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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20240813BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20240813BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20240813BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240813BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240813BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F220/06
C08F220/12
C08J3/24 Z CEY
A61F13/53 300
A61F13/15 142
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023524438
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2022012466
(87)【国際公開番号】W WO2023038323
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120837
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0103399
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒェラン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒョン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ファンヒ・イ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-270609(JP,A)
【文献】特表2023-501130(JP,A)
【文献】特開平10-251350(JP,A)
【文献】特表2014-520199(JP,A)
【文献】特表2022-512196(JP,A)
【文献】特開2019-167465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08J 3/00- 3/28
A61F 13/15- 13/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、下記化学式1で表される重合性抗菌単量体および第1架橋剤が重合された架橋重合体を含むベース樹脂を含み、
第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された、高吸水性樹脂:
【化1】
前記化学式1中、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
は置換または非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項2】
およびRはそれぞれ水素であり、Rはメチルである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
はtert-ブチルである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
はエチレンである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記重合性抗菌単量体は、下記化学式1-1で表される化合物である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【化2】
【請求項6】
前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5重量部以上20重量部以下で使用される、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項7】
前記高吸水性樹脂は、グラム陰性菌に対して抗菌性を示す、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記グラム陰性菌は、大腸菌(Escherichia coli)またはプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)である、請求項7に記載の高吸水性樹脂。
【請求項9】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP241.3によって測定した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が20g/g以上45g/g以下である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項10】
第1架橋剤および重合開始剤の存在下で、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および下記化学式1で表される重合性抗菌単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級して架橋重合体を含むベース樹脂を形成する段階と、
第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階と、を含む、高吸水性樹脂の製造方法:
【化3】
前記化学式1中、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
は置換または非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項11】
前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5重量部以上20重量部以下で使用される、請求項10に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂を含む、衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年9月10日付の韓国特許出願第10-2021-0120837号および2022年8月18日付の韓国特許出願第10-2022-0103399号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の吸収性能の低下なしに向上したバクテリア増殖抑制特性を示す、高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で名付けられている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料や電気絶縁分野に至るまで広く使用されている。
【0004】
特に、高吸水性樹脂は子供用紙おむつや、大人用おむつなどの衛生用品または使い捨ての吸水製品に最も広く適用されている。したがって、このような衛生用品および使い捨ての吸水製品にバクテリアが増殖する場合、各種の病気を誘発するだけでなく、2次的な臭いまで誘発することがあるので問題となる。そこで、以前から高吸水性樹脂などに多様なバクテリア増殖抑制成分や、消臭または抗菌機能性成分を導入しようとする試みが行われたことがある。
【0005】
しかし、このようにバクテリア増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入することにおいて、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示しながらも、人体に無害であり、経済性を充足しながら、高吸水性樹脂の基本的な物性を低下させない抗菌剤成分を選択して導入することはあまり容易でなかった。
【0006】
