(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20240813BHJP
B24B 1/04 20060101ALI20240813BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B24B27/06 M
B24B1/04 C
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020139870
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-081264(JP,A)
【文献】特開2017-143095(JP,A)
【文献】特開2008-085271(JP,A)
【文献】米国特許第05655956(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-3/60
B24B9/00-39/06
H01L21/301;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物を切削する切削ブレード、及び、該切削ブレードの径方向に該切削ブレードを超音波振動させる超音波振動子を有する切削ユニットと、を備える切削装置を用いて、該被加工物を切削する切削方法であって、
該被加工物を該チャックテーブルで保持する保持段階と、
該被加工物に設定された複数の切削ラインのうち同一の切削ライン上において、超音波振動させた該切削ブレードで該被加工物を切削する超音波切削と、超音波振動させていない該切削ブレードで該被加工物を切削する通常切削と、を施す切削段階と、
を備え
、
該切削段階では、該同一の切削ラインの長手方向における第1位置から所定位置までの第1領域では該超音波切削を施し、該同一の切削ラインの該長手方向において該第1領域とは異なる第2領域であって該所定位置から第2位置までの該第2領域では該通常切削を施すことを特徴とする切削方法。
【請求項2】
該切削段階では、
該同一の切削ライ
ンの該長手方向における該第1位置から該所定位置までの該第1領域に対して該超音波切削を施した後、超音波振動を止めて、該切削ブレードを割り出し送り方向へ移動させることなく、該同一の切削ライン
の該長手方向において該第1領域とは異なる該第2領域であって該超音波切削が最後に施された
該所定位置から
該第2位置までの該第2領域では、該通常切削を施すことを特徴とする請求項1に記載の切削方法。
【請求項3】
該切削段階において、該超音波切削及び該通常切削で形成される切削溝は同じ深さを有することを特徴とする請求項1に記載の切削方法。
【請求項4】
該被加工物は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子を有する切削ユニットを備える切削装置を用いて被加工物を切削する切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状の被加工物を、当該被加工物の表面側に格子状に設定された分割予定ラインに沿って切削する場合、通常、切削装置が用いられる。切削装置は、切削ユニットと、切削ユニットの下方に配置されたチャックテーブルと、を備える。
【0003】
切削ユニットは、円柱状のスピンドルを含む。スピンドルの一端部には、円環状の切り刃を有する切削ブレードが装着され、スピンドルの他端部には、モータ等の回転駆動源が連結される。
【0004】
被加工物を切削する場合には、まず、表面側が上方に露出する様に、被加工物の裏面側をチャックテーブルの保持面で吸引保持する。そして、高速に回転させた切削ブレードを、各分割予定ラインに沿って被加工物に切り込むことで、被加工物は、複数のチップに分割される。
【0005】
被加工物が、脆性硬質材料や高硬度の材料で形成されている場合、被加工物の切削は比較的困難となる。そこで、切削ブレードに超音波振動を付与することにより切削ブレードをその径方向に振動させつつ、被加工物を切削することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
切削ブレードに超音波振動を付与すると被加工物を切削し易くなるが、その分、ブレードの摩耗が促進されるので、切削ブレードの寿命が短くなり、切削ブレードの交換頻度が増加するという問題がある。
