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  • 特許-酸化物焼結体の製造方法 図1
  • 特許-酸化物焼結体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】酸化物焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/645 20060101AFI20240814BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C04B35/645
C04B35/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020142657
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038259
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】中村 宣夫
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-193898(JP,A)
【文献】特開2000-297302(JP,A)
【文献】特開平06-144925(JP,A)
【文献】KIM Byung-Namら,Low-temparature spark plasma sintering of alumina by using SiC molding set,Journal of the Ceramic Society of Japan,2016年,Vol.124 No.10,P.1141-1145,http://dx.doi.org/10.2109/jcersj2.16082
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型に焼結原料を装入し、該成形型により該焼結原料を加圧しながら該焼結原料に対して放電プラズマ焼結を施す焼結工程を含む酸化物焼結体の製造方法であって、
前記成形型は、窒素元素を含む炭化ケイ素により構成され、
前記窒素元素の量は、2×10 -19 原子/cm 以上であり、
前記焼結工程の昇温過程において、前記焼結原料の加熱を開始する初期段階では前記焼結原料に加える圧力(P1)を100MPa未満とし、その後、前記焼結原料の体積が減少に転じる温度以上且つ前記焼結原料の体積が減少に転じる温度+100℃以下の温度で前記焼結原料に加える圧力(P2)を100MPa以上500MPa以下にする
酸化物焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記圧力(P2)が300MPa以上500MPa以下である
請求項1に記載の酸化物焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記圧力(P1)が20MPa未満である
請求項1又は2に記載の酸化物焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年セラミックスの焼結技術が加速度的に高まり単結晶と同等の特性を有するセラミックスも現れ実用化されている。セラミックスの焼結方法として、例えば熱間等方圧加圧焼結法(HIP:Hot Isostatic Pressing)や放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)等が知られている。
【0003】
SPSは固体状又は粉末状の焼結原料を成形型に充填し、一軸性加圧と直流パルス電圧・電流を、成形型に印加して焼結する方法である。SPSはHIPと比較して1/10の時間で焼結が完了することから、高い生産性を期待することができる。例えば、非特許文献1にはこのSPSを用いて、CeOをドープしたYAGの透明セラミックスに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「SPSによる透明セラミックス蛍光体の作製」第22回通電焼結研究会(2017)pp 105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、HIPは、高い圧力下で等方的に焼結原料に対して負荷をかけて焼結することから焼結原料内の粒径のばらつきが大きくても緻密性の高い焼結体を得ることができる。
【0006】
