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  • 特許-麺類及び麺類の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】麺類及び麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240813BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020009314
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021114921
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 幹数
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-088341(JP,A)
【文献】特開昭64-086850(JP,A)
【文献】特開昭49-020345(JP,A)
【文献】特開2008-029273(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0069049(KR,A)
【文献】特開平11-056278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面視において、麺線の内部に、麺帯に挟まれた層状の穀粉又は穀粉組成物が配置されており、
前記穀粉又は前記穀粉組成物の量が、前記麺帯が複合されてなる複合麺帯100質量部に対して0.005~1.5質量部であり、
前記穀粉組成物中の穀粉の含有量が90質量%以上であり、
前記穀粉又は前記穀粉組成物中の穀粉が小麦粉であり、
ただし、前記穀粉又は前記穀粉組成物が、ベータ化、アルファ化及び発泡アルファ化でん粉を含まない、麺類。
【請求項2】
前記穀粉又は前記穀粉組成物の層が、10μm~500μmである、請求項1に記載の麺類。
【請求項3】
前記穀粉又は前記穀粉組成物の層が、麺線の内部に1層又は2層で存在する、請求項1又は2に記載の麺類。
【請求項4】
前記層形成用穀粉又は前記層形成用穀粉組成物の量が、前記複合麺帯100質量部に対して0.0251.25質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の麺類。
【請求項5】
前記層形成用穀粉又は前記層形成用穀粉組成物が粉末である、請求項1~4のいずれか1項に記載の麺類。
【請求項6】
前記小麦粉が、中力粉、準強力粉およびデュラムセモリナからなる群から選択される1以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の麺類。
【請求項7】
麺帯の表面に層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する工程、及び
前記麺帯の層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された面の上に麺帯を重ね合わせた後に圧延して複合麺帯を得る工程を含み、
前記穀粉又は前記穀粉組成物の量が、前記複合麺帯100質量部に対して0.005~1.5質量部であり、
前記穀粉組成物中の穀粉の含有量が90質量%以上であり、
前記穀粉又は前記穀粉組成物中の穀粉が小麦粉であり、
ただし、前記穀粉又は前記穀粉組成物が、ベータ化、アルファ化及び発泡アルファ化でん粉を含まない、請求項1~6のいずれか1項に記載の麺類の製造方法。
【請求項8】
前記麺帯の層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された面の単位面積当たりの前記層形成用穀粉又は前記層形成用穀粉組成物の塗布量又は散布量が、1~250g/m2である、請求項7に記載の麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類及び麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うどん、中華麺、パスタ等の麺類は、店舗や家庭で食される機会が多い、消費者に人気のある代表的な食品である。麺類の種類にもよるが、麺類は、一般的にコシが強いものが好まれる傾向にある。コシの強さは、麺類の中心部と表面部の水分量の差が重要な要因であると考えられており、その差は大きいほど好ましいとされる。即ち、表面部よりも中心部の水分量が少ないほうが好ましい。この場合、中心部の方が表面部よりも硬くなるため、喫食した際に麺類のコシの強さを感じることができる。
【0003】
