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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20240813BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20240813BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20240813BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/122
H01S5/0239
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020571210
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004095
(87)【国際公開番号】W WO2020162446
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019021916
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】有賀 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一樹
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134689(JP,A)
【文献】特開2008-193003(JP,A)
【文献】特開2017-130508(JP,A)
【文献】特開2002-352465(JP,A)
【文献】特開昭59-159110(JP,A)
【文献】特開2005-037444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0110335(US,A1)
【文献】特開2011-099928(JP,A)
【文献】特開2014-165384(JP,A)
【文献】特開2017-102179(JP,A)
【文献】特開昭61-173206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42
G02B 6/12-6/14
H01S 5/022,5/0239
G02F 1/01
G02B 7/00
G02B 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板と離隔して対向する搭載面と、光干渉機能を有する干渉導波路部とを有する導波路素子と、
を備え、
前記搭載面は、平面状であるとともに、前記干渉導波路部を前記搭載面に投影した投影領域と非投影領域とからなり
前記基板は、前記投影領域に対向する平面状の第一領域と、前記非投影領域に対向する平面状の第二領域と、前記第一領域と前記第二領域との間のみに位置する位置制御部と、を有し、
前記第一領域と、前記第二領域とは、前記第一領域の法線方向と交差する一つの仮想平面上に位置し、
前記位置制御部は、前記第一領域および前記第二領域より前記第一領域の法線方向に突出し、
前記導波路素子は、前記非投影領域と前記第二領域との間に介在した接合材により前記基板と接合され、
前記位置制御部は、前記接合材が前記非投影領域と前記第二領域との間から前記投影領域と前記第一領域との間へ流れるのを制限し、
前記接合材の膨張または収縮により前記基板からの応力が前記非投影領域にかかる状態である、光モジュール。
【請求項2】
前記導波路素子は、前記投影領域から前記干渉導波路部を構成する導波路幅の2倍以上の距離だけ離間した前記非投影領域内の領域において、前記基板に接合材にて接合していることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記導波路素子は、半導体またはガラスからなる平面光波回路素子であることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記干渉導波路部は、リング共振器またはマッハツェンダ干渉計であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項5】
基板と、
前記基板と離隔して対向する搭載面を有し、入力された光に所定の作用を与えて出力する光学素子と、
を備え、
前記搭載面は、平面状であるとともに、前記光学素子における前記光の光路を前記搭載面に投影した投影領域と非投影領域とからなり
前記基板は、前記投影領域に対向する平面状の第一領域と、前記非投影領域に対向する平面状の第二領域と、前記第一領域と前記第二領域との間のみに位置する位置制御部と、を有し、
前記第一領域と、前記第二領域とは、前記第一領域の法線方向と交差する一つの仮想平面上に位置し、
前記位置制御部は、前記第一領域および前記第二領域より前記第一領域の法線方向に突出し、
前記光学素子は、前記非投影領域と前記第二領域との間に介在した接合材により前記基板と接合され、
前記位置制御部は、前記接合材が前記非投影領域と前記第二領域との間から前記投影領域と前記第一領域との間に流れるのを制限し、
前記接合材の膨張または収縮により前記基板からの応力が前記非投影領域にかかる状態である、光モジュール。
【請求項6】
