得たものであってもよい。
【0022】
間葉系幹細胞は、当業界に知られるいずれの方法で取得してもよい。例えば、接着性に基づく方法、細胞表面マーカーに基づく方法、密度差に基づく方法が挙げられる。例えば、プラスチック製またはガラス製の培養容器に、間葉系幹細胞を含む骨髄その他の組織から得た細胞を播種し、培養容器に付着して増殖する細胞を回収する。あるいは、間葉系幹細胞は、間葉系幹細胞の表面マーカーに対する抗体を用いたセルソーティング(FACS、MACS等)によっても、得ることができる。ヒト間葉系幹細胞の表面マーカーとしては、以下の1以上が挙げられる:PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD105陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD71陽性、Stro-1陽性、CD106陽性、CD166陽性、CD31陰性、CD271陽性、およびCD11b陰性。
【0023】
iPS細胞は、当業界に知られるいずれの方法で作製してもよい。例えば、iPS細胞は、患者または患者以外の対象から取得した線維芽細胞などの体細胞に、OCT4、SOX2およびNANOGの3種類の転写因子を導入することにより、作製することができる(Budniatzky and Gepstein, Stem Cells Transl Med. 3(4):448-57, 2014;Barrett et al, Stem Cells Trans Med 3 : 1-6 sctm.2014-0121, 2014;Focosi et al., Blood Cancer Journal 4: e211, 2014)。
【0024】
本明細書において、「細胞」とは、文脈に応じて1個の細胞または複数個の細胞を意味しうる。また、細胞は、一種類の細胞からなる細胞集団であってもよく、複数種の細胞を含む細胞集団であってもよい。
【0025】
本明細書において、COL7A1遺伝子とは、VII型コラーゲンをコードする核酸配列を意味し、cDNAも、1以上のイントロンを含む配列(例えば、ゲノム配列またはミニジーン)も包含する意味で用いられる。ヒトCOL7A1遺伝子(cDNA)の代表的核酸配列を配列番号1に、ヒトVII型コラーゲンの代表的アミノ酸配列を配列番号2に示す。COL7A1遺伝子のcDNA配列はGenBank: NM_000094.3に、ゲノム配列はGenBank: AC121252.4に開示されている。COL7A1遺伝子は、機能的な(すなわち、アンカリングフィブリルを形成しうる)VII型コラーゲンをコードするものであればよく、その配列は限定されない。

ヒトCOL7A1遺伝子のcDNA配列(8835 bp)(配列番号1)
ATGACGCTGCGGCTTCTGGTGGCCGCGCTCTGCGCCGGGATCCTGGCAGAGGCGCCCCGAGTGCGAGCCCAGCACAGGGAGAGAGTGACCTGCACGCGCCTTTACGCCGCTGACATTGTGTTCTTACTGGATGGCTCCTCATCCATTGGCCGCAGCAATTTCCGCGAGGTCCGCAGCTTTCTCGAAGGGCTGGTGCTGCCTTTCTCTGGAGCAGCCAGTGCACAGGGTGTGCGCTTTGCCACAGTGCAGTACAGCGATGATCCACGGACAGAGTTCGGCCTGGATGCACTTGGCTCTGGGGGTGATGTGATCCGCGCCATCCGTGAGCTTAGCTACAAGGGGGGCAACACTCGCACAGGGGCTGCAATTCTCCATGTGGCTGACCATGTCTTCCTGCCCCAGCTGGCCCGACCTGGTGTCCCCAAGGTCTGCATCCTGATCACAGACGGGAAGTCCCAGGACCTGGTGGACACAGCTGCCCAAAGGCTGAAGGGGCAGGGGGTCAAGCTATTTGCTGTGGGGATCAAGAATGCTGACCCTGAGGAGCTGAAGCGAGTTGCCTCACAGCCCACCAGTGACTTCTTCTTCTTCGTCAATGACTTCAGCATCTTGAGGACACTACTGCCCCTCGTTTCCCGGAGAGTGTGCACGACTGCTGGTGGCGTGCCTGTGACCCGACCTCCGGATGACTCGACCTCTGCTCCACGAGACCTGGTGCTGTCTGAGCCAAGCAGCCAATCCTTGAGAGTACAGTGGACAGCGGCCAGTGGCCCTGTGACTGGCTACAAGGTCCAGTACACTCCTCTGACGGGGCTGGGACAGCCACTGCCGAGTGAGCGGCAGGAGGTGAACGTCCCAGCTGGTGAGACCAGTGTGCGGCTGCGGGGTCTCCGGCCACTGACCGAGTACCAAGTGACTGTGATTGCCCTCTACGCCAACAGCATCGGGGAGGCTGTGAGCGGGACAGCTCGGACCACTGCCCTAGAAGGGCCGGAACTGACCATCCAGAATACCACAGCCCACAGCCTCCTGGTGGCCTGGCGGAGTGTGCCAGGTGCCACTGGCTACCGTGTGACATGGCGGGTCCTCAGTGGTGGGCCCACACAGCAGCAGGAGCTGGGCCCTGGGCAGGGTTCAGTGTTGCTGCGTGACTTGGAGCCTGGCACGGACTATGAGGTGACCGTGAGCACCCTATTTGGCCGCAGTGTGGGGCCCGCCACTTCCCTGATGGCTCGCACTGACGCTTCTGTTGAGCAGACCCTGCGCCCGGTCATCCTGGGCCCCACATCCATCCTCCTTTCCTGGAACTTGGTGCCTGAGGCCCGTGGCTACCGGTTGGAATGGCGGCGTGAGACTGGCTTGGAGCCACCGCAGAAGGTGGTACTGCCCTCTGATGTGACCCGCTACCAGTTGGATGGGCTGCAGCCGGGCACTGAGTACCGCCTCACACTCTACACTCTGCTGGAGGGCCACGAGGTGGCCACCCCTGCAACCGTGGTTCCCACTGGACCAGAGCTGCCTGTGAGCCCTGTAACAGACCTGCAAGCCACCGAGCTGCCCGGGCAGCGGGTGCGAGTGTCCTGGAGCCCAGTCCCTGGTGCCACCCAGTACCGCATCATTGTGCGCAGCACCCAGGGGGTTGAGCGGACCCTGGTGCTTCCTGGGAGTCAGACAGCATTCGACTTGGATGACGTTCAGGCTGGGCTTAGCTACACTGTGCGGGTGTCTGCTCGAGTGGGTCCCCGTGAGGGCAGTGCCAGTGTCCTCACTGTCCGCCGGGAGCCGGAAACTCCACTTGCTGTTCCAGGGCTGCGGGTTGTGGTGTCAGATGCAACGCGAGTGAGGGTGGCCTGGGGACCCGTCCCTGGAGCCAGTGGATTTCGGATTAGCTGGAGCACAGGCAGTGGTCCGGAGTCCAGCCAGACACTGCCCCCAGACTCTACTGCCACAGACATCACAGGGCTGCAGCCTGGAACCACCTACCAGGTGGCTGTGTCGGTACTGCGAGGCAGAGAGGAGGGCCCTGCTGCAGTCATCGTGGCTCGAACGGACCCACTGGGCCCAGTGAGGACGGTCCATGTGACTCAGGCCAGCAGCTCATCTGTCACCATTACCTGGACCAGGGTTCCTGGCGCCACAGGATACAGGGTTTCCTGGCACTCAGCCCACGGCCCAGAGAAATCCCAGTTGGTTTCTGGGGAGGCCACGGTGGCTGAGCTGGATGGACTGGAGCCAGATACTGAGTATACGGTGCATGTGAGGGCCCATGTGGCTGGCGTGGATGGGCCCCCTGCCTCTGTGGTTGTGAGGACTGCCCCTGAGCCTGTGGGTCGTGTGTCGAGGCTGCAGATCCTCAATGCTTCCAGCGACGTTCTACGGATCACCTGGGTAGGGGTCACTGGAGCCACAGCTTACAGACTGGCCTGGGGCCGGAGTGAAGGCGGCCCCATGAGGCACCAGATACTCCCAGGAAACACAGACTCTGCAGAGATCCGGGGTCTCGAAGGTGGAGTCAGCTACTCAGTGCGAGTGACTGCACTTGTCGGGGACCGCGAGGGCACACCTGTCTCCATTGTTGTCACTACGCCGCCTGAGGCTCCGCCAGCCCTGGGGACGCTTCACGTGGTGCAGCGCGGGGAGCACTCGCTGAGGCTGCGCTGGGAGCCGGTGCCCAGAGCGCAGGGCTTCCTTCTGCACTGGCAACCTGAGGGTGGCCAGGAACAGTCCCGGGTCCTGGGGCCCGAGCTCAGCAGCTATCACCTGGACGGGCTGGAGCCAGCGACACAGTACCGCGTGAGGCTGAGTGTCCTAGGGCCAGCTGGAGAAGGGCCCTCTGCAGAGGTGACTGCGCGCACTGAGTCACCTCGTGTTCCAAGCATTGAACTACGTGTGGTGGACACCTCGATCGACTCGGTGACTTTGGCCTGGACTCCAGTGTCCAGGGCATCCAGCTACATCCTATCCTGGCGGCCACTCAGAGGCCCTGGCCAGGAAGTGCCTGGGTCCCCGCAGACACTTCCAGGGATCTCAAGCTCCCAGCGGGTGACAGGGCTAGAGCCTGGCGTCTCTTACATCTTCTCCCTGACGCCTGTCCTGGATGGTGTGCGGGGTCCTGAGGCATCTGTCACACAGACGCCAGTGTGCCCCCGTGGCCTGGCGGATGTGGTGTTCCTACCACATGCCACTCAAGACAATGCTCACCGTGCGGAGGCTACGAGGAGGGTCCTGGAGCGTCTGGTGTTGGCACTTGGGCCTCTTGGGCCACAGGCAGTTCAGGTTGGCCTGCTGTCTTACAGTCATCGGCCCTCCCCACTGTTCCCACTGAATGGCTCCCATGACCTTGGCATTATCTTGCAAAGGATCCGTGACATGCCCTACATGGACCCAAGTGGGAACAACCTGGGCACAGCCGTGGTCACAGCTCACAGATACATGTTGGCACCAGATGCTCCTGGGCGCCGCCAGCACGTACCAGGGGTGATGGTTCTGCTAGTGGATGAACCCTTGAGAGGTGACATATTCAGCCCCATCCGTGAGGCCCAGGCTTCTGGGCTTAATGTGGTGATGTTGGGAATGGCTGGAGCGGACCCAGAGCAGCTGCGTCGCTTGGCGCCGGGTATGGACTCTGTCCAGACCTTCTTCGCCGTGGATGATGGGCCAAGCCTGGACCAGGCAGTCAGTGGTCTGGCCACAGCCCTGTGTCAGGCATCCTTCACTACTCAGCCCCGGCCAGAGCCCTGCCCAGTGTATTGTCCAAAGGGCCAGAAGGGGGAACCTGGAGAGATGGGCCTGAGAGGACAAGTTGGGCCTCCTGGCGACCCTGGCCTCCCGGGCAGGACCGGTGCTCCCGGCCCCCAGGGGCCCCCTGGAAGTGCCACTGCCAAGGGCGAGAGGGGCTTCCCTGGAGCAGATGGGCGTCCAGGCAGCCCTGGCCGCGCCGGGAATCCTGGGACCCCTGGAGCCCCTGGCCTAAAGGGCTCTCCAGGGTTGCCTGGCCCTCGTGGGGACCCGGGAGAGCGAGGACCTCGAGGCCCAAAGGGGGAGCCGGGGGCTCCCGGACAAGTCATCGGAGGTGAAGGACCTGGGCTTCCTGGGCGGAAAGGGGACCCTGGACCATCGGGCCCCCCTGGACCTCGTGGACCACTGGGGGACCCAGGACCCCGTGGCCCCCCAGGGCTTCCTGGAACAGCCATGAAGGGTGACAAAGGCGATCGTGGGGAGCGGGGTCCCCCTGGACCAGGTGAAGGTGGCATTGCTCCTGGGGAGCCTGGGCTGCCGGGTCTTCCCGGAAGCCCTGGACCCCAAGGCCCCGTTGGCCCCCCTGGAAAGAAAGGAGAAAAAGGTGACTCTGAGGATGGAGCTCCAGGCCTCCCAGGACAACCTGGGTCTCCGGGTGAGCAGGGCCCACGGGGACCTCCTGGAGCTATTGGCCCCAAAGGTGACCGGGGCTTTCCAGGGCCCCTGGGTGAGGCTGGAGAGAAGGGCGAACGTGGACCCCCAGGCCCAGCGGGATCCCGGGGGCTGCCAGGGGTTGCTGGACGTCCTGGAGCCAAGGGTCCTGAAGGGCCACCAGGACCCACTGGCCGCCAAGGAGAGAAGGGGGAGCCTGGTCGCCCTGGGGACCCTGCAGTGGTGGGACCTGCTGTTGCTGGACCCAAAGGAGAAAAGGGAGATGTGGGGCCCGCTGGGCCCAGAGGAGCTACCGGAGTCCAAGGGGAACGGGGCCCACCCGGCTTGGTTCTTCCTGGAGACCCTGGCCCCAAGGGAGACCCTGGAGACCGGGGTCCCATTGGCCTTACTGGCAGAGCAGGACCCCCAGGTGACTCAGGGCCTCCTGGAGAGAAGGGAGACCCTGGGCGGCCTGGCCCCCCAGGACCTGTTGGCCCCCGAGGACGAGATGGTGAAGTTGGAGAGAAAGGTGACGAGGGTCCTCCGGGTGACCCGGGTTTGCCTGGAAAAGCAGGCGAGCGTGGCCTTCGGGGGGCACCTGGAGTTCGGGGGCCTGTGGGTGAAAAGGGAGACCAGGGAGATCCTGGAGAGGATGGACGAAATGGCAGCCCTGGATCATCTGGACCCAAGGGTGACCGTGGGGAGCCGGGTCCCCCAGGACCCCCGGGACGGCTGGTAGACACAGGACCTGGAGCCAGAGAGAAGGGAGAGCCTGGGGACCGCGGACAAGAGGGTCCTCGAGGGCCCAAGGGTGATCCTGGCCTCCCTGGAGCCCCTGGGGAAAGGGGCATTGAAGGGTTTCGGGGACCCCCAGGCCCACAGGGGGACCCAGGTGTCCGAGGCCCAGCAGGAGAAAAGGGTGACCGGGGTCCCCCTGGGCTGGATGGCCGGAGCGGACTGGATGGGAAACCAGGAGCCGCTGGGCCCTCTGGGCCGAATGGTGCTGCAGGCAAAGCTGGGGACCCAGGGAGAGACGGGCTTCCAGGCCTCCGTGGAGAACAGGGCCTCCCTGGCCCCTCTGGTCCCCCTGGATTACCGGGAAAGCCAGGCGAGGATGGCAAACCTGGCCTGAATGGAAAAAACGGAGAACCTGGGGACCCTGGAGAAGACGGGAGGAAGGGAGAGAAAGGAGATTCAGGCGCCTCTGGGAGAGAAGGTCGTGATGGCCCCAAGGGTGAGCGTGGAGCTCCTGGTATCCTTGGACCCCAGGGGCCTCCAGGCCTCCCAGGGCCAGTGGGCCCTCCTGGCCAGGGTTTTCCTGGTGTCCCAGGAGGCACGGGCCCCAAGGGTGACCGTGGGGAGACTGGATCCAAAGGGGAGCAGGGCCTCCCTGGAGAGCGTGGCCTGCGAGGAGAGCCTGGAAGTGTGCCGAATGTGGATCGGTTGCTGGAAACTGCTGGCATCAAGGCATCTGCCCTGCGGGAGATCGTGGAGACCTGGGATGAGAGCTCTGGTAGCTTCCTGCCTGTGCCCGAACGGCGTCGAGGCCCCAAGGGGGACTCAGGCGAACAGGGCCCCCCAGGCAAGGAGGGCCCCATCGGCTTTCCTGGAGAACGCGGGCTGAAGGGCGACCGTGGAGACCCTGGCCCTCAGGGGCCACCTGGTCTGGCCCTTGGGGAGAGGGGCCCCCCCGGGCCTTCCGGCCTTGCCGGGGAGCCTGGAAAGCCTGGTATTCCCGGGCTCCCAGGCAGGGCTGGGGGTGTGGGAGAGGCAGGAAGGCCAGGAGAGAGGGGAGAACGGGGAGAGAAAGGAGAACGTGGAGAACAGGGCAGAGATGGCCCTCCTGGACTCCCTGGAACCCCTGGGCCCCCCGGACCCCCTGGCCCCAAGGTGTCTGTGGATGAGCCAGGTCCTGGACTCTCTGGAGAACAGGGACCCCCTGGACTCAAGGGTGCTAAGGGGGAGCCGGGCAGCAATGGTGACCAAGGTCCCAAAGGAGACAGGGGTGTGCCAGGCATCAAAGGAGACCGGGGAGAGCCTGGACCGAGGGGTCAGGACGGCAACCCGGGTCTACCAGGAGAGCGTGGTATGGCTGGGCCTGAAGGGAAGCCGGGTCTGCAGGGTCCAAGAGGCCCCCCTGGCCCAGTGGGTGGTCATGGAGACCCTGGACCACCTGGTGCCCCGGGTCTTGCTGGCCCTGCAGGACCCCAAGGACCTTCTGGCCTGAAGGGGGAGCCTGGAGAGACAGGACCTCCAGGACGGGGCCTGACTGGACCTACTGGAGCTGTGGGACTTCCTGGACCCCCCGGCCCTTCAGGCCTTGTGGGTCCACAGGGGTCTCCAGGTTTGCCTGGACAAGTGGGGGAGACAGGGAAGCCGGGAGCCCCAGGTCGAGATGGTGCCAGTGGAAAAGATGGAGACAGAGGGAGCCCTGGTGTGCCAGGGTCACCAGGTCTGCCTGGCCCTGTCGGACCTAAAGGAGAACCTGGCCCCACGGGGGCCCCTGGACAGGCTGTGGTCGGGCTCCCTGGAGCAAAGGGAGAGAAGGGAGCCCCTGGAGGCCTTGCTGGAGACCTGGTGGGTGAGCCGGGAGCCAAAGGTGACCGAGGACTGCCAGGGCCGCGAGGCGAGAAGGGTGAAGCTGGCCGTGCAGGGGAGCCCGGAGACCCTGGGGAAGATGGTCAGAAAGGGGCTCCAGGACCCAAAGGTTTCAAGGGTGACCCAGGAGTCGGGGTCCCGGGCTCCCCTGGGCCTCCTGGCCCTCCAGGTGTGAAGGGAGATCTGGGCCTCCCTGGCCTGCCCGGTGCTCCTGGTGTTGTTGGGTTCCCGGGTCAGACAGGCCCTCGAGGAGAGATGGGTCAGCCAGGCCCTAGTGGAGAGCGGGGTCTGGCAGGCCCCCCAGGGAGAGAAGGAATCCCAGGACCCCTGGGGCCACCTGGACCACCGGGGTCAGTGGGACCACCTGGGGCCTCTGGACTCAAAGGAGACAAGGGAGACCCTGGAGTAGGGCTGCCTGGGCCCCGAGGCGAGCGTGGGGAGCCAGGCATCCGGGGTGAAGATGGCCGCCCCGGCCAGGAGGGACCCCGAGGACTCACGGGGCCCCCTGGCAGCAGGGGAGAGCGTGGGGAGAAGGGTGATGTTGGGAGTGCAGGACTAAAGGGTGACAAGGGAGACTCAGCTGTGATCCTGGGGCCTCCAGGCCCACGGGGTGCCAAGGGGGACATGGGTGAACGAGGGCCTCGGGGCTTGGATGGTGACAAAGGACCTCGGGGAGACAATGGGGACCCTGGTGACAAGGGCAGCAAGGGAGAGCCTGGTGACAAGGGCTCAGCCGGGTTGCCAGGACTGCGTGGACTCCTGGGACCCCAGGGTCAACCTGGTGCAGCAGGGATCCCTGGTGACCCGGGATCCCCAGGAAAGGATGGAGTGCCTGGTATCCGAGGAGAAAAAGGAGATGTTGGCTTCATGGGTCCCCGGGGCCTCAAGGGTGAACGGGGAGTGAAGGGAGCCTGTGGCCTTGATGGAGAGAAGGGAGACAAGGGAGAAGCTGGTCCCCCAGGCCGCCCCGGGCTGGCAGGACACAAAGGAGAGATGGGGGAGCCTGGTGTGCCGGGCCAGTCGGGGGCCCCTGGCAAGGAGGGCCTGATCGGTCCCAAGGGTGACCGAGGCTTTGACGGGCAGCCAGGCCCCAAGGGTGACCAGGGCGAGAAAGGGGAGCGGGGAACCCCAGGAATTGGGGGCTTCCCAGGCCCCAGTGGAAATGATGGCTCTGCTGGTCCCCCAGGGCCACCTGGCAGTGTTGGTCCCAGAGGCCCCGAAGGACTTCAGGGCCAGAAGGGTGAGCGAGGTCCCCCCGGAGAGAGAGTGGTGGGGGCTCCTGGGGTCCCTGGAGCTCCTGGCGAGAGAGGGGAGCAGGGGCGGCCAGGGCCTGCCGGTCCTCGAGGCGAGAAGGGAGAAGCTGCACTGACGGAGGATGACATCCGGGGCTTTGTGCGCCAAGAGATGAGTCAGCACTGTGCCTGCCAGGGCCAGTTCATCGCATCTGGATCACGACCCCTCCCTAGTTATGCTGCAGACACTGCCGGCTCCCAGCTCCATGCTGTGCCTGTGCTCCGCGTCTCTCATGCAGAGGAGGAAGAGCGGGTACCCCCTGAGGATGATGAGTACTCTGAATACTCCGAGTATTCTGTGGAGGAGTACCAGGACCCTGAAGCTCCTTGGGATAGTGATGACCCCTGTTCCCTGCCACTGGATGAGGGCTCCTGCACTGCCTACACCCTGCGCTGGTACCATCGGGCTGTGACAGGCAGCACAGAGGCCTGTCACCCTTTTGTCTATGGTGGCTGTGGAGGGAATGCCAACCGTTTTGGGACCCGTGAGGCCTGCGAGCGCCGCTGCCCACCCCGGGTGGTCCAGAGCCAGGGGACAGGTACTGCCCAGGACTGA

ヒトVII型コラーゲンのアミノ酸配列(2944 AA)(配列番号2)
MTLRLLVAALCAGILAEAPRVRAQHRERVTCTRLYAADIVFLLDGSSSIGRSNFREVRSFLEGLVLPFSGAASAQGVRFATVQYSDDPRTEFGLDALGSGGDVIRAIRELSYKGGNTRTGAAILHVADHVFLPQLARPGVPKVCILITDGKSQDLVDTAAQRLKGQGVKLFAVGIKNADPEELKRVASQPTSDFFFFVNDFSILRTLLPLVSRRVCTTAGGVPVTRPPDDSTSAPRDLVLSEPSSQSLRVQWTAASGPVTGYKVQYTPLTGLGQPLPSERQEVNVPAGETSVRLRGLRPLTEYQVTVIALYANSIGEAVSGTARTTALEGPELTIQNTTAHSLLVAWRSVPGATGYRVTWRVLSGGPTQQQELGPGQGSVLLRDLEPGTDYEVTVSTLFGRSVGPATSLMARTDASVEQTLRPVILGPTSILLSWNLVPEARGYRLEWRRETGLEPPQKVVLPSDVTRYQLDGLQPGTEYRLTLYTLLEGHEVATPATVVPTGPELPVSPVTDLQATELPGQRVRVSWSPVPGATQYRIIVRSTQGVERTLVLPGSQTAFDLDDVQAGLSYTVRVSARVGPREGSASVLTVRREPETPLAVPGLRVVVSDATRVRVAWGPVPGASGFRISWSTGSGPESSQTLPPDSTATDITGLQPGTTYQVAVSVLRGREEGPAAVIVARTDPLGPVRTVHVTQASSSSVTITWTRVPGATGYRVSWHSAHGPEKSQLVSGEATVAELDGLEPDTEYTVHVRAHVAGVDGPPASVVVRTAPEPVGRVSRLQILNASSDVLRITWVGVTGATAYRLAWGRSEGGPMRHQILPGNTDSAEIRGLEGGVSYSVRVTALVGDREGTPVSIVVTTPPEAPPALGTLHVVQRGEHSLRLRWEPVPRAQGFLLHWQPEGGQEQSRVLGPELSSYHLDGLEPATQYRVRLSVLGPAGEGPSAEVTARTESPRVPSIELRVVDTSIDSVTLAWTPVSRASSYILSWRPLRGPGQEVPGSPQTLPGISSSQRVTGLEPGVSYIFSLTPVLDGVRGPEASVTQTPVCPRGLADVVFLPHATQDNAHRAEATRRVLERLVLALGPLGPQAVQVGLLSYSHRPSPLFPLNGSHDLGIILQRIRDMPYMDPSGNNLGTAVVTAHRYMLAPDAPGRRQHVPGVMVLLVDEPLRGDIFSPIREAQASGLNVVMLGMAGADPEQLRRLAPGMDSVQTFFAVDDGPSLDQAVSGLATALCQASFTTQPRPEPCPVYCPKGQKGEPGEMGLRGQVGPPGDPGLPGRTGAPGPQGPPGSATAKGERGFPGADGRPGSPGRAGNPGTPGAPGLKGSPGLPGPRGDPGERGPRGPKGEPGAPGQVIGGEGPGLPGRKGDPGPSGPPGPRGPLGDPGPRGPPGLPGTAMKGDKGDRGERGPPGPGEGGIAPGEPGLPGLPGSPGPQGPVGPPGKKGEKGDSEDGAPGLPGQPGSPGEQGPRGPPGAIGPKGDRGFPGPLGEAGEKGERGPPGPAGSRGLPGVAGRPGAKGPEGPPGPTGRQGEKGEPGRPGDPAVVGPAVAGPKGEKGDVGPAGPRGATGVQGERGPPGLVLPGDPGPKGDPGDRGPIGLTGRAGPPGDSGPPGEKGDPGRPGPPGPVGPRGRDGEVGEKGDEGPPGDPGLPGKAGERGLRGAPGVRGPVGEKGDQGDPGEDGRNGSPGSSGPKGDRGEPGPPGPPGRLVDTGPGAREKGEPGDRGQEGPRGPKGDPGLPGAPGERGIEGFRGPPGPQGDPGVRGPAGEKGDRGPPGLDGRSGLDGKPGAAGPSGPNGAAGKAGDPGRDGLPGLRGEQGLPGPSGPPGLPGKPGEDGKPGLNGKNGEPGDPGEDGRKGEKGDSGASGREGRDGPKGERGAPGILGPQGPPGLPGPVGPPGQGFPGVPGGTGPKGDRGETGSKGEQGLPGERGLRGEPGSVPNVDRLLETAGIKASALREIVETWDESSGSFLPVPERRRGPKGDSGEQGPPGKEGPIGFPGERGLKGDRGDPGPQGPPGLALGERGPPGPSGLAGEPGKPGIPGLPGRAGGVGEAGRPGERGERGEKGERGEQGRDGPPGLPGTPGPPGPPGPKVSVDEPGPGLSGEQGPPGLKGAKGEPGSNGDQGPKGDRGVPGIKGDRGEPGPRGQDGNPGLPGERGMAGPEGKPGLQGPRGPPGPVGGHGDPGPPGAPGLAGPAGPQGPSGLKGEPGETGPPGRGLTGPTGAVGLPGPPGPSGLVGPQGSPGLPGQVGETGKPGAPGRDGASGKDGDRGSPGVPGSPGLPGPVGPKGEPGPTGAPGQAVVGLPGAKGEKGAPGGLAGDLVGEPGAKGDRGLPGPRGEKGEAGRAGEPGDPGEDGQKGAPGPKGFKGDPGVGVPGSPGPPGPPGVKGDLGLPGLPGAPGVVGFPGQTGPRGEMGQPGPSGERGLAGPPGREGIPGPLGPPGPPGSVGPPGASGLKGDKGDPGVGLPGPRGERGEPGIRGEDGRPGQEGPRGLTGPPGSRGERGEKGDVGSAGLKGDKGDSAVILGPPGPRGAKGDMGERGPRGLDGDKGPRGDNGDPGDKGSKGEPGDKGSAGLPGLRGLLGPQGQPGAAGIPGDPGSPGKDGVPGIRGEKGDVGFMGPRGLKGERGVKGACGLDGEKGDKGEAGPPGRPGLAGHKGEMGEPGVPGQSGAPGKEGLIGPKGDRGFDGQPGPKGDQGEKGERGTPGIGGFPGPSGNDGSAGPPGPPGSVGPRGPEGLQGQKGERGPPGERVVGAPGVPGAPGERGEQGRPGPAGPRGEKGEAALTEDDIRGFVRQEMSQHCACQGQFIASGSRPLPSYAADTAGSQLHAVPVLRVSHAEEEERVPPEDDEYSEYSEYSVEEYQDPEAPWDSDDPCSLPLDEGSCTAYTLRWYHRAVTGSTEACHPFVYGGCGGNANRFGTREACERRCPPRVVQSQGTGTAQD*
【0026】
ある実施形態において、COL7A1遺伝子は、配列番号1の核酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか、前記核酸配列からなる。別の実施形態において、COL7A1遺伝子は、配列番号1の核酸配列において0~30個、0~20個、0~10個、0~5個、0~3個、0~2個または0~1個の塩基が欠失、置換、または付加された核酸配列を含むか、前記核酸配列からなる。さらなる実施形態において、COL7A1遺伝子は、配列番号1の核酸配列を含むか、配列番号1の核酸配列からなる。
【0027】
ある実施形態において、VII型コラーゲンは、配列番号2のアミノ酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。別の実施形態において、VII型コラーゲンは、配列番号2のアミノ酸配列において0~30個、0~20個、0~10個、0~5個、0~3個、0~2個または0~1個のアミノ酸残基が欠失、置換、または付加されたアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、VII型コラーゲンは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0028】
ある実施形態において、COL7A1遺伝子は、配列番号2のアミノ酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、前記核酸配列からなる。別の実施形態において、COL7A1遺伝子は、配列番号2のアミノ酸配列において0~30個、0~20個、0~10個、0~5個、0~3個、0~2個または0~1個のアミノ酸残基が欠失、置換、または付加されたアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、前記核酸配列からなる。
【0029】
本明細書における、核酸配列またはアミノ酸配列に関する「配列同一性」とは、比較対象の配列の全領域にわたって最適な状態に(一致が最大となる状態に)アラインメントされた2つの配列間で一致する塩基またはアミノ酸残基の割合を意味する。ここで、比較対象の配列は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加または欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。配列同一性は、公共のデータベース(例えば、DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp))で提供されるFASTA、BLAST、CLUSTAL W等のプログラムを用いて算出することができる。あるいは、市販の配列解析ソフトウェア(例えば、Vector NTI(登録商標)ソフトウェア、GENETYX(登録商標) ver. 12)を用いて求めることもできる。
【0030】
