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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電着金属剥取設備
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/08 20060101AFI20240814BHJP
   C25C 7/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C25C7/08
C25C7/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021003663
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108582
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】古賀 賢太郎
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031496(JP,A)
【文献】特開2016-089185(JP,A)
【文献】特開2015-206101(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103393(WO,A1)
【文献】特開平05-324028(JP,A)
【文献】特開平11-288301(JP,A)
【文献】特開平06-309003(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063557(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/08
C25C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解製錬により電析させた電着金属をパーマネントカソードの両面から剥ぎ取る電着金属剥取設備であって、
前記剥取設備を構成する機器群の作動を制御する制御手段と、該剥取設備の運転モードとして選択された自動運転モード、手動運転モード、及び強制手動モードのうちのいずれか1つの信号を前記制御手段に入力するモード切替手段と、該剥取設備に生じた非常事態を検知して前記制御手段に入力する非常検知手段とを有し、前記自動運転モード時に前記非常検知手段によって前記機器群が作動停止したとき、前記モード切替手段が前記強制手動モードに切り替えられることで、前記自動運転モード及び前記手動運転モードにおいて掛けられている特定の機器のインターロックがバイパスされることを特徴とする電着金属剥取設備。
【請求項2】
前記モード切替手段が前記強制手動モードに切り替えられたとき、前記特定の機器が遠隔操作盤から手動で作動させることが可能となることを特徴とする、請求項1に記載の電着金属剥取設備。
【請求項3】
前記モード切替手段が前記強制手動モードに切り替えられたとき、安全性の確保及び機器の重大破損防止のための重要度の高いインターロックはバイパスされないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電着金属剥取設備。
【請求項4】
前記モード切替手段は、前記自動運転モード又は前記手動運転モードを選択する第1セレクタスイッチと、前記強制手動モードのオン又はオフを選択する鍵操作型の第2セレクタスイッチとからなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の電着金属剥取設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着金属の剥取設備に関し、特に銅等の非鉄金属の電解精製や電解採取において、パーマネントカソードに電着させた非鉄金属を該パーマネントカソードから剥離する電着金属剥取設備に関する。
【背景技術】
【0002】
銅などの非鉄金属の電解精製や電解採取においては、乾式製錬によって製造した粗金属からなる複数枚のアノードと別途用意した複数枚のカソードとを電解槽内の電解液に1枚ずつ交互に並べて浸漬させ、これらアノード群とカソード群との間に電解液を介して電流を流すことにより、該アノード群から目的金属を溶出させてカソード群に電着(電気析出又は単に電析とも称する)させる電解製錬が行なわれている。
【0003】
