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特許7536544点検支援装置、点検支援方法および点検支援プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】点検支援装置、点検支援方法および点検支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240813BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240813BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G01N21/88 J
G06T1/00 300
H04N23/60 100
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020124671
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022021209
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 準
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101499(JP,A)
【文献】特開2016-082441(JP,A)
【文献】特開2006-118913(JP,A)
【文献】特開2013-123123(JP,A)
【文献】特開2015-082830(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G01N 21/88
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像部と、
前記撮像部が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、前記第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理部と、
前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とに対応付けて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理部と、
前記第2処理部により算出された前記ずれに基づいて、前記第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する前記第2画像の特徴点とが、表示部において互いに対応して表示されるように、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理部と、
前記第3処理部により処理された結果を前記表示部に表示する処理を行う表示処理部を備える点検支援装置。
【請求項2】
前記第1処理部は、前記撮像部により3つ以上の画像を生成した場合、一定以上の明度の差がある二つの画像を選択し、一方を前記第1画像とし、他方を前記第2画像とする請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項3】
前記第3処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とに基づいて、各画素における、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像と、の明度の差を示す明度差画像を生成する請求項1または2に記載の点検支援装置。
【請求項4】
前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とを所定のタイミングで順次切り替えて表示されるように処理を行う請求項1または2に記載の点検支援装置。
【請求項5】
前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とが前記表示部において並列して表示されるように処理を行う請求項1または2に記載の点検支援装置。
【請求項6】
前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とが前記表示部に表示されたときに、裸眼立体視されるように処理を行う請求項1または2に記載の点検支援装置。
【請求項7】
前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とに基づいて、アナグリフ画像を生成し、当該アナグリフ画像を前記表示部に表示する請求項1または2に記載の点検支援装置。
【請求項8】
前記表示部は、ヘッドマウントディスプレイであり、
前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とを前記ヘッドマウントディスプレイに表示するように処理する請求項1または2に記載の点検支援装置。
【請求項9】
前記第1画像に含まれている前記損傷箇所の明度と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像に含まれている前記損傷箇所の明度との差分を算出し、当該明度の差分に基づいて、損傷箇所の深さ方向を特定する第1特定部を備える請求項1から8のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項10】
鉛直方向を検出するセンサと、
前記撮像部により点検対象物を撮像するときに前記センサの検出結果を取得し、当該センサの検出結果と前記第1画像および前記第2画像とを関連付けて保存する第1記憶部とを備える請求項1から9のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項11】
少なくとも、前記点検対象物を特定するための固有情報と、前記点検対象物の撮像部位に関する情報と、を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報と、前記第1画像および前記第2画像を関連付けて保存する第2記憶部とを備える請求項1から10のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項12】
前記取得部が取得する情報は、前記点検対象物に発生した損傷の状態、またはその種類に関する情報を含む請求項11に記載の点検支援装置。
【請求項13】
ユーザの操作に応じて前記撮像部の動作モードを切り替える処理を行う動作処理部を有し、
前記取得部が取得する情報は、前記動作モードを特定する情報を含む、請求項11または12に記載の点検支援装置。
【請求項14】
前記撮像部を介して入力される画像が前記表示部に表示されており、当該表示部に表示されている損傷の長手方向に基づいて、前記撮像部を移動する方向を指示する指示部を備え、
前記表示処理部は、前記指示部による指示を前記表示部に表示する処理を行う請求項1から13のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項15】
前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とに基づいて、損傷を含む劣化の種類を特定する第2特定部を備える請求項1から12のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項16】
前記撮像部により生成した前記第1画像の中心を含む特定領域の明度の参照値と、前記第2画像の中心を含む特定領域の明度の参照値とを比較して、所定の閾値以上の差分が生じているかどうかを判定する判定部と、
前記判定部により所定の閾値以上の差分が生じていると判定された場合には報知を行う報知部とを備える請求項1から13のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項17】
ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像工程と、
前記撮像工程が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、前記第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理工程と、
