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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】抗菌・抗ウイルス性ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20240813BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240813BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20240813BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240813BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240813BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240813BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240813BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240813BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240813BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01B7/18 Z
A01P3/00
A01N59/20
A01N59/16 Z
H01B7/00 310
C08K3/22
C08L101/00
C08L27/06
C08L23/00
C08L23/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022039386
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023134052
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591019656
【氏名又は名称】理研電線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 真人
(72)【発明者】
【氏名】白石 誠人
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 滉一
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107936342(CN,A)
【文献】特開平04-026531(JP,A)
【文献】特開2022-056305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
A01P 3/00
A01N 59/20
A01N 59/16
H01B 7/00
C08K 3/22
C08L 101/00
C08L 27/06
C08L 23/00
C08L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル心線部と、
少なくとも樹脂と光触媒とからなり、前記ケーブル心線部を被覆する被覆部と、
を備え、
前記光触媒は、酸化チタンと銅化合物とからなり、
前記被覆部は、前記樹脂の100重量部に対して、5重量部以上15重量部以下の前記光触媒を含有
前記被覆部は、前記被覆部の柔軟性を調整するための可塑剤と、前記被覆部の耐熱性および耐候性を向上させるための安定剤と、前記被覆部の透明性、艶出しおよび表面仕上げを向上させるための滑剤と、前記被覆部を増量または補強するための充填剤とを含有し、
前記被覆部の、JIS C 3005のゴム・プラスチック絶縁電線試験方法に準拠した引張特性試験による引張強度の残率は75%以上であり、伸びの残率は77%以上であり、
前記被覆部の抗菌試験による菌の増殖は、1%以下である
ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項2】
前記可塑剤の含有量は、前記樹脂の100重量部に対して、5重量部以上100重量部以下であり、
前記安定剤の含有量は、前記樹脂の100重量部に対して、0.1重量部以上5.0重量部以下であり、
前記滑剤の含有量は、前記樹脂の100重量部に対して、0.5重量部以下であり、
前記充填剤の含有量は、前記樹脂の100重量部に対して、60重量部以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項3】
前記光触媒を含有する前記被覆部の、500時間以上1600時間以下の光照射後における前記引張強度の残率は、前記光触媒を含有しない樹脂からなる被覆部の前記光照射後における前記引張強度の残率を上回る
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項4】
前記光触媒を含有する前記被覆部の、500時間以上1600時間以下の光照射後における前記伸びの残率は、前記光触媒を含有しない樹脂からなる被覆部の前記光照射後における前記伸びの残率を上回る
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項5】
前記可塑剤は、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類またはエポキシ化大豆油である
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項6】