したがって、高吸水性樹脂の基本的物性の低下なく優れたバクテリアの増殖を抑制することができる高吸水性樹脂関連技術の開発が継続的に要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、高吸水性樹脂の吸収性能の低下なしに向上したバクテリア増殖抑制特性を示すことができる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、下記化学式1で表される重合性抗菌単量体および第1架橋剤が重合された架橋重合体を含むベース樹脂を含み、
第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された、高吸水性樹脂を提供する:
【化1】
前記化学式1中、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
は水素、または置換または非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、
第1架橋剤および重合開始剤の存在下で、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および下記化学式1で表される重合性抗菌単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級して架橋重合体を含むベース樹脂を形成する段階と、
第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階と、を含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する:
【化2】
前記化学式1中、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
は水素、または置換または非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0010】
また、本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂を含む、衛生用品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高吸水性樹脂は、人体に有害であり、2次的悪臭を誘発することができるバクテリアを増殖抑制する抗菌特性を示すことができる。
【0012】
具体的には、前記高吸水性樹脂は、架橋重合体の形成時、特定の構造の重合性抗菌単量体を用いて製造することによりグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)のうちの少なくとも1つに対して抗菌特性を示し、かつ、他の抗菌剤を使用する場合とは異なり、優れた保水能を維持することができ、使用された抗菌単量体が樹脂内に残存しないので抗菌剤の溶出による人体の安定性の問題が発生しない。
【0013】
したがって、前記高吸水性樹脂は、子供用おむつだけでなくバクテリアに対する抗菌特性が求められる大人用おむつなど多様な衛生用品に非常に好ましく適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0015】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されると言及された場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材の上にさらに形成され得ることを意味する。
【0016】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものでなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0017】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0018】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む。
【0019】
また、本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。前記アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。また、本明細書において、アルキレンは2価の基であることを除けば、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。
【0020】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、アクリル酸系単量体が重合した状態であることを意味し、すべての水分含量の範囲または粒径の範囲を包括し得る。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称し、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と称する。
【0021】
また、用語「高吸水性樹脂粒子」は、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合し、内部架橋剤によって架橋された架橋重合体を含む、粒子状の物質をいう。
【0022】
また、用語「高吸水性樹脂」は、文脈によって酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合した架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0023】
従来の高吸水性樹脂での抗菌および消臭特性の確保のために抗菌機能を有する金属化合物や陽イオンまたはアルコール官能基を含む有機化合物を添加剤形態に導入した。しかし、この場合、高吸水性樹脂の安全性が低下するか、または吸収特性などの基本物性が低下し、また、抗菌特性の持続性および抗菌物質の流出の問題があった。
【0024】
一例として、銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属イオンを含有した抗菌剤成分を高吸水性樹脂に導入しようと試みられたことがある。このような抗菌性金属イオン含有成分はバクテリアなど微生物の細胞壁を破壊して高吸水性樹脂に悪臭を誘発することもある酵素を有するバクテリアを死滅させて消臭特性を付与することができる。しかし、前記金属イオン含有成分の場合、人体に有益な微生物まで死滅させることがある殺生物剤(BIOCIDE)物質として分類されている。その結果、前記高吸水性樹脂を子供用または大人用おむつなどの衛生用品に適用する場合、前記金属イオン含有抗菌剤成分の導入はできる限り排除されている。
【0025】
そして、従来は前記バクテリア増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入することにおいて、前記抗菌剤を高吸水性樹脂に少量混合する方法を主に適用した。しかし、このような混合方法を適用する場合、時間の経過によってバクテリア増殖抑制特性を均一に維持しにくかったのが事実である。しかも、このような混合方法の場合、高吸水性樹脂および抗菌剤を混合する過程で抗菌剤成分の不均一な塗布性および脱離現象を招くことができ、前記混合のための新規設備を設置する必要があるなどの短所も存在した。
【0026】
また、バクテリア(細菌)は確認されたものだけでも5千種を超えるほど様々な種類が存在する。具体的には、バクテリアは球状、棒状、螺旋状などで該細胞の形状が多様であり、酸素を要求する程度もまた、菌ごとに異なり、好気性菌、通性菌および嫌気性菌に分けられる。したがって、通常、1種類の抗菌剤が多様なバクテリアの細胞膜/細胞壁を損傷させるか、またはタンパク質を変性させることができる物理/化学的メカニズムを有することは容易ではなかった。
【0027】
しかし、特定の構造を有する第2級アミンを含む単量体をアクリル酸系単量体と一緒に重合して高吸水性樹脂を製造する場合、一定の水準以上の吸収性能を示し、かつグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)のうちの少なくとも1つに抗菌性を示すことができることを確認して、本発明を完成した。前記化学式1で表される重合性抗菌単量体のアミノ基が陽子と結合して正電荷を帯びると、微生物の細胞壁と相互作用(interaction)が増加し、ペンダント基(Pendant group)に相当するアルキル基が微生物の細胞壁を不安定にして微生物の生長を抑制することによって抗菌性を示す。具体的には、ほとんどの細菌の細胞膜は負電荷を帯びるので、ほとんどの抗菌性物質は正電荷を有する。前記化学式1で表される化合物のアミンに水素陽イオン(陽子)が結合して陽イオン性質を示すと、細菌の細胞膜と相互作用するので、前記化学式1で表される化合物は抗菌性を有する。