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、切削ブレードに超音波振動を付与して被加工物を切削し、且つ、切削ブレードの過度な磨耗を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物を切削する切削ブレード、及び、該切削ブレードの径方向に該切削ブレードを超音波振動させる超音波振動子を有する切削ユニットと、を備える切削装置を用いて、該被加工物を切削する切削方法であって、該被加工物を該チャックテーブルで保持する保持段階と、該被加工物に設定された複数の切削ラインのうち同一の切削ライン上において、超音波振動させた該切削ブレードで該被加工物を切削する超音波切削と、超音波振動させていない該切削ブレードで該被加工物を切削する通常切削と、を施す切削段階と、を備え、該切削段階では、該同一の切削ラインの長手方向における第1位置から所定位置までの第1領域では該超音波切削を施し、該同一の切削ラインの該長手方向において該第1領域とは異なる第2領域であって該所定位置から第2位置までの該第2領域では該通常切削を施す切削方法が提供される。
【0010】
好ましくは、該切削段階では、該同一の切削ラインの該長手方向における該第1位置から該所定位置までの該第1領域に対して該超音波切削を施した後、超音波振動を止めて、該切削ブレードを割り出し送り方向へ移動させることなく、該同一の切削ラインの該長手方向において該第1領域とは異なる該第2領域であって該超音波切削が最後に施された該所定位置から該第2位置までの該第2領域では、該通常切削を施す。また、好ましくは、該切削段階において、該超音波切削及び該通常切削で形成される切削溝は同じ深さを有する。また、好ましくは、該被加工物は、ガラス基板である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る切削方法の切削段階では、被加工物に設定された複数の切削ラインのうち同一の切削ライン上において、超音波振動させた切削ブレードで被加工物を切削する超音波切削と、超音波振動させていない当該切削ブレードで被加工物を切削する通常切削と、を施す。それゆえ、超音波切削では、切削ブレードの適度な摩耗促進を維持しながら被加工物を切削し、且つ、通常切削では、切削ブレードの過度な摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】切削装置におけるチャックテーブル等を示す図である。
【
図5】実施例における切削方法での切削順序を示す図である。
【
図6】実施例における切削方法で切削した後のガラス基板の画像である。
【
図7】
図7(A)は第1の比較例に係る切削方法で切削した後のガラス基板の画像であり、
図7(B)は第2の比較例に係る切削方法で切削した後のガラス基板の画像である。
【
図8】第2の実施形態に係る切削方法での切削順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、切削装置2の斜視図であり、
図2は、切削装置2の一部断面側面図であり、
図3は、切削装置2におけるチャックテーブル40等を示す図である。
【0014】
切削装置2は、被加工物11を切削する切削ユニット4を備える。切削ユニット4は、Y軸方向(割り出し送り方向)に略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング6を有する。スピンドルハウジング6の内部には、円柱状のスピンドル8の一部が、回転可能な態様で収容されている(
図2参照)。
【0015】
スピンドル8の一端部には、ネジ穴が形成されている。このネジ穴に固定されるネジ10により、スピンドル8の一端部には、切削ブレード12が装着される。切削ブレード12は、外周部に円環状の切り刃12aを有する。切り刃12aは、砥粒と、砥粒を固定するボンド材と、で構成されている。
【0016】
スピンドル8の他端部には、円柱状のモータ装着部8aが設けられている。モータ装着部8aには、スピンドル8を回転させるモータ14のロータ14aが連結されている。ロータ14aは、例えば、永久磁石を有する。
【0017】
ロータ14aの外周側には、スピンドルハウジング6に固定されたステーターコイル14bが離間して配置されている。後述する交流電源32から、制御回路32aを介して、ステーターコイル14bに交流電力が供給されると、ロータ14aが回転する。
【0018】
なお、制御回路32aは、ステーターコイル14bへ供給する電流を調整する。制御回路32aの動作は、切削装置2の制御ユニット(不図示)により制御される。モータ14のモータ装着部8aとは反対側には、切削ブレード12に超音波振動を付与する超音波振動子16が連結されている。
【0019】
超音波振動子16は、スピンドル8の軸方向に分極した環状の圧電素子18を有する。圧電素子18は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸リチウム等の圧電セラミックスで形成されている。圧電素子18の両側の分極面には、それぞれ環状の電極板20,22が固定されている。
【0020】
