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特許7536822路側機、通信システム、プログラム及び通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】路側機、通信システム、プログラム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20240813BHJP
   H04L 47/24 20220101ALI20240813BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H04L12/28 200D
H04L12/28 100A
H04L47/24
G08G1/00 J
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022084356
(22)【出願日】2022-05-24
(65)【公開番号】P2023172504
(43)【公開日】2023-12-06
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 若
(72)【発明者】
【氏名】下大迫 和隆
(72)【発明者】
【氏名】望月 崇弘
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-074894(JP,A)
【文献】特開2020-182106(JP,A)
【文献】特開2014-078119(JP,A)
【文献】特開2019-106674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
41/00-101/695
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機を備える通信システムに含まれる路側機であって、
自身の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知部と、
前記イベント検知部によって前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する信号出力部と、を備える路側機。
【請求項2】
前記信号出力部によって前記優先通信信号が出力された場合に、前記通信ネットワーク内における自身の通信を優先的に実行させる優先通信制御を行う通信制御部を更に備える請求項1に記載の路側機。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおける単位時間あたりに通信処理できるデータ量を変更することで前記優先通信制御を行う請求項2に記載の路側機。
【請求項4】
前記イベント検知部は、検知した前記イベントの種類を特定し、
前記通信制御部は、前記優先通信制御において、特定された前記イベントの種類に応じて前記データ量を変更する請求項3に記載の路側機。
【請求項5】
前記他の路側機との通信を行う連携通信部を更に備える請求項4に記載の路側機。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるパケットの送受信の順序を変更することで優先通信制御を行う請求項2に記載の路側機。
【請求項7】
前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるデータの送信頻度を変更することで優先通信制御を行う請求項2に記載の路側機。
【請求項8】
前記優先通信制御により優先的に実行される通信を利用して前記イベントに関する情報を前記通信ネットワークに送信し、前記通信ネットワークから得られる前記イベントに関するフィードバック情報を受信し、出力するイベント情報送受信部と、を更に備える請求項2~7のいずれか1項に記載の路側機。
【請求項9】
通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機と、
前記通信ネットワーク内に配置され、前記通信ネットワーク内の通信を制御する管理装置と、を備え、
前記路側機は、自身の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知部と、
前記イベント検知部によって前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する信号出力部と、を備える通信システム。
【請求項10】
前記路側機は、前記信号出力部によって前記優先通信信号が出力された場合に、前記通信ネットワーク内における自身の通信を優先的に実行させる優先通信制御を行う通信制御部を更に有する請求項9に記載の通信システム。
【請求項11】
前記路側機は、前記優先通信信号を前記管理装置に送信する信号送信部を更に有し、
前記管理装置は、前記優先通信信号を受信した場合に、該優先通信信号の送信元の前記路側機の前記通信ネットワーク内における通信を優先的に実行させる優先通信制御を行う通信制御部を更に有する請求項9に記載の通信システム。
【請求項12】
複数の前記路側機は、ONUを介して前記管理装置に接続され、
前記管理装置は、OLTであり、前記ONUとともにPONアクセスシステムを構成する請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおける単位時間あたりに通信処理できるデータ量を変更することで優先通信制御を行う請求項11又は12に記載の通信システム。
【請求項14】
前記路側機の前記イベント検知部は、検知した前記イベントの種類を特定し、
前記信号送信部は、前記優先通信信号とともに前記イベントの種類を前記管理装置に送信し、
前記管理装置の前記通信制御部は、前記優先通信制御において、前記イベントの種類に応じて前記データ量を変更する請求項13に記載の通信システム。
【請求項15】
前記通信制御部は、複数の前記路側機から優先通信信号を受信した場合に、それぞれの前記イベントの種類に基づいて前記イベントの優先順位を決定し、決定した優先順位に応じて前記イベントを検知した前記路側機それぞれと前記管理装置との間の通信回線の前記データ量を変更する請求項14に記載の通信システム。
【請求項16】
前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるパケットの送受信の順序を変更することで優先通信制御を行う請求項10又は11に記載の通信システム。
【請求項17】
前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるデータの送信頻度を変更することで優先通信制御を行う請求項10又は11に記載の路側機。
【請求項18】
通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機を備える通信システム内の路側機に含まれるコンピュータに、
前記路側機の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知機能と、
前記イベント検知機能によって前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する出力機能と、を実行させるプログラム。
【請求項19】
通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機を備える通信システムに含まれる路側機が実行する通信方法であって、
