IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-半導体装置の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240813BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240813BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240813BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L21/56 R
C08L79/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021078908
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172745
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串原 直行
(72)【発明者】
【氏名】隅田 和昌
(72)【発明者】
【氏名】金田 雅浩
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014472(JP,A)
【文献】特開2014-015603(JP,A)
【文献】特開平01-297870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 21/56
C08L 79/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を2個以上搭載した基板上を熱硬化性樹脂組成物で成形封止する半導体装置の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、硬化剤以外の樹脂成分が1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物のみからなるものであり(組成物全体中12.9質量%以上)、更に、硬化剤、及び無機充填材を含むものであり、該硬化剤がアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤(レゾルシノール型フェノール樹脂を除く)、及び水物系硬化剤から選ばれる1種以上であり、成形封止時の成形温度が前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度以下であり、成形封止する際の成形温度が140℃以上であり、かつ成形方法がトランスファー成形又はコンプレッション成形のいずれかであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の、ガラス転移温度以下の温度範囲における平均熱膨張係数が、同じ温度範囲における前記基板の平均熱膨張係数の-20%以上+10%以下である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物の175℃における溶融粘度が0.1~100Pa・sである請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間が175℃で10秒~180秒である請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物の未硬化時の形状が、タブレット状、顆粒状、もしくはシート状である請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物が厚さ0.1mm~10mmのシート状である請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
シアネートエステル化合物が下記式(1)
【化1】
(式中、R1及びR2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R3は単結合又は下記式
【化2】
で表される2価の基のいずれかを示す。R4は水素原子またはメチルであり、n=0~10の整数である。)
で示されるシアネートエステル化合物である請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
無機充填材の含有率が、前記樹脂組成物全体の70~95質量%である請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
さらに硬化促進剤を含む請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記基板が、シリコンウエハ、セラミック基板、及び基板のいずれかである請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット等の携帯情報通信端末は、大容量の情報を高速で処理できるように、薄型で小型、多機能かつ高速処理可能な半導体装置を搭載している。このような半導体装置は、TSV(through silicon via(スルー・シリコン・ビア))技術を用いて半導体素子を多層接続し、8インチないし12インチのシリコンインターポーザーにフリップチップ接続した後、多層接続された半導体素子が複数個搭載されたインターポーザーごとに熱硬化樹脂で封止し、半導体素子上の不要な硬化樹脂を研磨し、個片化して製造される(特許文献1)。
【0003】
半導体装置製造において、現状でも、小径ウエハ等の基板であれば大きな問題もなく、成形封止できる。しかし、8インチ以上、近年では20インチウエハや、20インチを超えるパネルの成形では、シリコンインターポーザーを熱硬化樹脂で全面封止した場合、シリコンウエハと熱硬化性樹脂の熱膨張係数の違いからシリコンウエハに大きな反りが発生し、その後の研磨工程や個片化工程に適用することができないため、反りの防止が大きな技術課題となっている。
【0004】