このような麺類を得る手法として、種々検討がなされている。例えば、特許文献1には、穀粉を主原料とし、多価金属イオンと反応してゲルを形成する増粘多糖類を含む麺帯を形成し、この麺帯の少なくとも一方の表面に、多価金属イオンを含有する溶液又は粉末を塗布し、この塗布面が内側になるように前記麺帯を接合させた後、圧延し、切断することを特徴とする麺類の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、小麦粉を主成分とする原料粉を含む麺生地から2層の外層用麺帯を作製する工程と、小麦粉を主成分とする原料粉を含む麺生地を真空押出成形してペレットを形成し、これを製麺して内層用麺帯を作製する工程と、前記外層用麺帯、少なくとも1層の前記内層用麺帯および前記外層用麺帯をこの順序で配置するとともに、前記各麺帯間にトランスグルタミナーゼを主成分とする粉体層をそれぞれ介在させて重ね合せた後、圧延して多層構造の麺帯を作製する工程と、前記多層構造の麺帯を切り出して麺線を作製する工程とを具備したことを特徴とする多層麺の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-8180号公報
【文献】特開平11-56278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、多価金属イオンを含有する溶液又は粉末や、該多価金属イオンと反応する増粘多糖類といった特殊な資材が必要であるため、コスト面に劣り、またゲル化した増粘多糖類の食感が付与されるために麺類の食感を不自然なものにする可能性がある。特許文献2に記載の手法では、トランスグルタミナーゼを用いていること、及び通常の多層麺の製造ラインよりも更に特殊なラインが必要になること等からコスト面及び製造の簡便さの面から好ましくない。また、これらの手法で得られる麺類をスープ等の液体と接触させ続けていると、麺中の水分勾配が小さくなり、コシが弱くなる(茹で伸びが生じる)ことがある。
【0007】
本発明の目的は、特殊な資材を用いることなく、簡便な手段でコシがあり、茹で伸びが抑えられた麺類を得ることができる麺類の製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、特殊な資材を用いなくともコシがあり、茹で伸びが抑えられた麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、麺類の横断面視において、麺線の内部に層状に穀粉又は穀粉組成物を配置することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]横断面視において、麺線の内部に層状に穀粉又は穀粉組成物が配置されている、麺類。
[2]前記穀粉又は穀粉組成物の層が、10μm~500μmである、[1]に記載の麺類。
[3]前記穀粉又は穀粉組成物の層が、麺線の内部に1層又は2層で存在する、[1]又は[2]に記載の麺類。
[4]麺帯の表面に層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する工程、及び
前記麺帯の層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された面の上に麺帯を重ね合わせた後に圧延して複合麺帯を得る工程を含む、麺類の製造方法。
[5]層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布される麺帯の面の単位面積当たりの前記層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物の塗布量又は散布量が、1~250g/m2である、[4]に記載の麺類の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特殊な資材を用いることなく、簡便な手法でコシがあり、茹で伸びが抑えられた麺類及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の麺類の横断面図を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、横断面視において、麺線の内部に層状に穀粉又は穀粉組成物が配置されている、麺類である。また、本発明は、麺帯の表面に層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する工程、及び前記麺帯の層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された面の上に麺帯を重ね合わせた後に圧延して複合麺帯を得る工程を含む、麺類の製造方法である。以下、本発明を詳述する。
【0013】
本発明の麺類は、横断面視において、麺線の内部に層状に穀粉又は穀粉組成物が配置されていることを特徴とする。このような構成を採用することにより、本発明の麺類を茹で上げたときに、麺線の内部に水分量の少ない部分(層状の穀粉又は穀粉組成物)と、表面部に水分量の多い部分(麺帯)とが形成されるため、その水分勾配によってコシの強い麺類を得ることができる。また、麺類の内部に相対的に水分量の少ない部分が存在し、それによって麺類の水分量の均質化までに時間を要するようになるため、麺類の茹で伸びを抑えることもできる。図1は、本発明の麺類の横断面図を表す模式図である。本発明の麺類1は、横断面視において、穀粉又は穀粉組成物の層3が、麺帯2によって挟み込まれたような構造を有している。なお、従来の麺類の製造方法では、生地同士の付着を抑えて作業性を向上させるために穀粉や澱粉等の「打ち粉」を用いることがある。打ち粉は、通常玉生地や複合麺帯等を切り出す生地の厚さにまで圧延する段階や、生地を切り出す際に生地の外側に塗布又は散布されるため、麺線の内部に層状に穀粉又は穀粉組成物が配置されることはない。