超音波振動子16のモータ14とは反対側には、ロータリートランス24が連結されている。ロータリートランス24は、円柱状の受電部26を有する。受電部26は、超音波振動子16を介してスピンドル8に連結されているロータリーコア26aと、ロータリーコア26aの外周部に巻回された受電コイル26bと、を含む。
【0021】
受電部26の外側には、受電部26を囲む様に環状の給電部28が離間して配置されている。給電部28は、受電コイル26bの外周側に配置された環状のステーターコア28aと、ステーターコア28aの内周側面に配置された給電コイル28bと、を含む。
【0022】
給電コイル28bには、交流電源32から電圧周波数調整ユニット34を介して電力が供給される。電圧周波数調整ユニット34は、例えば、ファンクションジェネレータであり、その動作は、切削装置2の制御ユニット(不図示)により制御される。
【0023】
交流電源32及び電圧周波数調整ユニット34は、所定の周波数及び所定の電圧で、交流電力を給電部28に供給する電力供給ユニット36を構成する。給電コイル28bに電力が供給されると、受電コイル26bには非接触で交流電圧が印加される。
【0024】
受電コイル26bの一端には、電極板20が接続され、受電コイル26bの他端には、電極板22が接続されているので、受電コイル26bに印加された交流電圧は、電極板20,22に、印加される。
【0025】
電極板20,22に、超音波の周波数の交流電圧を印加すると、超音波振動子16は、スピンドル8の軸方向に超音波の周波数で振動する。スピンドル8の軸方向の振動は、スピンドル8の一端部で切削ブレード12の径方向12bの振動に変換され、切削ブレード12は、その径方向12bにおいて超音波の周波数で振動する、即ち、超音波振動する。
【0026】
切削ユニット4の下方には、チャックテーブル40が配置されている。チャックテーブル40は、円盤状の枠体42を有する(
図3参照)。枠体42の上部には、円盤状の凹部42aが形成されており、凹部42aには、多孔質セラミックスで形成された円盤状のポーラス板44が固定されている。
【0027】
ポーラス板44の上面と、枠体42の上面とは、略面一となっており、チャックテーブル40の保持面40aを構成する。凹部42aの中央部には、流路42bの一端が接続されており、この流路42bの他端には、エジェクタ等の吸引源46が接続されている。
【0028】
また、流路42bの一端とその他端との間には、電磁弁48が設けられている。吸引源46で発生した負圧は、電磁弁48が開状態であるとき、流路42bを経てポーラス板44へ伝達し、ポーラス板44の上面には、負圧が発生する。
【0029】
ここで、保持面40aで保持する被加工物11について説明する。
図1に示す様に、円盤状の被加工物11は、シリコン等の半導体ウェーハで形成されており、被加工物11の表面11a側には、格子状に複数の分割予定ライン13(切削ライン)が設定されている。
【0030】
複数の分割予定ライン13で区画される各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。但し、被加工物11の種類、材質、大きさ、形状、構造等に制限はない。
【0031】
被加工物11は、シリコン以外の化合物半導体(GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等で形成されたウェーハや基板であってもよい。また、被加工物11に形成されるデバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等に制限はない。被加工物11には、デバイス15が形成されていなくてもよい。
【0032】
被加工物11の裏面11b側には、樹脂製のダイシングテープ17が貼り付けられる。ダイシングテープ17は円形であり、その径は、被加工物11の径よりも大きい。ダイシングテープ17の中央部には被加工物11が貼り付けられ、ダイシングテープ17の外周部には金属で形成された環状のフレーム19の一面が貼り付けられる。
【0033】
この様にして、被加工物11がダイシングテープ17を介してフレーム19で支持されたフレームユニット21が構成される。なお、
図2及び
図3では、ダイシングテープ17及びフレーム19を省略している。
【0034】
チャックテーブル40の下方には、Z軸方向(高さ方向、上下方向)と略平行な回転軸の周りにチャックテーブル40を回転させるθテーブル(不図示)が設けられている。このθテーブルは、加工送りユニット50により支持されている(
図2参照)。
【0035】
加工送りユニット50は、ボールネジ式の移動機構であり、チャックテーブル40及びθテーブルをX軸方向(加工送り方向)に沿って移動させる。なお、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する方向である。