一方、SPSは焼結原料に対して一軸性加圧を焼結原料に印加して焼結する方法であるため、焼結原料内の粒径のばらつきが大きいと焼結原料内の粒子同士の焼結に時間差が生じる。すると、気孔を残したまま焼結が完了してしまい、得られる焼結体の緻密性が低下する。例えば、焼結体が透明焼結体であるような場合、焼結体の緻密性が低下すると焼結体の透明性が低下する。この現象は焼結原料へ印加する圧力が高くなる程顕著になる。
【0007】
本発明は、焼結原料を放電プラズマ焼結法により焼結した場合であっても緻密性の高い焼結体を得ることのできる酸化物焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、導電性を有する炭化ケイ素により構成された成形型を用いて焼結原料に対して放電プラズマ焼結法により焼結を施すに際し、焼結原料に加える圧力を所定の圧力に制御することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1は、成形型に焼結原料を装入し、該成形型により該焼結原料を加圧しながら該焼結原料に対して放電プラズマ焼結を施す焼結工程を含む酸化物焼結体の製造方法であって、前記成形型は、ドーパントを含む炭化ケイ素により構成され、前記焼結工程の昇温過程において、初期段階では前記焼結原料に加える圧力(P1)を100MPa未満とし、その後、前記焼結原料の体積が減少に転じる温度以上且つ前記焼結原料の体積が減少に転じる温度+100℃以下の温度で前記焼結原料に加える圧力(P2)を100MPa以上にする酸化物焼結体の製造方法である。
【0010】
(2)本発明の第2は、第1の発明において、前記ドーパントは窒素元素である酸化物焼結体の製造方法である。
【0011】
(3)本発明の第3は、第1又は第2の発明において、前記圧力(P2)が300MPa以上である酸化物焼結体の製造方法である。
【0012】
(4)本発明の第4は、第1から第3のいずれかの発明において、前記圧力(P1)が20MPa未満である酸化物焼結体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、焼結原料を放電プラズマ焼結法により焼結した場合であっても緻密性の高い焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】放電プラズマ焼結装置を構成する成形型の構成を示す断面図である。
図2】実施例及び比較例における製造方法で得られた焼結体での光透過率の波長分散を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
≪1.概要≫
本発明の酸化物焼結体の製造方法は、成形型に焼結原料を装入し、成形型により焼結原料を加圧しながら放電プラズマ焼結を施す焼結工程を含む酸化物焼結体の製造方法である。そして、この製造方法において、放電プラズマ焼結装置を構成する成形型はドーパントを含む炭化ケイ素により構成され、焼結工程の昇温過程において、初期段階では焼結原料に加える圧力(P1)を100MPa未満とし、その後、焼結原料の体積が減少に転じる温度以上且つ焼結原料の体積が減少に転じる温度+100℃以下の温度で焼結原料に加える圧力(P2)を100MPa以上にすることを特徴としている。
【0017】
このように、ドーパントが添加された炭化ケイ素により構成された成形型を用いて焼結原料を放電プラズマ焼結法により焼結し、焼結原料に加える圧力を所定の圧力に制御することにより、緻密性の高い酸化物焼結体を得ることができる。
【0018】
このように本発明の製造方法により得られる酸化物焼結体は緻密性が高いことから、例えば、酸化物焼結体が透明焼結体であるような場合には、得られる透明焼結体の透明性を高くすることができる。このような透明焼結体は、例えば、直線偏光の偏光面を回転させるファラデー素子として特に好適に使用することができる。
【0019】
≪2.放電プラズマ焼結装置≫
以下では、焼結体の製造方法の説明に先立ち、焼結原料に放電プラズマ焼結を施すのに使用される放電プラズマ焼結装置の一例について説明する。
【0020】
SPSは通常焼結原料に50MPa未満の高圧を一軸加圧しながら、炭素により構成された焼結型に直流のパルス電流を流し、焼結原料を直接加熱する。このように、熱的・機械的・電磁エネルギ-が複合的に働かせて焼結を活性化させながら焼結原料に対して焼結を施すことにより、他の焼結方法と比較して20~100倍の速さで焼結を施して酸化物焼結体を得ることが可能となる。さらに、SPSは、焼結助剤を使用することなく焼結原料に対して焼結を施すことが可能であるので、純度の高い酸化物焼結体が得られやすい。このため、SPSは、例えば、ファラデー素子に用いられるような透明焼結体の製造に極めて好適である。