【0014】
麺線の内部に配置されている層には、層形成用の穀粉又は穀粉組成物が用いられる。このように、本発明では層を形成するために特殊な資材を用いることがないので、不自然な食感を引き起こす懸念がなく、また製造コストを低減することもできる。なお、上記穀粉組成物は、穀粉を含む組成物を意味する。
上記層形成用の穀粉としては、通常麺類の製造に使用される穀物由来の粉末であれば特に限定されず、小麦粉、蕎麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ小麦粉及びコーングリッツ等が挙げられる。上記小麦粉としては、デュラムセモリナ、デュラム小麦粉、準強力粉、強力粉、中力粉、薄力粉等が挙げられる。麺類のコシをより強くして食感を良好にし、茹で伸び耐性を良好にする観点からは、上記穀粉は、グルテン形成能を有することが好ましく、準強力粉、中力粉、強力粉であることがより好ましく、強力粉であることが更に好ましい。これらの穀粉は、単独で使用してもよく、複数を併用して用いてもよい。上記層状に配置される穀粉(層形成用穀粉)と、麺類の生地に使用される穀粉原料とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0015】
麺線の内部に配置されている層には、本発明の効果を妨げない範囲で、穀粉とは異なる粉体を混合した穀粉組成物を用いてもよい。穀粉組成物を用いる場合、穀粉組成物中の穀粉の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。また、上記穀粉又は穀粉組成物は、水分量が15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。上記水分量は、乾燥前の粉体の質量から乾燥後の粉体の質量を減じた値を乾燥前の粉体の質量で除することによって算出される。
【0016】
上記「デュラムセモリナ」とは、デュラム品種の硬質小麦を製粉して得られる、パスタ類の製造に使用する標準的な粉原料である。「セモリナ」とは、デュラム小麦等の硬質小麦の製粉工程において得られる比較的粒度の粗い状態の胚乳の粉砕物であり、一般に目開き約300μmの篩を通過しないものを意味する。
上記「デュラム小麦粉」とは、デュラム品種の硬質小麦を製粉して得られる、比較的粒度の細かい状態の胚乳の粉砕物であり、一般に目開き約300μmの篩を通過するものを意味する。
上記「準強力粉」とは、硬質小麦を製粉して得られる小麦粉であって、比較的タンパク質の含有量が多いものを意味する。タンパク質の含有量としては、特に限定されないが、例えば小麦粉の全量に対して、10~12質量%である。
上記「強力粉」とは、硬質小麦を製粉して得られる小麦粉であって、準強力粉よりもタンパク質の含有量が多いものを意味する。タンパク質の含有量としては、特に限定されないが、例えば小麦粉の全量に対して、11.5~13.0質量%である。
【0017】
上記穀粉又は穀粉組成物の層の厚みは、10~500μmであることが好ましい。穀粉又は穀粉組成物の層の厚みが上記範囲内であることにより、麺類のコシを効果的に強め、茹で伸びを効果的に抑えることができると同時に、麺類を喫食した際の食感(粉っぽさ)を良好なものとすることができる。上記厚みは、30~300μmであることがより好ましく、50~200μmであることが更に好ましい。上記穀粉又は穀粉組成物の層の厚みは、麺帯と得られる複合麺の厚みを調節するように圧延すること、層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する量を調節することによって調節することができる。
【0018】
なお、上記穀粉又は穀粉組成物の層の厚みは、以下の要領で測定することができる。色素を配合した穀粉又は穀粉組成物を挟み込んで製麺した麺線を、鋭利な刃物を用いて麺線長手方向に対して垂直に切断し、該切断面を光学顕微鏡で撮影し、撮影画像を画像解析ソフトウェアにより解析して色の差がある部分を穀粉又は穀粉組成物の層として厚みを求めることができる。また、色素の代わりに粉末カルシウム製剤等を利用すれば、走査型電子顕微鏡による元素分析データから厚みを測定することもできる。
【0019】
