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特許7536764薬物送達デバイスおよび薬物送達システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスおよび薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20240813BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61M5/172
A61M5/315 550J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021535556
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019085478
(87)【国際公開番号】W WO2020127139
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】18306739.6
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・キューン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507963(JP,A)
【文献】特表2008-529675(JP,A)
【文献】特表2017-500907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/172
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(20)であって:
薬物容器(10)を収容するためのレセプタクル(23)であって、薬物容器(10)は容器ID(52)を備え、該容器ID(52)が、少なくとも薬物容器(10)の内容物を示す、レセプタクルと、
薬物容器(10)がレセプタクル(23)に配置されたときに、容器ID(52)を検出および/または識別するように構成された容器識別装置(50)と、
通信デバイス(60)にアップリンクデータ(UL)を送信するように構成された送達デバイスインターフェース(24)であって、アップリンクデータ(UL)は、容器識別装置(50)から取得可能な容器ID(52)を少なくとも含み、アップリンクデータ(UL)の送信に対する返信として通信デバイス(60)からダウンリンクデータ(DL)を受信するように構成された送達デバイスインターフェース(24)と、
薬物容器(10)と動作可能に係合可能な駆動機構(40)であって、送達デバイスインターフェース(24)から受信したダウンリンクデータ(DL)に基づき、薬物容器(10)から少なくともある用量の薬物を排出または投薬するように構成された駆動機構と
送達デバイスインターフェース(24)に接続され、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータに基づき、駆動機構(40)を制御するように動作可能な送達デバイスプロセッサ(22)とを含み、該プロセッサは:
a)送達デバイスインターフェース(24)から取得したダウンリンクデータ(DL)を処理し、該ダウンリンクデータ(DL)に基づき、駆動機構(40)の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するか、
b)駆動機構(40)の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータをダウンリンクデータ(DL)から抽出する
ように動作可能であり、そして、
排出または投薬の少なくとも1つの該パラメータは、:
- 薬物を投薬または排出すべき時点、
- 薬物の量、
- 薬物の薬学的に有効な化合物の量、
- 用量排出または用量投薬の速度、および
- 用量排出または用量投薬中の薬物の流量。
の少なくとも1つを示す、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
容器ID(52)の少なくとも一部分、アップリンクデータ(UL)の少なくとも一部分、およびダウンリンクデータ(DL)の少なくとも一部分のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を記憶するように構成された送達デバイス記憶装置(26)をさらに含む、請求項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
送達デバイスプロセッサ(22)および送達デバイスインターフェース(24)のうちの少なくとも1つに接続された患者識別装置(34)をさらに含み、該患者識別装置(34)は、薬物送達デバイス(20)を使用する患者を識別し、患者識別子を生成し、患者識別子をアップリンクデータ(UL)に組み込むように動作可能である、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
送達デバイスプロセッサ(22)は、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを処理するようにさらに構成され、送達デバイスプロセッサ(22)は、生理学的パラメータまたは環境的パラメータのうちの少なくとも1つに基づき、駆動機構(40)の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するように構成された、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを測定し、該少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを送達デバイスプロセッサ(22)に送信するように構成されたセンサアセンブリ(80)をさらに含む、請求項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
容器識別装置(50)は、機械センサ、光学センサ、静電容量センサ、磁気センサ、および電磁センサのうちの少なくとも1つを含み、容器識別装置(50)は、薬物容器(50)がレセプタクル(23)に配置されたときに、容器ID(52)を示す電子識別信号を生成および送信するように動作可能である、請求項1~のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
レセプタクル(23)に配置され、薬物または薬剤で満たされた薬物容器(10)をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(20)を含み、通信デバイス(60)をさらに含む薬物送達システム(100)であって、通信デバイス(60)は:
送達デバイスインターフェース(24)からアップリンクデータ(UL)を受信するように構成され、送達デバイスインターフェース(24)に対してダウンリンクデータ(DL)を送信するように構成された通信デバイスインターフェース(64)と、
通信デバイスインターフェース(64)に接続された通信デバイスプロセッサ(62)とを含み、該通信デバイスプロセッサ(62)は:
a)アップリンクデータ(UL)からダウンリンクデータ(DL)の少なくとも一部分を生成し、かつ/または
b)アップリンクデータ(UL)の少なくとも一部分を、ネットワーク(200)を介して外部データベース(202)に送信し、該外部データベース(202)からダウンリンクデータ(DL)の少なくとも一部分を受信する
ように動作可能である、前記薬物送達システム。
【請求項9】
通信デバイスは、通信デバイスプロセッサ(62)および通信デバイスインターフェース(64)のうちの少なくとも1つに接続された患者識別装置(74)を含み、該患者識
別装置(74)は、通信デバイス(60)および薬物送達デバイス(20)のうちの少なくとも1つを使用する患者を識別するように動作可能であり、患者識別装置(74)は、患者識別子を生成し、患者識別子をアップリンクデータ(UL)に組み込むか、患者識別子を通信デバイスプロセッサ(62)に送信するように動作可能である、請求項に記載の薬物送達システム(100)。
【請求項10】
通信デバイスプロセッサ(62)および通信デバイスインターフェース(64)は、患者検索要求(RR)を外部データベース202に送信し、患者検索要求(RR)に応答して外部データベース(202)から患者固有のデータセット(300)を受信するように動作可能であり、患者検索要求(RR)は、少なくとも患者識別子を含む、請求項8または9に記載の薬物送達システム(100)。
【請求項11】
通信デバイスプロセッサ(62)および通信デバイスインターフェース(64)は:
a)患者固有のデータセット(300)の少なくとも一部分を、送達デバイスインターフェース(24)に送信されるダウンリンクデータ(DL)に組み込むか、または
b)患者固有のデータセット(300)の少なくとも一部分を処理し、薬物送達デバイス(20)の駆動機構(40)の排出または投薬のパラメータのうちの少なくとも1つを調整もしくは修正し、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを、送達デバイスインターフェース(24)に送信されるダウンリンクデータ(DL)に組み込むように動作可能である、請求項10に記載の薬物送達システム(100)。
【請求項12】
送達デバイスプロセッサ(22)は、レセプタクル(23)における薬物容器(10)の交換、またはレセプタクル(23)の中へ薬物容器(10)の挿入を検出するように動作可能であり、送達デバイスプロセッサ(22)は、薬物容器の交換または薬物容器の挿入を検出したことに応答して、通信デバイス(60)を介した外部データベース(202)への患者検索要求(RR)の送信をトリガするようにさらに動作可能である、請求項8~11のいずれか1項に記載の薬物送達システム(100)。
【請求項13】
薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法であって、薬物送達デバイス(20)は、薬物容器(10)を収容するためのレセプタクル(23)を含み、薬物容器(10)は、少なくとも薬物容器(10)の内容物を示す容器ID(52)を含み、薬物送達デバイスは、薬物容器(10)と動作可能に係合可能な駆動機構(40)であって、薬物容器から少なくともある用量を排出または投薬するように構成された駆動機構(40)をさらに含み:
薬物容器(10)がレセプタクル(23)に配置されたときに、容器ID(52)を判定または検出する工程と、
薬物送達デバイス(20)からのアップリンクデータ(UL)を通信デバイス(60)に送信する工程であって、アップリンクデータ(UL)は、少なくとも容器ID(52)を含む、工程と、
少なくともアップリンクデータ(UL)に基づき、ダウンリンクデータ(DL)を生成し、ダウンリンクデータ(DL)を薬物送達デバイス(20)に送信する工程と、
ダウンリンクデータ(DL)を処理し、該ダウンリンクデータ(DL)に基づき、駆動機構(40)の排出もしくは投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正する工程か、または
ダウンリンクデータ(DL)を処理し、駆動機構(40)の排出もしくは投薬の少なくとも1つのパラメータをダウンリンクデータ(DL)から抽出する工程を含み、
排出または投薬の少なくとも1つの該パラメータは、:
- 薬物を投薬または排出すべき時点、
- 薬物の量、
- 薬物の薬学的に有効な化合物の量、
- 用量排出または用量投薬の速度、および
- 用量排出または用量投薬中の薬物の流量。
の少なくとも1つを示す、前記方法。
【請求項14】
薬物送達デバイス(20)を使用する患者を識別し、該患者を示す患者識別子を生成する工程と、
患者識別子をアップリンクデータ(UL)に組み込む工程と、
患者識別子に基づき、外部データベース(202)から患者固有のデータセット(300)を検索する工程と、
患者固有のデータセット(300)の少なくとも一部分を、ダウンリンクデータ(DL)に組み込む工程か、または
患者固有のデータセット(300)に基づき、薬物送達デバイス(20)の駆動機構(40)の排出もしくは投薬のパラメータの少なくとも1つを調整または修正する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一態様において、薬物注射デバイスまたは薬物注入デバイスなどの薬物送達デバイスに関する。さらなる態様において、本開示は、薬物送達デバイスと通信デバイスとを含む薬物送達システムに関する。さらなる態様において、本開示は、薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注射デバイスまたは注入デバイスなどの薬物送達デバイスは、液体薬剤の単回または複数回の用量を設定および投薬するように構成される。
【0003】
たとえばペン型の注射器または注入ポンプの形態の注射デバイスまたは注入デバイスは、ユーザ特有の多数の要件を満たさなくてはならない。たとえば、糖尿病などの慢性疾患を抱える患者の場合、患者は身体的に虚弱なことがあり、また視覚障害をもつこともある。したがって、特に自宅薬物療法を対象とした適切な注射または注入のデバイスは、構造が頑丈であることが必要であり、使用が容易でなくてはならない。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作ならびに全体的な取扱いは、わかりやすく容易に理解可能なものでなくてはならない。さらに、用量設定および用量投薬の手順は、容易に操作できる明瞭なものでなくてはならない。
【0004】
典型的には、注射または注入のデバイスは、薬物容器を受けるためのレセプタクルを有するハウジングを含む。薬物または薬剤の容器は、非経口投与用の液体の薬剤または薬物を収容する。このような注射または注入のデバイスは、処方された薬剤用量を薬剤容器から排出するか引き抜くことができる駆動機構をさらに含む。
【0005】
薬剤治療のスケジュールに準拠するために、特定の種類の薬物または薬剤を収容する特定の種類の薬物容器が、特定の種類の適切な薬物送達デバイスとともに適切に使用されることが保証されなくてはならない。さらに、薬物送達デバイスとともに使用されることになる薬物容器が、その人または患者の所与の治療スケジュールに準拠していることが保証されるべきである。薬物容器で市販される薬物または薬剤は、薬学的に有効な化合物に関して異なっているだけに留まらず、薬学的に有効な化合物の濃度に関しても異なっている場合がある。
【0006】
