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特許7537151太陽電池モジュール、電子機器、及び電源モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール、電子機器、及び電源モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/12 20230101AFI20240814BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240814BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240814BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20240814BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240814BHJP
【FI】
H10K39/12
H10K30/40
H10K30/50
H10K30/86
H10K85/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020121841
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2021019203
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019130902
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度~30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、イノベーションハブ構築事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 保
(72)【発明者】
【氏名】井出 陵宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田元 望
(72)【発明者】
【氏名】兼為 直道
(72)【発明者】
【氏名】斯波 正名
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/142064(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107210368(CN,A)
【文献】特開2007-013115(JP,A)
【文献】特開2019-021913(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214708(JP,U)
【文献】HUANG, Li-Bo et al.,Interface engineering of perovskite solar cells with multifunctional polymer interlayer toward improved performance and stability,Journal of Power Sources,2018年,Vol. 378,pp. 483-490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/10-39/18
H10K 85/00-85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層、及び第2の電極を有する光電変換素子が、基板上に複数設けられている太陽電池モジュールであって、
互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、前記ホール輸送層は、一体に形成されており、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子における前記第1の電極、前記電子輸送層、及び前記ペロブスカイト層が、前記ホール輸送層により隔てられており、
前記ホール輸送層が、ホール輸送性材料である重量平均分子量2,000以上のポリマー又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記重量平均分子量2,000以上のポリマーが、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有する請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【化1】
前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択される少なくともいずれかを表し、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。Xはアルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。nは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。pは0、1又は2を示す。
【化2】
前記一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択されるいずれかを表す。Xは酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子から選択されるいずれかを表す。Xはアルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。mは2以上の整数であり、かつ上記一般式(2)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。qは0、1又は2を示す。
【請求項3】
第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層、及び第2の電極を有する光電変換素子が、基板上に複数設けられている太陽電池モジュールであって、
互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、前記ホール輸送層は、一体に形成されており、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子における前記第1の電極、前記電子輸送層、及び前記ペロブスカイト層が、前記ホール輸送層により隔てられており、
前記ホール輸送層が、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される繰り返し単位を有しかつ重量平均分子量2,000以上のポリマー、又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【化3】
前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択される少なくともいずれかを表し、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。Xはアルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。nは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。pは0、1又は2を示す。
【化4】
前記一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択されるいずれかを表す。Xは酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子から選択されるいずれかを表す。Xはアルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。mは2以上の整数であり、かつ上記一般式(2)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。qは0、1又は2を示す。
【請求項4】
前記分子量2,000未満の化合物が、スピロビフルオレン化合物、トリアリールアミン化合物、及びチオフェン化合物のいずれかである請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記ホール輸送層を貫通した導通部により電気的に接続されている請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、一の前記光電変換素子における前記ペロブスカイト層と、他の前記光電変換素子における前記ペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記光電変換素子が複数設けられている第1の基板と、
前記光電変換素子を挟むように前記第1の基板と対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置され、前記光電変換素子を封止する封止部材と、
を更に有する請求項1から6のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電する蓄電池と、
前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力及び/又は前記蓄電池に蓄電された電力によって動作する装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
電源ICと、
を有することを特徴とする電源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール、電子機器、及び電源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換素子を利用する太陽電池は、化石燃料の代替や地球温暖化対策という観点のみならず、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても、幅広い応用が期待されている。また、自立型電源としての太陽電池は、IoT(Internet of Things)デバイスや人工衛星などで必要される環境発電(エナジーハーベスト)技術の一つとしても、大きな注目を集めている。
【0003】
太陽電池としては、従来から広く用いられているシリコンなどを用いた無機系太陽電池の他に、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの有機系太陽電池がある。
ペロブスカイト太陽電池は、有機溶媒などを含む電解液を用いることなく、従来の印刷手段を用いて製造できるため、安全性の向上及び製造コストの抑制などの点で有利である。
【0004】
有機薄膜太陽電池及びペロブスカイト太陽電池に関しては、空間的に分割された複数の光電変換素子を、直列の回路となるように電気的に接続して、出力電圧を大きくすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段としての本発明の太陽電池モジュールは、第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層、及び第2の電極を有する光電変換素子が、基板上に複数設けられている太陽電池モジュールであって、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、前記ホール輸送層が、互いに延設された連続層であり、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子における前記第1の電極、前記電子輸送層、及び前記ペロブスカイト層が、前記ホール輸送層により隔てられており、前記ホール輸送層が、ホール輸送性材料である重量平均分子量2,000以上のポリマー又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することができる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の一例を示す説明図である。
図2図2は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図3図3は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図4図4は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図5図5は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図6図6は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用マウスのブロック図である。
図7図7は、図6に示したマウスの一例を示す概略外観図である。
図8図8は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用キーボードのブロック図である。
図9図9は、図8に示したキーボードの一例を示す概略外観図である。
図10図10は、図8に示したキーボードの他の一例を示す概略外観図である。
図11図11は、本発明の電子機器の一例としてのセンサのブロック図である。
図12図12は、本発明の電子機器の一例としてのターンテーブルのブロック図である。
図13図13は、本発明の電子機器の一例を示すブロック図である。
図14図14は、図13に示した電子機器に電源ICを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。
図15図15は、図14に示した電子機器に蓄電デバイスを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。
図16図16は、本発明の電源モジュールの一例を示すブロック図である。
図17図17は、図16に示した電源モジュールに蓄電デバイスを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層、及び第2の電極を有する光電変換素子が、基板上に複数設けられている太陽電池モジュールであって、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、前記ホール輸送層が、互いに延設された連続層であり、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子における前記第1の電極、前記電子輸送層、及び前記ペロブスカイト層が、前記ホール輸送層により隔てられており、前記ホール輸送層が、ホール輸送性材料である重量平均分子量2,000以上のポリマー又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有する。
