(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】射出成形体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20240813BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2020099132
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019108610
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤本 麻里
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-57741(JP,A)
【文献】特開2014-64764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持板部、前記第1支持板部と間隔をおいて配置された第2支持板部、前記第1支持板部と前記第2支持板部の対向している面同士を連結する板状のブリッジ部を有している、平面形状が略H字形状または平面形状が略U字形状である射出成形体であって、
前記板状のブリッジ部は、前記第1支持板部と前記第2支持板部に直交する方向において、長さ(L1)方向の両側面側が前記第1支持板部と前記第2支持板部の前記対向している面のそれぞれに接続されており、
前記板状のブリッジ部は、前記第1支持板部と前記第2支持板部の長辺側面の長さより短い幅(w1)と、前記第1支持板部と前記第2支持板部の短辺側面の長さより短い厚さ(t1)を有し、
前記板状のブリッジ部の厚さ(t1)、幅(w1)、長さ(L1)が、t1≦w1<L1の関係を満たしており、
前記第1支持板部、前記板状のブリッジ部および前記第2支持板部が繊維状充填材を含有しており、
前記板状のブリッジ部の内部に含有されている繊維状充填材が、前記板状のブリッジ部の長さ方向に沿う方向または前記板状のブリッジ部の長さ方向に対して斜行する方向に分散して存在しており、
前記板状のブリッジ部の四面のうちの少なくとも一つの面に射出成形時におけるゲートの接続痕が残っている、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項2】
前記第1支持板部が、長さ方向の両端側にある第1短辺側面と第2短辺側面を有しており、
前記第2支持板部が、長さ方向の両端側にある第1短辺側面と第2短辺側面を有しており、
前記第1支持板部と前記第2支持板部が、前記第1支持板部の第1短辺側面と前記第2支持板部の第1短辺側面が、それぞれの長さ方向に直交する方向に間隔をおいて対向されるように配置され、
前記第1支持板部と前記第2支持板部が、前記第1支持板部の第2短辺側面と前記第2支持板部の第2短辺側面が、それぞれの長さ方向に直交する方向に間隔をおいて対向されるように配置されており、
前記平面形状が略H字形状であるときは、前記板状のブリッジ部が、前記第1支持板部と前記第2支持板部のそれぞれの長さ方向の中間位置よりも第1短辺側面および第1短辺側面側に位置しており、
前記平面形状が略U字形状であるときは、前記板状のブリッジ部が、前記第1支持板部の第1短辺側面側と前記第2支持板部の第1短辺側面側が接続されている、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項3】
前記板状のブリッジ部が、前記第1支持板部の第1短辺側面側、および前記第2支持板部の第1短辺側面側に凸状に湾曲しており、
前記板状のブリッジ部の内部に含有されている繊維状充填材が、前記板状のブリッジ部の凸状の湾曲面に沿う方向または前記凸状の湾曲面に沿う方向に対して斜行する方向に分散して存在している、請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項4】
前記板状のブリッジ部が、厚さ(t1)が5mm以上であり、厚さ(t1)と幅(w1)の比(w1/t1)が1~30の範囲である、請求項1~3のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項5】
前記第1支持板部と前記第2支持板部の対向している面同士の間隔が均等であるか、または前記間隔が部分的に異なっている、請求項1~4のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項6】
前記第1支持板部と前記第2支持板部の一方または両方が他部材と接続するための1または複数の貫通孔を有しており、自転車のサスペンション部品として使用するものである、請求項1~5のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項7】
射出成形機、スプルーおよび必要に応じてランナーを含む樹脂供給経路を経てゲートから金型内に樹脂を射出して、繊維状充填剤を含有する請求項1~6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を製造する方法であって、
前記ゲートが、前記スプルー側の第1開口部と前記金型側の第2開口部を有しており、前記第2開口部が前記射出成形体の板状のブリッジ部の四面のうちの少なくとも一つの面に相当する位置に接続されるものであり、
前記ゲートが、
前記第1開口部と前記第2開口部のそれぞれが正方形または長方形であるとき、
前記第1開口部の短辺長さa1と前記第2開口部の短辺長さb1がa1=b1、前記第1開口部の長辺長さa2と前記第2開口部の長辺長さb2がb2/a2=1.5~20であるか、または
前記第1開口部の短辺長さa1と前記第2開口部の短辺長さb1がa1<b1、前記第1開口部の長辺長さa2と前記第2開口部の長辺長さb2がa2<b2であり、前記第1開口部の断面積s1と前記第2開口部の断面積s2がs2/s1=2~600であり、
