(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】載置台、基板を処理する装置、及び基板を温度調節する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240814BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2020119427
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 聡樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 栄之輔
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-022464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0071755(US,A1)
【文献】特開2014-011382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されると共に、少なくとも外部からの入熱を受ける載置台本体と、
前記載置台本体に設けられ、冷媒により、前記載置台本体から熱を奪うための冷媒流路と、
前記冷媒流路内を冷媒が流れる方向を反転させるため、前記冷媒流路に前記冷媒が供給される位置と、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される位置とを、前記冷媒流路の一端と他端との間で切り替える切替機構と、
前記載置台本体の基板の載置面における複数の異なる位置、あるいは、前記載置面に載置された基板の複数の異なる位置の温度を測定する温度測定部と、
制御部と、を有し、
前記温度測定部により温度を測定する位置には、前記冷媒流路の前記一端側に対応する位置と前記他端側に対応する位置とが含まれている場合に、
前記制御部は、前記載置台本体が入熱を受ける期間中、前記冷媒の流れる方向を繰り返し反転させ
ると共に、前記温度測定部により測定された、前記冷媒流路の前記一端側に対応する位置、及び前記他端側に対応する位置の温度の差を小さくするように、前記一端側から供給される方向に前記冷媒が流れる時間と、前記他端側から供給される方向に前記冷媒が流れる時間と、を各々調節するよう前記切替機構を制御するように構成された載置台。
【請求項2】
前記載置台本体には、当該載置台本体を加熱するためのヒータが設けられ、前記入熱を受ける期間として、前記ヒータによって前記載置台本体を加熱する期間を含む、請求項1に記載の載置台。
【請求項3】
入熱を受ける期間中の前記冷媒流路内の温度、圧力環境下にて、前記冷媒はで気体である、請求項1または2に記載の載置台。
【請求項4】
前記冷媒流路の前記一端に接続された第1系統流路と、前記冷媒流路の前記他端に接続された第2系統流路と、前記冷媒流路に供給される冷媒が流れ、第1接続流路を介して前記第1系統流路に接続されると共に、第2接続流路を介して前記第2系統流路に接続された冷媒供給流路と、前記冷媒流路から排出された冷媒が流れ、第3接続流路を介して前記第1系統流路に接続されると共に、第4接続流路を介して前記第2系統流路に接続された冷媒排出路とを備え、
前記切替機構は、前記4つの接続流路に各々設けられた開閉バルブの開閉状態を変更することにより、前記冷媒が供給される位置と前記冷媒が排出される位置とを切り替えるバルブ機構である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項5】
前記冷媒流路は、前記載置台本体における基板の載置面の周方向に沿って延び、前記載置面の中央側から周縁部側へ向けて間隔を空けて並べられた複数の周方向流路部と、前記載置面の径方向に沿って延び、隣り合って配置された前記周方向流路部の間を連結する連結流路部とを含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項6】
前記冷媒流路は、前記載置台本体における基板の載置面の中央部側と周縁部側との間で放射状に延びる複数の径方向流路を有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項7】
前記載置台本体における基板の載置面を平面視したとき、前記冷媒流路の流路形状は、前記載置面の中央部の周りに回転対称に形成されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項8】
前記載置台本体の互いに異なる領域を加熱する複数の前記ヒータを含み、
前記複数のヒータの各々の出力を、互いに独立して調節して前記基板の加熱温度を調節する出力調節部を備えた、請求項2に記載の載置台。
【請求項9】
前記冷媒流路に供給される冷媒の流量を調節する流量調節部と、を有し、
前記制御部は、前記複数の異なる位置の温度に基づいて
、前記ヒータの出力と、冷媒の流量と、のうちの少なくとも一つの制御変数を調節して、前記複数の異なる位置の温度の差を小さくするように前記切替機構、前記ヒータの出力調節部、または流量調節部を制御するように構成された請求項8に記載の載置台。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の前記載置台と、
前記載置台が内部に設けられ、基板の処理を行う処理空間を形成する処理チャンバと、を備えた基板を処理する装置。
【請求項11】
前記載置台に載置された基板に向けて基板を処理するための処理ガスを供給するガス供給部を有し、