細胞を遺伝子改変する方法は、特に限定されない。ある実施形態において、細胞は、CRISPRシステム(例えば、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1)、TALEN、ZFNなどのゲノム編集により、遺伝子改変される。別の実施形態において、細胞は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターにより、遺伝子改変される。さらなる実施形態において、細胞は、CRISPR/Cas9により遺伝子改変される。さらなる実施形態において、細胞は、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターにより遺伝子改変される。
【0031】
ゲノム編集による場合、ゲノムに切断を生じさせるとともに、目的の配列を含むドナーベクターを細胞に導入することにより、当該配列をゲノムの切断部位に挿入することができる。ゲノムに挿入する配列は、COL7A1遺伝子、またはCOL7A1遺伝子の変異を含む部位と置換するための配列(例えば、COL7A1遺伝子の部分配列)でありうる。ドナーベクターは、目的の配列に加えて、目的の配列の発現を制御するプロモーターやエンハンサーなどの調節配列や細胞選択のための薬剤耐性遺伝子などの他の要素を含んでよく、その両端にゲノムの挿入部位の両端に相同な配列を含んでもよい。ドナーベクターは、非相同性末端結合または相同組み換えにより、所望の部位に導入されうる。ドナーベクターとしては、プラスミドや、アデノ随伴ウイルスベクター、インテグラーゼ欠損型レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを使用することができる。
【0032】
CRISPRシステムでは、Cas9またはCas12(例えば、Cas12a(Cpf1ともいう)、Cas12b、Cas12e)などのエンドヌクレアーゼが、特定の塩基配列であるPAM配列を認識し、エンドヌクレアーゼの作用によって標的DNAの二本鎖を切断する。エンドヌクレアーゼがCas9であれば、PAM配列の約3-4塩基上流を切断する。エンドヌクレアーゼとしては、S. pyogenes、S. aureus、N. meningitidis、S. thermophilus、またはT. denticolaのCas9、L. bacterium ND2006またはAcidaminococcus sp. BV3L6のCpflなどが挙げられる。PAM配列はエンドヌクレアーゼに依存し、例えば、S. pyogenesのCas9のPAM配列はNGGである。gRNAは、PAM配列の上流約20塩基の配列(標的配列)またはこれに相補的な配列を5’末端側に含み、標的配列にエンドヌクレアーゼを動員する役割を果たす。gRNAのうち、標的配列(またはこれに相補的な配列)以外の部分の配列は、使用するエンドヌクレアーゼに応じて当業者が適宜決定しうる。gRNAは、標的配列またはそれに相補的な配列を含みgRNAの配列特異性を担うcrRNA(CRISPR RNA)と、二本鎖を形成してCas9との複合体形成に寄与するtracrRNA(Trans-activating crRNA)とを含み得る。crRNAとtracrRNAとは、別の分子として存在してもよい。エンドヌクレアーゼがCpf1の場合、crRNAのみでgRNAとして機能する。本明細書において、gRNAの機能に必要な要素を一本鎖上に含むgRNAを特にsgRNAと記載する場合がある。gRNAの配列は、CRISPRdirect (https://crispr.dbcls.jp/)など、標的配列の選択およびgRNAの設計に利用可能なツールにより決定することができる。
【0033】
細胞に、gRNAをコードする核酸配列とエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むベクターを導入し発現させてもよく、細胞外で作製したgRNAとエンドヌクレアーゼのタンパク質とを細胞に導入してもよい。なお、エンドヌクレアーゼは核移行シグナルを備えていてもよい。gRNAをコードする核酸配列とエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列とは、別のベクター上に存在してもよい。ベクター、gRNA、およびエンドヌクレアーゼは、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法などにより細胞に導入することができるが、これら方法に限定されない。
【0034】
本開示は、COL7A1遺伝子のゲノムへの導入に用いることができる、gRNAおよびgRNAをコードする核酸配列を含むベクターを提供する。ある実施形態において、gRNAは、配列番号3~5のいずれかの配列またはこれに相補的な配列を含む。
【0035】
ウイルスベクターによる場合、インテグラーゼ活性を有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを用いると、COL7A1遺伝子を細胞のゲノムに導入することができる。レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、インテグラーゼ欠損型であってもよい。インテグラーゼ欠損型ベクターは、例えば、インテグラーゼ遺伝子の変異によりインテグラーゼ活性を欠く。インテグラーゼ欠損型ベクターや、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターを用いると、通常、ベクターに組み込まれた配列は細胞のゲノムに導入されない。例えば、インテグラーゼ欠損型レンチウイルスベクターや、アデノウイルスベクターにCOL7A1遺伝子を組み込んだ場合は、細胞内(核内)に存在するベクターのCOL7A1遺伝子からVII型コラーゲンが発現される。
【0036】
ウイルスベクターは、COL7A1遺伝子をコードする配列を含み、COL7A1遺伝子の発現を制御するプロモーターやエンハンサーなどの調節配列や細胞選択のための薬剤耐性遺伝子などの他の要素を含んでよい。ウイスルベクターは、当業界に知られるいずれの方法で作製してもよい。例えば、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、両端のLTR配列(5'LTRおよび3'LTR)、パッケージングシグナル、および目的の配列を含むウイルスベクタープラスミドを、Gag、Pol、Envなどのウイルスの構造タンパク質を発現する1以上のプラスミドベクターとともにパッケージング細胞に導入することにより、またはこれら構造タンパク質を発現するパッケージング細胞に導入することにより、作製することができる。パッケージング細胞としては、293T細胞、293細胞、HeLa細胞、COS1細胞、COS7細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、シュードタイプ化されていてもよく、例えば、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)などのエンベロープタンパク質を発現してもよい。作製されたウイルスベクターを標的細胞に感染させることで、目的の配列を標的細胞に導入することができる。
【0037】
ある実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターとしては、HIV(human immunodeficiency virus)(例えば、HIV-1およびHIV-2)、SIV(simian immunodeficiency virus)、FIV(feline immunodeficiency virus)、MVV(Maedi-Visna virus)、EV1(Maedi-Visna-like virus)、EIAV(equine infectious anemia virus)、およびCAEV(caprine arthritis encephalitis virus)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、レンチウイルスベクターは、HIVである。
【0038】
