(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】熱輸送デバイスおよび熱輸送デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 102H
(21)【出願番号】P 2020112765
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179563(JP,A)
【文献】特開2016-035348(JP,A)
【文献】特開2005-136117(JP,A)
【文献】特開2010-151352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H05K 7/20
H01L 23/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるコンテナを備えた熱輸送デバイスであって、
前記コンテナは、積層される複数の板状部材からなり、
複数の前記板状部材は、それぞれの外縁側において、互いに隣り合う前記板状部材が当接する当接部を有し、
積層された複数の前記板状部材は、前記当接部の外周
側において、互いに隣り合う前記板状部材同士の対向する面が離間する離間部を有し、
前記当接部は、固定される固定部分と、前記固定部分に隣接した位置に設けられ、隣り合う前記板状部材を支持する支持部分と、を有し、
前記離間部は、互いに隣り合う前記板状部材の少なくとも一方が、互いに隣り合う前記板状部材同士の対向する面が離れる方向に屈曲されることによって形成され
、
互いに隣り合う前記板状部材における、前記離間部の外周側に位置する部分の間隔は、前記離間部の間隔よりも小さく形成されている
熱輸送デバイス。
【請求項2】
複数の前記板状部材は、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金からなる群から選択される1種以上の金属または合金によって構成される
請求項1に記載の熱輸送デバイス。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
複数の前記板状部材を積層して前記離間部を形成する工程と、
積層した複数の前記板状部材の前記当接部にレーザ光を照射して隣り合う板状部材の前記当接部同士を溶接する工程と、を有する
熱輸送デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナに封入された作動流体を、相変化させながら循環させることにより熱を輸送する熱輸送デバイスおよび熱輸送デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱輸送デバイスとしては、作動流体が封入される空間が形成されたコンテナを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記コンテナは、対向する一対の板状部材からなり、一対の板状部材のそれぞれの外縁部同士を溶接することで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記コンテナは、それぞれの板状部材に歪が生じると、一対の板状部材の外縁部同士を互いに対向させたとしても、一対の板状部材の外縁部の間に隙間が生じることになり、一対の板状部材の外縁部の間を隙間なく溶接することが困難である。
【0006】
本発明の目的とするところは、隣り合う板状部材同士が溶接される部分における隙間の発生を有効に抑制し、板状部材の曲げ強度を向上させるとともに、板状部材の平坦度を向上させて発熱体と板状部材との間の熱抵抗の低減を図ることのできる熱輸送デバイスおよび熱輸送デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱輸送デバイスは、作動流体が封入されるコンテナを備えた熱輸送デバイスであって、前記コンテナは、積層される複数の板状部材からなり、複数の前記板状部材は、それぞれの外縁側において、互いに隣り合う前記板状部材が当接する当接部を有し、積層された複数の前記板状部材は、前記当接部の外周側において、互いに隣り合う前記板状部材同士の対向する面が離間する離間部を有し、前記当接部は、固定される固定部分と、前記固定部分に隣接した位置に設けられ、隣り合う前記板状部材を支持する支持部分と、を有し、前記離間部は、互いに隣り合う前記板状部材の少なくとも一方が、互いに隣り合う前記板状部材同士の対向する面が離れる方向に屈曲されることによって形成され、互いに隣り合う前記板状部材における、前記離間部の外周側に位置する部分の間隔は、前記離間部の間隔よりも小さく形成されている。