前記処理チャンバの内壁面、あるいは、ガス供給部を加熱する他のヒータを備え、前記他のヒータから供給される熱が、前記外部からの入熱の熱源となる、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記処理ガスをプラズマ化するプラズマ形成部を備え、前記プラズマ化した処理ガスから供給されるエネルギーが前記外部からの入熱の熱源となる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
基板を温度調節する方法において、
少なくとも外部からの入熱を受ける載置台本体に基板を載置する工程と、
前記載置台本体に設けられた冷媒流路
の一端と他端との間に冷媒を通流させて前記載置台本体の熱を奪う工程と、
前記載置台本体の基板の載置面における複数の異なる位置、あるいは前記載置面に載置された基板の複数の異なる位置の温度を測定する工程と、を有し、
前記温度を測定する工程にて温度を測定する位置には、前記冷媒流路の前記一端側に対応する位置と前記他端側に対応する位置とが含まれている場合に、
前記載置台本体の熱を奪う工程は、前記載置台本体が入熱を受ける期間中、前記冷媒流路内を前記冷媒が流れる方向を繰り返し反転させ
ると共に、前記前記温度を測定する工程にて前記冷媒流路の前記一端側に対応する位置、及び前記他端側に対応する位置の温度の差を小さくするように、前記一端側から供給される方向に前記冷媒が流れる時間と、前記他端側から供給される方向に前記冷媒が流れる時間と、を各々調節しながら実施される、方法。
【請求項14】
前記載置台本体に設けられたヒータにより、当該載置台本体を加熱する工程を有し、前記入熱を受ける期間として、前記載置台本体を加熱する工程の実施期間を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記入熱を受ける期間中の前記冷媒流路内の温度、圧力環境下にて、前記冷媒は気体である請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記載置台本体を加熱する工程では、当該載置台本体の異なる領域を、互い異なる温度に加熱する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記温度を測定する工程にて測定した複数の異なる位置の温度に基づいて
、前記ヒータの出力と、前記冷媒の流量と、の少なくとも一つを調節することにより、前記複数の異なる位置の温度の差を小さくする工程と、を含む請求項14または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、載置台、基板を処理する装置、及び基板を温度調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に成膜処理やエッチング処理などの各種処理が行われるが、これらの処理は、ウエハを所定の温度に温度調節した状態で行われることがある。
ウエハを温度調節するにあたっては、例えば処理対象のウエハが載置される載置台に設けられたヒータを用いてウエハを加熱する構成が知られている。ウエハの処理においては、ウエハの面内で均一にすることが求められている。
【0003】
特許文献1には、複数の冷媒通路を流れる冷媒を用いて載置台に載置されたウエハの温度調節を行うと共に、チラーユニットと及び加熱ユニットを用いて冷媒の温度調整を行う技術が記載されている。さらにこれらの冷媒通路に対しては、チラーユニットと及び加熱ユニットから供給される冷媒を切り換えることができるように構成され、載置台の温度ないし温度分布を多様または高精度に制御する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板を面内で均一に温度調節する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の載置台は、基板が載置されると共に、少なくとも外部からの入熱を受ける載置台本体と、
前記載置台本体に設けられ、冷媒により、前記載置台本体から熱を奪うための冷媒流路と、
前記冷媒流路内を冷媒が流れる方向を反転させるため、前記冷媒流路に前記冷媒が供給される位置と、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される位置とを、前記冷媒流路の一端と他端との間で切り替える切替機構と、
前記載置台本体の基板の載置面における複数の異なる位置、あるいは、前記載置面に載置された基板の複数の異なる位置の温度を測定する温度測定部と、
制御部と、を有し、
前記温度測定部により温度を測定する位置には、前記冷媒流路の前記一端側に対応する位置と前記他端側に対応する位置とが含まれている場合に、
前記制御部は、前記載置台本体が入熱を受ける期間中、前記冷媒の流れる方向を繰り返し反転させると共に、前記温度測定部により測定された、前記冷媒流路の前記一端側に対応する位置、及び前記他端側に対応する位置の温度の差を小さくするように、前記一端側から供給される方向に前記冷媒が流れる時間と、前記他端側から供給される方向に前記冷媒が流れる時間と、を各々調節するよう前記切替機構を制御するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板を面内で均一に温度調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る成膜装置の一例を示す縦断側面図である。
【
図2】本開示に係る載置台の一例を示す縦断側面図である。
【
図3】前記載置台に設けられる冷却板の平面図である。
【
図4】前記載置台の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】冷媒流路における冷媒の流れる方向の切り替えを説明する第1の説明図である。