前記安定剤は、有機錫系化合物、Ca/Zn系化合物またはBa/Zn系化合物である
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項7】
前記滑剤は、炭化水素系化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルまたは脂肪酸である
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項8】
前記充填剤は、炭酸カルシウム、酸化チタンまたはシリコン系化合物である
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項9】
前記樹脂は、ポリ塩化ビニルポリエチレンまたはポリオレフィンの樹脂である、
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項10】
前記ケーブル心線部は、金属または前記金属を含む合金からなる導体を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項11】
前記金属は、銅またはアルミニウムであり、
前記合金は、銅またはアルミニウムを含む合金である、
ことを特徴とする請求項10に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項12】
前記ケーブル心線部は、前記導体に絶縁体を被覆した絶縁線心からなる、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項13】
前記ケーブル心線部は、複数の前記絶縁線心からなる、
ことを特徴とする請求項12に記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【請求項14】
前記ケーブル心線部は、光ファイバからなる、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の抗菌・抗ウイルス性ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・抗ウイルス性ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な菌やウイルスによる汚染が問題化されており、例えば、院内感染等は社会問題化している。これに伴い、抗菌性および抗ウイルス性(以下、抗菌・抗ウイルス性と略記する)に優れた光触媒が注目されている。光触媒は、光の照射を受けることによって触媒作用(具体的には酸化還元作用等)を示し、これにより、細菌やウイルス等の有機物を分解して抗菌・抗ウイルス作用を発揮する。例えば、特許文献1には、表面処理層に光触媒を含有する抗ウイルス性壁紙が開示されている。
【0003】
また、電線等のケーブルの分野においては、電力ケーブルや通信ケーブル等、人間と直接または間接的に接触する機会が多い各種ケーブルに抗菌・抗ウイルス性を持たせることが要求されている。特に、病院内で使用される医療機器等のケーブルに抗菌・抗ウイルス性を持たせる要求が高まっている。このような抗菌・抗ウイルス性を有するケーブル(すなわち抗菌・抗ウイルス性ケーブル)として、例えば、特許文献2には、電線被覆材に金属系抗菌剤とポリ塩化ビニルとを含有するものが開示されている。なお、ポリ塩化ビニルは、可塑剤や安定剤等の添加剤を配合することにより、抗菌・抗ウイルス性ケーブルに必要な引張強度等の機械的性質、耐熱性等の物理的性質および絶縁性等の電気的性質(以下、これらの性質を纏めてケーブル特性という)を電線被覆材に付与することが可能な樹脂である。このようなポリ塩化ビニルは、当該電線被覆材の形成樹脂として好適に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6137716号公報
【文献】国際公開第2017/145976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、金属系抗菌剤は、銅イオンや銀イオン等の金属イオンを発生させることにより、抗菌・抗ウイルス作用を発揮する。しかし、金属系抗菌剤が金属イオンを発生させ得る期間は永久では無く、金属イオンが無くなった場合、金属系抗菌剤は、抗菌・抗ウイルス性を失ってしまう。このため、抗菌・抗ウイルス性ケーブルには、金属系抗菌剤に比べて抗菌・抗ウイルス作用の持続期間が長い光触媒を適用することが好ましい。
【0006】
しかしながら、上述した従来の抗菌・抗ウイルス性ケーブルの金属系抗菌剤を光触媒に置き換えて、光触媒とポリ塩化ビニルとを含有する電線被覆材を形成しようとしても、ポリ塩化ビニルにはケーブル特性を考慮して可塑剤や安定剤等の添加剤を配合する必要があり、当該添加剤の配合に起因して、光触媒の抗菌・抗ウイルス作用が損なわれる可能性がある。