(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】変復調装置、ファクシミリ装置、解析用データ保存方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H04N1/00 J
(21)【出願番号】P 2020132006
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】徳田 正志
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 嘉孝
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-201708(JP,A)
【文献】特開2008-042286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話網を介して受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータが、解析用データとして格納されたデータ記憶部と、
前記デジタルデータの取得要求を受けて、前記デジタルデータを前記取得要求の要求元へ出力する受信データ出力部と、
前記デジタルデータを前記解析用データとして前記データ記憶部に格納する受信データ保存部と、を備え
、
前記データ記憶部は、前記解析用データを格納するための第一受信データ領域と第二受信データ領域と、を有し、
前記受信データ出力部は、前記受信データ保存部が前記第一受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第二受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、前記受信データ保存部が前記第二受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第一受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力する、
変復調装置。
【請求項2】
前記受信データ出力部は、通信制御装置からの前記取得要求に応じて、前記データ記憶部の前記第一受信データ領域または前記第二受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、
前記受信データ保存部が、前記第一受信データ領域または前記第二受信データ領域のいずれか一方からもう一方に前記デジタルデータを格納する領域を切り替えると、前記受信データ出力部への前記取得要求を促すための割込信号を前記通信制御装置に送信する割込指示部をさらに備える、
請求項
1に記載の変復調装置。
【請求項3】
前記受信データ保存部は、前記第一受信データ領域および前記第二受信データ領域のデータ容量を設定値によって決定する、
請求項
1または
2に記載の変復調装置。
【請求項4】
前記受信データ保存部は、前記デジタルデータを前記データ記憶部に格納するか否かを設定値によって決定する、
請求項
1から
3のいずれか1項に記載の変復調装置。
【請求項5】
A/D変換器と変復調装置と通信制御装置とを備えるファクシミリ装置であって、
前記A/D変換器は、電話網を介して受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータを出力し、
前記変復調装置は、
前記A/D変換器から受信したデジタルデータが、解析用データとして格納されたデータ記憶部と、
前記通信制御装置から前記デジタルデータの取得要求を受けて、前記デジタルデータを前記通信制御装置へ出力する受信データ出力部と、
前記デジタルデータを前記解析用データとして前記データ記憶部に格納する受信データ保存部と、を備え、
前記データ記憶部は、前記解析用データを格納するための第一受信データ領域と第二受信データ領域と、を有し、
前記受信データ出力部は、前記通信制御装置からの前記取得要求に応じて、前記受信データ保存部が前記第一受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第二受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、前記受信データ保存部が前記第二受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第一受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、
前記変復調装置は、
前記受信データ保存部が、前記第一受信データ領域または前記第二受信データ領域のいずれか一方からもう一方に前記デジタルデータを格納する領域を切り替えると、前記受信データ出力部への前記取得要求を促すための割込信号を前記通信制御装置に送信する割込指示部をさらに備え、
前記通信制御装置は、
前記デジタルデータを前記変復調装置から取得する受信データ取得部
と、
前記割込信号を受信すると、前記受信データ取得部に前記デジタルデータの取得を実行させる割込処理部を
さらに備える、
ファクシミリ装置。
【請求項6】
コンピュータによって実行される方法であって、
電話網を介して受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータを、解析用データとしてデータ記憶部に格納するステップと、
前記デジタルデータの取得要求を受けて、前記デジタルデータを前記取得要求の要求元へ出力するステップと、を備え
、