前記路側機の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知ステップと、
前記イベント検知ステップで前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する出力ステップと、を含む通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側機、通信システム、プログラム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ネットワークに接続された複数の路側機を含む通信システムにおいて、路上で交通事故等のイベントが発生した場合に、路側機の通信を制御する技術が知られている。例えば引用文献1には、走行中の車両へ送信するメッセージを受信した路側機器が、各車両の速度や道路の状態などの情報からメッセージ毎に優先順位を設定し、設定した順序に従いメッセージを車両へ送信する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3832345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、路側機周辺で交通事故等の緊急性の高いイベントが発生した場合に、当該イベントの発生現場に設けられる路側機と円滑に通信を行うことが重要である。しかしながら特許文献1に記載の技術では、路側機と車両との間の通信を制御できるものの、通信ネットワーク側との通信状況が考慮されていないため、輻輳等の要因で通信ネットワークがひっ迫している場合、パケットロスなどが生じるおそれがあり、通信ネットワークを介して当該イベントの発生を遠隔地に通知できない可能性がある。
【0005】
本発明は、イベントの発生現場に安定した通信サービスを提供できる路側機、通信システム、プログラム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)路側機は、通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機を備える通信システムに含まれる路側機であって、自身の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知部と、前記イベント検知部によって前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する信号出力部と、を備える。
【0007】
(2)(1)に記載の路側機は、前記信号出力部によって前記優先通信信号が出力された場合に、前記通信ネットワーク内における自身の通信を優先的に実行させる優先通信制御を行う通信制御部を更に備える。
【0008】
(3)(2)に記載の路側機において、前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおける単位時間あたりに通信処理できるデータ量を変更することで前記優先通信制御を行う。
【0009】
(4)(3)に記載の路側機において、前記イベント検知部は、検知した前記イベントの種類を特定し、前記通信制御部は、前記優先通信制御において、特定された前記イベントの種類に応じて前記データ量を変更する。
【0010】
(5)(2)~(4)のいずれか1つに記載の路側機は、前記他の路側機との通信を行う連携通信部を更に備える。
【0011】
(6)(2)に記載の路側機において、前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるパケットの送受信の順序を変更することで優先通信制御を行う。
【0012】
(7)(2)に記載の路側機において、前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるデータの送信頻度を変更することで優先通信制御を行う。
【0013】
(8)(2)~(7)のいずれか1つに記載の路側機は、前記優先通信制御により優先的に実行される通信を利用して前記イベントに関する情報を前記通信ネットワークに送信し、前記通信ネットワークから得られる前記イベントに関するフィードバック情報を受信し、出力するイベント情報送受信部と、を更に備える。
【0014】
(9)通信システムは、通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機と、前記通信ネットワーク内に配置され、前記通信ネットワーク内の通信を制御する管理装置と、を備え、前記路側機は、自身の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知部と、前記イベント検知部によって前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する信号出力部と、を備える。
【0015】
(10)(9)に記載の通信システムは、前記路側機は、前記信号出力部によって前記優先通信信号が出力された場合に、前記通信ネットワーク内における自身の通信を優先的に実行させる優先通信制御を行う通信制御部を更に有する。
【0016】
(11)(9)に記載の通信システムは、前記路側機は、前記優先通信信号を前記管理装置に送信する信号送信部を更に有し、前記管理装置は、前記優先通信信号を受信した場合に、該優先通信信号の送信元の前記路側機の前記通信ネットワーク内における通信を優先的に実行させる優先通信制御を行う通信制御部を更に有する。
【0017】
(12)(10)又は(11)に記載の通信システムにおいて、複数の前記路側機は、ONUを介して前記管理装置に接続され、前記管理装置は、OLTであり、前記ONUとともにPONアクセスシステムを構成する。
【0018】
(13)(10)~(12)のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおける単位時間あたりに通信処理できるデータ量を変更することで優先通信制御を行う。
【0019】
(14)(13)に記載の通信システムにおいて、前記路側機の前記イベント検知部は、検知した前記イベントの種類を特定し、前記信号送信部は、前記優先通信信号とともに前記イベントの種類を前記管理装置に送信し、前記管理装置の前記通信制御部は、前記優先通信制御において、前記イベントの種類に応じて前記データ量を変更する。
【0020】
(15)(14)に記載の通信システムにおいて、前記通信制御部は、複数の前記路側機から優先通信信号を受信した場合に、それぞれの前記イベントの種類に基づいて前記イベントの優先順位を決定し、決定した優先順位に応じて前記イベントを検知した前記路側機それぞれと前記管理装置との間の通信回線の前記データ量を変更する。
【0021】
(16)(10)~(12)のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるパケットの送受信の順序を変更することで優先通信制御を行う。
【0022】
(17)(10)~(12)のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、前記通信制御部は、前記通信ネットワークにおけるデータの送信頻度を変更することで優先通信制御を行う。
【0023】
(18)プログラムは、通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機を備える通信システム内の路側機に含まれるコンピュータに、前記路側機の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知機能と、前記イベント検知機能によって前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する出力機能と、を実行させる。