【0028】
さらに、前記高吸水性樹脂は抗菌単量体をアクリル酸系単量体と共に架橋された架橋重合体の形態で含むため、高吸水性樹脂内に抗菌単量体が化合物の形態で残らなくなるので、時間が経過しても抗菌剤が溶出する恐れがなく、これによって優れた安定性を示すという特徴がある。
【0029】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂およびその製造方法についてより詳しく説明する。
【0030】
高吸水性樹脂
具体的には、発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、下記化学式1で表される重合性抗菌単量体および第1架橋剤が重合された架橋重合体を含むベース樹脂を含み、第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理されたことを特徴とする:
【0031】
【化3】
【0032】
前記化学式1中、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
は水素、または置換または非置換の炭素数1~20のアルキルであり、
は置換または非置換の炭素数1~10のアルキレンである。
【0033】
このとき、前記架橋重合体は、前記アクリル酸系単量体および前記重合性抗菌単量体が第1架橋剤の存在下で架橋重合されたもので、前記単量体が重合されて形成された主鎖が前記第1架橋剤によって架橋される形態の3次元網状構造を有する。したがって、前記重合性抗菌単量体は、前記高吸水性樹脂内に別の化合物として存在せず、主鎖を構成する繰り返し単位として存在するため、時間が経過しても流出しないので、前記高吸水性樹脂の抗菌特性が持続的に維持する。
【0034】
前記化学式1中、好ましくは、RおよびRはそれぞれ水素であり、Rはメチルであり得る。
【0035】
また、好ましくは、Rは置換または非置換の炭素数1~10のアルキルであり、より好ましくは、Rはtert-ブチルであり得る。一般に、R位の炭素数が多いほど、微生物の外部細胞壁の二重層と親和性が高くなり、これによって強い抗菌力を示す。炭素数が8以上のアルキルの場合には、水中でも強い殺菌性を示すことが可能で適切な長さを有することが重要である。
【0036】
抗菌性化合物の末端が第3級アミンの場合、先に述べたように、微生物の外部細胞壁と相互作用する役割を果たすことができる。ただし、電子の誘導効果(Inductive Effect)が増加する代わりに、立体効果(Steric Effect)によって細胞膜と正電荷の相互作用に否定的な影響を及ぼす。これに対し、化学式1で表される化合物の末端は第2級アミンであるが、この場合には立体効果が小さくなり、陽子とより容易に結合して正電荷を帯びるので、負電荷を有する微生物の細胞壁とより強い相互作用を発揮することができる。したがって、Rが相対的に少ない炭素数を有するtert-ブチルの場合にも、優れた抗菌性能を示すことができる。
【0037】
好ましくは、Lは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレンであってもよく、より好ましくは、Lは、エチレンであってもよい。
【0038】
一例として、前記重合性抗菌単量体は、下記化学式1-1で表される化合物であり得る:
【0039】
【化4】
【0040】
一方、前記重合性抗菌単量体は、前記架橋重合体内に前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5重量部以上20重量部以下の含有量で含まれる。前記重合性抗菌単量体が、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5重量部未満で含まれる場合、十分な抗菌効果を示しにくく、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して20重量部超で含まれる場合、高吸水性樹脂の吸収性能が低下し、高吸水性樹脂の重合速度が減少する。
【0041】
より具体的には、前記重合性抗菌単量体は、前記架橋重合体内に前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5重量部以上、5.5重量部以上、または6重量部以上であり、かつ、20重量部以下、15重量部以下、12重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、または8重量部以下の含有量で含まれる。このとき、高吸水性樹脂の吸収性能、具体的には、遠心分離保水能の維持の側面で前記架橋重合体内に前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5~10重量部の含有量で含まれることが好ましい。
【0042】
このとき、前記重合性抗菌単量体は、前記架橋重合体内に前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5~20重量部の含有量で含まれるとは、架橋重合体の製造時、前記重合性抗菌単量体を前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5~20重量部の含有量で使用するという意味である。これは、前記高吸水性樹脂の残留単量体の確認時に抗菌単量体の検出可否の結果によって確認することができるが、前記高吸水性樹脂は製造後に抗菌単量体が検出されず、使用された抗菌単量体全量がすべてアクリル酸系単量体との重合に使用されたとみなされる。
【0043】
一例として、前記化学式1-1で表される重合性抗菌単量体は、特定のバクテリアに抗菌性を示す。ここで、「特定のバクテリアに抗菌性を示す」とは、抗菌性の有無を確認しようとする物質に試験バクテリアが接種された人工尿を吸収させた後、これを培養した後のバクテリアの数が、抗菌物質を含有しない
【0044】
物質に試験バクテリアが接種された人工尿を吸収させた後、これを培養した後のReferenceバクテリアの数に比べて顕著に減少したことを意味し、具体的には、後述する抗菌特性の評価により下記数式1によって計算される菌成長抑制率が大きいほど抗菌性に優れたことを意味する。
【0045】
[数式1]
菌成長抑制率(%)=[(ODReference-ODSample)/ODReference]×100
【0046】
上記式中、ODReferenceは、静菌物質を含有しない培養液での吸光度であり、ODsampleは、静菌物質を含有した培養液での吸光度である。
【0047】
または、「特定のバクテリアに抗菌性を示す」とは、下記数式2によって計算される静菌減少率(%)が45%以上であることを意味する。
【0048】
[数式2]
静菌減少率(%)=(1-Csample/CReference)×100
【0049】
上記式中、
sampleは、静菌物質を含有した物質の培養液での微生物の濃度(Co)であり、
Referenceは、静菌物質を含有しない物質の培養液での微生物の濃度(Co)である。
【0050】
より好ましくは、前記「特定のバクテリアに抗菌性を示す」とは、前記数式2によって計算される静菌減少率(%)が60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上であることを意味する。
【0051】
具体的には、前記化学式1-1で表される重合性抗菌単量体は、大腸菌(Escherichia coli;E.coli)またはプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis;P.mirabilis)に抗菌性を示す。前記化学式1-1で表される重合性抗菌単量体は、高吸水性樹脂100重量部に対して3重量部以上7重量部以下でも大腸菌(Escherichia coli;E.coli)またはプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis;P.mirabilis)に抗菌性を示す。
【0052】
一方、前記アクリル酸系単量体は、下記化学式2で表される化合物である:
【0053】
[化学式2]
R-COOM’
【0054】
前記化学式2中、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M’は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0055】
好ましくは、前記単量体は(メタ)アクリル酸、およびこれら酸の1価(アルカリ)金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0056】
このようにアクリル酸系単量体として(メタ)アクリル酸および/またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂が得られるため、有利である。
【0057】
ここで、アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。このとき、前記アクリル酸系単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性によって調節することができる。しかし、前記中和度が過度に高ければ中和した単量体が析出して重合が円滑に行われにくいことがあり、逆に中和度が過度に低ければ高分子の吸収力が大きく低下するだけでなく、取り扱い困難な弾性ゴムのような性質を示すことができる。
【0058】
また、本明細書で使用される用語「第1架橋剤」は、後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための第2架橋剤と区別するために使用する用語であり、上述したアクリル酸系単量体および重合性抗菌単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割を果たす。前記段階での架橋は表面または内部の区別なしに行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合、最終的に製造される高吸水性樹脂の粒子表面は、第2架橋剤によって架橋された構造からなり、内部は、前記第1架橋剤によって架橋された構造からなる。したがって、前記第2架橋剤は、主に高吸水性樹脂の表面を架橋させる役割を果たすので、表面架橋剤の役割を果たすとみなされ、前記第1架橋剤は、前記第2架橋剤と区別され、内部架橋剤の役割を果たすとみなされる。
【0059】
前記第1架橋剤としては、前記アクリル酸系単量体の重合時架橋結合の導入を可能にするものであれば、いかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記第1架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤を単独使用または2以上を併用することができ、これらに限定されるものではない。
【0060】
好ましくは、前記第1架橋剤としては、この中でポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、またはポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート系化合物を使用することができる。
【0061】
このような第1架橋剤の存在下で前記アクリル酸系単量体の架橋重合は、重合開始剤、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの存在下で熱重合、光重合または混成重合により行われ得るが、具体的な内容は後述する。
【0062】
一方、前記高吸水性樹脂は、第2架橋剤を媒介として前記架橋重合体を含むベース樹脂が追加架橋され、前記架橋重合体上に形成された表面架橋層をさらに含み、前記表面架橋層は、ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理されたものを含む。これは、高吸水性樹脂粒子の表面架橋密度を高めるためのもので、前記のように高吸水性樹脂粒子が表面架橋層をさらに含む場合、内部より外部の架橋密度が高い構造を有することになる。
【0063】
前記第2架橋剤としては、従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた第2架橋剤を特別な制限なくすべて使用することができる。例えば、前記第2架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択される1種以上のポリオール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選択される1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;アルミニウムスルフェートなどの金属含有硫酸塩、またはカルボン酸塩の1種以上の多価金属塩;または環状尿素化合物;などを含むことができる。
【0064】
具体的には、前記第2架橋剤として上述した第2架橋剤のうちの1種以上、または2種以上、または3種以上を使用することができるが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレングリコールおよび/または硫酸アルミニウムを使用することができる。
【0065】
また、前記高吸水性樹脂は850μm以下の粒径、例えば、約150~850μmの粒径を有する粒子形態であり得る。このとき、このような粒径は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP220.3方法によって測定することができる。ここで、前記高吸水性樹脂が150μm未満の粒径を有する微粉を多量に含む場合、高吸水性樹脂の諸般物性を低下させることができ、好ましくない。
【0066】
一方、前記高吸水性樹脂は、前述のように前記グラム陰性菌のうちの少なくとも1つに抗菌性を示すことができる。より具体的には、前記高吸水性樹脂は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。
【0067】
前記グラム陰性菌は、グラム染色法で染色すれば赤色に染まるバクテリアを総称するもので、グラム陽性菌に比べて相対的に少量のペプチドグリカンを有する細胞壁を持つ代わりに、脂質多糖質、脂質タンパク質、および他の複雑な高分子物質から構成された外膜を有する。したがって、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールで処理すれば脱色が起こり、サプラニンなどの赤色の染料で対比染色をすれば赤色を呈することになる。このようなグラム陰性菌に分類されるバクテリアとしては、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)などが挙げられる。
【0068】
したがって、前記グラム陰性菌は接触時に様々な病気を誘発できるだけでなく、免疫力が低下した重症患者に2次感染を引き起こすこともあるので、1つの抗菌剤を使用して前記グラム陰性菌のうちの1種以上に対して抗菌性を示すことが好ましい。このとき、前記高吸水性樹脂が抗菌性を示すグラム陰性菌は、大腸菌(Escherichia coli)、またはプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0069】
一方、前記高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP241.3によって測定した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が20g/g以上45g/g以下であり得る。前記遠心分離保水能(CRC)が20g/g未満の場合、液体を吸収した後に保有できる性能が低下して高吸水性樹脂を衛生用品に適用することが好ましくない。より具体的には、前記高吸水性樹脂は、前記遠心分離保水能(CRC)が20g/g以上、25g/g以上、30g/g以上、35g/g以上、または35.6g/g以上であり、かつ、45g/g以下、43g/g以下、41g/g以下、40g/g以下、38g/g以下、または37.4g/g以下であり得る。
【0070】
したがって、架橋重合体内に重合性抗菌単量体を所定の含有量で含む上述した高吸水性樹脂は20~45g/gの遠心分離保水能(CRC)を有し、かつ、優れた抗菌性を示すことができる。
【0071】