【0011】
また、本発明の熱輸送デバイスは、複数の前記板状部材が、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金からなる群から選択される1種以上の金属または合金によって構成される。
【0012】
また、本発明の熱輸送デバイスの製造方法は、複数の前記板状部材を積層して前記離間部を形成する工程と、積層した複数の前記板状部材の前記当接部にレーザ光を照射して隣り合う板状部材の前記当接部同士を溶接する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、当接部が離間部に隣接した位置に設けられるため、当接部同士を確実に当接させることが可能となる。また、当接部同士を溶接によって接合した場合に、固定部分に隣接する支持部分によって互いに隣り合う板状部材の当接部を支持することが可能となるので、隣り合う板状部材同士が溶接される外縁部における隙間の発生を有効に抑制し、板状部材の曲げ強度を向上させるとともに、板状部材の平坦度を向上させて発熱体と板状部材との間の熱抵抗の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示す熱輸送デバイスとしてのベーパーチャンバの平面図である。
【
図4】
図4は、第2板状部材における凸体を形成する範囲を示す図である。
【
図5】
図5は、コンテナの製造方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、凸体のその他の例を示す図であり、
図6(a)が溶接前のコンテナの要部の断面図であり、
図6(b)が溶接後のコンテナの要部の断面図である。
【
図7】
図7は、凸体のその他の例を示す図であり、
図7(a)が溶接前のコンテナの要部の断面図であり、
図7(b)が溶接後のコンテナの要部の断面図である。
【
図8】
図8は、第2板状部材の凸体の範囲のその他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態を示す図であり、
図9(a)が溶接前のコンテナの要部の断面図であり、
図9(b)が溶接後のコンテナの要部の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態を示す図であり、
図10(a)が溶接前のコンテナの要部の断面図であり、
図10(b)が溶接後のコンテナの要部の断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4実施形態を示す図であり、
図11(a)が溶接前のコンテナの要部の断面図であり、
図11(b)が溶接後のコンテナの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1乃至
図5は、本発明の第1実施形態を示すものである。
図1は、ベーパーチャンバの平面図であり、
図2は、
図1のA-A線上の断面図であり、
図3は、コンテナの要部の断面図であり、
図4は、第2板状部材における凸体を形成する範囲を示す図であり、
図5は、コンテナの製造方法を説明する図である。
【0016】
本発明の熱輸送デバイスとしてのベーパーチャンバ1は、電子機器を構成する部品等、使用によって発熱する発熱体2から放出された熱を大気中に放出するためのものである。このベーパーチャンバ1は、発熱体2から放出された熱を、作動流体を液相から気相に変化させるときの蒸発潜熱として吸収させることによって発熱体2を冷却する。ベーパーチャンバ1は、気相の作動流体の熱を、大気中に放出させて作動流体を液相に変化させることによって、発熱体2の冷却を継続的に行う。
【0017】
ここで、作動流体としては、例えば、水、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコールおよびこれらの混合物が用いられる。
【0018】
ベーパーチャンバ1は、
図1に示すように、作動流体が封入されるコンテナ10を備えている。コンテナ10の内部空間には、封入された作動流体を移動させるための図示しないウィックが収容される。
【0019】
コンテナ10は、
図2に示すように、積層することによって作動流体が封入される内部空間が形成される第1板状部材11および第2板状部材12を有している。
【0020】