前記データ記憶部は、前記解析用データを格納するための第一受信データ領域と第二受信データ領域と、を有し、
前記出力するステップは、前記格納するステップにおいて前記第一受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第二受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、前記格納するステップにおいて前記第二受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第一受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力するステップである、
解析用データ保存方法。
【請求項7】
コンピュータに、
電話網を介して受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータを、解析用データとしてデータ記憶部に格納するステップと、
前記デジタルデータの取得要求を受けて、前記デジタルデータを前記取得要求の要求元へ出力するステップと、
を実行させるためのプログラム
であって、
前記データ記憶部は、前記解析用データを格納するための第一受信データ領域と第二受信データ領域と、を有し、
前記出力するステップは、前記格納するステップにおいて前記第一受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第二受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、前記格納するステップにおいて前記第二受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第一受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力するステップである、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変復調装置、ファクシミリ装置、解析用データ保存方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ通信において発生した障害の原因を解析する技術が知られている。例えば、画像を相手先に伝送できないという通信障害が発生した場合に、電話回線上の音声を録音し、録音したデータをモデムに入力させて、障害の原因を解析する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電話回線上の音声を録音したデータは、モデムに入力されるデータと等価ではないため、ファクシミリ装置の内部で発生するノイズが含まれない。そのため、従来の技術では、ファクシミリ装置の内部で発生するノイズを原因とする通信障害の解析が困難である。また、電話回線上の音声を録音したデータに基づいて、ファクシミリ装置が受信した信号の信号レベルを推測することは難しいため、信号レベルが十分でないことを原因とする通信障害の解析が困難である。
【0004】
開示の技術は、通信障害の原因の解析を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の技術は、電話網を介して受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータが、解析用データとして格納されたデータ記憶部と、前記デジタルデータの取得要求を受けて、前記デジタルデータを前記取得要求の要求元へ出力する受信データ出力部と、前記デジタルデータを前記解析用データとして前記データ記憶部に格納する受信データ保存部と、を備え、前記データ記憶部は、前記解析用データを格納するための第一受信データ領域と第二受信データ領域とを有し、前記受信データ出力部は、前記受信データ保存部が前記第一受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第二受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力し、前記受信データ保存部が前記第二受信データ領域に前記デジタルデータを格納する間には、前記第一受信データ領域に格納された前記デジタルデータを出力する、変復調装置である。
【発明の効果】
【0006】
通信障害の原因の解析を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ファクシミリ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】モデムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】データRAMのデータ領域の一例を示す図である。
【
図4】モデムおよび通信制御装置の機能の一例を示す図である。
【
図6】受信データの保存方法について説明するための図である。
【
図7】不具合の解析方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明に係るファクシミリ装置の実施の形態について説明する。
【0009】
図1は、ファクシミリ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0010】
ファクシミリ装置1は、ファクシミリボード10と、コントローラ20と、スキャナ30と、プロッタ40と、を備える。ファクシミリボード10とコントローラ20とは通信可能に接続されている。また、コントローラ20は、スキャナ30およびプロッタ40と通信可能に接続されている。