前記光学素子は、エタロンフィルタまたは偏波ビームコンバイナ/スプリッタであることを特徴とする請求項5に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信等に使用される光モジュールは、入力された光に所定の作用を与えて出力する光学素子を備えている。光学素子としては、たとえば、干渉導波路部を有する導波路素子が用いられる。干渉導波路部は、導波路で構成されており、入力された光を干渉させる光干渉機能を有する部分である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-165384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導波路素子や光学素子は、基板と対向する搭載面において、接合材にて基板に接合されて搭載される。この場合、導波路素子や光学素子の搭載面の全面が接合材にて基板に接合されると、基板からの応力によって導波路素子や光学素子が歪み、導波路素子や光学素子の光学特性が変化する場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板からの応力による導波路素子や光学素子の光学特性の変化が抑制された光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光モジュールは、基板と、前記基板と対向する搭載面と、光干渉機能を有する干渉導波路部とを有する導波路素子と、を備え、前記搭載面は、前記干渉導波路部を前記搭載面に投影した投影領域と非投影領域とからなり、前記導波路素子は前記非投影領域おいて前記基板に接合材にて接合していることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記導波路素子は、前記投影領域から前記干渉導波路部を構成する導波路幅の2倍以上の距離だけ離間した前記非投影領域内の領域において、前記基板に接合材にて接合していることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記導波路素子は、半導体またはガラスからなる平面光波回路素子であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記干渉導波路部は、リング共振器またはマッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記基板または前記導波路素子は、前記接合材を前記非投影領域に位置させる位置制御部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光モジュールは、基板と、前記基板と対向する搭載面を有し、入力された光に所定の作用を与えて出力する光学素子と、を備え、前記搭載面は、前記光学素子における前記光の光路を前記搭載面に投影した投影領域と非投影領域とからなり、前記光学素子は前記非投影領域において前記基板に接合材にて接合していることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記光学素子は、エタロンフィルタまたは偏波ビームコンバイナ/スプリッタであることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記基板または前記光学素子は、前記接合材を前記非投影領域に位置させる位置制御部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る光モジュールは、基板と、前記基板と対向する搭載面を有し、入力された光に所定の作用を与えて出力する光学素子と、を備え、前記光学素子は、前記搭載面において、互いに離間した複数の接合材にて前記基板に接合していることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記基板または前記光学素子は、前記複数の接合材を互いに離間して位置させる位置制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板からの応力による導波路素子や光学素子の光学特性の変化が抑制されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
図2図2は、導波路素子の搭載状態を説明する模式図である。
図3図3は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図4図4は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図5図5は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図6図6は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図7図7は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図8図8は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図9図9は、光学素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図10図10は、光学素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図11図11は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図12図12は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図13図13は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図14図14は、導波路素子の搭載状態の一例を説明する模式図である。
図15A図15Aは、パターンの例を説明する模式図である。
図15B図15Bは、パターンの例を説明する模式図である。
図15C図15Cは、パターンの例を説明する模式図である。
図15D図15Dは、パターンの例を説明する模式図である。
図15E図15Eは、パターンの例を説明する模式図である。
図15F図15Fは、パターンの例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複説明を適宜省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。この光モジュール100は、筐体1を備えている。筐体1は、底板部1aと、側壁部1bと、上蓋部1cと、光出力部1dとを備えている。底板部1aは板状の部材である。側壁部1bは、4面を有する枠板状の部材であり、各面は底板部1aと略直交している。上蓋部1cは、底板部1aと対向して配置された板状の部材である。光出力部1dは円管状の部材であり、側壁部1bの1面に設けられている。側壁部1bには透光性の窓が設けられており、筐体1内部から窓および光出力部1dを通って光が通過可能となっている。
【0020】
底板部1aは、銅タングステン(CuW)、銅モリブデン(CuMo)、アルミナ(Al)などの熱伝導率が高い材料からなる。側壁部1b、上蓋部1c、光出力部1dは、Fe-Ni-Co合金、アルミナなどの熱膨張係数が低い材料からなる。
【0021】
光モジュール100の内部には、以下のコンポーネントが収容されている:熱電冷却素子(TEC)2、キャリア3、半導体レーザ素子4、レンズ5、光アイソレータ6、レンズホルダ7、レンズ8、導波路素子10、受光素子ホルダ11、受光素子ユニット12である。
【0022】
光モジュール100では、筐体1の内部にこれらのコンポーネントが実装され、上蓋部1cを取り付けて気密封止されて構成されている。
【0023】
光モジュール100は、半導体レーザモジュールとして構成されている。以下、各コンポーネントの構成および機能について説明する。
【0024】
熱電冷却素子2は、底板部1aに固定されている。熱電冷却素子2は、外部から不図示のリードを介して電力を供給されて、電流を流す方向に応じて吸熱または発熱を行う。本実施形態では、熱電冷却素子2は公知のペルチェモジュールであって、2枚の絶縁性の基板の間に半導体素子が配置された構成を有する。2枚の基板のうち、上蓋部1c側の基板を基板2aとする。なお、2枚の基板は、たとえばセラミックである窒化アルミニウム、アルミナ、窒化シリコン(Si)のいずれか一つを含む。2枚の基板は、窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、または窒化シリコン基板でもよい。
【0025】
キャリア3、半導体レーザ素子4、レンズ5、光アイソレータ6、レンズホルダ7、レンズ8、導波路素子10、受光素子ホルダ11、受光素子ユニット12は、熱電冷却素子2における基板2aに搭載されている。これらのコンポーネントは、熱電冷却素子2に電流を流すことによって所望の温度に制御される。
【0026】
半導体レーザ素子4は、キャリア3に搭載されており、たとえば波長可変レーザ素子である。キャリア3は、サブマウントとも呼ばれ、熱伝導性が高い絶縁性の材料からなり、半導体レーザ素子4が発する熱を熱電冷却素子2に効率良く輸送する。
【0027】
半導体レーザ素子4は、外部から不図示のリードを介して電力を供給されて、レーザ光L1をレンズ5側に出力する。レーザ光L1の波長は、たとえば光通信の波長として好適な900nm以上1650nm以下である。
【0028】
レンズ5は、キャリア3に搭載されている。レンズ5は、レーザ光L1が入力され、レーザ光L1をコリメートして出力する。
【0029】
光アイソレータ6は、コリメートされたレーザ光L1が入力されて、レーザ光L1を通過させて光出力部1d側へ出力する。光アイソレータ6は、光出力部1d側から進行してきた光の通過を阻止する。これにより、光アイソレータ6は、外部から反射光などが半導体レーザ素子4に入力することを阻止する。
【0030】
半導体レーザ素子4は、レンズ5と対向してレーザ光L1を出力する端面(出力端面)とは反対側の端面(後端面)からも、比較的パワーが弱いレーザ光L2を出力する。レンズ8は、レンズホルダ7に搭載されており、レーザ光L2を集光し、導波路素子10に出力する。
【0031】
