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特許7536675グロメット、及びグロメットの取付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】グロメット、及びグロメットの取付け方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20240813BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20240813BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240813BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021018915
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121923
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森野 智
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-172386(JP,A)
【文献】特開2005-19088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
F16L 5/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パネルの第1貫通孔と第2パネルの第2貫通孔とに跨って配索されるワイヤーハーネスを内部に挿通するグロメット本体と、
該グロメット本体の端部に設けられるとともに、前記第2貫通孔に取り付けられる取付部とで構成されたグロメットであって、
前記取付部は、
前記第2パネル側から引き抜いて前記第1貫通孔を通過可能な構成であり、
前記グロメット本体の端部が連結されるとともに、前記第1貫通孔よりも大きい略環状のフランジ部と、
前記グロメット本体とは逆側へ向けて前記フランジ部から離間する離間方向側を覆うように、前記フランジ部から前記離間方向へ向けて先細に延設されるとともに、前記フランジ部とで前記第2貫通孔の周縁を挟持するカバー部と、
該カバー部の先細側の端部から延びる筒部とで構成され、
前記カバー部は、
前記フランジ部から先細に延設された略錐体状のカバー本体と、
前記離間方向への荷重を受付け可能に前記カバー本体の外面に突設された突起部とで構成された
グロメット。
【請求項2】
前記突起部は、
前記カバー本体における前記離間方向の略中央よりも前記筒部側に形成された
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記突起部は、
前記離間方向に沿った断面における前記カバー本体の断面形状が略平板状の部分に形成された
請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記フランジ部は、
前記グロメット本体側の外周縁にテーパー面が設けられた
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のグロメット。
【請求項5】
前記取付部は、
前記突起部に隣接するとともに、前記筒部の先端から前記突起部の近傍にかけて切り欠かれたスリットが設けられた
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のグロメット。
【請求項6】
前記カバー本体の内面は、
前記離間方向に沿った断面において、少なくとも前記突起部から前記筒部に至る部分が略平面に形成された
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のグロメット。
【請求項7】
前記突起部は、
前記カバー本体の外面からの突出高さが1mm以上である
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のグロメット。
【請求項8】
第1パネルの第1貫通孔と第2パネルの第2貫通孔とに跨って配索されるワイヤーハーネスを内部に挿通するグロメット本体と、該グロメット本体の端部に設けられるとともに、前記第2貫通孔に取り付けられる取付部とで構成されたグロメットの取付け方法であって、
前記グロメット本体の端部が連結された略環状のフランジ部と、前記グロメット本体とは逆側へ向けて前記フランジ部から離間する離間方向側を覆うように、前記フランジ部から前記離間方向へ向けて先細に延設されたカバー部と、該カバー部の先細側の端部から延びる筒部とで構成された前記取付部の前記カバー部及び前記筒部を、前記第2パネル側に向けて前記第1パネルの前記第1貫通孔に挿通する挿通工程と、
前記第1貫通孔よりも大きい前記取付部の前記フランジ部を、前記第2パネル側から引き抜く引抜工程と、
前記第1貫通孔を通過した前記取付部の前記フランジ部と前記カバー部との間で前記第2貫通孔の周縁を挟持して、前記第2パネルに取り付ける取付工程とを行い、
前記引抜工程は、
前記フランジ部から先細の略錐体状に延設されたカバー本体、及び該カバー本体の外面に突設された突起部で構成された前記カバー部の前記突起部が、前記離間方向への荷重を受けて、前記フランジ部の一部を前記離間方向側に変形させることで、前記フランジ部を前記第1貫通孔から引き抜き可能にする工程である
グロメットの取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車などの車両において、車体の貫通孔とバックドアの貫通孔とに跨って配索されるワイヤーハーネスを保護するグロメット、及びグロメットの取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車などの車両において、ドアなどの第1パネルに設けた第1貫通孔と、車体などの第2パネルに設けた第2貫通孔とに跨ってワイヤーハーネスを配索する場合、ワイヤーハーネスを内部中空のグロメットに挿通して配索している。