自己によるまたは自宅薬物療法のために構成された薬物送達デバイスおよび薬物送達システムは、フェイルセーフの、信頼性の高い、フェイルプルーフな機構を提供して、薬物送達デバイスと液体の薬物または薬剤が充填された薬物容器との所与の組合せが、誤用または不適切使用されることを防止すべきである。薬物送達デバイスおよび薬物送達システムは、所与の治療スケジュールに対する自動的な適合を実現すべきである。薬物送達デバイスおよび薬物送達システムは、高レベルなユーザ受容性および使用簡便性を実現すべきである。さらに、所与の治療スケジュールの修正に対して、薬物送達デバイスの設定を自動的にかつ/または動的に適合させることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、薬物送達デバイスが提供される。薬物送達デバイスは、レセプタクルを含む。レセプタクルは、薬物容器を収容するように構成される。典型的には、薬物容器は、液体の薬物または薬剤で少なくとも途中まで満たされている。薬物容器は、容器IDを備える。容器IDは、少なくとも薬物容器の内容物を示す。典型的には、容器IDは、少なくとも薬物容器の内側に収容された薬物または薬剤を示す。
【0008】
薬物送達デバイスは、容器識別装置をさらに含む。容器識別装置は、薬物容器がレセプタクルに配置されたときに、容器IDを検出および/または識別するように動作可能であるか、そのように構成される。したがって、容器識別装置は、薬物容器から容器IDを抽出し、この容器IDを、薬物送達デバイス自体によって、または薬物送達デバイスに接続された少なくとも1つのさらなるデバイスによってさらに処理できるように提供するように構成されるか、そのように動作可能である。
【0009】
薬物送達デバイスは、送達デバイスインターフェースをさらに含む。送達デバイスインターフェースは、アップリンクデータを通信デバイスに送信するように構成されるか、そのように動作可能である。アップリンクデータは、容器識別装置から取得可能な少なくとも容器IDを含む。さらに、送達デバイスインターフェースは、アップリンクデータの送信に対する返信として通信デバイスからのダウンリンクデータを受信するように構成される。薬物送達デバイスは、薬物容器と動作可能に係合可能な駆動機構も含む。駆動機構は、送達デバイスインターフェースから受信したダウンリンクデータに基づき、薬物容器から少なくともある用量の薬物または薬剤を排出または投薬するように構成されるか、そのように動作可能である。
【0010】
容器識別装置と、送達デバイスインターフェースと、駆動機構との互いの相互作用により、通信デバイスから受信したダウンリンクデータによる、またはそれに応じた、薬物容器および/または薬物のかなり自動的なもしくは自動式の認識、通信デバイスとのデータ交換、ならびに駆動機構のかなり自動的なまたは自動式の調整もしくは較正が実現される。
【0011】
通信デバイスは、典型的には、薬物送達デバイスから分離されたデバイスである。いくつかの例では、通信デバイスは、薬物送達デバイスに送るように構成されるダウンリンクデータを、薬物送達デバイスから受信したアップリンクデータから直接導き出すまたは生成するように動作可能である。
【0012】
他の例では、通信デバイスは、ネットワークを介して、データベースなどの外部のデータ処理デバイスまたはデータ処理エンティティへの通信リンクを提供するようにのみ動作可能である。
【0013】
駆動機構は、典型的には、電気機械的に実現される。こうして、薬物容器からの薬物の排出または投薬を、電子的に制御または調整することができる。電子的に制御可能または電子的に調整可能な駆動機構は、通信デバイスで受信したダウンリンクデータに基づき、容易に制御可能である。
【0014】
容器識別装置と、送達デバイスインターフェースと、駆動機構との相互作用により、容器IDに応じた駆動機構の自動的なまたは自動式の調整もしくは較正が可能になる。駆動機構を制御し、調整し、較正する実装ルールの導入を、薬物送達デバイス自体によって行う必要はない。実装ルールのこのような導入は、通信デバイスまたは別個の外部データ処理デバイスによって行うことが可能である。こうして、薬物送達デバイスの電子的な実装を、駆動機構を容器ベースで調整または較正するための内蔵制御部を提供する薬物送達デバイスに比べて、簡略化することができる。
【0015】
ここで提示した、駆動機構の制御を外部で調整または較正することにより、識別または認識された容器IDを考慮した、駆動機構の制御、調整、または較正の動的なマッピングまたは割り当てが実現され、可能になる。駆動機構の制御、調整、または較正を、容器IDに対して外部処理によりマッピングするもしくは割り当てることにより、薬物容器の寿命中、またはその使用時に、駆動機構の制御、調整、または較正を外部で修正することもできるようになる。
【0016】
こうして、薬物送達デバイスを、処方された治療スケジュールの修正に合わせて動的に適合させることができる。たとえば、薬物送達デバイスの薬物容器の使用中に治療スケジュールが修正または変更される場合には、アップリンクデータの送信に応答するときに、送達デバイスインターフェースによって受信されることになるダウンリンクデータを適宜修正することができる。修正済みダウンリンクデータに応じて、適宜、駆動機構が制御、調整、または較正される。こうして、薬物送達デバイスの設定を修正して治療スケジュールに準拠させるために、特定のユーザ対話はもはや必要なくてよい。当然ながら、修正済みダウンリンクデータが受信されたとき、および駆動機構が修正済み制御、調整、または較正の対象になるときには、薬物送達デバイスによってユーザに通知を行うことができる。ここで、デバイス設定および/または駆動機構のこのような修正を促すための選択肢をユーザに与えてもよい。
【0017】
通信デバイスへのアップリンクデータの送信、および通信デバイスからのダウンリンクデータの受信によって実現される、外部でのマッピングおよび/または割り当ては、薬物送達デバイスの製造コストを削減するためにもさらに有益である。基本的に、薬物送達デバイスは、容器識別装置と送達デバイスインターフェースだけを含めばよく、こうして薬物送達デバイスは、薬物容器およびそれに含まれた薬物を認識および識別し、容器IDを送信し、その返信として駆動機構の制御、調整、または較正のパラメータを受信することができるようになる。
【0018】
典型的には、薬物送達デバイスは、容器識別装置と、送達デバイスインターフェースと、駆動機構とを収容するハウジングを含む。薬物容器を収容するレセプタクルは、薬物送達デバイスのハウジングの構成要素として構成可能である。レセプタクルは、薬物容器の交換を可能にするために、ハウジングから取外し可能であるか、ハウジングに対して可動であってよい。他の例では、薬物容器を収容するレセプタクルは、その全体が薬物送達デバイスのハウジングの内側に位置してよい。レセプタクルは、レセプタクルを閉鎖または封止することができる可動のまたは取外し可能な閉鎖部をさらに備えてよい。閉鎖部は、さらに薬物容器の交換を可能にする。
【0019】
薬物送達デバイスは、薬物注射デバイスとして実現可能である。薬物送達デバイス、薬物送達デバイスのレセプタクルおよび/またはハウジングに、穿孔アセンブリまたはニードルアセンブリを設けてよい。穿孔アセンブリまたはニードルアセンブリは、レセプタクル、薬物容器、または薬物送達デバイスのハウジングに、取外し可能に連結可能であってよい。穿孔アセンブリまたはニードルアセンブリは、典型的には、薬物容器の内部との流体連通を確立するように構成された、先端が中空のカニューレを含む。たとえば、穿孔アセンブリまたはニードルアセンブリは、薬物容器の封止部を穿孔するように構成された近位先端と、患者の生物組織に貫入するように構成された遠位端とを有する両頭注射針を含む。薬物送達デバイスは、ペン型注射デバイスを含んでよい。ここで、薬物送達デバイスのハウジングは、細長い形状、たとえば細長い管形状を含んでよい。
【0020】
注射デバイスとして実現されたとき、薬物容器は、反対側に位置する近位端と遠位端とを有する管形状のバレルを含んでよい。穿孔アセンブリまたはニードルアセンブリと流体移送接続するように構成された遠位端には、穿孔可能な封止部を設けることができる。近位端、または近位方向に向かって、薬物容器は、薬物容器のバレルに対して長手方向に変位可能な栓またはピストンによって封止することができる。典型的には、栓またはピストンは、薬物送達デバイスの駆動機構のプランジャまたはピストンロッドによって、遠位方向に押しやられるか駆動されるように構成される。
【0021】
他の例では、薬物送達デバイスはポンプとして実現される。ここで、駆動機構は吸引ポンプを含んでよく、薬物容器は、薬剤で満たされた可撓性のバッグまたはパウチを含んでよい。駆動機構は、ある用量の薬剤またはかなり一定の流れの薬剤を、吸引により薬剤容器から引き出すことができる蠕動ポンプまたは任意の他のポンプ構成を含んでよい。ここで、容器の出口は、典型的には、管または注入線に接続可能である。反対の端部では、このような管または注入線を、カニューレまたはポートシステムに接続してよく、または接続可能であってよい。
【0022】
さらなる例によれば、薬物送達デバイスは、送達デバイスインターフェースに接続された送達デバイスプロセッサを含む。送達デバイスプロセッサは、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータに基づき、駆動機構を制御するように動作可能である。プロセッサは、送達デバイスインターフェースから取得したダウンリンクデータを処理し、ダウンリンクデータに基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するように動作可能である。
【0023】
代替としてまたは追加的に、プロセッサは、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを、ダウンリンクデータから抽出するように動作可能である。排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、以下のパラメータ、すなわち薬物を投薬または排出すべき時点、薬物の量、薬物の薬学的に有効な化合物の量、用量排出または用量投薬の速度、薬物の流量などのうちの少なくとも1つを示してよい。送達デバイスプロセッサは、ダウンリンクデータを処理し、ダウンリンクデータに基づき、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するように動作可能であってよい。ここで、ダウンリンクデータは、駆動機構の既存の排出または投薬のパラメータの調整または修正だけを示してよい。代替として、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、ダウンリンクデータに含まれてもよい。次いで、送達デバイスプロセッサは、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを、ダウンリンクデータから抽出するように動作可能であってよい。
【0024】
さらなる例では、送達デバイスプロセッサは、容器識別装置と送達デバイスインターフェースとの間の通信を制御または管理するようにさらに構成可能である。したがって、送達デバイスプロセッサは、容器識別装置によって提供された容器IDを受信し、容器IDを送達デバイスインターフェースに転送するように構成可能である。送達デバイスプロセッサは、容器IDをアップリンクデータ内に転送するか、容器IDからアップリンクデータを生成するように、さらに構成可能である。こうして、送達デバイスプロセッサは、アップリンクデータを生成し、アップリンクデータを通信デバイスに送信するよう送達デバイスインターフェースをトリガするように動作可能であってよい。
【0025】
さらに、別の例によれば、送達デバイスプロセッサは、送達デバイスインターフェースから受信したダウンリンクデータに応じて、駆動機構を制御、調整、または較正するように、さらに動作可能であってよい。駆動機構の制御、調整、または較正は、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータによって調節することができる。したがって、駆動機構が排出または投薬の少なくとも1つのパラメータに基づいて動作するとき、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整、修正、または抽出することは、駆動機構の制御、調整、または較正にそれぞれ自動的につながることになる。
【0026】
さらなる例によれば、薬物送達デバイスは、容器IDの少なくとも一部分、アップリンクデータの少なくとも一部分、およびダウンリンクデータの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を記憶するように構成された送達デバイス記憶装置も含む。場合により、送達デバイス記憶装置は、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを記憶するように構成されてよく、またはそのように動作可能であってよい。
【0027】
送達デバイス記憶装置は、容器ID、アップリンクデータの少なくとも一部分、およびダウンリンクデータの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つのバッファリングを提供する。通信デバイスへの通信リンクが提供されないか、一時的に中断された状況において、容器識別装置によって提供された容器IDは、送達デバイス記憶装置に記憶させることができる。通信デバイスへの通信リンクが利用可能になった場合には、容器IDを送達デバイス記憶装置から読み取り、アップリンクデータを介して通信デバイスに送信することができる。容器IDがすでにアップリンクデータ内に実装されているかどうかに応じて、アップリンクデータまたはその少なくとも一部分も、送達デバイス記憶装置に記憶させることができる。これにより、通信デバイスへの通信リンクの利用可能性とは無関係に、容器IDの処理、およびアップリンクデータへの容器IDの埋め込みが可能になる。
【0028】
ダウンリンクデータの少なくとも一部分および/または排出もしくは投薬の少なくとも1つのパラメータを、送達デバイス記憶装置に記憶することは、通信デバイスへの通信リンクが利用不可能であるか、中断されている状況において、駆動機構の制御、調整、または較正を実施もしくは処理するために特に有益である。
【0029】
送達デバイス記憶装置は、不揮発性記憶装置として実装可能である。送達デバイス記憶装置に記憶されたデータは、薬物送達デバイスがオフにされているときでも存在することができる。薬物送達デバイスが、持ち運び可能な薬物送達デバイスとして実装される場合には、オフにすることにより、電力消費量を削減することができる。薬物送達デバイスがオンにされたとき、送達デバイス記憶装置に記憶されたデータに基づき、たとえば送達デバイス記憶装置に記憶されたダウンリンクデータおよび/または排出もしくは投薬の少なくとも1つのパラメータに基づき、駆動機構の自動的な制御、調整、または較正を実施することができる。典型的には、送達デバイスプロセッサは、送達デバイス記憶装置にデータを書き込み、送達デバイス記憶装置からそれぞれのデータを読み取るように動作可能である。駆動機構の自動的または自動式の制御、調整、もしくは較正は、送達デバイスプロセッサによってトリガすることができる。