【0011】
ファクシミリボード10は、電話網に含まれる交換局を介して、対向するファクシミリ装置と接続されている。
【0012】
ファクシミリボード10は、モデム100と、通信制御装置200と、NCU(Network Control Unit)300と、を備える。
【0013】
モデム100は、変調機能及び復調機能を有する変復調装置である。具体的には、モデム100は、ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)によるT勧告に従った画像フォーマット(原稿サイズ、解像度、圧縮方式など)と、V勧告に従った通信方式となるように、データを変調し、変調されたデータ(以下、変調データ)を、NCU300を介して対向するファクシミリ装置に送信する。
【0014】
また、モデム100は、NCU300を介してデータを受信すると、受信したデータ(以下、受信データ)をT勧告およびV勧告にしたがって復調して、復調されたデータ(以下、復調データ)を通信制御装置200に送信する。
【0015】
通信制御装置200は、ファクシミリの送受信のための各種処理を実行する。通信制御装置200は、コントローラ20からの指示を受けて、画像処理、通信制御処理等のファクシミリの送受信のための各種処理を実行する。
【0016】
通信制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)210と、RAM(Random Access Memory)220と、ROM(Read Only Memory)230と、画像処理回路240と、原稿蓄積メモリ250と、タイマ260と、USBIF(Universal Serial Bus Interface)270と、を備える。
【0017】
CPU210は、USBIF270を介して、コントローラ20からファクシミリを送信する要求を受けて、モデム100に送信時の処理を実行させる。また、CPU210は、モデム100を介して、対応するファクシミリ装置からデータを受信すると、受信データに基づく画像を形成するように、USBIF270を介してコントローラ20にプロッタ40の制御を開始する指示を行う。
【0018】
RAM220は、主記憶装置であって、CPU210による作業領域として使用される。ROM230は、不揮発性記憶装置であって、CPU210に処理を実行させるためのプログラム、設定値を示すデータ等が格納される。
【0019】
画像処理回路240は、CPU210の指示を受けて、画像データを処理する。原稿蓄積メモリ250には、モデム100によって復調されたデータが格納される。原稿蓄積メモリに格納されたデータは、ページ単位でプロッタ40へと転送され印刷される。
【0020】
タイマ260は、CPU210による処理のタイミングを制御するための時間の計測を行う。USBIF270は、コントローラ20との間のUSB通信を制御する。
【0021】
通信制御装置200の各ハードウェアおよびモデム100は、バス400を介して通信可能に接続されている。
【0022】
NCU300は、電話網などで加入者側の回線の末端に接続される機器である。NCU300は、接続の開始や切断、接続相手の電話番号などを通知する信号を交換局に送信する。
【0023】
図2は、モデムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0024】
モデム100は、コンピュータによって構成され、DSP(Digital Signal Processor)101と、プログラムRAM102と、データRAM103と、コマンドDPRAM(Dual Port RAM)104と、システムIF105と、CODECIF106と、を備える。
【0025】
DSP101は、積和演算を高速に実行するデジタル信号処理に特化した機能を有するプロセッサである。DSP101は、プログラムRAM102に格納されたプログラムにしたがって動作し、変調処理、復調処理等を含む各種処理を実行する。
【0026】
プログラムRAM102は、DSP101が実行する処理を規定するプログラムを記憶する。
【0027】
データRAM103は、DSP101による処理の対象となるデータを格納するための記憶装置である。データRAM103は、NCU300を介して受信したデータを、通信障害の原因を解析するためのデータ(解析用データ)として記憶する。また、データRAM103は、DSP101によって変調された変調データ、復調された復調データ等を記憶する。
【0028】
コマンドDPRAM104は、通信制御装置200のCPU210と、DSP101との間のコマンド等の情報を記憶する。
【0029】
システムIF105は、通信制御装置200との間の通信を制御する。通信制御装置200のCPU210が、システムIF105およびシステムバス107を介してDSP101に処理を要求すると、DSP101は、メモリバス108を介してデータRAM103から取得した受信データを、通信制御装置200に送信する。なお、システムバス107は、後述する割込信号のための割込線を含む。
【0030】
モデム100およびNCU300は、半導体DAA(Digitally Assisted Analog)500を介して接続されている。
【0031】
半導体DAA500は、CODEC機能と回線制御機能を有する装置である。具体的には、半導体DAA500は、通信先からNCU300を介して受信したアナログ信号をデジタルデータにA/D変換して、変換されたデジタルデータをモデム100に送信する。この処理において、半導体DAA500は、A/D変換器の一例である。