【
図6】冷媒流路における冷媒の流れる方向の切り替えを説明する第2の説明図である。
【
図7】ヒータの加熱及び冷媒の通流の一例を示すタイムチャートである。
【
図8】第2の実施形態に係る冷媒流路の一例を示す平面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る載置台の電気的構成を示すブロック図である。
【
図10】実施例における温度の測定地点を示す平面図である。
【
図11】流路の切り替えのタイミングとヒータの出力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本開示の第1の実施形態係る載置台が設けられる基板を処理する装置の一例である枚葉式の成膜装置について、
図1を参照し説明する。本開示に係る成膜装置は、プラズマCVDにより基板であるウエハWにチタン(Ti)膜を成膜する。成膜装置は、ウエハWを処理する処理空間を形成する処理チャンバ10を備え、この処理チャンバ10は、アルミニウム(Al)等の金属により構成される。
処理チャンバ10の側壁にはウエハWを搬入又は搬出するための搬入出口11が、ゲートバルブ12により開閉自在に形成される。
【0010】
また処理チャンバ10の底壁の中央部には下方に向けて突出する例えば円筒状の排気室13が形成され、排気室13における側面には、排気口14aが開口し、排気口14aには、排気路14が接続されている。この排気路14は、真空排気機構16に接続され、処理チャンバ10内を所定の圧力まで減圧できるように構成されている。また処理チャンバ10の壁部には、ヒータ17が埋設され、処理チャンバ10の壁面を150~200℃に加熱できるように構成している。なおヒータ17には、ヒータに電力を供給する電源部(不図示)や、ヒータ17に供給される電力を調節して、ヒータ17の出力を調節しすることにより、処理チャンバ10の壁面の温度を調節する出力調節部(不図示)が設けられている。
【0011】
処理チャンバ10の天板部には、絶縁部材15を介して、処理チャンバ10内に処理ガスをシャワー状に供給するためのシャワーヘッド6が設けられる。シャワーヘッド6は、ベース部材61とシャワープレート62とを備えている。シャワープレート62は、ベース部材61の下面に設置され、シャワープレート62と、ベース部材61と、の間に処理ガスが拡散するガス拡散空間63が形成されている。シャワープレート62には、複数のガス吐出孔64が形成されており、ベース部材61の中央付近には、ガス導入孔66が形成されている。
【0012】
ガス導入孔66には、処理ガスを供給するためのガス供給系5が接続される。ガス供給系5は、処理チャンバ10にTi化合物であるTiCl4ガスを供給するように構成されるTiCl4ガス供給部を備えている。TiCl4ガス供給部は、TiCl4ガスの供給源51及びガス供給路511を含むものであり、ガス供給路511には、上流側から流量調整部M1、及びバルブV1が介設される。
【0013】
さらにガス供給系5は、還元ガスである水素(H2)ガスを供給するように構成されるH2ガス供給部と、プラズマ形成用のガスであるアルゴン(Ar)ガスを供給するように構成されるArガス供給部と、を備えている。
H2ガス供給部は、H2ガスの供給源52及びガス供給路521を含むものであり、ガス供給路521には、上流側から流量調整部M2、及びバルブV2が介設される。Arガス供給部は、Arガスの供給源53及びガス供給路531を含むものであり、ガス供給路531には、上流側から流量調整部M3、及びバルブV3が介設される。TiCl4ガス、H2ガス、及びArガスは処理ガスに相当する。
【0014】
またシャワーヘッド6には、整合器18を介してプラズマ形成用のRF電力供給源(高周波電源)19が接続されている。またベース部材61の上面には、シャワーヘッド6を加熱するためのヒータ68が設けられ、ヒータ68及びベース部材61の上方には、断熱部材67が設けられている。ヒータ68には、ヒータに電力を供給する電源部(不図示)や、ヒータ68の出力を調節してシャワーヘッド6の温度を調節する出力調節部(不図示)が設けられている。例えばシャワーヘッド6は、400~450℃に加熱される。
本例では、シャワーヘッド6及びガス供給系5が、前記載置台2に載置されたウエハWに向けてウエハWを処理する処理ガスを供給するガス供給部に相当する。
【0015】
処理チャンバ10の内部には、ウエハWが水平に載置される、後述の載置台本体20を含む載置台2が設けられている。載置台2について
図2~
図4も参照して説明する。詳しくは後述するが、載置台2には、ヒータ41、42が設けられ、載置台2に載置されたウエハWを加熱されるように構成されている。またヒータ41、42には、ヒータ41、42の出力を調節してウエハWの加熱温度を調節するため、出力調節可能な電源47、48が接続されている。この載置台2においては、不図示の温度センサにより載置台2の温度を測定して得た温度測定値と、温度設定値(例えば300~360℃)とを比較し、載置台2の温度が温度設定値に近づくようにヒータ41、42の出力をフィードバック制御している。
【0016】
ところで成膜装置では、例えば処理チャンバ10の壁面に処理ガスが吸着上ことによる副生成物の生成の抑制や、シャワーヘッド6内において処理ガスの分解を進行させるために、処理チャンバ10の壁面やシャワーヘッド6を加熱することがある。本例では、処理チャンバ10の壁面が170℃に加熱され、シャワーヘッド6は、420℃に加熱されている。このため既述のように処理チャンバ10のヒータ17やシャワーヘッド6のヒータ68のなど、載置台2の外部に熱源が設けられている場合がある。この場合には、本例の載置台2は、外部からの入熱を受ける状態となる。この結果、これらの熱源との間の入出熱のバランスにより入熱量が大きくなり、載置台2の温度が次第に上昇してしまうことがある。