【0030】
別の例によれば、薬物送達デバイスは、患者識別装置をさらに含む。患者識別装置は、送達デバイスプロセッサおよび送達デバイスインターフェースのうちの少なくとも1つに接続される。患者識別装置は、送達デバイスプロセッサと送達デバイスインターフェースの両方に接続することができる。患者識別装置は、薬物送達デバイスを使用する患者を識別するように動作可能である。
【0031】
患者識別装置は、患者識別子を生成し、この患者識別子をアップリンクデータに組み込むようにも動作可能である。このために、患者識別装置は、たとえば送達デバイスプロセッサによって提供されたアップリンクデータを修正し、修正済みアップリンクデータを送達デバイスインターフェースに転送するようにも動作可能である。修正済みアップリンクデータは、患者識別装置によって識別された患者の身元情報に関する情報を含む。
【0032】
別の例では、患者識別装置は、患者識別装置によって実施された患者識別手順に応答して、患者識別子を生成するように動作可能である。患者識別装置によって患者識別子が生成されたとき、患者識別装置は、送達デバイスプロセッサおよび送達デバイスインターフェースのうちの少なくとも1つに、患者識別子を送信するように動作可能であってよい。患者識別子を受信するそれぞれの構成要素またはエンティティ、すなわち送達デバイスプロセッサおよび/または送達デバイスインターフェースは、次いで、患者識別子を処理し、患者識別子をアップリンクデータに組み込むように動作可能である。
【0033】
患者識別装置は、薬物送達デバイスの外部からアクセス可能であってよい。患者識別装置は、薬物送達デバイスのハウジングに取付け可能である。また、患者識別装置は、ハウジングに一体化されるか、ハウジングの内側に位置してもよいが、ハウジングの外部からアクセス可能であってよい。患者識別装置は、多くの異なるやり方で実装可能である。患者識別装置は、典型的には、ディスプレイ、タッチスクリーン、ボタンもしくはダイヤル、センサ、たとえば指紋センサ、光学センサ、カメラ、生物測定スキャナなどのうちの少なくとも1つを含む。
【0034】
患者識別装置の特定の実装形態に応じて、ユーザは、ユーザID、パスフレーズもしくはパスワード、またはコードを入力するように促されることがある。コードは、単純な数字または文字のコードであってよい。コードは、バーコードなどの光学コードとして、またはデータ行列コードなどの2次元コードパターンとして提供されることも可能である。このために、患者識別装置は、視覚的コードをスキャンするように動作可能なスキャナを含んでよい。
【0035】
患者識別装置は、光学コード、磁気コード、または電磁コードを読み取るように動作可能なコードリーダをさらに含んでよい。ここで、患者識別装置は、ユーザによって提供される、薬物送達デバイスの各ユーザに対して一意のNFCまたはRFIDの読取り可能コードとの間で、NFC通信リンクを確立するように動作可能なRFIDリーダまたは近距離無線通信(NFC)デバイスなどの無線周波数リーダを含んでよい。
【0036】
患者識別装置を用いると、薬物送達デバイスは、この薬物送達デバイスを実際に使用する特定のその患者向けに個別化することができる。患者識別子をアップリンクデータに組み込み、このアップリンクデータを通信デバイスに送信することにより、アップリンクデータを、患者識別子に割り当てられた特定の患者向けに処理することができる。その結果、患者固有のアップリンクデータの送信に応答して通信デバイスから受信したダウンリンクデータも、患者固有にすることができる。こうして、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータ、および/または駆動機構の制御、調整、もしくは較正を、患者識別装置によって識別された特定の患者に適合させることができる。患者識別子がアップリンクデータに組み込まれており、薬物送達デバイスの駆動機構に対する患者固有の排出または投薬のパラメータを、ダウンリンクデータから導き出すことができるので、患者固有の情報を薬物送達デバイスに記憶する必要はない。こうして、薬物送達デバイス自体を、データ保護規定に容易に準拠させることができる。
【0037】
さらに、患者識別装置、ならびに通信デバイスとのアップリンクおよびダウンリンクのデータ送信により、薬物送達デバイスおよび/またはその駆動機構の、患者固有の個々の設定、制御、調整、および較正が可能になる。こうして、1つの同じ薬物送達デバイスを、たとえば同じ家に住み、かつ/または薬物送達デバイスを共有している異なる人たちによって、頻繁に使用することでき、または共有することができる。たとえば、糖尿病治療法では、処方に基づき患者が使用することができる様々な種類のインスリン、たとえば即効性インスリン、持続性インスリン、GLP1受容体作動薬、およびインスリンとGLP1受容体作動薬との混合物が存在する。家庭内に、糖尿病治療法を必要とする患者が2人以上いることがあり、したがって、1人の患者の環境内に、異なる医薬品が同時に存在する場合がある。ここに提示する薬物送達デバイスを用いると、誤った医薬品を使用してしまうことから患者を本質的に保護することができる。ここに説明する、用量設定機構を正しい治療に自動的に適合させることは、誤った用量を摂取することから患者を保護することになる。
【0038】
さらなる例では、患者識別装置は、送達デバイスプロセッサに接続可能である。送達デバイスプロセッサは、薬物送達デバイスを実際に使用する人または患者の身元情報を確認するように動作可能であってよい。このために、送達デバイスプロセッサおよび患者識別装置は、互いに通信するように動作可能であってよい。ユーザにより行われる用量設定または用量投薬の動作が、送達デバイスプロセッサによって実際に処理および実行される前に、送達デバイスプロセッサは、薬物送達デバイスを実際に操作している人の身元情報を要求するように動作可能であってよい。
【0039】
こうして、送達デバイスプロセッサは、患者識別手順が患者識別装置によって実施および実行されることをトリガするように動作可能であってよい。患者が、患者識別手順を正常に終えると、送達デバイスプロセッサは、駆動機構を解放し、かつ/または薬物排出もしくは薬物の投薬の手順をトリガするように動作可能であってよい。一例では、患者識別手順は、患者識別子を生成し、この患者識別子を、たとえば送達デバイス記憶装置に記憶された患者識別子と比較することを含む。
【0040】
実際に生成された患者識別子が、送達デバイス記憶装置に前に記憶された患者識別子と一致する場合には、このことは、薬物送達デバイスおよび駆動機構が、薬物送達デバイスを実際に使用しているその特定の患者の個々の設定、調整、および較正に合わせて実際に設定されたことがあるという確認として解釈される。患者識別装置によって実際に生成された患者識別子が、送達デバイス記憶装置に前に記憶された患者識別子と一致しない別の状況では、患者識別手順は、患者識別子をアップリンクデータに組み込み、通信デバイスに対するアップリンクデータの送信をトリガし、通信デバイスからダウンリンクデータを受信する工程をさらに含んでよい。その結果、ダウンリンクデータに基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータが修正または抽出され、それぞれのパラメータおよび患者の個々の設定を送達デバイス記憶装置に記憶することができ、薬物送達デバイスを実際に使用する患者向けに、薬物送達デバイス全体を個々に設定および構成することができる。
【0041】
別の例では、送達デバイスプロセッサは、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを処理するようにさらに構成される。送達デバイスプロセッサは、生理学的パラメータまたは環境的パラメータのうちの少なくとも1つに基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するようにさらに構成され、かつ/またはそのように動作可能である。生理学的パラメータまたは環境的パラメータは、様々なやり方で提供可能である。生理学的パラメータまたは環境的パラメータは、たとえば薬物送達デバイスのユーザインターフェースを介したユーザ入力によって取得可能である。さらに、生理学的パラメータまたは環境的パラメータは、通信デバイスによって提供可能である。生理学的パラメータまたは環境的パラメータは、通信デバイスから受信するダウンリンクデータに組み込まれる。さらに、生理学的パラメータまたは環境的パラメータは、薬物送達デバイス自体によって収集、判定、または計測することができる。代替として、生理学的パラメータまたは環境的パラメータは、外部のデバイスまたはエンティティによって取得、判定、または測定され、送達デバイスインターフェースまたは別個のインターフェースを介して薬物送達デバイスに送信される。
【0042】
生理学的パラメータは、以下のパラメータ、すなわち体温、血圧、血糖レベル、心拍、血液酸素飽和度などのうちの少なくとも1つとすることができる。環境的パラメータの例は、外気温、湿度、大気圧、太陽放射などのうちの少なくとも1つを含む。
【0043】
生理学的パラメータまたは環境的パラメータのうちの少なくとも1つは、送達デバイスプロセッサによって直接処理することができる。生理学的パラメータまたは環境的パラメータに応じて、送達デバイスプロセッサは、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整もしくは修正するように動作可能である。代替として、生理学的パラメータまたは環境的パラメータが薬物送達デバイスにおいて提供される場合、たとえば生理学的パラメータまたは環境的パラメータが、薬物送達デバイスに入力されるか、薬物送達デバイスによって実際に測定される場合には、生理学的パラメータおよび/または環境的パラメータも、アップリンクデータに含めることができ、したがって通信デバイスに送信することができる。次いで、生理学的パラメータまたは環境的パラメータに基づく排出または投薬の少なくとも1つのパラメータの調整もしくは修正を、通信デバイスによって、または通信デバイスと通信するように動作可能な何らかの他の外部データ処理デバイスによって実施することができる。
【0044】
さらなる例では、薬物送達デバイスは、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを測定するように構成されたセンサアセンブリを含む。センサアセンブリは、少なくとも1つの生理学的パラメータおよび/または環境的パラメータを送達デバイスプロセッサに送信するようにさらに構成される。特に、センサアセンブリは、少なくとも1つの生理学的パラメータおよび/または環境的パラメータを、薬物送達デバイスの送達デバイスインターフェースに送信するように動作可能であってよく、またはそのように構成されてよい。
【0045】
代替としてまたは追加的に、センサアセンブリは、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを、通信デバイスに直接送信するように動作可能であってよい。センサアセンブリは、たとえば通信デバイスインターフェースとの、さらなるアップリンクの通信リンクを設定するように動作可能であってよく、この通信デバイスインターフェースは、送達デバイスインターフェースとセンサアセンブリのそれぞれの通信インターフェースとの両方と通信するように動作可能である。
【0046】
センサアセンブリは、薬物送達デバイスに一体化することができる。センサアセンブリは、薬物送達デバイスのハウジングの内側に配置することができる。センサアセンブリは、薬物送達デバイスのハウジングを貫通して延びるか、周囲環境に到達可能なセンサを含んでよい。センサアセンブリは、上述した所与の生理学的パラメータおよび/または環境的パラメータのうちの少なくとも1つを測定または判定するように構成される。こうして、患者が直面しているまたは置かれている瞬間的な生理学的または環境的な状況に応じて、薬物容器からの薬物の排出または投薬を、個々に適合させることができる。
【0047】
さらなる例において、容器識別装置は、機械センサ、光学センサ、静電容量センサ、磁気センサ、および電磁センサのうちの少なくとも1つ、たとえば無線周波数(RF)センサを含む。容器識別装置は、薬物容器が薬物送達デバイスのレセプタクルに配置されたときに、容器IDを示す電子識別信号を生成および送信するように動作可能である。機械センサは、薬物容器に提供された機械的コーディングに一致する機械的に符号化されたスイッチを含んでよい。薬物容器がレセプタクルに挿入されたとき、適切な機械的符号化を備える薬物容器だけが、機械センサを起動または停止するように動作可能である。機械センサは、たとえば一列にまたは2次元アレイに配置された、多数の機械的スイッチのアレイを含んでよい。このために、薬物容器は、対応する形状の機械的符号化を含んでよい。異なる薬物処方または異なる薬物濃度を収容するそれぞれの薬物容器は、典型的には、対応する機械的符号化を有する。異なる薬物処方または異なる薬物濃度を含む薬物容器は、異なる機械的符号化を含む。
【0048】
薬物容器に機械的符号化が提供される場合、薬物送達デバイスの容器識別装置は、薬物容器のこの機械的符号化と協働するように構成されかつ/またはそのように動作可能な、たとえばマイクロスイッチの形態の電気機械的スイッチを含んでよい。
【0049】
容器識別装置の光学センサは、光源と組み合わされたフォトダイオードを含んでよい。薬物容器は、対応するように配置された光透過型または光反射型のパターンもしくは部分を含んでよい。薬物容器がレセプタクルに挿入されたとき、光源から伝えられた光または電磁放射が、薬物容器に提供された光学的符号化によって遮断されるか反射されることになる。こうして、光学センサのフォトダイオードは、薬物容器に提供された光学的符号化の構造および特性に応じて、光信号を受信または検出することができる。またここで、薬物容器の光学的符号化、および光学センサは、1次元および/または2次元の視覚的符号化を可能にするように、長手方向および/または横断方向の一定の範囲を含んでよい。光学センサは、バーコードリーダを含んでよい。光学的センサは、データ行列コードなどの2次元光学コードをスキャンおよび識別するように構成されたスキャナをさらに含んでよい。
【0050】