【0010】
本発明の太陽電池モジュールは、ペロブスカイト層を有する従来の太陽電池モジュールでは、長時間にわたって高照度光に晒された後において、発電効率が大幅に低下することがあるという知見に基づくものである。具体的には、ペロブスカイト層を有する従来の太陽電池モジュールは、多孔質酸化チタン層やペロブスカイト層が延設していることにより、拡散による電子の再結合が多いため、長時間にわたって高照度光に晒された後においては、発電効率が大幅に低下してしまうことがあるという問題があった。
また、もう一つの課題としてホール輸送層と第2の電極の密着性が低いために剥離してしまい、長時間の耐久性の面で問題があった。
【0011】
本発明の太陽電池モジュールは、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、ホール輸送層が、互いに延設された連続層であり、第1の電極、電子輸送層、及びペロブスカイト層が、ホール輸送層により隔てられている。これにより、本発明の太陽電池モジュールは、第1の電極、多孔質酸化チタン層やペロブスカイト層がホール輸送層によって切断されており、前記ホール輸送層が、ホール輸送性材料である重量平均分子量2,000以上のポリマー又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有する。その結果、拡散による電子の再結合が少なくなっているため、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能となり、耐久性が大幅に向上する。
【0012】
本発明の太陽電池モジュールは、基板上に複数の光電変換素子を有し、前述の基板とは異なる第2の基板、封止部材を更に有することが好ましく、必要に応じてその他の部材を有する。
【0013】
<基板>
基板としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、以下では、上述の基板を第1の基板と称することがある。
第1の基板の材質としては、透光性及び絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミックなどが挙げられる。これらの中でも、後述するように電子輸送層を形成する際に焼成する工程を含む場合は、焼成温度に対して耐熱性を有する材質のものが好ましい。また、第1の基板としては、可とう性を有するものが好ましい。
【0014】
<光電変換素子>
光電変換素子とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる素子を意味し、太陽電池やフォトダイオードなどに応用されている。
本発明における光電変換素子は、第1の電極と、電子輸送層と、ペロブスカイト層と、ホール輸送層と、第2の電極とを少なくとも有する。
【0015】
<<第1の電極>>
第1の電極としては、その形状、大きさについては、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における第1の電極が、後述するホール輸送層により隔てられていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
第1の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一層構造であってもよいし、複数の材料を積層する構造であってもよい。
【0017】
第1の電極の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明導電性金属酸化物、カーボン、金属などが挙げられる。
【0018】
透明導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、ニオブドープ酸化スズ(以下、「NTO」と称する)、アルミドープ酸化亜鉛、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物などが挙げられる。
カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
金属としては、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム、タンタル、チタンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高い透明導電性金属酸化物が好ましく、ITO、FTO、ATO、NTOがより好ましい。
【0019】
第1の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上100μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましい。なお、第1の電極の材質がカーボンや金属の場合には、第1の電極の平均厚みとしては、透光性を得られる程度の平均厚みにすることが好ましい。
【0020】
第1の電極は、スパッタ法、蒸着法、スプレー法等の公知の方法などにより形成することができる。
【0021】
また、第1の電極は、第1の基板上に形成されることが好ましく、予め第1の基板上に第1の電極が形成されている一体化された市販品を用いることができる。
一体化された市販品としては、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチックフィルム、ITOコート透明プラスチックフィルムなどが挙げられる。他の一体化された市販品としては、例えば、酸化スズ若しくは酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、又はメッシュ状やストライプ状等の光が透過できる構造にした金属電極を設けたガラス基板などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して混合又は積層したものでもよい。また、電気的抵抗値を下げる目的で、金属リード線などを併用してもよい。
【0022】
金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。
金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設ける、あるいはITOやFTOの上に設けることにより併用することができる。
【0023】
<<電子輸送層>>
電子輸送層とは、後述するペロブスカイト層で生成された電子を第1の電極まで輸送する層を意味する。このため、電子輸送層は、第1の電極に隣接して配置されることが好ましい。
【0024】
電子輸送層としては、その形状、大きさについては、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における電子輸送層が、後述するホール輸送層により隔てられていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における電子輸送層が、ホール輸送層により隔てられていることにより、電子拡散が抑制されてリーク電流が低下するため、光耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、電子輸送層の構造としては、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよいが、多層であることが好ましく、緻密な構造を有する層(緻密層)と多孔質な構造を有する層(多孔質層)からなることがより好ましい。また、緻密層は、多孔質層よりも第1の電極に近い側に配置されることが好ましい。
【0026】
-緻密層-
緻密層としては、電子輸送性材料を含み、後述する多孔質層よりも緻密であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、多孔質層よりも緻密であるとは、緻密層の充填密度が、多孔質層を形成する粒子の充填密度より高密度であることを意味する。
【0027】
電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。
【0028】
半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体を有する化合物などが挙げられる。
単体半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
化合物半導体としては、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化ニオブを含有することがより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
【0029】
緻密層の膜厚としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上1μm以下が好ましく、10nm以上700nm以下がより好ましい。
【0030】
緻密層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。
真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
湿式製膜法としては、例えば、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0031】
-多孔質層-
多孔質層としては、電子輸送性材料を含み、緻密層よりも緻密ではない(多孔質である)層であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、緻密層よりも緻密でないとは、多孔質層の充填密度が、緻密層の充填密度よりも低密度であることを意味する。
【0032】
電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、緻密層の場合と同様に、半導体材料が好ましい。半導体材料としては、緻密層で用いるものと同様のものを用いることができる。
【0033】
また、多孔質層を形成する電子輸送性材料は、粒子状の形状を有し、これらが接合することによって、多孔質状の膜が形成されることが好ましい。
電子輸送性材料の一次粒子の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。また、個数平均粒径よりも大きい半導体材料を混合あるいは積層させてもよく、入射光を散乱させる効果により、変換効率を向上できる場合がある。この場合の個数平均粒径は、50nm以上500nm以下が好ましい。
【0034】
多孔質層における電子輸送性材料としては、酸化チタン粒子を好適に用いることができる。多孔質層における電子輸送性材料が酸化チタン粒子であると、伝導帯(Conduction Band)が高く、高い開放電圧が得られる。また、多孔質層における電子輸送性材料が酸化チタン粒子であると、屈折率が高く、光閉じ込め効果により高い短絡電流が得られる。更に、多孔質層における電子輸送性材料が酸化チタン粒子であると、多孔質層の誘電率が高くなり、電子の移動度が高くなることで、高い曲線因子(形状因子)が得られる点で有利である。すなわち、開放電圧及び曲線因子を向上させることができるため、電子輸送層が、酸化チタン粒子を含む多孔質層を有することが好ましい。
【0035】
多孔質層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30nm以上1μm以下が好ましく、100nm以上600nm以下がより好ましい。
また、多孔質層は、多層構造を有してもよい。多層構造を有する多孔質層は、粒径の異なる電子輸送性材料の粒子の分散液を複数回塗布すること、電子輸送性材料、樹脂、添加剤などの組成が異なる分散液を複数回塗布することなどにより、作製することができる。電子輸送性材料の粒子の分散液を複数回塗布することは、多孔質層の平均厚み(膜厚)を調整する際にも有効である。
【0036】
多孔質層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、多孔質層の作製方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法を用いることもできる。
【0037】
電子輸送性材料の粒子を作製する方法としては、例えば、公知のミリング装置等を用いて機械的に粉砕する方法が挙げられる。この方法により、粒子状の電子輸送性材料を単独で、あるいは半導体材料と樹脂の混合物を、水又は溶媒に分散することにより半導体材料の分散液を作製できる。
樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α-テルピネオールなどが挙げられる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
電子輸送性材料を含む分散液、あるいはゾル-ゲル法等によって得られた電子輸送性材料を含むペーストには、粒子の再凝集を防ぐため、酸、界面活性剤、キレート化剤などを添加してもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
キレート化剤としては、例えば、アセチルアセトン、2-アミノエタノール、エチレンジアミンなどが挙げられる。
また、製膜性を向上させる目的で、増粘剤を添加することも有効な手段である。
増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどが挙げられる。
【0040】
電子輸送性材料を塗布した後に、電子輸送性材料の粒子間を電子的に接触させ、膜強度や基板との密着性を向上させるために焼成したり、マイクロ波や電子線を照射したり、又はレーザー光を照射することができる。これらの処理は、1種単独で行ってもよく、2種類以上組み合わせて行ってもよい。
【0041】
電子輸送性材料で形成された多孔質層を焼成する場合、焼成温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上700℃以下が好ましく、100℃以上600℃以下がより好ましい。焼成温度が、30℃以上700℃以下であると、第1の基板の抵抗値の増加と融解を抑制しつつ、多孔質層を焼成することができる。また、焼成時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間以上10時間以下が好ましい。
電子輸送性材料から形成された多孔質層にマイクロ波照射する場合には、照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。この場合、多孔質層が形成されている面側から照射してもよく、多孔質層が形成されていない面側から照射してもよい。
【0042】
電子輸送性材料からなる多孔質層を焼成した後、多孔質層の表面積の増大などの目的で、例えば、四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0043】
