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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】成膜管理方法、および、成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240813BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
C23C14/34 U
C23C14/34 C
C23C14/54 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020137845
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034176
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】三浦 英之
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-321238(JP,A)
【文献】特開2012-216736(JP,A)
【文献】特開平08-050815(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119101(WO,A1)
【文献】特開2015-155577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素が互いに異なる複数のターゲットを備えた第1チャンバーにおいて、前記ターゲットに対して回転可能なステージに成膜対象を配置し、当該ステージの回転を停止させて前記ターゲットに対する成膜対象の位置を固定した状態で、各ターゲットを用いたスパッタ成膜を別々の前記成膜対象に行うこと、
前記スパッタ成膜後の各成膜対象を真空下において前記第1チャンバーから第2チャンバーに搬送すること、および、
前記第2チャンバーにおいて、各成膜対象に形成された薄膜の厚さを前記成膜対象の所定位置において測定すること、を含む
成膜管理方法。
【請求項2】
前記薄膜の厚さを測定することは、エリプソメーターを用いて前記薄膜の厚さを測定することを含む
請求項1に記載の成膜管理方法。
【請求項3】
前記各ターゲットを用いたスパッタ成膜を別々の前記成膜対象に行うことは、前記成膜対象の少なくとも1つに酸素に対して反応性を有した前記薄膜を形成することを含む
請求項1または2に記載の成膜管理方法。
【請求項4】
前記ターゲットに対して前記成膜対象を回転させながら、前記各ターゲットを用いたスパッタ成膜を単一の成膜対象に対して同時に行い、当該成膜対象を真空下において前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに搬送して、前記第2チャンバーにおいて、当該成膜対象に形成された薄膜の厚さを測定することをさらに含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜管理方法。
【請求項5】
前記複数のターゲットは、第1ターゲットを含み、
前記第1ターゲットを当該第1ターゲットと同一の組成を有した新しい第1ターゲットに交換すること、
交換後の前記第1ターゲットを用いて前記成膜対象に前記薄膜を形成すること、
交換後の前記第1ターゲットを用いて形成した前記薄膜の厚さを測定すること、および、
前記厚さを測定した結果を、参照データと比較すること、をさらに含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜管理方法。
【請求項6】
構成元素が互いに異なる複数のターゲットと、前記ターゲットに対して回転可能なステージとを備えた第1チャンバーと、
成膜対象に形成された薄膜の厚さを測定する測定部を備える第2チャンバーと、
スパッタ成膜後の前記成膜対象を真空下において前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに搬送する搬送部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1チャンバーに、前記ステージの回転を停止させて、前記ターゲットに対する成膜対象の位置を固定した状態で、各ターゲットを用いたスパッタ成膜を別々の成膜対象に対して実行させて、
前記搬送部に、前記スパッタ成膜後の各成膜対象を前記第2チャンバーに搬送させて、
前記第2チャンバーに、各成膜対象の所定位置での薄膜の厚さを測定させる