容器識別装置の静電容量センサは、典型的には、薬物容器に取付けまたは一体化されたそれぞれの静電容量的符号化に対してかつこれによって提供される静電界を検出するように構成される。同様に、薬物容器には、容器識別装置の、対応するように構成された磁気センサによって検出可能かつ読取り可能な、磁気的符号化が装備または提供することができる。電磁センサとして実現されたとき、容器識別装置は、無線周波数信号または任意の他の周波数帯の電磁信号などの電磁放射を送信および/または受信するように特に動作可能である。ここで、薬物容器に提供される符号化は、無線信号送信するように構成された電子回路を含んでよい。薬物容器に提供された電磁的符号化は、RFIDタグまたはNFCタグのうちの1つを含んでよい。次いで、容器識別装置の電磁センサは、対応するように構成されたRFIDリーダまたはNFCリーダを含む。
【0051】
さらなる例によれば、薬物送達デバイスは、レセプタクルに配置される薬物容器を含む。薬物容器は、円筒形のバレルを有するカートリッジを含んでよく、このバレルは、穿孔可能な封止部または閉鎖部によって遠位方向に封止され、バレルに対して長手方向に可動な栓またはストッパによって近位方向に封止されている。容器IDは、バレルの外側表面に提供可能である。容器IDは、バレルの内側に埋め込まれる。容器IDは、バレルの側壁に埋め込まれるか、バレルの内側壁に位置することが可能である。代替としてまたは追加的に、容器IDは、バレルの内部容積から離れる方を向くストッパまたは栓の近位表面に提供することができる。
【0052】
容器IDは、栓またはストッパの本体に埋め込まれるか一体化されることも可能である。容器IDの実装形態の特定の種類に応じて、容器IDは、薬物容器の外側から見えることもあれば、外側からは見えないこともある。機械的符号化または光学的符号化として実現されたとき、容器IDは、典型的には外側から見える。静電容量的符号化、磁気的符号化、または電磁的符号化として実現されたとき、容器IDは見えないように薬物容器に一体化させることができる。
【0053】
さらなる例では、薬物容器は、薬物または薬剤で満たされた可撓性のバッグまたはパウチを含む。薬物または薬剤は、薬物容器の内部容積の内側に液体または凍結乾燥の形態で提供可能である。薬物容器がレセプタクルの内側に、したがって薬物送達デバイスの内側に簡単に組み付けられるとき、薬物送達デバイスは、通信デバイスと前もって通信しなくても、薬物容器の設定、および/または投薬もしくは排出のために備え、用意することができる。
【0054】
さらなる態様において、本開示は、上述した薬物送達デバイスを含む薬物送達システムに関する。薬物送達システムは、通信デバイスをさらに含む。通信デバイスは、通信デバイスインターフェースを含む。通信デバイスインターフェースは、薬物送達デバイスの送達デバイスインターフェースから、アップリンクデータを受信するように構成され、またはそのように動作可能である。通信デバイスインターフェースは、ダウンリンクデータを送達デバイスインターフェースに送信するようにさらに構成される。
【0055】
通信デバイスは、通信デバイスインターフェースに接続された通信デバイスプロセッサをさらに含む。通信デバイスプロセッサは、a)アップリンクデータから、ダウンリンクデータの少なくとも一部分を生成し、かつ/またはb)アップリンクデータの少なくとも一部分を、ネットワークを介して外部データベースに送信し、典型的には同じネットワークを介して、外部データベースからダウンリンクデータの少なくとも一部分を受信するように動作可能である。
【0056】
こうして、通信デバイスは、アップリンクデータからダウンリンクデータを生成し、かつ/または薬物送達デバイスから受信したアップリンクデータを外部データベースに送信し、かつそれに応答した外部データベースからダウンリンクデータを受信するように動作可能である。通信デバイスプロセッサまたは外部データベースによってアップリンクデータを処理することにより、薬物送達デバイスのデータ処理能力を単純化することができる。一例では、薬物送達デバイスは、レセプタクルに提供された薬物容器の識別と、通信デバイスへの容器IDの送信とに限定することができる。
【0057】
排出または投薬の少なくとも1つのパラメータの調整もしくは修正、またはさらに生成は、通信デバイスプロセッサまたは外部データベースのうちの1つによって行われる。したがって、薬物送達デバイスの計算能力を最小限に抑えることができる。このことは、薬物送達デバイスの製造およびメンテナンスのコスト削減を促進することができる。さらに、薬物送達デバイスから通信デバイスおよび/または外部データベースにデータ処理論理をシフトすることは、薬物送達デバイスのソフトウェアアップデートの実行を回避することを促進する。したがって、ソフトウェアアップデートを全く必要なくすることができるので、薬物送達デバイスの寿命を延長することができる。
【0058】
薬物送達デバイスが患者識別装置を備える場合、および患者識別子がアップリンクデータに組み込まれるとき、通信デバイスプロセッサおよび外部データベースのうちの少なくとも1つは、この患者識別子に応じて、ダウンリンクデータを処理し、それを生成または修正するように動作可能である。こうして、患者識別装置によって提供された患者識別子に応じて、ダウンリンクデータを個別化することができる。
【0059】
別の例では、通信デバイスは、通信デバイスプロセッサおよび通信デバイスインターフェースのうちの少なくとも1つに接続された患者識別装置を含む。患者識別装置は、通信デバイスおよび薬物送達デバイスのうちの少なくとも1つを使用する患者を識別するように動作可能である。通信デバイスの患者識別装置は、患者識別子を生成し、この患者識別子をアップリンクデータに組み込むか、この患者識別子を通信デバイスプロセッサに送信するように動作可能である。
【0060】
通信デバイスおよび薬物送達デバイスのうちの1つのみに患者識別装置を設けることが、全般的に考えられる。薬物送達デバイスに患者識別装置が設けられる場合には、通信デバイスに患者識別装置はなくてよい。通信デバイスに患者識別装置が装備および提供される場合には、薬物送達デバイスに患者識別装置はなくてよい。また、通信デバイスと薬物送達デバイスの両方が、患者識別装置を備えることも考えられる。全般的に、通信デバイスの患者識別装置は、薬物送達デバイスに関して上述した患者識別装置と等しく、または同様に装備することができる。薬物送達デバイスの上述した患者識別装置のすべての構成、利益、および機能は、通信デバイスの患者識別装置に等しく適用される。
【0061】
通信デバイスは、内蔵された通信デバイスプロセッサによって、患者識別子をローカルに処理するようにも動作可能である。ここで、通信デバイスプロセッサは、患者識別子に基づき、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを生成または修正するように動作可能であってよい。代替としてまたは追加的に、通信デバイスは、患者識別子を外部データベースに送信するように動作可能であってよい。次いで、外部データベースは、患者識別子を適宜処理するように動作可能である。ここで、外部データベースは、患者識別子に基づき、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを生成または修正するように動作可能であってよい。
【0062】
さらなる例によれば、通信デバイスプロセッサおよび通信デバイスインターフェースは、患者検索要求を外部データベースに送信し、患者検索要求に応答した外部データベースから患者固有のデータセットを受信するように動作可能である。患者検索要求は、少なくとも患者識別子を含む。この例では、通信デバイス自体が、患者識別子に基づき、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを修正するように動作可能であることが意図される。患者検索要求に含まれた患者識別子に基づき、通信デバイスは、外部データベースから患者固有のデータセットを受信する。当然ながら、通信デバイスと外部データベースとの間の通信は、認証に基づく。通信デバイスは、外部データベースと通信し、外部データベースからデータを受信するために、最初に認証されなくてはならない。このために、典型的には、従来の認証の方式および方法が適用される。
【0063】
患者検索要求を外部データベースに送信し、それに応答した患者固有のデータセットを受信することにより、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを通信デバイスが修正できるようになる。これにより、通信デバイス、特に通信デバイスプロセッサは、駆動機構を制御、調整、および/または較正できるようになる。その結果、通信デバイスプロセッサは、患者固有のデータセットを処理し、この患者固有のデータセットから、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを導き出すもしくは修正するように動作可能であってよい。次いで、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータが、薬物送達デバイスに送信されるダウンリンクデータに組み込まれる。
【0064】
通信デバイスは、容器IDの少なくとも一部分、アップリンクデータの少なくとも一部分、ダウンリンクデータの少なくとも一部分、および/または患者固有のデータセットの少なくとも一部分のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を記憶するように動作可能な通信デバイス記憶装置をさらに含んでよい。典型的には、通信デバイス記憶装置は、外部データベースから受信した、または通信デバイスプロセッサによって生成された患者固有のデータセット全体、およびダウンリンクデータ全体を記憶するように動作可能であり、そのように構成される。
【0065】
通信デバイス、特に通信デバイス記憶装置は、薬物送達システムおよび/または薬物送達デバイスを使用することが可能でかつ/またはそれを認められた異なる患者に属する多数の患者固有のデータセットを記憶するように動作可能であってよい。
【0066】
薬物送達システム、特に通信デバイスは、複数または多数の薬物送達デバイスと通信するように動作可能であってよい。その結果、第1の薬物送達デバイスから受信したアップリンクデータは、それぞれの薬物送達デバイスの識別子も含んでよい。それぞれのダウンリンクデータは、多数の薬物送達デバイスのうち、ダウンリンクデータの対象である薬物送達デバイスを示すそれぞれのデバイス識別子を含んでよい。こうして、1つの同じ通信デバイスを、多数の薬物送達デバイスによって共有することができる。たとえば同じ家に住み、それぞれが自分の薬物送達デバイスを利用している複数の人が、共通の通信デバイスを使用して、たとえばユーザの要求に応じて、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整、修正、もしくは抽出し、かつ/またはそれぞれの薬物送達デバイスを制御、調整、もしくは較正することができる。
【0067】
さらなる例では、通信デバイスの通信デバイスプロセッサおよび通信デバイスインターフェースは、a)患者固有のデータセットの少なくとも一部分を、送達デバイスインターフェースに送信されるダウンリンクデータに組み込むか、b)患者固有のデータセットの少なくとも一部分を処理し、薬物送達デバイスの駆動機構の排出または投薬のパラメータのうちの少なくとも1つを調整または修正し、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを、送達デバイスインターフェースに送信されるダウンリンクデータに組み込むように動作可能である。
【0068】
患者固有のデータが、少なくとも部分的にまたは全体的にダウンリンクデータに組み込まれるとき、送達デバイスプロセッサは、典型的には、ダウンリンクデータから患者固有のデータを抽出および処理し、駆動機構を適宜制御、調整、または較正するように動作可能である。代替として、通信デバイスプロセッサが、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータをすでに調整または修正しており、それぞれの排出または投薬のパラメータがダウンリンクデータに組み込まれているときには、送達デバイスプロセッサは、駆動機構を起動する前または起動されたとき、排出または投薬のパラメータを受信、抽出、および展開するだけでよい。このような状況では、患者固有のデータを送達デバイスプロセッサによって処理する必要がある構成に比べて、送達デバイスプロセッサの機能およびデータ処理能力を低減することができる。
【0069】
さらなる例では、送達デバイスプロセッサは、レセプタクルにおける薬物容器の交換、またはレセプタクルの中へのその挿入を検出するように動作可能である。送達デバイスプロセッサは、薬物容器の交換または薬物容器の挿入をこのように検出したことに応答して、通信デバイスを介した外部データベースへの患者検索要求の送信をトリガするようにさらに動作可能である。薬物送達デバイス、ハウジング、および/またはレセプタクルには、スイッチまたはセンサを設けることができ、このスイッチまたはセンサにより、レセプタクルにおける薬物容器の交換、またはレセプタクルの中への薬物容器の挿入を検出することができる。スイッチまたはセンサは、送達デバイスプロセッサに接続される。薬物容器の交換または薬物容器の挿入が検出されたとき、患者検索要求が外部データベースに送信される。
【0070】
したがって、新しい薬物容器をレセプタクル内に挿入するとき、駆動機構は自動的に調整または較正される。こうして、たとえば第2の薬物容器がレセプタクルに挿入されて、第1の薬物容器と置き換わり、第2の薬物容器が、第1の薬物とは薬学的有効成分の濃度が異なる薬物を収容している場合に、患者検索要求は、少なくとも薬物容器のIDを含む。前に識別された容器IDは、アップリンクデータに組み込まれる。場合により、患者識別子が、患者識別装置から検索されるか、患者識別子が、送達デバイス記憶装置から読取りまたは検索される。患者識別子も、アップリンクデータに組み込むことができる。
【0071】
次いで、アップリンクデータが通信デバイスに送信される。次いで、通信デバイスは、受信したアップリンクデータからダウンリンクデータを生成してもよく、またはアップリンクデータまたはその一部分を、外部データベースに転送してもよい。アップリンクデータが外部データベースによって受信されると、ダウンリンクデータが生成または修正され、したがって通信デバイスに送信され、さらに薬物送達デバイスに向けて送信される。
【0072】
外部データベースに対する患者検索要求の送信をトリガすることに加えて、またはその代わりに、送達デバイスプロセッサは、薬物容器の交換またはレセプタクル内への薬物容器の挿入を検出したことに応答して、単にアップリンクデータの送信およびダウンリンクデータの受信をトリガするように動作可能であってよい。薬物容器の交換または薬物容器の挿入が薬物送達デバイスによって検出されたら、駆動機構は、新しい薬物容器の容器IDが識別されるまで、デフォルトで遮断される。
【0073】