また、光触媒の抗菌・抗ウイルス作用を考慮してポリ塩化ビニルと添加剤とを配合した場合、電線被覆材に必要なケーブル特性を得ることができない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光触媒の優れた抗菌・抗ウイルス作用と良好なケーブル特性とを両立させることができる抗菌・抗ウイルス性ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、光触媒とポリ塩化ビニルとを特定の割合で配合することにより、当該光触媒の優れた抗菌・抗ウイルス作用を維持しつつ、抗菌・抗ウイルス性ケーブルの良好なケーブル特性が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち、上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、ケーブル心線部と、少なくとも樹脂と光触媒とからなり、前記ケーブル心線部を被覆する被覆部と、を備え、前記光触媒は、酸化チタンと銅化合物とからなり、前記樹脂は、前記樹脂の100重量部に対して、5重量部以上15重量部以下の前記光触媒を含有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、上記の発明において、前記樹脂は、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンまたはポリオレフィンなどの樹脂である、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、上記の発明において、前記ケーブル心線部は、金属または前記金属を含む合金からなる導体を有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、上記の発明において、前記金属は、銅またはアルミニウムであり、前記合金は、銅またはアルミニウムを含む合金である、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、上記の発明において、前記ケーブル心線部は、前記導体に絶縁体を被覆した絶縁線心からなる、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、上記の発明において、前記ケーブル心線部は、複数の前記絶縁線心からなる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルは、上記の発明において、前記ケーブル心線部は、光ファイバからなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルよれば、光触媒の優れた抗菌・抗ウイルス作用と良好なケーブル特性とを両立させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルの一構成例を示す断面模式図である。
図2図2は、実施例の耐候性試験における引張強度の残率の一例を示す図である。
図3図3は、実施例の耐候性試験における伸びの残率の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。
【0018】
(抗菌・抗ウイルス性ケーブル)
まず、本発明の実施形態に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルの一構成例を示す断面模式図である。図1には、この抗菌・抗ウイルス性ケーブル1の横断面の構造が図示されている。図1に示すように、抗菌・抗ウイルス性ケーブル1は、ケーブル心線部2と、被覆部3とを備えている。
【0019】
ケーブル心線部2は、例えば、図1(a)に示すように、金属または当該金属を含む合金からなる導体である。例えば、当該金属としては、銅またはアルミニウム等が挙げられる。当該合金としては、銅またはアルミニウムを含む合金等が挙げられる。また、ケーブル心線部2は、図1(b)に示すように、導体2aの外周面に絶縁体2bの層を被覆した絶縁心線からなるものでもよい。導体2aは、図1(a)のケーブル心線部2と同様に、銅やアルミニウム等の金属または当該金属を含む合金からなる導体である。絶縁体2bは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリオレフィン等の樹脂からなるものでもよいし、当該樹脂に光触媒を配合したものでもよい。また、ケーブル心線部2は、図1(c)に示すように、複数の絶縁心線2cからなるものでもよい。これら複数の絶縁心線2cの各々は、導体の外周面に絶縁体の層を被覆したものである。当該導体は上述の導体2aと同様であり、当該絶縁体は上述の絶縁体2bと同様である。なお、ケーブル心線部2を構成する絶縁心線2cの本数は、図1(c)に示す3本に限らず、2本以上であってもよい。また、ケーブル心線部2は、光ファイバからなるものであってもよい。
【0020】
被覆部3は、少なくとも樹脂と光触媒とからなり、図1に示すように、ケーブル心線部2を被覆する。詳細には、被覆部3において、当該樹脂には、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンまたはポリオレフィンなどの樹脂に光触媒を含有させて用いられる。被覆部3は、図1に示すように、ケーブル心線部2の外周面の全域を覆うように、ケーブル心線部2の長手方向に沿って形成される。以下、被覆部3を構成するポリ塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)と称する。
【0021】
(ポリ塩化ビニル系樹脂(A))
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)を主成分として含有する。なお、ここでいう主成分とは、対象とする成分中に最も多く含有されている成分である。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の総重量を100重量部とした場合、ポリ塩化ビニルの含有量は、50重量部以上である。また、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、ポリ塩化ビニルの他に、少なくとも光触媒を含有する。詳細には、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、ポリ塩化ビニルの100重量部に対して、5重量部以上15重量部以下の光触媒を含有する。以下、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)に含まれるポリ塩化ビニルおよび光触媒は、それぞれ、ポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)と称する。