このようにして、例えば、直径が数十nmの電子輸送性材料を焼結し得られた膜は、多くの空隙を有する多孔質構造となる。このような多孔質構造は、非常に高い表面積を有し、その表面積はラフネスファクターを用いて表わすことができる。ラフネスファクターは、第1の基板又は緻密層に塗布した電子輸送性材料の粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。したがって、ラフネスファクターとしては、大きいほど好ましいが、電子輸送層の平均厚みとの関係から、20以上が好ましい。
【0044】
また、電子輸送性材料の粒子には、リチウム化合物をドーピングしてもよい。具体的には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)化合物の溶液を、スピンコートなどを用いて電子輸送性材料の粒子の上に堆積させ、その後焼成処理する方法である。
リチウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムなどが挙げられる。
【0045】
-ペロブスカイト層-
ペロブスカイト層とは、ペロブスカイト化合物を含む層を意味する。そのため、ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。
【0046】
ペロブスカイト層としては、その形状、大きさについては、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子におけるペロブスカイト層が、後述するホール輸送層により隔てられていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
ペロブスカイト化合物は、有機化合物と無機化合物の複合物質であり、以下の一般式(A)で表わされる。
XαYβMγ ・・・一般式(A)
上記の一般式(A)において、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表す。また、例えば、Xはハロゲンイオン、Yはアルキルアミン化合物イオン、Mは金属イオンなどとすることができる。
【0048】
上記の一般式(A)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記の一般式(A)におけるYとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオンや、セシウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ハロゲン化鉛-メチルアンモニウムのペロブスカイト化合物の場合、ハロゲンイオンがClのときは、光吸収スペクトルのピークλmaxは約350nm、Brのときは約410nm、Iのときは約540nmと、順に長波長側にシフトするため、利用できるスペクトル幅(バンド域)は異なる。
【0050】
上記の一般式(A)におけるMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。
【0052】
ペロブスカイト層は、アルカリ金属及びアンチモン原子のいずれかを少なくとも含有することが好ましい。ペロブスカイト層がアルカリ金属及びアンチモン原子のいずれかを少なくとも含有すると、出力が高くなる点で有利である。
【0053】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
更に、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。 加えて、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が好ましい。
【0054】
溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。
【0055】
また、ペロブスカイト層は、増感色素を含んでもよい。
増感色素を含んだペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペロブスカイト化合物と増感色素を混合する方法、ペロブスカイト層を形成した後で、増感色素を吸着させる方法などが挙げられる。
【0056】
増感色素としては、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
増感色素としては、例えば、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物、特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物、同特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物、特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物、J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物、特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素、特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号等に記載メロシアニン色素、特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号等に記載の9-アリールキサンテン化合物、特開平10-93118号公報、特開2003-31273号等に記載のトリアリールメタン化合物、特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。これらの中でも、金属錯体化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、ポルフィリン化合物が好ましい。
【0057】
<<ホール輸送層>>
ホール輸送層とは、ペロブスカイト層で生成されたホール(正孔)を後述する第2の電極まで輸送する層を意味する。このため、ホール輸送層は、ペロブスカイト層に隣接して配置されることが好ましい。
【0058】
ホール輸送層としては、その形状、大きさについては、互いに延設された連続層であり、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層を隔てることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における第1の電極、電子輸送層、及びペロブスカイト層が、互いに延設された連続層であるホール輸送層で隔てられていることにより、多孔質酸化チタン層が切断されており、拡散による電子の再結合が少なくなっているため、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。
【0059】
ホール輸送層は、ホール輸送性材料である重量平均分子量2,000以上のポリマー又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0060】
-重量平均分子量2,000以上のポリマー-
重量平均分子量2,000以上のポリマーとしては、ホール輸送性材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルを考慮すると、ポリチオフェン化合物、ポリアリールアミン化合物、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましく、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが特に好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0061】
ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)などが挙げられる。
【0062】
ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4’-ビフェニレン-ビニレン)]などが挙げられる。
【0063】
ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9’-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4’-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]などが挙げられる。
【0064】
ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]などが挙げられる。
【0065】
ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ジフェニル)-N,N’-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]などが挙げられる。
【0066】
ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)などが挙げられる。
【0067】
重量平均分子量2,000以上のポリマーとしては、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが好適である。
【0068】
【化1】
【0069】
上記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択される少なくともいずれかを表し、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、2-イソブチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基などが挙げられる。
【0070】
はアルキル基、アラルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、2-イソブチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えば、チオフェン環基、フラン環基などが挙げられる。
【0071】
は、アルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。
アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、アセチレンなどが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えば、チオフェン環基、フラン環基などが挙げられる。
【0072】
nは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。pは0、1又は2を示す。
【0073】
【化2】
【0074】
上記一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択されるいずれかを表す。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、2-イソブチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基などが挙げられる。
【0075】
は酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子から選択されるいずれかを表す。
【0076】
はアルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、アセチレンなどが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えば、チオフェン環基、フラン環基などが挙げられる。
【0077】
mは2以上の整数であり、かつ上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。qは0、1又は2を示す。
【0078】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーとしては、例えば、下記に示す(A-1)~(A-25)などが挙げられる。ただし、式中のnは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。
【0079】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーとしては、例えば、下記に示す(B-1)~(B-32)などが挙げられる。ただし、式中のmは2以上の整数であり、かつ上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。
【0082】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0083】
-分子量2,000以上の化合物-
分子量2000以上の化合物としては、ホール輸送性材料であり、特に化学構造に制限はなく、以下の化合物などが挙げられる。
【0084】
【化23】
【0085】
-分子量2,000未満の化合物-
分子量2,000未満の化合物としては、ホール輸送性材料であり、特に化学構造に制限はなく、具体的には、特公昭34-5466号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特公昭45-555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物、特公昭52-4188号公報等に示されているピラゾリン化合物、特公昭55-42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物、特開昭56-123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特開昭54-58445号公報に示されているテトラアリールベンジジン化合物又は特開昭58-65440号公報若しくは特開昭60-98437号公報に示されているスチルベン化合物、特開2007-115665号公報、特開2014-72327号公報、特願2000-067544号明細書、国際公開2004/063283号パンフレット、国際公開2011/030450号パンフレット、国際公開2011/45321号パンフレット、国際公開2013/042699号パンフレット、国際公開2013/121835号パンフレットに示されているスピロビフルオレン化合物、特開平2-250881号公報、特開2013-033868号公報に示されているチオフェン化合物、トリアリールアミン化合物などを挙げることができる。