【0003】
このようなグロメットとしては、例えば特許文献1のように、車体の貫通孔に取付けられる車体側取付部(大径筒部)と、バックドアの貫通孔に取付けられるドア側取付部(大径筒部)と、車体側取付部及びドア側取付部を連結するグロメット本体(小径筒部)とで構成されたグロメットが知られている。
【0004】
ところで、この特許文献1では、グロメットの車体側取付部をバックドアの貫通孔を通して車体側へ引き抜いたのち、車体の貫通孔に取付けている。この場合、バックドアの貫通孔を車体の貫通孔よりも大きくして、グロメットの車体側取付部が、バックドアの貫通孔を通過可能にすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、バックドアの貫通孔を車体の貫通孔よりも大きくした場合、バックドアの窓枠部分が太くなることで車両の見栄えが悪くなる、あるいはバックドアの剛性が低下するという問題がある。このため、バックドアの貫通孔は、車体の貫通孔に略同じ大きさの開口であることが望ましいが、車体側取付部をバックドアの貫通孔を通して車体側へ引き抜くことが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5147477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、第1貫通孔が第2貫通孔に略同じ大きさであっても、第1貫通孔を通過させて第2貫通孔に取付部を取付けられるグロメット、及びグロメットの取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、第1パネルの第1貫通孔と第2パネルの第2貫通孔とに跨って配索されるワイヤーハーネスを内部に挿通するグロメット本体と、該グロメット本体の端部に設けられるとともに、前記第2貫通孔に取り付けられる取付部とで構成されたグロメットであって、前記取付部は、前記第2パネル側から引き抜いて前記第1貫通孔を通過可能な構成であり、前記グロメット本体の端部が連結されるとともに、前記第1貫通孔よりも大きい略環状のフランジ部と、前記グロメット本体とは逆側へ向けて前記フランジ部から離間する離間方向側を覆うように、前記フランジ部から前記離間方向へ向けて先細に延設されるとともに、前記フランジ部とで前記第2貫通孔の周縁を挟持するカバー部と、該カバー部の先細側の端部から延びる筒部とで構成され、前記カバー部は、前記フランジ部から先細に延設された略錐体状のカバー本体と、前記離間方向への荷重を受付け可能に前記カバー本体の外面に突設された突起部とで構成されたことを特徴とする。
【0009】
上記第1パネルの第1貫通孔と第2パネルの第2貫通孔とは、例えば、自動車などの車両において、近接する薄板状の部材に設けた貫通孔であって、ドアパネルの貫通孔と車体の貫通孔などのことをいう。
この発明によれば、グロメットは、第1貫通孔が第2貫通孔に略同じ大きさであっても、第1貫通孔を通過させて第2貫通孔に取付部を取付けることができる。
【0010】
具体的には、グロメットの筒部は、第1貫通孔に挿通させたグロメットの取付部を引き抜くために、作業者が保持する持ち手として機能することができる。このため、作業者は、第1貫通孔に挿通したグロメットの取付部を、第2パネル側から容易に引っ張ることができる。
【0011】
この際、離間方向への荷重を突起部に加えながら、グロメットの筒部を引っ張ることで、作業者は、取付部を第1貫通孔から引き抜くことができる。
より詳しくは、カバー本体が離間方向へ延びる略錐体状に形成されているため、離間方向への荷重が突起部に加わった際、グロメットのカバー本体は、突起部よりもフランジ部側の部分が離間方向へ向けて回動するように、突起部を起点に屈曲変形を開始する。このため、カバー本体は、フランジ部の一部に離間方向の引張荷重を作用させることができる。
【0012】
これにより、フランジ部の一部は、グロメット本体の連結箇所を支点にして離間方向側へ回動するように、離間方向側に変形することができる。このため、グロメットは、フランジ部の外形を第1貫通孔から引き抜き可能な大きさに変形させることができる。
したがって、グロメットは、第1貫通孔が第2貫通孔に略同じ大きさであっても、第1貫通孔を通過させて第2貫通孔に取付部を取付けることができる。
【0013】
この発明の態様として、前記突起部は、前記カバー本体における前記離間方向の略中央よりも前記筒部側に形成されてもよい。
この構成によれば、グロメットは、フランジ部の一部に作用する離間方向の引張荷重を、離間方向の略中央よりもフランジ部側に突起部を設けた場合に比べて大きくすることができる。このため、グロメットは、フランジ部の一部を確実に変形させることができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記突起部は、前記離間方向に沿った断面における前記カバー本体の断面形状が略平板状の部分に形成されてもよい。
この構成によれば、グロメットは、例えばカバー本体の湾曲した断面形状の部分に突起部を設けた場合に比べて、カバー本体を効率よく屈曲変形させることができる。このため、グロメットは、フランジ部の一部をより確実に変形させることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記フランジ部は、前記グロメット本体側の外周縁にテーパー面が設けられてもよい。