このような問題を解決するために、従来、エポキシ樹脂と、酸無水物やフェノール樹脂などの硬化剤とを用いた組成物に、フィラーを85質量%以上充填し、応力緩和のためにゴムや熱可塑性樹脂を配合した封止材や、低弾性樹脂材料が使用されてきた(特許文献2、3)。このような組成物では、3Dパッケージングの工程による熱履歴から、ウエハの反りが発生し、この反りにより、半導体素子が損傷したり、ウエハ自体が割れたりしてしまう問題が生じている。一方、従来のシリコーン化合物に代表される低弾性樹脂材料では樹脂がやわらかいため、研磨の際に樹脂つまりが発生したり、信頼性試験において樹脂クラックが生じたりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-229771号公報
【文献】特開2012-209453号公報
【文献】特開2016-148054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体装置の反りが小さく、信頼性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、成形封止時の成形温度を熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度以下とすることで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の半導体装置の製造方法を提供するものである。
【0009】
[1]
半導体素子を2個以上搭載した基板上を熱硬化性樹脂組成物で成形封止する半導体装置の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物;硬化剤、及び無機充填材を含むものであり、成形封止時の成形温度が前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度以下であり、成形封止する際の成形温度が140℃以上であり、かつ成形方法がトランスファー成形又はコンプレッション成形のいずれかであることを特徴とする半導体装置の製造方法。

[2]
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の、ガラス転移温度以下の温度範囲における平均熱膨張係数が、同じ温度範囲における前記基板の平均熱膨張係数の-20%以上+10%以下である[1]に記載の半導体装置の製造方法。

[3]
前記熱硬化性樹脂組成物の175℃における溶融粘度が0.1~100Pa・sである[1]または[2]に記載の半導体装置の製造方法。

[4]
前記熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間が175℃で10秒~180秒である[1]~[3]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[5]
前記熱硬化性樹脂組成物の未硬化時の形状が、タブレット状、顆粒状、もしくはシート状である[1]~[4]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[6]
前記熱硬化性樹脂組成物が厚さ0.1mm~10mmのシート状である[1]~[5]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[7]
シアネートエステル化合物が下記式(1)
【化1】
(式中、R1及びR2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R3は単結合又は下記式
【化2】
で表される2価の基のいずれかを示す。R4は水素原子またはメチルであり、n=0~10の整数である。)
で示されるシアネートエステル化合物である[1]~[6]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[8]
硬化剤がアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、及び水物系硬化剤から選ばれる1種以上である[1]~[7]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[9]
無機充填材の含有率が、前記樹脂組成物全体の70~95質量%である[1]~[8]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[10]
さらに硬化促進剤を含む[1]~[9]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

[11]
前記基板が、シリコンウエハ、セラミック基板、及び基板のいずれかである[1]~[10]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、基板の種類によらず、熱硬化性樹脂組成物で成形封止した際の反りが非常に小さく、信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体装置の製造方法を示した図である。
図2】ガラス転移温度の決定方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の半導体装置の製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
[半導体装置]
本発明の製造方法で製造される半導体装置の一例を図1に示す。この半導体装置は、2個以上の半導体素子31を搭載した基板3を熱硬化性樹脂組成物1で封止したものである(図1(A)及び(B)参照)。なお、この半導体装置は、ダイシングして、個片化することもできる(図1(C)及び(D)参照)。
本明細書において、半導体素子を搭載した基板3とは、基板32としてシリコンウエハ等の各種ウエハ、セラミック基板、有機基板、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板等を用いたものや、半導体素子を搭載し配列等した半導体素子アレイを含むものである。また、上記半導体素子を形成したウエハも半導体素子を搭載した基板の一種とみなすものとする。
【0014】
本発明の製造方法で製造される半導体装置は半導体素子を2個以上、好ましくは10~1,000個搭載した基板の半導体素子搭載面、または半導体素子を2個以上、好ましくは50~700個形成したウエハの半導体素子形成面を、成形温度以上のガラス転移温度を有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物で成形封止した半導体装置である。上記半導体素子の配列方法は特に制限はなく、半導体素子の大きさや必要な個数、生産性などに応じて適宜決定すればよい。半導体素子を搭載した基板としては、例えば図1(A)中の2個以上の半導体素子31を接着剤(図示しない)で無機、金属あるいは有機の基板32上に搭載した基板(半導体素子搭載基板3)が挙げられる。