前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とに対応付けて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理工程と、
前記第2処理工程により算出された前記ずれに基づいて、前記第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する前記第2画像の特徴点とが、表示部において互いに対応して表示されるように、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理工程と、
前記第3処理工程により処理された結果を前記表示部に表示する処理を行う表示処理工程とを備える点検支援方法。
【請求項18】
コンピュータに、
ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像工程と、
前記撮像工程が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、前記第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理工程と、
前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とに対応付けて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理工程と、
前記第2処理工程により算出された前記ずれに基づいて、前記第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する前記第2画像の特徴点とが、表示部において互いに対応して表示されるように、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理工程と、
前記第3処理工程により処理された結果を前記表示部に表示する処理を行う表示処理工程とを実行させるための点検支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点検支援装置、点検支援方法および点検支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物や電柱(以下、点検対象物と称する)の外観などを点検する際に、この点検の作業を支援する装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、点検対象物であるコンクリート表面を照明する複数のライトと、複数のライトを選択的に点灯させる点灯制御部と、ライトにより照明されるコンクリート表面を撮影するカメラと、カメラからの画像データを順次二値化処理する二値化処理部と、二値化処理した複数の画像データであって、コンクリート表面の所定の領域に関する複数の画像データの差分画像を生成する差分画像生成部とを備える装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、点検対象物であるコンクリート表面の撮影画像に補正とノイズ除去の処理を施した前処理済画像を取得する前処理済画像形成部と、前処理済画像に対して、圧縮率を変えながら高解像度から低解像度まで解像度の異なる複数のレイヤ画像を形成するレイヤ画像形成部と、抽出対象の変状に最適な解像度のレイヤ画像から当該変状を抽出する変状抽出部と、抽出された変状を統合して出力する変状統合部とを備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-117788号公報
【文献】特開2014-006222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、点検対象物に対して、異なる方向から選択的にライトによる照明を行う必要があるため、例えば、ライトによる照明が太陽光により影響を受けてしまう時間帯を避ける必要があり、点検を行う時間帯に制限が生じる問題がある。また、特許文献2に記載の装置によって、高度な画像処理により点検対象物に生じている変状(例えば、ひび割れ)を画像から抽出できたとしても、その画像から変状を人が視認できない場合には、確認のため、再度現場に行く必要が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、点検を行う時間帯に制限を設けずに、撮像画像から点検対象物の損傷状態を視認させることができる点検支援装置、点検支援方法および点検支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る点検支援装置は、ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像部と、前記撮像部が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、前記第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理部と、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とに対応付けて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理部と、前記第2処理部により算出された前記ずれに基づいて、前記第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する前記第2画像の特徴点とが、表示部において互いに対応して表示されるように、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理部と、前記第3処理部により処理された結果を前記表示部に表示する処理を行う表示処理部を備える。
【0009】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記第1処理部は、前記撮像部により3つ以上の画像を生成した場合、一定以上の明度の差がある二つの画像を選択し、一方を前記第1画像とし、他方を前記第2画像とする構成である。
【0010】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記第3処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とに基づいて、各画素における、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像と、の明度の差を示す明度差画像を生成する構成である。
【0011】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とを所定のタイミングで順次切り替えて表示されるように処理を行う構成である。
【0012】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とが前記表示部においてに並列して表示されるように処理を行う構成である。
【0013】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とが前記表示部に表示されたときに、裸眼立体視されるように処理を行う構成である。
【0014】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とに基づいて、アナグリフ画像を生成し、当該アナグリフ画像を前記表示部に表示する構成である。
【0015】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記表示部は、ヘッドマウントディスプレイであり、前記表示処理部は、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とを前記ヘッドマウントディスプレイに表示するように処理する構成である。
【0016】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記第1画像に含まれている前記損傷箇所の明度と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像に含まれている前記損傷箇所の明度との差分を算出し、当該明度の差分に基づいて、損傷箇所の深さ方向を特定する第1特定部を備える構成である。
