(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240813BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240813BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2020122121
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 夏実
(72)【発明者】
【氏名】永海 幸一
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004027(JP,A)
【文献】特開2014-186994(JP,A)
【文献】特開2020-061546(JP,A)
【文献】特開2010-040627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にプラズマ処理を行う装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、
前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
前記エッジリングに前記直流電圧を印加するための直流電源回路と、
前記エッジリングを除電するための除電回路と、
前記エッジリングと、前記直流電源回路又は前記除電回路との接続を切り替える切替ユニットと、
前記高周波電力と前記直流電圧を制御する制御部と、
備え、
前記制御部は、
(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止
し、さらに前記エッジリングを除電する工程と、
(b)前記高周波電力の供給を開始
すると共に、前記エッジリングの除電を停止し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、
(c)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止し、第2の遅延時間が経過した後、前記エッジリングの除電を開始する工程と、
を含む処理を実行するように前記装置を制御する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第2の遅延時間は0.1μs~1000μsである、請求項
1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記直流電源は、
第1の直流電圧を印加する第1の直流電源と、
前記第1の直流電圧と異なる第2の直流電圧を印加する第2の直流電源と、
を備え、
前記直流電圧の印加では、前記第1の直流電圧又は前記第2の直流電圧を印加する、請求項
1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1の遅延時間は0.1μs~1000μsである、請求項
1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
基板にプラズマ処理を行う装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、
前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
前記高周波電力と前記直流電圧を制御する制御部と、
備え、
前記制御部は、
(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止する工程と、
(b)前記高周波電力の供給を開始し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、
を含む処理を実行するように前記装置を制御
し、
前記直流電源は、
第1の直流電圧を印加する第1の直流電源と、
前記第1の直流電圧と異なる第2の直流電圧を印加する第2の直流電源と、
を備え、
前記直流電圧の印加では、前記第1の直流電圧又は前記第2の直流電圧を印加する、プラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の遅延時間は0.1μs~1000μsである、請求項
5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
基板にプラズマ処理を行う装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、
前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
前記高周波電力と前記直流電圧を制御する制御部と、
備え、
前記制御部は、
(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止する工程と、
(b)前記高周波電力の供給を開始し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、
を含む処理を実行するように前記装置を制御
し、
前記第1の遅延時間は0.1μs~1000μsである、プラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1の遅延時間は0.1μs~100μsである、請求項4、6又は7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1の遅延時間は1μs~300μsである、請求項4、6又は7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記エッジリングに前記直流電圧を印加するための直流電源回路を備え、
前記エッジリングを除電するための除電回路を備えていない、請求項
5~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記高周波電源は、
プラズマを生成するための第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源と、
前記静電チャックに載置された基板にイオンを引き込むための第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源と、
を備え、
前記高周波電力の供給では、前記第1の高周波電力及び前記第2の高周波電力のうち一方又は双方を供給する、請求項1~
10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
プラズマ処理装置を用いて基板にプラズマ処理を行う方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、
前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
前記エッジリングに前記直流電圧を印加するための直流電源回路と、
前記エッジリングを除電するための除電回路と、
前記エッジリングと、前記直流電源回路又は前記除電回路との接続を切り替える切替ユニットと、
備え、
前記方法は、
(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止
し、さらに前記エッジリングを除電する工程と、
(b)前記高周波電力の供給を開始
すると共に、前記エッジリングの除電を停止し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、
(c)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止し、第2の遅延時間が経過した後、前記エッジリングの除電を開始する工程と、
を含む、プラズマ処理方法。
【請求項13】
プラズマ処理装置を用いて基板にプラズマ処理を行う方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、
前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
備え、
前記方法は、
(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止する工程と、
(b)前記高周波電力の供給を開始し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、
を含
み、
前記直流電源は、
第1の直流電圧を印加する第1の直流電源と、
前記第1の直流電圧と異なる第2の直流電圧を印加する第2の直流電源と、