高吸水性樹脂の製造方法
一方、前記高吸水性樹脂は、以下の製造方法を含んで製造することができる:
第1架橋剤および重合開始剤の存在下で、酸性基を含み、酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および前記化学式1で表される重合性抗菌単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級して架橋重合体を含むベース樹脂を形成する段階と、
第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階と、を含む。
【0072】
まず、段階1は、第1架橋剤および重合開始剤の存在下で、酸性基を含み、酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および重合性抗菌単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0073】
前記段階は、前記アクリル酸系単量体、第1架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備する段階と、前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階とからなる。このとき、前記アクリル酸系単量体、重合性抗菌単量体および第1架橋剤に関する説明は上述した内容を参照する。
【0074】
前記単量体組成物において、このような第1架橋剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~1重量部で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。第1架橋剤の含有量が0.01重量部未満であれば架橋による改善効果が微小であり、第1架橋剤の含有量が1重量部を超えれば高吸水性樹脂の吸収能が低下する。より具体的には、前記第1架橋剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれる。
【0075】
また、前記重合開始剤は、重合方法によって適宜選択することができ、熱重合方法を用いる場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を用いる場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光をすべて使用する方法)を用いる場合には熱重合開始剤と光重合開始剤を両方とも使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、さらに熱重合開始剤を使用することもできる。
【0076】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であればその構成の限定なく使用することができる。
【0077】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115に開示されており、上述した例に限定されない。
【0078】
前記光重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~1重量部で含まれる。このような光重合開始剤の含有量が0.001重量部未満の場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の含有量が1重量部を超えれば高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になる。より具体的には、前記光重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上であり、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれる。
【0079】
また、前記重合開始剤として熱重合開始剤をさらに含む場合、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」p203に開示されており、上述した例に限定されない。
【0080】
前記熱重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~1重量部で含まれる。このような熱重合開始剤の含有量が0.001重量部未満であれば追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微小であり、熱重合開始剤の含有量が1重量部を超えれば高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になる。より具体的には、前記熱重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上であり、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれる。
【0081】
前記重合開始剤以外にも、架橋重合時、必要に応じて界面活性剤、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤を1種以上さらに含むこともできる。
【0082】
上述したアクリル酸系単量体、重合性抗菌単量体、および第1架橋剤、並びに選択的に光重合開始剤、および添加剤を含む単量体組成物は溶媒に溶解した溶液の形態で準備されてもよい。
【0083】
このとき、使用可能な溶媒は、上述した成分を溶解できるものであればその構成の限定なく使用することができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択される1種以上を組み合わせて使用することができる。前記溶媒は、単量体組成物の総含量に対して上述の成分を除いた残量で含まれてもよい。
【0084】
また、前記溶媒として水などの水溶性溶媒を使用し、重合性抗菌単量体として水に対して溶解性を示さないテルペン系化合物を使用する場合、溶解度を高めるために重合性抗菌単量体100重量部に対して10重量部以下の量で界面活性剤をさらに投入することができる。
【0085】
一方、このような単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0086】
具体的には、前記光重合は、60~90℃、または70~80℃の温度で3~30mW、または10~20mWの強さを有する紫外線を照射することによって行うことができる。上記条件で光重合時、より優れた重合効率で架橋重合体の形成が可能である。
【0087】
また、前記光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器または一定のサイズのステンレス材質の容器内で行うことができるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0088】
また、上述したように、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であり得る。このとき、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて異なるが、約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度の単量体組成物を供給する場合、生産効率が低いので好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均一に起こらない。
【0089】
また、前記方法で得られた含水ゲル状重合体の含水率は、含水ゲル状重合体の総重量に対して約40~約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体で「含水率」は、含水ゲル状重合体の全重量に対して占める水分の含量であって、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。このとき、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後に180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階5分を含んで20分に設定して、含水率を測定する。
【0090】