これらの中でも、スピロビフルオレン化合物、トリアリールアミン化合物、チオフェン化合物が好ましい。
【0086】
--スピロビフルオレン化合物--
スピロビフルオレン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、発電効率の点から、「J.Am.Chem.Soc.,133(2011) 18042」に記載のホール輸送性材料(2,2’,7,7’-tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamino)-9,9’-spirobifluorene:spiro-OMeTAD)、「Chem. Commun., 54,(2018) 9571」に記載のホール輸送性材料(N2’,N2’,N5,N5,N7’,N7’,N9,N9-octakis(4-methoxyphenyl)spiro[dibenzo-[c,h]xanthene-7,9’-fluorene]-2’,5,7’,9-tetraamine:X62)、「Chem,2(2017) 676」に記載のホール輸送性材料(N2,N7-bis(4-methoxyphenyl)-N2,N7-di(spiro[fluorene-9,9’-xanthen]-2-yl)spiro[fluorene-9,9’-xanthene]-2,7-diamine:X55)、「Nano Energy,23(2016) 138」に記載のホール輸送性材料(N2,N2,N7,N7-tetrakis(4-methoxyphenyl)spiro[fluorene-9,9’-xanthene]-2,7-diamine:X59)、「Energy & Environmental Science,9(2016) 873」に記載のホール輸送性材料(octakis(4-methoxyphenyl)spiro[fluorene-9,9’-xanthene]-2,2’,7,7’-tetraamine):X60)などが挙げることができる。これらの中でも、spiro-OMeTADが好ましい。spiro-OMeTADは、下記構造式(1)のように表される。
【0087】
<構造式(1)>
【化24】
【0088】
--トリアリールアミン化合物--
トリアリールアミン化合物としては、下記一般式3で表される化合物が挙げられる。
【0089】
[一般式3]
-B
ただし、n=2のときにはmは0であり、n=1のときmは0又は1である。Aは下記一般式4で示される構造であり、ZからZ15のいずれかの位置でBと結合している。Bは下記一般式5で示される構造であり、Z16からZ21のいずれかの位置でAと結合している。
【0090】
[一般式4]
【化25】
【0091】
[一般式5]
【化26】
ただし、ZからZ21は、いずれも一価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0092】
上記一般式4及び上記一般式5における一価の有機基としては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基などが挙げられる。
これらの中でも、安定動作などの点から、アルキル基、アルコキシ基、水素原子、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基が特に好ましい。
【0093】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メトキシフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基などが挙げられる。
複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾールなどが挙げられる。
【0094】
置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0095】
具体的なトリアリールアミン化合物としては、下記構造式で表される化合物(C-1)などが挙げられる。
【0096】
【化27】
【0097】
--チオフェン化合物--
チオフェン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、下記構造式で表される化合物(C-2)などが挙げられる。
【0098】
【化28】
【0099】
本発明において、重量平均分子量2,000以上のポリマーと分子量2,000未満の化合物とを混合する場合、それぞれのイオン化ポテンシャルの差が、0.2eV以下であることが好ましい。イオン化ポテンシャルとは分子から1個の電子を取り出すのに必要なエネルギーであり、電子ボルト(eV)の単位で表されるものである。イオン化ポテンシャルの測定方法に特に制限はないが、光電子分光法による測定が好ましい。
重量平均分子量2,000以上のポリマーのイオン化ポテンシャルをIPa、分子量2,000未満の化合物のイオン化ポテンシャルをIPbとした場合、IPa-IPb=±0.2eV以下であることが好ましい。0.2eV以上の差がある場合、一方にホールがトラップされたまま動きにくくなってしまい、ホールの輸送をスムーズに行うことができなくなる。
【0100】
前記重量平均分子量2,000以上のポリマーと前記分子量2,000未満の化合物との混合割合は、質量比で、4:6~9:1が好ましく、4:6~7:3がより好ましく、1:1~7:3が更に好ましい。
【0101】
ホール輸送層に含まれるその他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、添加剤、酸化剤などが挙げられる。
【0102】
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄若しくはヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム若しくはヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム若しくは臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム若しくは臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅若しくは塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀若しくは酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅若しくは硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩若しくはフェロセン-フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム若しくはアルキルチオール-アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ピリジン、4-t-ブチルピリジン若しくはベンズイミダゾール等の塩基性化合物を挙げることができる。
【0103】
更に、酸化剤を加えることができる。酸化剤の種類としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、コバルト錯体などが挙げられる。なお、酸化剤により、ホール輸送性材料の全体が酸化される必要はなく、一部が酸化されていれば有効である。また、酸化剤は、反応後に系外に取り出しても、取り出さなくてもよい。
ホール輸送層が酸化剤を含むことにより、ホール輸送性材料の一部又は全部をラジカルカチオンにすることができるため、導電性が向上し、出力特性の耐久性や安定性を高めることが可能になる。
【0104】
ホール輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ペロブスカイト層上においては、0.01μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、0.2μm以上2μm以下が更に好ましい。
【0105】
ホール輸送層は、ペロブスカイト層の上に直接形成することができる。ホール輸送層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストなどの点で、特に湿式製膜法が好ましく、ペロブスカイト層上に塗布する方法がより好ましい。
湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
【0106】
また、ホール輸送層は、例えば、超臨界流体又は臨界点より低い温度及び圧力の亜臨界流体中で製膜することにより作製してもよい。
超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度及び圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態である流体を意味する。超臨界流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する流体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体として挙げられる流体は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
【0107】
超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒などが挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、二酸化炭素が、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易である点で好ましい。
【0108】
超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体の臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
【0109】
更に、超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒及びエントレーナーを添加することにより、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
また、ペロブスカイト層上に、ホール輸送性材料を積層した後、プレス処理工程を施してもよい。プレス処理を施すことによって、ホール輸送性材料がペロブスカイト層とより密着するため、発電効率が改善できる場合がある。
プレス処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、IR(infrared spectroscopy)錠剤成形器に代表されるような平板を用いたプレス成形法、ローラ等を用いたロールプレス法などを挙げることができる。
プレス処理する際の圧力としては、10kgf/cm以上が好ましく、30kgf/cm以上がより好ましい。
プレス処理する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。また、プレス処理時に熱を加えてもよい。
【0111】
プレス処理の際、プレス機と電極との間に離型剤を挟んでもよい。
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
プレス処理工程を行った後、第2の電極を設ける前に、ホール輸送層と第2の電極との間に金属酸化物を含む膜を設けてもよい。
金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
金属酸化物を含む膜をホール輸送層上に設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法などが挙げられる。
【0113】
金属酸化物を含む膜を形成する際の湿式製膜法としては、金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
【0114】
金属酸化物を含む膜の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
【0115】
<<第2の電極>>
第2の電極は、ホール輸送層上、又はホール輸送層における金属酸化物の膜上に形成することが好ましい。また、第2の電極は、第1の電極と同様のものを用いることができる。
第2の電極としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
第2の電極の材質としては、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0116】
第2の電極は、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜ホール輸送層上に塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、貼り合わせなどの方法を用いることにより形成可能である。
【0117】
また、光電変換素子においては、第1の電極と第2の電極の少なくともいずれかは実質的に透明であることが好ましい。本発明の太陽電池モジュールを使用する際には、第1の電極を透明にして、入射光を第1の電極側から入射させることが好ましい。この場合、第2の電極には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、金属薄膜などが好ましく用いられる。また、入射光側の電極に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0118】
<第2の基板>
第2の基板は、光電変換素子を挟むように第1の基板と対向して配置される。
基板としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
第2の基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミックなどが挙げられる。
【0119】
第2の基板と後述する封止部材との接合部には、密着性を上げるため、凹凸部を形成してもよい。
凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、化学エッチング法、レーザー加工法、研磨紙を用いた方法などが挙げられる。
第2の基板と封止部材との密着性を上げる方法としては、例えば、第2の基板の表面の有機物を除去する方法でもよく、第2の基板の親水性を向上させる方法でもよい。第2の基板の表面の有機物を除去する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ処理などが挙げられる。
【0120】
<封止部材>
封止部材は、第1の基板と第2の基板の間に配置され、光電変換素子を封止する。