を備え、
前記直流電圧の印加では、前記第1の直流電圧又は前記第2の直流電圧を印加する、プラズマ処理方法。
【請求項14】
プラズマ処理装置を用いて基板にプラズマ処理を行う方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、
前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、
備え、
前記方法は、
(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止する工程と、
(b)前記高周波電力の供給を開始し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、
を含
み、
前記第1の遅延時間は0.1μs~1000μsである、プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チャンバ内に配されてウェハを載置する載置台と、載置台上においてウェハを囲むように配されるエッジリングとを備え、ウェハにプラズマ処理を施すプラズマ処理装置が開示されている。このプラズマ処理装置では、プラズマによって消耗したエッジリングに負の直流電圧を印加することで、シースの歪みを解消し、イオンをウェハの全面において垂直に入射させることを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理において基板のエッジ領域でのチルト角度を適切に制御しつつ、基板とエッジリングとの間の放電を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板にプラズマ処理を行う装置であって、チャンバと、前記チャンバの内部に設けられたステージであり、電極と、前記電極上に設けられた静電チャックと、前記静電チャック上に載置された基板を囲むように当該静電チャック上に配置されるエッジリングとを有する前記ステージと、前記ステージに高周波電力を供給する高周波電源と、前記エッジリングに負極性の直流電圧を印加する直流電源と、前記エッジリングに前記直流電圧を印加するための直流電源回路と、前記エッジリングを除電するための除電回路と、前記エッジリングと、前記直流電源回路又は前記除電回路との接続を切り替える切替ユニットと、前記高周波電力と前記直流電圧を制御する制御部と、備え、前記制御部は、(a)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止し、さらに前記エッジリングを除電する工程と、(b)前記高周波電力の供給を開始すると共に、前記エッジリングの除電を停止し、第1の遅延時間が経過した後、前記直流電圧の印加を開始する工程と、(c)前記高周波電力の供給を停止すると共に、前記直流電圧の印加を停止し、第2の遅延時間が経過した後、前記エッジリングの除電を開始する工程と、を含む処理を実行するように前記装置を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理において基板のエッジ領域でのチルト角度を適切に制御しつつ、基板とエッジリングとの間の放電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図2】本実施形態においてエッジリングに直流電圧を印加する電源系の説明図である。
【
図3】従来におけるRFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフを示す説明図である。
【
図4】本実施形態におけるRFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフを示す説明図である。
【
図5】本実施形態における高周波電力と直流電圧の経時変化を示す説明図である。
【
図6】
図5におけるRFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフの状態を示す表である。
【
図7】
図5における直流電源回路と除電回路の状態を示す説明図である。
【
図8】他の実施形態においてエッジリングに直流電圧を印加する電源系の説明図である。
【
図9】他の実施形態においてエッジリングに直流電圧を印加する電源系の説明図である。
【
図10】他の実施形態においてエッジリングに直流電圧を印加する電源系の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)にプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによってウェハを処理する。
【0009】
プラズマ処理は、プラズマ処理装置で行われる。プラズマ処理装置は、一般的に、チャンバ、ステージ、高周波(Radio Frequency:RF)電源を備える。一例では、高周波電源は、第1の高周波電源、及び第2の高周波電源を備える。第1の高周波電源は、チャンバ内のガスのプラズマを生成するために、第1の高周波電力を供給する。第2の高周波電源は、ウェハにイオンを引き組むために、バイアス用の第2の高周波電力を下部電極に供給する。チャンバはその内部空間を、プラズマが生成される処理空間として画成する。ステージは、チャンバ内に設けられている。ステージは、下部電極及び静電チャックを有する。静電チャックは下部電極上に設けられている。静電チャック上には、当該静電チャック上に載置されたウェハを囲むようにエッジリングが配置される。エッジリングは、ウェハに対するプラズマ処理の均一性を向上させるために設けられる。
【0010】
エッジリングは、プラズマ処理が実施される時間の経過に伴い、消耗する。エッジリングが消耗すると、エッジリングの厚みが減少する。エッジリングの厚みが減少すると、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方においてシースの形状が変化する。このようにシースの形状が変化すると、ウェハのエッジ領域におけるイオンの入射方向が鉛直方向に対して傾斜する。その結果、ウェハのエッジ領域に形成される開口が、ウェハの厚み方向に対して傾斜する。
【0011】
ウェハのエッジ領域においてウェハの厚み方向に平行に延びる開口を形成するためには、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方におけるシースの形状を制御して、ウェハのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾き(以下、「チルト角度」という場合がある。)を調整する必要がある。そこで、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方におけるシースの形状を制御するために、例えば特許文献1では、直流電源からエッジリングに負の直流電圧を印加するように構成されたプラズマ処理装置が提案されている。
【0012】
ところで、従来のプラズマ処理装置では高いバイアスが生じるため、高周波電力をウェハにパルス状に供給する際、ウェハとエッジリングとの間の電位差による放電が生じるおそれがある。このため、プラズマ処理装置は、高周波電源のパルスに同期して、高周波電力を供給する際に直流電圧を印加し、さらに高周波電力の供給を停止する際にエッジリングを除電する機能を実装している。
【0013】
しかしながら、高周波電力をパルス状に供給する際には、高周波電力の反射(反射電力)の影響により、バイアスがすぐに立ち上がらない。また、高周波電力の供給を停止する際には、ウェハの電荷はすぐに除去されない。このため、高周波電力に同期して、直流電圧をエッジリングにすぐに印加し、或いはエッジリングを除電すると、ウェハとエッジリングとの間に電位差が生じて、放電が生じるおそれがある。そしてその結果、ウェハがダメージを被る場合がある。
【0014】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理において基板のエッジ領域でのチルト角度を適切に制御しつつ、基板とエッジリングとの間の放電を抑制する。以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<プラズマ処理装置>
先ず、本実施形態にかかるプラズマ処理装置について説明する。
図1は、プラズマ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。