第1板状部材11および第2板状部材12は、それぞれ、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の熱伝導性の高い材料によって形成されている。
【0021】
第1板状部材11は、金属板のプレス加工によって平面状に形成され、
図2に示すように、外周側の全周にわたって外縁部11aが設けられている。外縁部11aの内周側には、
図3に示すように、周方向にわたって第2板状部材12に当接する当接部11bが設けられている。第1板状部材11の当接部11bは、外縁部11aの内周側において周方向に沿って第2板状部材12側に突出する筋状の凸体11cに設けられている。凸体11cは、
図4に示すように、第1板状部材11の外縁部11aの周方向の全体にわたって形成されている。
【0022】
第2板状部材12は、金属板のプレス加工によって形成され、
図2に示すように、第1板状部材11の外縁部11aに対向する位置において、外周側の全周にわたって外縁部12aが設けられている。第2板状部材12は、外縁部12aを除く部分が第1板状部材11から離れる方向に張り出している。外縁部12aの内周側には、
図3に示すように、周方向にわたって第1板状部材11の当接部11b(凸体11c)が当接する当接部12bが設けられている。
【0023】
積層された第1板状部材11および第2板状部材12は、それぞれの外縁部11a,12aにおける当接部11b,12bの外周側において、第1板状部材11および第2板状部材12の対向する面が離間する離間部10aを有している。
【0024】
ここで、コンテナ10は、第1板状部材11の当接部11b(凸体11c)と第2板状部材12の当接部12bとを互いに当接させ、離間部10aを外側から固定治具Jによって挟持した状態で、それぞれの当接部11b,12b同士をレーザ溶接することによって形成される。
【0025】
レーザ溶接は、レーザ光を熱源として用いる溶接であり、第2板状部材12の当接部12bの外側から当接部11b,12bに向けてレーザ光を照射することによって行う。
【0026】
溶接された当接部11b,12bは、溶接によって固定される固定部分11b1,12b1と、前記固定部分11b1,12b1の外周側および内周側に隣接した位置において、第1板状部材11の当接部11bに対して第2板状部材12の当接部12bを支持する支持部分11b2,12b2と、を有している。
【0027】
以上のように構成されたベーパーチャンバ1において、コンテナ10を製造する方法について説明する。
【0028】
まず、
図5(a)に示すように、第1板状部材11および第2板状部材12を、それぞれ、プレス加工によって形成する。このとき、凸体11cは、第1板状部材11をプレス加工によって形成する際に同時に形成される。
【0029】
次に、
図5(b)に示すように、第1板状部材11および第2板状部材12を積層して当接部11b,12b同士を互いに対向させて、当接部11b,12bの外周側に離間部10aを形成する。第1板状部材11および第2板状部材12を積層した後、当接部11b,12bの外周側(離間部10a)を固定治具Jによって挟持することによって、第1板状部材11および第2板状部材12を固定する。
【0030】
最後に、
図5(c)に示すように、第2板状部材12の当接部12bの外側から第1板状部材11の当接部11b(凸体11c)に向かってレーザ光を照射して当接部11b,12b同士を溶接し、第1板状部材11および第2板状部材12を一体に形成する。
【0031】
第1板状部材11の当接部11bは、プレス加工によって外縁部11aに沿って周方向にわたって形成された凸体11cを有しているため、第1板状部材11の曲げ強度が向上するとともに、当接部11bの周方向の平坦度が向上する。また、当接部11b,12bは、第1板状部材11の外縁部11aと第2板状部材12の外縁部12aとの間に形成された離間部10aに隣接した位置に設けられている。このため、第1板状部材11と第2板状部材12とを対向させると、当接部11b,12bは、周方向にわたって互いに隙間なく当接する。さらに、第1板状部材11と第2板状部材12とを対向させて当接部11b,12bの外周側(離間部10a)を固定治具Jによって挟持すると、当接部11b,12bが、周方向にわたってより強固に当接する。また、当接部11b,12bは、レーザ光の照射によって溶融して凝固する固定部分11b1,12b1において互いに固定される。このとき、当接部11b、12bの支持部分11b2,12b2は、溶接工程の前後において、高さ方向の大きさが変化しないため、第1板状部材11の当接部11bに対して第2板状部材12の当接部12bが高さ方向の位置を変化させることなく支持する。