一例として、レンチウイルスベクターは、下記のように製造することができる。まず、ウイルスゲノムをコードするウイルスベクタープラスミドと、Gag、Pol、およびRev(および場合によりTat)を発現する1以上のプラスミドベクターおよびVSV-Gなどのエンベロープタンパク質を発現する1以上のプラスミドベクターとを、パッケージング細胞に導入する。ウイルスベクタープラスミドは、両端のLTR配列(5'LTRおよび3'LTR)、パッケージングシグナル、並びにCOL7A1遺伝子およびその発現を制御するプロモーター(例えば、CMVプロモーター、EF1αプロモーター、またはhCEFプロモーター)を含む。5'LTRは、ウイルスRNAゲノムの転写を誘導するプロモーターとして機能するが、RNAゲノムの発現を高めるため、CMVプロモーターなどの別のプロモーターに置換されていてもよい。細胞内で、ベクタープラスミドからウイルスRNAゲノムが転写され、パッケージングされて、ウイルスコアが形成される。ウイルスコアは、パッケージング細胞の細胞膜に輸送され、細胞膜に封入されて、パッケージング細胞からウイルス粒子として放出される。放出されたウイルス粒子は、パッケージング細胞の培養上清から回収することができる。例えば、ウイルス粒子は、遠心分離、フィルターろ過、カラム精製などの通常の精製方法により、回収することができる。また、レンチウイルスベクターは、Lentiviral High Titer Packaging Mix、Lenti-XTM Packaging Single Shots (Takara Bio Inc.)、ViraSafeTM レンチウイルスコンプリート発現システム(Cell Biolabs Inc.)などのキットを用いて製造することができる。アデノ随伴ウイルスベクターは、AAVpro(登録商標) Helper Free System (Takara Bio Inc.)などのキットを用いて製造することができる。
【0039】
目的の配列が導入された細胞は、サザンブロッティングやPCRにより確認することができる。目的の配列は、対立遺伝子の少なくとも一方に導入されていればよい。
【0040】
本開示の組成物のある実施形態では、間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞で最も多い細胞である。さらなる実施形態では、間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞の、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98または99%以上を占める。さらなる実施形態において、本開示の組成物は、実質的に間葉系幹細胞以外の細胞を含まない。「実質的に間葉系幹細胞以外の細胞を含まない」とは、間葉系幹細胞の取得方法と通常当業者に理解される方法により得られた細胞のみを含むことを意味する。
【0041】
組成物に含まれる細胞の数は、所望の効果の発揮に必要な量(本明細書において、有効量とも称する)であり、当業者は、患者の年齢、体重、および病状、並びに細胞の種類および遺伝子改変方法などの因子を考慮して、適宜決定することができる。細胞数は、限定されないが、例えば、1細胞~1 × 107細胞、1 × 10細胞~1 × 107細胞、1 × 102細胞~1 × 107細胞、1 × 103細胞~1 × 107細胞、1 × 104細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~5 × 106細胞、5 × 105細胞~1 × 106細胞、または1 × 105細胞~1 × 106細胞である。組成物は、細胞に加えて、医薬上許容される媒体および/または添加物を含んでもよい。医薬上許容される媒体としては、水、培地、生理食塩水、ブドウ糖、D-ソルビトール、またはD-マンニトールなどを含む輸液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。添加物としては、溶解補助剤、安定剤、防腐剤などが挙げられる。組成物の剤形は、特に限定されないが、非経口投与製剤、例えば注射剤である。注射剤には、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤が含まれる。組成物は、凍結されていてもよく、DMSO、グリセロール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、デキストラン、スクロースなどの凍結保護剤を含んでもよい。
【0042】
本開示の組成物は、全身に、または局所的に投与されうる。ある実施形態において、組成物は、栄養障害型表皮水疱症患者の患部に投与される。本明細書において、患部とは、水疱またはその近傍の領域を意味する。さらなる実施形態において、組成物は、水疱部分の皮内または水疱内に投与される。さらなる実施形態において、組成物は、水疱内に投与される。本明細書において、水疱内に投与するとは、水疱部分の表皮下の空間に投与することを意味する。水疱内への投与により、皮内または皮下への投与と比較して、患者の苦痛を軽減することができ、また、VII型コラーゲンを基底膜近傍にて良好に発現させることができる。一箇所あたりに投与される細胞の数は、所望の効果の発揮に必要な量(有効量)であり、当業者は、患者の年齢、体重、および病状、並びに細胞の種類および遺伝子改変方法などの因子を考慮して、適宜決定することができる。細胞数は、限定はされないが、例えば、1細胞~1 × 107細胞、1 × 10細胞~1 × 107細胞、1 × 102細胞~1 × 107細胞、1 × 103細胞~1 × 107細胞、1 × 104細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~5 × 106細胞、5 × 105細胞~1 × 106細胞、または1 × 105細胞~1 × 106細胞である。ある実施形態では、水疱1つあたり、1細胞~1 × 107細胞、1 × 10細胞~1 × 107細胞、1 × 102細胞~1 × 107細胞、1 × 103細胞~1 × 107細胞、1 × 104細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~5 × 106細胞、5 × 105細胞~1 × 106細胞、または1 × 105細胞~1 × 106細胞が投与される。水疱1つあたりの投与量は、水疱を円形近似した場合の直径が7~8mmであるものを標準的な水疱とし、上記投与量を、その大きさに応じて調整してもよい。
【0043】
本発明の例示的な実施形態を以下に記載する。
【0044】
[1]
栄養障害型表皮水疱症の治療に用いるための組成物であって、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された栄養障害型表皮水疱症患者の細胞を含み、前記細胞が間葉系幹細胞である、組成物。
[2]
細胞が、COL7A1遺伝子を導入することにより遺伝子改変されている、前記1に記載の組成物。
[3]
細胞のゲノムにCOL7A1遺伝子が導入されている、前記2に記載の組成物。
[4]
COL7A1遺伝子が、配列番号1の核酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、前記2または3に記載の組成物。
[5]
間葉系幹細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞である、前記1~4のいずれかに記載の組成物。
[6]
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞で最も多い細胞である、前記1~5のいずれかに記載の組成物。
[7]
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞の70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98または99%以上を占める、前記1~6のいずれかに記載の組成物。
[8]
組成物が、実質的に間葉系幹細胞以外の細胞を含まない、前記1~7のいずれかに記載の組成物。