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜管理方法、および、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶素子の一例である抵抗変化素子には、磁気不揮発性メモリ(MRAM)、相変化メモリ(PRAM)、および、導電性ブリッジメモリ(CBRAM)などが知られている。これらの抵抗変化素子は、磁性を有した多層膜を備えている。多層膜が有する各膜は、スパッタ装置を用いて形成される。スパッタ装置は、ステージ、回転部、および、カソードを備えている。ステージは、スパッタ装置による処理の対象である成膜対象を支持する。回転部は、ステージに垂直な回転軸を中心にステージを回転させる。カソードは、ターゲットを備え、成膜対象に対して斜め方向からスパッタ粒子を入射させる。スパッタ装置は、互いに異なる材料から形成された複数のターゲットを備えることが可能である。こうしたスパッタ装置では、複数のターゲットを同時にスパッタすることによって、複数の元素を含む多元系薄膜を形成することが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2007/066511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、抵抗変化素子には、抵抗変化素子の機能を改善することが可能な新たな組成を有した多元系薄膜の開発が求められている。多元系薄膜を形成する元素の組成比を確認するためには、多元系薄膜が形成された成膜対象をスパッタ装置から搬出した後に組成を分析する装置を用いる必要がある。こうした組成の分析は、スパッタ装置とは異なる装置を用いる手間がかかることに加え、多元系薄膜を大気に暴露することによって正確な組成を分析することができない場合もある。そこで、多元系薄膜の組成をより容易に特定することが可能な技術が求められている。
【0005】
本発明は、多元系薄膜の組成をより容易に特定することを可能とした成膜管理方法、および、成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための成膜管理方法は、構成元素が互いに異なる複数のターゲットを備えた第1チャンバーにおいて、前記ターゲットに対して回転可能なステージに成膜対象を配置し、当該ステージの回転を停止させて前記ターゲットに対する成膜対象の位置を固定した状態で、各ターゲットを用いたスパッタ成膜を別々の前記成膜対象に行うこと、前記スパッタ成膜後の各成膜対象を真空下において前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに搬送すること、および、前記第2チャンバーにおいて、各成膜対象に形成された薄膜の厚さを前記成膜対象の所定位値において測定すること、を含む。
【0007】
上記課題を解決するための成膜装置は、構成元素が互いに異なる複数のターゲットと、前記ターゲットに対して回転可能なステージとを備えた第1チャンバーと、成膜対象に形成された薄膜の厚さを測定する測定部を備える第2チャンバーと、スパッタ成膜後の前記成膜対象を真空下において前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに搬送する搬送部と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記第1チャンバーに、前記ステージの回転を停止させて、前記ターゲットに対する成膜対象の位置を固定した状態で、各ターゲットを用いたスパッタ成膜を別々の成膜対象に対して実行させて、前記搬送部に、前記スパッタ成膜後の各成膜対象を前記第2チャンバーに搬送させて、前記第2チャンバーに、各成膜対象の所定位置での薄膜の厚さを測定させる。
【0008】
上記各構成によれば、各ターゲットを用いたスパッタ成膜によって形成された薄膜の厚さを測定することによって、各薄膜における測定箇所での厚さから、複数のターゲットを同時に成膜した場合について、多元系薄膜における元素の組成比を特定することが可能である。そのため、多元系薄膜を成膜した後に組成を分析するための装置を用いて組成比を特定する場合に比べて、多元系薄膜における組成をより容易に特定することが可能である。
【0009】
上記成膜管理方法において、前記薄膜の厚さを測定することは、エリプソメーターを用いて前記薄膜の厚さを測定することを含んでもよい。この構成によれば、エリプソメーターを用いることによって、真空下に配置された成膜対象が有する薄膜の厚さを測定することが可能である。
【0010】
上記成膜管理方法において、前記各ターゲットを用いたスパッタ成膜を別々の前記成膜対象に行うことは、前記成膜対象の少なくとも1つに酸素に対して反応性を有した前記薄膜を形成することを含んでもよい。
【0011】
上記構成によれば、真空下において薄膜の厚さを測定するから、大気中において酸化された薄膜を解析する場合に比べて、成膜時における薄膜の状態をより正確に把握することが可能である。
【0012】
上記成膜管理方法において、前記ターゲットに対して前記成膜対象を回転させながら、前記各ターゲットを用いたスパッタ成膜を単一の成膜対象に対して同時に行い、当該成膜対象を真空下において前記第1チャンバーから前記第2チャンバーに搬送して、前記第2チャンバーにおいて、当該成膜対象に形成された薄膜の厚さを測定することをさらに含んでもよい。
【0013】
上記構成によれば、各スパッタ成膜によって得られる薄膜の厚さが予め把握された状態で、多元系薄膜を成膜することが可能であって、当該多元系薄膜の厚さを真空下で確認することが可能ともなる。結果として、各薄膜の測定が真空下で行われないことによる外乱を排除して、各スパッタ成膜による混合物として多元系薄膜が得られているか否かを確認することが可能ともなる。