【0032】
このように、本実施形態の熱輸送デバイスによれば、作動流体が封入されるコンテナ10を備えた熱輸送デバイスであって、コンテナ10は、積層される複数の板状部材11、12からなり、複数の板状部材11,12は、それぞれの外縁側において、互いに隣り合う板状部材11,12が当接する当接部11b,12bを有し、積層された複数の板状部材11,12は、当接部11b,12bの外周側および内周側の少なくとも一方において、互いに隣り合う板状部材11,12同士の対向する面が離間する離間部10aを有し、当接部11b,12bは、固定される固定部分11b1,12b1と、固定部分11b1,12b1に隣接した位置に設けられ、隣り合う板状部材11,12を支持する支持部分11b2,12b2と、を有している。
【0033】
これにより、当接部11b,12bが離間部10aに隣接した位置に設けられるため、当接部11b,12b同士を確実に当接させることが可能となる。また、当接部11b,12b同士を溶接によって接合した場合に、固定部分11b1,12b1に隣接する支持部分11b2,12b2によって当接部11bに対して当接部12bを支持することが可能となるので、隣り合う板状部材11,12同士が溶接される部分における隙間の発生を有効に抑制し、第1板状部材11の曲げ強度を向上させるとともに、第1板状部材11の平坦度を向上させて発熱体2と第1板状部材11との間の熱抵抗の低減を図ることができる。
【0034】
また、互いに隣り合う板状部材11,12の少なくとも一方の板状部材11の当接部11bは、対向する板状部材12の当接部12bに向かって突出する凸体11cに設けられ、離間部10aは、互いに隣り合う板状部材11,12の少なくとも一方の板状部材11の前記凸体11cに設けられた当接部11bが他方の板状部材12の当接部12bに当接されることによって形成されていることが好ましい。
【0035】
これにより、凸体11cによって形成された第1板状部材11の曲げ強度を向上させ、第1板状部材11の歪みを抑制することが可能となり、第1板状部材11の当接部11bと第2板状部材12の当接部12bとをより確実に当接させることができる。
【0036】
また、第1板状部材11および第2板状部材12は、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金からなる群から選択される1種以上の金属または合金によって構成されることが好ましい。
【0037】
これにより、コンテナ10の熱伝導性を向上させることが可能となるので、発熱体2から放出された熱を、作動流体を介して効率的に大気中に放出すること可能となり、発熱体2を冷却する性能の向上を図ることが可能となる。
【0038】
また、熱輸送デバイスの製造方法において、複数の板状部材11,12を積層して離間部10aを形成する工程と、積層した複数の板状部材11,12の当接部11b,12bにレーザ光を照射して隣り合う板状部材11,12の当接部11b,12b同士を溶接する工程と、を有することが好ましい。
【0039】
これにより、寸法精度の高いコンテナ10を形成することが可能となる。
【0040】
尚、前記第1実施形態では、第1板状部材11をプレス加工によって成型する際に同時に凸体11cを形成するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、
図6に示すように、第1板状部材11の当接部11bとして、第1板状部材11と同種類の金属材料からなる凸体11c1を第1板状部材11に取り付けてもよい。また、
図7に示すように、第1板状部材11の当接部11bとして、第1板状部材11と異なる種類の金属材料からなる凸体11c2を第1板状部材11に取り付けてもよい。
【0041】
また、前記第1実施形態では、凸体11cを、第1板状部材11の外縁部11aの周方向の全体にわたって形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、
図8に示すように、第1板状部材11の外縁部11aの最終的に封止する部分11dを除いた、周方向の全体にわたって凸体11cを形成し、最終的に封止する部分11dをシーム溶接等の抵抗溶接、TIG溶接等のアーク溶接、レーザ溶接等によって封止してもよい。
【0042】