前記第1開口部と前記第2開口部のそれぞれが円形、楕円形または長円形であるとき、
前記第1開口部の短軸長さa3と前記第2開口部の短軸長さb3がa3=b3、前記第1開口部の長軸長さa4と前記第2開口部の長軸長さb4がb4/a4=1.5~20であるか、または
前記第1開口部の短軸長さa3と前記第2開口部の短軸長さb3がa3<b3、前記第1開口部の長軸長さa4と前記第2開口部の長軸長さb4がa4<b4であり、前記第1開口部の断面積s3と前記第2開口部の断面積s4がs4/s3=2~600であり、
前記第1開口部と前記第2開口部が上記以外の形状であるとき、
前記第1開口部の断面積s5と前記第2開口部の断面積s6が、s6/s5=2~600である、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体の製造方法。
【請求項8】
前記第1開口部と前記第2開口部のそれぞれが正方形または長方形であるとき、前記ブリッジ部の厚さ(t1)、幅(w1)と前記ゲートの第2開口部の短辺長さb1と長辺長さb2が、t1/b2=1~6、w1/b2=0.2~8の関係を満たしているものであり、
前記第1開口部と前記第2開口部のそれぞれが円形、楕円形または長円形であるとき、前記ブリッジ部の厚さ(t1)、幅(w1)と前記ゲートの第2開口部の短軸長さb3と長軸長さb4が、t1/b3=1~6、w1/b4=0.2~8の関係を満たしているものであり、
前記第1開口部と前記第2開口部が上記以外の形状であるとき、前記ブリッジ部の厚さ(t1)、幅(w1)と前記形状の最大長さLmaxまたは直径Dが、t1/LmaxまたはD=1~5、w1/LmaxまたはD=0.2~8の関係を満たしているものである、請求項7記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その幾つかの態様において、自転車のサスペンション部品として使用できる射出成形体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~5などから、道路を走行するときの衝撃を吸収するためのサスペンションを備えた自転車が知られている。
【0003】
また自転車自体の軽量化のため、金属に代えて繊維強化樹脂(FRP)を使用することも知られている。FRPを使用した場合には耐久性が重要となり、特にサスペンション部品としてFRPを使用した場合には、走行時に連続的に加えられる振動に対する高い耐久性が要求されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-255172号公報
【文献】特開2002-264877号公報
【文献】特表2002-523289号公報
【文献】特表2007-506618号公報
【文献】特表2007-530345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その幾つかの態様において、衝撃を受けた場合において高い耐久性を有する射出成形体を提供することを課題とする。また本発明は、別の幾つかの態様において、このような射出成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1つの例によれば、第1支持板部、前記第1支持板部と間隔をおいて配置された第2支持板部、前記第1支持板部と前記第2支持板部の対向している面同士を連結する板状のブリッジ部を有している、平面形状が略H字形状または平面形状が略U字形状である射出成形体であって、
前記第1支持板部、前記板状のブリッジ部および前記第2支持板部が繊維状充填材を含有しており、
前記板状のブリッジ部の内部に含有されている繊維状充填材が、前記板状のブリッジ部の長さ方向に沿う方向または前記板状のブリッジ部の長さ方向に対して斜行する方向に分散して存在しており、
前記板状のブリッジ部の四面のうちの少なくとも一つの面に射出成形時におけるゲートの接続痕が残っている、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を提供する。
【0007】
また本発明は、別の例によれば、射出成形機、スプルーおよび必要に応じてランナーを含む樹脂供給経路を経てゲートから金型内に樹脂を射出して、繊維状充填剤を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体を製造する方法であって、
前記ゲートが、前記スプルー側の第1開口部と前記成形体側の第2開口部を有しており、前記第2開口部が前記射出成形体の板状のブリッジ部の四面のうちの少なくとも一つの面に相当する位置に接続され、
前記第1開口部と前記第2開口部のそれぞれが正方形または長方形であるとき、前記第1開口部の短辺長さa1と前記第2開口部の短辺長さb1がa1=b1、前記第1開口部の長辺長さa2と前記第2開口部の長辺長さb2がb2/a2=1.5~20であるか、または前記第1開口部の短辺長さa1と前記第2開口部の短辺長さb1がa1<b1、前記第1開口部の長辺長さa2と前記第2開口部の長辺長さb2がa2<b2であり、前記第1開口部の断面積s1と前記第2開口部の断面積s2がs2/s1=2~600であり、
前記第1開口部と前記第2開口部のそれぞれが円形、楕円形または長円形であるとき、前記第1開口部の短軸長さa3と前記第2開口部の短軸長さb3がa3=b3、前記第1開口部の長軸長さa4と前記第2開口部の長軸長さb4がb4/a4=1.5~20であるか、または前記第1開口部の短軸長さa3と前記第2開口部の短軸長さb3がa3<b3、前記第1開口部の長軸長さa4と前記第2開口部の長軸長さb4がa4<b4であり、前記第1開口部の断面積s3と前記第2開口部の断面積s4/s3=2~600であり、