この構成によれば、フランジ部が第1貫通孔を通過する際、グロメットは、フランジ部の外周縁と第1貫通孔の周縁との接触を抑えることができる。このため、グロメットは、第1貫通孔からのフランジ部の引き抜きを、テーパー面を設けていない場合に比べて容易にすることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記取付部は、前記突起部に隣接するとともに、前記筒部の先端から前記突起部の近傍にかけて切り欠かれたスリットが設けられてもよい。
上記スリットは、少なくとも1つあればよく、好ましくは突起部を挟んで2つあればよい。
【0017】
この構成によれば、グロメットの筒部は、カバー本体の離間方向への変形に追従して、離間方向に変形することができる。このため、グロメットの筒部は、カバー本体の変形をより促進して、フランジ部の一部により大きな引張荷重を作用させることができる。これにより、グロメットは、フランジ部の一部をさらに確実に変形させることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記カバー本体の内面は、前記離間方向に沿った断面において、少なくとも前記突起部から前記筒部に至る部分が略平面に形成されてもよい。
この構成によれば、グロメットは、第1貫通孔から取付部を引き抜く際、ワイヤーハーネスにも離間方向の引張荷重を加えることができるため、取付部及びワイヤーハーネスを略同時に第1貫通孔から引き抜くことができる。
【0019】
具体的には、取付部の内部に位置するワイヤーハーネスへ向けた荷重が突起部に加わった際、グロメットのカバー本体は、突起部から筒部に至る部分がワイヤーハーネスへ向けて変形してワイヤーハーネスと接触する。
【0020】
この際、カバー本体の内面が略平面状に形成されているため、グロメットは、カバー本体の内面が凹凸形状の場合に比べて、カバー本体の内面とワイヤーハーネスとの接触面積を大きく確保することができる。
【0021】
このため、第1貫通孔から取付部を引き抜く際、グロメットは、取付部及びワイヤーハーネスの相対移動を抑えて、ワイヤーハーネスにも離間方向の引張荷重を加えることができる。
これにより、グロメットは、第1貫通孔から取付部を引き抜く際、取付部及びワイヤーハーネスを略同時に第1貫通孔から引き抜くことができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記突起部は、前記カバー本体の外面からの突出高さが1mm以上であってもよい。
この構成によれば、グロメットは、突起部の位置を作業者に確実に認識させることができるとともに、離間方向への荷重を確実に受けることができる。
【0023】
さらに、突起部は、突出高さが1mm未満の場合に比べて、作業者の指が係止され易い。このため、作業者が突起部に離間方向への荷重を加える際、突起部は、作業者の指が滑ることを防止できる。
これにより、グロメットは、第1貫通孔から取付部の引き抜く作業における作業性、及び安全性を両立して向上することができる。
【0024】
またこの発明は、第1パネルの第1貫通孔と第2パネルの第2貫通孔とに跨って配索されるワイヤーハーネスを内部に挿通するグロメット本体と、該グロメット本体の端部に設けられるとともに、前記第2貫通孔に取り付けられる取付部とで構成されたグロメットの取付け方法であって、前記グロメット本体の端部が連結された略環状のフランジ部と、前記グロメット本体とは逆側へ向けて前記フランジ部から離間する離間方向側を覆うように、前記フランジ部から前記離間方向へ向けて先細に延設されたカバー部と、該カバー部の先細側の端部から延びる筒部とで構成された前記取付部の前記カバー部及び前記筒部を、前記第2パネル側に向けて前記第1パネルの前記第1貫通孔に挿通する挿通工程と、前記第1貫通孔よりも大きい前記取付部の前記フランジ部を、前記第2パネル側から引き抜く引抜工程と、前記第1貫通孔を通過した前記取付部の前記フランジ部と前記カバー部との間で前記第2貫通孔の周縁を挟持して、前記第2パネルに取り付ける取付工程とを行い、前記引抜工程は、前記フランジ部から先細の略錐体状に延設されたカバー本体、及び該カバー本体の外面に突設された突起部で構成された前記カバー部の前記突起部が、前記離間方向への荷重を受けて、前記フランジ部の一部を前記離間方向側に変形させることで、前記フランジ部を前記第1貫通孔から引き抜き可能にする工程であることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、グロメットの取付け方法は、第1貫通孔が第2貫通孔に略同じ大きさであっても、第1貫通孔を通過させて第2貫通孔に取付部を取付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、第1貫通孔が第2貫通孔に略同じ大きさであっても、第1貫通孔を通過させて第2貫通孔に取付部を取付けられるグロメット、及びグロメットの取付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】取付け状態におけるグロメットを平面視で示す平面図。
図2】グロメットの取付け方向の概略を説明する説明図。
図3】前方上方視におけるグロメットの外観を示す外観斜視図。
図4】後方下方視におけるグロメットの外観を示す外観斜視図。
図5】グロメットの外観を正面視で示す正面図。
図6図5中のA-A矢視断面図。
図7図5中のB-B矢視断面図。
図8】第2取付部をA-A矢視断面で示す断面図。
図9】第2取付部の挿通工程をA-A矢視断面で説明する説明図。
図10】第2取付部の引抜工程をA-A矢視断面で説明する説明図。
図11】第2取付部の引抜工程をA-A矢視断面で説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態のグロメット3は、例えば自動車などの車両において、バッテリーと電装機器とを接続するワイヤーハーネスWを保護している。このようなグロメット3について、図1から図8を用いて説明する。