導波路素子10は、たとえば石英系ガラスや、シリコン等の半導体からなる平面光波回路素子である。導波路素子10は、光干渉機能を有する干渉導波路部として、1つのリング共振器10aを有している。ただし、導波路素子は複数のリング共振器を有していても良い。リング共振器10aは、リング導波路と、リング導波路に光の入出力する2つの光カプラ導波路とで構成される部分である。光カプラ導波路としては、例えば多モード干渉導波路型や方向性結合器を用いることができる。また、導波路素子10は、一方の主表面である搭載面10bが基板2aと対向しており、搭載面10b側において基板2aに搭載され、接合材9にて基板2aに接合している。リング共振器10aは搭載面10bの反対側の面近傍に形成されている。接合材9は、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム接着剤、シリコーン樹脂接着剤または半田である。
【0032】
リング共振器10aは、波長に対して透過特性が周期的に変化する。導波路素子10は、入力されたレーザ光L2を2分割し、その1つを出力し、他の1つを、リング共振器10aを透過させて出力する。
【0033】
受光素子ユニット12は、受光素子ホルダ11に搭載されており、2つの受光素子を備えている。2つの受光素子は、それぞれ、導波路素子10から出力された2つのレーザ光のそれぞれを受光する。2つの受光素子のそれぞれから出力された電流信号は、外部の制御器に出力され、公知技術と同様にレーザ光L1の波長制御に使用される。
【0034】
図2に示すように、搭載面10bは、リング共振器10aを搭載面10bに投影した領域である投影領域10baと、投影領域10ba以外の領域である非投影領域10bbとからなる。投影領域10baはリング共振器10aを構成する導波路を投影したものであるから、たとえばリング導波路の投影領域で囲まれる領域は投影領域10baではなく、非投影領域10bbである。そして、導波路素子10は、非投影領域10bbおいて基板2aに接合材9にて接合している。
【0035】
光モジュール100が環境温度の変化を受けたり、熱電冷却素子2が温度調節を行ったりすると、接合材9が膨張や収縮するために、導波路素子10に応力が掛かる。しかし、導波路素子10が、非投影領域10bbおいて基板2aに接合材9にて接合しているので、応力が、応力によって光学特性が変化しやすいリング共振器10aに作用しにくくなる。その結果、基板からの応力による導波路素子10の光学特性の変化が抑制される。
【0036】
さらに、導波路素子10は、非投影領域10bbのなかでも、投影領域10baからある程度の距離(図2における距離D)だけ離間している領域にて、接合材9にて接合していることが好ましい。これにより、接合材9の膨張や収縮による応力が、より一層、リング共振器10aに作用しにくくなる。離間距離としては、リング共振器10aを構成する導波路の導波路幅の2倍以上が好ましい。導波路幅とは、リング共振器10aに平行かつ導波路の延伸方向に直交する方向における幅である。一般に、導波路において導波光がしみ出す幅は、導波路幅の2倍より小さいので、離間距離が導波路幅の2倍以上であれば、応力のリング共振器10aへの作用をより確実に抑制できる。
【0037】
以上説明したように、光モジュール100では、基板からの応力による導波路素子10の光学特性の変化が抑制される。また、光モジュール100のように、導波路素子10の一方の端面側の非投影領域10bbを基板に固定すると、当該基板からの応力による導波路素子10の光学特性の変化をより一層抑制できるという利点が得られる。
【0038】
以下、実施形態1の変形例について説明する。図3は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板21に搭載されている。基板21は、接合材9を非投影領域に位置させる位置制御部としてのメタライズパターン21aを備えている。メタライズパターン21aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。接合材9は、硬化の途中の状態においてメタライズパターン21aによって投影領域10baへの流出が防止されるので、非投影領域10bbに位置させることができる。
【0039】
図4は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板22に搭載されている。基板22は、接合材9を非投影領域に位置させる位置制御部としての突起22aを備えている。突起22aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。接合材9は、硬化の途中の状態において突起22aによって投影領域10baへの流出が防止されるので、非投影領域10bbに位置させることができる。
【0040】
図5は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板23に搭載されている。基板23は、接合材9を非投影領域に位置させる位置制御部としての粗面領域23aを備えている。粗面領域23aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。接合材9は、硬化の途中の状態において粗面領域23aに滞留するため、投影領域10baへの流出が防止されるので、非投影領域10bbに位置させることができる。
【0041】
図6は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板24に搭載されている。基板24は、接合材9を非投影領域に位置させる位置制御部としての座繰り部24aを備えている。座繰り部24aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。接合材9は、硬化の途中の状態において流れる場合は、座繰り部24aに流れやすい。これにより、接合材9は、投影領域10baへの流出が防止されるので、非投影領域10bbに位置させることができる。