一方、前記含水ゲル状重合体の製造後、後続の乾燥および粉砕工程を行う前に、製造された含水ゲル状重合体を粉砕する粗粉砕工程を選択的に行うことができる。
【0091】
前記粗粉砕工程は後続の乾燥工程で乾燥効率を高め、製造される高吸水性樹脂粉末の粒子の大きさを制御するための工程であって、このとき、使用される粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、小片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、ミートチョッパー(meat chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕装置群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、上述した例に限定されない。
【0092】
前記粗粉砕工程は、一例として、前記含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmになるように行うことができる。含水ゲル状重合体の粒径が2mm未満に粉砕することは前記含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が発生することもある。一方、粒径が10mm超過に粉砕する場合、その後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0093】
次に、段階2は、前記段階1で製造した含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級して架橋重合体を含むベース樹脂を形成する段階である。
【0094】
前記乾燥方法は、含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択して使用することができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。
【0095】
具体的には、前記乾燥は、約120~約250℃の温度で行うことができる。乾燥温度が120℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみが乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は150℃以上、または160℃以上であり、200℃以下、または180℃以下の温度で行うことができる。
【0096】
一方、乾燥時間の場合には工程効率などを考慮して、約20~約90分間行うことができるが、これに限定されない。
【0097】
このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約5~約10重量%であり得る。
【0098】
前記乾燥工程後には粉砕工程が行われる。前記粉砕工程は、重合体粉末、つまり、ベース樹脂の粒径が約150~約850μmになるように行うことができる。このような粒径に粉砕するために使用される粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョッグミル(jog mill)などを使用することができるが、上述した例に本発明が限定されるものではない。
【0099】
また、このような粉砕段階後、最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕された重合体粉末を粒径によって分級する工程をさらに経ることもできる。
【0100】
前記工程の結果として得られるベース樹脂は、アクリル酸系単量体と重合性抗菌単量体が第1架橋剤を媒介として架橋重合された架橋重合体を含む微細粉末形態を有することができる。具体的には、前記高吸水性樹脂は150~850μm、または約300~約600μmの粒径を有する微細粉末形態を有することができる。
【0101】
次に、前記段階2で製造したベース樹脂を第2架橋剤の存在下で熱処理して表面架橋する段階(段階3)をさらに含む。
【0102】
前記表面架橋は、粒子内部の架橋結合密度と関連して高吸水性樹脂表面付近の架橋結合密度を増加させる段階である。一般に、第2架橋剤は樹脂の表面に塗布される。したがって、この反応は樹脂粒子の表面上で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を与えず、かつ粒子の表面上での架橋結合性を改善させる。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂は内部より表面付近でさらに高い架橋結合度を有する。
【0103】
前記第2架橋剤は、前記含水ゲル重合体100重量部に対して約0.001~約5重量部で使用することができる。例えば、前記第2架橋剤は、高吸水性樹脂100重量部に対して0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.05重量部以上であり、5重量部以下、4重量部以下、または3重量部以下の含有量で使用することができる。第2架橋剤の含有量の範囲を上述した範囲に調節して優れた吸収諸般物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0104】
また、前記第2架橋剤を前記高吸水性樹脂と混合する方法についてはその構成の限定はない。例えば、第2架橋剤と高吸水性樹脂を反応槽に入れて混合するか、または高吸水性樹脂に第2架橋剤を噴射する方法、連続運転されるミキサーに高吸水性樹脂と第2架橋剤を連続供給して混合する方法などを使用することができる。
【0105】
前記第2架橋剤以外に、さらに水およびアルコールを一緒に混合して前記表面架橋溶液の形態で添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、第2架橋剤が高吸水性樹脂粉末に均一に分散される利点がある。このとき、追加される水およびメタノールの含有量は、第2架橋剤の均一な分散を誘導して高吸水性樹脂粉末の固まり現象を防止するとともに、架橋剤の表面浸透の深さを最適化するために重合体100重量部に対して、約5~約12重量部の比率で添加することが好ましい。
【0106】
前記第2架橋剤が添加された高吸水性樹脂粉末に対して約80~約220℃の温度で約15~約100分間加熱させることによって表面架橋結合反応が行われる。架橋反応温度が80℃未満である場合、表面架橋反応が十分に起こらないことがあり、220℃を超える場合、過度に表面架橋反応が行われることがある。また、架橋反応時間が15分未満と過度に短い場合、十分な架橋反応を行うことができず、架橋反応時間が100分を超える場合、過度な表面架橋反応によって粒子表面の架橋密度が過度に高くなり、物性低下が発生することがある。より具体的には、120℃以上、または140℃以上であり、200℃以下、または180℃以下の温度で、20分以上、または40分以上であり、70分以下、または60分以下に加熱させることによって行うことができる。
【0107】
前記追加架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、または熱源を直接供給して加熱することができる。このとき、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されず、また、供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0108】
さらに、上述した高吸水性樹脂を含む衛生用品が提供される。
【0109】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0110】
[実施例:高吸水性樹脂の製造]
実施例1
撹拌機、窒素投入機、温度計を装着した3Lガラス容器にアクリル酸100重量部、第1架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、Mn=575)0.35重量部、光開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド0.008重量部、熱開始剤として過硫酸ナトリウム(sodium persulfate;SPS)0.12重量部、純度31.5%水酸化ナトリウム溶液123.5重量部、水54.9重量部および2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(tert-butylamino)ethyl methacrylate、Sigma-Aldrich社製、製品番号:444332)5重量部を添加して窒素を連続的に投入しながら水溶性不飽和単量体水溶液を製造した。