前記第1開口部と前記第2開口部が上記以外の形状であるとき、前記第1開口部の断面積s5と前記第2開口部の断面積s6が、s6/s5=2~600である、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例による射出成形体は、例えば、第1支持板部と第2支持板部に対して継続的な振動(衝撃)が加えられたときであっても、第1支持板部と第2支持板部を接続するブリッジ部が破損し難く、耐久性が向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は本発明の1例による射出成形体の斜視図、
図1(b)は(a)とは別の例による実施形態の射出成形体の斜視図である。
【0010】
【0011】
【
図3】
図3は
図1、
図2の射出成形体とは別の例による実施形態の射出成形体の平面図である。
【0012】
【
図4】
図4は
図1、
図2の射出成形体のブリッジ部における繊維状充填材の配向方法を説明するための平面図である。
【0013】
【
図5】
図5は
図1とは異なる別の例による実施形態の射出成形体の平面図である。
【0014】
【
図6】
図6は
図5の射出成形体のブリッジ部における繊維状充填材の配向方法を説明するための平面図である。
【0015】
【
図7】
図7は
図1~
図6の射出成形体とは別の例による実施形態の射出成形体の斜視図である。
【0016】
【0017】
【
図9】
図9は
図8の射出成形体とは別の例による実施形態の射出成形体の平面図である。
【0018】
【0019】
【
図11】
図11(a)は
図10とは異なる本発明の別の例によるゲートの第1開口部の正面図、
図11(b)は
図11(a)のゲートの第2開口部の正面図である。
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の射出成形体>
図1~
図5により平面形状が略H字形状である第1の射出成形体の幾つかの例を説明する。
【0022】
図1、
図2に示す射出成形体1は、第1支持板部10、第1支持板部10と間隔をおいて配置された第2支持板部20、第1支持板部10と第2支持板部20の対向している面同士を連結する板状のブリッジ部30を有しており、平面形状が略H字形状のものである。ここで略H字形状とは、Hの字形と同じか、またはそれに近似した形状を意味しており、
図1、
図2に示す射出成形体1は、H字に近似した形状を有している。
【0023】
図1(a)に示す第1支持板部10は、平面形状が長方形であるが、他の例においては、楕円形、長円形、三角形またはこれらに近似した形状であってもよい。
【0024】
第1支持板部10は、第1面11、第1面11と厚さ方向反対側の第2面12、第1面11と第2面12の間の4つの側面を有している。4つの側面は、長さ方向の両端側にある第1短辺側面13および第2短辺側面14、並びに第1長辺側面15および第2長辺側面16を含んでいる。
【0025】
第1支持板部10の4つの側面が相互に、または第1面11、第2面12と接続されることによって形成される角部は、その一部または全部が丸みを帯びているものでもよいし、角部の一部または全部が切断されることで角部の角度が鈍角にされているものでもよいし、前記鈍角の角部の一部または全部が丸みを帯びているものでもよい。
【0026】
第1支持板部10の4つの側面はそれぞれ、部分的に凸状または凹状の曲面部を有しているものでもよい。
【0027】
第1支持板部10は、他部材と接続するための1または複数の貫通孔40~42を有していてもよいし、貫通孔40~42に代えて突起(穴の開いた突起を含む)やフックなどを有していてもよい。
【0028】
図示の例では、第1支持板部10は、第1短辺側面13と第2短辺側面14の長さが第1長辺側面15、第2長辺側面16の幅(厚さ)よりも大きくなっており、第1短辺側面13と第2短辺側面14の長さ方向から加えられる力に対する抵抗力が大きくなるような用途に適している。
【0029】
第1支持板部10は、取り付け対象(例えば自転車など)の構造および形状に応じて、
図1(b)に示すように、第1折り曲げ部45と第2折り曲げ部46において第1長辺側面15と第2長辺側面16が折り曲げられた形状(場合により2カ所以上で折り曲げられた形状)にすることもできる。なお
図1(b)では、射出成形体1は端部が丸みを帯びた形状で示されているが、
図1(a)と同形状のものが折り曲げられた形状のものでもよい。
【0030】
図1(a)に示す例において、第2支持板部20は、第1支持板部10と同様に、平面形状が長方形であるが、他の例においては、楕円形、長円形、三角形またはこれらに近似した形状などであってもよい。
【0031】
第2支持板部20は、第1面21、第1面21と厚さ方向反対側の第2面22、第1面21と第2面22の間の4つの側面を有している。4つの側面は、長さ方向の両端側にある第1短辺側面23および第2短辺側面24、並びに第1長辺側面25および第2長辺側面26を含んでいる。
【0032】
第2支持板部20の4つの側面が相互に、または第1面21、第2面22と接続されることによって形成される角部は、その一部または全部が丸みを帯びているものでもよいし、角部の一部または全部が切断されることで角部の角度が鈍角にされているものでもよいし、前記鈍角の角部の一部または全部が丸みを帯びているものでもよい。
【0033】
第2支持板部20の4つの側面はそれぞれ、部分的に凸状または凹状の曲面部を有しているものでもよい。
【0034】
第2支持板部20は、他部材と接続するための1または複数の貫通孔40~42を有していてもよいし、貫通孔40~42に代えて突起(穴の開いた突起を含む)やフックなどを有していてもよい。
【0035】
図示の例では、第2支持板部20は、第1短辺側面23と第2短辺側面24の長さが第1長辺側面25、第2長辺側面26の幅(厚さ)よりも大きくなっており、第1短辺側面23と第2短辺側面24の長さ方向から加えられる力に対する抵抗力が大きくなるような用途に適している。
【0036】
第2支持板部20は、取り付け対象(例えば自転車など)の構造および形状に応じて、