【0017】
一方で既述のように、ヒータ41、42は、載置台2の温度が温度設定値に近づくように出力制御がなされているところ、外部からの入熱に伴う載置台2の温度上昇を抑えるためには、ヒータ41、42の出力を低下させる必要がある。しかしながら、ウエハWの処理を行う際の設定温度が十分に高くない場合には、ヒータ41、42の出力が下限値に達してしまい、ウエハWの温度の制御できなくなってしまうおそれもある。
また例えばプラズマ化した処理ガスを用いてウエハWの処理を行うプラズマ処理装置においては、プラズマを励起したときにプラズマからのエネルギーも加わるため、ヒータ41、42を用いた載置台2(ウエハW)の温度制御がさらに困難になってしまう場合もある。これらの観点で、載置台2を加熱するヒータ41、42自体や、プラズマ化した処理ガスから供給されるエネルギーも、載置台2に入熱される熱の供給を行う熱源となっている。
【0018】
そこでこのように、外部からの入熱が問題となる載置台2においては、載置台2に対してヒータ41、42と共に、冷媒流路31を設ける場合がある。この冷媒流路31内に冷媒を通流させ、冷媒と載置台2との熱交換により載置台2から熱を奪って外部へ排出することにより、ヒータ41、42の出力増減による温度制御を行うための温度面での余裕を確保することができる。
【0019】
ところで冷媒流路31を通流する冷媒は、当該冷媒が冷媒流路31を流れている間に載置台2の熱を吸収して温度が上昇してしまう。そのため冷媒流路31の供給位置に比べて、排出位置では、冷媒の温度が高くなってしまう。これにより、載置台2おいて、冷媒流路31の供給位置に近い領域では、冷媒に奪われる熱量が大きくなるが、排出位置に近づくに連れて、冷媒に奪われる熱量が小さくなっていく。
【0020】
この結果、載置台2において冷媒流路31に沿ってみたとき、冷媒の供給位置に近い領域と、排出位置に近い領域とで温度差が生じ、載置台2の面内で温度が不均一になるおそれが生じることが分かった。
そこで本開示に係る載置台2は、載置台2の温度の面内均一性を向上させるため、冷媒流路31を冷媒が流れる方向を繰り返し反転させることが可能な構成を備える。
【0021】
載置台2の構成について説明する。
図2に示すように載置台2は、ウエハWが載置される円板形状の載置台本体20を備えている。載置台本体20は、ウエハWが載置される載置面を備える加熱板4と、冷却板3と、支持板21と、を上方側からこの順で積層した構成となっている。例えば加熱板4と、冷却板3と、支持板21と、は、各々ニッケルにより構成され、ろう付けにより互いに接合されている。
【0022】
図2、
図3に示すように加熱板4は、その下面に溝部40が形成され、溝部40内には、通電により発熱する電熱線によって構成され、載置台本体20を加熱するためのヒータ41、42が設けられている。
図3に示すように、本例の加熱板4は、載置台本体20を平面視したとき、ウエハWの載置面の中央部寄りの領域にて周方向に引き回されるように設けられたヒータ41と、前記載置面の周縁部寄りの領域において周方向に引き回されるように設けられたヒータ42と、備えている。
【0023】
図4に示すようにヒータ41、42は、夫々配線43、44を介して電源47、48に接続されている。電源47、48は、ヒータ41、42に供給される電力を調節することにより、載置台本体20の温度を調節することが可能な構成となっている。即ち本開示の載置台2は、載置台本体20の径方向の互い異なる領域を加熱する複数のヒータ41、42を含む。さらに互いに独立して出力を調節してウエハWの加熱温度を調節するため、各ヒータ41、42に供給する電力を調節することが可能な電源47、48を備えている。ヒータ41、42に供給する電力を調節可能に構成された電源47、48は、本例の出力調節部に相当する。
図2、
図3に戻って冷却板3には、載置台本体20の熱を奪う冷媒が流れる冷媒流路31が設けられている。本例では、載置台本体20に対し、載置台本体20を加熱するためのヒータ41、42、処理チャンバ10側に設けられているヒータ17などから入熱を受けている期間中の冷媒流路31内の温度、圧力環境下にて気体である空気が冷媒として用いられる。冷媒流路31は、その両端部が開口した一本の配管により構成され、冷却板3の下面側に形成された溝部30内に配置されている。以下の説明では、冷媒流路31の一端側の開口を第1端部31A、他端側の開口を第2端部31Bと呼ぶ。
【0024】
本例では、冷媒流路31は、載置台本体20の周方向に向かって延び、ウエハWの載置面の中央部側から周縁部側へ向けて間隔を空けて並べられた複数の周方向流路部32A~32Cを含む。そして隣り合って配置された周方向流路部32A~32Cは、前記載置面の径方向に沿って伸びる連結流路部32D、32E、32Fによって連結されている。
上記構成により、
図3に示すように、冷媒流路31は、既述の第1端部31Aと第2端部31Bとの間を蛇行しながら前記載置面に対応する領域の全面に亘って設けられる。
【0025】
また
図3に示すように、冷媒流路31と、ヒータ41、42と、は、加熱板4と、冷却板3と、を積層したときに、上下に並び、互いに並行に延びる部位を含むように設置されている。このようにヒータ41、42と、冷媒流路31と、を上下に並べて設けることでヒータ41、42の熱を冷媒ガス導入孔流路31側に効率よく移動させ、冷媒流路31を流れる冷媒が、載置台本体20の表面の温度分布に直接影響を及ぼすことを抑制できる。
【0026】