たとえば、第1の薬物容器と置き換わる第2の薬物容器の容器IDが、第1の薬物容器の容器IDと同一である場合には、容器識別装置は、アップリンクデータおよび/またはダウンリンクデータの送受信がなくとも、すぐに駆動機構を解放するように動作可能であってよい。
【0074】
第2の薬物容器の容器IDが、第1の薬物容器の容器IDとは異なる場合には、薬物容器識別装置および送達デバイスプロセッサのうちの少なくとも1つが、アップリンクデータおよびダウンリンクデータのそれぞれ送信および受信をトリガするように動作可能である。その後に使用される薬物容器の容器IDが同一でない場合には、駆動機構の自動的な制御、調整、および/または較正、したがって駆動機構の排出もしくは投薬の少なくとも1つのパラメータの調整または修正がトリガされることになる。
【0075】
さらなる態様によれば、本開示は、薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法にも関する。特に、この方法は、薬物送達デバイスの駆動機構の自動的なまたは自動式の制御、調整、および/または較正を含み、それらを実現する。ここで、薬物送達デバイスは、薬物容器を収容するように構成されたレセプタクルを含む。薬物容器は、容器IDを含む。容器IDは、少なくとも薬物容器の内容物を示す。
【0076】
薬物送達デバイスは、薬物容器と動作可能に係合可能な駆動機構をさらに含む。駆動機構は、薬物容器から少なくともある用量の薬物または薬剤を排出または投薬するように構成されるか、そのように動作可能である。方法は、薬物容器がレセプタクルに配置されたときに、容器IDを判定または検出する工程を含む。特に、方法は、薬物容器がレセプタクルにおいて交換またはレセプタクルの中に挿入されたときに、容器IDを判定または検出する工程を含む。方法は、薬物送達デバイスから通信デバイスにアップリンクデータを送信する工程をさらに含み、場合により、方法は、通信デバイスから外部データベースにアップリンクデータを送信する工程を含む。薬物送達デバイスから通信デバイスに送信された、および/または通信デバイスから外部データベースに送信されたアップリンクデータは、少なくとも容器IDを含む。場合により、アップリンクデータは、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを含む。さらに場合により、アップリンクデータは患者識別子を含む。
【0077】
方法は、少なくともアップリンクデータに基づき、ダウンリンクデータを生成または修正し、ダウンリンクデータを薬物送達デバイスに送信する工程をさらに含む。ダウンリンクデータまたはその少なくとも一部分は、送達デバイスプロセッサ、通信デバイスプロセッサ、または外部データベースのうちの少なくとも1つによって生成または修正される。
【0078】
方法は、ダウンリンクデータを処理し、ダウンリンクデータに基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正する工程をさらに含む。排出または投薬の少なくとも1つのパラメータの調整もしくは修正は、通信デバイスプロセッサおよび送達デバイスプロセッサのうちの1つによって行われる。代替として、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、ダウンリンクデータの処理時に、このダウンリンクデータから抽出される。排出または投薬の少なくとも1つのパラメータをダウンリンクデータから抽出することは、送達デバイスプロセッサまたは通信デバイスプロセッサによって行われる。
【0079】
少なくとも容器IDをアップリンクデータに組み込むこと、アップリンクデータを送信すること、およびそれに応答したダウンリンクデータを受信することにより、薬物送達デバイスの電子実装形態およびデータ処理実装形態を単純化することができる。
【0080】
さらなる例では、方法は、薬物送達デバイスを使用する患者を識別し、この患者を示す患者識別子を生成する工程も含む。患者識別子は、アップリンクデータに組み込まれる。次いで、患者識別子に基づき、患者固有のデータセットが外部データベースから検索され、患者固有のデータセットの少なくとも一部分が、ダウンリンクデータに組み込まれる。代替として、駆動機構の排出または投薬のパラメータの少なくとも1つが、患者固有のデータセットに基づき調整または修正される。患者の識別、および患者識別子の生成は、薬物送達デバイスの患者識別装置によって行われるか、通信デバイスの患者識別装置によって行われる。患者識別を行うことにより、薬物送達デバイスの患者固有の設定が可能になり、薬物送達デバイスの駆動機構の患者固有の制御、調整、または較正を行うことが可能になる。
【0081】
さらなる例では、方法は、少なくとも1つの生理学的または環境的なパラメータを検索または測定し、この生理学的パラメータまたは環境的パラメータを、アップリンクデータまたはダウンリンクデータのうちの1つに組み込む工程も含む。こうして、薬物送達デバイスの設定、および/または駆動機構の制御、調整、もしくは較正を、少なくとも1つの環境的パラメータまたは生理学的パラメータを考慮して行うことができる。
【0082】
上述した薬物送達デバイスおよび薬物送達システム、ならびに通信デバイスおよび外部データベースは、薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する上述した方法を実行するように特に構成される。こうして、薬物送達デバイスおよび薬物送達システムに関して説明したすべての構成、利益、および機能は、調整する方法に等しく適用され、その逆も同様である。
【0083】
さらなる態様において、本開示は、薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整するためのコンピュータプログラムにも関する。薬物送達デバイスは、薬物容器を収容するためのレセプタクルを含み、薬物容器は、少なくとも薬物容器の内容物を示す容器IDを含む。薬物送達デバイスは、薬物容器と動作可能に係合可能な駆動機構であって、薬物容器から少なくともある用量の薬物を排出または投薬するように構成された、またはそのように動作可能な駆動機構をさらに含む。
【0084】
薬物送達デバイスの送達デバイスプロセッサに導入されたとき、または通信デバイスの通信デバイスプロセッサに導入されたとき、コンピュータプログラムは、薬物容器がレセプタクルに配置されたときに、容器IDを判定または検出するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令を含む。コンピュータプログラムは、薬物送達デバイスから通信デバイスにアップリンクデータを送信するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令をさらに含み、アップリンクデータは、少なくとも容器IDを含む。コンピュータプログラムは、少なくともアップリンクデータに基づき、ダウンリンクデータを生成し、このダウンリンクデータを薬物送達デバイスに送信するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令をさらに含む。コンピュータプログラムは、ダウンリンクデータを処理し、ダウンリンクデータに基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令をさらに含む。代替として、コンピュータプログラムは、ダウンリンクデータを処理し、ダウンリンクデータから、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを抽出するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令を含む。
【0085】
全般的に、コンピュータプログラムは、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する上述した方法を実行するように構成されるか、そのように動作可能である。コンピュータプログラムは、薬物送達デバイスと通信デバイスの両方に実装され、場合により、コンピュータプログラムは、外部データベースに実装され、または実装可能である。
【0086】
コンピュータプログラムは、特に、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する上述した方法を導入または実行するように動作可能である。こうして、薬物送達デバイス、通信デバイスに関連して、さらに薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法に関連して上述したすべての構成、利益、および効果は、コンピュータプログラムに等しく適用され、その逆も同様である。
【0087】
別の態様によれば、上述した薬物送達システムの通信デバイスに実装されるように構成されたコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、通信デバイスにおいて導入、実装、または実行されたときに、薬物送達デバイス、特に送達デバイスインターフェースからアップリンクデータを受信するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令を含む。コンピュータプログラムは、ダウンリンクデータを送達デバイスインターフェースに送信するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令をさらに含む。コンピュータプログラムは、アップリンクデータからダウンリンクデータの少なくとも一部分を生成するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令をさらに含む。追加的にまたは代替として、コンピュータプログラムは、アップリンクデータの少なくとも一部分を、ネットワークを介して外部データベースに送信し、外部データベースからダウンリンクデータの少なくとも一部分を受信するように構成された、またはそのように動作可能なコンピュータ読取り可能命令を含む。
【0088】
このコンピュータプログラムは、薬物送達デバイスとの通信リンクを設定し、アップリンクデータおよび/またはダウンリンクデータを処理するために、特に通信デバイス上だけで実行されるように特化され、そのように構成される。
【0089】
こうして、通信デバイスに関して上述したすべての構成、機能、および効果は、この特定のコンピュータプログラムに等しく適用される。
【0090】
上述した薬物送達デバイス、薬物送達システム、および薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法では、インターネットおよびクラウドベースの情報へのアクセスを試みるように、通信デバイス、したがって接続されたデバイスをトリガすることができる。薬物容器に提供された薬剤は、医師によって処方された必要な薬剤および治療方針と自動的に比較される。薬物送達デバイスの用量設定機構および/または駆動機構が適合し、デバイスは、処方された方針で医薬品の送達を開始する。したがって、患者は、さらに介入することなく、または修正措置をとる必要なしにサポートされることになる。治療情報は、接続されたデバイスまたは通信デバイスからインターネットに向けて、クラウドベースの患者プロファイル内に記憶およびアップロードされ、このプロファイルは、患者および医療従事者によってアクセスすることができる。
【0091】
たとえば、手術後の疼痛治療法では、一定の依存性および誤用の可能性があるオピオイドの使用など、非常に強力な疼痛医薬品が存在する。患者に対して治療が行き届いた状態に保ち、誤用を回避するために、用量設定方針を正しく制御すること、および場合により医師が治療を遠隔で制御することが必要になることがある。医薬品およびデバイス用量設定の情報は、通信デバイスまたは接続されたデバイスを介してオンラインで送信され、医師と遠隔で対話することにより、リアルタイムで治療を適合させることができる。
【0092】
このような安全な構成は、薬物容器の設計要素と、NFCラベルなどの電子的な容器IDと、対応する容器識別装置、たとえばデバイスにおいて制御または通信の機構を開始するNFCリーダを特徴とする薬物送達デバイスとの上述した組合せによって、提供することができる。さらに、薬物送達デバイスおよび/または通信デバイスの、インターネットへの接続性により、個別化されたデータベースに接続し、治療情報および治療法スケジュールについての更新済み情報を双方向に交換することができるようになる。
【0093】
こうして、複雑な治療方針向けに設計された単一のデバイス、たとえばウェアラブル注射器に対する、異なる医薬品の挿入の自動的な認識を有効にすることができる。医薬品の投与が、同時に、交互に、または後に続けて行われなければならない治療法が存在する。たとえば、高血圧の併用治療法では、血圧降下薬物が、レニン・アンジオテンシン系を阻止および刺激する薬物、またはカルシウム拮抗薬、または利尿薬と組み合わされる。
【0094】
糖尿病治療法では、インスリンと、その拮抗薬であるグルカゴンとの組合せが存在して、閉ループ系において血糖レベルの良好な循環を可能にすることがある。別の構成では、1つのデバイスに2つの薬物の組合せが存在することがあり、その1つは、インスリンの継続的な基礎送達のための即効性インスリンであり、第2の薬物リザーバにあるもう1つは、1日のうちの特定の時点で所定の用量のGLP1受容体作動薬を送達するためのものである。
【0095】
癌治療においてやがて登場する他の治療法も、複数の薬物を組み合わせて使用して、先進的な治療法を可能にする可能性がある。たとえば、化学療法剤を用いた治療の後に、白血球の生成を刺激するための薬剤を用いた治療を行う場合がある。
【0096】
上記の例と同じく、一次薬物容器に提供された特定の医薬品識別子、たとえばRFIDタグ、NFCラベル、データ行列コード、または機械的機能は、デバイスの機能またはデータ処理をトリガすることができる。異なる原理の電子的、光電子的、または機械的な差別化が、1つの薬物デバイス併用製品に適用されて、干渉を回避してよい。血圧、心拍、または血糖レベルなどの身体機能を測定する特定の身体装着型センサを用いて、デバイスに対してフィードバックを提供し、薬物送達デバイスの用量設定および投薬機能を、用量設定アルゴリズムに応じて制御および調整し、それにより閉ループシステムが定義されることにより、相乗効果を生じさせることができる。
