(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法、保護部材貼着装置、及び、加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240813BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240813BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240813BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240813BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
B24B41/06 L
B24B49/04 Z
B24B7/04 A
(21)【出願番号】P 2020096011
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏行
(72)【発明者】
【氏名】藍 麗華
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124032(WO,A1)
【文献】特開2019-220550(JP,A)
【文献】特開2017-079230(JP,A)
【文献】特開2010-040821(JP,A)
【文献】特開2020-026010(JP,A)
【文献】特開2020-049593(JP,A)
【文献】特開2020-055053(JP,A)
【文献】特開2018-206890(JP,A)
【文献】特開2008-264913(JP,A)
【文献】特開2005-033000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
B24B 41/06
B24B 49/04
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側にデバイスを備えるウェーハを加工するウェーハの加工方法であって、
熱によって軟化する樹脂で形成された保護部材を該ウェーハの周囲に配置された環状板で支持し、内終端によって規定される開口部を有する該環状板の該開口部を介して気圧差により該保護部材を該ウェーハに密着させる保護部材密着ステップと、
該保護部材密着ステップの後、該保護部材を、該ウェーハの該表面側に、加熱しながら押圧することにより貼着し、保護部材付きウェーハを形成する保護部材付きウェーハ形成ステップと、
該保護部材付きウェーハの該保護部材の厚さを測定する厚さ測定ステップと、
該保護部材付きウェーハをチャックテーブルの保持面で保持し、該ウェーハが目標仕上げ厚さとなるまで該ウェーハの裏面側を研削する研削ステップと、を備え、
該研削ステップでは、該保護部材付きウェーハの総厚さから該厚さ測定ステップで測定した該保護部材の厚さを減算して該ウェーハの厚さを算出すると共に、該ウェーハの該裏面側を研削することを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該保護部材付きウェーハ形成ステップで使用される該保護部材は、熱によって軟化する熱可塑性樹脂を加熱しながら押圧することで形成した枚葉式のシートであることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該保護部材密着ステップの前に、ペレットを軟化又は溶融させてウェーハよりも大径の該保護部材を形成する保護部材形成ステップを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
表面側にデバイスを備えるウェーハの該表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着装置であって、
支持テーブルと押圧体とを有し、該押圧体及び支持テーブルを用いて、熱によって軟化する樹脂で形成された該保護部材を該ウェーハの該表面側に加熱しながら押圧することにより該ウェーハの該表面側に貼着して保護部材付きウェーハを形成する保護部材貼着ユニットと、
厚さ測定器を有し、該保護部材付きウェーハにおける該保護部材の厚さを測定する厚さ測定ユニットと、
該厚さ測定ユニットで測定された該保護部材の厚さの情報を、該保護部材貼着装置の外部に送信するための送信部と、を備え
、
該保護部材貼着ユニットは、
支持テーブルが設けられている凹状の下部本体と、
該下部本体の第1開口部の内側に配置され該保護部材を支持する環状板と、
該下部本体に設けられた第1排気部と、
該下部本体の上方に配置された凹状の上部本体と、
該上部本体に設けられた第2排気部及び給気部と、
を有し、
内終端によって規定される第2開口部を有する該環状板の該第2開口部を介して気圧差により該保護部材を該ウェーハに密着させた後、加熱及び押圧により該保護部材を該ウェーハに貼着することを特徴とする保護部材貼着装置。
【請求項5】
表面側にデバイスを備えるウェーハの該表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着装置と、該表面側に該保護部材が貼着された該ウェーハを研削する研削装置と、を備える加工装置であって、
該保護部材貼着装置は、
支持テーブルと押圧体とを有し、該押圧体及び支持テーブルを用いて、熱によって軟化する樹脂で形成された該保護部材を該ウェーハの該表面側に加熱しながら押圧することにより該ウェーハの該表面側に貼り付けて保護部材付きウェーハを形成する保護部材貼着ユニットと、