【0029】
なお、図1は取付け状態におけるグロメット3の平面図を示し、図2はグロメット3の取付け方向の説明図を示し、図3は前方上方視におけるグロメット3の外観斜視図を示し、図4は後方下方視におけるグロメット3の外観斜視図を示している。
さらに、図5はグロメット3の正面図を示し、図6図5中のA-A矢視断面図を示し、図7図5中のB-B矢視断面図を示し、図8は第2取付部30のA-A矢視断面図を示している。
【0030】
また、図中の矢印Xはグロメット3の前後方向(以下、前後方向Xと呼ぶ)を示し、矢印Yは前後方向Xに対して平面視略直交する方向である幅方向(以下、幅方向Yと呼ぶ)を示している。
さらに、前後方向Xにおいて、第1パネル1から第2パネル2へ向かう方向を前方、第2パネル2から第1パネル1へ向かう方向を後方とする。加えて、図2中の上側をグロメット3の上方、図2中の下側をグロメット3の下方とする。
【0031】
まず、ワイヤーハーネスWは、図1に示すように、車両を構成する第1パネル1と第2パネル2とに橋架されるように配索されている。
ここで、第1パネル1は、例えば車両の車体に対して開閉自在に支持されたバックドアパネルなどである。この第1パネル1には、図1及び図2に示すように、正面視略円形の第1貫通孔1aが前後方向Xに貫通して形成されている。
【0032】
一方、第2パネル2は、例えば車両の車体を構成するパネルなどであって、第1パネル1に対して前後方向Xの前方側に所定間隔を隔てて対向配置している。この第2パネル2には、図1及び図2に示すように、第1貫通孔1aに対して幅方向Yの一方側Yaに離間した位置において、前後方向Xに貫通する正面視略変形の第2貫通孔2aが形成されている。
なお、第1パネル1の第1貫通孔1a、及び第2パネル2の第2貫通孔2aは、略同じ直径で開口形成されている。
【0033】
上述したワイヤーハーネスWは、図1に示すように、第1パネル1の第1貫通孔1aと、第2パネル2の第2貫通孔2aとに挿通されることで、第1パネル1と第2パネル2とに跨って配索されている。
このため、ワイヤーハーネスWは、図1に示すように、前後方向Xに沿って第1貫通孔1aを通過し、第1パネル1と第2パネル2との間を幅方向Yの一方側Yaへ向けて略直線的に配索されるとともに、前後方向Xへ向けて屈曲して第2貫通孔2aを通過している。
【0034】
このようなワイヤーハーネスWは、図1に示すように、第1パネル1と第2パネル2とに跨って配設された平面視略クランク形状のグロメット3の内部に挿通されている。
グロメット3は、合成ゴムなどの可撓性を有する素材で成形され、ワイヤーハーネスWを挿通可能な内部空間を有している。
【0035】
このグロメット3は、図1に示すように、第1貫通孔1aに取り付けられる第1取付部10と、第1取付部10から幅方向Yの一方側Yaへ延びるグロメット本体20と、グロメット本体20の端部に設けられ、第2貫通孔2aに取り付けられる第2取付部30とで構成されている。
【0036】
なお、グロメット3は、図2の矢印Mで示すように、第2パネル2へ向けて第1貫通孔1aに挿通した第2取付部30を、第2パネル2側から引き抜いて第1貫通孔1aを通過させたのち、第2貫通孔2aに取り付け可能に構成している。
【0037】
第1取付部10は、図1に示すように、第1パネル1の第1貫通孔1aを覆うとともに、第1貫通孔1aに嵌合可能に形成されている。
具体的には、第1取付部10は、図3から図6に示すように、前後方向Xから見た正面視における形状が正面視略環状のフランジ部11と、フランジ部11から前後方向Xの前方側へ延設された内部中空のカバー部12とで構成されている。
【0038】
そして、第1取付部10は、図1に示すように、フランジ部11とカバー部12とで第1貫通孔1aの周縁を挟持して、第1パネル1に取付けられている。
なお、第1取付部10は、第1パネル1の第1貫通孔1aに嵌合によって取付可能な形状であれば、適宜の形状でよいため、本実施形態ではその詳細な説明を省略する。
【0039】
また、グロメット本体20は、第1取付部10から導出されたワイヤーハーネスWを内部に挿通可能な形状に形成されている。このグロメット本体20は、図5に示すように、正面視において、第1取付部10の略中央よりも上方の位置から延設されている。
【0040】
具体的には、グロメット本体20は、図1及び図2に示すように、第1パネル1と第2パネル2との間において、幅方向Yへ略直線的に延びる略円筒状に形成されている。なお、グロメット本体20には、図3及び図4に示すように、幅方向Yにおける略中央近傍に、蛇腹部分20aが形成されている。
【0041】
さらに、グロメット本体20は、図1に示すように、幅方向Yの一方側Yaの端部が、前後方向Xの前方側に屈曲して第2取付部30に連結され、幅方向Yの他方側Ybの端部が、前後方向Xの後方側に屈曲して第1取付部10に連結されている。
【0042】
また、第2取付部30は、図1に示すように、第2パネル2の第2貫通孔2aを覆うとともに、第2貫通孔2aに嵌合可能に形成されている。
具体的には、第2取付部30は、図1から図6に示すように、グロメット本体20の端部が連結されるフランジ部31と、フランジ部31から前後方向Xの前方側へ向けて先細に延設されたカバー部32と、カバー部32から前後方向Xの前方側へ延びる筒部33とで構成されている。
【0043】
なお、第2取付部30は、グロメット本体20の端部における前後方向Xに沿った軸中心に対して、フランジ部31、カバー部32、及び筒部33を略同軸上に配置している。
そして、第2取付部30は、図1に示すように、フランジ部31とカバー部32とで第2貫通孔2aの周縁を挟持して、第2パネル2に取付けられている。
【0044】
引き続き、第2取付部30について詳述する。なお、以降の説明を容易にするため、前後方向Xの後方側から前方側へ向かう方向、すなわち第1パネル1から第2パネル2へ向かう前後方向Xを、フランジ部31から離間する離間方向Xaとして説明する。