図4に示すように冷媒流路31の一端である第1端部31Aには、第1系統流路311が接続され、冷媒流路31の他端である第2端部31Bには、第2系統流路312が接続されている。
第1系統流路311及び第2系統流路312には、冷媒供給路33を介して、冷媒である空気の供給を行う冷媒供給源37が接続されている。詳細には、第1系統流路311は、第1接続流路352を介して冷媒供給路33に接続され、第2系統流路312は、第2接続流路351を介して冷媒供給路33に接続されている。
図4中の符号38は、冷媒流路31に供給される冷媒の流量を調節する流量調節部を指している。
【0027】
また第1系統流路311及び第2系統流路312には、冷媒排出路34を介して、冷媒を排気する排気部39が接続されている。詳細には、第1系統流路311は、第3接続流路362を介して冷媒排出路34に接続され、第2系統流路312は、第4接続流路361を介して冷媒排出路34に接続されている。
第1接続路352、第2接続路351に対しては夫々バルブV33、V35が設けられている。また第3接続流路362、第4接続流路361に対してはそれぞれバルブV36、V34が設けられている。バルブV33~V36は、本例の切替機構であるバルブ機構V3を構成している。
【0028】
そして
図5に示すようにバルブV33、V34の組を開き、バルブV35、V36の組を閉じることで、冷媒供給源37から供給される冷媒を、第1系統流路311を介して冷媒流路31の第1端部31Aから進入させることができる。冷媒流路31を通流した冷媒は、第2端部31Bから排出され、第2系統流路312を介して冷媒排出路34へ排出される。
【0029】
また
図6に示すようにバルブV35、V36の組を開き、バルブV33、V34の組を閉じることで、冷媒供給源37から供給される冷媒を、第2系統流路312を介して冷媒流路31の第2端部31Bから進入させることができる。冷媒流路31を通流した冷媒は、第1端部31Aから排出され、第1系統流路311を介して冷媒排出路34へ排出される。
【0030】
このようにバルブV33~V36の開閉の組を切り替えることで、冷媒流路31に冷媒が供給される位置と、冷媒流路31から冷媒が排出される位置とを、第1端部31Aと第2端部31Bとの間で切り替えることができる。この動作に伴って、冷媒流路31内を冷媒が流れる方向を反転させることができる。
【0031】
図1に戻って載置台本体20は、その下面中央にハステロイなどの熱伝導率の小さい材料で構成された支持柱241を介して排気室13の底面に固定されている。また載置台本体20には、厚さ方向に貫通する孔部22が、周方向に向けて等間隔に3か所設けられ、各孔部22内には、昇降ピン23が配置されている。昇降ピン23は、昇降機構24により昇降し、載置台本体20の表面に突没するように構成されている。
【0032】
さらに載置台本体20は、接地されている。そして既述のシャワーヘッド6から励起対象のガス(Arガス)とTiCl4ガス及びH2ガスを含む処理ガスを処理チャンバ10内に供給する。さらに上部電極をなすシャワーヘッド6に高周波電力を印加することで容量結合により、下部電極をなす載置台本体20の上方領域に処理ガスのプラズマを発生させる。シャワーヘッド6及びシャワーヘッド6に高周波電力を印加する高周波電源19や載置台本体20は、本例のプラズマ形成部を構成する。
【0033】
成膜装置は、制御部100を備えている。制御部100は、ガス供給系5や真空排気機構16に接続されており、後述の成膜プロセスを実行するレシピに従って、ウエハWにTi膜の成膜処理を行う。また
図4に示すように制御部100は、電源47、48からヒータ41、42に入力される電力の調節、及びバルブ機構V3の操作のための制御信号を出力するように構成されている。
【0034】
また
図4に示すように、載置台本体20には、載置台本体20の温度を検出するための温度測定部9が設けられ、制御部100には、温度測定部9にて測定された温度測定値が入力されるように構成されている。そして制御部100は、温度測定部9の温度測定値と載置台本体20の設定温度、例えば成膜プロセスにおけるプロセス温度に対応する設定値とを比較して、温度測定値が温度設定値に近づくように、ヒータ41、42の出力を増減するフィードバック制御を行う。
【0035】
また制御部100は、バルブ機構V3を操作し、冷媒流路31における冷媒の通流のオンオフを切り替える。本例では、冷媒供給路33側のバルブV33、V35を閉じているときに冷媒の通流が停止され(オフ状態)、バルブV33、V34の組またはバルブV35、V36の組の一方の組を開くことにより冷媒流路31に冷媒が通流される(オン状態)。なお、加熱雰囲気下で流路が封止状態となることを避けるため、オフ状態の際には、冷媒排出路34側のバルブV36、V34は開いておいてもよい。さらに制御部100は、バルブV33、V34の組と、バルブV35、V36の組と、の開閉を行う組を切り替えることにより、冷媒の流れ方向を切り替える。即ち制御部100は、バルブ機構V3の操作により、冷媒通路31内の冷媒の流れ方向を反転させることができる。
【0036】
続いて本開示に係る成膜装置の作用について
図7のタイムチャートを参照して説明する。
図7中の縦軸において、上段には、載置台本体2の温度を示す。また
図7中の縦軸の下段には、バルブV33、V34の組と、バルブV35、V36の組と、の一方が開かれ、冷媒の供給が行われている状態をオン、バルブV33~V36をすべて閉じている状態をオフと示す。
【0037】
まずウエハWを処理チャンバ10内に搬送する前に、処理チャンバ10の壁面にTi膜を成膜するプリコート処理を行う。時刻t0までには、処理チャンバ10の壁面はヒータ17により150~200℃に加熱されると共に、シャワーヘッド6はヒータ68により400~450℃に加熱されている。