【0021】
図1は、放電プラズマ焼結装置を構成する成形型10の構成の一例を示す断面図である。焼結原料Mを加圧しながら、成形型10に通電し焼結原料Mを直接加熱し焼結を施す。
【0022】
図1に示すように、成形型10は、シリンダー11と、2つのパンチ12とを備える。そして、成形型10では、焼結原料Mが、シリンダー11と、2つのパンチ12とに囲まれる空間において加圧された状態で焼結される。通電はパンチ12a(12b)→シリンダー11→パンチ12b(12a)と電流を流して行われる。
【0023】
シリンダー11は、例えば、円筒形状のものであって、その中空部に挿入される円柱状の2つのパンチ12a、12bの上下動をガイドする。シリンダー11においては、焼結原料Mが装入され、2つのパンチ12a、12bによる圧力の印加によってその焼結原料Mを加圧する。
【0024】
パンチ12は、例えば円柱形状を有するものであり、シリンダー11の中空部に挿入されることで、シリンダー11とともに、そのシリンダー11の内部に装入した焼結原料を加圧圧縮する。具体的に、内部に焼結原料Mが装入されたシリンダー11の中空部の一端から一つのパンチ12を挿入し、他端からもう一つのパンチ12を挿入して、これらのパンチにより、シリンダー11の内部の焼結原料Mに対して直接加圧する。
【0025】
ここで、成形型10においては、例えば、シリンダー11の中空部に、一方の端部から一つのパンチ12bが挿入され、次いで、シリンダー11の他方の端部から、その内部に焼結原料Mが装入される。その後、焼結原料Mが装入された側の端部から、もう一つのパンチ12aを挿入することで、焼結原料Mに対してパンチにより圧力を印加する状態がセットされる。このようにして焼結原料Mが装入された成形型10は、放電プラズマ焼結装置に設置され、焼結原料Mに対する圧力の印加が行われる。
【0026】
なお、この放電プラズマ焼結装置は、成形型10のパンチ12と接触して配置されるスペーサーや成形型10のパンチ12を通じて焼結原料Mに対して所定の圧力を印加するとともに、パルス電圧・電流を成形型10に印加する加圧ラムを備えていてもよい。
【0027】
さて、この成形型10は、炭化ケイ素により構成されていることを特徴としている。従来の放電プラズマ焼結装置を構成する成形型は、一般的にグラファイト等の炭素材料により構成されており、高温加熱条件で100MPa以上の強い圧力を加えるとクラック等が発生するため使用が困難となることがある。
【0028】
そこで、炭化ケイ素により構成された成形型10を使用することで、高温加熱条件でも100MPa以上の圧力を加えても成形型10のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
さらに、この炭化ケイ素はドーパントを含んでいることを特徴としている。炭化ケイ素は半導電性であり高温時の電気伝導性に優れる材質ではあるが、低温時での電気伝導性は低い。このため、低温時の通電が出来ず、したがって昇温もできない。
【0030】
そこで、炭化ケイ素に導電性を付与するドーパントが添加された導電性炭化ケイ素により構成された成形型を放電プラズマ焼結に用いることで、焼結工程の昇温過程での初期段階から成形型10に対して電圧を印加できるようになるので、焼結原料Mに対して所望の昇温速度で加熱することが可能となる。
【0031】
炭化ケイ素に含まれるドーパントとしては、ホウ素やアルミニウム等のp型ドーパントであってもよく、窒素やリン等のn型ドーパントであってもよい。例えば、ドーパントとして窒素元素を用いる場合には、ドーパントの量は2×10-19原子/cm以上であることが好ましい。
【0032】
このようなドーパントが添加された導電性炭化ケイ素により構成された成形型であれば、昇温過程の初期段階であっても焼結原料Mに対して所望の昇温速度で加熱することが可能となる。この導電性炭化ケイ素により構成された成形型の電気抵抗率は、2×10-3Ω・cm未満であることが好ましく、1×10-3Ω・cm未満であることがより好ましい。
【0033】
≪3.焼結体の製造方法≫
次に、上述した放電プラズマ焼結装置を使用して焼結体を製造する方法を本発明の具体的な実施形態として、より具体的に説明する。
【0034】