【0024】
(19)通信方法は、通信ネットワークに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機を備える通信システムに含まれる路側機が実行する通信方法であって、前記路側機の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知ステップと、前記イベント検知ステップで前記イベントが検知された場合に、前記通信ネットワークにおける自身の通信を他の路側機の通信よりも優先的に実行させる優先通信信号を出力する出力ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、イベントの発生現場に安定した通信サービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムを示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る路側機のハードウェア及び機能ブロックの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る終端装置のハードウェア及び機能ブロックの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る管制サーバのハードウェア及び機能ブロックの構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態における路側機が実行するQoS制御の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態における通信システムが実行するQoS制御のうち路側機が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態における通信システムが実行するQoS制御のうち終端装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る通信システムSについて説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0028】
<通信システムの構成と動作について>
本発明の一実施形態に係る通信システムSの全体的な構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る通信システムSを示す概略図である。
【0029】
通信システムSは、車両61が走行する道路7上において緊急性を要するイベントが発生した場合に、そのイベントに関する情報を、通信ネットワークNWを介して接続された各種施設8のサーバ80との間において、優先的に伝達することを可能とするためのシステムである。イベントとしては、例えば重大な交通事故、車両の運転手の異常発生、自動運転時におけるODD(Operational Design Domain)条件からの逸脱、緊急車両の走行、軽微な交通事故、火災、路面異常、交通法規違反、自動運転マップ情報の更新、車両6の故障、自動運転車両の運行、路面バス等の公共車両の運行、隊列走行車両の運行、道路点検用車両の運行等が挙げられる。隊列走行車両とは、隊列を組んで走行する運送トラック等の車両である。道路点検用車両とは、例えば道路7の路面や道路付帯物を車載センサでセンシングし、センシングデータを活用することで異常を検知するパトロール車両である。また施設8としては、例えば病院や警察、保険会社、レンタカー会社等が挙げられる。
【0030】
通信システムSは、道路7上に設定されるとともに、通信ネットワークNWに接続される複数の路側機1と、通信ネットワークNW内に配置される複数の終端装置2(管理装置)と、管制サーバ3(管理装置)と、を備える。
【0031】
通信ネットワークNWは、典型的にはインターネットを含む通信網である。通信ネットワークNWは、例えば通信回線L、終端装置2等によって形成されたPONアクセスシステムNW2等のQoS制御が可能な通信網、WAN(wide area network)通信網等のネットワーク通信網NW1等を含む。ネットワーク通信網NW1は、一例として、MPLS(Multiprotocol Label Switching)ネットワークなどである。
【0032】
路側機1は、RSU(road side unit)等とも呼ばれる。通信システムSに含まれる複数の路側機1は、通信ネットワークNWに接続されるとともに、道路7の周辺(路側)等におけるそれぞれ異なるエリアに設置される。エリアとは、各路側機1が各車両61との通信を担当する範囲を意味し、例えば道路7に沿って設定された地理的範囲を示す。路側機1は、道路7を走行する車両61や周囲に存在する各種装置と無線通信することでV2X(vehicle-to-everything)通信サービスを提供する。また路側機1は、車両6や各種装置との無線通信等によって取得したデータを通信ネットワークNWに送信する。本実施形態における路側機1は、路側機1の周囲で発生するイベントを検知する機能等を有する。通信システムSは、路側機1によってイベントが検知されると、イベントを検知した路側機1の通信ネットワークNW内における通信を他の路側機1の通信よりも優先的に実行させる優先通信制御(以下、QoS(Quality of Service)制御という)を実行する。QoS制御の詳細については後述する。
【0033】
終端装置2は、通信ネットワークNW内に配置され、通信ネットワークNW内の通信を制御する装置である。終端装置2は、例えばOLT(optical line terminal)である。複数の終端装置2それぞれは、第2通信I/F23としての複数のPIF(PON Interface)カードを有し、複数の路側機1に接続される。また終端装置2は、WANインターフェイスである第1通信I/F22を有し、L3スイッチ4を介してネットワーク通信網NW1に接続される。即ち、終端装置2は、複数の路側機1とネットワーク通信網NW1とを相互に接続する。この構成により、複数の路側機1のそれぞれから終端装置2に送信されたデータを、ネットワーク通信網NW1を介して管制サーバ3や各施設8のサーバ80に送信できる。
【0034】
例えば図1に示す通信システムSでは、複数の終端装置2は、第2通信I/F23やカプラ5を用いて分岐させた通信回線L1、路側機1内に配置されるONU(optical network unit)17を介して複数の路側機1に接続される。通信回線L1は、例えば光ファイバ等の通信回線である。即ち、複数の終端装置2のそれぞれは、通信回線L1やONU17とともにPON(passive optical network)を用いたPONアクセスシステムNW2を形成する。図1に示す例では、1つの終端装置2と複数の路側機1によって1つのPONアクセスシステムNW2が構成される。図1では図示を省略しているが、本実施形態では1つの終端装置2に対して多数の路側機1が接続されている。例えば複数の路側機1を互いに300~500mの間隔を空けて配置した場合、数10km以上の範囲の通信を1つの終端装置2がカバーできる。
【0035】
L3スイッチ4は、ネットワーク通信網NW1と複数のPONアクセスシステムNW2とを相互に接続する。
【0036】