【0022】
(光触媒(C))
光触媒(C)は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)に抗菌・抗ウイルス性を付与するものである。詳細には、光触媒(C)は、酸化チタンと銅化合物とからなり、例えば、酸化チタンに銅化合物を担持したものである。ポリ塩化ビニル系樹脂(A)中の光触媒(C)の含有量は、上述したように、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して、5重量部以上15重量部以下である。光触媒(C)中の酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型またはルチル型の二酸化チタン(TiO2)が挙げられる。光触媒(C)中の銅化合物としては、例えば、1価銅化合物、2価銅化合物、または、1価銅化合物と2価銅化合物との混合物が挙げられる。
【0023】
(添加剤)
また、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、光触媒(C)の抗菌・抗ウイルス性を損なわない範囲において、ケーブル特性を被覆部3に持たせるための添加剤を含有してもよい。当該添加剤としては、例えば、可塑剤、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤等が挙げられる。なお、上記ケーブル特性には、抗菌・抗ウイルス性ケーブル1に必要な機械的性質、物理的性質、電気性質等が含まれる。例えば、機械的性質としては、引張強度および伸び性等が挙げられる。物理的性質としては、耐候性、耐熱性および難燃性等が挙げられる。電気的性質としては、絶縁性等が挙げられる。
【0024】
可塑剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の柔軟性を調整するための添加剤である。当該可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、エポキシ化大豆油等が挙げられる。当該可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して、5重量部以上100重量部以下である。
【0025】
安定剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の耐熱性および耐候性等を向上させるための添加剤である。例えば、安定剤の添加により、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の成形加工時におけるポリ塩化ビニル(B)の熱分解を防止することができる。当該安定剤としては、例えば、有機錫系化合物、Ca/Zn系化合物、Ba/Zn系化合物等が挙げられる。当該安定剤の含有量は、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して、0.1重量部以上5.0重量部以下である。また、紫外線によるポリ塩化ビニル系樹脂(A)の劣化を防止するために紫外線吸収剤を添加したり、酸素によるポリ塩化ビニル系樹脂(A)の劣化を防止するために酸化防止剤を添加したりする場合もある。
【0026】
滑剤は、被覆部3の透明性、艶出し、表面仕上げ等を向上させるためにポリ塩化ビニル系樹脂(A)に含まれる添加剤である。当該滑剤としては、例えば、炭化水素系化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸等が挙げられる。当該滑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して、0.5重量部以下である。
【0027】
充填剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の増量剤または補強材として含まれる添加剤である。当該充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリコン系化合物等が挙げられる。当該シリコン系化合物としては、タルク等が挙げられる。当該充填剤の含有量は、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して、60重量部以下である。
【0028】
着色剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の色付け、すなわち、被覆部3の外観色を調整するための添加剤である。難燃剤は、被覆部3の難燃性を向上させるためにポリ塩化ビニル系樹脂(A)に含まれる添加剤である。当該難燃剤としては、例えば、アンチモン化合物、リン酸エステル等が挙げられる。これらの着色剤および難燃剤は、ケーブル特性に応じて必要量、添加される。
【0029】
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、主成分であるポリ塩化ビニル(B)と、抗菌・抗ウイルス性の光触媒(C)と、必要に応じて添加される上記添加剤とを、上述した含有量となるように配合して混練することにより、合成することができる。このようなポリ塩化ビニル系樹脂(A)を用いて成形加工等することにより、ポリ塩化ビニル(B)と添加剤とによるケーブル特性と、光触媒(C)による抗菌・抗ウイルス性とを兼ね備えた被覆部3を形成することができる。