図2は、エッジリング14に直流電圧を印加する電源系の説明図である。プラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1では、基板としてのウェハWに対してプラズマ処理を行う。プラズマ処理は特に限定されるものではないが、例えばエッチング処理、成膜処理、拡散処理などが行われる。
【0016】
図1に示すようにプラズマ処理装置1は、略円筒形状のチャンバ10を有している。チャンバ10は、その内部においてプラズマが生成される処理空間Sを画成する。チャンバ10は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ10は接地電位に接続されている。
【0017】
チャンバ10の内部には、ウェハWを載置するステージ11が収容されている。ステージ11は、下部電極12、静電チャック13、及びエッジリング14を有している。なお、下部電極12の下面側には、例えばアルミニウムから構成される電極プレート(図示せず)が設けられていてもよい。
【0018】
下部電極12は、導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されており、略円板形状を有している。
【0019】
下部電極12の内部には、冷媒流路15aが形成されている。冷媒流路15aには、チャンバ10の外部に設けられたチラーユニット(図示せず)から冷媒入口配管15bを介して冷媒が供給される。冷媒流路15aに供給された冷媒は、冷媒出口流路15cを介してチラーユニットに戻るようになっている。冷媒流路15aの中に冷媒、例えば冷却水等を循環させることにより、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWを所望の温度に冷却することができる。
【0020】
静電チャック13は、下部電極12上に設けられている。静電チャック13は、ウェハWとエッジリング14の両方を静電力により吸着保持可能に構成された部材である。静電チャック13は、周縁部の上面に比べて中央部の上面が高く形成されている。静電チャック13の中央部の上面は、ウェハWが載置されるウェハ載置面となり、静電チャック13の周縁部の上面は、エッジリング14が載置されるエッジリング載置面となる。
【0021】
静電チャック13の内部において中央部には、ウェハWを吸着保持するための第1の電極16aが設けられている。静電チャック13の内部において周縁部には、エッジリング14を吸着保持するための第2の電極16bが設けられている。静電チャック13は、絶縁材料からなる絶縁材の間に電極16a、16bを挟んだ構成を有する。
【0022】
第1の電極16aには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、静電チャック13の中央部の上面にウェハWが吸着保持される。同様に、第2の電極16bには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、静電チャック13の周縁部の上面にエッジリング14が吸着保持される。
【0023】
なお、本実施形態において、第1の電極16aが設けられる静電チャック13の中央部と、第2の電極16bが設けられる周縁部とは一体となっているが、これら中央部と周縁部とは別体であってもよい。
【0024】
エッジリング14は、静電チャック13の中央部の上面に載置されたウェハWを囲むように配置される、環状部材である。エッジリング14は、プラズマ処理の均一性を向上させるために設けられる。このため、エッジリング14は、プラズマ処理に応じて適宜選択される材料から構成されており、例えばSiやSiCから構成され得る。
【0025】
以上のように構成されたステージ11は、チャンバ10の底部に設けられた略円筒形状の支持部材17に締結される。支持部材17は、例えばセラミックや石英等の絶縁体により構成される。
【0026】
なお、図示は省略するが、ステージ11は、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWのうち少なくとも1つを所望の温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調流体が流れる。
【0027】
ステージ11の上方には、ステージ11と対向するように、シャワーヘッド20が設けられている。シャワーヘッド20は、処理空間Sに面して配置される電極板21、及び電極板21の上方に設けられる電極支持体22を有している。電極板21は、下部電極12と一対の上部電極として機能する。後述するように第1の高周波電源50が下部電極12に電気的に接続されている場合には、シャワーヘッド20は、接地電位に接続される。なお、シャワーヘッド20は、絶縁性遮蔽部材23を介して、チャンバ10の上部(天井面)に支持されている。
【0028】
電極板21には、後述のガス拡散室22aから送られる処理ガスを処理空間Sに供給するための複数のガス噴出口21aが形成されている。電極板21は、例えば、発生するジュール熱の少ない低い電気抵抗率を有する導電体又は半導体から構成される。
【0029】
電極支持体22は、電極板21を着脱自在に支持するものである。電極支持体22は、例えばアルミニウム等の導電性材料の表面に耐プラズマ性を有する膜が形成された構成を有している。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。電極支持体22の内部には、ガス拡散室22aが形成されている。ガス拡散室22aからは、ガス噴出口21aに連通する複数のガス流通孔22bが形成されている。また、ガス拡散室22aには、後述するガス供給管33に接続されるガス導入孔22cが形成されている。
【0030】
また、電極支持体22には、ガス拡散室22aに処理ガスを供給するガス供給源群30が、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、ガス導入孔22cを介して接続されている。
【0031】
ガス供給源群30は、プラズマ処理に必要な複数種のガス供給源を有している。流量制御機器群31は複数の流量制御器を含み、バルブ群32は複数のバルブを含んでいる。流量制御機器群31の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。プラズマ処理装置1においては、ガス供給源群30から選択された一以上のガス供給源からの処理ガスが、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、ガス導入孔22cを介してガス拡散室22aに供給される。そして、ガス拡散室22aに供給された処理ガスは、ガス流通孔22b、ガス噴出口21aを介して、処理空間S内にシャワー状に分散されて供給される。
【0032】
チャンバ10の底部であって、チャンバ10の内壁と支持部材17との間には、バッフルプレート40が設けられている。バッフルプレート40は、例えばアルミニウム材に酸化イットリウム等のセラミックスを被覆することにより構成される。バッフルプレート40には、複数の貫通孔が形成されている。処理空間Sは当該バッフルプレート40を介して排気口41に連通されている。排気口41には例えば真空ポンプ等の排気装置42が接続され、当該排気装置42により処理空間S内を減圧可能に構成されている。
【0033】
また、チャンバ10の側壁にはウェハWの搬入出口43が形成され、当該搬入出口43はゲートバルブ44により開閉可能となっている。
【0034】
プラズマ処理装置1は、第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、及び整合器52を更に有している。第1の高周波電源50と第2の高周波電源51は、整合器52を介して下部電極12に接続されている。なお、第1の高周波電源50と第2の高周波電源51は、本開示における高周波電源を構成している。
【0035】
第1の高周波電源50は、プラズマ発生用の高周波電力を発生する電源である。第1の高周波電源50からは27MHz~100MHzの周波数であってよく、一例においては40MHzの高周波電力HFが下部電極12に供給される。第1の高周波電源50は、整合器52の第1の整合回路53を介して、下部電極12に接続されている。第1の整合回路53は、第1の高周波電源50の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源50は、下部電極12に電気的に接続されていなくてもよく、第1の整合回路53を介して上部電極であるシャワーヘッド20に接続されていてもよい。
【0036】