[9]
患部に投与される、前記1~8のいずれかに記載の組成物。
[10]
水疱内に投与される、前記1~9のいずれかに記載の組成物。
[11]
ゲノム編集により細胞が遺伝子改変されている、前記1~10のいずれかに記載の組成物。
[12]
ゲノム編集が、CRISPR/Cas9による、前記11に記載の組成物。
[13]
ウイスルベクターにより細胞が遺伝子改変されている、前記1~10のいずれかに記載の組成物。
[14]
ウイスルベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、前記13に記載の組成物。
[15]
ウイスルベクターが、レンチウイルスベクターである、前記13または14に記載の組成物。
【0045】
[16]
栄養障害型表皮水疱症の治療に用いるための組成物であって、VII型コラーゲンを産生する細胞を含み、水疱内に投与される、組成物。
[17]
細胞が、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された細胞である、前記16に記載の組成物。
[18]
細胞が、COL7A1遺伝子を導入することにより遺伝子改変されている、前記17に記載の組成物。
[19]
細胞のゲノムにCOL7A1遺伝子が導入されている、前記18に記載の組成物。
[20]
COL7A1遺伝子が、配列番号1の核酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、前記18または19に記載の組成物。
[21]
細胞が、栄養障害型表皮水疱症患者の細胞である、前記17~20のいずれかに記載の組成物。
[22]
細胞が、骨髄から得た細胞である、前記16~21のいずれかに記載の組成物。
[23]
細胞が、間葉系幹細胞である、前記16~22のいずれかに記載の組成物。
[24]
間葉系幹細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞である、前記23に記載の組成物。
[25]
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞で最も多い細胞である、前記23または24に記載の組成物。
[26]
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞の70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98または99%以上を占める、前記23~25のいずれかに記載の組成物。
[27]
組成物が、実質的に間葉系幹細胞以外の細胞を含まない、前記23~26のいずれかに記載の組成物。
[28]
ゲノム編集により細胞が遺伝子改変されている、前記17~27のいずれかに記載の組成物。
[29]
ゲノム編集が、CRISPR/Cas9による、前記28のいずれかに記載の組成物。
[30]
ウイスルベクターにより細胞が遺伝子改変されている、前記17~27のいずれかに記載の組成物。
[31]
ウイスルベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、前記30に記載の組成物。
[32]
ウイスルベクターが、レンチウイルスベクターである、前記30または31に記載の組成物。
【0046】
[33]
栄養障害型表皮水疱症の治療に使用するための組成物の製造方法であって、
VII型コラーゲンを産生するよう細胞を遺伝子改変すること、および
遺伝子改変された細胞を含む組成物を調製すること
を含む方法。
[34]
栄養障害型表皮水疱症を治療するための方法であって、VII型コラーゲンを産生する細胞を含む組成物を前記患者に投与することを含む方法。
[35]
細胞が、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された細胞である、前記34に記載の方法。
[36]
細胞が、COL7A1遺伝子を導入することにより遺伝子改変されている、前記35に記載の方法。
[37]
細胞のゲノムにCOL7A1遺伝子が導入されている、前記36に記載の方法。
[38]
COL7A1遺伝子が、配列番号1の核酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、前記36または37に記載の方法。
[39]
ゲノム編集により細胞が遺伝子改変されている、前記35~38のいずれかに記載の方法。
[40]
ゲノム編集が、CRISPR/Cas9による、前記39に記載の方法。
[41]
ウイスルベクターにより細胞が遺伝子改変されている、前記35~38のいずれかに記載の方法。
[42]
ウイスルベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、前記41に記載の方法。
[43]
ウイスルベクターが、レンチウイルスベクターである、前記41または42に記載の方法。
[44]
患者への投与に先立ち、VII型コラーゲンを産生するよう細胞を遺伝子改変することをさらに含む、前記35~43のいずれかに記載の方法。
[45]
COL7A1遺伝子を導入することにより細胞を遺伝子改変する、前記33または44に記載の方法。
[46]
細胞のゲノムにCOL7A1遺伝子を導入する、前記45に記載の方法。
[47]
COL7A1遺伝子が、配列番号1の核酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列と70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、前記45または46に記載の方法。
[48]
ゲノム編集により細胞を遺伝子改変する、前記33および44~47のいずれかに記載の方法。
[49]
ゲノム編集が、CRISPR/Cas9による、前記48に記載の方法。
[50]
ウイスルベクターにより細胞を遺伝子改変する、前記33および44~47のいずれかに記載の方法。
[51]
ウイスルベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、前記50に記載の方法。
[52]
ウイスルベクターが、レンチウイルスベクターである、前記50または51に記載の方法。
[53]
細胞が、栄養障害型表皮水疱症患者の細胞である、前記33~52のいずれかに記載の方法。
[54]
遺伝子改変に先立ち、栄養障害型表皮水疱症患者から細胞を得ることをさらに含む、前記33および44~53のいずれかに記載の方法。
[55]
細胞が、骨髄から得た細胞である、前記33~54のいずれかに記載の方法。
[56]
細胞が、間葉系幹細胞である、前記33~55のいずれかに記載の方法。
[57]
間葉系幹細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞である、前記56に記載の方法。
[58]
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞で最も多い細胞である、前記56または57に記載の方法。
[59]
間葉系幹細胞が、組成物に含まれる細胞の70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98または99%以上を占める、前記56~58のいずれかに記載の方法。
[60]
組成物が、実質的に間葉系幹細胞以外の細胞を含まない、前記56~59のいずれかに記載の方法。
[61]
組成物が、患部に投与される、前記34~60のいずれかに記載の方法。
[62]
組成物が、水疱内に投与される、前記34~61のいずれかに記載の方法。
【0047】
[63]
栄養障害型表皮水疱症を治療するための医薬の製造のための、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された栄養障害型表皮水疱症患者の細胞を含む組成物の使用であって、前記細胞が間葉系幹細胞を含む、使用。
[64]
栄養障害型表皮水疱症を治療するための医薬の製造のための、VII型コラーゲンを産生する細胞を含む組成物の使用であって、組成物が水疱内に投与される、使用。
【0048】
[65]