【0030】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルでは、ケーブル心線部を被覆する被覆部を、ポリ塩化ビニル(B)と光触媒(C)とを含有するポリ塩化ビニル系樹脂(A)によって構成し、光触媒(C)を、酸化チタンと銅化合物とからなる光触媒とし、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)中の光触媒(C)の含有量を、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して5重量部以上15重量部以下としている。このため、光触媒(C)が有する抗菌・抗ウイルス性を維持しつつ、抗菌・抗ウイルス性ケーブルに必要なケーブル特性を前記被覆部に付与することができる。したがって、光触媒(C)の優れた抗菌・抗ウイルス作用と前記被覆部の良好なケーブル特性とを両立させることが可能な抗菌・抗ウイルス性ケーブルを実現することができる。本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルを用いることにより、電気ケーブルまたは光ファイバケーブルとしての使い易さおよび信頼性を確保するとともに、金属系抗菌剤を含有する従来のケーブルに比べ極めて長期間(具体的にはケーブルの寿命(例えば10年間)に見合った期間)、抗菌・抗ウイルス作用を安定して持続させることができる。
【実施例
【0031】
以下、本発明の実施例を示し、本発明について更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0032】
(評価用サンプル)
実施例では、上述したポリ塩化ビニル(B)と光触媒(C)と添加剤とを、光触媒(C)の含有量がポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して5重量部以上15重量部以下となるように混練装置に入れて混錬し、これにより、光触媒(C)の含有量が5重量部以上15重量部以下の範囲内で異なる複数のポリ塩化ビニル系樹脂(A)を合成した。この際、混練の温度は約155℃とし、混練の時間は20分とした。これら複数のポリ塩化ビニル系樹脂(A)の各々をシート状に成形して硬化し、これにより、上述した抗菌・抗ウイルス性ケーブル1の被覆部3(図1参照)を模擬する評価用サンプルを光触媒(C)の含有量別に複数作製した。
【0033】
(抗菌性試験)
実施例では、上述した複数の評価用サンプルの各々について抗菌性試験を行った。この抗菌性試験は、JIS Z 2801「抗菌加工製品-抗菌試験方法・抗菌効果」に準じて行った。
【0034】
具体的には、普通寒天培地に24時間培養した菌体を、蒸留水で1/500に希釈した普通ブイヨン培地に、菌数が約2.0×105/ml以上1.0×106/ml以下となるように懸濁し、当該菌体を含有する懸濁液を得た。当該菌体としては、黄色ブドウ球菌および大腸菌を用いた。続いて、この懸濁液(0.2ml)を評価用サンプルに滴下し、この評価用サンプルの滴下面にポリエチレンフィルムを被せ、35℃の温度環境下で、当該評価用サンプル上の懸濁液に含まれる菌体を24時間培養した。その後、当該評価用サンプル上の懸濁液を、10mlのSCDLP(Soybean Casein Digest Agar with Lecitin Polysorbate)培地で洗い出し、寒天平板培養法によって生菌数を測定した。この寒天平板培養法では、35℃の温度環境下で2日間、菌体を培養した。
【0035】
抗菌性試験では、上記のように得られた生菌数とリファレンスサンプルの生菌数とをもとに、評価用サンプルの抗菌活性値を算出し、得られた抗菌活性値に基づいて、評価用サンプルの抗菌性を評価した。この際、抗菌活性値が2以上である場合を抗菌性有りとし、抗菌活性値が2未満である場合を抗菌性無しとした。なお、リファレンスサンプルは、光触媒(C)を含有していないサンプルであり、これ以外は評価用サンプルと同様である。
【0036】
(抗ウイルス性試験)
実施例では、上述した複数の評価用サンプルの各々について抗ウイルス性試験を行った。この抗ウイルス性試験は、JIS R 1756「ファインセラミックス-可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス試験方法-バクテリオファージQβを用いる」に準じて行った。
【0037】
具体的には、濃度既知のファージウイルス液(0.1ml)を評価用サンプルに垂らし、この評価用サンプルをOHP(Overhead Projector)フィルムによって挟んだ。ついで、当該評価用サンプルに光を所定時間照射した。この光照射では、白色蛍光灯の光から紫外線カットフィルタ(N169フィルタ)によって紫外線をカットし、得られた光を、500ルクスの照度で評価用サンプルに照射した。光照射後の評価用サンプル上のファージウイルス液を、10mlのSCDLP培地で回収し、適度に希釈した後、寒天培地に塗布してウイルスを培養した。培養後のウイルスのコロニー数を計数することにより、明所における評価用サンプルの抗ウイルス活性値を算出した。また、上記ファージウイルス液を垂らした評価用サンプルをOHPフィルムによって挟み、光照射を行わずに、当該評価用サンプル上のファージウイルス液を、10mlのSCDLP培地で回収し、適度に希釈した後、寒天培地に塗布してウイルスを培養した。培養後のウイルスのコロニー数を計数することにより、暗所における評価用サンプルの抗ウイルス活性値を算出した。
【0038】