【0014】
上記成膜管理方法において、前記複数のターゲットは、第1ターゲットを含み、前記第1ターゲットを当該第1ターゲットと同一の組成を有した新しい第1ターゲットに交換すること、交換後の前記第1ターゲットを用いて前記成膜対象に前記薄膜を形成すること、交換後の前記第1ターゲットを用いて形成した前記薄膜の厚さを測定すること、および、前記厚さを測定した結果を、参照データと比較すること、をさらに含んでもよい。
【0015】
上記構成によれば、交換後の第1ターゲットを用いて形成した薄膜の厚さを測定した結果を参照データと比較することによって、交換後の第1ターゲットが参照データに対して相違するか否か、ひいては、交換前の第1ターゲットに対して相違するか否かを確認することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における成膜管理方法が実施される成膜装置の一例における構成を示す装置構成図。
図2】成膜装置が備えるスパッタチャンバーの構成を示す構成図。
図3】成膜対象、第1薄膜、および、第2薄膜の断面構造を模式的に示す断面図。
図4】成膜対象の表面と対向する視点から見た成膜対象の構造を示す平面図。
図5】第2実施形態における成膜管理方法の処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1から図4を参照して、成膜管理方法、および、成膜装置の一実施形態を説明する。以下では、成膜装置、および、成膜管理方法を順に説明する。
【0018】
[成膜装置]
図1が示すように、成膜装置10は、成膜チャンバー11、測定チャンバー12、および、搬送チャンバー13を備えている。成膜チャンバー11は第1チャンバーの一例であり、測定チャンバー12は第2チャンバーの一例である。成膜チャンバー11および測定チャンバー12は、搬送チャンバー13に接続されている。各チャンバー11,12,13は、各チャンバー11,12,13内を真空に維持することが可能に構成されている。
【0019】
成膜チャンバー11は、構成元素が互いに異なる複数のターゲット11Tを備えている。図1が示す例では、成膜チャンバー11は4つのターゲット11Tを備えているが、成膜チャンバー11は2つ以上の任意の数のターゲット11Tを備えることが可能である。成膜チャンバー11は、ターゲット11Tに対して回転可能なステージを備えている。
【0020】
測定チャンバー12は、成膜対象Sに形成された薄膜の厚さを測定する測定部12Aを備えている。図1が示す例では、測定チャンバー12は搬送チャンバー13を介して成膜チャンバー11に連結されているが、測定チャンバー12は成膜チャンバー11に直接接続されてもよい。
【0021】
測定部12Aは、エリプソメーターであってよい。エリプソメーターを用いることによって、真空下に配置された成膜対象Sが有する薄膜の厚さを測定することが可能である。例えば、エリプソメーターは、測定チャンバー12が備える真空槽の外部に位置している。エリプソメーターは、真空槽が備える窓を介して成膜対象Sに形成された薄膜の厚さを測定する。
【0022】
搬送チャンバー13は、搬送部13Aを備えている。搬送部13Aは、スパッタ成膜後の成膜対象Sを真空下において成膜チャンバー11から測定チャンバー12に搬送する。なお、測定チャンバー12が成膜チャンバー11に直接接続される場合には、搬送部13Aは、測定チャンバー12および成膜チャンバー11の少なくとも一方に配置されていればよい。
【0023】
成膜装置10は、搬出入チャンバー14、処理チャンバー15、および、ストッカー16をさらに備えている。搬出入チャンバー14は、成膜前の成膜対象Sを搬送チャンバー13に搬入する。搬出入チャンバー14は、成膜後の成膜対象Sを搬送チャンバー13から搬出する。
【0024】
処理チャンバー15は、例えば、成膜前の成膜対象Sに対して所定の処理を行う前処理チャンバーであってもよいし、成膜後の成膜対象Sに対して所定の処理を行う後処理チャンバーであってもよい。所定の処理は、例えば、成膜対象Sの加熱、および、成膜対象Sの冷却などである。なお、成膜装置10が備える処理チャンバー15の数は、1つ以上の任意の数であってよい。また、成膜装置10は、処理チャンバー15を備えなくてもよい。
【0025】
ストッカー16は、複数の成膜対象Sを保管する。ストッカー16は、成膜前の成膜対象Sおよび成膜後の成膜対象Sの両方を保管する。
【0026】
なお、成膜装置10では、搬送チャンバー13に対して各チャンバー12,14,15が、ゲートバルブを介して接続されている。搬送チャンバー13、成膜チャンバー11、測定チャンバー12、および、処理チャンバー15の各々は、処理空間を減圧された状態に維持することが可能に構成されている。ストッカー16は、大気圧下において成膜対象Sを保管する。搬出入チャンバー14では、ストッカー16と搬出入チャンバー14との間における成膜対象Sの搬送時には、搬出入チャンバー14が区画する空間が大気圧に維持される。一方で、搬送チャンバー13と搬出入チャンバー14との間における成膜対象Sの搬送時には、搬出入チャンバー14が区画する空間が減圧された状態に維持される。