上記穀粉又は穀粉組成物の層は、麺線の内部に1層又は2層で存在することが好ましい。層の数が1層又は2層であると、麺類のコシを効果的に強め、茹で伸びを効果的に抑えることができると同時に、麺類を喫食した際の粉っぽさを抑えることができる。層の数が1層である場合、前記層は、麺線の中心近傍の領域を通るように配置されることが好ましい。例えば、図1のごとく、前記層の伸びる方向が左右方向と平行となるように麺線を載置したときに、前記層は、麺線の横断面視において、麺線の上下方向の最も厚い部分の厚みの全体を100%と仮定した場合に、麺線の上下方向の最も厚い部分の表面から30~70%の領域に存在していることが好ましい。また、層の数が2層である場合、例えば、前記層は、麺線の横断面視において、麺線の上下方向の最も厚い部分の厚み全体を100%と仮定した場合に、麺線の上下方向の最も厚い部分の表面から10~50%の領域に1層、更に50~90%の領域に1層、それぞれ左右方向に延びて存在していることが好ましい。
すなわち、層が1層である場合、例えば麺線の上下方向の最も厚い部分の厚みを3mmとすると、麺線の横断面視において、麺線の上下方向の最も厚い部分の表面から0.9~2.1mmの領域に穀粉又は穀粉組成物の層が存在していることが好ましく、層が2層である場合、麺線の上下方向の最も厚い部分の表面から0.3~1.2mmの領域に1層、更に1.8~2.7mmの領域に1層、それぞれ穀粉又は穀粉組成物の層が存在していることが好ましい。
【0020】
上記「麺類」としては、特に限定されず、うどん、中華麺、きしめん、素麺、冷麺、パスタ等の麺線や、餃子、春巻きの皮等の麺皮等が挙げられる。
【0021】
上記麺類は、麺帯の表面に層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する工程、及び麺帯の層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された面の上に麺帯を重ね合わせた後に圧延して複合麺帯を得る工程を含む製造方法によって得ることができる。本発明の麺類は、圧延製麺法によって得られることが好ましい。
【0022】
上記麺帯は、例えば穀粉原料、水分及び必要に応じて副原料を混練して粗生地を得た後、圧延を行うことで得ることができる。上記麺帯の厚みは、特に限定されないが、3~10mmの範囲とすることができる。
【0023】
上記穀粉原料としては、通常麺類の製造に使用される穀粉原料であれば特に限定されず、小麦粉、蕎麦粉、米粉(白玉粉、上新粉等)、ライ麦粉及びライ小麦粉等が挙げられる。中でも小麦粉が好ましい。これらの穀粉は、単独で使用してもよく、複数を併用して用いてもよい。
【0024】
上記副原料としては、特に限定されず、糠類;グルテン、卵成分、乳成分等の蛋白質素材;馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉等の澱粉;老化澱粉、熱処理澱粉、α化澱粉及びエステル化、ヒドロキシプロピル化又は架橋化等の化学修飾した加工澱粉;油脂類;増粘剤;食塩、かんすい、焼成カルシウム等の無機塩類;糖類;甘味料;食物繊維;難消化性澱粉;膨張剤;品質改良剤;保存料;香料;香辛料;調味料;ビタミン類;ミネラル類;pH調整剤;酵素剤;乳化剤;酒精;色素等が挙げられ、これらを単独又は複数を併用して使用することができる。
【0025】
上記混練は、穀粉原料を水和することができれば、慣用手法に従って行うことができる。上記混練は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。上記混練する際の圧力は、目的とする麺類の種類、生地性及び麺類の食感によって適宜変更することができる。
【0026】
上記粗生地中における水分の量は、穀粉原料の種類に応じて変更することができる。例えば、穀粉原料として小麦粉のみを使用する場合、小麦粉100質量部に対して20~45質量部であることが好ましく、25~35質量部であることが好ましい。穀粉原料として更に副原料を含む場合は、粗生地の状態に応じて水分量を適宜調節することができる。
【0027】
上記「圧延」とは、ロール等の装置を用いて一定の厚さを有する麺帯を得る手法を意味する。圧延する手段としては、少なくとも対向する二方向から挟むように圧力を加えることができれば特に制限されず、例えば一対のロール間に粗生地を供給して圧延する手法及びプレス機を用いて圧縮する手法等が挙げられる。一対のロールの間隙、プレス機の圧力の大きさは、目的とする厚みを有する麺帯を得ることができれば特に制限されない。
【0028】
このようにして得られた麺帯の表面に、上記層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する。上記層形成用穀粉を用いて得られた麺類は、麺線の内部に穀粉の層が配置されており、上記層形成用穀粉組成物を用いて得られた麺類は、麺線の内部に穀粉組成物の層が配置されている。塗布又は散布する手段は特に限定されない。層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布される麺帯の面の単位面積当たりの上記層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物の塗布量又は散布量は、1~250g/m2であることが好ましい。