【0097】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書で用いられる場合、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態では、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、かつ/あるいはペプチド、タンパク質、多糖、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモン、もしくはオリゴヌクレオチド、または上述した薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、糖尿病もしくは糖尿病に伴う合併症、たとえば、糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害、たとえば、深部静脈血栓塞栓症もしくは肺血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチの治療および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病に伴う合併症、たとえば、糖尿病性網膜症の治療および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)もしくはそのアナログもしくは誘導体、もしくはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4またはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4のアナログもしくは誘導体を含む。
【0098】
インスリンアナログは、たとえば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0099】
インスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0100】
エキセンジン-4は、たとえば、H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2の配列のペプチドであるエキセンジン-4(1-39)を意味する。
【0101】
エキセンジン-4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H-(Lys)4-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)5-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39);もしくは
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
(ここで、基-Lys6-NH2が、エキセンジン-4誘導体のC-末端に結合していてもよい);
【0102】
もしくは、以下の配列のエキセンジン-4誘導体:
desPro36エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010)、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14 Asp28 Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5 desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Lys6-desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(S1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン-4誘導体の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物
から選択される。
【0103】
ホルモンは、たとえば、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンである。
【0104】
多糖は、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化形たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩である。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。
【0105】
抗体は、基本構造を共有するイムノグロブリンとしても公知の球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位はイムノグロブリン(Ig)単量体(Ig単位のみを含む)であり、分泌型抗体は、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもありうる。
【0106】
Ig単量体は、4本のポリペプチド鎖;システイン残基間のジスルフィド結合によって結合した2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖からなる「Y」字型の分子である。各重鎖は約440アミノ酸長であり、各軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化する鎖内ジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインで構成される。これらのドメインは、70~110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に従って異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的なイムノグロブリン折り畳み構造を有する。
【0107】
α、δ、ε、γ、およびμで表される5タイプの哺乳動物Ig重鎖が存在する。存在する重鎖のタイプにより抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体中に見出される。
【0108】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)とを有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つのイムノグロブリンドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0109】
哺乳動物では、λおよびκで表される2タイプのイムノグロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は、2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211~217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を含み、哺乳動物の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0110】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)について3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0111】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化により、Igプロトタイプが3つのフラグメントに切断される。1つの完全なL鎖と約半分のH鎖とをそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズは同等であるが鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶化可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH-H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合を、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域を融合して、単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することができる。
【0112】
薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類、たとえば、Na+、もしくはK+、もしくはCa2+から選択されるカチオン、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1~R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1~C6アルキル基、場合により置換されたC2~C6アルケニル基、場合により置換されたC6~C10アリール基、または場合により置換されたC6~C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0113】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0114】
本開示の範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えてよいことが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用される任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでないことに留意すべきである。
【0115】
以下では、薬物送達デバイス、薬物送達システム、および薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法の様々な例が、図面を参照しながら詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】薬物送達システムの一例のブロック図である。
図2】薬物送達システムの別の例のブロック図である。
図3】外部データベースを示す図である。
図4】薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0117】
図1において、薬物送達システム100の一例が概略的に示してある。薬物送達システム100は、薬物送達デバイス20を含む。薬物送達デバイス20は、ハウジング21を含む。薬物送達デバイス20は、薬物容器10を受けかつ/または収容するように構成されたレセプタクル23をさらに含む。薬物容器10は、容器ID52を備える。薬物送達デバイス20は、薬物容器の内部と流体移送係合するように構成された出口44をさらに含む。薬物容器10は、薬物11または薬剤を収容している。薬物11は、液体薬物として、薬物容器10の内部に提供することができる。図1および図2の図において、薬物容器10は、長手方向に延びている管形状のバレル12を有するカートリッジとして示してある。バレル12、したがって薬物容器10は、封止部13が設けられた遠位端を含む。薬物容器10は、長手方向に変位可能なストッパ14または栓によって閉鎖された反対側の近位端を含む。封止部13とストッパ14との間に提供される内部容積は、液体薬物で完全に満たすことができる。出口44と薬物容器10の内部容積との間の流体移送接続が確立されると、ストッパ14が遠位方向に、したがって封止部13に向かって押しやられて、ある量の、たとえば用量の薬物11をバレル12から排出できるようになる。
【0118】
ストッパ14を遠位方向または投薬方向に駆動または付勢するために、薬物送達デバイス20は、駆動機構40を含む。駆動機構40は駆動体42を含み、この駆動体42は、ストッパ14に遠位方向の圧力をかけて、用量排出中または用量投薬中に、同ストッパを遠位方向に駆動するように構成されたプランジャまたはピストンロッドとして実現可能である。
【0119】
ここに示してある駆動機構40および薬物容器10は、薬物送達デバイスから薬物を排出または投薬させることができる多様な薬物容器および投薬もしくは駆動の機構の単なる例示である。他の例では、駆動機構40は、蠕動ポンプなどのポンプを含んでよい。代替として、駆動機構40は、噴霧により薬物を排出または投薬するように構成された噴霧機構として実現することができる。薬物容器10は、液体薬剤で満たされた、または凍結乾燥薬物で満たされた、可撓性のバッグまたは可撓性のパウチを含んでよい。可撓性のまたは変形可能な薬物容器は、ポンプとして実現された駆動機構40と連結されるように特に構成される。ここで、液体薬剤を吸引力により薬物容器10から引き抜くことができる。
【0120】
また、薬物容器10は、エアロゾルを生成できるように構成された、または噴霧できるように構成された、粉末状の薬物または薬剤を含むこともできる。
【0121】
薬物容器10と、対応する駆動機構40との組合せに応じて、薬物送達デバイス20を注射デバイスとして、たとえばペン型注射器として、注射ポンプもしくは注入ポンプとして、または吸入器として、構成または提供することができる。
【0122】
したがって、出口44は、注射カニューレまたは注入管に対する流体移送接続のための注射ニードルまたはコネクタであってよい。代替として、たとえば薬物送達デバイス20が吸入器として実現されたとき、出口44はマウスピースであってよい。
【0123】
薬物送達デバイス20は、薬物送達デバイスのレセプタクル23の内側に薬物容器10が配置されるときに、この薬物容器10に提供された容器ID52を検出および/または識別するように構成された容器識別装置50を含む。容器ID52は、容器識別装置50によって検出および読取りすることができる機械的、光学的、静電容量的、磁気的、および/または電磁的な符号化のうちの1つを含む。容器識別装置50は、薬物送達デバイス20の、少なくとも送達デバイスインターフェース24と通信するようにさらに構成される。こうして、容器識別装置50によって検索または検出された容器ID52を、送達デバイスインターフェース24に送信または転送することができる。
【0124】
送達デバイスインターフェース24は、アップリンクデータULを通信デバイス60に送信するように構成される。アップリンクデータULは、容器識別装置50から取得済みの少なくとも容器ID52を含む。送達デバイスインターフェース24は、通信デバイス60に対するアップリンクデータULの送信に対する返信として通信デバイス60からダウンリンクデータDLを受信するようにさらに構成される。
【0125】
薬物容器10と動作可能に係合可能な駆動機構40は、たとえば送達デバイスインターフェース24から受信したダウンリンクデータDLに基づき、薬物容器10から少なくともある用量の薬物11を排出または投薬するように構成される。こうして、送達デバイスインターフェースは、ダウンリンクデータDLを受信したとき、駆動機構40を制御、調整、または較正するように構成される。
【0126】