厚さ測定器を有し、該保護部材付きウェーハにおける該保護部材の厚さを測定する厚さ測定ユニットと、
該厚さ測定ユニットで測定された該保護部材の厚さの情報を、該研削装置に送信するための送信部と、を含み、
該保護部材貼着ユニットは、
支持テーブルが設けられている凹状の下部本体と、
該下部本体の第1開口部の内側に配置され該保護部材を支持する環状板と、
該下部本体に設けられた第1排気部と、
該下部本体の上方に配置された凹状の上部本体と、
該上部本体に設けられた第2排気部及び給気部と、
を有し、
内終端によって規定される第2開口部を有する該環状板の該第2開口部を介して気圧差により該保護部材を該ウェーハに密着させた後、加熱及び押圧により該保護部材を該ウェーハに貼着し、
該研削装置は、
該保護部材付きウェーハを保持するチャックテーブルと、
円柱状のスピンドルと、該スピンドルの下端部に装着された円環状の研削ホイールとを有し、該表面側が該チャックテーブルで保持された該ウェーハの裏面側を研削する研削ユニットと、
該研削ユニットを該チャックテーブルに向かって研削送りする研削送りユニットと、
を含み、
該加工装置は、
プロセッサを有し、該研削送りユニットの動作を制御する制御部を更に備え、
該制御部は、
該厚さ測定ユニットで測定された該保護部材の厚さの情報と、該保護部材付きウェーハの総厚さの情報と、該ウェーハの研削後の目標仕上げ厚さの情報と、が記録される記録部を有し、
該保護部材付きウェーハの総厚さから該保護部材の厚さを減算することにより該ウェーハの厚さを算出すると共に、該研削送りユニットの動作を制御して該ウェーハの該裏面側を研削し、該ウェーハが該目標仕上げ厚さに至るまで該ウェーハを研削することを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側にデバイスを備えるウェーハの表面側に保護部材を貼着した後、ウェーハの裏面側を研削するウェーハの加工方法と、ウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着装置と、保護部材貼着装置及び研削装置を備える加工装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に搭載されるデバイスチップは、例えば、シリコン製のウェーハの表面に設定された複数の分割予定ラインで区画される表面側の各領域にデバイスを形成した後、ウェーハの裏面側の研削及びウェーハの切削を経て製造される。
【0003】
ウェーハを研削する際には、樹脂製の保護テープをウェーハの表面側に貼着することで、ウェーハの破損のリスクを低減し、更に、ウェーハの表面側への研削屑等の付着を防ぐ。保護テープは、例えば、樹脂製の基材層と、樹脂製の接着剤層(糊層)と、から成る。
【0004】
保護テープをウェーハの表面側に貼着するときには、まず、糊層側が表面側と対面する様に、ウェーハ上に保護テープを配置する。次いで、ウェーハの表面側の凹凸に倣って保護テープが密着する様に、基材層側を加熱することで保護テープを軟化させつつ、保護テープを押圧する。但し、この場合、保護テープの厚さは、加熱及び押圧前の厚さに比べて僅かに薄くなる場合がある。
【0005】
しかし、糊層を有する保護テープを使用した場合、保護テープを剥離すると、糊層を構成する接着剤が電極バンプ等に残り、この接着剤の残渣が電極バンプの不良の原因となることがある。そこで、糊層を有しない樹脂製のシート状の保護部材を加熱することで軟化させつつ、保護部材をウェーハの表面側に密着させる技術が考案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、糊層を有しない保護部材の場合も、糊層を有する保護シートと同様に、加熱及び押圧時における加熱温度、押圧時間等の貼着条件に応じて、保護部材の厚さが僅かに薄くなる場合がある。保護部材の厚さが変化すると、例えば、ウェーハを所定の仕上げ厚さに研削する場合に、研削送り量等の研削条件が変化する。
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、加熱及び押圧の前後で保護部材の厚さが変化した場合であっても、保護部材の厚さの変化が研削等の加工条件に及ぼす影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、表面側にデバイスを備えるウェーハを加工するウェーハの加工方法であって、熱によって軟化する樹脂で形成された保護部材を該ウェーハの周囲に配置された環状板で支持し、内終端によって規定される開口部を有する該環状板の該開口部を介して気圧差により該保護部材を該ウェーハに密着させる保護部材密着ステップと、該保護部材密着ステップの後、該保護部材を、該ウェーハの該表面側に、加熱しながら押圧することにより貼着し、保護部材付きウェーハを形成する保護部材付きウェーハ形成ステップと、該保護部材付きウェーハの該保護部材の厚さを測定する厚さ測定ステップと、該保護部材付きウェーハをチャックテーブルの保持面で保持し、該ウェーハが目標仕上げ厚さとなるまで該ウェーハの裏面側を研削する研削ステップと、を備え、該研削ステップでは、該保護部材付きウェーハの総厚さから該厚さ測定ステップで測定した該保護部材の厚さを減算して該ウェーハの厚さを算出すると共に、該ウェーハの該裏面側を研削するウェーハの加工方法が提供される。
【0010】