【0015】
[半導体装置の製造方法]
本発明の製造方法で製造される半導体装置は半導体素子31を2個以上搭載した基板3を、下記に詳述する熱硬化性樹脂組成物1で成形封止することにより実施できる(図1(A)及び(B)参照)。その際、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度以下に成形封止時の成形温度を設定する。
【0016】
本発明において、ガラス転移温度(Tg)はTMA法により求めた値を指す。TMA法の測定としては、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物を、5×5×15mmの試験片にそれぞれを加工した後、それらの試験片を熱膨張計TMA8140C(株式会社リガク社製)にセットする。そして、昇温プログラムを昇温速度5℃/分に設定し、19.6mNの一定荷重が加わるように設定した後、25℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定する。この寸法変化と温度との関係をグラフにプロットする(グラフの一例を図2に示す)。このようにして得られた寸法変化と温度とのグラフから、下記に説明するガラス転移温度の決定方法により、ガラス転移温度を求めることができる。
【0017】
図2に示すように、変曲点の温度以下で寸法変化-温度曲線の接線が得られる任意の温度2点をT1及びT2とし、変曲点の温度以上で同様の接線が得られる任意の温度2点をT1’及びT2’とする。T1及びT2における寸法変化をそれぞれD1及びD2として、点(T1、D1)と点(T2、D2)とを結ぶ直線と、T1’及びT2’における寸法変化をそれぞれD1’及びD2’として、点(T1’、D1’)と点(T2’、D2’)とを結ぶ直線との交点をガラス転移温度(Tg)とする。
【0018】
本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物の一般的な成形方法としては、トランスファー成形法やコンプレッション成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5~20N/mm2、成形温度140~250℃で成形時間30~500秒、好ましくは成形温度175~225℃で成形時間30~180秒で行う。また、コンプレッション成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は140~250℃で成形時間30~600秒、好ましくは成形温度175~225℃で成形時間120~300秒で行う。更に、いずれの成形法においても、後硬化を好ましくは150~225℃、より好ましくは160~200℃で0.5~20時間行ってもよい。
【0019】
本明細書において、平均熱膨張係数は、上記ガラス転移温度測定と同じ条件で熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱機械分析を行い、40℃から80℃までの温度範囲の測定結果から算出した線膨張係数の平均値である。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物の40℃~80℃での平均熱膨張係数が、半導体素子を2個以上配列した基板の40℃~80℃の平均熱膨張係数に対して、-20%~+10%以下であることが好ましく、-15%~+8%以下であることがより好ましい。平均熱膨張係数が、上記範囲内であると、半導体素子や絶縁基板との熱膨張係数の差が小さくなり、封止後のウエハの反りの発生を抑えることが可能となる。
【0020】
本明細書において、熱硬化性樹脂組成物の175℃における粘度とは、JIS K 7244-10:2005記載のレオメーターを用いて測定した値を指す。レオメーターとしては、例えば、HR-2(TA Instruments社製)が用いられる。
熱硬化性樹脂組成物の175℃における溶融粘度としては、0.1Pa・s~100Pa・sが好ましく、0.5Pa・s~70Pa・sがより好ましく、1Pa・s~50Pa・sが特に好ましい。
【0021】
熱硬化性樹脂組成物の175℃におけるゲル化時間は、5秒~240秒であることが好ましく、5秒~120秒であることがより好ましい。20秒以上であれば、充填性が悪くならず、内部ボイドや表面ボイドが発生するおそれがない。
【0022】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、成形封止時に、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が成形温度以上となる樹脂組成物である。該熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、成形温度に対して、+5~+120℃であることが好ましく、+10~+100℃であることがより好ましく、+15~+80℃であることが更に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲にあることで、成形封止後の硬化物と基材との反りを小さくすることができる。
【0023】
熱硬化性樹脂組成物に使用する熱硬化性樹脂は、一般的に公知のものを使用することができ、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリスフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ブタジエン変性エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物並びにこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0025】