上記の電解製錬では、目的金属を用いて予め作製したカソードに同種の目的金属を電着させてそのまま出荷する従来の種板方式に代えて、近年は電解液に対して不溶性の金属板であるステンレス(SUS)板やチタン板などをカソードに使用し、電着後は目的金属をカソードから剥ぎ取って出荷すると共に、該剥ぎ取られた後のカソードは電解製錬において再度カソードとして繰り返し利用するパーマネントカソード方式(PC方式とも称する)が広く採用されている。これにより、種板の製造工程が不要になるため、種板方式と比べて生産コストを抑えることが可能になる。また、パーマネントカソード方式では、丈夫で且つ表面の平面性(平滑性)に極めて優れたSUS板をカソードに使用できるので、例えば銅の電解工程では高品質の電気銅板を作製することができる。
【0004】
上記のパーマネントカソード方式による銅の電解工程では、SUS板の両面に銅板(電気銅板)の形態で銅が電着されるので、電解工程後はこれら2枚の電気銅板をパーマネントカソードから剥ぎ取る工程が必要となる。この場合、2枚の電気銅板は下端部同士が互いに接続しているので、これら2枚の電気銅板をパーマネントカソードから剥ぎ取る方式には、下端部の接続箇所で分断して剥ぎ取ることで、略正方形の2枚の電気銅板として回収するISA方式と、分断せずに2枚の電気銅板が互いに接続したままの状態で剥ぎ取ることで、長方形の1枚の電気銅板をその長手方向の中央部で折りたたんだ形態で回収するKIDD方式とがある。
【0005】
上記のように、パーマネントカソード方式では、カソードから電気銅板を剥ぎ取る工程が必要になるため、特許文献1に開示されているように、電解設備から搬送される銅等の目的金属が電着した複数のカソード板(以下、電着カソード板とも称する)に対して、洗浄装置、剥取装置、積載装置、梱包装置、及びこれら装置間の搬送装置等から構成される剥取設備を用いて順次自動的に剥ぎ取りを行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-89185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、PC方式で作製された電気銅板の剥ぎ取りを順次行う剥取設備では、予め定められた順序に沿って機器群を遂次作動させる場合に適した制御方式であるプログラマブルロジックコントローラ(PLC)によるシーケンス制御が一般的に採用されている。これにより、自動運転モードに設定して起動ボタンを押すことで、剥取設備を構成する機器群を、それらの作動部に設けられているリミットスイッチや近接センサー等の検出手段からの出力信号に応じて自動的に作動させることが可能になる。
【0008】
ところで、上記の剥取設備においては、各機器の破損防止や安全性の担保のため、自動運転モードによる稼働時に非常停止ボタンが押されたときや、上記検出手段からの信号が正常に入力されない等の非常事態が発生したときは、各機器の作動が停止するようになっている。また、定期修理時等においては、計画的に機器群の作動を停止することが行なわれる。機器群の作動停止後は、必要に応じて自動運転モードから手動運転モードに切り替えられ、オペレータによる操作盤の押しボタン等を用いた操作により特定の機器が作動される。
【0009】
しかしながら、非常停止ボタンが押されたときやトラブル等の発生により機器の作動が停止したときは、場合によっては手動運転モードに切り替えても操作盤に設けた機器操作用の押しボタンでは当該機器を操作することができない場合があった。例えば、機器の動作途中で非常停止ボタンが押された場合や安全柵のインターロックが作動した場合、あるいはセンサーに誤検知が生じたとき等の原因で機器の動作が突然停止した場合は、通常は自動運転モードのままで起動ボタンを押しても再起動させることはできないことが多いが、手動運転モードに切り替えても機器を手動で操作できないことがあった。その理由は、例えばエアーシリンダにおいては前進限の条件が満たされていなければ後退不可となるようにPLCがプログラミングされている場合があり、この場合は当該エアーシリンダが後退途中で停止した場合は、手動運転モードに切り替えても操作盤からの操作で後退させることはできない。
【0010】
上記のように、自動運転モードや手動運転モードにおいて、操作盤から操作することができない場合は、例えば上記のエアーシリンダの場合は、その電磁弁(ソレノイド弁)を現場で直接操作する必要があった。