【0036】
次に、切削装置2を用いて被加工物11を切削する切削方法について説明する。
図4は、切削方法を示すフロー図である。まず、
図3に示す様に、チャックテーブル40の保持面40aで、被加工物11の裏面11b側を保持する(保持段階S10)。
【0037】
保持段階S10の後、被加工物11を切削する(切削段階S20)。切削段階S20では、まず、カメラユニット(不図示)を利用して分割予定ライン13を検出し、1つの分割予定ライン13がX軸方向と略平行になる様に、θテーブル(不図示)で被加工物11の向きを調整する。
【0038】
その後、高速で回転させた切削ブレード12を1つの分割予定ライン13の延長線上に位置付け、切削ブレード12の下端を、裏面11bと保持面40aとの間の高さに位置付ける。更に、超音波振動子16を動作させる。
【0039】
次いで、
図1に示す様に、チャックテーブル40をX軸方向に移動させ、1つの分割予定ライン13において一方側から所定位置13aまで、超音波の周波数で振動させた状態の切削ブレード12で被加工物11を切削する超音波切削を行う。なお、切削時には、切削水供給ノズルから純水等の切削水を加工点に供給する。
【0040】
所定位置13aまで超音波切削を施したら、切削ユニット4を所定長さだけ割り出し送りする。そして、切削溝13bを形成した1つの分割予定ライン13に対してY軸方向に隣接する他の分割予定ライン13上において、他の分割予定ライン13の一方側から所定位置13aまで、同様に、超音波切削を施す。
【0041】
同様にして、一の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って超音波切削により切削溝13bを形成した後、超音波振動子16への給電を止めて、最初に切削した分割予定ライン13の所定位置13aに、回転している切削ブレード12を下降させて切り込む。
【0042】
そして、所定位置13aから、この分割予定ライン13の他方側まで、超音波の周波数で振動させていない状態の切削ブレード12で被加工物11を切削する通常切削を行う。同様にして、残りの分割予定ライン13について、所定位置13aから、この分割予定ライン13の他方側まで、通常切削を施す。
【0043】
一の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って切削溝13bを形成した後、チャックテーブル40を90度回転させて、未切削の分割予定ライン13をX軸方向と略平行にする。そして、全ての未切削の分割予定ライン13に対して、同様に、超音波切削と通常切削とを施す。これにより、被加工物11は、複数のチップに分割される。
【0044】
本実施形態の切削段階S20では、同一の分割予定ライン13(同一の切削ライン)上において超音波切削と通常切削とを施すことにより、各分割予定ライン13に沿って切削溝13bを形成する。なお、同一の分割予定ライン13(同一の切削ライン)とは、一直線状に連続的に設定されている一つの分割予定ライン13(一つの切削ライン)を意味する。
【0045】
超音波切削では、切削ブレード12の適度な摩耗促進を維持しながら被加工物11を切削できる。これに対して、通常切削では、切削ブレード12を振動させないので、切削ブレード12の過度な摩耗を抑制できる。それゆえ、切削ブレード12の適度な摩耗促進を維持しながら、切削ブレード12の過度な摩耗を抑制できる。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を説明する。
図5は、実施例における切削方法での切削順序を示す図であり、
図6は、実施例における切削方法で切削した後のガラス基板23(ソーダガラス製)の画像である。なお、
図6では、切削溝が形成されていない部分を省略している。
【0047】
本実施例では、一辺100mm、他辺100mm、厚さ0.5mmの正方形の板状のガラス基板23を用いた。このガラス基板23の一辺方向に沿う様に、40本の切削ラインを設定した。また、各切削ラインは、ガラス基板23の他辺方向において離散的に設定した。
【0048】
特に、本実施例では、一辺の一端から15mmの位置にある所定位置23aまで、#1から#40(破線)の順に超音波切削を施し、次いで、所定位置23aから一辺の他端まで、#41から#80(一点鎖線)の順に通常切削を施した(
図5参照)。
【0049】
なお、#1及び#41で示す切削ラインは、同一の切削ラインであり、#N及び#(N+40)で示す切削ラインも、同一の切削ラインである(なお、Nは、2以上40以下の自然数)。
【0050】
切削時には、切削ブレード12を20000rpmで回転させ、ガラス基板23を吸引保持したチャックテーブル40を20mm/sで加工送りした。また、切削時には、切削水供給ノズルから加工点に、切削水として純水(不図示)を2.5l/minで供給した。