【0017】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、鉛直方向を検出するセンサと、前記撮像部により点検対象物を撮像するときに前記センサの検出結果を取得し、当該センサの検出結果と前記第1画像および前記第2画像とを関連付けて保存する第1記憶部とを備える構成である。
【0018】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、少なくとも、前記点検対象物を特定するための固有情報と、前記点検対象物の撮像部位に関する情報と、を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報と、前記第1画像および前記第2画像を関連付けて保存する第2記憶部とを備える構成である。
【0019】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記取得部が取得する情報は、前記点検対象物に発生した損傷の状態、またはその種類に関する情報を含む構成である。
【0020】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、ユーザの操作に応じて前記撮像部の動作モードを切り替える処理を行う動作処理部を有し、前記取得部が取得する情報は、前記動作モードを特定する情報を含む構成である。
【0021】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記撮像部を介して入力される画像が前記表示部に表示されており、当該表示部に表示されている損傷の長手方向に基づいて、前記撮像部を移動する方向を指示する指示部を備え、前記表示処理部は、前記指示部による指示を前記表示部に表示する処理を行う構成である。
【0022】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記第1画像と、各画素の座標位置を変更した前記第2画像とに基づいて、損傷を含む劣化の種類を特定する第2特定部を備える構成である。
【0023】
また、本開示に係る点検支援装置は、上記開示において、前記撮像部により生成した前記第1画像の中心を含む特定領域の明度の参照値と、前記第2画像の中心を含む特定領域の明度の参照値とを比較して、所定の閾値以上の差分が生じているかどうかを判定する判定部と、前記判定部により所定の閾値以上の差分が生じていると判定された場合には報知を行う報知部とを備える構成である。
【0024】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る点検支援方法は、ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像工程と、前記撮像工程が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、前記第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理工程と、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とに対応付けて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理工程と、前記第2処理工程により算出された前記ずれに基づいて、前記第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する前記第2画像の特徴点とが、表示部において互いに対応して表示されるように、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理工程と、前記第3処理工程により処理された結果を前記表示部に表示する処理を行う表示処理工程とを備える。
【0025】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る点検支援プログラムは、コンピュータに、ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像工程と、前記撮像工程が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、前記第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理工程と、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とに対応付けて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理工程と、前記第2処理工程により算出された前記ずれに基づいて、前記第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する前記第2画像の特徴点とが、表示部において互いに対応して表示されるように、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理工程と、前記第3処理工程により処理された結果を前記表示部に表示する処理を行う表示処理工程とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、点検を行う時間帯に制限を設けずに、撮像画像から点検対象物の損傷状態を視認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、点検の作業を支援する点検支援装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1画像および第2画像を生成するときの様子を模式的に示す図である。
図3図3は、第2処理部により第1画像と第2画像の特徴点同士を対応付ける処理についての説明に供する図である。
図4図4は、第3処理部により画像の座標位置を変更処理した後の様子を模式的に示す図である。
図5図5は、表示部に第1画像と第2画像とが表示されている様子を模式的に示す図である。
図6図6は、損傷記録票の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、撮像部により生成された複数の画像を示す図である。
図8図8は、明度差画像の一例を模式的に示す図である。
図9図9は、第1画像と第2画像とが時間軸上に繰り返し並んでいる様子を模式的に示す図である。
図10図10は、第1画像と第2画像とが表示部に表示される例を模式的に示す図である。
図11図11は、表示処理部によりステレオグラムを生成する手順についての説明に供する図である。
図12図12は、アナグリフ画像を生成する手順についての説明に供する図である。
図13図13は、ヘッドマウントディスプレイが頭部に装着されている様子を示す図である。
図14図14は、損傷箇所の深さ方向を特定する手順についての説明に供する図である。
図15図15は、明度差に対する深さ方向が規定されている第1テーブルの一例を模式的に示す図である。
図16図16は、第1記憶部に保存されている第2テーブルを模式的に示す図である。
図17図17は、コンピュータの構成を示す図である。
図18図18は、他のコンピュータの構成を示す図である。
図19図19は、点検アプリの動作についての説明に供するフローチャートである。
図20図20は、点検支援装置の外観を示す図である。
図21図21は、撮像時に表示部に表示される撮像画面の一例を模式的に示す図である。
図22図22は、第2記憶部に保存されている第3テーブルを模式的に示す図である。
図23図23は、指示部により移動の方向が指示される様子を模式的に示す図である。
図24図24は、撮像部で生成された画像が保存されるときのフォルダ構造を模式的に示す図である。
図25図25は、点検支援方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本開示が限定されるものでない。
【0029】
(点検支援装置の構成と動作について)