典型的に、薬物送達デバイス20は、送達デバイスインターフェース24に接続された送達デバイスプロセッサ22を含み、この送達デバイスプロセッサ22は、通信デバイス60から、したがって送達デバイスインターフェース24から受信したダウンリンクデータDLに基づき、駆動機構40を制御するようにさらに動作可能である。
【0127】
特に送達デバイスプロセッサ22は、送達デバイスインターフェース24から取得済みのダウンリンクデータDLを処理し、ダウンリンクデータDLに基づき、駆動機構40の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するように動作可能である。代替として、送達デバイスプロセッサ22は、駆動機構40の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを、ダウンリンクデータDLから抽出するように動作可能である。
【0128】
ダウンリンクデータのデータ構造のいくつかの選択肢が存在する。1つの選択肢は、駆動機構によって処理可能な排出または投薬のパラメータに変換またはマッピングする必要のある薬物容器固有の情報を、ダウンリンクデータDLが含むことである。このために、送達デバイスプロセッサ22は、ダウンリンクデータDLに基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するように構成される。
【0129】
他の例では、駆動機構40によって直接処理可能であってよい排出または投薬のパラメータが、通信デバイス60および/または送達デバイスインターフェース24から受信したダウンリンクデータDLにすでに含まれている。この場合、送達デバイスプロセッサ22は、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータをダウンリンクデータDLから抽出し、典型的には薬物容器10から薬物の用量を投薬または排出している間に、この排出または投薬のパラメータを駆動機構40に転送するだけでよい。
【0130】
駆動機構に提供された、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、駆動機構40の駆動体42の移動距離または移動持続時間を規定してよい。排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、排出もしくは投薬の動きを開始すべき時点、および/または排出もしくは投薬の動きを終了すべき時点をさらに示してよい。排出または投薬のパラメータは、駆動機構40の駆動体42の駆動速度および駆動力のうちの少なくとも1つをさらに示してよい。典型的に、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、駆動機構の動作パラメータを直接示すものである。
【0131】
アップリンクデータULは、容器IDに限定することができる。たとえば外部データベース202または通信デバイス60に提供された容器IDに応じて、ダウンリンクデータDLが生成される。ダウンリンクデータDLは、識別された薬物容器10のさらなる情報を含むことができる。ダウンリンクデータDLは、薬物容器固有の補足情報、たとえば薬物または薬剤に関する情報、薬物または薬剤の中の薬学的有効成分の濃度に関する情報、薬物の耐用性に関する情報、製造日に関する情報を含んでよい。ダウンリンクデータDLは、患者に対して薬物または薬剤を投与すべき治療スケジュールに関する情報をさらに含んでよい。ダウンリンクデータDLは、治療スケジュールを示してよく、ある量の薬剤もしくは薬物、または薬学的有効成分を、駆動機構によって投薬または排出すべき時点に関する情報を含んでよい。
【0132】
一例では、アップリンクデータULは、容器IDだけを含む。通信デバイス60は、処方された治療スケジュールに準拠したそれぞれのダウンリンクデータDLを生成するように構成可能である。ここで、治療スケジュールは、通信デバイス60において、または外部データベース202によって提供することができる。たとえば、治療スケジュールが外部データベース202によって提供される場合には、通信デバイス60は、アップリンクデータULの少なくとも一部分を、ネットワーク200を介して外部データベース202に送信するように特に動作可能である。これに応答して、外部データベース202は、ネットワーク200を介して受信したアップリンクデータに基づき、ダウンリンクデータDLを通信デバイス60に送り返すように構成される。
【0133】
いくつかの例では、容器識別装置50によって提供されたアップリンクデータUL全体が、変更なしに外部データベース202に送信され、または送達デバイスインターフェース24によって提供されたアップリンクデータULの一部分のみが、データベース202にルーティングまたは送信され、アップリンクデータULの別の部分は、通信デバイス60によってローカルに処理される。したがって、ダウンリンクデータ全体または少なくともその一部分を、データベース202によって提供するか、通信デバイス60に送信することができる。通信デバイス60から薬物送達デバイス20に送信されるべきダウンリンクデータの別の部分は、通信デバイス60によってローカルに生成または処理することができる。
【0134】
通信デバイス60においてデータベース202から受信したダウンリンクデータは、たとえば薬物投与の日時、および所与の日時に患者に投与すべき薬学的有効物質の量だけを指定する送達スケジュールを含んでよい。
【0135】
通信デバイス60においてデータベース202から取得したこの情報から、通信デバイス60、特に通信デバイスプロセッサ62は、薬物送達デバイス20に固有の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを導き出すように動作可能であってよい。容器ID52は、薬物容器10に提供された薬物内の薬学的に有効な化合物の濃度をさらに示してよい。この濃度情報に応じて、通信デバイス60、特にそのプロセッサ62は、薬物濃度情報、および投与すべき薬学的に有効な化合物の総量に基づき、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを修正するように動作可能であってよい。
【0136】
一例において、第1の濃度の薬学的に有効な化合物を有する第1の薬物を収容した第1の薬物容器10が使用されるとき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータは、薬学的に有効な化合物の処方量を送達するために、駆動機構40の駆動体42を第1の距離だけ移動させなくてはならないことを規定する。
【0137】
ここで、薬学的に有効な化合物の異なる濃度、たとえばより低い濃度を有する第2の薬剤で満たされた第2の薬物容器10の第2の容器ID52に基づき、駆動機構の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータが、適宜調整または修正されることになる。薬学的に有効な化合物の必要量を投与するために、駆動体42の変位を修正しなければならず、たとえば増大させなくてはならない。排出または投与のパラメータのこのような修正を計算することは、送達デバイスプロセッサ22および通信デバイスプロセッサ62のうちの1つによって実現される。このような排出または投与のパラメータの調整または修正が、外部データベース202によって実施および実現される例も存在する。
【0138】
駆動機構40の排出または投薬のパラメータが、アップリンクデータULに基づき、通信デバイスプロセッサ62または外部データベース202によって調整または修正される状況では、送達デバイスプロセッサ22は、通信デバイス60から受信したダウンリンクデータDLから、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを抽出するだけでよい。
【0139】
駆動機構40の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータの調整または修正が、外部データベース202によって実現される場合には、外部データベース202と薬物送達デバイス20との間でアップリンクデータとダウンリンクデータの送信だけを行うように、通信デバイス60の機能を縮小することができる。いくつかの例では、通信デバイス60は、薬物送達デバイス20からアップリンクデータULを受信し、このアップリンクデータULを、変更なしに外部データベース202に転送するように動作可能である。同じまたはさらなる例では、通信デバイス60は、外部データベース202からダウンリンクデータDLを受信し、このダウンリンクデータDLを、変更なしに薬物送達デバイス20に転送するように動作可能であってよい。
【0140】
他の例では、通信デバイスは、薬物送達デバイスから受信したアップリンクデータから、少なくとも一部のまたは全部のダウンリンクデータを導き出すまたは生成するように動作可能である。他の例では、通信デバイス60は、薬物送達デバイス20から受信したアップリンクデータULの一部分を処理し、このアップリンクデータULの別の部分を、外部データベースに転送するように動作可能であり、そのように構成される。次いで通信デバイス60は、外部データベース202からダウンリンクデータDLを受信し、外部データベース202から受信したダウンリンクデータを、通信デバイス60によって生成されたダウンリンクデータDLと組み合わせるまたはそれに組み込むように、さらに動作可能である。
【0141】
薬物容器の容器IDを識別することができ、さらにアップリンクデータを生成しそれを通信デバイスに送信するように動作可能な薬物送達デバイスを含む薬物送達システムの、ここに提示したアーキテクチャは、薬物送達デバイスの駆動機構40のかなり自動化された制御、調整、または較正を実現することを目的とした、データ処理の多数の可能性を提供する。
【0142】
典型的な例では、薬物送達デバイス20は、電子回路46を含む。電子回路46は、集積電子回路として実装可能である。電子回路46は、上述した送達デバイスプロセッサ22と送達デバイスインターフェース24とを含んでよい。送達デバイスインターフェース24と送達デバイスプロセッサ22は、1つの同じチップ上か、1つの同じ集積回路上に実装可能である。
【0143】
場合により、電子回路46、したがって薬物送達デバイスは、送達デバイス記憶装置26を含む。送達デバイス記憶装置26は、不揮発性メモリとして実装可能である。送達デバイス記憶装置26は、典型的には、容器ID52の少なくとも一部もしくは全部、送達デバイスインターフェース24から通信デバイス60に送信されたアップリンクデータULの少なくとも一部もしくは全部、および通信デバイス60から受信したダウンリンクデータDLの少なくとも一部もしくは全部のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を記憶するように構成されるか、そのように動作可能である。こうして、ダウンリンクデータおよび排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを、薬物送達デバイス20にローカルに記憶することができる。これにより、通信デバイス60との通信リンクが利用不可能になった場合でも、薬物送達デバイス20の確実なフェイルセーフな動作が確保される。
【0144】
通信デバイス60は、少なくとも通信デバイスプロセッサ62と、通信デバイスインターフェース64とを含む。通信デバイスインターフェース64は、送達デバイスインターフェース24との通信リンクを設定するように構成され、そのように動作可能である。典型的には、通信デバイスインターフェース64および送達デバイスインターフェース24は、薬物送達デバイス20と通信デバイス60との間でアップリンクデータULおよびダウンリンクデータDLを送信するように動作可能な無線通信リンクを確立または設定するように構成され、そのように動作可能である。通信デバイス60と薬物送達デバイスとの間の無線通信は、Bluetooth、NFC、またはWi-Fi規格などの標準的なRF通信プロトコル、または薬物送達デバイス20と通信デバイス60との間で無線の電磁的なデータ送信を可能にする任意の他の標準的な通信プロトコルに基づいてよい。
【0145】
代替として、通信デバイス60と薬物送達デバイス20との間に有線の通信リンクを提供してもよい。
【0146】
図1に示してある薬物送達デバイスは、破線の四角で示された複数の任意選択の構成要素を含む。図1に示してあるように、送達デバイス記憶装置26は、場合により提供されるにすぎない。薬物送達デバイス20は、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを測定するように構成されたセンサアセンブリ80をさらに含んでよく、このセンサアセンブリ80は、少なくとも1つの生理学的パラメータまたは環境的パラメータを送達デバイスプロセッサ22に送信するようにさらに構成される。センサアセンブリ80は、少なくとも1つのセンサ82とセンサインターフェース84とを含む。センサインターフェース84は、少なくとも1つの生理学的または環境的なパラメータを、送達デバイスプロセッサ22または送達デバイスインターフェース24に送信するように動作可能である。
【0147】
センサアセンブリ80は、薬物送達デバイス20に一体化することができる。薬物送達デバイス20および/またはそのハウジング21は、患者の身体または皮膚に装着されるように構成可能であり、またはそうするのに好適であってよく、これは、たとえば注入ポンプの場合に該当する。センサアセンブリ80は、ハウジング21の外側に位置した、薬物送達デバイスとは別個の構成要素として提供されることも可能である。センサアセンブリ80は、少なくとも1つの生理学的または環境的なパラメータを薬物送達デバイス20に提供するために、有線接続または無線により薬物送達デバイス20に接続することができる。ここで、この少なくとも1つの生理学的または環境的なパラメータを使用して、排出または投薬の少なくとも1つのパラメータをさらに調整もしくは修正することができる。
【0148】
センサアセンブリ80は、たとえば患者の血糖レベルを示す定期的な電子信号を提供する血糖測定センサとして実装可能である。それぞれの生理学的パラメータに応じて、送達デバイスプロセッサ22は、薬剤の量、または薬物もしくは薬剤が排出もしくは投薬される送達速度を、調整または修正するように動作可能であってよい。送達デバイスプロセッサ22およびセンサアセンブリ80は、閉ループ構成に構成可能である。したがって、プロセッサ22、ひいては送達デバイスプロセッサ22によって制御される駆動機構40は、センサアセンブリ80の定期的な測定に応答して少なくとも調整または較正された状態で動作または駆動することができる。
【0149】