【0111】
前記水溶性不飽和単量体水溶液を横250mm、縦250mm、高さ30mmのステンレス材質の容器に移し、80℃のUVチャンバーで紫外線を2分間照射(照射量:10mV/cm)し、2分間エージング(aging)させて含水ゲル状重合体を得た。
【0112】
得られた含水ゲル状重合体を3mm×3mmの大きさに粉砕した後、得られたゲル型樹脂を600μmの孔大きさを有するステンレスワイヤーガーゼの上に約30mmの厚さに広げておいて120℃の熱風オーブンで11時間乾燥した。このように得られた乾燥重合体を粉砕機を使用して粉砕し、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子の大きさを有するベース樹脂を得た。
【0113】
また、前記ベース樹脂に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂100重量部を基準として、水5.4重量部、エチレンカーボネート1.2重量部、およびプロピレングリコール0.2重量部、ポリカルボン酸界面活性剤0.2重量部および硫酸アルミニウム0.2重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサーを用いて噴射した。その後、最大温度184℃で40分間熱処理して表面架橋を行い、実施例1の高吸水性樹脂を製造した。
【0114】
実施例2
前記実施例1で2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート10重量部を使用し、表面架橋を最大温度178℃で30分間行ったことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0115】
比較例1
前記実施例1で2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートを使用しないことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0116】
比較例2
窒素環境を維持できる2口丸底フラスコに2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(18.5g)とエタノール(30mL)を投入して10分間攪拌した。その後、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、Azobisisobutyronitrile(493mg))を投入して80℃で16時間攪拌した。反応混合物の温度を常温に下げた後、少量のエタノールを投入して溶液を希釈した。希釈した溶液を蒸留水にゆっくり滴下して生成された固体をろ過し、少量の蒸留水で洗浄した後、乾燥して、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートポリマー(Mw=32856、Mn=21055、Mp=49340、PD=1.6)を得た。
【0117】
前記比較例1と同様の方法で製造した高吸水性樹脂100重量部に2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートポリマー5重量部を混合して高吸水性樹脂混合物を製造した。
【0118】
比較例3
窒素環境を維持できる2口丸底フラスコに2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(18.5g)とエタノール(30mL)を投入して10分間攪拌した。その後、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、Azobisisobutyronitrile(493mg))を投入して80℃で16時間攪拌した。反応混合物の温度を常温に下げた後、少量のエタノールを投入して溶液を希釈した。希釈した溶液を蒸留水にゆっくり滴下して生成された固体をろ過し、少量の蒸留水で洗浄した後、乾燥して、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートポリマー(Mw=32856、Mn=21055、Mp=49340、PD=1.6)を得た。
【0119】
前記比較例1と同様の方法で製造した高吸水性樹脂100重量部に2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートポリマー10重量部を混合して高吸水性樹脂混合物を製造した。
【0120】
前記比較例2および比較例3で2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートポリマーのMw、Mn、MpおよびPDは以下の方法で測定した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてMwおよびMnを測定することによって分子量分布(PD=Mw/Mn)を測定した。Polymer Laboratories PLgel MIX-C/D 300mmの長さのカラムを用いてWaters E2695、2414 RI装置を用いて評価した。評価温度は40℃であり、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で測定した。サンプルは5mg/1mLの濃度に調製した後、100μLの量で供給した。ポリメチルメタクリレート(PMMA)標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を誘導した。ポリメチルメタクリレート標準品の分子量は1,980/13,630/32,340/72,800/156,200/273,600/538,500/1,020,000/1,591,000の9種を使用した。
【0121】
[実験例]
(1)重合性抗菌単量体の大腸菌(E.coli)に対する抗菌特性の評価
実施例に含まれる単量体2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートと以下の単量体2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートについて、以下の方法で抗菌性を評価した。
【0122】
2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートに対する抗菌性は実験例1-1~1-3に、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートに対する抗菌性は比較実験例1-1~1-4に示した。
【0123】
【化5】
【0124】
単量体含有量を下記表1のとおり、50mlコニカルチューブ(conical tube)に入れた後、大腸菌(E.coli、ATCC25922)標準株3000±300CFU/mlで接種されたニュートリエントブロス(Nutrient broth)(Becton Dickinson社製)溶液25mlを注入した。これを35℃のシェイキングインキュベーター(shaking incubator)(ビジョンテック社製、VS-37SIF)で18時間培養後、培養溶液を1X PBS(Gibco社製)を用いて1/5濃度で希釈した。UV-Vis Spectrophotometerを用いて600nmの波長で当該稀釈溶液の吸光度を測定した。このとき、菌が接種されたニュートリエントブロス(Nutrient broth)溶液を単量体の添加なしに培養して測定した吸光度に対する単量体を投入した試料の吸光度を比較して菌培養程度を確認した。下記数式1により菌成長抑制率を計算し、その結果を下記表1に示す。
【0125】
[数式1]
菌成長抑制率(%)=[(ODReference-ODSample)/ODReference]×100
【0126】
上記式中、ODReferenceは静菌物質を含有しない比較実験例1-1の培養液での吸光度であり、ODsampleは静菌物質を含有した培養液での吸光度である。
【0127】
【表1】
【0128】