図1(b)に示すように、第1折り曲げ部45と第2折り曲げ部46において第2長辺側面25と第2長辺側面26が折り曲げられた形状(場合により2カ所以上で折り曲げられた形状)にすることもできる。なお
図1(b)では、射出成形体は端部が丸みを帯びた形状で示されているが、
図1(a)と同形状のものが折り曲げられた形状のものでもよい。
【0037】
図1(a)、
図2に示す例においては、第1支持板部10と第2支持板部20は、同じ厚さであり、同一形状で同一の大きさであるが、用途によって厚さ、形状、大きさのいずれかが異なっていてもよい。また図示の例では第1支持板部10と第2支持板部20は平行に配置されているが、必ずしも平行である必要はなく、例えば両者の延長線が遠位で交わるように若干V字形状に配置されてもよい。
【0038】
図示の例では、第1支持板部10と第2支持板部20は、第2面12と第1面21がそれぞれの長さ方向に直交する方向に間隔をおいて対向されるように配置されている。1つの例では、第1支持板部10と第2支持板部20は、第1支持板部10の第1短辺側面13と第2支持板部20の第1短辺側面23がそれぞれの長さ方向に直交する方向に間隔をおいて対向されるように配置され、第1支持板部10の第2短辺側面14と第2支持板部20の第1短辺側面24がそれぞれの長さ方向に直交する方向に間隔をおいて対向されるように配置されている。
【0039】
本発明の幾つかの例によれば、第1支持板部10の第2面12と第2支持板部20の第1面21の間の間隔は、全体的にわたって等間隔でもよく、また用途によって部分的に異なる間隔で配置されていてもよい。すなわち第1支持板部10と第2支持板部20の対向している面同士の間隔は均等であるか、または部分的に異なっていてよい。例えば、
図3に示すとおり、第1支持板部10の第1短辺側面13側の部分と第2支持板部20の第2短辺側面23側の部分の間の間隔が狭くなったものでもよいし、逆に第2短辺側面14側の部分と第2短辺側面24側の部分の間の一部間隔が狭くなったものでもよい。
【0040】
本発明の幾つかの例によれば、板状のブリッジ部30は、第1面(
図1(a)の第1長辺側面15と同じ側を向いた面)31、第1面31とは厚さ(t1)方向反対側の第2面(
図1(a)の第2長辺側面16と同じ側を向いた面)32、第1側面33、第1側面33とは幅(w1)方向反対側の第2側面34を有している。
【0041】
図示の例において、第1側面33は、第1支持板部10の第1短辺側面13と同じ方向を向いて位置し、第2側面34は、第1支持板部10の第2短辺側面14と同じ方向を向いて位置している。第1側面33と第2側面34はそれぞれ、第1面31および第2面32の間に延びている。
【0042】
板状のブリッジ部30は、長さ(L1)方向の両側面側が第1支持板部10の第2面12と第2支持板部20の第1面21に接続されている。ブリッジ部30は、第2面12(第1支持板部10)と第1面21(第2支持板部20)のそれぞれの長さ方向の中間位置よりも第1短辺側面13、23側に、すなわち中間位置よりも第1短辺側面13、23に近い位置において第1支持板部10の第2面12と第2支持板部20の第1面21に接続されているが、前記中間位置に接続されていてもよいし、第2短辺側面14、24側、すなわち中間位置よりこれらに近い位置に接続されていてもよい。
【0043】
本発明の幾つかの例において、板状のブリッジ部30が第2面12と第1面21のそれぞれの長さ方向の中間位置において接続されているときは、射出成形体1の平面形状はH字形状になる。なお後述するように、「板状」は湾曲したブリッジ部を含んでいてよい。
【0044】
本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30と第1支持板部10の第2面12の接続位置(第1接続位置)と、ブリッジ部30と第2支持板部20の第1面21の接続位置(第2接続位置)は同じ位置であることができる。
【0045】
図1(a)、
図2に示す例において、第1支持板部10と第2支持板部20は、同じ厚さであり、同一形状で同一の大きさのものであり、第1接続位置における第1支持板部10の第1短辺側面13、第2短辺側面14、第1長辺側面15、第2長辺側面16からブリッジ部30までの距離と、第2接続位置における第2支持板部20の第1短辺側面23、第2短辺側面24、第1長辺側面25、第2長辺側面26からブリッジ部30までの距離は同じである。
【0046】
本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30は、厚さ(t1)が5mm以上であることが好ましく、5~30mmであることがより好ましい。本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30は、幅(w1)が5mm以上であることが好ましく、5~80mmであることがより好ましい。本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30は、長さ(L1)が10mm以上であることが好ましく、20~120mmであることがより好ましい。
【0047】
1つの例において、厚さ(t1)、幅(w1)、長さ(L1)は、t1≦w1<L1の関係を満たしていることが好ましい。また本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30の厚さ(t1)と幅(w1)の比(w1/t1)は1~30の範囲にあってよく、1~16の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましい。
【0048】
本発明の例によれば、第1支持板部10、第2支持板部20およびブリッジ部30には、繊維状充填材が含有されている。
【0049】
ブリッジ部30の内部に含まれている繊維状充填材は、