また、前記エポキシ樹脂を硬化させる目的で、硬化剤を使用してもよい。硬化剤の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用できる。エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びチオール系硬化剤等が挙げられる。成形性及び耐熱性の観点から、硬化剤として、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0026】
アミン系硬化剤としては、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン等の芳香族ジアミノジフェニルメタン化合物、2,4-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0027】
硬化剤としてアミン系硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対する硬化剤中に含まれる活性水素のモル比は、0.5~1.5が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。該モル比が0.5より小さい場合は、未反応のエポキシ樹脂が残存し、ガラス転移温度が低下、又は密着性が低下するおそれがある。一方、該モル比が1.5を超えると硬化物の吸湿量が大きくなるおそれがある。
【0028】
フェノール硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;アラルキル型フェノール樹脂;トリスフェノールメタン型フェノール樹脂;ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;脂環式フェノール樹脂;複素環型フェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;レゾルシノール型フェノール樹脂;アリル基含有フェノール樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0029】
硬化剤としてフェノール樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対する硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比は、0.5~1.5が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。該モル比が0.5より小さい場合は、未反応のエポキシ樹脂が残存し、ガラス転移温度が低下、又は密着性が低下するおそれがある。一方、該モル比が1.5を超えると硬化物の吸湿量が大きくなるおそれがある。
【0030】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、3,4-ジメチル-6-(2-メチル-1-プロペニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2、3-ジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、(3、4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
硬化剤として酸無水物系硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対する硬化剤中に含まれる酸無水物のモル比は、0.5~1.5が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。該モル比が0.5より小さい場合は、未反応のエポキシ樹脂が残存し、ガラス転移温度が低下、又は密着性が低下するおそれがある。一方、該モル比が1.5を超えると硬化物の吸湿量が大きくなるおそれがある。
【0032】
マレイミド樹脂
マレイミド樹脂は、1分子中に1個以上のマレイミド基を有するものであれば、特に限定されず、一般的に公知のものを使用することができる。マレイミド樹脂としては、例えば、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド、ダイマー酸ジアミン型マレイミド、上記マレイミド樹脂のプレポリマー、もしくはマレイミド樹脂とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は1種又は2種以上を併用して用いることができる。このなかでも、ノボラック型マレイミド化合物、及びビフェニルアラルキル型ビスマレイミド化合物が好ましい。このようなマレイミド化合物を用いることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0033】
また、前記マレイミド樹脂を硬化させる目的で、硬化剤を使用してもよい。硬化剤の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用できる。マレイミド樹脂の硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、チオール系硬化剤及びラジカル重合開始剤等が挙げられる。成形性及び耐熱性の観点から、硬化剤として、フェノール系硬化剤、ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0034】
フェノール硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;アラルキル型フェノール樹脂;トリスフェノールアルカン型フェノール樹脂;ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;脂環式フェノール樹脂;複素環型フェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;レゾルシノール型フェノール樹脂;アリル基含有フェノール樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。またフェノール硬化剤の骨格中にアリル基又はプロペニル基を1つ以上有するものが好ましい。
【0035】
硬化剤としてフェノール硬化剤を用いる場合、マレイミド樹脂中に含まれるマレイミド基1モルに対する硬化剤中に含まれる水酸基のモル比は、0.5~1.5が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。該モル比が0.5より小さい場合は、得られる硬化物が脆くなるおそれがある。一方、該モル比が1.5を超えると硬化物のガラス転移温度が低下するおそれがある。