封止部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂の硬化物、エポキシ樹脂の硬化物などが挙げられる。
アクリル樹脂の硬化物は、分子内にアクリル基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化したものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
エポキシ樹脂の硬化物は、分子内にエポキシ基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化したものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
【0121】
エポキシ樹脂としては、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられる。これらの中でも、熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。
【0122】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0123】
エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。
【0124】
硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、その他の硬化剤などに分類される。
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
その他の硬化剤としては、例えば、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。
【0126】
添加剤として充填材を含むことにより、水分や酸素の浸入を抑制し、更には硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため、添加剤として充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0127】
また、光電変換素子の出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。
封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0128】
充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
充填材の平均一次粒径は、0.1μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
充填材の含有量としては、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0129】
ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ材を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板又は第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
ギャップ剤としては、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ギャップ剤の粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0130】
重合開始剤としては、熱や光を用いて重合を開始させるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0131】
熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。
一方、光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0132】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。
また、重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、例えば、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
重合開始剤の添加量としては、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0134】
乾燥剤は、吸湿剤とも称され、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。
乾燥剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0135】
硬化促進剤は、硬化触媒とも称され、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。
硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられ、より具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0137】
また、封止部材としては、封止材、シール材、又は接着剤などとして市販されているエポキシ樹脂組成物が知られており、本発明においても有効に使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本発明において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(スリーボンド社製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学株式会社製)、WB90US(P)(モレスコ社製)などが挙げられる。
【0138】
本発明においては、封止部材として、シート状封止材を用いることができる。
シート状封止材とは、シート上に予めエポキシ樹脂層を形成したもので、シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等が用いられる。シート状封止材を、第2の基板上に貼り付け、その後硬化させることにより、封止部材及び第2の基板を一度に形成することができる。シート上に形成するエポキシ樹脂層の形成パターンにより、中空部を設けた構造にすることもできる。
【0139】
封止部材の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンス法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、封止部材の形成方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
更に、封止部材と第2の電極との間にパッシベーション層を設けてもよい。パッシベーション層としては、封止部材が第2の電極に接しないように配置されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化シリコンなどが挙げられる。
【0140】
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0141】
以下、図面を参照しながら、本発明の太陽電池モジュールの一実施形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0142】
<太陽電池モジュールの構造>
図1は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の一例を示す説明図である。
図1に示すように、太陽電池モジュール100は、第1の電極2a,2bと、緻密な電子輸送層(緻密層)3と、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4と、ペロブスカイト層5と、ホール輸送層6と、第2の電極7a,7bとを有する光電変換素子を、第1の基板1上に有する。なお、第1の電極2a,2bのいずれか、及び第2の電極7a,7bのいずれかは、電極取出し端子まで導通する経路をそれぞれ有している。
更に、太陽電池モジュール100には、第2の基板10が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材9が第1の基板1と第2の基板10の間に配置される。
太陽電池モジュール100においては、延設された連続層であるホール輸送層6で、第1の電極2aと第1の電極2bとが隔てられている。
【0143】
図2は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図2に示すように、太陽電池モジュール101は、図1で示した太陽電池モジュール100において、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4が存在しない態様である。
【0144】
図3は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図3に示すように、太陽電池モジュール102は、図1で示した太陽電池モジュール100において、ホール輸送層6だけでなく、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4及びペロブスカイト層5を延設された連続層とした態様である。
太陽電池モジュール102においては、延設された連続層である多孔質層4及びペロブスカイト層5で、第1の電極2aと第1の電極2bとが隔てられている。
【0145】
図4は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図4に示すように、太陽電池モジュール103は、図3で示した太陽電池モジュール102において、多孔質層4が延設されていない態様である。
太陽電池モジュール103においては、延設された連続層であるペロブスカイト層5で、第1の電極2aと第1の電極2bとが隔てられている。
【0146】
図5は、本発明の太陽電池モジュールにおける構造の他の一例を示す説明図である。
図5に示すように、太陽電池モジュール104は、図4で示した太陽電池モジュール103において、多孔質層4が存在しない態様である。
【0147】
太陽電池モジュール100~106は、第1の基板1と封止部材9と第2の基板10により封止されている。そのため、第2の電極7と第2の基板10との間に存在する中空部における水分量や酸素濃度を制御することが可能である。太陽電池モジュール100~106の中空部の水分量や酸素濃度を制御することにより、発電性能や耐久性を向上できる。すなわち、太陽電池モジュールが、光電変換素子を挟むように第1の基板と対向して配置される第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に配置され、光電変換素子を封止する封止部材とを更に有することにより、中空部の水分量や酸素濃度を制御ことができるため、発電性能や耐久性を向上できる。
なお、中空部内の酸素濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0%以上21%以下が好ましく、0.05%以上10%以下がより好ましく、0.1%以上5%以下が更に好ましい。
【0148】
また、太陽電池モジュール100~106においては、第2の電極7と第2の基板10が接触していないため、第2の電極7の剥離や破壊を防止することができる。
【0149】
更に、太陽電池モジュール100~106は、光電変換素子aと光電変換素子bとを、電気的に接続する貫通部8を有する。太陽電池モジュール100~106においては、光電変換素子aの第2の電極7aと光電変換素子bの第1の電極2bとが、ホール輸送層6を貫通する貫通部8によって電気的に接続されることにより、光電変換素子aと光電変換素子bとが、直列に接続されている。このように、複数の光電変換素子が直列に接続されることにより、太陽電池モジュールの開放電圧を大きくすることができる。
【0150】
なお、貫通部8については、第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで達していてもよいし、第1の電極2の内部で加工をやめ、第1の基板1にまで達していなくてもよい。貫通部8の形状を第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで到達する微細孔とする場合、貫通部8の面積に対して微細孔の開口面積合計が大きくなりすぎると、第1の電極2の膜断面積が減少することで抵抗値が増大してしまい、発電効率の低下を引き起こす場合がある。そのため、貫通部8の面積に対する微細孔の開口面積合計の比率は、5/100以上60/100以下であることが好ましい。
【0151】
また、貫通部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、化学エッチング法、レーザー加工法、研磨紙を用いた方法などが挙げられる。これらの中でも、微細な孔をサンドやエッチング、レジスト等を使うことなく形成でき、これにより清浄に再現性よく加工することができるため、レーザー加工法が好ましい。また、レーザー加工法が好ましい理由としては、貫通部8を形成するとき、緻密層3、多孔質層4、ペロブスカイト層5、ホール輸送層6、第2の電極7のうち少なくとも一つを、レーザー加工法による衝撃剥離によって除去することが可能になることも挙げられる。これにより、積層時にマスクを設ける必要がなく、また、光電変換素子を形成する材料の除去と貫通部の形成とを、まとめて簡易に行うことができる。
【0152】
ここで、光電変換素子aにおけるペロブスカイト層と、光電変換素子bにおけるペロブスカイト層との間は、延設されていても区切られていてもよく、区切られた場合の距離としては、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。光電変換素子aにおけるペロブスカイト層と、光電変換素子bにおけるペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下であると、多孔質酸化チタン層やペロブスカイト層が切断されており、拡散による電子の再結合が少なくなっているため、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。すなわち、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、一の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層と、他の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下であることにより、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。