図4に示すとおり、ブリッジ部30の長さ(L1)方向に沿う方向(第1側面33と第2側面34に沿う方向)に配向され、分散して存在している繊維状充填材51、および/または板状のブリッジ部30の長さ(L1)方向に対して斜行する方向に配向され、分散して存在している繊維状充填材52を含んでいる。
【0050】
本発明の幾つかの例によれば、ブリッジ部30における繊維状充填剤の配向割合または配向度は、射出成形時にブリッジ部30に接続されるゲートの長さ方向に対して同方向に存在する繊維状充填剤の量によって評価することができる。ゲートの延長方向に対する繊維配向は、完全にその方向に平行に繊維が配向した場合は、1となり、完全に垂直に配向した場合は0となり、ランダムに配向した場合は、1/3(0.33)となる。1つの例では、XYZ極座標系において、1本の繊維i(繊維の始点が座標系の原点にある)のX方向に対する配向度は、Z軸から始まる偏角(極角)をθ、XY平面でX軸から始まる偏角(方位角)をφとしたとき、(sinθ・cosφ)2によって表すことができ、分散したn本の繊維については、
1/n×Σ[i=1..n](sinθi・cosφi)2
によって計算することができる。
【0051】
以上の例によれば、配向度は0から1の間の数値で表現されてよく、数値が1に近づくほど、ブリッジ部30の長さ(L1)方向に直交する方向に存在する繊維状充填剤の量が多いことが示され、数値が0に近づくほど、ブリッジ部30の長さ(L1)方向に沿う方向、および/またはブリッジ部30の長さ(L1)方向に対して斜行する方向に配向された繊維状充填剤の量が多いことが示される。
【0052】
本開示の例によれば、ブリッジ部30において、ゲートの延長方向に対する繊維配向は1からより低くされうる。1つの例によれば、繊維状充填剤の配向度の平均は0.60以下であることが好ましく、また別の例によれば、繊維状充填剤の配向度の平均は0.55以下であることが好ましく、さらに別の例によれば、繊維状充填剤の配向度の平均は0.50以下であることが好ましい。1つの例によれば、配向度はソフトウェア的にシミュレートすることによって評価することができる。
【0053】
本発明の例によれば、ブリッジ部30は、第1面31、第2面32、第1側面33、第2側面34の四面のうちの少なくとも一つの面に射出成形時におけるゲートの接続痕が残っている。ゲートの接続痕は、第1面31、第2面32、第1側面33、第2側面34のそれぞれの長さ方向の中間位置にあってよく、面積中心位置にあることが好ましいが、面積中心位置からずれていてもよい。
【0054】
四面のうちのいずれの面に接続痕が残っているかは、射出成形体1の用途に応じて選択されてよい。例えば、射出成形体1を取り付け対象(自転車など)に取り付けたとき、前記接続痕が他部品の影になって見えないようにすることで製品外観が高められるときは、前記他部品との位置関係を考慮して四面のうちのいずれかの面に接続痕が残るかを選択することができる。
【0055】
図5に示す射出成形体1Aの例は、
図1(a)、
図2に示す例の射出成形体1とはブリッジ部の形状が異なるほかは同じものである。ブリッジ部130は、第1支持板部10の第1短辺側面13側、および第2支持板部20の第1短辺側面23側に凸状に湾曲している。このように湾曲しているブリッジ部130の場合、ブリッジ部の長さ方向は、第1支持板部10および第2支持板部20に直交する、
図5のL1に示す方向であってよい。第1支持板部10および第2支持板部20が上記のように若干V字形状に配置される場合は、ブリッジ部の長さ方向は第1支持板部10および第2支持板部20に対して同じ角度で交わってよい。
【0056】
1つの例において、ブリッジ部130の幅(w1)は、凸状に湾曲した全体にわたって一様であってよく、また厚さ(t1)、幅(w1)、長さ(L1)は、t1≦w1<L1の関係を満たしていることが好ましい。また本発明の幾つかの例において、ブリッジ部130の厚さ(t1)と幅(w1)の比(w1/t1)は1~30の範囲にあってよく、1~16の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましい。
【0057】
図5に示す射出成形体1Aは、
図3の例に示す射出成形体1と同様に第1支持板部10の第1短辺側面13側の部分と第2支持板部20の第1短辺側面23側のの部分の間の間隔が狭くなったものでもよいし、第1支持板部10の第2短辺側面14側の部分と第2支持板部20の第2短辺側面24側の部分の間の間隔が狭くなったものでもよい。
【0058】
図5のブリッジ部130の内部に含有されている繊維状充填材は、
図6に示すとおり、ブリッジ部130の凸状の湾曲面(第1側面133、第2側面134)に沿う方向に配向され、分散して存在している繊維状充填材51と、凸状の湾曲面に沿う方向に対して斜行する方向に配向され、分散して存在している繊維状充填材52を含んでいる。これらの繊維状充填剤51、52は、ブリッジ部130の長さL1方向に沿う方向、またはブリッジ部130の長さL1方向に対して斜行する方向に分散して存在している。
【0059】
本発明の幾つかの例によれば、ブリッジ部130における繊維状充填剤の配向割合または配向度は、ブリッジ部30における繊維状充填剤の配向割合または配向度と同様にして評価することができる。1つの例によれば、ブリッジ部130における繊維状充填剤の配向度の平均は0.60以下であることが好ましく、また別の例によれば、繊維状充填剤の配向度の平均は0.55以下であることが好ましく、さらに別の例によれば、繊維状充填剤の配向度の平均は0.50以下であることが好ましい。
【0060】
本発明の例によれば、
図1~
図5に示す射出成形体1、1Aは、熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、繊維状充填材および必要に応じて使用される公知の樹脂添加剤を含有するものであることができる。
【0061】