【0027】
成膜装置10は、制御部10Cを備えている。制御部10Cは、制御部10C、中央演算処理装置、および、メモリを備える。制御部10Cは、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、制御部10Cは、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。制御部10Cは、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路としても構成される。
【0028】
制御部10Cは、成膜チャンバー11に、ステージの回転を停止させて、ターゲット11Tに対する成膜対象Sの位置を固定した状態で、各ターゲット11Tを用いたスパッタ成膜を別々の成膜対象Sに対して実行させる。制御部10Cは、搬送部13Aに、スパッタ成膜後の各成膜対象Sを測定チャンバー12に搬送させる。制御部10Cは、測定チャンバー12に、各成膜対象Sの所定位置での薄膜の厚さを測定させる。
【0029】
また、制御部10Cは、成膜チャンバー11および測定チャンバー12以外の各チャンバー、および、ストッカー16の動作を制御する。これによって制御部10Cは、成膜チャンバー11に成膜対象Sへの成膜を行わせ、また、測定チャンバー12に成膜対象Sが有する薄膜の厚さを測定させる。
【0030】
制御部10Cは、記憶部10CMを備えている。記憶部10CMには、プロセスレシピが記憶されている。プロセスレシピには、プロセスレシピを構成する複数のプロセスステップが含まれる。プロセスレシピは、各プロセスステップにおける成膜チャンバー11、測定チャンバー12、および、搬送チャンバー13の動作に関する設定値を含んでいる。制御部10Cは、プロセスレシピを読み出した後、プロセスステップ毎にそのプロセスステップに定められた設定値を読み出して、読み出した設定値に応じた指令を生成する。
【0031】
図2は、成膜装置10が備える成膜チャンバー11の構造をより詳しく示している。なお、図2は、成膜チャンバー11が備える4つのターゲット11Tのうち、2つのターゲット11Tを確認可能な視点から見た成膜チャンバー11の構造を示している。
【0032】
図2が示すように、成膜チャンバー11は、真空槽21を備えている。真空槽21には、排気部22が接続されている。排気部22は、真空槽21内を所定の圧力に減圧する。真空槽21内には、成膜対象Sを支持するステージ23が配置されている。ステージ23には、ステージ23を回転させる回転部24が接続されている。回転部24は、ステージ23における成膜対象Sの載置面に対して垂直な回転軸Rを中心にステージ23を回転させる。
【0033】
上述したように、成膜チャンバー11は、4つのターゲット11Tを備えている。4つのターゲット11Tは、第1ターゲット11TAおよび第2ターゲット11TBを含んでいる。4つのターゲット11Tの少なくとも1つは、当該ターゲット11Tのスパッタによって、酸素に対して反応性を有した薄膜を形成可能な材料から形成されてよい。この場合には、成膜装置10によれば、真空下において薄膜の厚さを測定するから、大気中において酸化された薄膜を解析する場合に比べて、成膜時における薄膜の状態をより正確に把握することが可能である。例えば、ターゲット11Tを形成する材料は、In、Ga、SnO、および、GeOなどであってよい。
【0034】
第1ターゲット11TAおよび第2ターゲット11TBの各々は、被スパッタ面を真空槽21内に露出するように真空槽21に取り付けられている。各ターゲット11TA,11TBは、成膜対象Sに斜め方向からスパッタ粒子を入射させる角度で真空槽21に取り付けられている。すなわち、ステージ23の載置面に垂直な平面であり、かつ、第1ターゲット11TAおよび第2ターゲット11TBが含まれる平面に沿う断面において、ステージ23の載置面の法線と、各ターゲット11TA,11TBの被スパッタ面の法線とが平行でない。載置面の法線と被スパッタ面の法線とが形成する角度は、例えば、0°よりも大きく45°よりも小さい。
【0035】
第1ターゲット11TAは、第1バッキングプレート25Aに固定されている。第2ターゲット11TBは、第2バッキングプレート25Bに固定されている。第1バッキングプレート25Aには、第1電源26Aが接続されている。第2バッキングプレート25Bには、第2電源26Bが接続されている。第1電源26Aおよび第2電源26Bの各々は、直流電源であってもよいし、交流電源であってもよい。
【0036】
第1ターゲット11TAには、第1バッキングプレート25Aを介して電圧が印加される。第2ターゲット11TBには、第2バッキングプレート25Bを介して電圧が印加される。第1ターゲット11TAと第2ターゲット11TBとには、互いに異なる電源から電圧が印加されるから、各ターゲット11TA,11TBを個別にスパッタすることが可能である。すなわち、第1ターゲット11TAと、第2ターゲット11TBとは、互いに異なるタイミングでスパッタされることが可能である。一方で、第1ターゲット11TAおよび第2ターゲット11TBを同時にスパッタすることも可能である。