抗ウイルス性試験では、上記のように得られた抗ウイルス活性値に基づいて、評価用サンプルの抗ウイルス性を評価した。この際、抗ウイルス活性値が2以上である場合を抗ウイルス性有りとし、抗ウイルス活性値が2未満である場合を抗ウイルス性無しとした。
【0039】
(引張特性試験)
実施例では、上述した複数の評価用サンプルの各々について引張特性試験を行った。この引張特性試験は、JIS C 3005「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法」に準拠して行った。
【0040】
具体的には、評価用サンプルの引張強度を測定し、上記リファレンスサンプルの引張強度を基準として、当該評価用サンプルの引張強度の残率を算出した。また、評価用サンプルの伸び量を測定し、上記リファレンスサンプルの伸び量を基準として、当該評価用サンプルの伸びの残率を算出した。
【0041】
引張特性試験では、上記のようにして得られた引張強度および伸びの各残率に基づいて、評価用サンプルの引張特性を評価した。この際、残率が90%以上である場合を優良とし、残率が75%以上である場合を良好とし、残率が75%未満である場合を不良とした。以下では、優良を「◎」で示し、良好を「〇」で示し、不良を「×」で示す場合がある。なお、引張特性が良好であるとは、評価用サンプルの引張特性が抗菌抗ウイルス性ケーブルに必要な引張特性を有していることを意味する。引張特性が優良であるとは、評価用サンプルの引張特性が上記良好な引張特性よりも優れていることを意味する。引張特性が不良であるとは、評価用サンプルの引張特性が抗菌抗ウイルス性ケーブルに必要な引張特性を有していないことを意味する。
【0042】
(実施例1)
実施例1では、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して5重量部の光触媒(C)を含有する評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0043】
詳細には、実施例1の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値は2.2であり、大腸菌に対する抗菌活性値は4.3であった。つまり、いずれに生菌数も99%以上抑制(菌の増殖を1%以下に抑制)することができた。このことから、実施例1では、少なくとも黄色ブドウ球菌および大腸菌について優れた抗菌性を有することが確認された。また、実施例1の抗ウイルス試験において、明所での抗ウイルス活性値は5.09(検出限界ライン)であり、暗所での抗ウイルス活性値は4.16であった。つまり、明所のみならず暗所においても、ウイルスを99%以上減少させることができた。このことから、実施例1では、明所および暗所の双方において、優れた抗ウイルス性を有することが確認された。以上より、実施例1は、優れた抗菌・抗ウイルス性を有していることが分かった。
【0044】
また、実施例1の引張特性試験において、引張強度の残率は83%であり、伸びの残率は84%であった。このことから、実施例1では、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)に光触媒(C)が含有されていても、良好な引張特性を有することが確認された。
【0045】
上記実施例1における評価用サンプル(ポリ塩化ビニル系樹脂(A))中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、後述の表1に示す。
【0046】
(実施例2)
実施例2では、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して10重量部の光触媒(C)を含有する評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0047】
詳細には、実施例2の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌および大腸菌のいずれの菌に対する抗菌活性値も上記実施例1の抗菌活性値以上であった。このことから、実施例2では、実施例1と同等以上に優れた抗菌性を有することが確認された。また、実施例2の抗ウイルス試験において、明所および暗所のいずれにおける抗ウイルス活性値も上記実施例1の抗ウイルス活性値以上であった。このことから、実施例2では、実施例1と同等以上に優れた抗ウイルス性を有することが確認された。以上より、実施例2は、実施例1以上に優れた抗菌・抗ウイルス性を有していることが分かった。
【0048】
また、実施例2の引張特性試験において、引張強度の残率は78%であり、伸びの残率は77%であった。このことから、実施例2では、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)に光触媒(C)が含有されていても、良好な引張特性を有することが確認された。
【0049】
上記実施例2における評価用サンプル(ポリ塩化ビニル系樹脂(A))中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、表1に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例3では、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して15重量部の光触媒(C)を含有する評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0051】