図1は、点検の作業を支援する点検支援装置の構成を示す図である。点検支援装置1は、撮像部11と、第1処理部12と、第2処理部13と、第3処理部14と、表示処理部15を備える。点検支援装置1は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、ノートPC(Personal Computer)等で構成されている。
【0030】
撮像部11は、ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する。撮像部11は、例えば、被写体を撮像し、画像を生成するカメラ機能を有している。具体的には、撮像部11は、レンズユニットと、撮像素子と、信号処理部とから構成される。レンズユニットは、被写体像を取り込んで当該撮像素子の撮像面に結像する。撮像素子は、レンズユニットが結像した被写体像を受光して電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等で構成されている。信号処理部は、撮像素子からの電気信号に対して信号処理(例えばA/D変換等)を行って画像を生成する。
【0031】
第1処理部12は、撮像部11が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する。点検対象物とは、コンクリートで製造されている電柱などの道路附属物や、建物などの壁面などである。なお、点検対象部は、コンクリートに限定されず、ゴムなどでもよい。本実施例では、主な点検対象物として電柱を一例に説明するが、点検対象物は電柱に限定されない。損傷箇所とは、電柱の表面に生じているひび割れなどである。
【0032】
ここで、第1画像と第2画像について説明する。図2は、第1画像および第2画像を生成するときの様子を模式的に示す図である。点検者は、点検対象物である電柱Aの損傷箇所Bを発見した場合、点検支援装置1により画像を撮像する。
【0033】
点検者は、損傷箇所Bであるひび割れが生じている方向に対して撮像部11(点検支援装置1)を垂直方向に移動して、明度が異なる画像を少なくとも2枚撮影する。撮影枚数は2枚でもよいし、多数撮影した中から明度の異なる2枚を選んでもよい。また、動画撮影をして得られた動画から適当なフレームから2つを選択してもよい。
【0034】
例えば、点検者は、損傷箇所Bが画像の所定部分(例えば画像の中心付近)に位置するように撮像部11により撮像する。このときに撮像部11により生成された画像を第1画像P11とする。図2に示す例では、損傷箇所Bは、図2中のX方向に対して略垂直な方向に伸びている。点検者は、損傷箇所Bの長手方向に対して垂直な方向(図2中のX方向)に撮像部11(点検支援装置1)を移動し、損傷箇所Bが画像に含まれるように撮像部11により撮像する。このときに撮像部11により生成された画像を第2画像P21とする。なお、点検者は、撮像部11(点検支援装置1)を電柱Aに近づけたり遠ざけたりせずに、電柱Aとの距離を一定に保ちながら、ひび割れに対して垂直方向にゆっくりと移動させて撮像することが好ましい。
【0035】
図2に示すように、第1画像P11に含まれている損傷箇所B1の明度と、第2画像P21に含まれている損傷箇所B2の明度は異なっている。一方、第1画像P11に含まれている損傷箇所B1以外の箇所の明度と、第2画像P21に含まれている損傷箇所B2以外の箇所の明度はほぼ同じである。これは、損傷箇所Bは、表面から内部に向かってひび割れが生じているので、例えば、ひび割れの真上から撮像した場合と、このひび割れを斜め上方から撮像した場合(ひび割れが生じている方向に対して垂直方向に移動させて撮像した場合)とで、損傷箇所B1から撮像部11の方向に反射される光量が異なることによる。一方、損傷箇所Bが生じていない箇所は、異なるアングルから撮影しても明度の変化はほとんどないと言える。
【0036】
また、第1処理部12は、第1画像および第2画像を解析し、特徴点を抽出する。第1処理部12は、例えば、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)やSURF(Speeded-Up Robust Features)などの手法を利用して、各画像の明度や色彩の変化が生じているエッジや、エッジが交わるコーナー等の特徴的な部位を特徴点として抽出する。
【0037】
図2には、第1処理部12により第1画像P11から複数の特徴点a_1~a_nを抽出した画像を第1画像P12として示している。複数の特徴点a_1~a_nは、損傷箇所B1の周囲に集中している。また、図2には、第1処理部12により第2画像P21から複数の特徴点a_1′~a_n′を抽出した画像を第2画像P22として示している。複数の特徴点a_1′~a_n′は、損傷箇所Bの周囲に集中している。
【0038】
第2処理部13は、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点とに対応付けて、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する。図3は、第2処理部13により第1画像P12と第2画像P22の特徴点同士を対応付ける処理についての説明に供する図である。
【0039】
例えば、第2処理部13は、第1画像P12の特徴点と第2画像P22の特徴点とをマッチング処理により特徴点同士を対応付け、この対応付けの結果から、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する。具体的には、第2処理部13は、マッチング処理により第1画像P12の特徴点a_1と第2画像P22の特徴点a_1′とを対応付ける処理を行う。そして、第2処理部13は、対応付けた第1画像P12の特徴点a_1と第2画像P22の特徴点a_1′とが何画素(何ピクセル)ずれているかを算出する。なお、第2処理部13は、マッチング処理によりすべての特徴点同士を対応付け、この対応付けた結果から、すべての特徴点同士が何画素(何ピクセル)ずれているかを算出する。
【0040】
第3処理部14は、第2処理部13により算出されたずれに基づいて、第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する第2画像の特徴点とが、表示部16において互いに対応して表示されるように、第1画像および第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う。
【0041】
図4は、第3処理部14により画像の座標位置を変更処理した後の様子を模式的に示す図である。なお、図4では、第2画像の座標位置を変更する例を示しているが、第1画像の座標位置を変更してもよい。また、図4に示す第2画像P22は、下方向に座標位置を変更したため、変更した量だけ画像の上部分に黒い縁が表れるが、黒い縁を残してもよいし、近くの部分の画素をコピーしてもよい。
【0042】
表示処理部15は、第3処理部14により処理された結果を表示部16に表示する処理を行う。図5は、表示部16に第1画像P12と第2画像P22とが表示されている様子を模式的に示す図である。第1画像P12と第2画像P22とは、同じ座標位置に明度が異なる損傷箇所B1,B2が示されている。
【0043】
また、点検支援装置1は、第3処理部14で処理した第1画像および第2画像を損傷記録表Cに添付して、点検の依頼主に送付してもよい。
【0044】
図6は、損傷記録票Cの一例を模式的に示す図である。損傷記録票Cには、例えば、図6に示すように、部材名称、部材全体としての損傷程度の評価結果、及び当該部材の措置内容等の情報と、当該部材に対して割り当てられた複数の点検箇所を撮影した撮影画像とが含まれている。
【0045】
このようにして、点検支援装置1は、点検対象物に生じている損傷箇所を撮像する際に、撮像部11に対するライト位置を変更して撮像する必要がなく、太陽光による影響が低減されるため、点検を行う時間帯に制限が生じることがなく、また、損傷箇所のみ明度が異なる2つの撮像画像を生成するので、撮像画像から点検対象物の損傷状態を視認させることができる。
【0046】
(第1処理部の動作について)
第1処理部12は、撮像部11により3つ以上の画像を生成した場合、一定以上の明度の差がある二つの画像を選択し、一方を第1画像とし、他方を第2画像とする構成でもよい。
【0047】