【0032】
また、半導体DAA500は、モデム100から受信したデジタルデータをアナログ信号にD/A変換して、変換されたアナログ信号をNCU300に送信する。この処理において、半導体DAA500は、D/A変換器の一例である。
【0033】
半導体DAA500は、シリアルIF501と、回線制御部502と、を備える。シリアルIF501は、モデム100との間のデジタル通信を制御する。回線制御部502は、NCU300との間のアナログ通信を制御する。
【0034】
CODECIF106は、CODEC機能を有する半導体DAA500との間の通信を制御する。
【0035】
図3は、データRAMのデータ領域の一例を示す図である。
【0036】
データRAM103は、データ領域として、変復調データ領域103aと、第一受信データ領域103bと、第二受信データ領域103cと、を有する。
【0037】
変復調データ領域103aは、変調データおよび復調データを記憶するためのデータ領域である。
【0038】
第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cは、それぞれ受信データを記憶するためのデータ領域である。具体的には、第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cは、それぞれ128ワードのデータ容量を有する。
【0039】
次に、ファクシミリ装置1が備える各装置の機能について説明する。
【0040】
図4は、モデムおよび通信制御装置の機能の一例を示す図である。
【0041】
モデム100は、データ記憶部11と、デジタルデータ受信部12と、受信データ保存部13と、変復調部14と、復調データ送信部15と、割込指示部16と、受信データ出力部17と、を備える。
【0042】
データ記憶部11は、各種のデータを記憶する。具体的には、データ記憶部11は、受信データ901と、変調データ902と、復調データ903と、を記憶する。データ記憶部11は、データRAM103によって実現される。
【0043】
受信データ901は、電話網を介して受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータである。受信データ901は、解析用データとして、データ記憶部11に格納される。
【0044】
デジタルデータ受信部12は、半導体DAA500からデジタルデータを受信する。デジタルデータ受信部12は、CODECIF106によって実現される。
【0045】
受信データ保存部13は、デジタルデータ受信部12が受信したデジタルデータである受信データ901を、データ記憶部11に格納する。具体的には、受信データ保存部13は、受信データ901を、第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cのいずれかに格納する。
【0046】
受信データ保存部13は、第一受信データ領域103bに受信データ901の格納を開始すると、第一受信データ領域103bのデータ容量を超えるまでは、第一受信データ領域103bに受信データ901を格納する。そして、受信データ保存部13は、第一受信データ領域103bのデータ容量を超えると判断すると、第二受信データ領域103cに受信データ901の格納を開始する。
【0047】
同様に、受信データ保存部13は、第二受信データ領域103cに受信データ901の格納を開始すると、第二受信データ領域103cのデータ容量を超えるまでは、第二受信データ領域103cに受信データ901を格納する。そして、受信データ保存部13は、第二受信データ領域103cのデータ容量を超えると判断すると、第一受信データ領域103bに受信データ901の格納を開始する。
【0048】
変復調部14は、送信データの変調および受信データの復調を実行する。具体的には、変復調部14は、送信データをT勧告およびV勧告にしたがって変調し、変調データ902をデータ記憶部11に格納する。
【0049】
また、変復調部14は、受信データ901をT勧告およびV勧告にしたがって復調し、復調データ903をデータ記憶部11に格納する。変復調部14は、DSP101によって実現される。
【0050】
復調データ送信部15は、復調データ903を通信制御装置200に送信する。復調データ送信部15は、システムIF105によって実現される。
【0051】
割込指示部16は、割込信号を通信制御装置200に送信する。割込信号は、受信データ出力部17への取得要求を促すための信号である。具体的には、受信データ保存部13が、第一受信データ領域103bまたは第二受信データ領域103cのいずれか一方からもう一方に受信データ901を格納する領域を切り替えると、割込信号を通信制御装置200に送信する。
【0052】
受信データ出力部17は、受信データ901の取得要求を受けて、受信データ901を取得要求の要求元へ出力する。具体的には、受信データ出力部17は、通信制御装置200からの取得要求に応じて、データ記憶部11の第一受信データ領域103bまたは第二受信データ領域103cに格納された受信データ901を出力する。
【0053】
通信制御装置200は、割込処理部21と、受信データ取得部22と、受信データ出力部23と、を備える。
【0054】
割込処理部21は、モデム100の割込指示部16から割込信号を受信すると、受信データ取得部22に受信データ901の取得を実行させる。
【0055】