詳細には、実施例3の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌および大腸菌のいずれの菌に対する抗菌活性値も上記実施例2の抗菌活性値以上であった。このことから、実施例3では、実施例1、2と同等以上に優れた抗菌性を有することが確認された。また、実施例3の抗ウイルス試験において、明所および暗所のいずれにおける抗ウイルス活性値も上記実施例2の抗ウイルス活性値以上であった。このことから、実施例3では、実施例1、2と同等以上に優れた抗ウイルス性を有することが確認された。以上より、実施例3は、実施例1、2以上に優れた抗菌・抗ウイルス性を有していることが分かった。
【0052】
また、実施例3の引張特性試験において、引張強度の残率は79%であり、伸びの残率は77%であった。このことから、実施例3では、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)に光触媒(C)が含有されていても、良好な引張特性を有することが確認された。
【0053】
上記実施例3における評価用サンプル(ポリ塩化ビニル系樹脂(A))中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、表1に示す。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、光触媒(C)を含有しない評価用サンプルを作製した。すなわち、比較例1の評価用サンプルは、光触媒(C)を含有していないこと以外、上述した実施例1と同様である。この比較例1の評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0055】
詳細には、比較例1の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌および大腸菌の双方とも、生菌数は実施例1に比べ極めて多かった。このことから、比較例1では、実施例1ほどの抗菌性を発現できないことが確認された。また、比較例1の抗ウイルス試験において、明所での抗ウイルス活性値は0.57であり、暗所での抗ウイルス活性値は0.22であった。つまり、比較例1では、明所および暗所によらず、実施例1ほどの抗ウイルス性を発現できないことが確認された。
【0056】
また、比較例1は光触媒(C)を含有していないため、引張特性試験において、引張強度および伸びの各残率が100%であった。以上より、比較例1では、引張特性が優良であるものの、抗菌・抗ウイルス性が無いことが確認された。比較例1における評価用サンプル中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、表1に示す。
【0057】
(比較例2)
比較例2では、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して0.1重量部の光触媒(C)を含有する評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0058】
詳細には、比較例2の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌および大腸菌の双方とも、生菌数は実施例1に比べ極めて多かった。このことから、比較例2では、実施例1ほどの抗菌性を発現できないことが確認された。また、比較例2の抗ウイルス試験において、明所および暗所のいずれにおいても、抗ウイルス活性値は実施例1の抗ウイルス活性値未満であった。つまり、比較例2では、明所および暗所によらず、実施例1ほどの抗ウイルス性を発現できないことが確認された。
【0059】
また、比較例2の引張特性試験において、引張強度の残率は92%であり、伸びの残率は91%であった。以上より、比較例2では、引張特性が優良であるものの、抗菌・抗ウイルス性が無いことが確認された。比較例2における評価用サンプル中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、表1に示す。
【0060】
(比較例3)
比較例3では、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して3重量部の光触媒(C)を含有する評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0061】
詳細には、比較例3の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値は1.0であり、大腸菌に対する抗菌活性値は4.3であった。つまり、比較例3では、大腸菌について実施例1と同等の抗菌性を発現するものの、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性は実施例1よりも劣っていた。このことから、比較例3では、実施例1に比べて抗菌性が不安定であることが確認された。また、比較例3の抗ウイルス試験において、明所での抗ウイルス活性値は5.09であり、暗所での抗ウイルス活性値は2.10であった。このことから、比較例1では、実施例1の抗ウイルス性に比べて劣るものの、良好な抗ウイルス性を発現することが確認された。すなわち、比較例3では、抗ウイルス性は有るものの、抗菌性は不十分であることが分かった。
【0062】
また、比較例3の引張特性試験において、引張強度の残率は88%であり、伸びの残率は87%であった。以上より、比較例2では、引張特性が良好であるものの、抗菌・抗ウイルス性が無いことが確認された。比較例3における評価用サンプル中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、表1に示す。