幾つかの例によれば、熱可塑性樹脂は、射出成形体の用途に応じて適した熱可塑性樹脂の中から選択して使用することができ、例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66などの脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0062】
幾つかの例によれば、繊維状充填材としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セルロース繊維などの有機繊維、無機繊維(ガラス繊維を除く)、金属繊維などを使用することができるが、軽量化と強度の観点から炭素繊維が好ましい。熱可塑性樹脂組成物中の繊維状充填材の含有量は用途に応じて選択することができるが、5~50質量%の範囲が好ましい。
【0063】
幾つかの例によれば、熱可塑性樹脂組成物としては、束ねられた繊維状充填材(繊維束)に熱可塑性樹脂が付着された、長さが3~30mm程度の円柱形状のもの(樹脂付着繊維束)が好ましい。このような樹脂付着繊維束としては、特許第5959183号公報、特許第6087052号に記載されている樹脂付着繊維束を使用することができる。
【0064】
樹脂付着繊維束には、繊維束の中心部まで樹脂が浸透され(含浸され)、繊維束を構成する中心部の繊維間にまで樹脂が入り込んだ状態のもの(樹脂含浸繊維束)、繊維束の表面のみが樹脂で覆われた状態のもの(樹脂表面被覆繊維束)、それらの中間のもの(繊維束の表面が樹脂で覆われ、表面近傍のみに樹脂が含浸され、中心部にまで樹脂が入り込んでいないもの)(樹脂一部含浸繊維束)などが含まれる。樹脂含浸繊維束としては、例えば、ダイセルポリマー(株)から販売されているプラストロン(商品名)などを使用することもできる。
【0065】
<第2の射出成形体>
図7、
図8により、平面形状が略U字形状である第2の射出成形体の幾つかの例を説明する。ここで略U字形状は、Uの字形と同じか、またはそれに近似した形状を意味しており、
図7、
図8に示す射出成形体1Bの平面形状はU字形状に近似した形状である。
【0066】
図7、
図8に示す射出成形体1Bは、第1の支持板部10と第2の支持板部20に対するブリッジ部30の接続位置が異なることから平面形状が略U字形状であるほかは、
図1、
図2に示す射出成形体1(平面形状が略H字形状)と同じ材料や構成を有するものであってよい。
【0067】
図示の例では、板状のブリッジ部30は、第1支持板部10の第1短辺側面13側と第2支持板部20の第1短辺側面23側を接続しており、第1短辺側面13、ブリッジ部の第1側面33、第1短辺側面23は面一になっている。ブリッジ部30がない部分の第1支持板部10と第2支持板部20の間隔は等間隔であってよいが、部分的に間隔が異なっていてもよい。
【0068】
図9に示す例において、射出成形体1Cは、
図7、
図8に示す例の射出成形体1Bとはブリッジ部の形状が異なるほかは同じものであるが、平面形状はU字形状である。この例において、ブリッジ部130の形状は
図5に示す射出成形体1Aのブリッジ部130の形状と同じであってよい。
【0069】
ブリッジ部130は、第1支持板部10の第1短辺側面13側、および第2支持板部20の第1短辺側面23側に凸状に湾曲している。この板状のブリッジ部130は、第1支持板部10の第1短辺側面13側と第2支持板部20の第1短辺側面23側を接続しており、第1短辺側面13、ブリッジ部の第1側面133、第1短辺側面23は面一の湾曲面になっていることができる。
【0070】
幾つかの例によれば、
図1~
図8に示す射出成形体1、1A~1Cは、自転車のサスペンション部品として使用することができる。例えば、
図1、
図2に示す射出成形体1を自転車の後輪と接続されたシャフトに取り付けることで、走行時における衝撃を緩和するための自転車のサスペンション部品として使用することができる。
【0071】
上記の例のように使用したとき、自転車の走行時において第1支持板部10と第2支持板部20に対して上下方向への連続的な振動が加えられることになる。このとき、第1支持板部10と第2支持板部20を接続するブリッジ部30の中央部に対して特に大きな応力が加えられることになるが、繊維状充填材51、52がブリッジ部30の長さ方向に沿う方向または長さ方向に斜行する方向に存在しており、前記応力に対する抵抗力が大きいため、ブリッジ部30の破損が防止され、サスペンション部品として衝撃吸収作用を継続して発揮することができる。
【0072】
また射出成形体1は、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体であるため、アルミニウムなどの金属を使用したものと比べると多種多様な形状の成形体に容易に対応することができるほか、軽量化することもできる。
【0073】
<射出成形体の製造方法>
本発明の幾つかの例によれば、射出成形体1、1A~1Cは、射出成形機、スプルーおよび必要に応じてランナーを含む樹脂供給経路を経てゲートから金型内に熱可塑性樹脂組成物を射出して製造することができる。本発明の幾つかの例による製造方法においては、使用するゲートの形状とゲートの金型に対する接続位置に特徴がある。射出形態に応じて、スプルーとゲートを接続して使用してもよく、またスプルー、ランナー、ゲートを接続して使用してもよい。
【0074】
図10(a)に示す1つの例において、ゲート60は、スプルー側(ランナーがあるときはランナー側)の第1開口部61と成形体側の第2開口部62を有している。第1開口部61と第2開口部62の形状は同じ形状であることが好ましく、例えば、長方形、楕円形、長円形、長方形を除く四角形、円形、その他の多角形にすることができる。第1開口部61の大きさと第2開口部62の大きさの関係に応じて、以下に示すような様々な実施形態のゲート60を使用することができる。
【0075】
1つの例では、第1開口部61と第2開口部62のそれぞれが正方形または長方形であるとき、例えば