【0036】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド及びジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、マレイミド樹脂100質量部に対して、0.2質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0037】
シアネートエステル化合物
シアネートエステル化合物としては、1分子中に2個以上のシアナト基を有するものであれば、特に限定されず、一般的に公知のものを使用することができる。シアネートエステル化合物としては例えば、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3-メチル-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジアリルビスフェノールA型シアネートエステル、ジアリルビスフェノールF型シアネートエステルなどのビスフェノール型シアネートエステル;2,2’-ジシアナトビフェニル、4,4’-ジシアナトビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジシアナトビフェニルなどのビフェニル型シアネートエステル;1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、2-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン、2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン、テトラメチル-1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼンなどのシアナトベンゼン;1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,5-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレンなどのシアナトナフタレン;ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェニルシアネート、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホンが挙げられる。これらのなかでも、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ジアリルビスフェノールA型シアネートエステル、ジアリルビスフェノールF型シアネートエステルが好ましく、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ジアリルビスフェノールF型シアネートエステルがより好ましい。これらのシアネートエステル化合物は1種で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0038】
また、シアネートエステル化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物から1種以上選択されるシアネートエステル化合物であってもかまわない。
【化3】
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。一般式(1)中、R1及びR2としては、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。R3は単結合又は下記の各式で表される基から選択されるいずれか1つの2価の基である。nは0~10の整数であり、好ましくはnは0~5、より好ましくはnは1~4である。
【化4】
上記式中R4は水素原子またはメチルである。
【0039】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、BisE型シアネートエステル化合物、ノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。
【0040】
また、前記シアネートエステル化合物を硬化させる目的で、硬化剤を使用してもよい。硬化剤の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用できる。シアネートエステル化合物の硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びチオール系硬化剤等が挙げられる。成形性及び耐熱性の観点から、硬化剤として、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0041】
アミン系硬化剤としては、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン等の芳香族ジアミノジフェニルメタン化合物、2,4-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン等が挙がられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
硬化剤としてアミン系硬化剤を用いる場合、アミン系硬化剤の使用量は、シアネートエステル化合物100質量部に対し、アミン系硬化剤が0.2~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1.0~10質量部がさらに好ましい。アミン系硬化剤の使用量が0.2質量部より少ない場合は未反応のシアネートエステル化合物が残存し、ガラス転移温度が低下、又は密着性が低下するおそれがある。一方、アミン系硬化剤の使用量が30質量部を超えると硬化物の吸湿量が大きくなるおそれがある。
【0043】