一方、載置台2においては、バルブV33、V35を閉じ、冷媒を通流させずに設定温度を例えば470℃に設定し、ヒータ41、42による加熱を実行する。次いでシャワーヘッド6からTiCl4ガスと、H2ガスさらにArガスが供給される。さらにシャワーヘッド6に高周波電力を印加してArのプラズマを励起する。これにより、TiCl4とH2ガスとが反応して処理チャンバ10内にTi膜が成膜される。なおプリコートの際に冷媒を通流させると冷媒の分、熱容量が増えている事と冷却効果のため、目標温度に到達させるまでのヒータ41、42の出力が大きくなり、昇温に時間を要する。そのためプリコート時には、冷媒流路31に冷媒を通流させないことが好ましい。
【0038】
続いて時刻t1にて載置台本体20の設定温度を成膜プロセスにおける300℃から360℃の範囲の設定温度に変更する。さらに
図5に示すようにバルブV35、V36を閉じた状態で、バルブV33、V34を例えば3秒間開く。これにより第1端部31A側から第2端部31B側に向けて、冷媒流路31を冷媒が3秒間流れる。次いで
図6に示すようにバルブV33、V34を閉じ、バルブV35、V36を例えば12秒間開くように切り替える。これにより冷媒流路31内の冷媒の流れが反転し、第2端部31B側から第1端部31A側に向けて、冷媒流路31を冷媒が12秒間流れる。
【0039】
そしてこの
図5に示す方向に冷媒を流す状態(本例では3秒)と、
図6に示す方向に冷媒を流す状態(本例では12秒)と、を繰り返しながら載置台本体20を加熱する。
このように冷媒の流れる方向を切り替えることで、時間平均で見たとき、冷媒流路31の第1端部31Aに近い領域と、第2端部31Bに近い領域との間で載置台本体20から冷媒に奪われる熱量の差が小さくなる。このように、冷媒流路31の長さ方向に沿って、冷却能力がより均一となるように維持された冷媒を通流させることで、ヒータ41、42の配置領域に亘って、温度制御を実施するうえでの余裕をより均一に確保することができる。この結果、後述の実施例にて示すように、ヒータ41、42による温度制御性が向上し、載置台本体20の温度の面内均一性が向上する。
【0040】
続いて、既述の冷媒の流れ方向の切り替えを継続しつつ、載置台本体20の温度が300℃から360℃の範囲の設定温度に安定したら、時刻t2にて、外部の搬送装置により、ウエハWを載置台本体20の上方に搬送する。しかる後、昇降ピン23によりウエハWを下面側から突き上げて受け取り、搬送機構を装置の外部に退避させると共に昇降ピン23を下降させる。これによりウエハWが載置台本体20に載置されて300℃から360℃の範囲のプロセス温度に加熱される。このとき載置台本体20は、
冷媒通流下でのヒータ41、42の出力調節により、面内で均一な温度になるように加熱されていることから、ウエハWにおいても面内で均一な加熱が実現される。
【0041】
その後ウエハWに処理ガスを供給して成膜処理を行う。シャワーヘッド6からは処理ガスとして、成膜原料であるTiCl4ガスと、還元ガスであるH2ガスさらにプラズマ形成用のガスであるArガスを供給する。さらにシャワーヘッド6に高周波電力を印加すると、処理チャンバ10内に供給される処理ガスがプラズマ化し、TiCl4とH2ガスとが反応して、Ti膜が成膜される。
【0042】
一方で既述のように処理ガスのプラズマを形成すると、載置台本体20への入熱が増大するが、入熱に伴う載置台本体20の温度上昇は、温度測定部9にて検出され制御部100によりヒータ41、42の出力調整が実施される。このとき、冷媒流路31へ冷媒を通流させて、載置台本体20から熱を奪うことにより、ヒータ41、42は、出力の下限値に対して余裕を確保した状態で作動しているので、プラズマからの入熱に対応して出力を下げることができる。このように、プラズマを用いたウエハWの処理を行っている期間中においても載置台本体20の温度制御が困難な状態となることを抑制できる。
【0043】
また例えば成膜装置においては、所定の時間の運転、あるいは所定の枚数のウエハWの処理ごとに成膜装置のメンテナンスを行うことがある。このようなメンテナンスは、例えば処理チャンバ10を開放して行うこともあり、開放前に載置台本体20の温度を下げる必要がある。例えば
図7に示す例では時刻t3にて処理チャンバ10内のウエハWが搬出された後、冷媒流路31への冷媒の供給を継続したまま、処理チャンバのヒータ17、シャワーヘッド6のヒータ68、載置台本体20のヒータ41、42を各々オフにしている。
【0044】
このように各ヒータ17、65、41、42がオフにされた後も、冷媒流路31に冷媒を通流させた状態を継続しておくことで、載置台本体20を速やかに冷却することができる。ここで載置台本体20を冷却するときには、冷媒の流れる方向を切り替えてもよいし、切り替えは行わずに一定の方向に冷媒が流れる状態を維持してもよい。その後処理チャンバ10、シャワーヘッド6及び載置台本体20の温度が十分に下がったら、時刻t4にて、冷媒の供給を停止し、成膜装置のメンテナンスを行う。
【0045】
上述の実施の形態によれば、ウエハWを温度調節する載置台2において、載置台本体20を加熱するヒータ41、42と共に載置台本体20からを奪う冷媒を通流させる冷媒流路31を設けている。そして冷媒流路31に冷媒を通流させるにあたって、冷媒流路31内を冷媒が流れる方向を反転させている。これにより、冷媒流路31を流れる冷媒によって載置台本体20から奪う熱量を面内で均一にし、ウエハWの載置面内の温度の面内均一性を向上させることができる。
このことは、プラズマの形成時に載置台本体20への入熱量が一時的に増大するプラズマ処理装置においても同様である。
【0046】