第2の高周波電源51は、ウェハWにイオンを引き込むための高周波電力(高周波バイアス電力)LFを発生して、当該高周波電力LFを下部電極12に供給する。高周波電力LFの周波数は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数であってよく、一例においては400kHzである。第2の高周波電源51は、整合器52の第2の整合回路54を介して、下部電極12に接続されている。第2の整合回路54は、第2の高周波電源51の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0037】
なお、以下の説明において、第1の高周波電源50からの高周波電力HFと第2の高周波電源51からの高周波電力LFのうち一方又は双方を、下部電極12に供給する状態を「RFオン」という場合がある。また、高周波電力HFと高周波電力LFのいずれも下部電極12に供給しない状態を「RFオフ」という場合がある。また、高周波電力HFと高周波電力LFをまとめて「高周波電力RF」という場合がある。
【0038】
図1及び
図2に示すように、プラズマ処理装置1は、直流(DC:Direct Current)電源60、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63を更に有している。直流電源60は、切替ユニット61、第2のRFフィルタ63、及び第1のRFフィルタ62を介して、エッジリング14に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、直流電源60に対して2つのRFフィルタ62、63を設けたが、RFフィルタの数はこれに限定されず、例えば1つであってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、直流電源60は、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63を介して、エッジリング14に接続されていたが、エッジリング14に直流電圧を印加する電源系はこれに限定されない。例えば、直流電源60は、切替ユニット61、第2のRFフィルタ63、第1のRFフィルタ62、及び下部電極12を介して、エッジリング14に電気的に接続されていてもよい。
【0040】
直流電源60は、エッジリング14に印加される負極性の直流電圧DCを発生する電源である。また、直流電源60は、可変直流電源であり、直流電圧DCの高低を調整可能である。
【0041】
切替ユニット61は、エッジリング14に対する直流電源60からの直流電圧DCの印加を停止可能に構成されている。具体的に切替ユニット61は、エッジリング14と、直流電源回路64又は除電回路65との接続を切り替える。
【0042】
直流電源回路64は、直流電源60に接続され、当該直流電源60からエッジリング14に直流電圧DCを印加するための回路である。一例では、直流電源回路64は、切替素子64aとダンピング素子64bを有している。切替素子64aには、例えば電界効果トランジスタ(FET)が用いられる。但し、切替素子64aには、FET以外にも絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)やリレーを用いてもよい。そして、切替素子64aをクローズした状態(オンした状態)で、エッジリング14と直流電源60が接続され、エッジリング14に直流電圧DCが印加される。一方、切替素子64aをオープンした状態(オフした状態)では、エッジリング14に直流電圧DCは印加されない。なお、以下の説明においては、切替素子64aをオンした状態を「DCオン」といい、切替素子64aをオフした状態を「DCオフ」という場合がある。また、ダンピング素子64bは、例えば抵抗やコイルなどであり、その値や位置については設計者によって自由に決めることができる。
【0043】
除電回路65は、エッジリング14を除電するための回路である。一例では、除電回路65は、切替素子65aとダンピング素子65bを有している。切替素子65aには、例えば電界効果トランジスタ(FET)が用いられる。但し、切替素子65aには、FET以外にも絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)やリレーを用いてもよい。そして、切替素子65aをクローズした状態(オンした状態)で、エッジリング14と除電回路65が接続され、エッジリング14の電荷が除電回路65に流れ、エッジリング14が除電される。一方、切替素子65aをオープンした状態(オフした状態)では、エッジリング14は除電されない。なお、以下の説明においては、切替素子65aをオンした状態を「除電オン」といい、切替素子65aをオフした状態を「除電オフ」という場合がある。また、ダンピング素子65bは、例えば抵抗やコイルなどであり、その値や位置については設計者によって自由に決めることができる。
【0044】
第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63はそれぞれ、高周波を低減又は遮断するフィルタであり、直流電源60を保護するために設けられる。第1のRFフィルタ62は、例えば第1の高周波電源50からの40MHzの高周波を低減又は遮断する。第2のRFフィルタ63は、例えば第2の高周波電源51からの400kHzの高周波を低減又は遮断する。なお、第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63の回路構成は、当業者が任意に設計することができる。
【0045】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、パルス信号源70を更に有している。パルス信号源70は、第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、及び直流電源60に、パルス信号、すなわちパルスタイミングを制御する信号を発信する。第1の高周波電源50と第2の高周波電源51のそれぞれでは、パルス信号に基づいて、高周波電力HFと高周波電力LFをパルス状に供給する。また、直流電源60では、パルス信号に基づいて、高周波電力HF、高周波電力LF、直流電圧DCをパルス状に印加する。そして、パルス信号源70では、高周波電力HF及び高周波電力LFと、直流電圧DCとの同期タイミングを制御することができる。なお、このパルス信号源は、第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、直流電源60のそれぞれに内蔵されていてもよい。
【0046】
プラズマ処理装置1は、エッジリング14の自己バイアス電圧(又は、下部電極12もしくはウェハWの自己バイアス電圧)を測定する測定器(図示せず)を更に有している。なお、測定器の構成は、当業者が任意に設計することができる。
【0047】
以上のプラズマ処理装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、プラズマ処理装置1におけるプラズマ処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0048】
<プラズマ処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置1を用いて行われるプラズマ処理について説明する。
【0049】
先ず、チャンバ10の内部にウェハWを搬入し、静電チャック13上にウェハWを載置する。その後、静電チャック13の第1の電極16aに直流電圧DCを印加することにより、ウェハWはクーロン力によって静電チャック13に静電吸着され、保持される。また、ウェハWの搬入後、排気装置42によってチャンバ10の内部を所望の真空度まで減圧する。
【0050】
次に、ガス供給源群30からシャワーヘッド20を介して処理空間Sに処理ガスを供給する。また、第1の高周波電源50によりプラズマ生成用の高周波電力HFを下部電極12に供給し、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2の高周波電源51によりイオン引き込み用の高周波電力LFを供給してもよい。そして、生成されたプラズマの作用によって、ウェハWにプラズマ処理が施される。
【0051】
プラズマ処理を終了する際には、先ず、第1の高周波電源50からの高周波電力HFの供給及びガス供給源群30による処理ガスの供給を停止する。また、プラズマ処理中に高周波電力LFを供給していた場合には、当該高周波電力LFの供給も停止する。次いで、ウェハWの裏面への伝熱ガスの供給を停止し、静電チャック13によるウェハWの吸着保持を停止する。