【0063】
(比較例4)
比較例4では、ポリ塩化ビニル(B)の100重量部に対して20重量部の光触媒(C)を含有する評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルについて、上述の抗菌性試験、抗ウイルス性試験および引張特性試験を行った。
【0064】
詳細には、比較例4の抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌および大腸菌のいずれの菌に対する抗菌活性値も上記実施例1の抗菌活性値以上であった。このことから、比較例4では、実施例1と同等以上の抗菌性を有することが確認された。また、比較例4の抗ウイルス試験において、明所および暗所のいずれにおける抗ウイルス活性値も上記実施例1の抗ウイルス活性値以上であった。このことから、比較例4では、実施例1と同等以上の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0065】
一方、比較例4の引張特性試験において、引張強度の残率は74%であり、伸びの残率は70%であった。以上より、比較例4では、抗菌・抗ウイルス性が有るものの、抗菌・抗ウイルス性ケーブルに必要な引張特性を維持できないことが確認された。上記比較例4における評価用サンプル(ポリ塩化ビニル系樹脂(A))中のポリ塩化ビニル(B)および光触媒(C)の各含有量、抗菌性、抗ウイルス性および引張特性の各評価結果は、表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
(耐候性試験)
上述した実施例1の各評価用サンプルについて耐候性試験を行った。この耐候性試験では、紫外線等の光を照射した後の評価用サンプルの引張特性の劣化度合いを評価した。具体的には、評価用サンプルに照射する光として、太陽光を模擬したキセノンランプを用い、光照射前、500時間の光照射後、1000時間の光照射後、1600時間の光照射後の各々において、評価用サンプルの引張強度および伸び量を測定し、光照射前の評価用サンプルの引張強度および伸び量を基準(残率=100%)として、光の照射時間(以下、試験時間という)別に評価用サンプルの引張強度および伸びの各残率を算出した。また、上述した比較例1の評価用サンプル(光触媒(C)を含有していないポリ塩化ビニル系樹脂)についても、実施例1の評価用サンプルと同様に耐候性試験を行った。なお、この耐候性試験での引張強度および伸び量の測定方法は、上述した引張特性試験と同様である。
【0068】
図2は、実施例1の耐候性試験における引張強度の残率の一例を示す図である。図2において、「〇」は、実施例1の評価用サンプルの試験時間と引張強度の残率との関係を示すものである。「△」は、比較例1の評価用サンプルの試験時間と引張強度の残率との関係を示すものである。
【0069】
図2に示すように、実施例1では、試験時間が500時間である場合の引張強度の残率が82%であり、試験時間が1000時間である場合の引張強度の残率が63%であり、試験時間が1600時間である場合の引張強度の残率が57%であった。これに対し、比較例1では、試験時間が500時間である場合の引張強度の残率が40%であり、試験時間が1000時間である場合の引張強度の残率が40%であり、試験時間が1600時間である場合の引張強度の残率が36%であった。これら実施例1と比較例1とを比較すると、いずれの試験時間においても、実施例1の引張強度の残率が比較例1の引張強度の残率を上回っていた。このことから、実施例1では、長期間の光照射後であっても、引張強度が比較例1ほど劣化せず、比較例1を常に上回る引張強度を確保できることが確認された。
【0070】
図3は、実施例1の耐候性試験における伸びの残率の一例を示す図である。なお、図3中の「〇」および「△」は、図2の場合と同様である。図3に示すように、実施例1では、試験時間が500時間である場合の伸びの残率が89%であり、試験時間が1000時間である場合の伸びの残率が79%であり、試験時間が1600時間である場合の伸びの残率が58%であった。これに対し、比較例1では、試験時間が500時間である場合の伸びの残率が46%であり、試験時間が1000時間である場合の伸びの残率が27%であり、試験時間が1600時間である場合の伸びの残率が11%であった。これら実施例1と比較例1とを比較すると、いずれの試験時間においても、実施例1の伸びの残率が比較例1の伸びの残率を上回っていた。このことから、実施例1では、長期間の光照射後であっても、伸び性が比較例1ほど劣化せず、比較例1を常に上回る伸び性を確保できることが確認された。
【0071】
以上より、実施例1の光照射後の引張強度および伸びの各残率が比較例1の各残率を上回ることから、光触媒(C)を含有するポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、光触媒(C)を含有していないポリ塩化ビニル系樹脂よりも優れた耐候性を有することが分かった。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態によって限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、本発明に係る抗菌・抗ウイルス性ケーブルの横断面形状は、図1に示した円形に限らず、楕円形、矩形、扁平形等、円形以外の形状であってもよい。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 抗菌・抗ウイルス性ケーブル
2 ケーブル心線部
2a 導体
2b 絶縁体
2c 絶縁心線
3 被覆部
図1
図2
図3