図7は、損傷箇所Bの長手方向に対する垂直方向において異なる位置から損傷箇所Bを撮影し、撮像部11により生成された複数の画像を示す図である。画像P31には、損傷箇所B31が含まれている。画像P32には、損傷箇所B32が含まれている。画像P33には、損傷箇所B33が含まれている。画像P34には、損傷箇所B34が含まれている。なお、図7では、4つの画像が生成された例を示しているが、3つ以上であればよい。
【0048】
例えば、点検者は、損傷箇所Bの長手方向に対して垂直方向に撮像部11(点検支援装置1)を移動しながら、損傷箇所Bが画像に含まれるように撮像する。また、撮像部11の連写機能を利用して複数の画像を撮像してもよいし、撮像部11の動画撮影機能を利用し、得られた動画から複数のフレーム(画像)を抽出してもよい。
【0049】
また、損傷箇所の明度は、低い順に、損傷箇所B31、損傷箇所B32、損傷箇所B33、損傷箇所B34である。第1処理部12は、損傷箇所B31が含まれる画像P31を第1画像とし、損傷箇所B34が含まれる画像P34を第2画像とすることができる。
【0050】
このようにして、複数の明度の異なる画像を生成することで、複数の画像の明度に基づいて、適切な画像を第1画像と第2画像として選択することができる。
【0051】
また、第1処理部12は、明度の異なる複数の撮像画像を合成して第1画像と第2画像を生成するようにしてもよい。より具体的には、例えば、図7に示すように損傷箇所B31、損傷箇所B32、損傷箇所B33、損傷箇所B34の画像がある場合、第1処理部12は、各画像の同じ位置に対応する画素のうち、所定の条件(例えば、最も明度が低い、または明度が所定の値以下)を満たす画素を抽出し、各画像のそれぞれの位置で同様に抽出した画素を配列して第1画像を生成するとともに、各画像の同じ位置に対応する画素のうち、他の所定の条件(例えば、最も明度が高い、または明度が所定の値以上)を満たす画素を抽出し、各画像のそれぞれの位置で同様に抽出した画素を配列して第2画像を生成するようにしてもよい。画素単位でなく、各撮像画像を複数の領域に同様に分割し、当該領域の参照値(例えば、当該領域における明度の平均値、代表値等)が所定の条件を見たす領域をそれぞれ合成して第1画像と第2画像を生成するようにしてもよい。このようにして、複数の撮像画像を合成して、互いに明度の異なる第1画像と第2画像を生成することができる。
【0052】
なお、上述したように複数の撮像画像を合成して互いに明度の異なる第1画像と第2画像を生成する場合、当該複数の撮像画像に対し、第1処理部12、第2処理部13、第3処理部14を利用した処理により、互いの撮像画像の撮影位置を補正した上で合成し、互いに明度の異なる第1画像と第2画像を生成するようにしてもよい。
【0053】
(第3処理部の動作について)
また、第3処理部14は、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とに基づいて、各画素における、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像との明度の差を示す明度差画像を生成する構成でもよい。
【0054】
図8は、明度差画像P3の一例を模式的に示す図である。明度差画像P3は、明度差が大きいほど白色(黒色でもよい)になる。このようにして、点検支援装置1は、明度差が最も大きい損傷箇所を明度差画像により明確に示すことができる。
【0055】
(表示処理部の第1の動作について)
表示処理部15は、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とを所定のタイミング(例えば、200msecごと)で順次切り替えて表示されるように処理を行う構成でもよい。
【0056】
図9は、第1画像P12と第2画像P22とが時間軸上に繰り返し並んでいる様子を模式的に示す図である。表示処理部15は、例えば、第1画像と第2画像を実際に切り替えて表示してもよいし、アニメーションGIF(登録商標)やMPEG4(登録商標)などにより繰り返し再生を実現してもよい。
【0057】
このようにして、点検支援装置1は、第1画像と第2画像とをパラパラ漫画のように順次切り替えて表示するので、損傷箇所をより明確に示すことができる。
【0058】
(表示処理部の第2の動作について)
表示処理部15は、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とが表示部16においてに並列して表示されるように処理を行う構成でもよい。
【0059】
図10は、第1画像P12と第2画像P22とが表示部16に表示される例を模式的に示す図である。図10(a)は、第1画像P12と第2画像P22とが表示部16において左右に配置される例を示している。図10(b)は、第1画像P12と第2画像P22とが表示部16において上下に配置される例を示している。
【0060】
表示処理部15は、水平方向が垂直方向よりも長くなるように表示部16が配置(横長配置)された場合には、図10(a)に示すように、第1画像P12と第2画像P22とが表示部16において左右に配置し、垂直方向が水平方向よりも長くなるように表示部16が配置(縦長配置)された場合には、図10(b)に示すように、第1画像P12と第2画像P22とが表示部16において上下に配置する。
【0061】
このようにして、点検支援装置1は、表示部16の向きに応じて、損傷箇所のみ明度が異なる2つの撮像画像を表示するので、損傷箇所の把握を容易に行わせることができる。
【0062】
また、第2処理部13により算出したずれに基づいて、撮像部11と損傷箇所との間の距離を算出し、第3処理部14により第1画像および第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う際に、当該距離に応じた画素の横ずれを生じさせる処理を行ってもよい。このような構成によれば、3次元的な立体感を生じさせることができ、現場での目視に近い感覚を再現することができる。また、縦方向に撮像部11を移動させて撮像した場合であっても、横ずれを生じさせる処理を行うことにより、立体感を生じさせることができ、ステレオカメラでは実現が困難な効果を奏することができる。
【0063】
(表示処理部の第3の動作について)
表示処理部15は、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とが表示部16に表示されたときに、裸眼立体視されるように処理を行う構成でもよい。裸眼立体視されるような処理とは、二次元である第1画像と第2画像とを裸眼で観察したときに、三次元的に見える(立体視できる)ように、第1画像と第2画像に対して行う処理である。
【0064】
例えば、カメラを所定距離(例えば、6.5cm)ずらして2枚の画像を生成することにより、裸眼立体視可能な画像(ステレオグラム)を生成することができる。
【0065】
よって、表示処理部15は、例えば、第2画像P22に対して、撮像部11を右方向に所定距離(例えば、6.5cm)ずらした場合に相当する画像処理(左方向に所定の画素数移動する処理)を行う。図11は、表示処理部15によりステレオグラムを生成する手順についての説明に供する図である。
【0066】
このようにして、点検支援装置1は、表示処理部15により裸眼立体視されるように処理を行うので、表示部16に表示される画像を裸眼立体視させることができ、損傷箇所の把握を容易に行わせることができる。
【0067】
(表示処理部の第4の動作について)
表示処理部15は、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とに基づいて、アナグリフ画像を生成し、当該アナグリフ画像を表示部16に表示する構成でもよい。
【0068】
本実施例では、撮像部11により損傷箇所を真正面から見て少し左側から撮像して生成した画像を第1画像とし、当該損傷箇所を真正面から見て少し右側から撮像して生成した画像を第2画像とする。
【0069】
図12は、アナグリフ画像を生成する手順についての説明に供する図である。表示処理部15は、例えば、第1画像P12が赤色成分から構成されるように画像処理を行い、第1画像P13を生成し、また、第2画像P22が青色成分から構成されるように画像処理を行い、第2画像P23を生成する。表示処理部15は、第1画像P13と第2画像P23とを合成して、アナグリフ画像P4を生成する。