場合により、薬物送達デバイス20は、患者識別装置34をさらに含む。患者識別装置34は、送達デバイスプロセッサ22および送達デバイスインターフェース24のうちの少なくとも1つに接続される。上述したように、患者識別装置34は、薬物送達デバイス20を使用する患者を識別するように動作可能である。患者識別装置は、患者識別子を生成し、この患者識別子をアップリンクデータに組み込むようにさらに動作可能である。アップリンクデータULへの患者識別子の組込みは、患者識別子を受信したときに、送達デバイスインターフェース24およびプロセッサ22のうちの1つにより、さらに実施することができる。
【0150】
アップリンクデータULに患者識別子を提供することにより、通信デバイス60および/または外部データベース202から、患者固有のダウンリンクデータDLを受信することができるようになる。
【0151】
したがって、ダウンリンクデータDLは、図3に示してあるような患者固有のデータセット300を含んでよく、この患者固有のデータセットは、典型的には外部データベース202に記憶され、患者検索要求RRに応じて、通信デバイス60に提供される。患者固有のデータセット300は、典型的には、外部データベース202によって生成および提供されるダウンリンクデータDLに組み込まれる。
【0152】
こうして、患者識別子は、駆動機構の患者固有の制御、調整、および較正を可能にするとともに、薬物送達デバイス20または薬物送達システム100の患者固有の使用も可能にする。これにより、ユーザの集団に対して、1つの同じ薬物送達デバイス20および/または薬物送達システム100の使用を勧めることが、主に可能になる。これらのユーザは、薬物送達デバイス20、通信デバイス60、および薬物送達システム100のうちの少なくとも1つを共有することができる。第1のユーザが実際に薬物送達デバイス20を使用していることを患者識別装置34が認識または断定した場合には、それぞれの患者検索要求が、外部データベース202に送信される。次いで、患者固有のデータセット300がダウンリンクデータDLに組み込まれ、この患者固有のデータセットに従って、薬物送達デバイス20の動作、たとえば駆動機構40の制御、調整、または較正が調整される。
【0153】
薬物送達デバイス20の送達デバイス記憶装置26は、当然ながら、患者固有のデータセット300を記憶し、かつ/または患者固有のデータセット300を含むダウンリンクデータDLから導かれた患者固有の排出または投薬のパラメータを記憶するように動作可能である。患者識別装置34が、薬物送達デバイス20を使用しようとする異なる人または患者、したがって第2の患者を識別した場合には、さらなる患者検索要求が、外部データベース202に送信される。したがって、第2の患者に対するそれぞれ患者固有のデータセットが、薬物送達デバイス20に送信され、薬物送達デバイスの患者固有の設定、特に駆動機構40の制御、調整、または較正が、適宜、適合される。
【0154】
また、ここで患者固有のデータセットおよび/または患者固有の排出もしくは投薬のパラメータが、送達デバイス記憶装置26にローカルに記憶させることができる。次いで、薬物送達デバイス20が第1の患者によって繰り返し使用される場合には、送達デバイスプロセッサ22は、第1の患者の、前に記憶された患者固有のデータまたは患者固有の排出もしくは投薬のパラメータを、さらなる患者検索要求RRを実施することなく、送達デバイス記憶装置26から再使用するように動作可能であってよい。
【0155】
薬物送達デバイス20は、薬物送達固有のパラメータまたは情報をユーザに通知するインジケータ28またはディスプレイをさらに含んでよい。このインジケータ28またはディスプレイは、特定のサイズの用量が実際に設定されており、特定の時間枠内に投薬または排出される予定であることを、ユーザまたは患者に視覚的、聴覚的、または触覚的に示すことができる。インジケータ28またはディスプレイは、薬物送達デバイス20の故障について、ユーザにさらに通知または警告してよい。インジケータ28は、送達に関するいくつかの動きを行うこと、たとえば任意選択の用量ダイヤル30を使用することにより用量を設定すること、および/または任意選択のトリガ32を使用することによりある用量の薬物の投薬もしくは排出をトリガすることを、ユーザにさらにリマインドしてよい。
【0156】
図1に示してある例では、薬物送達システム100の複数の実装形態が考えられる。ここで、外部データベース202と薬物送達デバイス20との間の通信リンクだけを提供するように、通信デバイス60の機能を縮小することができる。排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調整または修正するための計算論理および計算能力は、薬物送達デバイス20自体によって、または外部データベース202によって、完全に提供することができる。
【0157】
いくつかの例では、データベース202は、外部データベースでなはく、薬物送達システム100に属する。
【0158】
薬物送達デバイスがデータベース202からダウンリンクデータDLを受信した後、および駆動機構40が適宜調整または較正された後に、薬物送達デバイス20は、通信デバイス60および/または外部データベース202とさらに相互作用することなく、スタンドアロンモードで動作してよい。
【0159】
図2には、薬物送達システム100の別の例が示してある。ここで、薬物送達デバイス20には、図1に関連して説明した任意選択の構成要素26、34、28、30、32、および80がすべてなくてよい。その代わりに、上述した薬物送達デバイスの患者識別装置34と同じまたは同様の機能を提供する患者識別装置74を、通信デバイス60に設けてもよい。通信デバイス60には、場合により、通信デバイス記憶装置66が設けられて、図1に関して前に説明した送達デバイス記憶装置26と比較してすべての、または同様の機能を提供してよい。通信デバイス60には、インジケータ68、用量ダイヤル70、およびトリガ72のうちの少なくとも1つがさらに設けられて、図1に関して説明したインジケータ28、用量ダイヤル30、およびトリガ32と同じまたは同様の機能を提供してよい。さらに、センサアセンブリ80は、薬物送達デバイス20からも通信デバイス60からも分離された別個の構成要素として提供可能である。他の図示していない例では、センサアセンブリ80が、通信デバイス60に一体化されてよい。
【0160】
図2の例では、通信デバイスインターフェース64によって受信されたアップリンクデータの処理を、通信デバイスプロセッサ62によって完全にまたは少なくとも部分的に実施可能である。送達デバイスインターフェース24から受信したアップリンクデータに、患者識別装置74から取得した患者識別子をさらに加えることが可能であり、修正されたアップリンクデータULが、通信デバイス60からネットワーク200を介して外部データベース202に送信される。
【0161】
典型的な例では、通信デバイス60は、スマートフォンとして、スマートウォッチとして、またはタブレットコンピュータとして実現される。通信デバイス60は、典型的にはモバイル電子デバイスである。外部データベース202との通信を確立するように構成され、さらに薬物送達デバイス20との通信を確立するように構成されたソフトウェアアプリケーションまたはソフトウェアを、通信デバイス60が備えてもよい。いくつかの例では、薬物送達デバイス20には、ボタンまたはダイヤルなどの手動操作可能な作動部材がなくてよい。その代わりに、用量の設定および用量の投薬が、通信デバイス60と薬物送達デバイス20との間の通信リンクを介して完全に制御およびトリガすることができる。このために、通信デバイス60は、模倣用量ダイヤル70および/または模倣トリガ72を提供してよい。
【0162】
図1および図2の例は、薬物送達システム100の極端な2つの実装形態を表していることに留意すべきである。本開示は、薬物送達システム100の任意のさらなる実装形態も網羅し、ここで図1の実装形態から開始するとき、任意選択の構成要素26、28、30、32、34、80のうちの1つのみが、対応する任意選択の構成要素66、68、70、72、74の形態で外部にまたは通信デバイス60に提供または実装される。
【0163】
図3には、外部データベース202によって記憶および提供される患者固有のデータセット300が、概略的に示してある。患者固有のデータセット300は、たとえば患者識別子を表すデータフィールド301、またはたとえば容器IDを表すデータフィールド302など、多数のデータフィールドを含む。容器ID302は、薬物名、薬物濃度、および一意のLOTナンバーまたはバッチナンバーを示してよい。患者固有のデータセット300は、薬物または薬剤をそれまで使用することができる推奨使用期限または耐用期日を表す特定の日付けを規定するデータフィールド303をさらに含んでよい。薬物または薬剤の製造日を示すデータフィールド304をさらに設けることができる。
【0164】
患者固有のデータセット300は、送達スケジュールを提示および/または提供するデータフィールド305をさらに含んでよい。送達スケジュール305は、所与のまたは処方された送達速度で特定の量の薬剤を投与すべき複数の日付けおよび/または時間を表してよい。
【0165】
医療従事者または介護者は、典型的には外部データベース202にアクセスすることができる。こうして、薬剤の処方スケジュール、ひいては送達スケジュールを、外部データベース202に記憶することができる。外部データベース202は、典型的にはネットワーク200を介してアクセス可能である。こうして、データベース202は、データクラウド内に物理的に位置しても、データクラウドによって表されてもよい。
【0166】
さらに、患者固有のデータセット300は、薬物送達デバイスから取得したフィードバックデータ、たとえば薬物投与手順が正常に完了したことに関するフィードバックデータを記憶するための別のデータフィールド306を含んでよく、確認メッセージが自動的に作成され、薬物送達デバイス20および通信デバイス60のうちの1つから外部データベース202に送信することができる。こうして、治療データを自動的に外部のデータベースおよびデータクラウドにアップロードすることができる。
【0167】
ここに提示した薬物送達システムおよび関連するインフラストラクチャでは、全般的に、多様な異なる使用のシナリオを実現することが考えられる。
【0168】
たとえば、薬物送達デバイス20および通信デバイス60のうちの1つは、患者検索要求RRの送信を定期的な時間間隔で、たとえば1週間に1回トリガするように予めプログラミング可能である。これにより、医療従事者が必要に応じて、患者固有のデータセットを修正できるようになる。患者検索要求に応答して、または薬物送達デバイス20において薬物容器が交換されたとき、駆動機構40の新たな較正および調整は、患者検索要求RRに応答して受信されたダウンリンクデータDL、または薬物容器の交換に応答して自動的にトリガされたアップリンクデータULの送信に応答して受信されたダウンリンクデータDLに基づき、自動的に実施される。こうして、たとえばデータベース202における患者固有のデータの修正を介して、送達スケジュールを動的に変更することができる。この薬物送達デバイスまたは通信デバイス60では、治療スケジュールを変更するために、ハードウェアまたはソフトウェアの修正を行う必要はない。
【0169】
図4には、ここに説明する、薬物送達デバイスの排出または投薬の少なくとも1つのパラメータを調節する方法によるフローチャートの、複数の例のうちの1つのみが示してある。第1の工程400では、図1による薬物送達デバイス20によって提供されるか、図2に示す通信デバイス60によって提供されるたとえば患者識別装置34、74により、患者IDが収集される。その後、工程402において、患者識別子に基づき、患者固有のデータセットが外部データベース202に対して要求される。ここで、それぞれの患者IDを有する患者のための送達スケジュールが要求される。その後の工程404において、通信デバイス60および/または薬物送達デバイス20に提供された患者固有のデータセットから、送達スケジュールが導き出される。工程400、402、および404と同時に、工程408において、レセプタクル23の内側に位置する薬物容器10が識別される。この識別は、容器識別装置50によって実施される。工程410において、識別された、または導き出された容器IDが、送達デバイスプロセッサ22および通信デバイスプロセッサ62のうちの少なくとも1つに提供される。
【0170】
その後の工程412において、工程404で提供された送達スケジュールおよび工程410で提供された容器IDが、互いに比較される。工程412において、容器ID、およびその容器によって提供されるそれぞれの薬物が、工程404で提供された送達スケジュールに一致するか、またはそれに適しているかどうかが確認される。工程412において、工程410で識別された薬物11が、工程404で提供された、処方された送達スケジュールと一致しないと判定された場合には、方法は工程414に続く。ここで、警告、たとえば視覚的警告、聴覚的警告、および/または触覚的警告が生成され、かつ/または駆動機構40による薬物の送達が阻止される。たとえば、駆動機構40が工程414においてロックされる。警告は、薬物容器を変更するようにユーザに対して示すものである。
【0171】
その後、少なくとも工程408および410が、再度処理される必要がある。工程412において、識別された薬物容器およびそれぞれの薬物が、工程404で提供された送達スケジュールに一致することが判った場合には、方法は工程416に続く。ここで、駆動機構40の排出または投薬の少なくとも1つのパラメータが、工程404、410のうちの少なくとも1つにおいて取得されたデータに基づき、調整または修正される。工程416において、駆動機構は、たとえば薬物容器に提供された薬物濃度を考慮して、調整または較正することができる。その後、任意選択の工程において、処方された薬物または薬剤が、能動的に排出または投薬されるか、薬物の排出もしくは薬物の投薬がもはや阻止されなくなる。
【符号の説明】
【0172】
10 薬物容器
11 薬物
12 バレル
13 封止部
14 ストッパ
20 薬物送達デバイス
21 ハウジング
22 送達デバイスプロセッサ
23 レセプタクル
24 送達デバイスインターフェース
26 送達デバイス記憶装置
28 インジケータ
30 用量ダイヤル
32 トリガ
34 患者識別装置
40 駆動機構
42 駆動体
44 出口
46 電子ユニット
50 容器識別デバイス
52 容器ID
60 通信デバイス
61 ハウジング
62 通信デバイスプロセッサ
64 通信デバイスインターフェース
66 通信デバイス記憶装置
68 インジケータ
70 用量ダイヤル
72 トリガ
74 患者識別装置
80 センサアセンブリ
82 センサ
84 インターフェース
100 薬物送達システム
200 ネットワーク
202 データベース
300 データセット
図1
図2
図3
図4