本実施の形態に係る放電プラズマ焼結方法は、シリンダー11と、パンチ12とを備える成形型10に焼結原料Mを装入し、焼結原料Mに対して放電プラズマ焼結を施す焼結工程を含む方法である。
【0035】
まず、焼結原料を用意する。焼結原料としては特に限定されるものではなく、従来公知のイットリウム・アルミニウムガーネット(YAl12)、テルビウム・ガリウムガ-ネット(TbGa12)、酸化セリウム(CeO)などの酸化物の粉末を含むものを使用することができる。なお、これらの粉末を2種類以上含むものであってもよい。
【0036】
焼結原料に含まれる粉末の粒径は、特に限定されるものではないが、粒径の下限は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。粒径の上限は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0037】
次に、成形型10に焼結原料を装入する。具体的には、成形型10のシリンダー11内に焼結原料Mを充填して上下からパンチ12で押さえ込む。そして、加圧ラムにより圧力をパンチ12に伝えることで焼結原料Mに対して所定の圧力で加圧した状態で固定する。この圧力は、成形型10と焼結原料Mとの密着性を確保する程度であればよく、後述する昇温過程における初期段階での圧力(100MPa未満)と同一であればよい。なお、加圧ラムとパンチ12との間にはスペーサーを設けてもよい。
【0038】
次に、焼結原料Mを加熱しながら所定の圧力で加圧しつつ電圧を印加する。具体的には、焼結原料を所定の昇温速度で加熱しながら、加圧ラムにより成形型10内の焼結原料Mに対して100MPa未満の圧力で加圧して成形型10を通じて焼結原料Mに所定の電圧を印加する。
【0039】
焼結原料Mを加熱するときの昇温速度は特に限定されるものではないが、50℃/分以上100℃/分以下であることが好ましい。
【0040】
上述したように、成形型10は導電性を付与するドーパントが添加された導電性炭化ケイ素により構成されているので、昇温過程における初期段階であっても焼結原料Mに対して所望の昇温速度で加熱することが可能となる。
【0041】
なお、焼結原料を所定の昇温速度で加熱する際には、大気圧雰囲気下であっても真空雰囲気下であってもよい。
【0042】
さて、昇温過程における初期段階では、焼結原料に加える圧力(P1)を100MPa未満とする。焼結原料Mに対する加圧は無加圧であることが望ましいが、シリンダー11とパンチ12の密着性を向上させ通電を可能とするための最低の加圧は必要であり、100MPa未満、より好ましくは20MPa未満である。昇温過程における初期段階での焼結原料に加える圧力(P1)が100MPa以上であると、焼結原料内の粉末の移動が阻害されて、焼結原料内の気孔が逃げづらくなり、得られる焼結体の緻密性が低下する。そこで、このように昇温過程における初期段階で焼結原料に加える圧力(P1)を100MPa未満とすることで、焼結原料内の気孔が適度に逃がすことが可能となり、得られる焼結体の緻密性を向上させることができる。
【0043】
そして、昇温過程における初期段階では、焼結原料は昇温するにつれて熱膨張によって膨張するが、焼結原料が所定の温度に到達すると焼結原料の焼結が開始することで、増加していた焼結原料の体積が減少に転じる(収縮変位)。
【0044】
本実施の形態では、この体積が減少に転じた温度以上且つこの温度+100℃以下の温度で、焼結原料に加える圧力(P2)を100MPa以上にすることを特徴としている。このように焼結原料の焼結が開始する温度以上の温度で焼結原料に加える圧力(P2)を100MPa以上にすることにより、焼結原料内での粉末の粒径のばらつきが大きい場合であっても緻密度の高い焼結体が得られる。
【0045】
しかも、上述したように、成形型10は炭化ケイ素により構成されているので、100MPa以上に加圧するような高圧の条件であってもクラックが発生する危険性が少ない。
【0046】
圧力(P2)の下限は、200MPa以上であることが好ましく、300MPa以上であることが好ましい。なお、圧力(P2)の上限は、成形型や焼結体にクラックが生じない程度の圧力であればよく、例えば500MPa以下であることが好ましい。
【0047】
なお、焼結原料に加える圧力(P2)を100MPa以上にするのは、焼結原料の体積が減少に転じる温度以上且つその温度+100℃以下の温度であればよいが、焼結原料の体積が減少に転じる温度以上且つその温度+50℃以下の温度であることが好ましく、焼結原料の体積が減少に転じる温度以上且つその温度+20℃以下の温度であることがより好ましい。