【0052】
その後、チャンバ10からウェハWを搬出して、ウェハWに対する一連のプラズマ処理が終了する。
【0053】
なお、プラズマ処理においては、第1の高周波電源50からの高周波電力HFを使用せず、第2の高周波電源51からの高周波電力LFのみを用いて、プラズマを生成する場合もある。
【0054】
<チルト角度制御方法>
次に、上述したプラズマ処理において、チルト角度を制御する方法について説明する。チルト角度は、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の鉛直方向に対する傾き(角度)である。
【0055】
一例においては、エッジリング14が消耗していない状態にある場合、シースの形状は、ウェハW及びエッジリング14の上方においてフラットに保たれている。したがって、ウェハWの全面に略垂直な方向(鉛直方向)にイオンが入射する。すなわち、チルト角度は0(ゼロ)である。
【0056】
一方、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少すると、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースの厚みが小さくなり、当該シースの形状が下方凸形状に変化する。その結果、ウェハWのエッジ領域に対するイオンの入射方向が鉛直方向に対して傾斜する。そして、ウェハWのエッジ領域には、その厚み方向に対して傾斜した開口が形成される。
【0057】
また、ウェハWの中央領域に対し、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースの厚みが大きくなり、当該シースの形状が上方凸形状になる場合もあり得る。
【0058】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、直流電源60からの直流電圧DCを調整して、チルト角度を制御する。
【0059】
図2に示すように、直流電源60では、エッジリング14に印加する直流電圧DCが、自己バイアス電圧Vdcの絶対値と設定値ΔVの和をその絶対値として有する負極性の電圧、すなわち、-(|Vdc|+ΔV)に設定される。
図2において、ウェハWとエッジリング14の上方の点線はそれぞれ、ウェハWの電位とエッジリング14の電位を示している。自己バイアス電圧Vdcは、ウェハWの自己バイアス電圧であり、一方又は双方の高周波電力RFが供給されており、且つ、直流電源60からの直流電圧DCが下部電極12に印加されていないときの下部電極12の自己バイアス電圧である。設定値ΔVは、制御部100によって与えられる。
【0060】
制御部100は、予め定められた関数又はテーブルを用いて、エッジリング14の消耗量(エッジリング14の厚みの初期値からの減少量)とプラズマ処理のプロセス条件(例えば処理時間)から推定されるエッジリング14の消耗量から、設定値ΔVを特定する。すなわち、制御部100は、エッジリング14の消耗量と自己バイアス電圧を上記関数に入力するか、エッジリング14の消耗量と自己バイアス電圧を用いて上記テーブルを参照することにより、設定値ΔVを決定する。
【0061】
制御部100は、設定値ΔVの決定において、エッジリング14の初期の厚みと、例えばレーザ測定器やカメラなどの測定器を用いて実測されたエッジリング14の厚みとの差を、エッジリング14の消耗量として用いてもよい。或いは、制御部100は、設定値ΔVの決定のために、予め定められた別の関数又はテーブルを用いて、特定のパラメータから、エッジリング14の消耗量を決定してもよい。この特定のパラメータは、自己バイアス電圧Vdc、高周波電力HF又は高周波電力LFの波高値Vpp、負荷インピーダンス、エッジリング14又はエッジリング14の周辺電気的特性等のうちのいずれかであり得る。エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気特性は、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の任意の箇所の電圧、電流値、エッジリング14を含む抵抗値等のうちいずれかであり得る。別の関数又はテーブルは、特定のパラメータとエッジリング14の消耗量の関係を定めるように予め定められている。エッジリング14の消耗量を決定するために、実際のプラズマ処理の実行前又はプラズマ処理装置1のメンテナンス時に、消耗量を決定するための測定条件、すなわち、高周波電力HF、高周波電力LF、処理空間S内の圧力、及び、処理空間Sに供給される処理ガスの流量等の設定の下で、プラズマ処理装置1が動作される。そして、上記特定のパラメータが取得され、この当該特定のパラメータを上記別の関数に入力することにより、或いは、当該特定のパラメータを用いて上記テーブルを参照することにより、エッジリング14の消耗量が特定される。
【0062】
プラズマ処理装置1では、プラズマ処理中、すなわち、高周波電力HF及び高周波電力LFのうち一方又は双方の高周波電力が供給される期間において、直流電源60からエッジリング14に直流電圧DCが印加される。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。その結果、ウェハWの全領域にわたって、当該ウェハWの厚み方向に略平行な開口が形成される。
【0063】
より詳細には、プラズマ処理中、測定器(図示せず)によって自己バイアス電圧Vdcが測定される。また、直流電源60からエッジリング14に直流電圧DCが印加される。エッジリング14に印加される直流電圧DCの値は、上述したように-(|Vdc|+ΔV)である。|Vdc|は、直前に測定器によって取得された自己バイアス電圧Vdcの測定値の絶対値であり、ΔVは制御部100によって決定された設定値である。このようにプラズマ処理中に測定された自己バイアス電圧Vdcからエッジリング14に印加される直流電圧DCが決定される。そうすると、自己バイアス電圧Vdcに変化が生じても、直流電源60によって発生される直流電圧DCが補正され、チルト角度が適切に補正される。
【0064】
<高周波電力及び直流電圧の制御方法>
次に、上述したプラズマ処理において、高周波電力RFの供給タイミング、直流電圧DCの印加タイミング、エッジリング14の除電タイミングについて説明する。高周波電力RFの供給は、第1の高周波電源50からの高周波電力HFと第2の高周波電源51からの高周波電力LFのうち一方又は双方を、下部電極12に供給する状態である。高周波電力RFの供給タイミングは、すなわち上述したRFオンとRFオフのタイミングである。直流電圧DCの印加は、エッジリング14と直流電源60(直流電源回路64)を接続した状態であり、直流電圧DCの印加タイミングは、すなわち上述したDCオンとDCオフのタイミングである。エッジリング14の除電は、エッジリング14と除電回路65を接続した状態であり、エッジリング14の除電タイミングは、すなわち上述した除電オンと除電オフのタイミングである。
【0065】
[遅延時間Dtの原理]
ここで、上述したようにチルト角度を制御するため、直流電源60からエッジリング14に印加する直流電圧DCを調整し、ウェハWとエッジリング14との間に電位差である設定値ΔVを設ける。この際、例えば上記電位差が大きくなり過ぎたり、或いは直流電圧DCを印加するタイミングがずれて意図しない電位差が生じると、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じるおそれがある。そしてその結果、ウェハWがダメージを被る場合がある。
【0066】
そこで、本実施形態では、直流電源60側のパルスタイミングに対する遅延時間(Dead Time)機能を応用して利用することで、直流電源60の出力端において浮遊電位状態を形成し、エッジリング14においてウェハWの電位変化への追従性を持たせる。
【0067】
なお、切替ユニット61が通常備える遅延時間機能は、直流電源回路64と除電回路65が切り替わる際に、これら2つの回路が同時にオンにならないように、一方の回路への切り替わりに遅延を持たせる機能である。2つの回路が同時にオンすると、短絡が生じるため、このような遅延時間機能が設けられている。高周波電力RFをパルス状に供給する際、パルス信号はパルス信号源70から発信され、第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、及び直流電源60において同期信号として使用される。上記遅延時間機能は、このパルス信号に対して遅延時間を設ける。そしてこの遅延時間中、直流電源60はオン状態でもオフ状態でもなく、不定状態となる。なお、以下の説明においては、通常の遅延時間を「遅延時間Dо」と称し、本実施形態の遅延時間を「遅延時間Dt」と称する場合がある。