【0045】
フランジ部31は、図3から図6に示すように、離間方向Xaに厚みを有するとともに、第1貫通孔1a及び第2貫通孔2aよりも大きく、かつ第1取付部10のフランジ部11の外径に略同じ外径を有する正面視略円環状に形成されている。
なお、フランジ部31の内周面は、図7及び図8に示すように、グロメット本体20の内径に略同じ直径で形成されている。
【0046】
具体的には、フランジ部31は、図7及び図8に示すように、グロメット本体20が連結された略円錐台形状の錐体部分311と、錐体部分311から離間方向Xaへ延びる平板部分312とを同軸上に配置して形成している。
【0047】
錐体部分311は、グロメット本体20側が第2貫通孔2aよりも小径で、カバー部32側が第2貫通孔2aよりも大径の略円錐台形状に形成されている。このため、錐体部分311の外周面は、グロメット本体20側から離間方向Xaへ向かうほど漸次、拡径されるテーパー面31aに形成されている。
この錐体部分311の小径側端面(グロメット本体20側の端面)には、図4に示すように、グロメット本体20から下方側へ向けて略放射状に延びる3つのリブ313が形成されている。
【0048】
一方、平板部分312は、錐体部分311における外周面の大径に略同じ外径の略円板状に形成されている。この平板部分312におけるカバー部32側の外周縁には、図7及び図8に示すように、離間方向Xaへ立設した周縁部分314が形成されている。
【0049】
また、カバー部32は、図7及び図8に示すように、フランジ部31の離間方向Xa側を覆うように、フランジ部31から離間方向Xaへ向けて先細に延設されている。
より詳しくは、カバー部32は、図3から図5に示すように、フランジ部31から略円錐台形状に延設されたカバー本体321と、カバー本体321の外周面に突設された突起部322とで構成されている。
【0050】
カバー本体321は、図7及び図8に示すように、離間方向Xaに沿った断面において、フランジ部31から離間方向Xaへ向かうほど漸次、外周径が拡径される拡径部321aと、拡径部321aから離間方向Xaへ向かうほど漸次、外周径が縮径される縮径部321bとで構成されている。
【0051】
拡径部321aの外周径は、小径側が、平板部分312の外径よりも小径に形成され、大径側が、フランジ部31の周縁部分314の内径に略同じ外径まで拡径されている。
縮径部321bの外周径は、図7及び図8に示すように、離間方向Xaに沿った断面において、離間方向Xaに対する外周面の傾きが略一定となるように、拡径部321aから離間方向Xaへ向けて縮径されている。
【0052】
このため、縮径部321bの外周面は、図7及び図8に示すように、離間方向Xaに沿った断面において、略平面となる断面形状に形成されている。
この縮径部321bにおける離間方向Xa側の先端は、グロメット本体20の外径よりも小径になる大きさまで縮径されている。
【0053】
なお、カバー本体321の内周面は、図7及び図8に示すように、フランジ部31の内径よりも大径で離間方向Xaへ延びたのち、縮径部321bの肉厚が略一定となるように、漸次、離間方向Xaへ向かうほど縮径された形状に形成されている。
このため、カバー本体321には、図7及び図8に示すように、離間方向Xaに沿った断面において、拡径部321aと縮径部321bとの境界近傍に、他の部分に比べて厚肉な厚肉部分が形成されている。
【0054】
さらに、カバー本体321の縮径部321bには、図7及び図8に示すように、離間方向Xaに沿った断面における断面形状が、外周面及び内周面ともに略平面で、かつ略直線的に延びる略平板状となる平板部分が形成されている。
【0055】
一方、突起部322は、離間方向Xaへの荷重を受け付けて、フランジ部31の一部を変形させる変形操作部として形成されている。この突起部322は、図1に示すように、平面視において、第1取付部10とは逆側のカバー本体321の外周面に突設されている。
【0056】
より詳しくは、突起部322は、図8に示すように、カバー本体321における離間方向Xaの略中央よりも筒部33側において、縮径部321bの平板部分に形成されている。なお、突起部322は、5mm四方の大きさの略矩形であって、カバー本体321の外周面からの突設高さが1mm以上となるように形成されている。
【0057】
また、筒部33は、カバー本体321の端部から離間方向Xaへ向けて延びる略円筒状に形成されている。なお、離間方向Xaの先端となる筒部33の先端部は、筒部33の径方向外方へ向けて拡径された形状に形成されている。
この筒部33は、後述する2つのスリット34によって、幅方向Yで対向する第1半割部分33aと第2半割部分33bとに分割されている。
【0058】
このような第2取付部30には、図3から図5に示すように、筒部33の先端から突起部322の近傍に至る前後方向Xの長さで切り欠かれた2つのスリット34が、上下方向に対向して形成されている。換言すると、2つのスリット34は、第2取付部30の周方向において、突起部322を挟んで隣接して形成されている。
【0059】
このスリット34は、図8に示すように、平面視略円形に開口された円形開口部分と、平面視略矩形に開口された矩形開口部分とで構成されている。
詳述すると、スリット34の円形開口部分は、図8に示すように、平面視において、突起部322における離間方向Xa側の端部に前端が位置するように開口形成されている。一方、スリット34の矩形開口部分は、図8に示すように、平面視において、円形開口部分から筒部33の先端にかけて開口形成されている。
【0060】
このため、筒部33は、図8に示すように、離間方向Xaに沿った垂直断面において、幅方向Yの一方側Yaに位置し、突起部322に連続する外周面を有する第1半割部分33aと、第1半割部分33aに対して幅方向Yの他方側Ybで対向する内周面を有する第2半割部分33bとに分割されている。
【0061】
次に、上述した構成のグロメット3の第1取付部10及び第2取付部30を、それぞれ第1パネル1及び第2パネル2に取付ける取付け方法について、図2及び図9から図11を用いて説明する。
なお、図9は第2取付部30の挿通工程をA-A矢視断面で説明する説明図であり、図9(a)は第2取付部30の筒部33を第1貫通孔1aに挿通した状態の説明図を示し、図9(b)は第2取付部30が保持された状態の説明図を示している。
【0062】
また、図10及び図11は第2取付部30の引抜工程をA-A矢視断面で説明する説明図であり、図10(a)はフランジ部31を変形させる操作の説明図を示し、図10(b)はフランジ部31の一部が変形した状態の説明図を示している。
【0063】
さらに、図11(a)はフランジ部31が第1貫通孔1aから引き抜かれる過程の説明図を示し、図11(b)は第2取付部30が第1貫通孔1aを通過する過程の説明図を示している。
また、図示を明確にするため、図9から図11中において、ワイヤーハーネスW、及び作業者の右手RHを二点鎖線で図示している。
【0064】
まず、作業者は、図2中の矢印Mで示したように、予めワイヤーハーネスWが挿通されたグロメット3の第2取付部30を、第1パネル1から第2パネル2へ向けて第1貫通孔1aに挿通する。この際、作業者は、図9(a)に示すように、第2取付部30の筒部33、カバー部32の順に第1貫通孔1aに挿通する。
【0065】
その後、作業者は、図9(b)に示すように、第1貫通孔1aを通過した筒部33を把持するとともに、突起部322が第1貫通孔1aを通過するまで第2パネル2側(離間方向Xa)へ引っ張る。
【0066】
突起部322が第1貫通孔1aを通過すると、作業者は、第1貫通孔1aよりも大きい外径のフランジ部31を、第2パネル2側から引き抜く引抜工程を開始する。
詳述すると、作業者は、図9(b)及び図10(a)に示すように、筒部33を把持した右手RHの親指を突起部322に移動させる。その後、作業者は、図10(a)中の太い矢印で示したように、突起部322に対して離間方向Xaへの荷重を加える。
この際、作業者は、例えば、点火用器具であるライターのフリントを回動させるようにして、離間方向Xaへの荷重を突起部322に加える。
【0067】
突起部322に離間方向Xaへの荷重が加わると、第2取付部30のカバー本体321は、図10(b)に示すように、突起部322からフランジ部31側の端部に至る部分が離間方向Xaへ向けて回動するように、突起部322を起点に屈曲変形を開始する。換言すると、カバー本体321は、拡径部321aと縮径部321bとの境界近傍の厚肉部分が、離間方向Xaへ向けて移動するように屈曲変形する。
【0068】
この際、第2取付部30の筒部33は、図10(a)及び図10(b)に示すように、離間方向Xaに沿った断面において、第1半割部分33aがカバー本体321の変形に追従して離間方向Xaへ変位する。
さらに、突起部322には離間方向Xaの荷重だけでなく、ワイヤーハーネスWへ向かう幅方向Yの荷重が作用するため、第2取付部30のカバー本体321及び筒部33は、幅方向Yの他方側Ybへ向けて変位するように変形する。
【0069】
このため、突起部322と筒部33との間のカバー本体321の内周面、及び筒部33の内周面が、図10(b)に示すように、ワイヤーハーネスWに接触する。
なお、詳細な図示を省略するが、筒部33は、作業者が保持することで、第2半割部分33bが、第1半割部分33aに近接するようにワイヤーハーネスWへ向けて変形し、第2半割部分33bの内周面がワイヤーハーネスWに接触する。
【0070】
このように、カバー部32及び筒部33が離間方向Xa及び幅方向Yの他方側Ybへ一体的に変形することで、離間方向Xaの引張荷重と幅方向Yの他方側Ybへの引張荷重とが、筒部33の第1半割部分33aと突起部322とを結ぶ仮想線の延長上に位置するフランジ部31の一部に作用する。このため、フランジ部31の一部は、図10(b)に示すように、グロメット本体20との連結箇所近傍を支点に離間方向Xaへ向けて回動するように変形する。
【0071】
フランジ部31の一部を変形させると、作業者は、図11(a)に示すように、突起部322に離間方向Xaへの荷重を加えたまま、変形したフランジ部31の一部が第2パネル2側へ変位するように、第2取付部30を第2パネル2側(図11(a)の太い矢印の方向)へ傾ける。
この際、作業者は、幅方向Yにおいて、突起部322を設けた部分に対向するカバー本体321を、第1貫通孔1aの周縁に当接させるとともに、第1貫通孔1aの周縁を支点にして第2取付部30を傾ける。
【0072】
そして、作業者は、ワイヤーハーネスWとともに第2取付部30を第2パネル2側へ引っ張ることで、変形したフランジ部31の一部を第1貫通孔1aから引き抜く。
変形したフランジ部31の一部が第1貫通孔1aを通過すると、作業者は、図11(b)に示すように、変形したフランジ部31の一部に親指を引っ掛けるように、筒部33を保持する右手RHを持ち直す。
【0073】
その後、作業者は、図11(b)の太い矢印でに示すように、第2取付部30を幅方向Yに捻りながら引っ張ることで、第1貫通孔1aから第2取付部30を引き抜いて、第1パネル1と第2パネル2との間に位置させる。
第1パネル1と第2パネル2との間に第2取付部30を移動させると、作業者は、図1に示すように、第1取付部10のフランジ部11とカバー部12との間で第1貫通孔1aの周縁を挟持させて、第1取付部10を第1パネル1に取付ける。
【0074】