【0037】
真空槽21内には、第1シャッター27Aと第2シャッター27Bとが位置している。第1シャッター27Aは、開状態と閉状態とを有している。第1シャッター27Aが閉状態である場合には、第1シャッター27Aは第1ターゲット11TAの被スパッタ面を覆う。第1シャッター27Aが開状態である場合には、第1シャッター27Aは第1ターゲット11TAの被スパッタ面を真空槽21内に露出させる。第2シャッター27Bは、開状態と閉状態とを有している。第2シャッター27Bが閉状態である場合には、第2シャッター27Bは第2ターゲット11TBの被スパッタ面を覆う。第2シャッター27Bが開状態である場合には、第2シャッター27Bは第2ターゲット11TBの被スパッタ面を真空槽21内に露出させる。
【0038】
真空槽21には、スパッタガスを真空槽21内に供給するガス供給部28が接続されている。ガス供給部28は、例えば希ガスをスパッタガスとして供給する。なお、ガス供給部28は、スパッタガスに加えて、反応性ガスを供給してもよい。反応性ガスは、真空槽21内においてターゲット11TA,11TBから放出されたスパッタ粒子と反応する。反応性ガスは、例えば、酸素ガスおよび窒素ガスなどであってよい。
【0039】
成膜チャンバー11によって成膜対象Sに対して薄膜が形成される際には、まず、成膜前の成膜対象Sが、搬送チャンバー13を介して減圧された成膜チャンバー11に搬入され、成膜対象Sがステージ23に載置される。次いで、回転部24によるステージ23の回転が開始される。また、第1ターゲット11TAおよび第2ターゲット11TBのうち、スパッタの対象であるターゲット11TA,11TBを覆うシャッター27A,27Bが開かれる。さらに、ガス供給部28から真空槽21内にスパッタガスが供給される。そして、スパッタ対象のターゲット11TA,11TBに電圧が印加されることによって、ターゲット11TA,11TBの被スパッタ面がスパッタされる。これにより、ターゲット11TA,11TBから放出されたスパッタ粒子が成膜対象Sに到達することによって、成膜対象Sに薄膜が形成される。
【0040】
このように、回転軸Rを中心に回転している成膜対象Sに対して薄膜が形成されることによって、成膜対象Sの面内において薄膜の厚さにおけるばらつきを抑えることが可能である。
【0041】
[成膜管理方法]
図3および図4を参照して、成膜管理方法を説明する。なお、以下に参照する図3および図4において、成膜対象Sの左右方向は、図2が示す成膜対象Sでの左右方向と同一である。
【0042】
成膜管理方法は、成膜すること、搬送すること、および、測定することを含む。成膜することでは、構成元素が互いに異なる複数のターゲット11Tを備えた成膜チャンバー11において、ターゲット11Tに対して回転可能なステージ23に成膜対象Sを配置する。そして、当該ステージ23の回転を停止させてターゲット11Tに対する成膜対象Sの位置を固定した状態で、各ターゲット11Tを用いたスパッタ成膜を別々の成膜対象Sに行う。搬送することでは、スパッタ成膜後の各成膜対象Sを真空下において成膜チャンバー11から測定チャンバー12に搬送する。測定することでは、測定チャンバー12において、各成膜対象Sに形成された薄膜の厚さを成膜対象Sの所定位値において測定する。以下図面を参照して、管理方法をより詳しく説明する。
【0043】
図3は、図2が示す成膜チャンバー11によって形成された薄膜の断面構造における一例を示している。図3では、第1ターゲット11TAのスパッタによって形成された第1薄膜が実線によって示される一方で、第2ターゲット11TBのスパッタによって形成された第2薄膜が破線によって示されている。なお、図3では、各薄膜の厚さが有する傾向を分かり易くする目的で、各薄膜における厚さの変化が誇張されている。
【0044】
本実施形態の成膜管理方法では、上述したようにターゲット11TA,11TBに対する成膜対象Sの位置が固定された状態で、成膜対象Sに薄膜が形成される。すなわち、回転部24によるステージ23の回転が停止された状態で、成膜対象Sに対して薄膜が形成される。
【0045】
図3が示すように、成膜対象Sには、第1ターゲット11TAのスパッタ、または、第2ターゲット11TBのスパッタによって薄膜が形成される。第1ターゲット11TAがスパッタされる際には、第1ターゲット11TAを覆う第1シャッター27Aが開かれる一方で、第2ターゲット11TBを覆う第2シャッター27Bが閉じられる。
【0046】
第1ターゲット11TAがスパッタされることによって、成膜対象Sには第1薄膜TF1が形成される。上述したように、成膜対象Sでは、左端と第1ターゲット11TAとの間の距離が最も小さい一方で、右端と第1ターゲット11TAとの間の距離が最も大きい。そのため、成膜対象Sの左端に到達するスパッタ粒子の数が最も多い一方で、成膜対象Sの右端に到達するスパッタ粒子の数が最も少ない。また、成膜対象Sに到達するスパッタ粒子の数は、左端から右端に向かって少なくなる。これにより、成膜対象Sに形成された第1薄膜TF1は、左端において最も厚い厚さを有する一方で、右端において最も薄い厚さを有する。
【0047】