栄養障害型表皮水疱症を治療するための、VII型コラーゲンを産生するよう遺伝子改変された栄養障害型表皮水疱症患者の細胞を含む組成物の使用であって、前記細胞が間葉系幹細胞を含む、使用。
[66]
栄養障害型表皮水疱症を治療するための、VII型コラーゲンを産生する細胞を含む組成物の使用であって、組成物が水疱内に投与される、使用。
【0049】
[67]
配列番号3~5のいずれかの配列またはこれに相補的な配列を含む、gRNA。
[68]
前記67のgRNAをコードする核酸配列を含むベクター。
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に記載される態様に限定されるものではない。
【実施例
【0051】
1. ゲノム編集の設計
ヒトゲノム内のAAVS1(Adeno-associated virus integration site 1)領域においてCRISPR-Cas9システムによる切断効率が良好な位置を選択するため、3種類のsgRNAを作製した。AAVS1領域は、遺伝子導入による影響を受けにくい安全領域(セーフ・ハーバー/safe harbor)である。CRISPR-Cas9システムは「NGG」の塩基配列を認識し、その3塩基上流を切断することから、末端に「GG」が配置される領域を選択し、「NGG」の上流20塩基の配列を含むsgRNA(sgAAVS1-#1~#3)を設計した(図1、上;表1)。
【表1】
【0052】
配列番号3~5のいずれかの配列からなるオリゴヌクレオチドとその相補鎖をアニーリングした後にeSpCas9(1.1) (Addgene plasmid # 71814)のBbs1サイトにクローニングした。このプラスミド(2.5 μg)を、6ウェルディッシュに播種したHEK293細胞(ヒト胎児腎細胞株)にLipofectamin 3000 (ThermoFisher Scientific)により導入した。トランスフェクションの48時間後、細胞からゲノムDNAを抽出し、標的部位を含む領域をPCRで増幅した。PCR増幅断片は熱処理により一本鎖にし、ゆっくり冷却することでアニーリングさせた後に、ミスマッチ部位特異的エンドヌクレアーゼで処理した。これを電気泳動で分画し、ゲノム切断によって導入された挿入または欠失変異の程度をバンドの濃さで測定し、以下の計算式によりゲノム編集効率を算出した(式中、aは消化されなかったバンド濃度、b, cは切断されたバンド濃度を示す)。

【0053】
sgAAVS1-#1~#3のいずれのsgRNAによってもコントロールとは異なる短いDNA断片が生じ、二重鎖切断が生じることが確認された(図1、下)。以下の実験では、最も切断効率の高かったsgAAVS1-#3を使用した。
【0054】
2. BM-MSCへのCOL7A1遺伝子の導入
AAVS1領域へのCOL7A1遺伝子の導入のため、CAGプロモーターの制御下にCOL7A1遺伝子を発現するプラスミドを設計した(図2)。COL7A1 cDNAは、Flexi ORF sequence-verified clone (Promega, Madison, WI, USA)より得た。COL7A1 cDNAをpENTR1Aプラスミド(ThermoFisher Scientific)にサブクローニングし、pENTR1A-COL7A1を作製し、LRリコンビナーゼ (ThermoFisher Scientific) とpAAVS-P-CAG-DEST (Addgene plasmid # 80490)およびpENTR1A-COL7A1とを用いて、pAAVS-P-CAG-COL7A1を得た。
【0055】
細胞に対してプラスミドの量が多くなると導入効率は上昇するが細胞生存率が低下するため、まず、細胞生存率と導入効率との両方が良好となる実験条件を検討した。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)[PromoCell (Heidelberg, Germany) または Lonza (Basel, Switzerland)](1×105 細胞)に、pAAVS-P-CAG-COL7A1(0 μg、0.25 μg、0.5 μg、または 1.0 μg)と、sgAAVS1-#3を発現するeSpCas9(1.1)(0 μg、0.25 μg、0.5 μg、または1.0 μg)とを、エレクトロポレーションにより導入した。トランスフェクションの24時間後に全ての細胞を回収し、総細胞数に対するトリパンブルー染色陽性細胞(死細胞)数から生存率を算出した。また、トランスフェクションの48時間後からBM-MSCを0.5 μg/mL ピューロマイシン (Invivogen, San Diego, CA, USA)を含む培地で約2週間培養して選択を行い、単離されたコロニー数を測定することによりゲノム編集の効率を検討した。図3に示す結果に基づき、以下の実験では、pAAVS-P-CAG-COL7A1を0.25 μg、eSpCas9(1.1) を0.5 μgを使用した。
【0056】
BM-MSC(1 × 105 細胞)に、pAAVS-P-CAG-COL7A1(0.25 μg)とsgAAVS1-#3を発現するeSpCas9(1.1) (0.5 μg)とを、エレクトロポレーションにより導入した。トランスフェクションの48時間後、BM-MSCを0.5 μg/mL ピューロマイシン (Invivogen, San Diego, CA, USA)を含む培地で約2週間培養して選択を行った。BM-MSCよりゲノムDNAを抽出し、PCRによりゲノム編集およびCOL7A1遺伝子の導入を確認した。
【0057】
F1-R1の間の増幅によってPCR産物が得られたことから、ゲノム編集が生じたことが確認された(図4、F1-R1)。また、F2-R2の間のPCR産物において野生型(WT)には存在しない長いDNAが検出されたことから、COL7A1遺伝子が導入されたことが示された(図4、F2-R2)。COL7A1遺伝子は、対立遺伝子の一方(図4、Monoallelic)、または両方(図4、Biallelic)に導入された。
【0058】
コラーゲンは分泌タンパクであり細胞外に滲出してくることから、抗VII型コラーゲン抗体 (Sigma Aldrich, St. Louis, MO, USA)を用いた免疫染色および培養上清のウェスタンブロッティングにより、BM-MSCにおけるVII型コラーゲンの発現を観察した。図5に示すように、遺伝子改変MSCにおいて、VII型コラーゲンの発現が確認された。
【0059】
3. 表皮水疱症モデルマウスにおけるVII型コラーゲンの発現
表皮水疱症モデルマウスに対する遺伝子改変MSCの投与によるVII型コラーゲンの発現を検討した。水疱形成を示すCol7A1遺伝子ノックアウトマウス(Col7a1-/-)の新生児の全層皮膚を切除し、免疫不全マウス(NOD-SCID)の背部に移植した。移植の1週間後、前記2の遺伝子改変MSCを、0.1~1.0 × 106細胞で皮下または皮内へ注入した(図6)。水疱内注入では、移植直後に皮膚表面をつまみ、かつ擦ることで水疱を形成させ、直ちに表皮下の空間に0.1~1.0 × 106細胞の遺伝子改変MSCを注入した。それぞれ注入の4週間後、移植皮膚を切除し、抗VII型コラーゲン抗体(Sigma Aldrich, St. Louis, MO, USA)を用いた免疫染色により、VII型コラーゲンの発現を評価した。
【0060】
図7に示すように、皮内注入および水疱内注入では基底膜近傍にVII型コラーゲンの発現が認められたが、皮内注入では発現が部分的であった。皮下注入では、基底膜とは異なる深層部分でコラーゲンが発現していた(図8)。これらの結果から、特に水疱内注入により優れた治療効果が期待できることが示された。
【0061】
また、上記と同様にして、前記2の遺伝子改変MSCを2.0 × 106細胞で水疱内注入した。4週間後に移植皮膚を切除し、電子顕微鏡で観察したところ、アンカリングフィブリルの形成が確認された(図9)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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