好ましくは、該保護部材付きウェーハ形成ステップで使用される該保護部材は、熱によって軟化する熱可塑性樹脂を加熱しながら押圧することで形成した枚葉式のシートである。また、好ましくは、ウェーハの加工方法は、該保護部材密着ステップの前に、ペレットを軟化又は溶融させてウェーハよりも大径の該保護部材を形成する保護部材形成ステップを更に備える。
【0011】
本発明の他の態様によれば、表面側にデバイスを備えるウェーハの該表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着装置であって、支持テーブルと押圧体とを有し、該押圧体及び支持テーブルを用いて、熱によって軟化する樹脂で形成された該保護部材を該ウェーハの該表面側に加熱しながら押圧することにより該ウェーハの該表面側に貼着して保護部材付きウェーハを形成する保護部材貼着ユニットと、厚さ測定器を有し、該保護部材付きウェーハにおける該保護部材の厚さを測定する厚さ測定ユニットと、該厚さ測定ユニットで測定された該保護部材の厚さの情報を、該保護部材貼着装置の外部に送信するための送信部と、を備え、該保護部材貼着ユニットは、支持テーブルが設けられている凹状の下部本体と、該下部本体の第1開口部の内側に配置され該保護部材を支持する環状板と、該下部本体に設けられた第1排気部と、該下部本体の上方に配置された凹状の上部本体と、該上部本体に設けられた第2排気部及び給気部と、を有し、内終端によって規定される第2開口部を有する該環状板の該第2開口部を介して気圧差により該保護部材を該ウェーハに密着させた後、加熱及び押圧により該保護部材を該ウェーハに貼着する保護部材貼着装置が提供される。
【0012】
本発明の更なる他の態様によれば、表面側にデバイスを備えるウェーハの該表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着装置と、該表面側に保護部材が貼着された該ウェーハを研削する研削装置と、を備える加工装置であって、該保護部材貼着装置は、支持テーブルと押圧体とを有し、該押圧体及び支持テーブルを用いて、熱によって軟化する樹脂で形成された保護部材を該ウェーハの該表面側に加熱しながら押圧することにより該ウェーハの該表面側に貼り付けて保護部材付きウェーハを形成する保護部材貼着ユニットと、厚さ測定器を有し、該保護部材付きウェーハにおける該保護部材の厚さを測定する厚さ測定ユニットと、該厚さ測定ユニットで測定された該保護部材の厚さの情報を、該研削装置に送信するための送信部と、を含み、該保護部材貼着ユニットは、支持テーブルが設けられている凹状の下部本体と、該下部本体の第1開口部の内側に配置され該保護部材を支持する環状板と、該下部本体に設けられた第1排気部と、該下部本体の上方に配置された凹状の上部本体と、該上部本体に設けられた第2排気部及び給気部と、を有し、内終端によって規定される第2開口部を有する該環状板の該第2開口部を介して気圧差により該保護部材を該ウェーハに密着させた後、加熱及び押圧により該保護部材を該ウェーハに貼着し、該研削装置は、該保護部材付きウェーハを保持するチャックテーブルと、円柱状のスピンドルと、該スピンドルの下端部に装着された円環状の研削ホイールとを有し、該表面側が該チャックテーブルで保持された該ウェーハの裏面側を研削する研削ユニットと、該研削ユニットを該チャックテーブルに向かって研削送りする研削送りユニットと、を含み、該加工装置は、プロセッサを有し、該研削送りユニットの動作を制御する制御部を更に備え、該制御部は、該厚さ測定ユニットで測定された該保護部材の厚さの情報と、該保護部材付きウェーハの総厚さの情報と、該ウェーハの研削後の目標仕上げ厚さの情報と、が記録される記録部を有し、該保護部材付きウェーハの総厚さから該保護部材の厚さを減算することにより該ウェーハの厚さを算出すると共に、該研削送りユニットの動作を制御して該ウェーハの該裏面側を研削し、該ウェーハが該目標仕上げ厚さに至るまで該ウェーハを研削する加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係るウェーハの加工方法は、保護部材付きウェーハ形成ステップと、保護部材付きウェーハの保護部材の厚さを測定する厚さ測定ステップと、ウェーハの裏面側を研削する研削ステップと、を備える。また、研削ステップでは、保護部材付きウェーハの総厚さから厚さ測定ステップで測定した保護部材の厚さを減算してウェーハの厚さを算出する。
【0014】
それゆえ、加熱及び押圧の前後で保護部材の厚さが変化した場合であっても、保護部材の厚さの変化が加工条件に及ぼす影響を低減できる。つまり、保護部材の厚さが変化した場合であっても、目標仕上げ厚さとなる様に加工条件を正しく設定した上で、ウェーハを加工できる。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る保護部材貼着装置は、熱によって軟化する樹脂で形成された保護部材を、加熱しながら押圧することにより該ウェーハの該表面側に貼着して保護部材付きウェーハを形成する保護部材貼着ユニットと、保護部材付きウェーハにおける保護部材の厚さを測定する厚さ測定ユニットと、厚さ測定ユニットで測定された保護部材の厚さを、保護部材貼着装置の外部に送信するための送信部と、を備える。
【0016】
それゆえ、加熱及び押圧の前後で保護部材の厚さが変化した場合であっても、変化後の保護部材の厚さの情報を送信部から、保護部材貼着装置の外部に送信できる。当該保護部材の厚さの情報を利用してウェーハを加工すれば、保護部材の厚さの変化が加工条件に及ぼす影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】保護部材貼着装置等の概要を示すブロック図である。