第2ターゲット11TBがスパッタされることによって、成膜対象Sには第2薄膜TF2が形成される。上述したように、成膜対象Sでは、右端と第2ターゲット11TBとの間の距離が最も小さい一方で、左端と第2ターゲット11TBとの間の距離が最も大きい。そのため、成膜対象Sの右端に到達するスパッタ粒子の数が最も多い一方で、成膜対象Sの左端に到達するスパッタ粒子の数が最も少ない。また、成膜対象Sに到達するスパッタ粒子の数は、右端から左端に向かって少なくなる。これにより、成膜対象Sに形成された第2薄膜TF2は、右端において最も厚い厚さを有する一方で、左端において最も薄い厚さを有する。
【0048】
図4は、成膜対象Sの表面と対向する視点から見た成膜対象の構造を示している。なお、成膜対象Sにおいて、薄膜TF1,TF2が形成される面が表面である。
図4が示すように、第1薄膜TF1の厚さ、および、第2薄膜TF2の厚さを測定する際には、成膜対象Sの面内における任意の位置において各薄膜TF1,TF2の厚さを測定することが可能である。図4が示す左測定位置PL、中央測定位置PC、および、右測定位置PRは、各薄膜TF1,TF2の厚さを測定する所定位置の一例である。
【0049】
中央測定位置PCでの厚さを測定した場合には、第1薄膜TF1の厚さ、および、第2薄膜TF2の厚さにおけるおよその中央値を把握することが可能である。中央測定位置PCには、回転部24によるステージ23の回転を停止した状態、および、回転部24によってステージ23を回転させた状態の両方において、ほぼ同量のスパッタ粒子が到達する。また、ステージ23を回転させた状態で各薄膜TF1,TF2を形成した場合には、中央測定位置PCに到達するスパッタ粒子とほぼ同量のスパッタ粒子が成膜対象Sの全体に到達する。そのため、中央測定位置PCにおいて各薄膜TF1,TF2の厚さを測定すれば、ステージ23を回転させて各薄膜TF1,TF2を量産する場合の成膜条件を決定するための情報を得ることが可能である。
【0050】
例えば、中央測定位置PCでの測定を行った後に、ターゲット11Tに対して成膜対象Sを回転させながら、各ターゲット11TA,11TBを用いたスパッタ成膜を単一の成膜対象Sに対して同時に行うことができる。そして、当該成膜対象Sを真空下において成膜チャンバー11から測定チャンバー12に搬送して、測定チャンバー12において、当該成膜対象Sに形成された薄膜の厚さを測定することができる。
【0051】
これにより、各スパッタ成膜によって得られる薄膜TF1,TF2の厚さが予め把握された状態で、多元系薄膜を成膜することが可能であって、当該多元系薄膜の厚さを真空下で確認することが可能ともなる。結果として、各薄膜の測定が真空下で行われないことによる外乱を排除して、各スパッタ成膜による混合物として多元系薄膜が得られているか否かを確認することが可能ともなる。
【0052】
なお、所定の成膜条件、すなわち初期条件にて各薄膜TF1,TF2の厚さを測定した後には、当該測定結果に基づいて成膜条件を変更することによって、中央測定位置PCにおいて得られる薄膜TF1,TF2の厚さを変更することが可能である。例えば、各電源26A,26Bから各ターゲット11TA,11TBに供給する電力を初期条件に対して大きくすることによって、各薄膜TF1,TF2の厚さを厚くすることが可能である。また例えば、各電源26A,26Bから各ターゲット11TA,11TBに供給する電力を初期条件に対して小さくすることによって、各薄膜TF1,TF2の厚さを薄くすることが可能である。これにより、例えば、第1ターゲット11TAと第2ターゲット11TBとを同時にスパッタした場合において得られる薄膜において、第1ターゲット11TA由来の元素と、第2ターゲット11TB由来の元素との比を所定の値に調整することが可能である。
【0053】
右測定位置PRでの厚さを測定した場合には、第1薄膜TF1について、厚さの最小値を把握することが可能である。一方で、第2薄膜TF2について、厚さの最大値を把握することが可能である。例えば、当該最小値および最大値が得られた成膜条件を初期条件に設定する場合には、初期条件によって各薄膜TF1,TF2を成膜した場合について、第1ターゲット11TA由来の元素と、第2ターゲット11TB由来の元素との比を、各薄膜TF1,TF2の厚さから得ることが可能である。
【0054】
これに対して、左測定位置PLの厚さを測定した場合には、第1薄膜TF1について、厚さの最大値を把握することが可能である。一方で、第2薄膜TF2について、厚さの最小値を把握することが可能である。例えば、当該最大値および最小値が得られた成膜条件を初期条件に設定する場合には、初期条件によって各薄膜TF1,TF2を成膜した場合について、第1ターゲット11TA由来の元素と、第2ターゲット11TB由来の元素との比を、各薄膜TF1,TF2の厚さから得ることが可能である。
【0055】
そのため、回転部24によるステージ23の回転を停止した状態で、各ターゲット11TA,11TBを初期条件によって同時にスパッタした場合には、右測定位置PRと左測定位置PLとにおいて、各ターゲット11TA,11TBを個別にスパッタすることによって得られた組成比を有した薄膜を形成することが可能である。こうして得られた薄膜の特性を分析することによって、所定の特性を得る上で当該薄膜において好適な組成比を特定することが可能である。