受信データ取得部22は、受信データ901をモデム100から取得する。具体的には、受信データ取得部22は、モデム100のDSP101にコマンドを送付して、受信データ901を送信するように要求する。
【0056】
割込処理部21および受信データ取得部22は、CPU210によって実現される。
【0057】
受信データ出力部23は、受信データ取得部22が取得した受信データ901を、コントローラ20に送信する。コントローラ20は、通信制御装置200から受信した受信データ901を、通信障害の原因を解析するための装置に送信する。
【0058】
次に、ファクシミリ装置1の動作について説明する。
【0059】
【0060】
対向するファクシミリから送信されたアナログ信号が、NCU300に到達すると、NCU300を通過したアナログ信号は、半導体DAA500によってA/D変換される。そして、半導体DAA500は、受信したアナログ信号をA/D変換したデジタルデータを、モデム100に出力する。
【0061】
モデム100のデジタルデータ受信部12は、デジタルデータを受信する(ステップS11)。そして、受信データ保存部13は、受信データ901の保存を開始する(ステップS12)。なお、受信データ保存部13は、初期状態においては第一受信データ領域103bまたは第二受信データ領域103cのいずれかに受信データ901の保存を開始し、それ以降は後述する期間が経過するまでは、開始時のデータ領域に保存する。
【0062】
次に、変復調部14は、受信データ901の復調を開始する(ステップS13)。変復調部14は、復調データ903を変復調データ領域103aに格納する。
【0063】
モデム100は、受信開始時または割込信号送信時から所定の期間が経過したか否かを判定する(ステップS14)。所定の期間は、半導体DAAのサンプリング周波数と、第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cのデータ容量と、に基づいてあらかじめ規定された期間である。例えば、第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cが128ワードであって、半導体DAAのサンプリング周波数が9600ワード/秒である場合、128/9600≒0.013(秒)より、約13ミリ秒を所定の期間とする。
【0064】
モデム100が、所定の期間が経過したと判定すると(ステップS14:YES)、受信データ保存部13は、受信データの保存領域を変更する(ステップS15)。具体的には、受信データ保存部13は、第一受信データ領域103bへの保存を行っていた場合は、第二受信データ領域103cに保存領域を変更し、第二受信データ領域103cへの保存を行っていた場合は、第一受信データ領域103bに保存領域を変更する。
【0065】
次に、割込指示部16は、通信制御装置200に割込信号を送信する(ステップS16)。そして、通信制御装置200の割込処理部21は、割込信号を受信すると、受信データ取得部22に受信データ901の取得を実行させる。受信データ取得部22は、モデム100のDSP101にコマンドを送付して、受信データ901を送信するように要求する。
【0066】
次に、受信データ出力部17は、取得要求に応じて、通信制御装置200に受信データ901を送信する(ステップS17)。
【0067】
また、モデム100は、ステップS14において、所定の期間が経過していないと判定すると(ステップS14:NO)、ステップS15からステップS17までの処理をスキップする。
【0068】
モデム100は、すべての受信データ901の送信処理および復調処理が終了したか否かを判定する(ステップS18)。モデム100は、受信データ901の送信処理または復調処理のいずれかが終了していないと判定すると(ステップS18:NO)、ステップS14の処理に戻る。
【0069】
モデム100が、すべての受信データ901の送信処理および復調処理が終了したと判定すると(ステップS18:YES)、復調データ送信部15は、通信制御装置200に復調データ903を送信する(ステップS19)。
【0070】
図6は、受信データの保存方法について説明するための図である。
【0071】
図6(a)に示される通り、DSP101が受信データ901を第一受信データ領域103bに書き込む間は、通信制御装置200によって読み出される受信データ901、すなわち受信データ出力部17によって出力される受信データ901は、第二受信データ領域103cに格納された受信データ901である。
【0072】
また、
図6(b)に示される通り、保存領域が切り替えられて、DSP101が受信データ901を第二受信データ領域103cに書き込む間は、通信制御装置200によって読み出される受信データ901、すなわち受信データ出力部17によって出力される受信データ901は、第一受信データ領域103bに格納された受信データ901である。
【0073】
図7は、不具合の解析方法について説明するための図である。
【0074】
通信障害等の不具合の原因を解析する際は、ファクシミリ装置1に交換機2が接続されている。交換機2は、電話回線をエミュレートするための電話回線疑似交換機である。
【0075】
また、交換機2の二つの電話ポートのうち、一つの電話ポートには、電話ケーブルを介してファクシミリ装置1が接続され、もう一つの電話ポートには、電話ケーブルを介して音声応答装置3が接続されている。
【0076】
音声応答装置3は、解析用データを再生する。解析用データは、受信データ901をWAV形式等の再生可能なフォーマットに変換したデータである。