【
図3】
図3(A)は保護部材形成ユニット等の斜視図であり、
図3(B)は1枚の保護部材の斜視図である。
【
図4】保護部材貼着ユニット等の一部断面側面図である。
【
図5】気圧差を利用して保護部材をウェーハの表面側に密着させる様子を示す図である。
【
図6】保護部材付きウェーハ形成ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、第1の実施形態で加工対象となる円盤状のウェーハ11について説明する。
図1は、ウェーハ11の斜視図である。
【0019】
ウェーハ11は、Si(シリコン)、SiC(炭化シリコン)、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)等の半導体材料で形成されている。ウェーハ11の表面11aには、複数の分割予定ライン13が格子状に設定されている。
【0020】
複数の分割予定ライン13で区画された表面11a側の各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。各デバイス15には、複数のバンプ17が設けられている。
【0021】
複数のバンプ17の各々は、金、銀、銅等の金属材料で形成されている。各バンプ17は、デバイス15と電気的に接続されており、デバイス15の上面よりも、例えば、約100μmだけ突出している。
【0022】
複数のデバイス15が配置されているウェーハ11の中央領域は、デバイス領域19aである。デバイス領域19aの外周側は、デバイス15、バンプ17等を有さず、且つ、デバイス領域19aに比べて平坦な外周余剰領域19bで囲まれている。
【0023】
ウェーハ11からデバイスチップを製造する際には、ウェーハ11の裏面11b側の研削に先立ち、ウェーハ11の表面11a側に、保護部材貼着装置10(
図2参照)を用いて保護部材23(
図3(B)参照)を貼着する。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る保護部材貼着装置10等の概要を示すブロック図である。まず、
図3(A)、
図3(B)及び
図4、並びに、
図6から
図8を用いて保護部材貼着装置10の構成について説明する。
【0025】
保護部材貼着装置10は、糊層を有しない樹脂製のシート状の保護部材23を形成するための保護部材形成ユニット12を備える。
図3(A)は、保護部材形成ユニット12等の斜視図である。
【0026】
保護部材形成ユニット12は、ステンレス鋼等の金属で形成され、略平坦な上面を備えるテーブル14を有する。テーブル14の上方には、ステンレス鋼等の金属で形成された略円柱形状の押圧体16が配置されている。
【0027】
押圧体16の底面は、略平坦である。また、押圧体16の内部には、電気抵抗加熱式の発熱体(不図示)が設けられている。押圧体16の上部には、押圧体16を上下方向に移動させるボールネジ式の上下移動機構(不図示)が連結されている。
【0028】
保護部材形成ユニット12を用いて保護部材23を形成する場合には、まず、熱によって軟化する熱可塑性樹脂で形成されているペレット21を、テーブル14の上面に配置する。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、又は、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系樹脂である。
【0029】
本実施形態では、熱可塑性樹脂の材料に応じて押圧体16の温度を所定の温度に調節した上で、押圧体16でペレット21を加熱しながらテーブル14に押圧する。このとき、ペレット21は、軟化点を超える所定の温度(例えば、ペレット21がポリプロピレンで形成されている場合、160℃以上180℃以下の所定温度)に加熱される。
【0030】
これにより、ペレット21を軟化又は溶融させて略円形に成形し、1回の加熱及び押圧プロセスで1枚の保護部材23を形成する。この様に、本実施形態の保護部材23は、枚葉式の樹脂シートである。
図3(B)は、1枚の保護部材23の斜視図である。
【0031】
保護部材23は、ウェーハ11の径よりも大きい所定の径を有する。また、保護部材23は、形成時の条件に応じて若干のばらつきが生じるが、例えば、80μm以上100μm以下の所定の厚さを有する。
【0032】
本実施形態では、保護部材貼着装置10に設けられた保護部材形成ユニット12を用いて、ペレット21から保護部材23を形成する。それゆえ、長尺の保護部材がロール状に巻かれたロール体から保護部材23を取り出す必要が無い。
【0033】
一般的に、ロール体の作成には、比較的広い工業用クリーンルームが必要とされるが、本実施形態ではロール体を用いないので、ペレット21の押圧時に使用する比較的狭い空間の空気清浄度を制御すれば足りる。それゆえ、ロール体を用いる場合に比べて、保護部材23の1枚当たりの製造コストを低減できる。
【0034】
次に、保護部材貼着装置10に設けられた保護部材貼着ユニット20を用いて、ウェーハ11の表面11a側に保護部材23を貼着する。
図4は、保護部材貼着ユニット20等の一部断面側面図である。保護部材貼着ユニット20は、ステンレス鋼等の金属で形成され、上方に開口部を有する凹状の下部本体20aを有する。
【0035】