管制サーバ3は、通信ネットワークNW内に配置され、通信ネットワークNW内の通信を制御する。管制サーバ3は、ネットワーク通信網NW1及びL3スイッチ4を介して複数のPONアクセスシステムNW2に接続される。
【0037】
<路側機1の構成と動作について>
次に、QoS制御における路側機1の機能的構成について説明する。図2は、路側機1のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【0038】
路側機1は、図2に示すように処理部10と、記憶部11と、通信I/F12と、無線通信部13と、撮像部14と、入力部15と、センサ16と、を備える。
【0039】
処理部10は、CPU等のプロセッサによって構成される演算装置であり、後述の記憶部11から各種プログラム、データを読み込んで実行し、QoS制御の機能を実現する。本実施形態では、処理部10は、イベント検知部101と、QoS信号出力部(優先通信信号出力部)102と、QoS信号送信部(優先通信信号送信部)103と、連携通信部104と、通信制御部105と、イベント情報送受信部106の各機能部のデータ処理を実行する。各機能部の動作については後述する。
【0040】
記憶部11は、ハードウェア群を路側機1として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードウェア(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部11は、本実施形態の各機能を処理部10に実行させるためのプログラム(路側機1の制御プログラム)、各種パラメータ、QoS制御に利用されるデータ、路側機1のIPアドレスやMACアドレス等の識別情報、路側機1に配置されるONU17のLLID(logical Link ID)等の識別情報、通信ネットワークNWに関する情報、イベントの種類に関する情報やイベントの種類に応じて予め設定された優先度が記憶される。
【0041】
通信I/F12は、路側機1内に配置されたONU17に接続され、PONアクセスシステムNW2を介して通信するためのインターフェイスである。
【0042】
無線通信部13は、路側機1が周囲の装置と無線による通信の処理を実行する。無線通信部13は、路側機1の通信可能エリア内を走行する車両61やドローン62、人が携帯するスマートフォン等のモバイル端末63と無線通信を行う。無線通信部13は、例えば車両61からエアバックが作動していることを示す信号や自車の故障を示す信号、車両61の位置情報、車両61に搭載される車載装置のMACアドレスやIPv6、ナンバープレート情報、車両61の用途や種別を示す車両用途種別情報等を受信する。また例えば無線通信部13は、ドローン62によって撮像されたイベントの発生現場の画像や通信ネットワークNWを介して施設8等から送信されたドローン62に対する飛行制御信号の送受信を行う。また例えば無線通信部13は、車両61の車載カメラやモバイル端末63のカメラ等によって撮像されたイベントの発生現場の画像や該発生現場に関する音声情報、通信ネットワークNWを介して病院等から送信される救命処置を行うための情報等の送受信を行う。
【0043】
撮像部14は、車両61が走行する道路7の画像を撮像する。撮像部14は、撮像した画像の情報を処理部10に送信する。
【0044】
入力部15は、路側機1の周囲を移動する歩行者や車両61の運転者等が路側機1の周辺でイベントが発生した場合に、通信ネットワークNWを介して接続される各種施設8に通知する部位である。入力部15は、例えば押しボタン等によって構成される。
【0045】
センサ16は、音響センサ、振動センサ等の環境変化を検知することができるデバイスを含む。
【0046】
次に、処理部10がQoS制御を実行するための機能的構成について説明する。
【0047】
イベント検知部101は、路側機1の周辺で発生するイベントを検知する処理を実行する。具体的には、イベント検知部101は、無線通信部13や撮像部14、入力部15、センサ16等からの情報を取得し、取得した情報に基づいてイベントの発生の有無を検知する。例えばイベント検知部101は、ドローン62やモバイル端末63によって撮像された画像や撮像部14によって撮像された画像を取得し、取得した画像を解析することでイベントの発生を検知してもよい。画像の解析は、例えば機械学習により行ってもよい。例えばイベント検知部101は、無線通信部13を介して取得した車両61の位置情報に基づいてイベントの発生を検知してもよい。イベント検知部101は、例えば対向車線を跨ぐような位置等の通常時とは異なる位置に車両61が停止している場合に、イベントが発生していると判定することでイベントを検知してもよい。また例えばイベント検知部101は、車両61のエアバックが作動した場合や車両61から自車の故障を示す信号を受信した場合に、イベントが発生していると判定することでイベントを検知してもよい。また例えばイベント検知部101は、無線通信部13を介して取得した車両用途種別情報に基づいて自動運転車両や公共車両、隊列走行車両、道路点検用車両等の運行に関するイベントを検知してもよい。
【0048】
またイベント検知部101は、発生したイベントの種類を特定する処理も実行する。イベントの種類としては、例えば命にかかる重大な交通事故、車両61の運転手の異常発生、自動運転時におけるODD(Operational Design Domain)条件からの逸脱、緊急車両の走行、軽微な接触事故、火災、路面異常、交通法規違反、自動運転車用のマップ(いわゆる、ダイナミックマップ)情報の更新、車両61の故障、自動運転車両の運行、公共車両の運行、隊列走行車両の運行、道路点検用車両の運行等が挙げられる。
【0049】
QoS信号出力部102は、イベント検知部101によってイベントが検知された場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を他の路側機1の通信よりも優先的に実行させるQoS信号(優先通信信号)を出力する処理を実行する。即ち、QoS信号は、イベントを検知した路側機1の通信ネットワークNWにおける通信を優先的に実行させるという命令を含む制御信号である。
【0050】
QoS信号送信部103は、QoS信号出力部102によって出力されたQoS信号を終端装置2及び管制サーバ3に送信する処理を実行する。例えばQoS信号送信部103は、QoS信号と、検知されたイベントの種類及び優先度と、路側機1のIPアドレスやMACアドレス等を含む路側機識別情報と、ONU17のLLID等のONU識別情報を一組のQoS関連情報として終端装置2に送信する。例えばイベントの優先度は、例えばCoS(Class of Service)値やToS(Type of Service)を用いて示され、パケットのヘッダに付されて送信される。終端装置2及び管制サーバ3は、路側機1から送信されたQoS関連情報に基づいて後述するQoS制御を実行する。
【0051】
連携通信部104は、通信I/F12や無線通信部13等を介して他の路側機1との通信を行う処理を実行する。連携通信部104は、例えば他の路側機1との通信によって他の路側機1によるイベントの検知の有無や検知されたイベントの種類等の情報を取得可能である。これにより、他の路側機1の周辺におけるイベントの発生状況を把握できる。
【0052】
通信制御部105は、QoS信号出力部102によってQoS信号が出力された場合に、通信ネットワークNW内における自身の通信を他の路側機1よりも優先的に実行させるQoS制御を行う処理を実行する。なお、通信制御部105は、QoS信号送信部103によって終端装置2や管制サーバ3にQoS信号が送信される場合、QoS制御を実行しなくてもよい。この場合、終端装置2や管制サーバ3がQoS制御を実行する。