【0077】
具体的な解析方法は、以下の通りである。解析者は、音声応答装置3に、解析用データを再生させ、ファクシミリ通信を疑似的に行わせることによって、ファクシミリ通信がどこで滞るかを解析する。
【0078】
解析者は、モデム100のDSP101が実行する処理を規定するプログラムによって、DSP101が参照しているデータRAM103のデータ領域にある変数等を調べ、プログラムとして所望の動作をしているのかどうか、プログラムがどこまで進行しているのか、どこで滞っているか、その原因はなぜかを調べることで原因を特定する。
【0079】
従来、電話回線上に録音機を接続して録音した音声ファイルを使用して解析していたため、NCU300および半導体DAA500を通過する際において周辺機器のノイズが含まれた場合の劣化を原因とする不具合の場合に、正確な解析が困難であった。
【0080】
また、録音のための機材によって音声ファイルの品質が異なり、録音レベルを合わせる基準もないため、音声ファイルを使用した解析では、モデム100に入力されるデジタルデータの信号レベルを計測することが難しく、信号レベルが低いことを原因する不具合の場合にも、正確な解析が困難であった。
【0081】
これに対して、本実施形態に係るファクシミリ装置1によれば、NCU300が受信したアナログ信号を、半導体DAA500がA/D変換した直後のデジタルデータが、データ記憶部11に保存される。これによって、デジタルデータを用いた解析が可能となる。
【0082】
デジタルデータには、NCU300および半導体DAA500を通過する際の周辺機器のノイズが含まれるため、周辺機器のノイズが含まれた場合の劣化を原因とする不具合の場合であっても、正確な解析が可能である。また、デジタルデータの信号レベルを計測することができるため、信号レベルが低いことを原因する不具合の場合にも、正確な解析が可能である。
【0083】
例えば、モデムにおいては、600Ω系にて1mWの電力となる電圧レベルを0dBmとし、デシベル比で信号レベルを規定している。一般的に着信レベル-43dBmまではモデムが受信可能とすべきで、それ以下の信号レベルの場合受信しないようにしている。モデムが0dBmと判定する信号レベルはモデムによって決まっているため、解析時の音声応答装置の再生レベルを0dBmで録音したものがモデムに0dBmで入るように設定しておくことで、モデム側が解析する信号レベルを実際とあわせることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る割込指示部16は、受信データ保存部13が、第一受信データ領域103bまたは第二受信データ領域103cのいずれか一方からもう一方に受信データ901を格納する領域を切り替えると、受信データ出力部17への取得要求を促すための割込信号を通信制御装置200に送信する。これによって、通信制御装置200は、受信データを取得する処理をどのタイミングで実行すれば良いかがわかるため、タイミングを確認するための処理等が不要となることから、通信制御装置200の処理の負荷が軽減される。
【0085】
上述した第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cのデータ容量として、128ワードである例を示した。しかし、バッファとして使用されるこれらのデータ容量は、他でも良い。
【0086】
例えば、バッファとして使用されるこれらのデータ容量が小さいと、変調データ902、復調データ903等を記憶するためのデータ容量が大きくなる。逆に、バッファとして使用されるこれらのデータ容量が大きいと、CPU210による読み出しの回数を少なくすることができるので、CPU210が処理を切り替えるオーバーヘッドが減り、CPU210の処理の自由度が向上する。
【0087】
また、受信データ保存部13が、第一受信データ領域103bおよび第二受信データ領域103cのデータ容量を設定値によって決定するようにしても良い。設定値を示すデータは、例えばプログラムRAM102等に格納される。このようにすれば、上述したトレードオフを考慮して、データ容量を状況に応じて設定することができる。
【0088】
また、受信データ保存部13が、デジタルデータをデータ記憶部11に格納するか否かを設定値によって決定するようにしても良い。設定値を示すデータは、例えばプログラムRAM102等に格納される。このようにすれば、データRAM103のデータ容量が十分でない場合に、変調データ902、復調データ903等のためのデータ領域を確保することができる。
【0089】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0090】
また、ファクシミリ装置1は、ファクシミリ専用の機器でなくても良く、例えば、ファクシミリ機能を有するMFP(Multifunction Peripheral)であっても良い。
【0091】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ファクシミリ装置
10 ファクシミリボード
11 データ記憶部
12 デジタルデータ受信部
13 受信データ保存部
14 変復調部
15 復調データ送信部
16 割込指示部
17 受信データ出力部
20 コントローラ
21 割込処理部
22 受信データ取得部
23 受信データ出力部
30 スキャナ
40 プロッタ
100 モデム
200 通信制御装置
300 NCU
400 バス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】