あるいは、上記PLCのプログラムを適宜変更することができるエンジニアリングソフトを用いて作動の障害となる条件をバイパスさせることで対処することもできるが、この対処法は該当する障害箇所を見つけ出したうえでプログラムの変更等の作業を要するため、専門的な知識が必要であり、手間と時間もかかるため、剥取設備を担当するオペレータが当該作業を行うことは現実的ではなかった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電着金属剥取設備において機械的トラブル等の種々の要因で機器が作動停止しても、操作盤からの操作により簡易に作動させることが可能な電着金属剥取設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る電着金属剥取設備は、電解製錬により電析させた電着金属をパーマネントカソードの両面から剥ぎ取る電着金属剥取設備であって、前記剥取設備を構成する機器群の作動を制御する制御手段と、該剥取設備の運転モードとして選択された自動運転モード、手動運転モード、及び強制手動モードのうちのいずれか1つの信号を前記制御手段に入力するモード切替手段と、該剥取設備に生じた非常事態を検知して前記制御手段に入力する非常検知手段とを有し、前記自動運転モード時に前記非常検知手段によって前記機器群が作動停止したとき、前記モード切替手段が前記強制手動モードに切り替えられることで、前記自動運転モード及び前記手動運転モードにおいて掛けられている特定の機器のインターロックがバイパスされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械的トラブル等の種々の要因で機器が作動停止しても、操作盤からの操作により簡易に作動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の電着金属剥取設備が対象とする電着金属が両面に形成されたパーマネントカソードを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の電着金属剥取設備の模式的な平面図である。
図3図2の電着金属剥取設備が有する制御手段の概略構成図である。
図4図2の電着金属剥取設備が有する剥取手段の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電着金属剥取設備の実施形態について、図面を参照しながら説明する。この本発明の実施形態の電着金属剥取設備は、パーマネントカソードの両面に電解製錬により電着(電析)した矩形板状の目的金属を、該パーマネントカソードから順次自動的に剥ぎ取る設備であり、後述するように機械的トラブル等により機器の作動が停止しても、操作盤からの操作で簡易に作動させることができ、これにより簡易且つ短時間に再稼働させることが可能になる。
【0015】
なお、本発明の実施形態の電着金属剥取設備が対象とする電着カソード板に用いるパーマネントカソードの材質や、電着する目的金属の種類には特に限定はなく、例えば、ステンレス板(SUS板)からなるパーマネントカソードに銅製錬によって電気銅を電着させたものや、チタン板からなるパーマネントカソードにニッケル製錬によって電気ニッケルを電着させたもの等を挙げることができる。以下の説明では、ステンレス板からなるパーマネントカソードの両面に銅製錬によって電気銅を電着させた電着カソード板を取り扱う場合を例に挙げて説明する。
【0016】
1.パーマネントカソード
まず、本発明の実施形態の剥取設備で取り扱われる電着カソード板の構造について説明する。PC方式による銅電解製錬では、パーマネントカソード群とアノード群とを1枚ずつ交互に並べて銅電解槽内の電解液に浸漬させる。この状態でこれらパーマネントカソード群とアノード群とに電圧を印加することにより、各パーマネントカソードの両面に銅が徐々に析出して付着していく。これにより、図1に示すように、パーマネントカソード11の両面に電気銅板12が電着された形態の電着カソード板10が形成される。
【0017】
上記のパーマネントカソード11は、上記の銅電解槽の対向する両側壁の上端部を架け渡すようにして載置される陰極ビーム11aと、該陰極ビーム11aの下側に溶接等により接合されるステンレス製の矩形プレート部11bとから構成される。この矩形プレート部11bの上端部には、パーマネントカソード11を銅電解槽内の電解液に浸漬させたり該電解液から引き上げたりするときにフックを引っ掛けるための1対の開口部が設けられている。
【0018】
また、矩形プレート部11bの左右両縁部には、絶縁材からなる電着防止部材11cが装着されており、この矩形プレート部11bの左右両縁部における銅の電着を防止している。これにより、後述するように電気銅剥取設備の剥取装置において、矩形プレート部11bと電気銅板12との間にチス刃やくさび等の剥取手段を差し込むことで、電気銅板12をパーマネントカソード11から剥ぎ取ることができる。
【0019】
2.電気銅剥取設備
次に、本発明の実施形態に係る剥取設備について、剥ぎ取り方式にISA方式を採用した場合の設備を例に挙げて説明する。なお、本発明の剥取設備は、剥ぎ取り方式にISA方式を採用したものに限定されるものではなく、KIDD方式を採用したものにも好適に適用することができる。
【0020】