下部本体20aの開口部の内側には、保護部材23を支持可能な環状板20bが設けられている。環状板20bの下方には、円盤状のチャックテーブル(支持テーブル)22が設けられている。チャックテーブル22は、金属製の枠体24aを有する。
【0036】
枠体24aの上部には、多孔質部材で形成された円盤状のポーラス板24bが固定されている。ポーラス板24bには、ポーラス板24bの上面を中心とする環状溝24cが形成されている。環状溝24cは、ウェーハ11の径よりも大きな所定の径を有し、保護部材23を切るときに使用される切り刃34c(
図7参照)の逃げ溝として機能する。
【0037】
ポーラス板24bは、枠体24aに形成されている流路24d等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続している。枠体24a及びポーラス板24bの上面は、面一となり略平坦な保持面22aを構成している。
【0038】
下部本体20aの底部には、排気部26が設けられている。排気部26は、一端が下部本体20a内の空間に接続された円筒状の排気路26aを有する。排気路26aの他端には、エジェクタ等の吸引源26bが接続されている。
【0039】
下部本体20aの上方には、下方に開口部を有する凹状の上部本体20cが配置される。上部本体20cは、下部本体20aの開口部と略同じ形状の開口部を有する。上部本体20cは、下部本体20aに対して相対的に昇降可能であり、各開口部が重なる様に下部本体20a上に上部本体20cを配置すると、外部から遮断された空間が形成される。
【0040】
上部本体20cの頂部には、排気部28が設けられている。排気部28は、一端が上部本体20c内の空間に接続された円筒状の排気路28aを有する。排気路28aの他端には、エジェクタ等の吸引源28bが接続されている。
【0041】
上部本体20cの頂部のうち排気部28と異なる位置には、給気部30が設けられている。給気部30は、一端が上部本体20c内の空間に接続された円筒状の給気路30aを有する。また、給気路30aには、電磁弁30bが設けられている。
【0042】
なお、
図4では省略しているが、上部本体20cの凹部には円盤状の押圧体32(
図6参照)が配置されている。押圧体32はステンレス等の金属で形成されており、略平坦な下面32aを有する。
【0043】
押圧体32の内部には、電気抵抗加熱式の発熱体32bが設けられている。押圧体32の上部には、押圧体32を上下方向に移動させるボールネジ式の上下移動機構(不図示)が連結されている。
【0044】
下部本体20aの外側には、切断機構34(
図7参照)が配置されている。切断機構34は、不図示の移動機構により、下部本体20aの上方に移動可能である。切断機構34は、保持面22aと略平行に配置された棒状の腕部34aを有する。
【0045】
腕部34aの一端と他端との間には、保持面22aに直交する向きと略平行に、モーター等の回転駆動源(不図示)の出力軸34bが配置されており、この出力軸34bの下部は腕部34aに連結されている。また、腕部34aの一端部には、切り刃34cが連結されている。
【0046】
保護部材貼着ユニット20の近傍には、保護部材23の厚さを測定するための厚さ測定器36aを有する厚さ測定ユニット36(
図8参照)が配置されている。厚さ測定器36aは、例えば、分光干渉式のレーザー変位計である。
【0047】
厚さ測定器36aで測定された保護部材23の厚さの情報は、送信部38(
図2参照)により保護部材貼着装置10の外部へ送信される。送信部38は、無線LAN(Local Area Network)、有線LAN等を介して保護部材23の厚さの情報を送信する。
【0048】
例えば、無線LANが使用される場合、送信部38は、信号源、変調回路、増幅器、アンテナ等を有する送信機であり、保護部材23の厚さの情報を、後述する研削装置50の受信部90へ送信する。
【0049】
送信部38等の動作は、制御部40により制御される。制御部40は、送信部38に加えて、保護部材形成ユニット12、保護部材貼着ユニット20、厚さ測定ユニット36等の動作を制御する。
【0050】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0051】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従いプロセッサ等を動作させることによって、制御部40の機能が実現される。次に、
図9を参照し、研削装置50について説明する。
【0052】
研削装置50は、円盤状のチャックテーブル52を有する。チャックテーブル52は、セラミックス等で形成された円盤状の枠体を含む。枠体の上部には、円盤状の凹部が形成されており、この凹部には多孔質部材で形成された略円盤状のポーラス板が固定されている。
【0053】
ポーラス板は、枠体に形成されている流路(不図示)等を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引源を動作させるとポーラス板の上面には負圧が生じる。枠体の上面と、ポーラス板の上面とは、略面一であり、ウェーハ11等を吸引して保持する保持面52aとして機能する。
【0054】
チャックテーブル52の下方にはモーター等を有する回転駆動源(不図示)が設けられている。回転駆動源の出力軸は、チャックテーブル52の下部に連結されており、回転駆動源を動作させれば、チャックテーブル52は、出力軸を中心として回転する。
【0055】
チャックテーブル52の上方には、研削送りユニット54が配置されている。研削送りユニット54は、基台(不図示)に対して略鉛直に設けられた角柱状のコラム(不図示)に設けられている。