【0056】
このように、各ターゲット11TA,11TBの成膜によって形成された薄膜TF1,TF2の厚さを測定することによって、各薄膜TF1,TF2における測定箇所での厚さから、複数のターゲット11TA,11TBを同時に成膜した場合について、多元系薄膜における元素の組成比を特定することが可能である。そのため、多元系薄膜を成膜した後に組成を分析するための装置を用いて組成比を特定する場合に比べて、多元系薄膜における組成をより容易に特定することが可能である。
【0057】
以上説明したように、成膜管理方法、および、成膜装置の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)各ターゲット11TA,11TBの成膜によって形成された薄膜TF1,TF2の厚さを測定することによって、各薄膜TF1,TF2における測定箇所での厚さから、複数のターゲット11TA,11TBを同時に成膜した場合について、多元系薄膜における元素の組成比を特定することが可能である。そのため、多元系薄膜における組成をより容易に特定することが可能である。
【0058】
(2)エリプソメーターを用いることによって、真空下に配置された成膜対象Sが有する薄膜の厚さを測定することが可能である。
【0059】
(3)真空下において薄膜の厚さを測定するから、大気中において酸化された薄膜を解析する場合に比べて、成膜時における薄膜の状態をより正確に把握することが可能である。
【0060】
(4)各薄膜TF1,TF2の測定が真空下で行われないことによる外乱を排除して、各スパッタ成膜による混合物として多元系薄膜が得られているか否かを確認することが可能ともなる。
【0061】
[第2実施形態]
図5を参照して、成膜管理方法、および、成膜装置の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、上述した第1実施形態に加えて、成膜装置が備えるターゲットを交換した際に、交換後のターゲットに対して評価を行うことが可能であるように構成されている点が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第2実施形態において第1実施形態と共通する点に関する詳しい説明を省略する。以下では、本実施形態の成膜装置、および、成膜管理方法を順に説明する。
【0062】
[成膜装置]
本実施形態の成膜装置は、第1実施形態の成膜装置10と同一の構成を有している。一方で、本実施形態の成膜装置では、制御部10Cが備える記憶部10CMが、管理データを記憶している。管理データは、成膜装置10が備えるターゲット11TAの少なくとも1つが新しいターゲット11TAに交換された際に、交換後のターゲット11TAが正常であるか否かを判定するためのデータである。
【0063】
管理データは、例えば、所定の成膜条件である参照条件と、当該参照条件によって成膜された薄膜TF1,TF2の厚さに関する参照データを含んでいる。参照条件は、例えば、スパッタガスの流量、各ターゲット11TA,11TBに供給される電力の大きさ、真空槽21内の圧力、成膜時間、および、ステージ23の回転数などを含む。参照データは、例えば、各薄膜TF1,TF2のうちで、成膜対象Sにおける所定位置に形成された部分の厚さであってよい。例えば、薄膜TF1,TF2の厚さに関するデータは、上述した中央測定位置PC、右測定位置PR、および、左測定位置PLの少なくとも1箇所において測定した厚さであってよい。
【0064】
本実施形態の制御部10Cは、交換後のターゲット11TA,11TBのスパッタによって形成された薄膜TF1,TF2における厚さの測定結果と参照データが含む薄膜の厚さに関するデータとの比較から、交換後のターゲット11TA,11TBが正常であるか否かを判定することが可能である。
【0065】
[成膜管理方法]
図5は、成膜管理方法の処理の手順を示している。以下では、第1ターゲット11TAが交換の対象である場合における処理の手順を説明する。なお、交換の対象は、第2ターゲット11TBでもよいし、第1ターゲット11TAと第2ターゲット11TBとの両方であってもよい。
【0066】
本実施形態の成膜管理方法は、第1ターゲットを交換すること、薄膜の厚さを測定すること、および、参照データと比較することを含む。第1ターゲット11TAを交換することでは、第1ターゲット11TAを当該第1ターゲット11TAと同一の組成を有した新しい第1ターゲット11TAに交換する。薄膜を形成することでは、交換後の第1ターゲット11TAを用いて成膜対象Sに薄膜TF1を形成する。参照データと比較することは、交換後の第1ターゲット11TAを用いて形成した薄膜TF1の厚さを測定する。参照データと比較することでは、厚さを測定した結果を、参照データと比較する。
【0067】