【0053】
通信制御部105は、例えば通信ネットワークNWにおける通信回線Lの単位時間あたりに通信処理できるデータ量(以下、スループットの量と称する)を変更する帯域制御によりQoS制御を実行してもよい。例えば通信制御部105は、通信I/F12と終端装置2や管制サーバ3、各種施設8までの通信回線Lのスループットの量を他の路側機1よりも大きく割り当てる処理(スループットの量を大きくする処理)を実行してもよい。ここで、スループットの量が大きいほど高速にデータを伝送できることができる。また、このとき通信制御部105は、イベント検知部101によって特定されたイベントの種類に応じてスループットの量を変更してもよい。例えば通信制御部105は、優先度の高いイベントほどスループットの量を大きく割り当ててもよい。例えばイベントの優先順位を高い順に、人命にかかわる重大交通事故、車両6の運転手の異常発生、自動運転時におけるODD条件からの逸脱、緊急車両の走行、軽微な接触事故、火災、路面異常、交通法規違反、自動運転マップ情報の更新、車両6の故障、自動運転車両の運行、公共車両の運行、隊列走行車両の運行、道路点検用車両の運行としてもよい。例えば通信制御部105は、イベントとして重大交通事故が検知された場合、イベントを検知した路側機1に、使用する通信回線Lの帯域の100%を割り当ててもよく、軽微な接触事故が検知された場合、使用する通信回線Lの帯域の70%を割り当ててもよい。
【0054】
また例えば通信制御部105は、QoS制御を実行している間に、連携通信部104によって他の路側機1の周辺におけるイベントの発生が検知された場合、イベントの種類を比較し、通信ネットワークNWにおける自身の通信回線Lのスループットの量を変更してもよい。なお、QoS制御は、QoS信号を取得してから予め定められた時間の経過後に終了してもよく、施設8等の外部からのQoS制御解除信号を通信制御部105が受信したタイミングで終了してもよく、イベント検知部101によって判定されたタイミングで終了してもよい。
【0055】
QoS制御の対象となる通信は、例えばイベントを検知した路側機1と終端装置2との間の通信、PONアクセスシステムNW2及びネットワーク通信網NW1を介した路側機1と管制サーバ3との間の通信や路側機1と施設8のサーバ80との間の通信等が挙げられる。またイベントの種類に応じて必要とされる通信先が異なるので、通信制御部105は、イベントの種類に応じて帯域制御を行う通信回線Lを選択してもよい。例えば、イベント検知部101がレンタカーである車両61の接触事故を検知した場合、イベントが検知された路側機1とレンタカー会社のサーバ80とを繋ぐ通信回線Lに対して帯域制御を行ってもよい。
【0056】
なお、通信制御部105は、通信ネットワークNWにおけるデータの送信頻度を変更することでQoS制御を実行してもよい。また通信制御部105は、通信ネットワークNWにおけるパケットの送受信の順序を変更する優先制御によりQoS制御を実行してもよい。
【0057】
イベント情報送受信部106は、QoS制御により優先的に実行される通信を利用してイベントに関する情報を通信ネットワークNWに送信し、通信ネットワークNWから得られるイベントに関するフィードバック情報を受信し、出力する処理を実行する。イベントに関する情報としては、例えばイベントの発生現場の画像やイベントの発生現場に関する音声情報や文字情報、イベントによって負傷した負傷者のモバイル端末63が取得した該負傷者の心拍数や血圧等の生体情報等が挙げられる。またイベントに関するフィードバック情報としては、病院等の施設8から送信される救命活動を行うための指示情報、路側機1の周辺に設けられた報知装置64を制御する制御信号等が挙げられる。
【0058】
報知装置64は、イベントの発生を周囲に報知する装置である。報知装置64としては、例えば道路7上や路側に配置され、文字情報を表示する液晶ディスプレイ又はLED(light-emitting diode)ディスプレイ等の表示装置であってもよく、音声情報を発生するスピーカであってもよく、道路7に埋め込まれ、発光するトラフや道路鋲等であってもよい。例えば、車両61同士の衝突による交通事故が発生した場合に、イベント情報送受信部106から報知装置64である表示装置に制御信号が送信されると、表示装置にイベントの発生等を報知する文字情報が表示される。
【0059】
<終端装置2>
次に、QoS制御における終端装置2の機能的構成について説明する。図3は、終端装置2のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【0060】
終端装置2は、図3に示すように処理部20と、記憶部21と、第1通信I/F22と、第2通信I/F23と、を備える。
【0061】
処理部20は、CPU等のプロセッサによって構成される演算装置であり、後述の記憶部21から各種プログラム、データを読み込んで実行し、QoS制御の機能を実現する。本実施形態では、処理部20は、QoS信号取得部(優先通信信号取得部)201と、通信制御部202の各機能部のデータ処理を実行する。各機能部の動作については後述する。
【0062】
記憶部21は、ハードウェア群を終端装置2として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードウェア(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部21は、本実施形態の各機能を処理部20に実行させるためのプログラム(終端装置2の制御プログラム)、各種パラメータ、QoS処理に利用されるデータ、PONアクセスシステムNW1に接続される路側機1の路側機識別情報、ONU識別情報、通信ネットワークNWに関する情報、イベントの種類及びイベントの種類に応じて予め設定された優先度に関する情報等が記憶される。
【0063】
第1通信I/F22は、終端装置2がL3スイッチ4及びネットワーク通信網NW1等を介して通信するためのWANインターフェイスである。
【0064】
第2通信I/F23は、終端装置2が通信回線L1等を介して通信するためのインターフェイスである。終端装置2は、第1通信I/F22及び第2通信I/F23により、複数の路側機1とネットワーク通信網NW1とを相互に接続する。
【0065】
次に、処理部20がQoS制御を実行するための機能的構成について説明する。
【0066】
QoS信号取得部201は、路側機1のQoS信号送信部103から送信されたQoS信号を取得する処理を実行する。本実施形態では、QoS信号取得部201は、QoS信号送信部103から送信されるQoS関連情報を取得する。
【0067】
通信制御部202は、QoS信号取得部201がQoS信号を取得した場合に、通信ネットワークNW内におけるQoS信号の送信元の路側機1の通信を他の路側機1よりも優先的に実行させるQoS制御を行う処理を実行する。
【0068】
通信制御部202は、例えば通信ネットワークNWにおける通信回線Lのスループットの量を変更する帯域制御によりQoS制御を実行してもよい。例えば通信制御部202は、QoS信号の送信元の路側機1が接続されるONU17との間の通信回線L1のスループットの量を、他のONU17との間の通信回線L1のスループットの量よりも大きく割り当てる処理を実行してもよい。例えば通信制御部202は、上述した路側機1の通信制御部105のように、取得したイベントの種類に応じてスループットの量を変更してもよい。このとき通信制御部202は、QoS信号とともに送信されたLLIDとイベントの優先度に関する情報を参照してスループットの量を変更する通信回線L1とそのスループットの量の値を特定してもよい。