上記表1に示すように、本発明の重合性抗菌単量体を含む場合、末端の置換基が第3級アミン基で、異なる比較実験例の単量体2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを同じ含有量で含むものより優れた静菌減少率を示すことを確認することができた。
【0129】
(2)重合性抗菌単量体のプロテウスミラビリス(P.mirabilis)に対する抗菌特性の評価
実施例に含まれる単量体2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートと前記単量体2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートのプロテウスミラビリスに対する抗菌特性を確認するために、前記大腸菌に対する抗菌特性の評価で大腸菌(E.coli、ATCC25922)の代わりにプロテウスミラビリス(P.mirabilis、ATCC 29906)標準株3000±300CFU/mlで接種されたニュートリエントブロス(Nutrient Broth)溶液を使用したことを除いては、同様の方法でプロテウスミラビリス(P.mirabilis)の菌成長抑制率(%)を計算し、その結果を下記表2に示す。
【0130】
このとき、数式1を用いた静菌減少率の計算において、CReferenceは静菌物質を含有しない比較実験例2-1の単量体の培養後のバクテリアのCFU数である。
【0131】
【表2】
【0132】
上記表2に示すように、本発明の重合性抗菌単量体を含む場合、末端の置換基が第3級アミン基で、異なる比較実験例の単量体2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを同じ含有量で含むものより優れた静菌減少率を示すことを確認することができた。
【0133】
(3)高吸水性樹脂の吸収物性の評価
実施例および比較例の高吸水性樹脂について、以下の方法で遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)を測定して表3に示す。
【0134】
欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)の規格であるEDANA WSP241.3によって、各実施例および比較例の高吸水性樹脂およびベース樹脂それぞれの無荷重下での吸収倍率による遠心分離保水能を測定した。
【0135】
具体的には、高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取り、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を使用せずに同じ操作を行った後、その時の質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて下記数式3によりCRC(g/g)を算出した。
【0136】
[数式3]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0137】
前記数式3中、
(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
(g)は、高吸水性樹脂を使用せず、生理食塩水に前記封筒を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した封筒の重量であり、
(g)は、常温で生理食塩水に高吸水性樹脂を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後、高吸水性樹脂を含んで測定した封筒の重量である。
【0138】
(4)高吸水性樹脂の大腸菌(E.coli)に対する抗菌特性の評価
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂2gを250ml 細胞培養フラスコ(cell culture flask)に入れた後、試験バクテリアである大腸菌(E.coli)の標準株(ATCC 25922)が3000±300 CFU/mlで接種された人工尿50mlを注入した。その後、前記高吸水性樹脂が人工尿溶液を十分に吸収できるように約1分間混合し、溶液が十分に吸収した樹脂はゲル形態を示すが、これを35℃に維持されるインキュベーター(incubator)(JEIO TECH社製))で12時間培養した。培養が完了した試料に0.9wt% NaCl溶液(solution)150mlを追加して約1分間シェーキング(Shaking)し、該稀釈溶液を寒天培地プレート(Agar medium plate)に塗抹した。その後、コロニーカウンティング(Colony counting)が可能であるように段階希釈(Serial dilution)を行い、該過程で0.9wt% NaCl溶液(solution)を用いた。静菌性能は稀釈濃度を考慮して、初期濃度の微生物濃度(Co、CFU/ml)を計算した後、下記数式2により大腸菌(E.coli、ATCC 25922)の静菌減少率(%)を計算し、その結果を下記表3に示す。
【0139】
[数式2]
静菌減少率(%)=(1-Csample/CReference)×100
【0140】
このとき、数式2を用いた静菌減少率の計算においてCsampleは静菌物質を含有した高吸水性樹脂の培養後のバクテリアのCFU数であり、CReferenceは静菌物質を含有しない比較例1の高吸水性樹脂の培養後のバクテリアのCFU数である。
【0141】
(5)高吸水性樹脂のプロテウスミラビリス(P.mirabilis)に対する抗菌特性の評価
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂のプロテウスミラビリス(P.mirabilis)に対する抗菌特性を確認するために、大腸菌(E.coli)の標準株(ATCC 25922)の代わりにプロテウスミラビリス(P.mirabilis)を用いたことを除いては、前記「(4)高吸水性樹脂の大腸菌(E.coli)に対する抗菌特性の評価」と同様の方法でプロテウスミラビリスの静菌減少率(%)を計算し、その結果を下記表3に示す。
【0142】
(6)アンモニアの消臭評価
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、以下の方法で消臭評価を行った。
【0143】
具体的には、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)(ATCC 29906)が10,000CFU/mlで接種された人工尿に、前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂を溶媒1ml当たり0.04g/mlの濃度になるように人工尿50mlにそれぞれ注入し、インキュベーター(incubator)(JEIO TECH社製)で35℃で12時間培養した。培養が完了した容器に注射針を用いてアンモニア検知管(ガステック社製、アンモニア3M)およびそれに適したポンプ(ガステック社製、GV-100)を連結した後、50mlを抽出した。アンモニアにより検知管の色が変化し、その目盛りを確認して比較した。このとき、使用した人工尿組成はJ Wound Ostomy Continence Nurs.2017;44(1)78-83に開示された方法を用いて製造した。その結果を下記表3に示す。
【0144】
【表3】
【0145】
上記表3の結果、実施例1、実施例2および比較例1の高吸水性樹脂は、表面架橋時間および温度を調節して互いに同等の水準のCRCを有する反面、大腸菌およびプロテウスミラビリスに対して静菌減少率が高くて抗菌特性を有することを確認することができた。比較例2および比較例3においては、実施例1の高吸水性樹脂を使用して実施例1と同様の吸収物性を有するが、単純混合だけでは大腸菌およびプロテウスミラビリスに対する抗菌特性が顕著に低下することを確認した。
【0146】
また、プロテウスミラビリスの場合、ウレアーゼ(urease)などの酵素を有する微生物で人工尿の中に含まれる尿素(urea)をアンモニアの形態で分解するので、プロテウスミラビリスが増殖するほどアンモニアの発生量が増加して、尿の悪臭が大きく増加することを確認することができた。上記表3に示すように、実施例においてアンモニアの発生量が比較例に比べて著しく減少することから、抗菌作用による消臭効果に優れていることを確認した。