図10に示すように、第1開口部61の短辺長さa1と第2開口部62の短辺長さb1がa1=b1、第1開口部61の長辺長さa2と第2開口部62の長辺長さb2がb2/a2=1.5~20である実施形態。本発明の幾つかの例において、b2/a2は2~20が好ましく、3~10がより好ましい。なお正方形の場合、短辺長さと長辺長さは等しくなる。
【0076】
別の例では、第1開口部61と第2開口部62のそれぞれが正方形または長方形であるとき、例えば
図11に示すように、第1開口部61の短辺長さa1と第2開口部62の短辺長さb1がa1<b1、第1開口部61の長辺長さa2と第2開口部62の長辺長さb2がa2<b2であり、第1開口部61の断面積s1と第2開口部62の断面積s2がs2/s1=2~600である実施形態。本発明の幾つかの例において、s2/s1は2~100が好ましく、3~60がより好ましい。なお正方形の場合、短辺長さと長辺長さは等しくなる。
【0077】
さらに別の、図示しない例では、第1開口部と第2開口部のそれぞれが円形、楕円形または長円形であるとき、第1開口部の直径または短軸長さa3と前記第2開口部の直径または短軸長さb3がa3=b3、前記第1開口部の直径または長軸長さa4と前記第2開口部の直径または長軸長さb4がb4/a4=1.5~20である実施形態。本発明の幾つかの例において、b4/a4は2~20が好ましく、3~10がより好ましい。なお円の場合、短軸長さと長軸長さは等しくなる。
【0078】
さらに別の、やはり図示しない例では、第1開口部と第2開口部のそれぞれが円形、楕円形または長円形であるとき、前記第1開口部の短軸長さa3と前記第2開口部の短軸長さb3がa3<b3、前記第1開口部の長軸長さa4と前記第2開口部の長軸長さb4がa4<b4であり、前記第1開口部の断面積s3と前記第2開口部の断面積s4/s3=2~600である実施形態。本発明の幾つかの例において、s4/s3は2~100が好ましく、3~60がより好ましい。なお円の場合、短軸長さと長軸長さは等しくなる。
【0079】
さらに別の、やはり図示しない例では、第1開口部と第2開口部が上記以外の形状であるとき、第1開口部の断面積s5と第2開口部の断面積s6が、s6/s5=2~600である実施形態。本発明の幾つかの例において、s6/s5は2~100が好ましく、3~60がより好ましい。
【0080】
本発明の幾つかの例において、ゲート長さ(L)は、L/a2が0.5~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0081】
本発明の例による製造方法では、ブリッジ部30、130中の繊維状充填材の配向を
図4、
図6に示すように制御するため、ブリッジ部30、130の寸法とゲート60の第1開口部61、第2開口部62の寸法を関連づけることが好ましい。
【0082】
第1開口部61と第2開口部62のそれぞれが正方形または長方形であるとき、本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30(ブリッジ部130)の厚さ(t1)、幅(w1)とゲート60の第2開口部62の短辺長さb1と長辺長さb2が、t1/b1=1~6、w1/b2=0.2~8の関係を満たしていることが好ましい。
【0083】
第1開口部と第2開口部のそれぞれが円形、楕円形または長円形であるとき、本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30(ブリッジ部130)の厚さ(t1)、幅(w1)とゲートの第2開口部の短軸長さb3と長軸長さb4が、t1/b3=1~6、w1/b4=0.2~8の関係を満たしていることが好ましい。
【0084】
第1開口部と第2開口部が上記以外の形状であるとき、例えば正方形、長方形以外の四角形または円形、楕円形または長円形以外の円形形状であるとき、本発明の幾つかの例において、ブリッジ部30(ブリッジ部130)の厚さ(t1)、幅(w1)と上記四角形の最大長さLmaxまたは上記円形形状の直径Dが、t1/LmaxまたはD=1~5、w1/LmaxまたはD=0.2~8の関係を満たしていることが好ましい。
【0085】
本発明の幾つかの例において、ゲート60は、射出成形体1、1A~1Cの板状のブリッジ部30(ブリッジ部130)の第1面31(第1面131)、第2面32(第2面132)、第1側面33(第1側面133)、第2側面34(第2側面134)の四面のうちの少なくとも一つの面に相当する金型の位置に第2開口部62を接続して射出成形することができる。
【0086】
本発明の幾つかの例において、ゲート60は、上記した四面のうちの2カ所以上に第2開口部62を接続して射出成形してもよい。このときは、2カ所以上で同時に射出成形することができる。
【0087】
本発明の幾つかの例において、ゲート60の接続位置は、第1面31(第1面131)、第2面32(第2面132)、第1側面33(第1側面133)、第2側面34(第2側面134)のそれぞれの長さ方向の中間位置であってよく、面積中心位置であることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0088】
本発明の幾つかの例において、上記した四面のうちのどの面に相当する金型の位置にゲート60の第2開口部62を接続するかは、射出成形体1、1A~1Cに形成されるゲート60の接続痕と射出成形体1、1A~1Cの用途に応じて選択することができる。例えば、射出成形体1を取り付け対象(自転車など)に取り付けたとき、前記ゲートの接続痕が他部品の影になって見えないようにすることで製品外観が高められるときは、前記他部品との位置関係を考慮して四面のうちのいずれかに接続するかを選択することができる。
【0089】
本発明の例による製造方法を適用することによって、ブリッジ部30(ブリッジ部130)中の繊維状充填材の配向を
図4または
図6に示すように制御することができるため、第1支持板部10と第2支持板部20に対して加えられる振動(衝撃)によりブリッジ部30(ブリッジ部130)に応力が集中されるようなことがあっても、ブリッジ部30(ブリッジ部130)が破損し難くなる。