図2に示すように、本発明の実施形態の電気銅剥取設備は、前段の銅電解製錬工程で作製した電着カソード板10を受け入れて一時的の保持する搬入部M1と、該搬入部M1に受け入れた電着カソード板10を洗浄する洗浄装置M2と、洗浄済みの電着カソード板10を後述するトラバースコンベアに移載する第1移載装置M3と、電着カソード板10から電気銅板12を剥ぎ取る剥取装置M4と、剥ぎ取った電気銅板12を積み重ねる積載装置M5と、所定の枚数が積み重ねられた電気銅板12を梱包する梱包装置M6と、梱包された電気銅板12を出荷前に一時的に保持する銅板搬出部M7と、剥ぎ取り後のパーマネントカソード11を該トラバースコンベアから移載する第2移載装置M8と、該パーマネントカソード11を上記銅電解製錬工程で再利用する前に一時的に保持するカソード板搬出部M9と、不良品と判断されたパーマネントカソード11を一時的に保持する不良品摘出部M10と、これら装置間に設けられている第1~第8搬送装置C1~C8とから主に構成される。
【0021】
剥取設備を構成するこれら各要素について具体的に説明すると、陰極ビーム11aを引っ掛けることで前段の銅電解製錬工程の電解槽から複数枚まとめて引き上げられた電着カソード板10は、クレーン等により吊り下げられた状態で搬入部M1まで搬送される。搬入部M1に搬入された電着カソード板10は、第1搬送装置C1によって洗浄装置M2まで搬送され、ここで表面に付着している電解液が洗浄水による水洗により除去される。
【0022】
洗浄装置M2で洗浄された電着カソード板10は、次に第2搬送装置C2によって第1移載装置M3まで搬送され、ここで第3搬送装置C3に移載される。上記の第1搬送装置C1及び第2搬送装置C2では、電着カソード板10は、例えば陰極ビーム11aを支持しながら搬送するチェーンコンベアにより吊り下げた状態でそのカソード面と垂直な方向(カソード面の法線方向)に搬送されるのに対して、第3搬送装置C3では、電着カソード板10は、コンベアによりそのカソード面と平行な方向に搬送される。
【0023】
この第3搬送装置C3の搬送方向の中間部に剥取装置M4が設けられている。第3搬送装置C3によってこの剥取装置M4に1枚ずつ搬送された電着カソード板10は、上下方向に往復動するチス刃などの剥取手段が差し込まれることで、各電着カソード板10の両面側にそれぞれ形成されている2枚の電気銅板12がパーマネントカソード11の矩形プレート部11bから剥離される。このようにして剥取装置M4で剥ぎ取られた2枚の電気銅板12は、それらの厚み方向が上下方向を向くように横向けに重ねられた状態で第4搬送装置C4によって積載装置M5に搬送される。
【0024】
積載装置M5では、2枚重ねで剥取装置M4から順次搬送される電気銅板12が、所定の枚数又は所定の重量になるまで積層された後、必要に応じてそれらの厚み方向にプレスしてより平坦にされる。その後、これら複数枚の電気銅板12は、積層された状態のまま第5搬送装置C5によって梱包装置M6に搬送され、ここでバンド等の包装手段によって梱包される。梱包装置M6で梱包された電気銅板12群は、第6搬送装置によって銅板搬出部M7に搬送され、ここでフォークリフト等により出荷されるまで一時的に保持される。
【0025】
上記の剥取装置M4によって両面側からそれぞれ2枚の電気銅板12が剥ぎ取られた後のパーマネントカソード11は、第3搬送装置C3によって第2移載装置M8まで搬送され、ここで第7搬送装置C7に移載される。該パーマネントカソード11は第7搬送装置C7によってカソード板搬出部M9に搬送され、ここで所定の枚数ごとにまとめてクレーン等で吊り下げられて電解槽まで搬送される。一方、剥取装置M4における剥取りの失敗等により剥取装置M4において不良品と判断された電着カソード板10又はパーマネントカソード11は、第8搬送装置C8によって不良品摘出部M10に搬送される。なお、第7搬送装置C7及び第8搬送装置C8では、パーマネントカソード11はそのカソード面に垂直な方向に搬送される。
【0026】
なお、上記の剥取装置M4において不良品であるか否かを判断する方法には特に限定はなく、例えば、パーマネントカソード11の厚みを変位センサーを用いて測定し、その測定結果が所定の閾値を超えているか否かで判断することができる。このようにして不良品と判断された電着カソード板10又はパーマネントカソード11は、第2移載装置M8においてカソード板搬出部M9に向かう方向とは反対方向に振り分けられて、第8搬送装置C8に移載される。
【0027】