【0068】
本実施形態では、RFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフのそれぞれのタイミングを制御する。
図3は、本実施形態の比較例として、従来におけるRFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフを示す説明図である。
図3においては、上述した切替ユニット61が通常備える遅延時間Dоはあるが、本実施形態の遅延時間Dtは設けられていない。一方、
図4は、本実施形態におけるRFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフを示す説明図である。
図3及び
図4中、ウェハW及びエッジリング14の上方に図示している点線グラフはそれぞれ、ウェハWの電位及びエッジリング14の電位の経時変化を模式的に示している。すなわち、点線グラフの縦軸は電位であり、横軸は時間である。なお、
図3及び
図4では、技術の理解を容易にするため、第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63の図示を省略する。
【0069】
従来、
図3(a)に示すように、下部電極12に高周波電力RFを供給する際(RFオン)、エッジリング14に直流電圧DCを印加する(DCオン、除電オフ)。かかる場合、RFオンすると、高周波電力RFの反射が発生して下部電極12に供給される高周波電力RFは緩やかに上昇する。このため、高周波電力RFによってウェハWに発生する電位も、RFオンのタイミングに対して緩やかにゆっくりと上昇する。これに対して、直流電源60は通常立ち上がりが速いため、エッジリング14の電位は急激に上昇して、直流電源60の電位と同じになる。このため、ウェハWとエッジリング14との間において、意図しているものより大きい電位差が生じて、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じるおそれがある。
【0070】
また従来、
図3(b)に示すように、下部電極12への高周波電力RFの供給を停止する際(RFオフ)、エッジリング14への直流電圧DCの印加を停止し(DCオフ)、エッジリング14を除電する(除電オン)。かかる場合、RFオフすると、ハード(装置)やプラズマの時定数で緩やかに除電されるため、ウェハWの電位は緩やかにゆっくりと下降する。これに対して、エッジリング14の電位は急激に下降して、略0(ゼロ)Vとなる。このため、ウェハWとエッジリング14との間において、意図しているものより大きい電位差が生じて、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じるおそれがある。
【0071】
これに対して本実施形態では、下部電極12に高周波電力RFを供給し(RFオン)、エッジリング14に直流電圧DCを印加する際(DCオン)、RFオンしてから、第1の遅延時間Dt1を経過した後、DCオンする。ここで、通常の切替ユニット61が備える遅延時間Dоの場合、直流電源60はオン状態でもオフ状態でもない不定状態であるため、遅延時間Dоはできるだけ短くするのが好ましい。これに対して、本実施形態の第1の遅延時間Dt1では、
図4(a)に示すように直流電源回路64の切替素子64aをオープンしつつ、除電回路65の切替素子65aをオープンの状態としておくことで、不定状態の際に直流電源60の出力端を浮遊電位にする。すなわち、直流電源回路64と除電回路65を両方使用しないアイドル状態を設定しておくことで、第1の遅延時間Dt1の間、直流電源60の出力端は浮遊電位となる。この浮遊電位状態では、エッジリング14はウェハWと同じような電位変化となるため、第1の遅延時間Dt1が経過した時点では、ウェハWとエッジリング14との間の電位差は小さい。そして、第1の遅延時間Dt1が経過した後、DCオンする。かかる場合、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位(プラズマ及びシースの電位)と等しくなり、すなわち、高周波電力RF(発生してる反射を除いたもの)に準じた自己バイアス電圧Vdcとするとことができる。そして、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位に追従して緩やかに上昇する。したがって、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を抑制することができる。
【0072】
また本実施形態では、下部電極12への高周波電力RFの供給を停止し(RFオフ)、エッジリング14への直流電圧DCの印加を停止し(DCオフ)、さらにエッジリング14を除電する際(除電オン)、DCオフしてから、第2の遅延時間Dt2を経過した後、除電オンする。すなわち、第2の遅延時間Dt2では、
図4(b)に示すように直流電源回路64の切替素子64aをオープンしつつ、除電回路65の切替素子65aをオープンの状態としておくことで、不定状態の際に直流電源60の出力端を浮遊電位にする。すなわち、直流電源回路64と除電回路65を両方使用しないアイドル状態を設定しておくことで、第2の遅延時間Dt2の間、直流電源60の出力端は浮遊電位となる。そして、この第2の遅延時間Dt2における浮遊電位状態が経過した後、除電オンする。かかる場合、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位と等しくなろうとして、当該ウェハWの電位に追従して緩やかに下降する。したがって、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を抑制することができる。
【0073】
[RFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフのタイミング]
以上のように本実施形態では、RFオン時とRFオフ時のそれぞれにおいて遅延時間Dt1、Dt2を設けることで、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を抑制する。以下、上述したプラズマ処理における、RFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフのタイミングについて具体的に説明する。
【0074】
図5は、高周波電力RFと直流電圧DCの経時変化を示す説明図である。
図5中の上グラフの縦軸は高周波電力RFであり、横軸は時間tである。
図5中の下グラフの縦軸は直流電圧DCであり、横軸は時間tである。
図6は、
図5におけるRFオンオフ、DCオンオフ、除電オンオフの状態を示す表である。
図7は、
図5における直流電源回路64と除電回路65の状態を示す説明図である。
【0075】
(ステップS1)
ステップS1は、エッジリング14の除電を行うステップである。ステップS1では、直流電源回路64の切替素子64aをオープンにし(DCオフ)、除電回路65の切替素子65aをクローズする(除電オン)。そうすると、エッジリング14と除電回路65が接続され、エッジリング14の電荷が除電回路65を介して除去される。なお、このステップS1では、下部電極12への高周波電力RFの供給は停止されている(RFオフ)。
【0076】
(ステップS2)
ステップS2は、下部電極12に高周波電力RFを供給した後(RFオン)、エッジリング14に直流電圧DCを印加する(DCオン)までの間、すなわち第1の遅延時間Dt1のステップである。ステップS2では、直流電源回路64の切替素子64aをオープンに維持しつつ(DCオフ)、除電回路65の切替素子65aをオープンする(除電オフ)。すなわち、エッジリング14を直流電源回路64と除電回路65の両方に接続しない状態とすることで、直流電源60の出力端は浮遊電位となる。RFオンすると、高周波電力RFの反射が発生するため、ウェハWの電位は緩やかに上昇する。そして、直流電源60が浮遊電位状態では、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位に追従して緩やかに上昇する。したがって、第1の遅延時間Dt1が経過した時点では、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を小さくして、放電を抑制することができる。
【0077】