なお、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における、一の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層と、他の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層との間の距離とは、それぞれの光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層の外周部(端部)どうしの距離の中で、最も短い部分の距離を意味する。
【0153】
本発明の太陽電池モジュールは、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置に応用できる。電源装置を利用している機器類として、例えば、電子卓上計算機や腕時計が挙げられる。また、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等に本発明の太陽電池モジュールを有する電源装置を適用することもできる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源、2次電池などと組み合わせることにより夜間等でも利用できる電源などとしても、本発明の太陽電池モジュールを有する電源装置を用いることができる。更に、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源として、IoTデバイスや人工衛星などに用いることもできる。
【0154】
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0155】
(電源モジュール)
本発明の電源モジュールは、本発明の太陽電池モジュールと、電源IC(Integrated Circuit)と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0156】
次に、本発明の太陽電池モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の具体的な実施形態について説明する。
【0157】
図6は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用マウスのブロック図である。
図6に示すように、太陽電池モジュールと電源IC、更に蓄電デバイスとを組み合わせ、供給される電力をマウスの制御回路の電源に接続する。これにより、マウスを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でマウスを動作させることができ、配線や電池交換が不要なマウスを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
【0158】
図7は、図6に示したマウスの一例を示す概略外観図である。
図7に示すように、太陽電池モジュール及び電源IC、蓄電デバイスはマウス内部に実装されるが、太陽電池モジュールの光電変換素子に光が当たるように光電変換素子の上部は透明の筐体で覆われている。また、マウスの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子の配置はこれに限られるものではなく、例えばマウスを手で覆っていても光が照射される位置に配置することも可能であり、好ましい場合がある。
【0159】
次に、本発明の太陽電池モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0160】
図8は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用キーボードのブロック図である。
図8に示すように、太陽電池モジュールの光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をキーボードの制御回路の電源に接続する。これにより、キーボードを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でキーボードを動作させることができ、配線や電池交換が不要なキーボードを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
【0161】
図9は、図8に示したキーボードの一例を示す概略外観図である。
図9に示すように、太陽電池モジュールの光電変換素子及び電源IC、蓄電デバイスはキーボード内部に実装されるが、光電変換素子に光が当たるように光電変換素子の上部は透明の筐体で覆われている。キーボードの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子の配置はこれに限られるものではない。光電変換素子を組み込むスペースが小さい小型のキーボードの場合には、図10に示すように、キーの一部に小型の光電変換素子を埋め込むことも可能であり、有効である。
【0162】
次に、本発明の太陽電池モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0163】
図11は、本発明の電子機器の一例としてのセンサのブロック図である。
図11に示すように、太陽電池モジュールの光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をセンサ回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、センサモジュールを構成することが可能となる。センシング対象としては、温湿度、照度、人感、CO、加速度、UV、騒音、地磁気、気圧など、様々なセンサに応用でき、有効である。センサモジュールは、図11に示すように、定期的に測定対象をセンシングし、読み取ったデータをPCやスマートフォンなどに無線通信で送信する構成になっている。
IoT(Internet of Things)社会の到来により、センサは急増することが予想されている。この無数のセンサの電池を一つ一つ交換するには大きな手間がかかり、現実的ではない。またセンサは、天井や壁など、電池交換しにくい場所にあることも作業性を悪くしている。光電変換素子により電力供給できることもメリットは非常に大きい。また、本発明の太陽電池モジュールは、低照度でも高い出力を得ることができ、かつ出力の光入射角依存性が小さいことから、設置自由度が高いといったメリットも得られる。
【0164】
次に、本発明の太陽電池モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0165】
図12は、本発明の電子機器の一例としてのターンテーブルのブロック図である。
図12に示すように、光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をターンテーブル回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、ターンテーブルを構成することが可能となる。
ターンテーブルは、例えば商品を陳列するショーケースなどに用いられるが、電源の配線は見栄えが悪く、また電池交換の際には陳列物を撤去しなければならず、大きな手間がかかっていた。本発明の太陽電池モジュールを用いることで、そのような不具合を解消でき、有効である。
【0166】
以上、本発明の太陽電池モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器、及び電源モジュールについて説明したが、これらはごく一部であり、本発明の太陽電池モジュールが、これらの用途に限定されるものではない。
【0167】
<用途>
本発明の太陽電池モジュールは、自立型電源として機能させることができ、光電変換によって発生した電力を用いて、装置を動作させることが可能である。本発明の太陽電池モジュールは、光が照射されることにより発電することが可能であるため、電子機器を電源に接続したり、あるいは電池交換したりする必要がない。そのため、電源設備がない場所でも電子機器を動作させたり、身に着けて持ち歩いたり、電池交換が困難な場所でも電池を交換することなく、電子機器を動作させたりすることが可能である。また、乾電池を用いる場合は、その分電子機器が重くなったり、サイズが大きくなったりするため、壁や天井への設置、あるいは持ち運びに支障を来すことがあるが、本発明の太陽電池モジュールは、軽量で薄いため、設置自由度が高く、身に着けたり、持ち歩く上でもメリットが大きい。
【0168】
このように、本発明の太陽電池モジュールは、自立型電源として使用でき、様々な電子機器に組み合わせることができる。例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどの表示機器、マウスやキーボードなどのパソコンの付属機器、温湿度センサや人感センサなどの各種センサ機器、ビーコンやGPSなどの発信機、補助灯、リモコン等数多くの電子機器と組み合わせて使用することができる。
【0169】
本発明の太陽電池モジュールは、特に低照度の光でも発電できるため、室内でも、更に薄暗い影のところでも発電することが可能であるため、適用範囲が広い。また、乾電池のように液漏れがなく、ボタン電池のように誤飲することもなく安全性が高い。更に、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることができる。このように、本発明の太陽電池モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせることで、軽量で使い勝手がよく、設置自由度が高く、交換が不要で、安全性に優れ、かつ環境負荷低減にも有効な電子機器に生まれ変わることができる。
【0170】
本発明の太陽電池モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の基本構成図を図13に示す。これは、光電変換素子に光が照射されると発電し、電力を取り出すことができる。機器の回路は、その電力によって動作することが可能になる。
【0171】
しかし、太陽電池モジュールの光電変換素子は周囲の照度によって出力が変化するため、図13に示す電子機器は安定に動作することができない場合がある。この場合、図14に示すように、回路側に安定した電圧を供給するために、光電変換素子と機器の回路の間に光電変換素子用の電源ICを組み込むことが可能であり、有効である。
しかし、太陽電池モジュールの光電変換素子は十分な照度の光が照射されていれば発電できるが、発電するだけの照度が足りなくなると、所望の電力が得られなくなり、これが光電変換素子の欠点でもある。この場合には、図15に示すように、キャパシタ等の蓄電デバイスを電源ICと機器回路の間に搭載することによって、光電変換素子からの余剰電力を蓄電デバイスに充電することが可能となり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子に光が当たらない場合でも、蓄電デバイスに蓄えられた電力を機器回路に供給することが可能になり、安定に動作させることが可能となる。
【0172】
このように、本発明の太陽電池モジュールと、機器回路とを組み合わせた電子機器において、電源ICや蓄電デバイスを組み合わせることで、電源のない環境でも動作可能であり、また電池交換が不要で、安定に駆動させることが可能になり、光電変換素子のメリットを最大限に活かすことができる。
【0173】
一方、本発明の太陽電池モジュールは、電源モジュールとしても使用することが可能であり、有用である。例えば、図16に示すように、本発明の太陽電池モジュールと、光電変換素子用の電源ICを接続すると、太陽電池モジュールの光電変換素子が光電変換することによって発生した電力を電源ICにて一定の電圧レベルで供給することが可能な直流電源モジュールを構成することができる。
更に、図17に示すように、電源ICに蓄電デバイスを追加することにより、太陽電池モジュールの光電変換素子が発生させた電力を蓄電デバイスに充電することが可能になり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子に光が当たらない状態になっても、電力を供給することが可能な電源モジュールを構成することができる。
図16及び図17に示した本発明の電源モジュールは、従来の一次電池のように電池交換をすることなく、電源モジュールとして使用することが可能である。
【実施例
【0174】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0175】
(合成例1)
<一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーの合成>
下記反応により、下記構造式で表されるポリマー(A-11)を合成した。
【0176】
【化29】
ただし、nは2以上の整数であり、かつポリマー(A-11)の重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。
【0177】
まず、100mLの四つ口フラスコに、上記のジアルデヒド化合物0.66g(2.0mmol)及び上記のジホスホネート化合物1.02g(2.0mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン75mlを加えた。この溶液にカリウムt-ブトキシドの1.0mol/dmテトラヒドロフラン溶液6.75mL(6.75mmol)を滴下し室温で2時間撹拌した後、ベンジルホスホン酸ジエチル及びベンズアルデヒドを順次加え、更に2時間撹拌した。酢酸およそ1mLを加えて反応を終了し、溶液を水洗した。溶媒を減圧留去した後、テトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱による精製を行い、上記構造式で表されるポリマー(A-11)を0.95g得た。
なお、得られた上記構造式で表されるポリマー(A-11)において、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は20,000であった。また、光電子分光装置(AC-2、理研計器株式会社製)を用いて測定したイオン化ポテンシャルは5.22eVであった。以下に記載されているイオン化ポテンシャルは全てAC-2にて測定した。
【0178】
(実施例1)
<太陽電池モジュールの作製>