【0056】
研削送りユニット54は、コラムの一側面に固定され鉛直方向に概ね平行な一対のガイドレール56を有する。一対のガイドレール56には、移動プレート58がスライド可能に取り付けられている。
【0057】
移動プレート58の裏面側(コラム側)には、ナット部60が設けられている。ナット部60には、一対のガイドレール56と略平行に配置されたボールネジ62が回転可能な態様で連結している。
【0058】
ボールネジ62の上端部には、パルスモーター64が連結されている。パルスモーター64でボールネジ62を回転させれば、移動プレート58は、ガイドレール56に沿って鉛直方向(上下方向)に移動する。
【0059】
移動プレート58の表面側には、研削ユニット68が固定されている。研削ユニット68は、移動プレート58に固定されている円筒状の保持部材70を有する。保持部材70の内部には、鉛直方向と略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング72が設けられている。
【0060】
スピンドルハウジング72内には、鉛直方向と略平行に配置された円柱状のスピンドル74の一部が回転可能な状態で収容されている。スピンドル74の上端部には、モーター(不図示)の出力軸が連結されている。
【0061】
スピンドル74の下端部は、保持部材70の下面よりも下方に突出しており、スピンドル74の下端部には、円盤状のホイールマウント76の上面が固定されている。ホイールマウント76の下面には、円環状の研削ホイール78が装着されている。
【0062】
研削ホイール78は、ステンレス鋼等の金属材料で形成された円環状のホイール基台78aと、ホイール基台78aの下面側に装着された複数の研削砥石78bと、を有する。複数の研削砥石78bは、ホイール基台78aの下面の円周に沿って、隣り合う研削砥石78b同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。
【0063】
各研削砥石78bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。なお、結合材や砥粒の材料に特段の制限はなく、研削砥石78bの仕様に応じて適宜選択できる。
【0064】
保持面52aの上方には、研削砥石78b及びウェーハ11の接触領域に対して純水等の研削水80を供給するためのノズル82が配置される。また、保持面52aの外周部のうち研削ユニット68から離れた領域には、研削中のウェーハ11等の厚さを測定するための厚さ測定器86が配置されている。
【0065】
厚さ測定器86は、先端部が保持面52aに接触し、保持面52aの高さを測定するための第1のハイトゲージ86aを有する。また、厚さ測定器86は、保持面52aで保持されたウェーハ11の裏面11bに先端部が接触し、裏面11bの高さを測定するための第2のハイトゲージ86bを有する。
【0066】
保持面52aの高さと、裏面11bの高さと、の差を算出することにより、研削中におけるウェーハ11及び保護部材23の合計の厚さ(即ち、総厚さ)が測定される。チャックテーブル52、研削送りユニット54、研削ユニット68等の動作は、制御部88により制御される。
【0067】
制御部88は、例えば、CPUに代表されるプロセッサ(処理装置)88aと、DRAM、SRAM、ROM等の主記憶装置(不図示)と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置88bと、を含むコンピュータによって構成されている。
【0068】
補助記憶装置88bには、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従いプロセッサ88a等を動作させることによって、制御部88の機能が実現される。補助記憶装置88bは、所定の記録領域を有する記録部88cを含む。
【0069】
記録部88cには、厚さ測定ユニット36で測定された保護部材23の厚さと、保護部材23付きウェーハ11の総厚さと、ウェーハ11の研削後の目標仕上げ厚さと、の各情報が記録される。
【0070】
厚さ測定ユニット36で測定された保護部材23の厚さの情報は、保護部材貼着装置10の送信部38から送信され、研削装置50の受信部90により受信される。例えば、無線LANが使用される場合、受信部90は、アンテナ、増幅器、復調回路等を有する受信機である。
【0071】
次に、
図3(A)から
図10を参照し、保護部材貼着装置10及び研削装置50を用いてウェーハ11を加工するウェーハ11の加工方法について説明する。
図10は、ウェーハ11の加工方法のフロー図である。
【0072】
まず、
図3(A)に示す保護部材形成ユニット12を用いて、熱可塑性樹脂で形成されたペレット21を加熱及び押圧することで、ペレット21を軟化又は溶融させて略円形に成形し、1枚のシート状の保護部材23(
図3(B)参照)を形成する(保護部材形成ステップS10)。
【0073】
保護部材形成ステップS10の後、保護部材貼着ユニット20を用いて、保護部材23をウェーハ11の表面11a側に密着させる(保護部材密着ステップS20)。保護部材密着ステップS20では、まず、ウェーハ11の裏面11b側をチャックテーブル22で支持し、保持面22aで裏面11b側を吸引保持する。
【0074】
そして、複数の吸着パッドを有するシート搬送装置(不図示)を用いて保護部材23を搬送し、環状板20b上に載置する。このとき、保護部材23は、