さらに、作業者は、図1に示すように、第1貫通孔1aを通過した第2取付部30のフランジ部31とカバー部32との間で第2貫通孔2aの周縁を挟持させて、第2取付部30を第2パネル2に取り付ける。このようにして、グロメット3の取付け方法は、第1パネル1と第2パネル2との間に跨ってグロメット3を配設する。
【0075】
以上のように、本実施形態のグロメット3は、第1パネル1の第1貫通孔1aと第2パネル2の第2貫通孔2aとに跨って配索されるワイヤーハーネスWを内部に挿通するグロメット本体20と、グロメット本体20の端部に設けられるとともに、第2貫通孔2aに取り付けられる第2取付部30とで構成されている。
このグロメット3における第2取付部30は、第2パネル2側から引き抜いて第1貫通孔1aを通過可能な構成である。
【0076】
第2取付部30は、グロメット本体20の端部が連結されるとともに、第1貫通孔1aよりも大きい略環状のフランジ部31と、離間方向Xa側を覆うようにフランジ部31から離間方向Xaへ向けて先細に延設されるとともに、フランジ部31とで第2貫通孔2aの周縁を挟持するカバー部32とを備えている。
さらに、第2取付部30は、カバー部32の先細側の端部から延びる筒部33を備えている。
【0077】
そして、カバー部32は、フランジ部31から先細に延設された略錐体状のカバー本体321と、離間方向Xaへの荷重を受付け可能にカバー本体321の外面に突設された突起部322とで構成されたものである。
これによれば、グロメット3は、第1貫通孔1aが第2貫通孔2aに略同じ大きさであっても、第1貫通孔1aを通過させて第2貫通孔2aに第2取付部30を取付けることができる。
【0078】
具体的には、グロメット3の筒部33は、第1貫通孔1aに挿通させたグロメット3の第2取付部30を引き抜くために、作業者が保持する持ち手として機能することができる。このため、作業者は、第1貫通孔1aに挿通したグロメット3の第2取付部30を、第2パネル2側から容易に引っ張ることができる。
【0079】
この際、離間方向Xaへの荷重を突起部322に加えながら、グロメット3の筒部33を引っ張ることで、作業者は、第2取付部30を第1貫通孔1aから引き抜くことができる。
より詳しくは、カバー本体321が離間方向Xaへ延びる略錐体状に形成されているため、離間方向Xaへの荷重が突起部322に加わった際、グロメット3のカバー本体321は、突起部322よりもフランジ部31側の部分が離間方向Xaへ向けて回動するように、突起部322を起点に屈曲変形を開始する。このため、カバー本体321は、フランジ部31の一部に離間方向Xaの引張荷重を作用させることができる。
【0080】
これにより、フランジ部31の一部は、グロメット本体20の連結箇所を支点にして離間方向Xa側へ回動するように、離間方向Xa側に変形することができる。このため、グロメット3は、フランジ部31の外形を第1貫通孔1aから引き抜き可能な大きさに変形させることができる。
したがって、グロメット3は、第1貫通孔1aが第2貫通孔2aに略同じ大きさであっても、第1貫通孔1aを通過させて第2貫通孔2aに第2取付部30を取付けることができる。
【0081】
また、突起部322は、カバー本体321における離間方向Xaの略中央よりも筒部33側に形成されたものである。
この構成によれば、グロメット3は、フランジ部31の一部に作用する離間方向Xaの引張荷重を、離間方向Xaの略中央よりもフランジ部31側に突起部322を設けた場合に比べて大きくすることができる。このため、グロメット3は、フランジ部31の一部を確実に変形させることができる。
【0082】
また、突起部322は、離間方向Xaに沿った断面におけるカバー本体321の断面形状が略平板状の部分に形成されたものである。
この構成によれば、グロメット3は、例えばカバー本体321の湾曲した断面形状の部分に突起部322を設けた場合に比べて、カバー本体321を効率よく屈曲変形させることができる。このため、グロメット3は、フランジ部31の一部をより確実に変形させることができる。
【0083】
また、フランジ部31は、グロメット本体20側の外周縁にテーパー面31aが設けられたものである。
この構成によれば、フランジ部31が第1貫通孔1aを通過する際、グロメット3は、フランジ部31の外周縁と第1貫通孔1aの周縁との接触を抑えることができる。このため、グロメット3は、第1貫通孔1aからのフランジ部31の引き抜きを、テーパー面31aを設けていない場合に比べて容易にすることができる。
【0084】
また、第2取付部30は、突起部322に隣接するとともに、筒部33の先端から突起部322の近傍にかけて切り欠かれたスリット34が設けられたものである。
この構成によれば、グロメット3の筒部33は、カバー本体321の離間方向Xaへの変形に追従して、離間方向Xaに変形することができる。このため、グロメット3の筒部33は、カバー本体321の変形をより促進して、フランジ部31の一部により大きな引張荷重を作用させることができる。これにより、グロメット3は、フランジ部31の一部をさらに確実に変形させることができる。
【0085】
また、カバー本体321の内面は、離間方向Xaに沿った断面において、少なくとも突起部322から筒部33に至る部分が略平面に形成されたものである。
この構成によれば、グロメット3は、第1貫通孔1aから第2取付部30を引き抜く際、ワイヤーハーネスWにも離間方向Xaの引張荷重を加えることができるため、第2取付部30及びワイヤーハーネスWを略同時に第1貫通孔1aから引き抜くことができる。
【0086】
具体的には、第2取付部30の内部に位置するワイヤーハーネスWへ向けた荷重が突起部322に加わった際、グロメット3のカバー本体321は、突起部322から筒部33に至る部分がワイヤーハーネスWへ向けて変形してワイヤーハーネスWと接触する。
【0087】
この際、カバー本体321の内面が略平面状に形成されているため、グロメット3は、カバー本体321の内面が凹凸形状の場合に比べて、カバー本体321の内面とワイヤーハーネスWとの接触面積を大きく確保することができる。