【0070】
表示処理部15は、アナグリフ画像P4を表示部16に表示する。アナグリフ用メガネ(左目が赤色フィルタで構成され、右目が青色フィルタで構成されるメガネ)を掛けると、損傷箇所を立体的に見ることができる。
【0071】
このようにして、点検支援装置1は、表示部16にアナグリフ画像を表示するので、アナグリフ用メガネを利用することにより、損傷箇所を立体的に見せることができ、二つの画像を平行視または交差視させる場合に比べて、観察者への負担が少なく、損傷箇所の把握をより容易に行わせることができる。
【0072】
(表示部の動作について)
表示部16は、ヘッドマウントディスプレイで構成されてもよい。この構成の場合、表示処理部15は、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とをヘッドマウントディスプレイに表示するように処理する。
【0073】
図13は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が頭部に装着されている様子を示す図である。ヘッドマウントディスプレイとは、頭部に装着するディスプレイ装置のことである。ヘッドマウントディスプレイは、表示された画像を2次元(2D)または3次元(3D)に表示することができる。表示処理部15は、第1画像と第2画像を2次元(2D)または3次元(3D)でヘッドマウントディスプレイに表示するように処理する。
【0074】
このようにして、点検支援装置1は、ヘッドマウントディスプレイに第1画像と第2画像とを表示することにより、二つの画像を平行視または交差視させる場合に比べて、観察者への負担が少なく、損傷箇所の把握をより容易に行わせることができる。
【0075】
(損傷箇所の深さ方向の特定について)
点検支援装置1は、図1に示すように、第1画像に含まれている損傷箇所の明度と、各画素の座標位置を変更した第2画像に含まれている損傷箇所の明度との差分を算出し、当該明度の差分に基づいて、損傷箇所の深さ方向を特定する第1特定部17を備える構成でもよい。
【0076】
図14は、損傷箇所の深さ方向を特定する手順についての説明に供する図である。図14では、電柱Aの断面を示している。また、図14中のX1は、損傷箇所Bの深さ方向を示している。例えば、Xは、電柱Aの表面Sに対する角度θで示すことができる。ここで、光源(例えば、太陽)からの光が表面Sに対して垂直に照射されているものとする。また、撮像は、電柱Aの表面Sから所定距離Tの位置から行うものとする。
【0077】
損傷箇所Bの真上付近から撮像(図14中のD1の位置から撮像)して、生成された画像を画像P51とする。また、損傷箇所Bが表面S上に生じている方向に対して垂直方向に撮像部11を移動させて、損傷箇所Bを含むように撮像(図14中のD2の位置から撮像)して、生成された画像を画像P52とする。画像P51に含まれている損傷箇所B1の明度と、画像P52に含まれている損傷箇所B2の明度とに差が生じている。
【0078】
図15は、明度差に対する深さ方向が規定されている第1テーブルT1の一例を模式的に示す図である。なお、明度差と深さ方向の対応は、一例であって、第1テーブルT1に限定されない。明度差は、例えば、階調値の差を示している。例えば、画像P51に含まれている損傷箇所B1の明度が「20」であり、画像P52に含まれている損傷箇所B2の明度が「30」の場合には、明度差は「10」である。
【0079】
第1特定部17は、第1テーブルT1を参照して、損傷箇所の明度の差分に対応する損傷箇所の深さ方向を特定する。なお、第1特定部17は、第1テーブルT1ではなく、所定の関数を利用して、損傷箇所の明度の差分に対応する損傷箇所の深さ方向を算出してもよい。
【0080】
また、本実施例では、2つの画像に含まれている損傷箇所の明度差に基づいて、損傷箇所の深さ方向を特定したが、撮像位置の異なる3つ以上の画像に含まれる損傷箇所の明度差に基づいて、損傷箇所の深さ方向を特定してもよい。
【0081】
このようにして、点検支援装置1は、第1特定部17により損傷箇所の深さ方向を特定(推定)するので、点検対象物に補修が必要なのかどうかの判断などに役立てることができる。
【0082】
点検支援装置1は、図1に示すように、センサ18と、第1記憶部19とを備える構成でもよい。
【0083】
センサ18は、鉛直方向を検出する。センサ18は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、または地磁気センサなどにより構成される。
【0084】
第1記憶部19は、撮像部11により点検対象物を撮像するときにセンサ18の検出結果を取得し、当該センサ18の検出結果と第1画像および第2画像とを関連付けて保存する。
【0085】
点検支援装置1は、センサ18の検出結果に基づいて、自身の向き(例えば、縦向きや横向きなど)を判定する機能を有している。
【0086】
ここで、点検者は、損傷箇所の形状などに応じて、適宜、点検支援装置1の向きを変えて撮像を行う。図16は、第1記憶部19に保存されている第2テーブルT2を模式的に示す図である。第2テーブルT2は、各画像に固有に付与される画像IDと、その画像が撮像されたときのセンサ18の検出結果が関連付けられている。
【0087】
よって、点検支援装置1は、第2テーブルT2を参照することにより、画像を撮像したときの点検支援装置1の向きを判定することができ、画像に含まれている損傷箇所の方向を正しく認識することができる。例えば、損傷記録表C(図6を参照)に画像が90°回転して張り付けられていた場合、その画像を撮像したときの点検支援装置1の向きが分かるので、その画像に含まれている損傷箇所の方向を正しく認識することができる。
【0088】
(点検支援アプリについて)
点検支援装置1の各構成要素の機能は、アプリケーションプログラム(以下、点検支援アプリと称する)により実現することができる。ここで、点検支援アプリについて説明する。点検支援アプリは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0089】
工程1:ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する撮像工程
工程2:撮像工程が生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する第1処理工程
工程3:第1画像の特徴点と第2画像の特徴点とに対応付けて、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する第2処理工程
工程4:第2処理工程により算出されたずれに基づいて、第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する第2画像の特徴点とが、表示部16において互いに対応して表示されるように、第1画像および第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う第3処理工程
工程5:第3処理工程により処理された結果を表示部16に表示する処理を行う表示処理工程
【0090】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図を用いて説明する。図17は、コンピュータ500の構成を示す図である。コンピュータ500は、図17に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスBUS上に接続されて構成されており、これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0091】
入出力I/F504には、ディスプレイやポインティングデバイス(例えば、マウスやキーボードなど)が接続される。入出力I/F504に接続されるディスプレイは、表示部16が相当する。
【0092】
通信I/F505は、所定の通信規格に準拠したインターフェイスであり、有線または無線によりネットワークを介して、外部装置(例えば、会社のサーバや、点検依頼者の端末装置など)と通信を行う。