【0069】
また例えば通信制御部202は、QoS制御を実行している間に、終端装置2が複数の路側機1からQoS信号を受信した場合に、各路側機1から受信したそれぞれのイベントの種類に基づいてイベントの優先順位を決定してもよい。そして、通信制御部202は、決定した優先順位に応じてイベントを検知した路側機1それぞれと終端装置2との間の通信回線Lのスループットの量を変更してもよい。例えば通信制御部202は、検知したイベントの優先順位が高いほどスループットの量をより大きく設定してもよい。
【0070】
また例えば通信制御部202は、イベントの種類に応じて通信ネットワークNWにおいて帯域制御を行う通信回線Lを選択してもよい。例えば通信制御部202は、重大交通事故のイベント情報を受信した場合、ネットワーク通信網NW1を介して終端装置2と病院のサーバ80とを繋ぐ通信回線Lのスループットの量を変更してもよい。なお、通信制御部202は、通信ネットワークNWにおけるデータの送信頻度を変更することでQoS制御を実行してもよい。また通信制御部202は、通信ネットワークNWにおけるパケットの送受信の順序を変更する優先制御によりQoS制御を実行してもよい。
【0071】
<管制サーバ3>
次に、QoS制御における管制サーバ3の機能的構成について説明する。図4は、管制サーバ3のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【0072】
管制サーバ3は、図4に示すように処理部30と、記憶部31と、通信I/F32と、を備える。
【0073】
処理部30は、CPU等のプロセッサによって構成される演算装置であり、後述の記憶部31から各種プログラム、データを読み込んで実行し、QoS制御の機能を実現する。本実施形態では、処理部30は、QoS信号取得部(優先通信信号取得部)301と、通信制御部302の各機能部のデータ処理を実行する。各機能部の動作については後述する。
【0074】
記憶部31は、ハードウェア群を管制サーバ3として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードウェア(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部31は、本実施形態の各機能を処理部30に実行させるためのプログラム(管制サーバ3の制御プログラム)、各種パラメータ、QoS制御に利用されるデータ、終端装置2及び路側機1のIPアドレス等の識別情報、通信ネットワークNWに関する情報、イベントの種類及びイベントの種類に応じて予め設定された優先度に関する情報等が記憶される。
【0075】
通信I/F32は、管制サーバ3がネットワーク通信網NW1等を介して通信するためのインターフェイスである。
【0076】
次に、処理部30がQoS制御を実行するための機能的構成について説明する。
【0077】
QoS信号取得部301は、路側機1のQoS信号送信部103からQoS信号をPONアクセスシステムNW2やネットワーク通信網NW1等を介して取得する処理を実行する。本実施形態では、QoS信号取得部301は、QoS信号送信部103から送信されるQoS関連情報を取得する。
【0078】
通信制御部302は、QoS信号取得部301がQoS信号を取得した場合に、通信ネットワークNW内におけるQoS信号の送信元の路側機1の通信を他の路側機1よりも優先的に実行させるQoS制御を行う処理を実行する。
【0079】
通信制御部302は、例えば通信ネットワークNWにおける通信回線Lのスループットの量を変更する帯域制御によりQoS制御を実行してもよい。例えば通信制御部203は、QoS信号の送信元の路側機1との間の通信回線Lのスループットの量を他の路側機1との間の通信回線Lよりも大きく割り当てる処理を実行してもよい。例えば通信制御部302は、上述した通信制御部105、202のように、取得したイベントの種類に応じてスループットの量を変更してもよい。
【0080】
また例えば通信制御部302は、QoS制御を実行している間に、管制サーバ3が複数の路側機1からQoS信号を受信した場合に、各路側機1から受信したイベントの種類に基づいてイベントの優先順位を決定してもよい。そして通信制御部202は、決定した優先順位に応じてイベントを検知した路側機1それぞれの通信ネットワークNWにおける通信回線Lのスループットの量を変更してもよい。例えば通信制御部302は、検知したイベントの優先順位が高いほどスループットの量をより大きく設定してもよい。また例えば通信制御部302は、イベントの種類に応じて上位の通信ネットワークNWにおいて帯域制御を行う通信回線Lを選択してもよい。
【0081】
次に、本実施形態に係る通信システムSによるQoS制御の流れについて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
【0082】
まず路側機1によって実行されるQoS制御の処理の流れについて図5を参照しながら説明する。図5は、路側機1の処理部10が実行するQoS制御の一例を示すフローチャートである。処理部10は、例えば記憶部11等に記憶されたプログラムに基づいて図5の処理を実行する。図5に例示する処理フローは、設置された路側機1が起動したときに処理を開始し、その後路側機1の動作中は処理を継続する。
【0083】
ステップS11において、イベント検知部101は、路側機1の周辺で発生するイベントを検知する処理を実行する。処理部10は、イベント検知部101によってイベントの発生が検知された場合(ステップS11;YES)、処理をステップS12に移行させる。一方で、処理部10は、イベント検知部101によってイベントが検知されていないと判定した場合(ステップS11;NO)、ステップS11の処理を繰り返す。
【0084】
ステップS12において、イベント検知部101は、ステップS11で検知したイベントの種類を特定する処理を実行する。
【0085】
ステップS13において、QoS信号出力部102は、QoS信号を出力する処理を実行する。
【0086】
ステップS14において、通信制御部105は、QoS信号出力部102によってQoS信号が出力された場合に、通信ネットワークNW内における自身の通信を他の路側機1よりも優先的に実行させるQoS制御を実行する。例えば通信制御部105は、ステップS12で特定されたイベントの種類に応じてスループットの量を変更してもよい。
【0087】
ステップS15において、処理部10は、施設8等からのQoS制御解除信号を受信したかを判定する。処理部10は、QoS制御解除信号を受信したと判定した場合(ステップS15;YES)、QoS制御を終了する。一方で、処理部10は、QoS制御解除信号を受信していないと判定した場合(ステップS15;NO)、ステップS14に戻る。
【0088】
次に、路側機1がQoS信号を送信し、終端装置2がQoS制御を実行する場合のQoS制御の処理の流れについて図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、路側機1の処理部10が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7は、終端装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6図7に例示する処理は、路側機1、終端装置2が起動したときに開始され、その後動作中は継続して処理を実行する。