また、前記第1実施形態では、第1板状部材11にのみ凸体11cを形成し、凸体11cを第2板状部材12の平面状の当接部12bに当接させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。当接部11b,12bの内周側または外周側に離間部10aが形成されるものであれば、例えば、第2板状部材12にのみに凸体を形成し、第1板状部材11の平面状の当接部11bに当接させるようにしもよい。また、例えば、第1板状部材11および第2板状部材12の両方に凸体を形成し、凸体同士を当接させるようにしてもよい。
【0043】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態を示すものであり、
図9(a)は、溶接前のコンテナの断面図であり、
図9(b)は、溶接後のコンテナの断面図である。尚、前記第1実施形態と同様の構成部分には、同一の符号を付して示す。
【0044】
離間部10aは、互いに隣り合う板状部材11,12の少なくとも一方において、互いに隣り合う板状部材11,12同士の対向する面側の一部の部材が除去されることによって形成されていることが好ましい。
【0045】
本実施形態のベーパーチャンバ1のコンテナ10は、第1板状部材11の当接部11bおよび第2板状部材12の当接部12bがそれぞれ平面状に形成されている。また、離間部10aは、第1板状部材11において、互いに隣り合う第1および第2板状部材11,12の当接部11b,12bの外周側で対向する面側の一部の部材をエッチング加工によって除去することによって形成されている。
【0046】
以上のように構成されたベーパーチャンバ1において、当接部11b、12bは、それぞれ平面状に形成され、第1板状部材11の外縁部11aと第2板状部材12の外縁部12aとの間に形成された離間部10aに隣接した位置に設けられている。このため、第1板状部材11と第2板状部材12とを対向させると、当接部11b,12bは、周方向にわたって互いに隙間なく当接する。さらに、第1板状部材11と第2板状部材12とを対向させて当接部11b,12bの外周側(離間部10a)を固定治具Jによって挟持すると、当接部11b,12bが、周方向にわたってより強固に当接する。また、当接部11b,12bは、レーザ光の照射によって溶融して凝固する固定部分11b1,12b1において互いに固定される。また、当接部11b、12bの支持部分11b2,12b2は、溶接工程の前後において、高さ方向の大きさが変化しないため、第1板状部材11の当接部11bに対して第2板状部材12の当接部12bが高さ方向の位置を変化させることなく支持する。
【0047】
このように、本実施形態の熱輸送デバイスによれば、前記第1実施形態と同様に、当接部11b,12bが離間部10aに隣接した位置に設けられるため、当接部11b,12b同士を確実に当接させることが可能となる。また、当接部11b,12b同士を溶接によって接合した場合に、固定部分11b1,12b1に隣接する支持部分11b2,12b2によって当接部11bに対して当接部12bを支持することが可能となるので、隣り合う板状部材11,12同士が溶接される部分における隙間の発生を有効に抑制し、第1板状部材11の曲げ強度を向上させるとともに、第1板状部材11の平坦度を向上させて発熱体2と第1板状部材11との間の熱抵抗の低減を図ることができる。
【0048】
また、離間部10aは、第2板状部材12と隣り合う第1板状部材11の外縁部11aの一部の部材が除去されることによって形成されている。
【0049】
これにより、第1板状部材11および第2板状部材12の外縁部11a,12aを厚さ方向に大きくすることなく離間部10aを形成することができ、コンテナ10の厚さ方向の大型化を抑制することが可能となる。
【0050】
尚、前記第2実施形態では、第1板状部材11の一部の部材を除去することによって、当接部11b,12bに隣接する位置に離間部10aを形成するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。当接部11b,12bに隣接する位置に離間部が形成されるものであれば、例えば、第2板状部材12の一部の部材のみを除去することによって、当接部11b,12bに隣接する位置に離間部を形成するようにしてもよい。また、例えば、第1板状部材11および第2板状部材12のそれぞれの一部の部材を除去することによって、当接部11b,12bに隣接する位置に離間部を形成するようにしてもよい。
【0051】
<第3実施形態>
図10は本発明の第3実施形態を示すものであり、
図10(a)は、溶接前のコンテナの要部の断面図であり、