また、例えば400℃以下のプロセス温度が比較的、低いプロセスでは、ヒータ41、42の出力低減による温度調節を実行する際に、載置台本体20から熱を奪わないと、温度制御が困難となってしまうおそれがある。一方で、冷媒流路31内を一定方向に流れる冷媒を用いるとすれば、既述のように、冷媒の供給位置に近い領域と、排出位置に近い領域との温度差に起因して、載置台本体20の温度が面内で不均一になる問題があった。本開示に係る載置台2は、冷媒流路31内を流れる冷媒の流れ方向を繰り返し反転させることにより、この問題の発生を抑制する。
【0047】
またプロセス温度がさらに低い場合には、ヒータ41、42が設けられていない場合にも、処理チャンバのヒータ17、シャワーヘッド6のヒータ68やプラズマ化した処理ガスからの入熱の影響を抑えるため、ウエハWの温度調節が必要となることがある。このような場合にも、冷媒流路31内を流れる冷媒の流れ方向を繰り返し反転させることにより、ウエハWの載置面内の温度の面内均一性を向上させることができる。また載置台本体20を入熱する熱源は、例えば載置台本体20に光を照射し、載置台本体20を加熱するために設けられた構成のものでもよい。このとき載置台本体20の異なる領域に光を照射し、夫々の領域の温度を昇温する構成としてもよい。
【0048】
ここで冷媒は、載置台本体20が加熱されている期間中の冷媒流路31内の温度、圧力環境下にて液体、例えば水を用いてもよい。冷媒として液体を用いる場合でも載置台本体20の温度の面内均一性を高めることができる。また、液体や気体に限らず、冷媒流路31内の温度、圧力環境下にて超臨界状態である流体を用いてもよい。
一方で気体は液体に比べて熱交換効率が小さいため、単位面積当たりの冷媒が奪う熱量が大きくなりすぎない性質を持つ。そのため冷媒流路31に冷媒を流した際に、載置台本体20が過剰に冷却され、ヒータ41、42の出力を増加させても載置台本体20の温度が昇温しにくくなる事態の発生を抑制できる。
【0049】
また上述の実施の形態に示す載置台本体20は、載置台本体20の中央部側を加熱するヒータ41と、載置台本体20の周縁側を加熱するヒータ42と、を備え、各ヒータ41、42の出力を各々独立して調節できるように構成している。そのため各ヒータ41、42の出力を独立して調節することにより、載置台本体20の温度の面内均一性をさらに向上させることができる。
後述の実施例に示すように、相対的に温度が低くなりやすい領域である、例えば載置面の中央部側のヒータ41の出力を高くすることで、載置台本体20の温度の面内均一性をさらに向上することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
続いて第2の実施形態に係る載置台本体20について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る載置台本体20に設けられる冷却板300の下面側の平面図である。冷却板300は、その下面に冷媒流路301となる溝部が形成されている。冷媒流路301は、例えば冷却板300の中央部側には、当該中央部を囲むように環状溝部305を備えている。環状溝部305には、載置台本体20の中央部から見て放射状に延びる複数の径方向流路である複数の径方向溝部302が、周方向に向けて等間隔で接続されている。
【0051】
各径方向溝部302は、冷却板300の周縁側の領域にて各々左右に分岐している(分岐路303)。分岐路303は、各々、左右に隣り合って並ぶ径方向溝部302から分岐した2本の分岐路303が合流した後、冷却板300の中央部方向に向けて延在方向が折り返された合流溝部304を構成している。
【0052】
このような冷却板300の下面側に支持板21を設置することで、溝部の下面がふさがれて冷媒流路301が形成される。この実施の形態では、例えば環状溝部305に開口するように第1端部31Aが形成され、第1系統流路311が接続される。一方、各合流溝部304における冷却板300の中央部側の端部には、例えば支持板21側にこれらの合流溝部304の端部に向けて開口する連通孔を備えた環状流路306を設け、当該環状流路306に開口するように第2端部31Bを形成する。第2端部31Bには、第2系統流路312が接続される。
図8に示すように、冷媒流路301は、円板形状の冷却板300(載置台本体20)の中央部の周りに回転対称に形成されている。
【0053】
このような冷却板300を備えた載置台本体20においても、冷媒の流れる方向を繰り返し反転させることで、載置台本体20の温度の面内均一性を向上させることができる。
【0054】
また
図8に示す例では、冷却板300に溝部を形成するだけで冷媒流路301が形成されるので、冷媒流路31となる配管を設ける構成と比較して加工がしやすく複雑な形状の冷媒流路301の形成も容易になる。さらに冷媒流路301が前記載置台本体20におけるウエハWの載置面の中央部の周りに回転対称に形成されていることにより、載置台本体20の温度の面内均一性を向上させる効果が一層高くなる。
【0055】
[第3の実施形態]
次に
図9を参照しながら第3の実施形態に係る載置台本体20について説明する。この載置台本体20は、載置台本体20の載置面の複数の異なる位置、あるいはウエハWの複数の異なる位置の温度を計測するための温度測定部91を備えている。
図8に示す例では、温度測定部91は、例えば載置台本体20の中央部寄りヒータ41により加熱される領域の温度と、周縁よりのヒータ42により加熱される領域の温度と、を各々計測できるサーモグラフィにより構成した例を示している。また、この例に替えて、載置台本体20内の複数の位置に、熱電対からなる温度測定部91を設けてもよい。