【0089】
図6に示すように、ステップS21において、イベント検知部101は、路側機1の周辺で発生するイベントを検知する処理を実行する。処理部10は、イベント検知部101によってイベントの発生が検知された場合(ステップS21;YES)、処理をステップS22に移行させる。一方で、処理部10は、イベント検知部101によってイベントが検知されていないと判定した場合(ステップS21;NO)、ステップS21の処理を繰り返す。
【0090】
ステップS22において、イベント検知部101は、ステップS21で検知したイベントの種類を特定する処理を実行する。
【0091】
ステップS23において、QoS信号出力部102は、QoS信号を出力する処理を実行する。
【0092】
ステップS24において、QoS信号送信部103は、ステップS23で出力したQoS信号と、ステップS21で特定したイベントの種類及び優先度と、路側機識別情報と、ONU識別情報と、を一組のQoS関連情報としてONU17を介して終端装置2に送信する。その後、QoS制御における路側機1の処理部10が実行する処理が終了する。
【0093】
図7に示すように、ステップS25において、終端装置2のQoS信号取得部201は、ステップS24で送信されたQoS関連情報を取得する。
【0094】
ステップS26において、通信制御部202は、ステップS25で取得したQoS関連情報に基づいて、QoS信号の送信元の路側機1の通信を他の路側機1よりも優先的に実行させるQoS制御を実行する。例えば通信制御部202は、ステップS25で取得したイベント情報としてのイベントの種類に応じてQoS信号の送信元の路側機1に接続するONU17との間の通信回線L1のスループットの量を変更する。
【0095】
ステップS27において、処理部20は、施設8等からのQoS制御解除信号を受信したかを判定する。処理部20は、QoS制御解除信号を受信したと判定した場合(ステップS27;YES)、QoS制御を終了する。一方で、処理部20は、QoS制御解除信号を受信していないと判定した場合(ステップS27;NO)、ステップS26に戻る。
【0096】
路側機1や終端装置2によるQoS制御によれば、通信ネットワークNWにおけるイベント発生現場の路側機1の通信を優先的に実行させるQoS信号が出力されるので、イベントに関する情報伝達を優先的に行うことを可能となる。例えば検知したイベントが自動運転車両の運行である場合、走行中の自動運転車両と通信を行う路側機1のネットワークNWにおける通信が優先的に実行されるので、自動運転用の遠隔監視データの通信品質を担保し、遠隔監視のみによる無人自動運転の実現を支援できる。また例えば、検知したイベントが道路点検用車両の運行である場合、イベントを検知した路側機1を介して道路点検用車両によって検出されたセンシングデータや判定結果を優先的に送信できるので、路面等の異常検知や報知の確実性、即時性を高めることができる。また例えば、検知したイベントが隊列走行車両の運行である場合も有用である。高速道路等の自動車専用道で隊列走行を実施する場合、本線への合流地点を隊列走行車両が走行していると、加速車線から本線へ合流する車両61の妨げとなるという課題がある。本実施形態によれば、合流地点に設けられ、隊列走行車両の運行を検知した路側機1の通信を優先的に実行させることができるので、該路側機1から加速車線等を走行する車両61に合流地点における隊列走行車両の走行通知を確実に行うことができる。
【0097】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0098】
本実施形態に係る路側機1は、通信ネットワークNWに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機1を備える通信システムSに含まれる路側機1であって、自身の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知部101と、イベント検知部101によってイベントが検知された場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を他の路側機1の通信よりも優先的に実行させるQoS信号を出力するQoS信号出力部102と、を備える。これにより、交通事故等のイベントを検知した場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を優先的に実行させるQoS信号が出力されるので、イベントの発生現場との間での情報伝達を優先的に行うことを可能とする。よって、交通事故等のイベントの発生現場に安定した通信サービスを提供できる。
【0099】
また本実施形態に係る路側機1は、QoS信号出力部102によってQoS信号が出力された場合に、通信ネットワークNW内における自身の通信を優先的に実行させるQoS制御を行う通信制御部105を更に備える。これにより、交通事故等のイベントの発生現場との間で通信ネットワークNWを介した情報伝達を優先的に実行できる。
【0100】
また本実施形態に係る路側機1において、通信制御部105は、通信ネットワークNWにおけるスループットの量を変更することでQoS制御を行う。これにより、イベントの発生現場に安定した通信サービスをより確実に提供できる。
【0101】
また本実施形態に係る路側機1において、イベント検知部101は、検知したイベントの種類を特定し、通信制御部105は、QoS制御において特定されたイベントの種類に応じてスループットの量を変更する。これにより、イベントの優先度等を加味してイベントを検知した路側機1との通信に割り当てるスループットの量を変更できる。
【0102】
また本実施形態に係る路側機1において、他の路側機1との通信を行う連携通信部104を更に備える。これにより、他の路側機1が検知したイベントの発生状況も加味して通信ネットワークNW内における自身の通信に割り当てるスループットの量を変更できる。
【0103】
また本実施形態に係る路側機1において、通信制御部105は、通信ネットワークNWにおけるパケットの送受信の順序を変更することでQoS制御を行う。これにより、イベントの発生現場に安定した通信サービスをより確実に提供できる。
【0104】
また本実施形態に係る路側機1において、通信制御部105は、通信ネットワークNWにおけるデータの送信頻度を変更することでQoS制御を行う。これにより、イベントの発生現場に安定した通信サービスをより確実に提供できる。
【0105】
また本実施形態に係る路側機1は、QoS制御により優先的に実行される通信を利用してイベントに関する情報を通信ネットワークNWに送信し、通信ネットワークNWから得られるイベントに関するフィードバック情報を受信し、出力するイベント情報送受信部106と、を更に備える。これにより、遠隔地からイベントの発生現場に適切な情報を供給することが可能となる。例えば撮像部14等によって撮像されている高精細な映像を遠隔地に存在する病院へリアルタイムで送信できるとともに、送信された映像を確認した病院からの救命処置等に関する適切な情報をイベントの発生現場に提供できる。
【0106】