フェノール硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;アラルキル型フェノール樹脂;トリスフェノールメタン型フェノール樹脂;ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;脂環式フェノール樹脂;複素環型フェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;レゾルシノール型フェノール樹脂;アリル基含有フェノール樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0044】
硬化剤としてフェノール硬化剤を用いる場合、フェノール硬化剤の使用量は、シアネートエステル化合物100質量部に対し、フェノール硬化剤が0.2~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1.0~10質量部がさらに好ましい。フェノール硬化剤の使用量が0.2質量部より少ない場合は未反応のシアネートエステル化合物が残存し、ガラス転移温度が低下、又は密着性が低下するおそれがある。一方、フェノール硬化剤の使用量が30質量部を超えると保存安定性が悪く、硬化物のガラス転移温度が低下するおそれがある。
【0045】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、3,4-ジメチル-6-(2-メチル-1-プロペニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2、3-ジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、(3、4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0046】
硬化剤として酸無水物系硬化剤を用いる場合、酸無水物系硬化剤の使用量は、シアネートエステル化合物100質量部に対し、酸無水物系硬化剤が0.2~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1.0~10質量部がさらに好ましい。酸無水物系硬化剤の使用量が0.2質量部より少ない場合は未反応のシアネートエステル化合物が残存し、ガラス転移温度が低下、又は密着性が低下するおそれがある。一方、酸無水物系硬化剤の使用量が30質量部を超えると保存安定性が悪く、硬化物のガラス転移温度が低下するおそれがある。
【0047】
封止材としての成形性や信頼性などの観点から、熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、及びシアネートエステル化合物から選ばれる熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、更に好ましくはシアネートエステル化合物を含むことである。特には、シアネートエステル化合物を硬化剤と併用することが好ましい。なお、これらの熱硬化性樹脂は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
熱硬化性樹脂組成物には、無機充填材を配合してもよい。無機充填材は熱硬化性樹脂組成物の線膨張係数を低下させる目的で使用する。無機充填材の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用できる。無機充填材として、例えば、球状シリカ、溶融シリカ及び結晶性シリカ等のシリカ類;窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等の無機窒化物類;アルミナ、ガラス繊維及びガラス粒子等が挙げられるが、得られる硬化物の補強効果に優れている、得られる硬化物の反りを抑えられるなどの観点から、シリカ類であることが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0049】
上記無機充填材の平均粒径及び形状は特に限定されないが、平均粒径は0.1~40μmが好ましく、より好ましくは0.5~40μmである。なお、本明細書において平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(またはメジアン径)として求めた値である。
【0050】
また、本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物の高流動化の観点から、上記無機充填材として複数の粒径範囲の無機充填材を併用してもよく、このような場合、0.1~3μmの微細領域、3~7μmの中粒径領域、及び10~40μmの粗領域の球状シリカを併用することが好ましく、無機充填材を併用する場合、無機充填材の平均粒径が0.5~40μmの範囲にあることがより好ましい。さらなる高流動化のためには、平均粒径がさらに大きい球状シリカを用いることが好ましい。
【0051】
熱硬化性樹脂組成物における無機充填材の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部、又は硬化剤を配合する場合は熱硬化性樹脂との合計100質量部に対して、300~1,900質量部であることが好ましく、400~1,800質量部であることがより好ましく、500~1,600質量部であることが特に好ましい。
また、無機充填材の含有率が、熱硬化性樹脂組成物全体の70~95質量%であることが好ましく、80~94.5質量%であることがより好ましく、85~94質量%であることが更に好ましい。
【0052】
また、熱硬化性樹脂やその硬化剤と無機充填材との密着性を高める目的や、無機充填材と基板との接着性を高くしたりするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を熱硬化性樹脂組成物に配合してもよいし、予めカップリング剤で処理した無機充填材を熱硬化性樹脂組成物に配合してもよい。無機充填材をカップリング剤で表面処理方法については特に制限されるものではなく、常法に従って行えばよい。
【0053】
カップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性アルコキシシランなどが挙げられる。
【0054】
熱硬化性樹脂組成物におけるカップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部、又は硬化剤を配合する場合は熱硬化性樹脂との合計100質量部に対して、0.1~25質量部であることが好ましく、特に0.5~20質量部とすることが好ましい。0.1質量部以上であれば、基材への接着効果が十分に得られ、また25質量部以下であれば、粘度が極端に低下して、ボイドの原因になるおそれがない。