図4に示す様に、表面11aと接触しない態様で環状板20bに支持される。
【0075】
例えば、保護部材23の外周部を押え部材(不図示)で環状板20bへ押え付けることで、保護部材23は、表面11aと接触しない態様で支持される。なお、押え付け部材を用いることに代えて、環状板20bの内周端によって規定される径がウェーハ11よりも僅かに大きくなる様に、環状板20bの開口を小さくしてもよい。
【0076】
次いで、下部本体20a上に上部本体20cを配置して外部から遮断された空間を形成した後、吸引源26b、28bをそれぞれ動作させる。これにより、保護部材23及び下部本体20aで構成される第1空間20dと、保護部材23及び上部本体20cで構成される第2空間20eと、を各々1000Pa程度に減圧する。
【0077】
減圧後、吸引源26b、28bの動作を停止し、第1空間20dを1000Pa程度にした状態のまま、電磁弁30bを開状態とすることで、上部本体20cを大気開放する。これにより、上部本体20cの凹部内の気圧が急上昇して大気圧となり、気圧差により保護部材23が表面11a側へ押圧される。
【0078】
保護部材23は、表面11a側の凹凸形状に倣う様に変形し、表面11a側に密着する(保護部材密着ステップS20)。
図5は、気圧差を利用して保護部材23を表面11a側に密着させる様子を示す図である。
【0079】
保護部材密着ステップS20の後、発熱体32bを加熱させた状態で押圧体32を下方へ移動させ、下面32aで保護部材23を表面11a側に押圧する(
図6参照)。
【0080】
例えば、押圧体32を50℃以上120℃以下の所定の温度とし、0.2MPa以上0.8MPa以下の所定の押圧圧力で、30秒程度押圧する。これにより、表面11a側に保護部材23を貼着し、保護部材23付きウェーハ11を形成する(保護部材付きウェーハ形成ステップS30)。
【0081】
保護部材付きウェーハ形成ステップS30では、保護部材23を加熱により軟化させるので、加熱しない場合に比べて、保護部材23を表面11a側に更に密着させることができる。押圧体32が退避した後、保護部材23付きウェーハ11は冷却される。
【0082】
保護部材23の厚さは、保護部材付きウェーハ形成ステップS30前に比べて、5%以上20%以下(例えば、10%程度)減少することがある。保護部材付きウェーハ形成ステップS30の後、
図7に示す様に、切断機構34を用いて保護部材23をウェーハ11と略同じ径に切り取る(保護部材切り取りステップS40)。
【0083】
保護部材切り取りステップS40では、保護部材23に所定の径の切れ目23a(
図8参照)を形成することで、保護部材23を円形に切断する。保護部材切り取りステップS40の後、厚さ測定ユニット36を用いて、保護部材23付きウェーハ11における保護部材23の厚さを測定する(厚さ測定ステップS50)。厚さ測定ステップS50では、保護部材23の1箇所以上の厚さを測定する。
【0084】
本実施形態では、厚さ測定ユニット36で保護部材23の複数箇所の厚さを測定した後、制御部40が、当該複数個所の厚さの算術平均を算出し、平均の厚さを保護部材23の代表厚さとする。なお、代表厚さの算出方法は、算術平均に限定されるものではない。保護部材23の厚さの情報は、送信部38及び受信部90を介して研削装置50の記録部88cに記録される。
【0085】
厚さ測定ステップS50を行うことで、保護部材付きウェーハ形成ステップS30の後、且つ、研削ステップS60の前における保護部材23の厚さの情報を取得できる。この様な保護部材23の厚さの情報は、デバイスチップの製造工程において全工程を追跡し、不良発生の原因等を解析する場合に有用な情報となり得る。
【0086】
厚さ測定ステップS50の後、ウェーハ搬送ユニット(不図示)を用いて、保護部材23付きウェーハ11を研削装置50へ搬送する。保護部材23付きウェーハ11は、裏面11bが上を向く態様で、チャックテーブル52の保持面52aで吸引保持される。
【0087】
この状態で、厚さ測定器86で保護部材23付きウェーハ11の総厚さを測定しながら、研削送りユニット54で研削ユニット68を保持面52aに向かって研削送りし、ウェーハ11が目標仕上げ厚さとなるまで裏面11b側を研削する(研削ステップS60)。
【0088】
特に、研削ステップS60では、制御部88が、保護部材23付きウェーハ11の総厚さから、厚さ測定ステップS50で測定した保護部材23の代表厚さを減算して、ウェーハ11の厚さをリアルタイムで算出すると共に、目標仕上げ厚さとなる様に研削送り量を調整する。
【0089】
本実施形態では、保護部材付きウェーハ形成ステップS30の前に比べて、保護部材23の厚さが変化した場合であっても、変化後の保護部材23の厚さを測定した上で研削するので、研削ステップS60では、変化後の保護部材23の厚さに応じて研削送り量を調整できる。それゆえ、保護部材23の厚さの変化が研削(加工)条件に及ぼす影響を低減できる。
【0090】
ところで、第1の実施形態の保護部材密着ステップS20では、ウェーハ11上に保護部材23を配置したが、保護部材23上にウェーハ11を配置してもよい。また、チャックテーブル22にも発熱体(不図示)が設けられてよく、保護部材付きウェーハ形成ステップS30では、ウェーハ11及び保護部材23の少なくとも一方を加熱した状態で、ウェーハ11を下方へ押圧してもよい。
【0091】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、保護部材貼着装置110と、研削装置150と、を備える加工装置92を用いて、上記のS10からS60を行う。