本実施形態に係る通信システムSは、通信ネットワークNWに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機1と、通信ネットワークNW内に配置され、通信ネットワークNW内の通信を制御する管理装置2,3と、を備え、路側機1は、自身の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知部101と、イベント検知部101によってイベントが検知された場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を他の路側機1の通信よりも優先的に実行させるQoS信号を出力するQoS信号出力部102と、を備える。これにより、交通事故等のイベントを検知した場合に、当該イベントを検知した路側機1と通信ネットワークNWとの間の通信を優先的に実行させるQoS信号が出力されるので、イベントの発生現場との間での情報伝達を優先的に行うことを可能とする。よって、交通事故等のイベントの発生現場に安定した通信サービスを提供できる。
【0107】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、路側機1は、QoS信号出力部102によってQoS信号が出力された場合に、通信ネットワークNW内における自身の通信を優先的に実行させるQoS制御を行う通信制御部105を更に有する。これにより、交通事故等のイベントの発生現場との間で通信ネットワークNWを介して情報の伝達を優先的に実行できる。
【0108】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、路側機1は、QoS信号を管理装置2,3に送信する信号送信部103を更に有し、管理装置2,3は、QoS信号を受信した場合に、該QoS信号の送信元の路側機1の通信ネットワークNW内における通信を優先的に実行させるQoS制御を行う通信制御部202を更に有する。これにより、交通事故等のイベントの発生現場との間で通信ネットワークNWを介して情報の伝達を優先的に実行できる。
【0109】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、複数の路側機1は、ONU17を介して終端装置2に接続され、終端装置2は、OLTであり、ONU17とともにPONアクセスシステムNW2を構成する。これにより、ONU17を介して複数の路側機1を1つの終端装置2にまとめて繋げているので、光ファイバ等の通信回線Lの敷設費用を抑制できる。
【0110】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、通信制御部202は、通信ネットワークNWにおけるスループットの量を変更することでQoS制御を行う。これにより、イベントの発生現場に安定した通信サービスをより確実に提供できる。
【0111】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、路側機1のイベント検知部101は、検知したイベントの種類を特定し、QoS信号送信部103は、QoS信号とともにイベントの種類を管理装置2,3に送信し、管理装置2,3の通信制御部202は、QoS制御においてイベントの種類に応じてスループットの量を変更する。これにより、イベントの優先度等を加味してイベントを検知した路側機1との通信に割り当てるスループットの量を変更できる。
【0112】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、通信制御部202は、複数の路側機1からQoS信号を受信した場合に、それぞれのイベントの種類に基づいてイベントの優先順位を決定し、決定した優先順位に応じてイベントを検知した路側機1それぞれと管理装置2,3との間の通信回線のスループットの量を変更する。これにより、異なる複数のエリアにおいてイベントが発生した場合、それぞれのイベントの緊急性等の状況も加味してイベントを検知した路側機1それぞれに割り当てるスループットの量を変更できる。
【0113】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、通信制御部105,202は、通信ネットワークNWにおけるパケットの送受信の順序を変更することでQoS制御を行う。これにより、イベントの発生現場に安定した通信サービスをより確実に提供できる。
【0114】
また本実施形態に係る通信システムSにおいて、通信制御部105,202は、通信ネットワークNWにおけるデータの送信頻度を変更することで通信制御を行う。これにより、イベントの発生現場に安定した通信サービスをより確実に提供できる。
【0115】
本実施形態に係る通信方法は、通信ネットワークNWに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機1を備える通信システムSに含まれる路側機1が実行する通信方法であって、路側機1の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知ステップと、イベント検知ステップでイベントが検知された場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を他の路側機1の通信よりも優先的に実行させるQoS信号を出力する出力ステップと、を含む。これにより、交通事故等のイベントを検知した場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を優先的に実行させるQoS信号が出力されるので、イベントの発生現場との間での情報伝達を優先的に行うことを可能とする。よって、交通事故等のイベントの発生現場に安定した通信サービスを提供できる。
【0116】
本実施形態に係るプログラムは、通信ネットワークNWに接続され、それぞれ異なるエリアに設置される複数の路側機1を備える通信システムS内の路側機1に含まれるコンピュータに、路側機1の周辺で発生するイベントを検知するイベント検知機能と、イベント検知機能によってイベントが検知された場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を他の路側機1の通信よりも優先的に実行させるQoS信号を出力する出力機能と、を実行させる。これにより、交通事故等のイベントを検知した場合に、通信ネットワークNWにおける自身の通信を優先的に実行させるQoS信号が出力されるので、イベントの発生現場との間での情報伝達を優先的に行うことを可能とする。よって、交通事故等のイベントの発生現場に安定した通信サービスを提供できる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0118】
上記実施形態では、通信システムSの複数の路側機1はPONアクセスシステムNW2のようなP2MP(Point to Multi Point)のネットワーク通信網に接続されていたが、PONアクセスシステムNW2の代わりに、L2スイッチ(Layer 2 Switch)等の装置に接続されていてもよい。
【0119】
また上記実施形態では、路側機1がQoS信号送信部103及び通信制御部105の両方を備えていたが、いずれか一方を備えない構成であってもよい。
【0120】
また例えば、路側機1が連携通信部104を備えない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 路側機
2 終端装置(管理装置)
3 管制サーバ(管理装置)
101 イベント検知部
102 QoS信号出力部(信号出力部)
NW 通信ネットワーク
S 通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7