まず、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトン)イソプロピルアルコール溶液(東京化成株式会社製、B3395、75質量%)0.36gを、イソプロピルアルコール10mLに溶解して得た液を、スピンコート法により、日本板硝子株式会社製FTOガラス基板上に塗布し、120℃で3分間乾燥した後、450℃で30分間焼成することにより、第1の基板上に第1の電極及び緻密な電子輸送層(緻密層)を作製した。なお、緻密層の平均厚みは、10μm~40μmとなるようにした。
【0179】
次に、酸化チタンペースト(グレートセルソーラー社製、商品名:MPT-20)を、α-テルピネオール(関東化学株式会社製)で薄めた分散液を、スピンコート法により緻密層上に塗布し、120℃で3分間乾燥した後、550℃で30分焼成した。
続いて、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学株式会社製、製品番号:38103)を溶解したアセトニトリル(関東化学株式会社製)0.1M(なお、Mは、mol/dmを意味する)の溶液を、スピンコート法により上述の膜上に塗布し、450℃で30分間焼成し、多孔質な電子輸送層(多孔質層)を作製した。なお、多孔質層の平均厚みは、150nmとなるようにした。
【0180】
次いで、ヨウ化鉛(II)(東京化成株式会社製、L0279、0.5306g)、臭化鉛(II)(東京化成株式会社製、L0288、0.0736g)、臭化メチルアミン(東京化成株式会社製、M2589、0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(東京化成株式会社製、F0974、0.1876g)、及びヨウ化カリウム(関東化学株式会社製、32351、0.0112g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製、0.8ml)、ジメチルスルホキシド(関東化学株式会社製、0.2ml)に加え、60℃で加熱撹拌して得た溶液を、上記の多孔質層上にスピンコート法により塗布しながらクロロベンゼン(関東化学株式会社製、0.3ml)を加えてペロブスカイト膜とし、150℃で30分間乾燥させることによりペロブスカイト層を形成した。
なお、ペロブスカイト層の平均厚みは、200nm以上350nm以下となるようにした。
【0181】
そして、上記の工程により得られた積層物に対して、レーザー加工を行うことによって、隣接する積層物との距離が10μmとなるように溝を形成した。次いで、上記構造式で示されるポリマー(A-11)(重量平均分子量=20,000、イオン化ポテンシャル5.22eV)を36.8mg、及び2,2(7,7(-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9(-スピロビフルオレン)))(以下、「spiro-OMeTAD」と称する、メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)を36.8mg、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを4.9mg、4-t-ブチルピリジン(東京化成株式会社製、B0388)を6.8mg、及びトリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)ヘキサフルオロフォスフェート(Greatcell Solar社製、MS210205)を0.1mg計量し、クロロベンゼン(関東化学株式会社製)1.5mLに溶解した。得られた溶液を上記の工程により得られた積層物上にスピンコート法により塗布して、ホール輸送層を作製した。なお、ホール輸送層の平均厚み(ペロブスカイト層上の部分)は、100nm~200nmとなるようにした。前記2種類のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルの差は0.13eVであった。
更に、前述の積層物上に、金(田中貴金属工業株式会社製)を100nm真空蒸着した。
【0182】
その後、封止部材が設けられる第1の基板及び第2の基板の端部を、レーザー加工によりエッチング処理し、更にレーザー加工により光電変換素子を直列に接続するための貫通孔(導通部)を形成した。次に、前述の積層物上に銀を真空蒸着し、厚さ約100nmの第2の電極を形成した。マスク製膜により、隣接する第2の電極の間の距離を200μmとなるようにした。また、貫通孔の内壁も銀が蒸着され、隣接する光電変換素子が直列に接続されていることを確認した。なお、光電変換素子の直列数は6個である。
【0183】
続いて、第1の基板の端部を、光電変換素子(発電領域)が取り囲まれるように、紫外線硬化樹脂(株式会社スリーボンドホールディングス製、商品名:TB3118)をディスペンサー(株式会社サンエイテック製、商品名:2300N)を用いて塗布した。その後、低湿(露点-30℃)かつ酸素濃度を0.2%に制御したグローブボックス内に移して、紫外線硬化樹脂の上に第2の基板としてのカバーガラスを載せ、紫外線照射により紫外線硬化樹脂を硬化させて発電領域の封止を行い、図1で示される本発明の太陽電池モジュール1を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。
【0184】
<太陽電池モジュールの評価>
得られた太陽電池モジュール1について、ソーラーシミュレーター(AM1.5、10mW/cm)で光を照射しつつ、太陽電池評価システム(株式会社エヌエフ回路設計ブロック製、商品名:As-510-PV03)を用いて、太陽電池特性(初期特性)を評価した。更に、上記のソーラーシミュレーターを用いて、上記と同様の条件で光を100時間連続照射した後、上記と同じように太陽電池特性(100時間連続照射後の特性)を評価した。
評価した太陽電池特性は、開放電圧、短絡電流密度、形状因子、変換効率(発電効率)である。また、初期特性における変換効率に対する、100時間連続照射後の特性における変換効率の割合を、変換効率の維持率として求めた。結果を表3に示した。
【0185】
(実施例2)
実施例1において、互いに隣接する光電変換素子における第1の電極、緻密層、多孔質層、及びペロブスカイト層の間の距離を40μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、図1で示される太陽電池モジュール2を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール2について、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価の結果を表3に示した。
【0186】
(実施例3)
実施例1において、spiro-OMeTAD(メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)36.8mgを、下記(C-1)で示される化合物(分子量844.1、イオン化ポテンシャル5.21eV)36.8mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、図1で示される太陽電池モジュール3を作製した。この2種類のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルの差は0.01eVであった。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール3について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0187】
【化30】
【0188】
(実施例4)
実施例1において、上記構造式で示されるポリマー(A-11)(重量平均分子量=20,000、イオン化ポテンシャル5.22eV)36.8mgを、下記式で示されるポリマー(B-1)(Aldrich社製、「P3HT」、重量平均分子量=50,000、イオン化ポテンシャル=5.0eV)に変更、及びspiro-OMeTAD(メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)36.8mgを、下記式で示される化合物(C-2)(分子量554.9、イオン化ポテンシャル=5.05eV)に変更した以外は、実施例1と同様にして、図1で示される太陽電池モジュール4を作製した。この2種類のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルの差は0.05eVであった。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール4について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0189】
【化31】
ただし、mは2以上の整数であり、かつ上記式で表されるポリマー(B-1)の重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。
【0190】
【0191】
(実施例5)
実施例1において、多孔質層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、図2で示される太陽電池モジュール5を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール5について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3にした。
【0192】
(実施例6)
実施例5において、緻密層を、スパッタを用いて形成した酸化スズからなる緻密層に変更した以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール6を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール6について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0193】
(実施例7)
実施例6において、ペロブスカイト層を形成する際に用いた、ヨウ化鉛(II)(0.5306g)、臭化鉛(II)(0.0736g)、臭化メチルアミン(0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.1876g)、及びヨウ化カリウム(0.0112g)に加えて、更にヨウ化セシウム(0.0143g)を用いた以外は、実施例6と同様にして、太陽電池モジュール7を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール7について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0194】
(実施例8)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11を、ポリマーA-11(重量平均分子量Mw=122,000)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール8を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール8について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0195】
(実施例9)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11を、ポリマーA-11(重量平均分子量Mw=282,000)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール9を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール9について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0196】
(実施例10)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11を、ポリマーA-11(重量平均分子量Mw=282,000)に代え、「spiro-OMeTAD」を上記(C-1)で示される化合物(分子量844.1、イオン化ポテンシャル5.21eV)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール10を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール10について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0197】
(実施例11)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11、ポリマーA-11(重量平均分子量Mw=282,000)に代え、「spiro-OMeTAD」を上記(C-2)で示される化合物(分子量554.9、イオン化ポテンシャル=5.05eV)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール11を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール11について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0198】
(実施例12)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11を、下記(C-3)で示される化合物(分子量=2,157、イオン化ポテンシャル=5.23eV)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール12を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール12について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0199】
【化32】
【0200】
(実施例13)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11を、上記(C-3)で示される化合物(分子量=2,157、イオン化ポテンシャル=5.23eV)に代え、「spiro-OMeTAD」を上記(C-1)で示される化合物(分子量844.1、イオン化ポテンシャル5.21eV)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール13を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール13について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0201】
(実施例14)