次に、上記の剥取設備を構成する一連の機器の作動を制御する制御手段について説明する。この制御手段には、リミットスイッチや近接センサー等の検出手段からの入力信号に応じて、予めプログラミングされたシーケンスに沿ってソレノイド弁やモーター等の操作端の作動を制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)が好適に採用される。例えば図3の概略構成図に示すように、CPUやメモリ等から構成されるPLC1には、上記剥取設備の各機器に設けられているリミットスイッチや光電センサー等の検出手段2からの信号と、第1セレクタスイッチ3及び第2セレクタスイッチ4からの信号とが入力され、これら入力信号に応じて、PLC1に予めプログラミングされているシーケンス制御の各工程が遂次進行していき、対応する各機器を作動させる例えばエアーシリンダの駆動用エアーラインに設けたソレノイド弁や回転駆動部のモーター等の操作端5に信号が出力される。
【0028】
図3に示すように、通常運転においては、自動運転モード又は手動運転モードの切り替えを行う第1セレクタスイッチ3は自動運転モード側が選択され、強制手動モードのオン(ON)又はオフ(OFF)の切り替えを行う第2セレクタスイッチ4はOFF側が選択される。この状態で遠隔操作盤6に設けられている起動ボタンを押すことで、上記の複数の機器で構成される剥取設備の稼働がスタートする。これにより、搬入部M1に搬入された電着カソード板10に対して、第1搬送装置C1により洗浄装置M2まで搬送する工程、洗浄装置M2において例えば洗浄水を吹き付けることで水洗する工程、第2搬送装置C2により洗浄装置M2から第1移載装置M3まで搬送する工程、第1移載装置M3により第2搬送装置C2から第3搬送装置C3に移載する工程、第3搬送装置C3によりトラバース搬送する工程、及び該トラバース搬送の経路途中に設けられている剥取装置M4により電気銅板12を剥ぎ取る工程がこの順で自動的に行なわれる。
【0029】
そして、上記の剥取装置M4で剥ぎ取られた電気銅板12に対して、第4搬送装置C4により積載装置M5まで搬送する工程、積載装置M5により枚数及び/又は重量を計測する工程並びに必要に応じて行なわれる厚み方向にプレスする工程、第5搬送装置C5により所定の枚数又は重量ごとにまとめて梱包装置M6に搬送する工程、梱包装置M6においてバンド等を用いて該積層された電気銅ごとに梱包する工程、該梱包された電気銅ごとに銅板搬出部M7まで搬送する工程、及びフォークリフト等を用いて出荷するまで銅板搬出部M7において一時的に保持する工程がこの順に行なわれる。
【0030】
一方、上記の剥取装置M4で電気銅板12が剥ぎ取られた後のパーマネントカソード11に対して、第3搬送装置C3により第2移載装置M8までトラバース搬送する工程、第2移載装置M8により第3搬送装置C3から第7搬送装置C7に移載する工程、第7搬送装置C7によりカソード板搬出部M9まで搬送する工程、及び電解槽で再利用するまでカソード板搬出部M9において一時的に保持する工程がこの順に行なわれる。
【0031】
更に、剥取装置M4において不良品と判断された電着カソード板10又はパーマネントカソード11に対して、第3搬送装置C3により第2移載装置M8までトラバース搬送する工程、第2移載装置M8により第3搬送装置C3から第8搬送装置C8に移載する工程、第8搬送装置C8により不良品摘出部M10まで搬送する工程、及び補修等を行うために回収されるまで不良品摘出部M10で一時的に保持する工程がこの順に行なわれる。
【0032】
上記の自動運転モードにおける剥取設備の稼働の際、PLC1にプログラミングされているシーケンス制御のうちのいずれかの工程において、例えば機械的トラブルにより検出手段2からの信号が所定の時間内に入力されないような非常事態が発生すると、剥取設備の稼動が停止する。この場合は、図3に示す第1セレクタスイッチ3を自動運転モードから手動運転モードに切り替えることで、各機器を作動させるエアーシリンダのソレノイド弁やモーター等の操作端5を遠隔操作盤から操作することが可能になる。これにより、上記の剥取設備の稼働停止の原因となった機器に対して必要に応じて調整や修理・交換等を行うことにより問題を解消した後、遠隔操作盤6から押しボタン等の操作により機器を初期状態の位置(例えばエアーシリンダのプランジャを退避位置に戻す)に作動させることで(この操作を原点取り操作とも称する)、第1セレクタスイッチ3を自動運転モードに切り替えることで自動運転を再スタートすることが可能になる。
【0033】
しかしながら、上記の剥取設備においては、各機器の破損防止や安全等を考慮して設けられているインターロックにより、上記のように手動運転モードに切り替えた場合であっても遠隔操作盤6から機器を操作することができないことがある。例えば図4に示すように、剥取装置M4の剥取手段Bを作動させるエアーシリンダSにおいては、プランジャPの前進限及び後退限にそれぞれリミットスイッチLS1及びLS2が設けられていると共に、該プランジャPが前進限位置に到達してリミットスイッチLS1がONになっていなければ後退不可となるようにインターロックが掛けられている場合があり、このプランジャPがその後退作動の途中で何らかの要因で停止したときは、エアーシリンダSの駆動用エアーラインに設けたソレノイド弁Vを直接作動させるかPLCのプログラムを変更する以外は剥取手段Bを作動させることができなかった。