【0055】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用できる。この硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7などの第3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;過酸化物、尿素化合物、サリチル酸等を使用することができる。
【0056】
熱硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.2質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0057】
上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を高めるために難燃剤を配合することができる。
【0058】
難燃剤の種類は、特に制限されず、一般的に公知のものを使用することができる。難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物(シリコーンゴムパウダー等)、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモンなどが挙げられ、これらの難燃剤は1種単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。熱硬化性樹脂組成物における難燃剤の配合量は熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して2~100質量部であることが好ましく、より好ましくは3~50質量部である。
【0059】
上記熱硬化性樹脂組成物は、イオン不純物による信頼性の低下を防ぐためにイオントラップ材を配合することができる。
【0060】
イオントラップ材の種類は、特に制限されず、一般的に公知のものを使用することができる。イオントラップ材としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が使用できる。これらを1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱硬化性樹脂組成物におけるイオントラップ材の配合量は熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5~25質量部であることが好ましく、より好ましくは1.5~15質量部である。
【0061】
上記熱硬化性樹脂組成物は、離型剤を配合してもよい。離型剤の種類は特に制限されず、一般的に公知のものを使用することができる。離型剤は、成形時の離型性を高めるために配合するものである。離型剤としては、カルナバワックス、ライスワックスをはじめとする天然ワックス;酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルをはじめとする合成ワックスがあるが、離型性の観点からカルナバワックスが好ましい。
【0062】
熱硬化性樹脂組成物における離型剤の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.05~15質量部であることが好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。配合量が0.05質量部以上であれば、十分な離型性が得られなかったり、製造時の溶融混練時に過負荷が生じてしまったりするおそれがなく、15質量部以下であれば、沁み出し不良や接着性不良等が起こるおそれがない。
【0063】
熱硬化性樹脂組成物は、着色剤を配合してもよい。着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。熱硬化性樹脂組成物にシアネートエステル化合物を含む場合には、分散性の観点からカーボンブラックが好ましい。
【0064】
熱硬化性樹脂組成物における着色剤の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物の形状はどのような形状でもよく、粉末状、顆粒状、シート状、ペレット状のいずれであってもよい。シート状、ペレット状の形状であれば、熱硬化性樹脂が溶融する際にボイドが発生しにくくなる。また、シート状やペレット状であれば加熱溶融時に熱硬化性樹脂に均一に熱が伝わりやすくなるため、減圧の工程の際に泡抜け性が良く、表面や内部にボイドが残りにくくなる。
【0066】
[熱硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、従来公知の方法を適宜用いることができる。製造方法としては、例えば、プラネタリーミキサー、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等が挙げられる。得られた熱硬化性樹脂組成物が固体の場合、粉砕することにより粉末状にしてもよく、粉末にしてから打錠することでタブレット状若しくは顆粒状にしてもよく、又はプレス装置やTダイを用いてシート状にしてもよい。成形時のボイド低減の観点からペレット状またはシート状が好ましい。
【0067】
このようにして得られる熱硬化性樹脂組成物は、シート状であれば、厚さが0.1~10mmであることが好ましく、0.2~5mmであることがより好ましい。また、ペレット状であれば、直径は10~100mmであることが好ましく、20~80mmであることがより好ましく、長さは0.5~50mmであることが好ましく、1~40mmであることがより好ましい。
【実施例
【0068】
以下実施例及び比較例をあげて、本発明をより具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1~18および比較例1~6
[熱硬化性樹脂組成物の製造]
表1に記載の配合量(質量部)にて混合して、熱硬化性樹脂組成物1~10を得た。各成分の詳細は下記のとおりである。
【0070】
シアネートエステル化合物