図10(b)は、溶接後のコンテナの要部の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0052】
離間部10aは、互いに隣り合う板状部材11,12の少なくとも一方が、互いに隣り合う板状部材11,12同士の対向する面が離れる方向に屈曲することによって形成されていることが好ましい。
【0053】
本実施形態のベーパーチャンバ1を構成するコンテナ10は、第1板状部材11および第2板状部材12のそれぞれの当接部11b,12bがそれぞれ平面状に形成されている。また、離間部10aは、第1および第2板状部材11,12の当接部11b,12bの外周側において、対向する面が離れる方向に第1板状部材11を屈曲することによって形成されている。ここで、離間部10aを形成するために屈曲される部分は、プレス加工によって第1板状部材11を形成する際に同時に形成される。
【0054】
以上のように構成されたベーパーチャンバ1において、当接部11b、12bは、それぞれ平面状に形成され、第1板状部材11の外縁部11aと第2板状部材12の外縁部12aとの間に形成された離間部10aに隣接した位置に設けられている。このため、第1板状部材11と第2板状部材12とを対向させると、当接部11b,12bは、周方向にわたって互いに隙間なく当接する。さらに、第1板状部材11と第2板状部材12とを対向させて当接部11b,12bの外周側(離間部10a)を固定治具Jによって挟持すると、当接部11b,12bが、周方向にわたってより強固に当接する。また、当接部11b,12bは、レーザ光の照射によって溶融して凝固する固定部分11b1,12b1において互いに固定される。また、当接部11b、12bの支持部分11b2,12b2は、溶接工程の前後において、高さ方向の大きさが変化しないため、第1板状部材11の当接部11bに対して第2板状部材12の当接部12bが高さ方向の位置を変化させることなく支持する。
【0055】
このように、本実施形態の熱輸送デバイスによれば、前記第1実施形態と同様に、当接部11b,12bが離間部10aに隣接した位置に設けられるため、当接部11b,12b同士を確実に当接させることが可能となる。また、当接部11b,12b同士を溶接によって接合した場合に、固定部分11b1,12b1に隣接する支持部分11b2,12b2によって当接部11bに対して当接部12bを支持することが可能となるので、隣り合う板状部材11,12同士が溶接される部分における隙間の発生を有効に抑制し、第1板状部材11の曲げ強度を向上させるとともに、第1板状部材11の平坦度を向上させて発熱体2と第1板状部材11との間の熱抵抗の低減を図ることができる。
【0056】
また、離間部10aは、第1板状部材11が、第1および第2板状部材11,12の当接部11b,12bの外周側の互いに対向する面が離れる方向に屈曲することによって形成されている。
【0057】
これにより、第1板状部材11の周方向にわたって外縁部11aが屈曲されるため、第1板状部材11の曲げ強度を向上させることが可能となる。また、離間部10aを形成するために屈曲される部分は、プレス加工によって第1板状部材11を形成する際に同時に形成することができるため、加工工数の増大を抑制することが可能となる。
【0058】
尚、前記第3実施形態では、第1板状部材11の外縁部11aを屈曲することによって、当接部11b,12bに隣接する位置に離間部10aを形成するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。当接部11b,12bに隣接して離間部10aが形成されるものであれば、例えば、第2板状部材12の外縁部12aのみを屈曲することによって、当接部11b,12bに隣接する位置に離間部を形成するようにしてもよい。また、例えば、第1板状部材11および第2板状部材12のそれぞれの外縁部11a,12aを屈曲することによって、当接部11b,12bに隣接する位置に離間部を形成するようにしてもよい。
【0059】
<第4実施形態>
図11は本発明の第4実施形態を示すものであり、
図11(a)は、溶接前のコンテナの断面図であり、
図11(b)は、溶接後のコンテナの断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0060】
本実施形態のベーパーチャンバ1を構成するコンテナ10は、最外層を構成する第1板状部材11および第2板状部材12と、第1板状部材11と第2板状部材12との間に配置された第3板状部材13と、からなる。
【0061】