【0088】
このため、第1貫通孔1aから第2取付部30を引き抜く際、グロメット3は、第2取付部30及びワイヤーハーネスWの相対移動を抑えて、ワイヤーハーネスWにも離間方向Xaの引張荷重を加えることができる。
これにより、グロメット3は、第1貫通孔1aから第2取付部30を引き抜く際、第2取付部30及びワイヤーハーネスWを略同時に第1貫通孔1aから引き抜くことができる。
【0089】
また、突起部322は、カバー本体321の外面からの突出高さが1mm以上である。
この構成によれば、グロメット3は、突起部322の位置を作業者に確実に認識させることができるとともに、離間方向Xaへの荷重を確実に受けることができる。
【0090】
さらに、突起部322は、突出高さが1mm未満の場合に比べて、作業者の指が係止され易い。このため、作業者が突起部322に離間方向Xaへの荷重を加える際、突起部322は、作業者の指が滑ることを防止できる。
これにより、グロメット3は、第1貫通孔1aから第2取付部30の引き抜く作業における作業性、及び安全性を両立して向上することができる。
【0091】
また、突起部322は、5mm四方の略矩形で形成されたものである。これによれば、グロメット3は、作業者の指が引っ掛かる面積を確保できるとともに、離間方向Xaへの荷重を確実に受けることができる。
【0092】
また、本実施形態におけるグロメット3の取付け方法は、第1パネル1の第1貫通孔1aと第2パネル2の第2貫通孔2aとに跨って配索されるワイヤーハーネスWを内部に挿通するグロメット本体20と、グロメット本体20の端部に設けられるとともに、第2貫通孔2aに取り付けられる第2取付部30とで構成されたグロメット3における取付け方法である。
【0093】
このグロメット3の取付け方法は、グロメット本体20の端部が連結された略環状のフランジ部31と、離間方向Xa側を覆うようにフランジ部31から離間方向Xaへ向けて先細に延設されたカバー部32と、カバー部32の先細側の端部から延びる筒部33とで構成された第2取付部30のカバー部32及び筒部33を、第2パネル2側に向けて第1パネル1の第1貫通孔1aに挿通する挿通工程を行う。
【0094】
さらに、グロメット3の取付け方法は、第1貫通孔1aよりも大きい第2取付部30のフランジ部31を、第2パネル2側から引き抜く引抜工程と、第1貫通孔1aを通過した第2取付部30のフランジ部31とカバー部32との間で第2貫通孔2aの周縁を挟持して、第2パネル2に取り付ける取付工程とを行う。
【0095】
そして、引抜工程は、フランジ部31から先細の略錐体状に延設されたカバー本体321、及びカバー本体321の外面に突設された突起部322で構成されたカバー部32の突起部322が、離間方向Xaへの荷重を受けて、フランジ部31の一部を離間方向Xa側に変形させることで、フランジ部31を第1貫通孔1aから引き抜き可能にする工程である。
【0096】
これによれば、グロメット3の取付け方法は、第1貫通孔1aが第2貫通孔2aに略同じ大きさであっても、第1貫通孔1aを通過させて第2貫通孔2aに第2取付部30を取付けることができる。
【0097】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の取付部は、実施形態の第2取付部30に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0098】
例えば、上述の実施形態において、自動車などの車両を構成する第1パネル1及び第2パネル2としたが、グロメット3を取付ける薄板状の部材であれば、自動車などの車両に限定されない。
また、平面視略クランク形状のグロメット3としたが、これに限定せず、平面視略直線状に延びるグロメット、あるいは平面視略円弧状のグロメットなどであってもよい。
また、第2取付部30の筒部33を作業者の右手RHで把持したが、これに限定せず、作業者の左手で把持してもよい。
【0099】
また、第1取付部10と第2取付部30とを有するグロメット3としたが、これに限定せず、第2取付部のみを有するグロメットであってもよい。この場合であっても、第1貫通孔1aと第2貫通孔2aとは、略同じ直径とする。
また、正面視略円形の第1取付部10及び第2取付部30としたが、これに限定せず、正面視略長楕円形状の第1取付部及び第2取付部であってもよい。この場合、第2取付部の突起部が、正面視において、略長楕円形状の長軸上に位置するように形成する。
【0100】
また、カバー部32から離間方向Xaへ延びる筒部33としたが、これに限定せず、カバー部から幅方向Yへ屈曲した筒部としてもよい。
また、第2取付部30に2つのスリット34を設けたが、これに限定せず、1つのスリット、あるいは3つ以上のスリットを設けてもよい。
【0101】
また、カバー部32に1つの突起部322を備えた構成としたが、これに限定せず、突起部が周方向に所定間隔を隔てて複数設けられてもよい。さらに、突起部322は、周方向の適宜の位置に設けてもよい。
また、略矩形の突起部322としたが、これに限定せず、作業者が指を引っ掛けることができ、かつ離間方向Xaへの荷重を受けることができる形状であれば、円形状、長楕円形状、あるいは三角形状など適宜の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…第1パネル
1a…第1貫通孔
2…第2パネル
2a…第2貫通孔
3…グロメット
20…グロメット本体
30…第2取付部
31…フランジ部
31a…テーパー面
32…カバー部
33…筒部
34…スリット
321…カバー本体
322…突起部
W…ワイヤーハーネス
Xa…離間方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11