(ステップS3)
ステップS3は、下部電極12に高周波電力RFを供給しつつ(RFオン)、エッジリング14に直流電圧DCを印加して(DCオン)、ウェハWにプラズマ処理を行うステップである。ステップS3では、除電回路65の切替素子65aをオープンに維持しつつ(除電オフ)、直流電源回路64の切替素子64aをクローズする(DCオン)。そうすると、直流電圧DCによってウェハWのエッジ領域でのチルト角度を適切に制御して、イオンの入射方向を適切に調整し、ウェハWに対してプラズマ処理を均一に行うことができる。
【0078】
(ステップS4)
ステップS4は、下部電極12への高周波電力RFの供給を停止し(RFオフ)、エッジリング14への直流電圧DCの印加を停止した後(DCオフ)、エッジリング14の除電を行う(除電オン)までの間、すなわち第2の遅延時間Dt2のステップである。ステップS4では、除電回路65の切替素子65aをオープンに維持しつつ(除電オフ)、直流電源回路64の切替素子64aをオープンにする(DCオフ)。すなわち、エッジリング14を直流電源回路64と除電回路65の両方に接続しない状態とすることで、直流電源60の出力端は浮遊電位となる。RFオフすると、ウェハWの電位は緩やかに下降する。そして、直流電源60が浮遊電位状態では、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位に追従して緩やかに下降する。したがって、第2の遅延時間Dt2が経過した時点では、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を小さくして、放電を抑制することができる。
【0079】
(ステップS5)
ステップS5は、エッジリング14の除電を行うステップである。ステップS5では、ステップS1と同様に、直流電源回路64の切替素子64aをオープンに維持しつつ(DCオフ)、除電回路65の切替素子65aをクローズする(除電オン)。そうすると、エッジリング14と除電回路65が接続され、エッジリング14の電荷が除電回路65を介して除去される。
【0080】
(ステップS6)
ステップS6は、再び下部電極12に高周波電力RFを供給した後(RFオン)、エッジリング14に直流電圧DCを印加する(DCオン)までの間、すなわち第1の遅延時間Dt1のステップである。すなわち、ステップS2と同様のステップである。
【0081】
以上のようにステップS1~S4が繰り返し行われて、一連のプラズマ処理が終了する。
【0082】
本実施形態によれば、下部電極12に高周波電力RFを供給し(RFオン)、エッジリング14に直流電圧DCを印加する際には(DCオン)、RFオンしてから、第1の遅延時間Dt1を経過した後、DCオンする。かかる場合、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位に追従して緩やかに上昇する。したがって、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を抑制することができる。
【0083】
また、下部電極12への高周波電力RFの供給を停止し(RFオフ)、エッジリング14への直流電圧DCの印加を停止し(DCオフ)、さらにエッジリング14を除電する際(除電オン)、DCオフしてから、第2の遅延時間Dt2を経過した後、除電オンする。かかる場合、エッジリング14の電位は、ウェハWの電位に追従して緩やかに下降する。したがって、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を抑制することができる。
【0084】
なお、本実施形態の機能を既存機能で設ける場合、通常はパルスのタイミング信号を2つ使う等して、DCオンの状態、DCオフの状態、浮遊電位状態を含む3状態が判断できるタイミング信号が必要となる。したがって、装置構成が非常に煩雑となる。
【0085】
この点、本実施形態では遅延時間Dt1、Dt2を用いることで、どのような直流電源でも、ウェハWの電位へのエッジリング14の電位の追従タイミングを決めることができる。また、直流電源60側で浮遊電位のタイミングを形成しているため、高周波電力RFと同じパルスタイミング信号を用いることができる。換言すれば、既存のパルス信号源70を用いることができ、パルス信号源70を作り直す必要がない。
【0086】
<遅延時間Dtの具体例>
次に、上述したRFオン時の第1の遅延時間Dt1とRFオフ時の第2の遅延時間Dt2の具体例について説明する。
【0087】
先ず、遅延時間Dt1、Dt2の比較として、通常の切替ユニット61が備える遅延時間Dоの具体例について説明する。遅延時間Dоを決定する要因は、切替ユニット61が有するFETの切り替わり速度である。詳細には、遅延時間Dоは、FETの立ち上がり時間及び立ち下がり時間に、余白時間(マージン)を加えた時間である。例えば、直流電源回路64のFETが完全にオフするまで(立ち下がり)の時間が経過してから、除電回路65にオンするタイミングを指示する場合、この立ち下がりの時間とマージンを加えた時間が遅延時間Dоとなる。これら立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、素子の種類によって異なるが、例えば1ns~10nsである。また、遅延時間Dоは、例えば1ns~100nsである。
【0088】
遅延時間Dt1、Dt2に共通する制約条件は、エッジリング14に直流電圧DCを印加する時間(DCオン時間)に対する遅延時間Dt1、Dt2の割合である。遅延時間Dt1、Dt2は直流電圧DCを印加しない時間であるため、遅延時間Dt1、Dt2が長くなると、高周波電力RFと同期した直流電圧DCの印加状態から乖離してしまう。そこで、DCオン時間に基づいて、遅延時間Dt1、Dt2を決定する。なお、遅延時間Dt1、Dt2の必要最小限の割合は、プラズマ処理のプロセス評価結果から判断する。
【0089】
RFオン時の第1の遅延時間Dt1の具体的な決定方法は次のとおりである。すなわち、高周波電力RFを供給してからの反射時間を事前に測定し、この反射時間以上を第1の遅延時間Dt1に決定する。或いは、エッジリング14の電位を測定し、高周波電力RFとエッジリング14の電位に基づいて、第1の遅延時間Dt1を決定してもよい。そして、第1の遅延時間Dt1は、例えば0.1μs~1000μs、より好ましくは0.1μs~100μs又は1μs~300μsに決定される。なお、第1の遅延時間Dt1の上限値は、後述するようにプラズマを用いて第2の直流電圧DC2と第1の直流電圧DC1の電位差を除電する場合に必要な時間に決定される。
【0090】
RFオフ時の第2の遅延時間Dt2の具体的な決定方法は次のとおりである。すなわち、エッジリング14の電位を測定し、当該エッジリング14の電位が十分に下がりきってからエッジリング14を除電するように、第2の遅延時間Dt2を決定する。或いは、高周波電力RFを測定し、当該高周波電力RFのみに基づいて第2の遅延時間Dt2を決定してもよい。そして、第2の遅延時間Dt2は、例えば0.1μs~1000μs、より好ましくは0.1μs~100μs又は1μs~300μsに決定される。
【0091】
<他の実施形態>
以上の実施形態のプラズマ処理装置1は、直流電源60、直流電源回路64及び除電回路65を有していたが、エッジリング14に直流電圧DCを印加する電源系はこれに限定されない。
図8~
図10は、他の実施形態において、エッジリング14に直流電圧DCを印加する電源系の説明図である。なお、
図8~
図10では、技術の理解を容易にするため、第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63の図示を省略する。
【0092】
図8に示すようにプラズマ処理装置1は、直流電源60、直流電源回路64及び除電回路65に代えて、直流電源200と直流電源回路210を有していてもよい。すなわち、本実施形態のプラズマ処理装置1は、除電回路を有していない。直流電源回路210は、切替素子210aとダンピング素子210bを有している。
【0093】
かかる場合、
図8(a)に示すように、下部電極12に高周波電力RFを供給した直後には(RFオン)、切替素子210aをオープンして、エッジリング14に直流電圧DCを印加しない(DCオフ)。
【0094】
その後、
図8(b)に示すように、遅延時間Dtが経過した後、切替素子210aをクローズして、エッジリング14に直流電圧DCを印加する(DCオフ)。かかる場合、エッジリング14の電位がウェハWの電位に追従してから、エッジリング14に直流電圧DCが印加される。その結果、ウェハWとエッジリング14との間の電位差を小さくして、放電を抑制することができる。そして、ウェハWに対してプラズマ処理が行われる。