図11は、加工装置92の概要を示すブロック図である。
【0092】
保護部材貼着装置110は、送信部38及び制御部40を除いた保護部材貼着装置10に対応し、研削装置150は、受信部90及び制御部88を除いた研削装置50に対応する。加工装置92は、保護部材貼着装置10の制御部40と、研削装置50の制御部88と、の両方の機能を有する制御部94を有する。
【0093】
制御部94は、例えば、CPUに代表されるプロセッサ(処理装置)94aと、DRAM、SRAM、ROM等の主記憶装置(不図示)と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置94bと、を含むコンピュータによって構成されている。
【0094】
補助記憶装置94bは、記録部94cを含む。記録部94cは、第1の実施形態における記録部88cに対応する。制御部94は、厚さ測定ユニット36で測定した保護部材23の厚さ(例えば、代表厚さ)を記録部98cに記録する。
【0095】
また、制御部94は、保護部材23付きウェーハ11の総厚さから保護部材23の代表厚さを減算して、ウェーハ11の厚さをリアルタイムで算出すると共に、ウェーハ11が目標仕上げ厚さとなる様に研削送り量を調整する。それゆえ、第1の実施形態と同様に、保護部材23の厚さの変化が研削(加工)条件に及ぼす影響を低減できる。
【0096】
次に、第3の実施形態について述べる。第1及び第2の実施形態では、保護部材形成ユニット12を使用することにより、熱可塑性樹脂で形成され且つ糊層を有しないシート状の保護部材23を保護部材貼着装置10内で作成する。
【0097】
しかし、保護部材貼着装置10は、必ずしも保護部材形成ユニット12を備えていなくてもよい。この場合、熱可塑性樹脂で形成された基材層と、基材層上において表面11aに対応する略円形の領域に設けられた糊層又は基材層上の外周部に設けられた糊層と、を有するシート状の保護部材(不図示)が使用される。
【0098】
第3の実施形態においてウェーハ11を加工する際には、保護部材形成ステップS10を省略し、保護部材密着ステップS20では、糊層が表面11aと対面する様に、環状板20bに保護部材の縁部を配置する。次いで、気圧差を利用して、表面11a側に糊層を密着させる。なお、S30からS60は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0099】
但し、保護部材付きウェーハ形成ステップS30では、押圧体32に代えて、内部に抵抗加熱式の発熱体を有する円柱状のローラーを用いる。例えば、ローラーを50℃以上120℃以下の所定の温度とし、ローラーの側面を保護部材23に押し当てた状態で、5秒間程、表面11a側全体に渡ってローラーを転がして移動させる。
【0100】
ローラーを退避させた後、保護部材23付きウェーハ11は冷却されるが、冷却後の保護部材23は、保護部材付きウェーハ形成ステップS30前に比べて、5%以上20%以下(例えば、10%程度)、厚さが減少することがある。
【0101】
しかし、第3の実施形態でも、厚さ測定ステップS50を行い、保護部材23付きウェーハ11の保護部材23の厚さを測定する。そして、後続する研削ステップS60では、研削装置50の制御部88が、保護部材23付きウェーハ11の総厚さから保護部材の代表厚さを減算して、ウェーハ11の厚さをリアルタイムで算出すると共に、目標仕上げ厚さとなる様に研削送り量を調整する。
【0102】
それゆえ、第1の実施形態と同様に、保護部材付きウェーハ形成ステップS30に起因する保護部材の厚さの変化が研削(加工)条件に及ぼす影響を低減できる。その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0103】
10,110:保護部材貼着装置
11:ウェーハ、11a:表面、11b:裏面
12:保護部材形成ユニット
13:分割予定ライン
14:テーブル
15:デバイス
16:押圧体
17:バンプ
19a:デバイス領域、19b:外周余剰領域
20:保護部材貼着ユニット、20a:下部本体、20b:環状板、20c:上部本体、20d:第1空間、20e:第2空間
21:ペレット
22:チャックテーブル、22a:保持面
23:保護部材、23a:切れ目
24a:枠体、24b:ポーラス板、24c:環状溝、24d:流路
26:排気部、26a:排気路、26b:吸引源
28:排気部、28a:排気路、28b:吸引源
30:給気部、30a:給気路、30b:電磁弁
32:押圧体、32a:下面、32b:発熱体
34:切断機構、34a:腕部、34b:出力軸、34c:切り刃
36:厚さ測定ユニット、36a:厚さ測定器
38:送信部
40:制御部
50,150:研削装置、52:チャックテーブル、52a:保持面
54:研削送りユニット、56:ガイドレール、58:移動プレート、60:ナット部
62:ボールネジ、64:パルスモーター、68:研削ユニット
70:保持部材、72:スピンドルハウジング、74:スピンドル、76:ホイールマウント、78:研削ホイール、78a:ホイール基台、78b:研削砥石
80:研削水、82:ノズル
86:厚さ測定器、86a:第1のハイトゲージ、86b:第2のハイトゲージ
88:制御部、88a:プロセッサ、88b:補助記憶装置、88c:記録部
90:受信部、
92:加工装置
94:制御部、94a:プロセッサ、94b:補助記憶装置、94c:記録部