【0093】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0094】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)により実現される。ストレージ503は、第1記憶部19および第2記憶部が相当する。ストレージ503には、上述した工程1~工程6で実現される点検支援アプリなどの各種のプログラムが格納されている。
【0095】
プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0096】
具体的には、プロセッサ501は、点検者の操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、本実施形態にかかる本発明に係る点検支援アプリ)を読み出し、読み出したアプリをメモリ502に展開し、実行する。また、プロセッサ501が点検支援プログラムを実行することにより、第1処理部12と、第2処理部13と、第3処理部14と、表示処理部15と、詳細は後述する、第1特定部17と、取得部20と、動作処理部22と、指示部23と、第2特定部24と、判定部25と、報知部26の各機能が実現される。
【0097】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0098】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、専用のハードウェアである処理回路601で構成されてもよい。図18は、コンピュータ600の処理回路601の構成を示す図である。処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0099】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0100】
ここで、点検支援アプリの動作について説明する。図19は、点検アプリの動作についての説明に供するフローチャートである。なお、本実施にかかる点検支援装置1には、点検支援アプリがインストールされているものとする。図20は、点検支援装置1の外観を示す図である。図20(a)は、表示部16が配置されている側から見たときの点検支援装置1の外観を示す図である。図20(b)は、撮像部11が配置されている側から見たときの点検支援装置1の外観を示す図である。なお、表示部16の前面にはタッチパネルが配置されている。点検支援装置1は、表示部16に表示されているアイコンを点検者が指などでタッチ操作することにより、所定の動作(アイコンに対応するアプリの起動など)を行う機能を有している。
【0101】
ステップST1において、点検支援装置1は、点検者の操作を受け付け、点検支援アプリを起動する。具体的には、点検者は、点検対象物(例えば、電柱)に対する点検を開始するときに、表示部16に表示されている点検支援アプリを示すアイコンをタッチ操作する。点検支援アプリが起動し、表示部16には、点検支援アプリのトップ画面が表示される。
【0102】
ステップST2において、点検支援装置1は、点検者の操作を受け付け撮像部11により撮像を行う。
【0103】
図21は、撮像時に表示部16に表示される撮像画面Gの一例を模式的に示す図である。点検支援装置1は、撮像部11からの映像をそのまま表示部16に表示するライブビュー機能を有している。撮像画面Gは、ライブビュー機能により撮像部11から取り込んだ映像を表示する領域A1と、各種の情報が表示される領域A2と、撮像部11により撮像するボタンBTとにより構成される。なお、撮像画面Gのレイアウトや含まれる構成要素は、上述に限定されない。
【0104】
ステップST3において、点検支援装置1は、点検を終了するかどうかを判断する。点検を終了する場合(Yes)には、処理を終了する。点検を終了しない場合(No)には、ステップST2に戻る。点検を終了しない場合には、ユーザは、他の点検対象物に移動し、点検を継続する。
【0105】
(固有情報などの取得について)
ここで、ステップST2の工程において、点検支援装置1により点検対象物を特定するための固有情報などを取得するための構成と動作について説明する。点検支援装置1は、図1に示すように、取得部20と、第2記憶部21とを備える構成である。
【0106】
取得部20は、少なくとも点検対象物を特定するための固有情報と、点検対象物の撮像部位に関する情報とを取得する。点検対象物を特定するための固有情報とは、例えば、点検対象物である電柱に固有に付されているID番号である。点検対象物の撮像部位に関する情報とは、例えば、生成した画像が点検対象物(電柱)のどこを撮影したのかの位置(電柱の上位、中位、下位など)を示す情報である。
【0107】
第2記憶部21は、取得部20が取得した情報と、第1画像および第2画像とを関連付けて保存する。
【0108】
また、取得部20が取得する情報は、点検対象物に発生した損傷の種類に関する情報を含んでもよい。点検対象物に発生した損傷の種類に関する情報とは、ひび割れや、クラックなどを示す情報である。
【0109】
図22は、第2記憶部21に保存されている第3テーブルT3を模式的に示す図である。第3テーブルT3は、点検対象物を特定するための固有情報(識別番号)と、点検対象物の撮像部位に関する情報(撮像部位情報)と、点検対象物に発生した損傷の種類に関する情報(損傷情報)とが、画像IDに関連付けられている。
【0110】
取得部20は、撮像画面Gの領域A1に表示されている検査対象物に付されているプレート(検査対象物が電柱の場合には、プレートに電柱番号などが表示されている)などを読み込み、読み込んだ画像を文字に変換する文字認識機能により識別番号を取得する構成でもよい。なお、取得部20は、ユーザにより入力された識別番号を取得する構成でもよい。取得部20で取得された識別番号は、撮像画面Gの領域A2に表示される。
【0111】
また、取得部20は、撮像画面Gの領域A1に表示されている検査対象物に対して、撮像部11により拡大(ズーム)している箇所を認識して、撮像部位情報(例えば、上部、中部、下部)を取得する構成でもよい。なお、取得部20は、ユーザにより入力された撮像部位情報を取得する構成でもよい。取得部20で取得された撮像部位情報は、撮像画面Gの領域A2に表示されてもよい。
【0112】
また、取得部20は、撮像画面Gの領域A1に表示されている検査対象物の損傷を含む劣化の種類を画像解析により認識して取得する構成でもよい。また、取得部20は、第1処理部12または第3処理部で処理された結果に基づいて、損傷を含む劣化の状態やその種類を特定してもよい。
【0113】
具体的には、点検支援装置1は、図1に示すように、第1画像と、各画素の座標位置を変更した第2画像とに基づいて、損傷を含む劣化の種類を特定する第2特定部24を備える。
【0114】
例えば、第2特定部24は、画像から抽出した複数の特徴点に基づいて、損傷を含む劣化の状態やその種類を特定する。具体的には、第2特定部24は、予め複数の損傷を含む劣化の画像により学習を行って予測モデルを生成し、この予測モデルに対象となる画像を入力して、損傷を含む劣化の状態やその種類を特定(AIによる判定)してもよい。なお、損傷を含む劣化の状態の例としては、劣化している箇所の長さや幅、損傷であれば深さ等がある。
【0115】
また、第2特定部24が、図8に示すような明度差画像を用いて損傷を含む劣化の状態や種類を特定するようにしてもよい。より具体的には、例えば、第1画像および第2画像の少なくとも一方と明度差画像とを両画像上で互いに対応する箇所の明度差および彩度に基づいて、画像上に損傷または錆のいずれが表示されているかを特定するようにしてもよい。AIによる特定を行う場合には、明度差画像を教師データとして用いることで予測モデルを簡略化することができ、より精度よく損傷を含む劣化の状態や種類を特定することができる。
【0116】
また、取得部20は、上述のAIによる判定ではなく、ユーザにより損傷を含む劣化の種類が判定され、その判定結果を取得する構成でもよい。取得部20で取得された損傷を含む劣化の種類は、撮像画面Gの領域A2に表示される。図21に示す例では、「ひび」項目と「錆汁」項目が選択された状態で示されている。
【0117】
(撮像部の動作モードについて)
また、撮像部11には複数の動作モードがあり、この動作モードを切り替えて撮像してもよい。具体的には、点検支援装置1は、図1に示すように、ユーザの操作に応じて撮像部11の動作モードを切り替える処理を行う動作処理部22を備える。取得部20が取得する情報は、動作モードを特定する情報を含んでもよい。