【0051】
これにより、各切削ラインに、深さ430μmを有する切削溝を形成した(
図6参照)。本実施例では、40本の切削溝の形成が完了したとき、切削ブレード12の切り刃12aが、径方向12bに0.9μm消耗した。
【0052】
図7(A)は、第1の比較例に係る切削方法で切削した後のガラス基板23の画像である。なお、
図7(A)では、切削溝が形成されていない部分を省略している。第1の比較例では、ガラス基板23の一辺の一端から他端に亘る通常切削を、#1から#40の順に施すことで、ガラス基板23の他辺方向に離散的に40本の切削溝を形成した。
【0053】
切削ブレード12の回転数及びチャックテーブル40の加工送り速度は、上述の実施例と同じとし、切削水も同様に供給した。40本の切削溝の形成が完了したとき、切削ブレード12の切り刃12aが、径方向12bに0.5μm消耗した。
【0054】
切り刃12aの消耗量は、実施例に比べて低減したが、
図7(A)と
図6との比較から明らかな様に、第1の比較例では、切削順番の後方において、著しい加工不良が生じた。加工不良は、
図7(A)において黒色で示されている。加工不良の発生は、ボンド材が適切に消耗しないことで、砥粒の目潰れが生じたことが原因であると推測される。
【0055】
図7(B)は、第2の比較例に係る切削方法で切削した後のガラス基板23の画像である。なお、
図7(B)では、切削溝が形成されていない部分を省略している。第2の比較例では、ガラス基板23の一辺の一端から他端に亘る超音波切削を、#1から#40の順に施すことで、ガラス基板23の他辺方向に離散的に40本の切削溝を形成した。
【0056】
切削ブレード12の回転数及びチャックテーブル40の加工送り速度は、上述の実施例と同じとし、切削水も同様に供給した。
図7(B)と
図6との比較から明らかな様に、第2の比較例では、加工不良はほぼ生じなかった。しかし、切り刃12aの消耗量は、実施例に比べて著しく増加した。
【0057】
具体的には、40本の切削溝の形成完了時、切削ブレード12の切り刃12aは、径方向12bに2.55μm消耗した。第1及び第2の比較例と、実施例とを比較すれば、実施例の切削方法では、切削ブレード12の適度な摩耗促進を維持し、且つ、切削ブレード12の過度な摩耗を抑制できたと言える。
【0058】
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る切削方法での切削順序を示す図である。第2の実施形態では、1つの切削ラインの一端から他端まで切削を施した後に、割り出し送りを行い、隣接する1つの切削ラインの一端から他端まで切削を施す。
【0059】
但し、第2の実施形態では、まず、破線で示す様に、ガラス基板23の一端から所定位置23aまで(同一の切削ライン上の一部に対して)、超音波切削を施し、その後、超音波切削を止める。
【0060】
そして、切削ブレード12をY軸方向へ移動させることなく、一点鎖線で示す様に、所定位置23a(同一の切削ライン上で超音波切削が最後に施された位置)から、ガラス基板23の他端まで通常切削を行う。
【0061】
この様に、同一の切削ライン上において、超音波切削と、通常切削とを施すことで、超音波切削では、切削ブレード12の適度な摩耗促進を維持しながらガラス基板23を切削し、且つ、通常切削では、切削ブレード12の過度な摩耗を抑制できる。
【0062】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、第2の実施形態に係る切削方法に従い、上述の被加工物11を切削することもできる。
【符号の説明】
【0063】
2:切削装置、4:切削ユニット、6:スピンドルハウジング
8:スピンドル、8a:モータ装着部、10:ネジ
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面
12:切削ブレード、12a:切り刃、12b:径方向
13:分割予定ライン、13a:所定位置、13b:切削溝
14:モータ、14a:ロータ、14b:ステーターコイル
15:デバイス、17:ダイシングテープ、19:フレーム、21:フレームユニット
16:超音波振動子、18:圧電素子、20,22:電極板
23:ガラス基板、23a:所定位置
24:ロータリートランス
26:受電部、26a:ロータリーコア、26b:受電コイル
28:給電部、28a:ステーターコア、28b:給電コイル
32:交流電源、32a:制御回路
34:電圧周波数調整ユニット、36:電力供給ユニット
40:チャックテーブル、40a:保持面
42:枠体、42a:凹部、42b:流路
44:ポーラス板、46:吸引源、48:電磁弁
50:加工送りユニット