【0048】
そして、焼結原料の焼結が終了すると減少していた焼結原料の体積が再び増加に転じる(膨張変位)。焼結原料の体積が再び増加に転じた温度以上になったらこの焼結工程を終了させる。例えば、焼結原料の体積が再び増加に転じた温度以上の所定の温度で所定時間保持した後に放電プラズマ焼結を終了させることで焼結体が得られる。
【実施例
【0049】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
内径15mmのシリンダーと外径15mmのパンチを備え、導電性炭化ケイ素(2×10-19原子/cm以上の量の窒素元素(ドーパント)を含む炭化ケイ素)により構成される成形型を用意した。
【0051】
そして、焼結原料として同時沈殿法によって製造されたYAl12(YAG)粉を用意した。SEM観察の結果、この焼結原料の粒径は0.1μm以上5μm以下であったことが確認された。
【0052】
成形型のシリンダー内に焼結原料Mを充填し上下からパンチで押さえ込むことで焼結原料を15MPaの圧力で加圧した状態で成形型に焼結原料を装入した。そして、焼結原料が装入された成形型を放電プラズマ焼結装置の焼結槽内に載置して、真空雰囲気下(2×10-2Pa)で、昇温速度:100℃/分にして、15MPaの圧力で加圧しながら焼結原料に対して放電プラズマ焼結を施した。
【0053】
そして、焼結原料が1100℃まで昇温した時点で焼結原料の体積が減少に転じたので、焼結原料に加える圧力を100MPaに変更した。なお、焼結原料の体積は、焼結原料Mを上下から抑え込んだパンチの変位を示す変位センサーにより確認した。
【0054】
その後、同様の昇温速度で焼結原料を昇温させたところ焼結原料が1350℃まで昇温した時点で焼結原料の体積が増加に転じた。焼結原料が1370℃まで到達した時点でその温度で20分間保持し、実施例1の焼結体を製造した。
【0055】
得られた焼結体は、透明体でありサイズはφ15mm×1.2mmtであった。光学面を研削,ポリッシュして1.0mmtとした後、分光光度計で光透過率の波長分散を測定した。結果を図2に示す。
【0056】
(実施例2)
上記実施例1と同様に焼結原料が装入された成形型を放電プラズマ焼結装置の焼結槽内に載置して、焼結原料に対して放電プラズマ焼結を施した。
【0057】
そして、焼結原料が1100℃まで昇温した時点で焼結原料の体積が減少に転じたので、焼結原料に加える圧力を300MPaに変更した。
【0058】
その後、同様の昇温速度で焼結原料を昇温させたところ焼結原料が1320℃まで昇温した時点で焼結原料の体積が増加に転じた。焼結原料が1340℃まで到達した時点でその温度で20分間保持し、実施例2の焼結体を製造した。
【0059】
得られた焼結体は、上述した実施例1と同様に分光光度計で光透過率の波長分散を測定した。結果を図2に示す。
【0060】
(比較例)
成形型のシリンダー内に焼結原料Mを充填し上下からパンチで押さえ込むことで焼結原料を100MPaの圧力で加圧した状態で成形型に焼結原料を装入して焼結原料に対して放電プラズマ焼結を施した。
【0061】
そして、焼結原料が950℃まで昇温した時点で焼結原料の体積が減少に転じたものの、焼結原料に加える圧力を変更しなかった。
【0062】
その後、同様の昇温速度で焼結原料を昇温させたところ焼結原料が1360℃まで昇温した時点で焼結原料の体積が増加に転じた。焼結原料が1380℃まで到達した時点でその温度で20分間保持し、比較例の焼結体を製造した。
【0063】
得られた焼結体は、上述した実施例1と同様に分光光度計で光透過率の波長分散を測定した。結果を図2に示す。
【0064】
[試験結果]
図2より、焼結原料の体積が減少に転じる温度以上の温度で焼結原料に加える圧力を100MPa以上に変更した実施例では、広い波長領域で光透過率が高く、透明性に優れた焼結体が製造できていた。特に焼結原料の体積が減少に転じる温度以上の温度で前記焼結原料に加える圧力を300MPaに変更した実施例2では、実施例1と比較してもさらに、透明性に優れた焼結体が製造できたことが分かる。
【0065】
一方、焼結原料に加える圧力を変更しなかった比較例では、透明性に優れた焼結体が製造できておらず、本発明の目的とする焼結体が得られていない。
【符号の説明】
【0066】
10 成形型
11 シリンダー
12 パンチ
M 焼結原料
図1
図2