シアネートエステル化合物1:BisE型シアネートエステル化合物(下記式(2)LECY:ロンザジャパン)
【化5】

シアネートエステル化合物2:ノボラック型シアネートエステル化合物(下記式(3)PT-30:ロンザジャパン)
【化6】
【0071】
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(EPPN-501H:日本化薬社製)
エポキシ樹脂2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N-655-EXP-S:DIC社製)
【0072】
硬化剤
硬化剤1:トリスフェノールメタン型フェノール樹脂(MEH-7500:明和化成社製)
硬化剤2:フェノールノボラック樹脂(TD-2131:DIC社製)
【0073】
硬化促進剤
硬化促進剤1:イミダゾール化合物(2PHZ-PW:四国化成社製)
硬化促進剤2:リン系化合物(TPP:北興化学社製)
【0074】
カップリング剤
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403:信越化学工業社製)
難燃剤
ゴム粒子:シリコーンゴムパウダー(KMP-600:信越化学工業社製)
無機充填材
溶融シリカ:平均粒径14μmの溶融球状シリカ(龍森社製)
着色剤
カーボンブラック(三菱ケミカル社製)
【0075】
【表1】
【0076】
ガラス転移温度の決定
熱硬化性樹脂組成物を実施例および比較例に記載の条件にて成形して得た硬化物を、5×5×15mmの試験片にそれぞれを加工した後、それらの試験片を熱膨張計TMA8140C(株式会社リガク社製)にセットした。そして、昇温プログラムを昇温速度5℃/分に設定し、19.6mNの一定荷重が加わるように設定した後、25℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定した。この寸法変化と温度との関係をグラフにプロットした(グラフの一例を図2に示す)。このようにして得られた寸法変化と温度とのグラフから、下記に説明するガラス転移温度の決定方法により、実施例及び比較例におけるガラス転移温度を求めた。
図2に示すように、変曲点の温度以下で寸法変化-温度曲線の接線が得られる任意の温度2点をT1及びT2とし、変曲点の温度以上で同様の接線が得られる任意の温度2点をT1’及びT2’とした。T1及びT2における寸法変化をそれぞれD1及びD2として、点(T1、D1)と点(T2、D2)とを結ぶ直線と、T1’及びT2’における寸法変化をそれぞれD1’及びD2’として、点(T1’、D1’)と点(T2’、D2’)とを結ぶ直線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0077】
平均熱膨張係数(CTE1)の決定
上記ガラス転移温度測定と同じ条件で熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱機械分析を行い、40℃から80℃までの温度範囲の測定結果から、平均熱膨張係数(線膨張係数の平均値)を算出し、熱硬化性樹脂組成物のCTE1とした。
同様に、半導体素子搭載基板の平均熱膨張係数を算出し、半導体素子搭載基板のCTE1とした。
【0078】
半導体素子搭載基板の平均熱膨張係数と、熱硬化性樹脂の平均熱膨張係数との比較
上記方法で決定した半導体素子搭載基板の平均熱膨張係数と熱硬化性樹脂との平均熱膨張係数とから下記式より、熱硬化性樹脂の平均熱膨張係数と、半導体素子搭載基板の平均熱膨張係数との差異を算出し、表2に記載した。
【数1】
【0079】
粘度の測定
表1に記載の配合量(質量部)で調製した熱硬化性樹脂組成物の粘度を175℃に設定したレオメーター(プレート直径25mm、測定周波数1Hz)で測定し、測定値を表2に記載した。
【0080】
ゲル化時間の測定
表1に記載の配合量(質量部)で調製した熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間を、175℃に設定した熱板の上で測定し、測定値を表2に記載した。
【0081】
半導体素子搭載基板の製造
20mm角200μm厚の半導体素子の四隅に市販の接着剤を塗布し、表2に記載の直径300mm、775μm厚の、ダミーバンプが形成された各種基板上に120個貼りつけ、半導体素子搭載基板を製造した。ダミーバンプ径は30μm、バンプピッチは60μmであり、素子と基板との間には30μmの隙間が形成された。
【0082】
半導体装置の製造
上記で作製した半導体素子搭載基板を、表1に記載の熱硬化性樹脂組成物で、コンプレッション成形装置(アピックヤマダ社製)を用いて封止した。成形温度および成形時間は表2に記載の条件で行った。封止後、180℃で1時間硬化して半導体装置を製造した。
【0083】
反り量
製造した半導体装置を、熱硬化性樹脂の面が上面側になるようにレーザー三次元測定機に配置し、各半導体装置の対角線方向に高さの変位を測定し、測定最大値と測定最小値との差を反り量とした。反りの向きが下側となった場合は正、上側となった場合は負の値を用いて示した。
【0084】
外観
製造した半導体装置において、フローマークとピンホールが両方とも生じなかったものを○、表面にピンホールまたはフローマークのいずれかが生じたものを△、フローマークとピンホールが両方とも生じたものを×として表2に記載した。
【0085】
温度サイクル試験(TCT)
製造した半導体装置を、ダイシング装置を用いて、22mm×22mmのサイズとなるように個片化した基板を、ESPEC社製小型冷熱衝撃装置TSE-11を使用し、-55℃/15分と+125℃/15分を1サイクルとして温度サイクル試験を行った。まず、0サイクルで超音波探傷装置(ソニックス社製 QUANTUM350)にて75MHzのプローブを用いて、半導体素子内部の剥離状態を無破壊で確認した。次に、1,000サイクル後に同様の検査を行った。
半導体素子の面積に対して剥離面積の合計がおよそ5%未満の場合は微小剥離として「剥離なし」、5%以上の剥離面積がある場合は「剥離あり」として評価し、剥離があったものの個数を数えた。結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【符号の説明】
【0087】
1.熱硬化性樹脂組成物
3.半導体素子搭載基板
31.半導体素子
32.基板
図1
図2