【0118】
撮像部11の動作モードには、通常の画質で撮像する通常撮影モードと、明るさの異なる複数の画像を合成するHDR(High Dynamic Range)撮影モードと、移動させながら撮影する移動撮影モードなどがある。例えば、検査対象物の全体を撮像するときには、通常撮影モードを利用し、損傷箇所を撮像するときには、HDR撮影モードや移動撮影モードを利用することができる。
【0119】
また、ユーザは、メニュー(不図示)から撮影モードを選択して撮影を行う。動作処理部22は、ユーザに選択された動作モードによって動作するように撮像部11を制御する。取得部20は、撮像部11で生成した画像に動作モードを関連付ける処理を行う。
【0120】
(指示機能について)
また、点検支援装置1は、損傷箇所を撮像するときに、表示部16に撮像部11を移動する方向を示す指示機能を供えていてもよい。具体的には、点検支援装置1は、図1に示すように、撮像部11を介して入力される画像が表示部16に表示されており、当該表示部16に表示されている損傷の長手方向に基づいて、撮像部11を移動する方向を指示する指示部23を備える。表示処理部15は、指示部23による指示を表示部16に表示する処理を行う。
【0121】
図23は、指示部23により移動の方向が指示される様子を模式的に示す図である。例えば、ユーザは、領域A1に表示されているライブビューの映像(電柱の損傷箇所が表示されている)において、表示されている損傷箇所を指でなぞる操作を行う。図23に示す例では、損傷箇所は横方向に伸びているので、ユーザは、損傷箇所が表示されている箇所を指で横になぞる操作を行う。
【0122】
指示部23は、この操作を受け付け、なぞられた方向に対して直交する方向に移動する旨の指示(図23中のI)を表示部16に表示する。よって、ユーザは、この指示にしたがうことにより、所望の画像を撮像することができる。
【0123】
(全体の明度が異なる画像が混在することを防止する機能について)
複数のアングルで撮像したときに、ユーザの影が損傷箇所に写り込んだ画像と、ユーザの影が損傷箇所に写り込んでいない画像とが混在されて生成される場合がある。
【0124】
損傷箇所を複数のアングルで撮像するときには、同じ環境下(特に、損傷箇所に当たる光量)で行うことが好ましい。
【0125】
点検支援装置1は、上述のような画像の混在を防止する機能を有している。具体的には、点検支援装置1は、図1に示すように判定部25と、報知部26とを備える。
【0126】
判定部25は、撮像部11により生成した第1画像の中心を含む特定領域の明度の参照値と、第2画像の中心を含む特定領域の明度の参照値とを比較して、所定の閾値以上の差分が生じているかどうかを判定する。報知部26は、判定部25により所定の閾値以上の差分が生じていると判定された場合には報知を行う。
【0127】
第1画像の中心を含む特定領域とは、第1画像の全体を含む概念である。第2画像の中心を含む特定領域についても同様に、第2画像の全体を含む概念である。なお、第1画像の中心を含む特定領域の大きさと、第2画像の中心を含む特定領域の大きさは同じであるものとする。
【0128】
また、この特定領域の明度の参照値とは、特定領域の明度の平均値でもよいし、特定領域の明度の和や、特定の関数に入力した値でもよいし、特定領域における一つ一つの画素の明度そのものを参照値としてもよい。
【0129】
例えば、明度が256階調で表現される場合、所定の閾値は、±10などである。例えば、判定部25は、第1画像の全体の明度の平均値が「100」であり、第2画像の全体の明度の平均値が「150」の場合、差分は「50」なので、所定の閾値以上であると判定する。この場合には、報知部26は、所定の閾値以上である旨を報知する。
【0130】
報知部26は、撮像画面Gに所定のメッセージを報知する構成でもよいし、撮像画面Gに所定のアイコンを表示(点灯)する構成でもよいし、スピーカーから所定の音を報知する構成でもよい。このような構成の場合、ユーザは、影が映り込まないように再度撮像を行うことができる。
【0131】
また、報知部26は、生成された画像に所定の閾値以上である旨のメッセージを関連付ける構成でもよい。このような構成の場合、例えば、第1処理部12は、当該メッセージが関連付けられている画像に対する以降の処理を行わないようにしてもよい。
【0132】
(画像の保存について)
図24は、撮像部11で生成された画像が保存されるときのフォルダ構造を模式的に示す図である。撮像部11で生成された画像は、第3記憶部27に保存される。第1処理部12は、第3記憶部27に保存されている画像を読み出して処理を行う。
【0133】
ここで、画像を保存するときの点検アプリの動作について説明する。点検アプリは、点検対象物ごとにフォルダを作成する。図24では、3つの異なる電柱を点検し、点検アプリにより、「電柱名1」、「電柱名2」、「電柱名3」の三つのフォルダが作成された例を示している。
【0134】
点検アプリは、点検対象物ごとに撮像した画像を対応する点検対象物のフォルダに保存する。また、点検アプリは、損傷箇所を含む劣化の種類ごとにフォルダを生成し、生成したフォルダに対応する画像を保存してもよい。図24では、電柱名1のフォルダに、全体像の画像が保存されるフォルダと、ひびの画像が保存されるフォルダと、その他の画像が保存されるフォルダが生成された様子を示している。
【0135】
点検アプリは、例えば、各画像に対して、撮像モードや撮像日時などをファイル名にする。また、移動撮影モードで撮影を行った場合には、移動撮影モードで撮像された画像をひとつのフォルダにまとめて保存してもよい。図24では、フォルダ「移動撮影200408120535」に移動させながら撮影した画像が保存されている様子を示している。
【0136】
(点検支援方法について)
つぎに、点検を行う時間帯に制限を設けずに、撮像画像から点検対象物の損傷状態を視認させる点検支援方法について説明する。図25は、当該点検支援方法の手順を示すフローチャートである。
【0137】
ステップST11において、撮像部11は、ユーザ操作に応じて特定箇所の画像を生成する(撮像工程)。
【0138】
ステップST12において、第1処理部12は、ステップST11の工程で生成した、点検対象物の損傷箇所を含む第1画像と、当該損傷箇所を含む、第1画像と異なる位置から撮像された第2画像との特徴点を抽出する(第1処理工程)。
【0139】
ステップST13において、第2処理部13は、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点とに対応付けて、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点との画像上のずれを算出する(第2処理工程)。
【0140】
ステップST14において、第3処理部14は、ステップST12の工程により算出されたずれに基づいて、第1画像の特徴点と、当該特徴点に対応する第2画像の特徴点とが、表示部16において互いに対応して表示されるように、第1画像および第2画像の少なくとも一方の各画素の座標位置を変更する処理を行う(第3処理工程)。
【0141】
ステップST15において、表示処理部15は、ステップST14の工程により処理された結果を表示部16に表示する処理を行う(表示処理工程)。
【0142】
このようにして、点検支援方法は、点検対象物に生じている損傷箇所を撮像する際に、ライト位置を変更して撮像する必要がなく、太陽光による影響を受けないため、点検を行う時間帯に制限が生じることがなく、また、損傷箇所のみ明度が異なる2つの撮像画像を生成するので、撮像画像から点検対象物の損傷状態を視認させることができる。
【0143】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0144】
1 点検支援装置
11 撮像部
12 第1処理部
13 第2処理部
14 第3処理部
15 表示処理部
16 表示部
17 第1特定部
18 センサ
19 第1記憶部
20 取得部
21 第2記憶部
22 動作処理部
23 指示部
24 第2特定部
25 判定部
26 報知部
27 第3記憶部
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