実施例5において、ホール輸送性材料におけるポリマーA-11を、上記(C-3)で示される化合物(分子量=2,157、イオン化ポテンシャル=5.23eV)に代え、「spiro-OMeTAD」を上記(C-2)で示される化合物(分子量554.9、イオン化ポテンシャル=5.05eV)に代えた以外は、実施例5と同様にして、太陽電池モジュール14を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール14について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0202】
(実施例15)
実施例7において、ペロブスカイト層を形成する際に用いた、ヨウ化鉛(II)(0.5306g)、臭化鉛(II)(0.0736g)、臭化メチルアミン(0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.1876g)、ヨウ化カリウム(0.0112g)、及びヨウ化セシウム(0.0143g)のうち、ヨウ化カリウム(0.0112g)を含有させず、ヨウ化セシウムの重量を増加させた(0.0318g)以外は、実施例7と同様にして、太陽電池モジュール15を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール15について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0203】
(実施例16)
実施例15において、ペロブスカイト層を形成する際に用いた、ヨウ化鉛(II)(0.5306g)、臭化鉛(II)(0.0736g)、臭化メチルアミン(0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.1876g)、及びヨウ化セシウム(0.0318g)に加え、ヨウ化アンチモン(0.0204g)を用いた以外は、実施例15と同様にして、太陽電池モジュール16を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール16について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0204】
(実施例17)
実施例6において、ホール輸送性材料におけるポリマー(A-11)(重量平均分子量=20,000、イオン化ポテンシャル5.22eV)を51.5mg、及びspiro-OMeTAD(メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)を22.1mg用いた以外は、実施例6と同様にして、太陽電池モジュール17を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール17について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0205】
(実施例18)
実施例6において、ホール輸送性材料におけるポリマー(A-11)(重量平均分子量=20,000、イオン化ポテンシャル5.22eV)を44.2mg、及びspiro-OMeTAD、メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)を66.2mg用いた以外は、実施例6と同様にして、太陽電池モジュール18を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール18について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0206】
(比較例1)
実施例1において、多孔質層及びペロブスカイト層を互いに延設された連続層とした以外は、実施例1と同様にして、図3で示される太陽電池モジュール19を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール19について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0207】
(比較例2)
実施例1において、互いに隣接する光電変換素子における第1の電極及び緻密層の間の距離を40μmにし、多孔質層及びペロブスカイト層を互いに延設された連続層とした以外は、実施例1と同様にして、図3で示される太陽電池モジュール20を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール20について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0208】
(比較例3)
実施例1において、互いに隣接する光電変換素子における第1の電極、緻密層、及び多孔質層の間の距離を40μmにし、ペロブスカイト層を互いに延設された連続層とした以外は、実施例1と同様にして、図4で示される太陽電池モジュール21を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール21について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0209】
(比較例4)
実施例1において、上記構造式で表されるポリマー(A-11)(重量平均分子量=20,000、イオン化ポテンシャル5.22eV)36.8mgとspiro-OMeTAD(メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)36.8mgを、spiro-OMeTAD(メルク社製、分子量=1225.4、イオン化ポテンシャル=5.09eV)73.6mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、図1で示される太陽電池モジュール22を作製した。互いに隣接する光電変換素子を構成する各層の間の距離を表1に示す。また、太陽電池モジュール22について、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示した。
【0210】
【表1】
【0211】
【表2】
【0212】
【表3】
【0213】
表2の結果から、実施例1~18は、100時間の連続照射試験後の変換効率の維持率が全て90%以上を維持しており、第2の電極として設けた金とホール輸送層の剥離も観測されなかったことから、良好な耐久性を有していることがわかった。
これに対して、比較例1~3は実施例1と同じホール輸送性材料を使用していながら、多孔質層やペロブスカイト層が連続して形成されたモジュールであるため、耐久性が低いことがわかった。
また、比較例4の太陽電池モジュール22は、100時間の連続照射後に第2の電極として設けた金とホール輸送層から剥離が確認できた。
【0214】
以上説明したように、本発明の太陽電池モジュールは、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、ホール輸送層が、互いに延設された連続層であり、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における第1の電極、電子輸送層、及びペロブスカイト層が、ホール輸送層により隔てられている。これにより、本発明の太陽電池モジュールは、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。
【0215】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層、及び第2の電極を有する光電変換素子が、基板上に複数設けられている太陽電池モジュールであって、
互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、前記ホール輸送層が、互いに延設された連続層であり、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子における前記第1の電極、前記電子輸送層、及び前記ペロブスカイト層が、前記ホール輸送層により隔てられており、
前記ホール輸送層が、ホール輸送性材料である重量平均分子量2,000以上のポリマー又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有することを特徴とする太陽電池モジュールである。
<2> 前記重量平均分子量2,000以上のポリマーが、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有する前記<1>に記載の太陽電池モジュールである。
【化33】
前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択される少なくともいずれかを表し、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。Xはアルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。nは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。pは0、1又は2を示す。
【化34】
前記一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択されるいずれかを表す。Xは酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子から選択されるいずれかを表す。Xはアルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。mは2以上の整数であり、かつ上記一般式(2)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。qは0、1又は2を示す。
<3> 第1の電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、ホール輸送層、及び第2の電極を有する光電変換素子が、基板上に複数設けられている太陽電池モジュールであって、
互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、前記ホール輸送層が、互いに延設された連続層であり、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子における前記第1の電極、前記電子輸送層、及び前記ペロブスカイト層が、前記ホール輸送層により隔てられており、
前記ホール輸送層が、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表される繰り返し単位を有しかつ重量平均分子量2,000以上のポリマー、又は分子量2,000以上の化合物と、ホール輸送性材料である分子量2,000未満の化合物とを含有することを特徴とする太陽電池モジュールである。
【化35】
前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択される少なくともいずれかを表し、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。Xはアルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。nは2以上の整数であり、かつ上記一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。pは0、1又は2を示す。
【化36】
前記一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、及びアリール基から選択されるいずれかを表す。Xは酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子から選択されるいずれかを表す。Xはアルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基から選択されるいずれかを表す。mは2以上の整数であり、かつ上記一般式(2)で表されるポリマーの重量平均分子量が2,000以上になる整数を示す。qは0、1又は2を示す。
<4> 前記分子量2,000未満の化合物が、スピロビフルオレン化合物、トリアリールアミン化合物、及びチオフェン化合物のいずれかである前記<3>に記載の太陽電池モジュールである。
<5> 互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記ホール輸送層を貫通した導通部により電気的に接続されている前記<1>から<4>のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
<6> 互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子において、一の前記光電変換素子における前記ペロブスカイト層と、他の前記光電変換素子における前記ペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
<7> 前記光電変換素子が複数設けられている第1の基板と、
前記光電変換素子を挟むように前記第1の基板と対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に配置され、前記光電変換素子を封止する封止部材と、
を更に有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、
を有することを特徴とする電子機器である。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電する蓄電池と、
前記太陽電池モジュールが光電変換することによって発生した電力及び/又は前記蓄電池に蓄電された電力によって動作する装置を有することを特徴とする電子機器である。
<10> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の太陽電池モジュールと、
電源ICと、
を有することを特徴とする電源モジュールである。
【0216】
前記<1>から<7>のいずれかに記載の太陽電池モジュール、前記<8>から<9>のいずれかに記載の電子機器、及び前記<10>に記載の電源モジュールによれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0217】
【文献】特開2016-195175号公報
【符号の説明】
【0218】
1 第1の基板
2、2a、2b 第1の電極
3 緻密な電子輸送層(緻密層)
4 多孔質な電子輸送層(多孔質層)
5 ペロブスカイト層
6 ホール輸送層
7、7a、7b 第2の電極
8 貫通部
9 封止部材
10 第2の基板
100~104 太陽電池モジュール
a、b 光電変換素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17