【0042】
図7は、光モジュールにおける導波路素子10Aの搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10Aは、リング共振器10Aaを備えている。導波路素子10Aは、搭載面10Abがリング共振器10Aaと非平行である。導波路素子10Aは、基板25に搭載されている。この導波路素子10Aについても、搭載面10Abは、リング共振器10aを搭載面10bに投影した領域である投影領域10Abaと、投影領域10Aba以外の領域である非投影領域10Abbとからなる。そして、導波路素子10Aは、非投影領域10Abbおいて基板25に接合材9にて接合している。これにより、基板からの応力による導波路素子10Aの光学特性の変化が抑制される。
【0043】
図8は、光モジュールにおける導波路素子10Bの搭載状態の一例を説明する模式図である。導波路素子10Bは、たとえば石英系ガラスやシリコン等の半導体からなるマッハツェンダ干渉計素子である。ただし、導波路素子10Bは、光干渉機能を有する干渉導波路部として、一段のマッハツェンダ干渉計10Baを有している。ただし、導波路素子は複数のマッハツェンダ干渉計を有していても良い。マッハツェンダ干渉計10Baは、2つの光カプラ導波路と、2つの光カプラ導波路に接続されたアーム導波路とで構成される部分である。導波路素子10Bは、一方の主表面である搭載面10Bbが基板2aと対向しており、搭載面10Bb側において基板2aに搭載され、接合材9にて基板2aに接合している。マッハツェンダ干渉計10Baは搭載面10Bbの反対側の面近傍に形成されている。
【0044】
搭載面10Bbは、マッハツェンダ干渉計10Baを搭載面10Bbに投影した領域である投影領域10Bbaと、投影領域10Bba以外の領域である非投影領域10Bbbとからなる。そして、導波路素子10Bは、非投影領域10Bbbおいて基板2aに接合材9にて接合している。これにより、基板からの応力による導波路素子10の光学特性の変化が抑制される。
【0045】
さらに、導波路素子10Bは、非投影領域10Bbbのなかでも、投影領域10Bbaからある程度の距離だけ離間している領域にて、接合材9にて接合していることが好ましい。離間距離としては、マッハツェンダ干渉計10Baを構成する導波路の導波路幅の2倍以上が好ましい。
【0046】
(実施形態2)
実施形態2に係る光モジュールは、導波路素子以外の光学素子について、基板からの応力による光学特性の変化を抑制することができるものである。
【0047】
図9は、光モジュールにおける光学素子の搭載状態の一例を説明する模式図であり、図9(a)が上面図であり、図9(b)が側面図である。
【0048】
光学素子10Cは、エタロンフィルタである。光学素子10Cは、波長に対して透過特性が周期的に変化するものであり、入力されたレーザ光L1を、その波長に応じた透過率で透過して出力する。光学素子10Cは、一方の主表面である搭載面10Cbが基板2aと対向しており、搭載面10Cb側において基板2aに搭載され、接合材9にて基板2aに接合している。
【0049】
搭載面10Cbは、レーザ光L1の光路を搭載面10Cbに投影した領域である投影領域10Cbaと、投影領域10Cba以外の領域である非投影領域10Cbbとからなる。投影領域10Cbaは、レーザ光L1のビーム径と等しい幅を有する。ビーム径は、レーザ光L1のビームプロファイルの1/e全幅とすることができる。そして、光学素子10Cは、非投影領域10Cbbおいて基板2aに接合材9にて接合している。
【0050】
光学素子10Cは、非投影領域10Cbbにおいて基板2aに接合材9にて接合しているので、基板からの応力による光学特性の変化(たとえば透過特性の変化)が抑制される。さらに、光学素子10Cは、非投影領域10Cbbのなかでも、投影領域10Cbaからある程度の距離だけ離間している領域にて、接合材9にて接合していることが好ましい。これにより、接合材9の膨張や収縮による応力が、より一層、光学素子10Cに作用しにくくなる。離間距離としては、レーザ光L1のビーム径の2倍以上が好ましい。
【0051】
図10は、光モジュールにおける光学素子10Dの搭載状態の一例を説明する模式図である。光学素子10Dは、偏波ビームコンバイナ/スプリッタである。光学素子10Dは、互いに直交する直線偏波の光が入力されると、これを偏波合成して出力したり、入力した光を、互いに直交する直線偏波の光に偏波分離して出力したりするものである。図10では、入力されたレーザ光L2、L3を偏波合成してレーザ光L4として出力する例を示している。光学素子10Dは、一方の主表面である搭載面10Dbが基板2aと対向しており、搭載面10Db側において基板2aに搭載され、接合材9にて基板2aに接合している。
【0052】
搭載面10Dbは、レーザ光L2、L3、L4の光路を搭載面10Dbに投影した領域である投影領域と、投影領域以外の領域である非投影領域とからなる。投影領域は、レーザ光L2、L3、L4のビーム径と等しい幅を有する。そして、光学素子10Dは、非投影領域において基板2aに接合材9にて接合している。
【0053】