塗布量又は散布量が上記範囲内であると、麺類のコシを効果的に強め、茹で伸びを効果的に抑えることができると同時に、麺類を喫食した際の食感(粉っぽさの無さ)を良好なものとすることができ、更に麺帯を重ね合わせた際の結着性が損なわれることがない。上記塗布量又は散布量は、90~230g/m2であることがより好ましく、130~210g/m2であることが更に好ましい。なお、麺帯の表面に層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布又は散布する工程において、麺帯表面に配置される層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物の量を調節するために、麺帯表面へ層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物を塗布した後に更に散布することを妨げるものではない。
【0029】
また、塗布又は散布する層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物の量は、塗布又は散布される麺帯の100質量部に対して、0.01~3.0質量部であることが好ましい。塗布量又は散布量が上記範囲内であると、麺類のコシを効果的に強め、茹で伸びを効果的に抑えることができると同時に、麺類を喫食した際の食感(粉っぽさの無さ)を良好なものとすることができ、更に麺帯を重ね合わせた際の結着性が損なわれることがない。上記塗布量又は散布量は、塗布又は散布される麺帯の100質量部に対して、0.05~2.5質量部であることがより好ましく、0.1~2.0質量部であることが更に好ましい。塗布又は散布される層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物の量は、得られる複合麺帯の合計100質量部に対して、0.005~1.5質量部であることが好ましく、0.025~1.25質量部であることがより好ましく、0.05~1.0質量部であることが更に好ましい。
【0030】
次いで、層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された麺帯の面の上に麺帯を重ね合わせた後、圧延して複合麺帯を得る。このようにすることで、麺線の内部に層状に穀粉又は穀粉組成物を配置することができる。
麺帯を重ねる際には、層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された麺帯とは別の麺帯を塗布面又は散布面に重ねてもよく、層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物が塗布又は散布された麺帯自体を折り曲げて穀粉又は穀粉組成物の層が内部に配置されるように重ねてもよい。麺帯自体を折り曲げる場合には、塗布又は散布する層形成用穀粉又は層形成用穀粉組成物の量は、得られる複合麺帯の片面に関して、90~230g/m2であることがより好ましく、11~250g/m2となることが好ましく、90~230g/m2であることがより好ましく、130~210g/m2であることが更に好ましい。このような操作を繰り返したり、組み合わせたりすることで、麺線の内部の穀粉又は穀粉組成物の層の数を調節することができる。
【0031】
上記複合麺帯の厚みは、所望の麺類の種類に応じて、所望の厚さとすることができるが、例えば、0.5~5mmであることが好ましく、0.7~3mmであることがより好ましい。
【0032】
最後に、所望の麺類の種類に応じて、複合麺帯を切断して所望の長さを有する麺線を得てもよい。麺線の長さは、特に限定されないが、100~300mmであることが好ましい。
【実施例
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<うどんの製造>
実施例1
中力粉(日本製粉株式会社製、「さぬき菊」)100質量部、食塩4質量部を水38質量部に溶解させた食塩水42質量部をミキサー(トーキョーメンキ株式会社製)に投入し、高速3分、低速10分混錬して粗生地を得た。得られた粗生地を1対の平行なロールに通すことで圧延し、厚さ7mmの麺帯を得た後、麺帯の上表面全体に、麺帯の単位面積当たりの塗布量が200g/m2となる量の層形成用穀粉(中力粉(日本製粉株式会社製、「さぬき菊」))を塗布し、塗布面に更に厚さ7mmの麺帯を重ね合わせて複合圧延し、厚さが薄くなるように順次圧延し、厚さ2.5mmの最終麺帯を得た。得られた最終麺帯を切刃12番で切断し、厚さ2.5mm、長さ300mmであり、穀粉の層が麺線の中心近傍の領域(うどんの上下方向の最も厚い部分の表面から厚み40~60%の領域)を通るように内部に1層存在する、うどん麺線を得た。
【0035】
実施例2~6及び比較例1
麺帯に塗布した層形成用穀粉(中力粉)の量を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてうどん麺線を得た。
【0036】
<うどんの評価>