【0034】
また、第1移載装置M3に使用される電着カソード板10の昇降機の場合は、該昇降機を作動させるエアーシリンダのプランジャの前進限及び後退限にそれぞれ設けられているリミットスイッチのいずれかがONになっていなければ作動しないようにインターロックが掛けられている。そのため、例えば該昇降機の上昇途中に電着カソード板10が落下して該昇降機の正常な作動が妨げられたり、上記のリミットスイッチに不良が生じたりして昇降機の作動が停止した場合は、上記と同様にエアーシリンダのソレノイド弁を直接作動させるかPLCのプログラムを変更する以外は昇降機を作動させることができなかった。上記のように昇降機のソレノイド弁を直接作動させる場合は、落下して不安定な状態で存在している電着カソード板10の付近で作業を行う必要があるため、事故が生じないように慎重に作業を行う必要があった。
【0035】
そこで、本発明の実施形態の剥取装置は、図3に示すように、機器の作動を強制手動モードに切り替えるための好ましくは鍵操作型の第2セレクタスイッチ4が設けられており、この第2セレクタスイッチがOFF側からON側に切り替えられた信号をPLC1が入力したときは、上記の剥取手段BのエアーシリンダSや昇降機のエアーシリンダ等のような特定の機器の操作端において掛けられているインターロックがバイパスされるようにPLC1の回路が組まれている。
【0036】
これにより、インターロックが掛けられているため、手動運転モードに切り替えたときに遠隔操作盤6から手動で機器を作動させることができない場合が生じても、単に強制手動モードに切り替えるだけで遠隔操作盤6から当該機器を手動で作動させることが可能になる。但し、例えば安全柵の扉が開けられたり図3に示す非常停止ボタン7が押されたりした場合のインターロックや、機器の重大破損防止用に設けられているインターロック等のように、オペレータの安全性確保や機器の重大破損防止等のために設けられている重要度の高いインターロックについては、上記の強制手動モードにおいてもバイパスされないのが好ましい。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施形態の電着金属剥取設備は、その運転モードに、自動運転モード及び手動運転モードに加えて強制手動モードからの信号が制御手段に入力されているので、何らかのトラブルが発生して操作端の作動を自動運転モード及び手動運転モードのいずれにおいても作動させることができなくなったとき、強制手動モードに切り替えるだけで上記作動の障害になっている条件をバイパスさせることができる。これにより、操作盤からの操作により再稼働させることが可能になるので、自動運転モードや手動運転モードで作動させることができなくなったときに、オペレータが現場で作業する必要がなくなる。また、このセレクタスイッチを鍵操作型にして、鍵の管理を特定の責任者に限定することで、誤操作を防ぐことができる。
【実施例
【0038】
図2に示すような複数の機器で構成される電気銅剥取設備の稼働が剥取装置M4の機械的トラブルで停止したので、自動運転モードから手動運転モードに切り替えたところ、図4に示すように剥取装置M4の剥取手段Bを作動させるエアーシリンダSは、前進限でなければ後退不可のインターロックが掛かっていたため、後退動作中に何らかの要因で剥取装置M4の稼働が停止したと考えられ、再度後退させることができなかった。
【0039】
そこで、強制手動モードに切り替えたところ前進限のインターロックがバイパスされるため、遠隔操作盤6の操作スイッチを用いて剥取装置M4を作動させることができた。これにより、従来はPLCのプログラミングに関する専門的な知識を有する技術者によって、プログラムの変更箇所を調べて変更する必要があったため、再稼働までの作業時間に約3時間程度要していたが、上記のように強制手動モードに切り替えて操作することで、約30分程度で再稼働させることができた。
【符号の説明】
【0040】
1 PLC
2 検出手段
3 第1セレクタスイッチ
4 第2セレクタスイッチ
5 操作端
6 遠隔操作盤
7 非常停止ボタン
10 電着カソード板
11 パーマネントカソード
11a 陰極ビーム
11b 矩形プレート部
11c 電着防止部材
12 電気銅板
C1~C8 第1~第8搬送装置
M1 搬入部
M2 洗浄装置
M3 第1移載装置
M4 剥取装置
M5 積載装置
M6 梱包装置
M7 銅板搬出部
M8 第2移載装置
M9 カソード板搬出部
M10 不良品摘出部
B 剥取手段
LS1、LS2 リミットスイッチ
P プランジャ
S エアーシリンダ
V ソレノイド弁
図1
図2
図3
図4