【実施例】
【0090】
実施例1~5、比較例1~3
図1(a)、
図2に示す構成を有する射出成形体1を製造した。熱可塑性樹脂組成物としては、プラストロン(樹脂含浸繊維束;炭素繊維40質量%含有ポリアミド,PAX-CF40-02(L9)F01L,長さ9mm)(ダイセルポリマー(株)製)を使用した。
【0091】
表1に示す寸法のゲートの第2開口部をブリッジ部30の第1側面33の長さ方向の中間位置に相当する金型部分に、第2開口部の長さ方向がブリッジ部30の第1面31および第2面32と平行になるように接続して射出成形した。
【0092】
ゲート60は、例えば
図10(a)から
図10(c)、
図11(a)、(b)に示すような形状のものであり、a1、a2、b1、b2の各寸法(mm)、ゲート長さL(mm)は表1に示すとおりである。なお、比較例1のゲート(
図12(b)の70)は、
図10に当てはめればa1=a2=b1=b2の棒状ゲートである。比較例2のゲートは第1開口部が第2開口部より大きく、ゲート60を逆向きにした形状であり、比較例3のゲートは断面が長方形の棒状ゲートである。ブリッジ部は、
図2に示す寸法t1、w1、L1が表1に示す値を有していた。
【0093】
(射出成形条件)
射出成形機:日本製鋼所のJ150EII
シリンダー温度:280℃
金型温度:130℃
【0094】
【0095】
炭素繊維の配向状態は、ブリッジ部30を厚さ約1/2の位置を長さ方向に二分割した断面の顕微鏡観察(10倍)で評価した。
【0096】
実施例1~5では、ブリッジ部30の長さ方向に沿う方向、または前記長さ方向に斜行する方向に存在している炭素繊維量が半分を超えており、前記長さ方向に直交する方向に存在している炭素繊維の量が半分未満であった(〇評価)。
【0097】
比較例1~3では、実施例1~5の結果とは逆にブリッジ部30の長さ方向に沿う方向、または前記長さ方向に斜行する方向に存在している炭素繊維は半分未満程度であり、残部の半分量を超える量の炭素繊維は、前記長さ方向に直交する方向に存在していた(×評価)。
【0098】
試験例1
実施例1~5と比較例1~3と同様にして実施した場合の炭素繊維の配向状態(配向度)をシミュレーションした。結果を表2に示す。表2中の配向度は、ゲートの長さ方向の延長方向(射出成形時における樹脂および炭素繊維の流れ方向)と同方向に配向された炭素繊維の存在確率で示した。
【0099】
表2において、数値が1に近づくほど、ゲートの長さ方向の延長方向と同方向に存在している炭素繊維(
図4の繊維状充填材53)量が多いことを意味し、数値が0に近づくほど、ゲートの長さ方向の延長方向と同方向に存在している炭素繊維(
図4の繊維状充填材53)量が少なく、ゲートの長さ方向の延長方向と直交または斜行する、すなわちブリッジ部の長さ方向に沿う方向またはこれに斜行する方向に配向された炭素繊維(
図4の繊維状充填材51,52)量が増えることを示している。
【0100】
表2中のブリッジ部全体の平均は、
図12(a)、(b)中の四角で囲んだ領域A(5mm×5mm)内の30箇所以上を測定したときの数値の大きい方から上位5箇所(ブリッジ部の部分1~ブリッジ部の部分5)の平均である。
【0101】
シミュレーション条件は、以下のとおりであった。
シミュレーションソフト:Autodesk Moldflow Insight 2019
【0102】
【0103】
シミュレーションの結果からも、実施例1~5では
図4の繊維状充填材51、52に相当するものの割合が高く、比較例1~3では
図4の繊維状充填材53に相当するものの割合が高いことが明確になった。
【0104】
試験例2
実施例1~5および比較例1~3と同様にして製造した場合の、
図1(b)に示す構成を有する射出成形体について、ブリッジ部における最大発生応力のシミュレーションを実施した。
【0105】
図1(b)において、第1支持板部10と第2支持板部20のそれぞれの貫通孔41、42を固定した状態で、貫通孔40と貫通孔42の中心を通る線(基準線X)を引き、前記基準線Xと角度140度で交わる方向(
図1(b)の矢印Y方向)から、第1短辺14と第2短辺24を19.6MPa(200kgf)で押し上げたときのブリッジ部30の上側表面の最大発生応力を計算した。
【0106】
計算にあたっては、上記のようにシミュレーションソフト:Autodesk Moldflow Insight 2019で求めた繊維配向データを連成させて、構造解析ソフトでシミュレーションを行った。構造解析用のシミュレーションソフトとしては、:ADVENTUREClusterを使用した。結果を表3に示す。実施例1~5の最大発生応力は、比較例1~3の最大発生応力より、小さい値を示している。
【0107】
【0108】
実施例1の射出成形体(ゲート60を使用)の最大発生応力は120MPa、比較例1の射出成形体の応力(ゲート70を使用)の最大発生応力は150MPaであった。この結果は、第1短辺14と第2短辺24を19.6MPa(200kgf)で押し上げたときのブリッジ部30の上側表面の最大発生応力は実施例1の方が小さくなって、ブリッジ部が折れにくいことを示している。他の実施例および比較例についても同様に理解できる。
【0109】
これらの結果は、ブリッジ部中の炭素繊維の配向状態の違いによるものと考えられ、実施例1、比較例1における炭素繊維の配向状態の肉眼観察と、試験例1のシミュレーション試験の結果とも対応していた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の例による射出成形体は、連続的に振動が加えられるような用途に適しており、例えば自転車のサスペンション部品として利用することができる。
【0111】
1、1A、1B、1C 射出成形体
10 第1支持板部
20 第2支持板部
30、130 ブリッジ部
40~42 貫通孔