実施例1~6及び比較例1で得られたうどん麺線を、麺線の質量の約15倍の茹で水で15分間茹でた後、水冷し、10名の熟練パネラーにより、以下の評価基準に従って評価し、その平均値を算出した。
評価基準表1
【0037】
<穀粉又は穀粉組成物の層の厚みの評価>
中力粉(日本製粉社製のさぬき菊)100質量部と食用黒色色素(株式会社私の台所社製の食用色素粉末タイプ黒)0.1質量部とを混合均質化したものを、粗麺帯の複合面に満遍なく振りかけた以外は製造例1に従ってうどんを製造した。剃刀を用いて得られたうどんを麺線の長手方向に対して垂直に切断し、その切断面を光学顕微鏡で撮影し、画像解析ソフトにより穀粉の層(着色部)の厚みを測定した。
【0038】
評価結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0039】
実施例1~6の結果より、麺帯に塗布した層形成用穀粉(中力粉)の量を増やすことによって穀粉の層の厚みが大きくなり、それに伴ってうどんのコシの強さが大きくなった。うどんの粉っぽさは、麺帯に塗布した中力粉の量が多くなるほど強くなった。また、実施例1~5で得られたうどんは、麺帯に塗布した層形成用穀粉(中力粉)によって麺帯が分離することなく、麺帯同士の結着性に難はなかった。実施例6で得られたうどんは、塗布した中力粉の量がやや多く、複合圧延時に麺帯同士の結着性がやや劣っていたが、順次の圧延により得られた最終麺帯の結着性に難はなかった。
【0040】
<中華麺の製造>
実施例7
準強力粉(日本製粉株式会社製、「特寿」)100質量部、食塩1質量部、かん粉1.2質量部及び水32質量部をミキサー(トーキョーメンキ株式会社製)に投入し、高速3分、低速10分混錬して粗生地を得た。得られた粗生地を1対の平行なロールに通すことで圧延し、厚さ4mmの麺帯を得た後、麺帯の表面全体に、麺帯の単位面積当たりの塗布量が表2記載の量の層形成用穀粉(準強力粉(日本製粉株式会社製、「特寿」))を塗布し、塗布面に更に麺帯を重ね合わせて複合圧延し、厚さが薄くなるように順次圧延し、厚さ1.4mmの最終麺帯を得た。得られた最終麺帯を切刃20番で切断し、厚さ1.4mm、長さ300mmであり、穀粉の層が麺線の中心近傍の領域(中華麺の上下方向の最も厚い部分の表面から厚み40~60%の領域)を通るように内部に1層存在する、中華麺線を得た。
【0041】
実施例8~11、比較例2
麺帯に塗布した層形成用穀粉(準強力粉)の量を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例7と同様にして中華麺線を得た。
【0042】
<中華麺の評価>
実施例7~11、比較例2で得られた中華麺線を、麺線の約15倍の茹で水で2分間茹でた後、ラーメン用のスープに投入し、10名の熟練パネラーにより、上記評価基準表1に従って評価した。加えて、スープへの投入から5分経過後における評価を、下記の評価基準表2に従って評価し、その平均値を算出した。
【0043】
評価結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0044】
上記の結果より、麺帯に塗布した層形成用穀粉(準強力粉)の量を増やすことによって穀粉の層の厚みが大きくなり、それに伴って中華麺のコシの強さが大きくなった。また、穀粉の層の厚みが大きくなるにつれて、茹で伸び耐性も向上することが分かった。中華麺の粉っぽさは、塗布した準強力粉の量が多くなるほど強くなった。また、実施例7~10で得られた中華麺は、麺帯に塗布した層形成用穀粉(準強力粉)によって麺帯が分離することなく、麺帯同士の結着性に難はなかった。実施例11で得られた中華麺は、塗布した準強力粉の量がやや多く、複合圧延時に麺帯同士の結着性がやや劣っていたが、うどんの場合と同様に最終麺帯の結着性に難はなかった。
【0045】
実施例12~14
実施例8において、麺帯に塗布した層形成用穀粉の種類を下記表3に記載の通り変更した以外は同様にして中華麺線(厚さ1.4mm、長さ300mm)を得た。なお、準強力粉以外に用いた穀粉は、デュラムセモリナ(日本製粉株式会社製、「ジョーカーA」)、米粉(日本製粉株式会社製、「高砂117」)及びコーングリッツ(日本製粉株式会社製、「コーングリッツC」)であった。得られた中華麺について、評価基準表1及び2に従って熟練パネラー10名によって評価し、その平均値を算出した。評価結果を以下の表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
上記の結果より、麺帯に塗布した層形成用穀粉の種類によらず、中華麺にコシの強さ及び茹で伸び耐性を付与することができることが分かった。実施例12~14で得られた中華麺も、麺帯に塗布した層形成用穀粉によって麺帯が分離することなく、麺同士の結着性に難はなかった。また、グルテン形成能を有する準強力粉又はデュラムセモリナを用いることにより、他の穀粉を用いた場合よりも得られた中華麺のコシがより強くなり、また茹で伸び耐性も良好であった(実施例8及び12)。
図1