第1板状部材11の当接部11bは、外縁部11aの内周側において周方向に沿って第3板状部材13側に突出する筋状の凸体11cに設けられている。
【0062】
第2板状部材12の当接部12bは、外縁部12aの内周側において周方向に沿って第3板状部材13側に突出する筋状の凸体12cに設けられている。
【0063】
第3板状部材13の当接部13bは、外縁部13aの内周側において、第1板状部材11の当接部11b(凸体11c)および第2板状部材12の当接部12b(凸体12c)が当接する平面状に形成されている。
【0064】
積層された第1板状部材11および第3板状部材13は、当接部11b(凸体11c)および当接部13bを互いに当接させた状態で、それぞれの外縁部11a,13aにおける当接部11b,13bの外周側において、対向する面が離間する離間部10bを有している。また、積層された第2板状部材12および第3板状部材13は、当接部12b(凸体12c)および当接部13bを互いに当接させた状態で、それぞれの外縁部12a,13aにおける当接部12b,13bの外周側において、対向する面が離間する離間部10cを有している。
【0065】
以上のように構成されたベーパーチャンバ1において、第1板状部材11の当接部11bおよび第2板状部材12の当接部12bは、プレス加工によって外縁部11a,12aに沿って周方向にわたって形成された凸体11c,12cを有しているため、第1板状部材11および第2板状部材12の曲げ強度が向上するとともに、当接部11b,12bの周方向の平坦度が向上する。また、当接部11b,12b,13bは、離間部10b,10cに隣接した位置に設けられている。このため、第1板状部材11、第2板状部材12および第3板状部材13を積層すると、当接部11b,12b,13bは、周方向にわたって互いに隙間なく当接する。さらに、第1板状部材11、第2板状部材12および第3板状部材13を積層して当接部11b,12b,13bの外周側(離間部10b,10c)を固定治具Jによって挟持すると、当接部11b,12b,13bが、周方向にわたってより強固に当接する。また、当接部11b,12b,13bは、レーザ光の照射によって溶融して凝固する固定部分11b1,12b1,13b1において互いに固定される。このとき、当接部11b,12b,13bの支持部分11b2,12b2,13b2は、溶接工程の前後において、高さ方向の大きさが変化しないため、第3板状部材13の当接部13bに対して第1板状部材11の当接部11bおよび第2板状部材12の当接部12bが高さ方向の位置を変化させることなく支持する。
【0066】
このように、本実施形態の熱輸送デバイスによれば、前記第1実施形態と同様に、当接部11b,12b,13bが離間部10b,10cに隣接した位置に設けられるため、当接部11b,13b同士および当接部12b,13b同士を確実に当接させることが可能となる。また、当接部11b,13b同士および当接部12b,13b同士を溶接によって接合した場合に、固定部分11b1,12b1,13b1に隣接する支持部分11b2,12b2,13b2によって当接部13bに対して当接部11bおよび当接部12bを支持することが可能となるので、隣り合う板状部材11,12,13同士が溶接される部分における隙間の発生を有効に抑制し、第1および第2板状部材11,12の曲げ強度を向上させるとともに、第1板状部材11の平坦度を向上させて発熱体2と第1板状部材11との間の熱抵抗の低減を図ることができる。
【0067】
尚、前記第4実施形態では、第1板状部材11、第2板状部材12および第3板状部材13を積層することによってコンテナ10を形成するようにしたものを示したが、4枚以上の板状部材を積層することによって形成したコンテナに対して本発明を適用可能である。
【0068】
また、前記第1乃至第4実施形態では、コンテナ10を備えた熱輸送デバイスとしてベーパーチャンバ1を示したが、複数の板状部材を積層して形成されるコンテナを備えるものであれば、例えば、薄型のヒートパイプのコンテナに対して本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ベーパーチャンバ
10 コンテナ
10a 離間部
10b 離間部
10c 離間部
11 第1板状部材
11a 外縁部
11b 当接部
11b1 固定部分
11b2 支持部分
11c 凸体
11c1 凸体
11c2 凸体
12 第1板状部材
12a 外縁部
12b 当接部
12b1 固定部分
12b2 支持部分
12c 凸体
13 第3板状部材
13a 外縁部
13b 当接部
13b1 固定部分
13b2 支持部分