そして複数の異なる位置の温度を測定して結果に基づいて、前記冷媒の流れる方向を繰り返し反転させるタイミングと、ヒータ41、42を用いて加熱した載置台本体20の温度と、冷媒の流量と、の少なくとも一つを調節して、前記載置台本体20の面内における温度の分布を調整し、複数の異なる位置の温度の差を小さくするように調節する。
【0056】
例えば冷媒の流量を増やすことで、載置台本体20から奪う熱量を増加させることができ載置台本体20の温度を下げることができる。また冷媒の流れる方向を繰り返し切り替えるタイミングを調節する場合、第1端部31Aを冷媒の供給位置とした流れ方向の時間を長くすることで、第1端部31Aに近い領域(
図3に示す例では載置台本体20の周縁部側)から奪われる熱量を増加させることができる。これに対して、第2端部31Bを冷媒の供給位置とした流れ方向の時間を長くすることで、第1端部31Bに近い領域(
図3に示す例では載置台本体の中央部側)から奪われる熱量を増加させることができる。このように、冷媒の流れ方向を反転させる周期の調節により載置台本体20から奪われる熱量の分布を調節することができるため、載置台本体20の温度の面内分布の調節に寄与する。
【0057】
また載置台本体20の中央部側を加熱するヒータ41と、載置台本体20の周縁側を加熱するヒータ42の出力を夫々調節してもよい。あるいは、
図9に示すように冷媒流路31に冷媒の温度を調節するヒータ94を設け、冷媒流路31に供給される冷媒の温度を調節してもよい。
【0058】
さらに供給される冷媒の温度と、排出される冷媒の温度と、を夫々測定する温度測定部92、93を設けてもよい。そして供給される冷媒の温度と、排出される冷媒の温度と、の温度差より抜熱の量を計算してもよい。そして抜熱の量に基づいて、前記冷媒の流れる方向を繰り返し切り替えるタイミングと、前記加熱による載置台本体20の温度と、冷媒の流量と、の少なくとも一つを調節して、抜熱の量をあらかじめ設定した設定値に近づけるように制御してもよい。
【0059】
また載置台本体20に複数の冷媒流路31、301を設け、例えばバルブ機構V3のような切替機構を複数の冷媒流路31、301の夫々に設けてもよい。当該構成により、複数の冷媒流路31、301において、互いに独立して冷媒の流れる方向を切り替えられることができる。この手法によれば、載置台本体20の温度の面内分布をより細かく調節することができる。
【0060】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【実施例】
【0061】
(実験1)
本開示に係る載置台2の効果を検証するため、以下の試験を行った。まず第1の実施の形態に示した成膜装置を用い、載置台本体2の設定温度を300℃に設定した。冷媒流路31に冷媒を通流させるにあたって、第1端部31Aを冷媒の供給位置とする期間を3秒、次いで第2端部31Bを冷媒の供給位置する期間を12秒、繰り返し行った例を実施例1とした。なお実施例1では処理チャンバ10のヒータ17及びシャワーヘッド6のヒータ68をオフとしている。
また実施例1に加えて処理チャンバ10の壁部を170℃に加熱した例を実施例2とした。
さらに実施例2の状態と比較して、載置台本体20の中央部側の温度が5℃高くなるように、中央部側のヒータ41の出力を増加させた例を実施例3とした。
【0062】
また冷媒流路31に冷媒を通流させるにあたって、第1端部31Aを冷媒の供給位置としえ固定した例を比較例1とし、第2端部31Bを冷媒の供給位置として固定した例を比較例2とした。
実施例1~3及び比較例1、2の各々について、
図10に示す載置台本体20上の各点Pの温度を測定した。
図10に示すように、これらの点Pは、載置台本体20の中央部を通る縦横のライン上の13点である。
【0063】
比較例1、2では、点Pの13点間における最大温度差が、夫々12.4℃、19.5℃であった。これに対して実施例1~3では、同温度差が5.2℃~8.5℃であった。従って冷媒流路31における冷媒の流れ方向を繰り返し反転させることで、載置台本体20の温度の面内均一性を向上することができると言える。また実施例3が最も点Pの間における温度の開きが小さいことから、独立して出力を調節可能な複数のヒータ41、42を用いることにより、載置台本体20の温度の面内均一性をさらに向上させることができると言える。
【0064】
(実験2)
次いで実施例1と同様の実験条件において、第1端部31Aを冷媒の供給位置として冷媒を流す時間(時間1)と、第2端部32Aを冷媒の供給位置として冷媒を流す時間(時間2)と、の比(時間1:時間2)を変えフィードバック制御したときの、ヒータ41、42の出力を検出した。
各時間は、(時間1:時間2)=(5秒:10秒)、(5秒:8秒)、(3秒:10秒)、(5秒:12秒)、(3秒:12秒)に設定して実験を行った。
図11は、上述の実験の結果を示し、横軸に時間1と時間2との比の値(時間2/時間1)、縦軸にヒータ41、42の出力の合計値を示している。
【0065】
図11に示すように時間1に対する時間2の長さを長くすると、ヒータ41、42の出力の合計値が増大する関係を読み取ることができる。従って、載置台本体20を300℃の設定温度に温度調節する場合においても、冷媒の流れ方向を反転させるタイミングを変化させることで、載置台本体20の温度を設定温度に近づけるために必要なヒータ41、42の出力を変化させることが可能であることが確認できた。従って、ヒータ41、42の出力が上限値や下限値近くになり、温度制御を行う上での余裕が小さい場合などは、冷媒の流れを反転させるタイミングを調節することにより、温度制御に必要な余裕を確保できる。
【符号の説明】
【0066】
20 載置台本体
31 冷媒流路
41、42 ヒータ
100 制御部
V3 バルブ機構
W ウエハ