光学素子10Dは、非投影領域において基板2aに接合材9にて接合しているので、基板からの応力による光学特性の変化(たとえば偏波合波時の損失の劣化や偏波分離時の偏波消光比の劣化)が抑制される。
【0054】
(実施形態3)
実施形態3に係る光モジュールは、光学素子の基板からの応力による光学特性の変化を抑制することができるものである。
【0055】
図11は、光モジュールにおける、光学素子である導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。導波路素子10は、リング共振器10aと、基板26に対向する搭載面10bとを有している。導波路素子10は、搭載面10bにおいて、互いに離間した複数の接合材9にて基板26に接合している。基板26は基板2aを置き換えたものである。これにより、各接合材9が個別に導波路素子10に及ぼす応力が小さくなるので、基板からの応力による導波路素子10の光学特性の変化が抑制される。各接合材9のサイズは、基板からの応力による導波路素子10の光学特性の変化が許容程度以下になるように設定すればよい。
【0056】
ここで、基板26は、各接合材9を互いに離間して位置させる位置制御部としてのメタライズパターン26aを備えている。メタライズパターン26aは、紙面と垂直方向において、接合材9のよりも長く延伸している。メタライズパターン21aによって、接合材9は、硬化の途中の状態においても互いに離間した状態を維持できる。
【0057】
図12は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板27に搭載されている。基板27は、接合材9を互いに離間して位置させる位置制御部としての突起27aを備えている。突起27aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。突起27aによって、接合材9は、硬化の途中の状態においても互いに離間した状態を維持できる。
【0058】
図13は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板28に搭載されている。基板28は、接合材9を互いに離間して位置させる位置制御部としての座繰り部28aを備えている。座繰り部28aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。座繰り部28aによって、接合材9は、硬化の途中の状態において流出しても、座繰り部28aによって隣接する接合材9に到達せず、互いに離間した状態が維持される。
【0059】
図14は、光モジュールにおける導波路素子10の搭載状態の一例を説明する模式図である。この導波路素子10は、基板2aを置き換えたものである基板29に搭載されている。基板29は、接合材9を互いに離間して位置させる位置制御部としての粗面領域29aを備えている。粗面領域29aは、紙面と垂直方向において、接合材9よりも長く延伸している。各接合材9は、硬化の途中の状態において粗面領域29aに滞留するため、互いに離間した状態が維持される。
【0060】
位置制御部であるメタライズパターン26a、突起27a、座繰り部28a、粗面領域29aは、たとえば図15A図15Fに示すように、短冊状、格子状、同心円状、チェッカー状、波状、ハニカム形状に形成される。さらには、これらの位置制御部は同心方形状、同心多角形状、ドット状、曲線状、多角形状、またはこれらの任意の組み合わせの形状に形成されてもよい。また、これらの形状は、実施形態1の変形例におけるメタライズパターン21a、突起22a、粗面領域23a、座繰り部24aにも適用してもよい。
【0061】
なお、実施形態3における光学素子は導波路素子10であるが、光学素子はエタロンフィルタや偏波ビームコンバイナ/スプリッタなどでもよい。
【0062】
また、実施形態1、2では、1つの接合材で接合がなされているが、非投影領域であれば、接合材は複数でもよい。また、接合材は、リング導波路の投影領域で囲まれた非投影領域やアーム導波路の投影領域で挟まれた非投影領域に位置してもよい。
【0063】
また、実施形態1、3では、位置制御部が基板に設けられているが、導波路素子または光学素子に設けられていてもよいし、基板と素子の両方に設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、光モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 筐体
1a 底板部
1b 側壁部
1c 上蓋部
1d 光出力部
2 熱電冷却素子
2a、21、22、24、25、26、27、28、29 基板
3 キャリア
4 半導体レーザ素子
5、8 レンズ
6 光アイソレータ
7 レンズホルダ
9 接合材
10、10A、10B 導波路素子
10a、10Aa リング共振器
10b、10Ab、10Bb、10Cb、10Db 搭載面
10ba、10Aba、10Bba、10Cba 投影領域
10bb、10Abb、10Bbb、10Cbb 非投影領域
10Ba マッハツェンダ干渉計
10C、10D 光学素子
11 受光素子ホルダ
12 受光素子ユニット
21a、26a メタライズパターン
22a、27a 突起
23a、29a 粗面領域
24a、28a 座繰り部
100 光モジュール
L1、L2、L3、L4 レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F