【0095】
その後、
図8(c)に示すように、下部電極12に高周波電力RFの印加を停止した際(RFオフ)、切替素子210aをオープンして、エッジリング14への直流電圧DCを停止する。
【0096】
図9に示すように、直流電源60、直流電源回路64及び除電回路65に代えて、第1の直流電源300、第2の直流電源301、第1の直流電源回路310、第2の直流電源回路311、及び除電回路320を有していてもよい。第1の直流電源300は、エッジリング14に第1の直流電圧DC1を印加する。第2の直流電源301は、エッジリング14に第1の直流電圧DC1と異なる第2の直流電圧DC2を印加する。第1の直流電源回路310は、切替素子310aとダンピング素子310bを有している。第2の直流電源回路311は、切替素子311aとダンピング素子311bを有している。除電回路320は、切替素子320aとダンピング素子320bを有している。
【0097】
例えば、下部電極12への高周波電力RFを供給する際(RFオン)、エッジリング14に印加する直流電圧DCを高速で切り替えたい場合に、第1の直流電源回路310と第2の直流電源回路311を切り替えて、第1の直流電圧DC1と第2の直流電圧DC2を切り替える。例えば、第1の直流電圧DC1が第2の直流電圧DC2より小さい場合、
図9(a)に示すようにエッジリング14に第1の直流電圧DC1を印加した後、
図9(b)に示すようにエッジリング14に第2の直流電圧DC2を印加することができる。
【0098】
そして本実施形態においても、上記実施形態のように、RFオン時に第1の遅延時間Dt1を設け、RFオフ時に第2の遅延時間Dt2を設ける。具体的には、下部電極12に高周波電力RFを供給した後、エッジリング14に第1の直流電圧DC1を印加するまでの間に、第1の遅延時間Dt1を設ける。また、下部電極12への高周波電力RFの供給を停止し、エッジリング14への第2の直流電圧DC2の印加を停止した後、エッジリング14の除電をするまでの間に、第2の遅延時間Dt2を設ける。さらに、第1の直流電圧DC1の印加と第2の直流電圧DC2の間にも、遅延時間Dtを設けてもよい。
【0099】
なお、第1の直流電圧DC1が第2の直流電圧DC2より小さい場合、第2の直流電圧DC2から第1の直流電圧DC1への切り替えは、除電回路320によるエッジリング14の除電を挟むことが必要である。すなわち、第2の直流電圧DC2の印加、エッジリング14の除電、第1の直流電圧DC1の印加の順に行う必要がある。
【0100】
また、エッジリング14に印加する電圧を第2の直流電圧DC2から第1の直流電圧DC1に切り替える場合において、プラズマを用いて第2の直流電圧DC2と第1の直流電圧DC1の電位差を除電する場合、
図10に示すように除電回路320を省略してもよい。かかる場合、エッジリング14に第2の直流電圧DC2を印加してから、第1の直流電圧DC1を印加するまでの間に、遅延時間Dtを設ける。
【0101】
以上の実施形態のプラズマ処理装置1は容量結合型のプラズマ処理装置であったが、本開示が適用されるプラズマ処理装置はこれに限定されない。例えばプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。
【0102】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージであり、下部電極を有する前記ステージと、
前記ステージ上の基板を囲むように設けられたエッジリングと、
前記ステージの上方に設けられた上部電極と、
第1の高周波電源と、
第1の直流電源と、
制御部と、
備え、
前記制御部は、
(a)前記第1の高周波電源から前記上部電極又は前記下部電極への第1の高周波電力の供給を開始することと、
(b)前記(a)の後、第1の遅延時間が経過したときに、前記第1の直流電源から前記エッジリングへの第1の直流電力の供給を開始することと、
を実行するように構成される、プラズマ処理装置。
(2)
前記第1の遅延時間は前記第1の高周波電力の反射時間以上である、前記(1)に記載のプラズマ処理装置。
(3)
前記制御部は、
(c)前記(b)の後、前記第1の高周波電力の供給と前記直流電力の印加を停止することと、
(d)前記(c)の後、第2の遅延時間が経過したときに、前記エッジリングの除電を開始することと、
をさらに実行するように構成される、前記(1)又は(2)に記載のプラズマ処理装置。
(4)
前記第2の遅延時間は0.1μs~1000μsである、前記(3)に記載のプラズマ処理装置。
(5)
前記エッジリングと前記第1の直流電源とを接続するように構成された第1の直流電源回路を備える切替ユニットをさらに備える、前記(1)~(4)のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
(6)
前記切替ユニットは、前記エッジリングを除電するように構成された除電回路をさらに備える、前記(5)に記載のプラズマ処理装置。
(7)
前記第1の直流電源からの第1の直流電圧の印加を停止した後、前記エッジリングに第2の直流電圧を印加するように構成された第2の直流電源であり、前記第1の直流電源と異なる前記第2の直流電源をさらに備える、前記(1)~(6)のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
(8)
前記(a)の間に前記下部電極に第2の高周波電力を供給するように構成された第2の高周波電源であり、前記第1の高周波電源と異なる前記第2の高周波電源をさらに備える、前記(1)~(7)のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
(9)
前記エッジリングは導電性材料からなる、前記(1)~(8)のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
(10)
前記第1の遅延時間は0.1μs~1000μsである、前記(1)~(9)のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
(11)
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられたステージと、
前記ステージ上の基板を囲むように設けられたエッジリングと、
高周波電源と、
少なくとも1つの直流電源と、
前記エッジリングが前記少なくとも1つの直流電源に接続された第1のオン状態と、前記エッジリングが前記少なくとも1つの直流電源に接続されないオフ状態とを切り替える切替ユニットと、
制御部と、
備え、
前記制御部は、
(a)前記切替ユニットの前記オフ状態において高周波電力の供給を開始することと、
(b)前記(a)の後、第1の遅延時間が経過したときに、前記オフ状態から前記第1のオン状態に切り替えることと、
を実行するように構成される、プラズマ処理装置。
(12)
前記切替ユニットは、前記エッジリングを除電するように構成された除電回路をさらに備え、
前記切替ユニットは、前記第1のオン状態、前記エッジリングが前記除電回路に接続される第2のオン状態、及び前記オフ状態をさらに切り替えるように構成され、
前記オフ状態は、前記エッジリングが前記少なくとも1つの直流電源のいずれとも接続されず、前記エッジリングが前記除電回路に接続されない状態である、前記(11)に記載のプラズマ処理装置。
(13)
前記制御部は、
(c)前記(b)の後、前記高周波電力の供給を停止することと、
(d)前記(c)の後、前記第1のオン状態から前記オフ状態に前記切替ユニットを切り替えることと、
(e)前記(d)の後、第2の遅延時間が経過したときに、前記オフ状態から前記第2のオン状態に前記切替ユニットを切り替えることと、
をさらに実行するように構成される、前記(12)に記載のプラズマ処理装置。
(14)
前記切替ユニットは、前記エッジリングと前記少なくとも1つの直流電源の1つとを接続するように構成された第1の直流電源回路をさらに備え、
前記第1の直流電源回路は、第1の切替素子と第1のダンピング素子とを備え、
前記除電回路は、第2の切替素子と第2のダンピング素子とを備える、前記(13)に記載のプラズマ処理装置。
【符号の説明】
【0103】
1 プラズマ処理装置
10 チャンバ
11 ステージ
12 下部電極
13 静電チャック
14 エッジリング
50 第1の高周波電源
51 第2の高周波電源
60 直流電源
100 制御部
W ウェハ