以下、図面を参照して、成膜管理方法の一例を詳細に説明する。なお、以下に説明する処理は、制御部10Cが記憶部10CMに記憶されているプロセスレシピを読み出すことによって実行される処理である。なお、以下に説明する一連の処理は、例えば、成膜装置10の使用者が、成膜装置10が備える入力部を通じて、第1ターゲット11TAの交換後における処理を実行する指令が制御部10Cに入力されることによって開始される。あるいは、一連の処理は、成膜装置10が第1ターゲット11TAの交換を検知する検知部を備え、当該検知部によって第1ターゲット11TAの交換が検知された場合に開始されてもよい。
【0068】
図5が示すように、成膜管理方法では、まず、シャッター27A,27B、および、電源26A,26Bの設定を行う(ステップS21)。本処理は第1ターゲット11TAが交換された後に行われる処理であるから、第1シャッター27Aが開かれる一方で、第2シャッター27Bが閉じられる。また、第1電源26Aがターゲット11Tに電圧を印加する電源に設定される。
【0069】
次いで、第1ターゲット11TAのスパッタによって、成膜対象Sに第1薄膜TF1が形成される(ステップS22)。そして、第1薄膜TF1が形成された成膜対象Sが、搬送チャンバー13を介して成膜チャンバー11から測定チャンバー12に搬送される(ステップS23)。測定チャンバー12に搬送された成膜対象Sについて、第1薄膜TF1の厚さが測定される(ステップS24)。
【0070】
制御部10Cは、第1薄膜TF1の厚さを測定した結果と参照データとを比較して、測定結果が参照データと一致するか否かを判定する(ステップS25)。測定結果が参照データと一致する場合には(ステップS25:YES)、制御部10Cは交換後の第1ターゲット11TAが正常であると処理する(ステップS26)。一方で、測定結果が参照データと一致しない場合には(ステップS25:NO)、制御部10Cは交換後の第1ターゲット11TAが異常であると処理する(ステップS27)。ステップS26またはステップS27の処理が行われると、一連の処理が一旦終了される。
【0071】
このように、交換後の第1ターゲット11TAを用いて形成した薄膜TF1の厚さを測定した結果を参照データと比較することによって、交換後の第1ターゲット11TAによって形成した薄膜TF1が参照データに対して相違するか否かを確認することが可能である。ひいては、交換後の第1ターゲット11TAが交換前の第1ターゲット11TAに対して相違するか否かを確認することが可能である。
【0072】
以上説明したように、成膜管理方法、および、成膜装置の第2実施形態によれば、上述した(1)から(3)効果に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)交換後の第1ターゲット11TAによって形成した薄膜TF1が参照データに対して相違するか否かを確認することが可能である。
【0073】
[変更例]
なお、上述した各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[制御部]
・制御部10Cは、測定結果を参照データと比較する処理(ステップS25)を行う一方で、交換後のターゲット11Tが正常であるか、あるいは、異常であるかのいずれかの処理を行わなくてもよい(ステップS26、ステップS27)。この場合には、例えば、制御部10Cの比較結果を成膜装置10が備える表示部に表示することによって、成膜装置10の使用者に比較結果を把握させることはできる。
【0074】
・制御部10Cは、測定結果を参照データと比較する処理(ステップS25)を行った後で、異常値を正常値に補正するフィードバック処理を実行することもできる。この場合には、例えば、制御部10Cによって成膜時間を変更して、異常値を正常値に補正することもできる。また、成膜装置10は、ターゲットと成膜対象Sとの間の距離を複数の値の間で変更することが可能な図示外の変更機構を備えてもよい。すなわち、成膜装置10は、ターゲットと、ステージ23における成膜対象Sの載置面との間の距離を複数の値の間で変更することが可能な図示外の変更機構を備えてもよい。この場合には、制御部10Cによってターゲットと成膜対象Sとの間の距離を調整する変更機構を制御して、面内における膜厚の分布傾向を変更し、異常値を正常値に補正することもできる。
【0075】
[ターゲット]
・ターゲット11Tを形成する材料は、成膜対象Sが大気に暴露された際に酸化される薄膜を形成可能な材料でなくてもよい。この場合であっても、成膜対象Sが成膜チャンバー11から測定チャンバー12に向けて真空下を搬送され、かつ、測定チャンバー12において薄膜の厚さが測定されることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0076】
[測定部]
・測定部12Aは、エリプソメーター以外の測定器によって具体化されてもよい。測定部12Aは、例えば、XPS、XRR、レーザ変位計、渦電流式膜厚計などであってもよい。この場合であっても、上述した(2)に準じた効果を得ることはできる。
【符号の説明】
【0077】
10…成膜装置
10C…制御部
11…成膜チャンバー
11TA…第1ターゲット
11TB…第2ターゲット
12…測定チャンバー
13…搬送チャンバー
13A…搬送部
S…成膜対象
TF1…第1薄膜
TF2…第2薄膜
図1
図2
図3
図4
図5