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特許7537291炭化水素樹脂およびホットメルト粘接着剤組成物
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  • 特許-炭化水素樹脂およびホットメルト粘接着剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】炭化水素樹脂およびホットメルト粘接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/04 20060101AFI20240814BHJP
   C08F 232/04 20060101ALI20240814BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240814BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08F236/04
C08F232/04
C09J11/08
C09J201/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021012233
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115582
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 祥史
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/163394(WO,A1)
【文献】特開昭58-042610(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066791(WO,A1)
【文献】特表2018-528297(JP,A)
【文献】特開2020-033543(JP,A)
【文献】特開2014-198806(JP,A)
【文献】国際公開第2022/163395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族単量体単位、または脂肪族単量体単位および芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂であって、
重量平均分子量(Mw)が500~6500の範囲であり、
軟化点温度が50℃以上であり、
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られる、GPCチャートにおける、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]とから下記式(1)に従って算出される、ピーク高さ指数が0.5以下である炭化水素樹脂。
ピーク高さ指数=(ピークトップのピーク高さ[mV]/ピーク面積[mV×秒])×100 (1)
【請求項2】
1,3-ペンタジエン単量体単位20~70質量%、
炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位1~50質量%、
炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位0~50質量%、
脂環式ジオレフィン単量体単位0~1質量%、および
芳香族モノオレフィン単量体単位0~40質量%を含む請求項1に記載の炭化水素樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭化水素樹脂を含有するホットメルト粘接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持力およびタック性にバランス良く優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂、および、これを用いたホットメルト粘接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モノオレフィン性不飽和炭化水素や鎖状共役ジオレフィンなどの脂肪族単量体や、必要に応じて、これと脂肪族単量体とを共重合することにより得られる炭化水素樹脂が知られており、このような炭化水素樹脂は、たとえば、ホットメルト粘接着剤組成物を形成するための粘着付与樹脂などとして用いられている。
【0003】
このような炭化水素樹脂として、たとえば、特許文献1では、ガラス転移温度(Tg)が-50℃~160℃であり、数平均分子量が3000以下、Z平均分子量が9000以下、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるオリゴマーの含有量が55重量%以下、高分解能熱重量分析(TGA)により測定されるオリゴマーの含有量が38重量%以下である炭化水素樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/187243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、炭化水素樹脂は、たとえば、ホットメルト粘接着剤組成物を形成するための粘着付与樹脂として用いる場合には、保持力およびタック性が高度にバランスされて優れていることが求められているところ、上記特許文献1に開示の技術では、これらの特性が必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、保持力およびタック性にバランス良く優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、このような炭化水素樹脂を用いたホットメルト粘接着剤組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、重量平均分子量(Mw)、および軟化点温度が特定の範囲にあり、かつ、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られる、GPCチャートにおける、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]とから求められるピーク高さ指数を特定範囲に制御された炭化水素樹脂により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、脂肪族単量体単位、または脂肪族単量体単位および芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂であって、
重量平均分子量(Mw)が500~6500の範囲であり、
軟化点温度が50℃以上であり、
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られる、GPCチャートにおける、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]とから下記式(1)に従って算出される、ピーク高さ指数が0.5以下である炭化水素樹脂が提供される。
ピーク高さ指数=(ピークトップのピーク高さ[mV]/ピーク面積[mV×秒])×100 (1)
【0009】
本発明の炭化水素樹脂は、1,3-ペンタジエン単量体単位20~70質量%、
炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位1~50質量%、
炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位0~50質量%、
脂環式ジオレフィン単量体単位0~1質量%、および
芳香族モノオレフィン単量体単位0~40質量%を含むものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記炭化水素樹脂を含有するホットメルト粘接着剤組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持力およびタック性にバランス良く優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂、および、このような炭化水素樹脂を用いたホットメルト粘接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1に係る炭化水素樹脂のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の炭化水素樹脂は、脂肪族単量体単位、または脂肪族単量体単位および芳香族単量体単位を含む炭化水素樹脂であって、
重量平均分子量(Mw)が500~6500の範囲であり、
軟化点温度が50℃以上であり、
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られる、GPCチャートにおける、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]とから下記式(1)に従って算出される、ピーク高さ指数が0.5以下であるものである。
ピーク高さ指数=(ピークトップのピーク高さ[mV]/ピーク面積[mV×秒])×100 (1)
【0014】
本発明の炭化水素樹脂は、少なくとも脂肪族単量体単位を含有するものであればよく、脂肪族単量体単位に加えて、芳香族単量体単位を含むものであってもよい。
【0015】
(脂肪族単量体単位)
まず、本発明の炭化水素樹脂に含まれる脂肪族単量体単位について説明する。
脂肪族単量体単位を形成するための脂肪族単量体としては、芳香環を含まず、不飽和炭化水素を少なくとも含むものであればよく、このような脂肪族単量体としては、たとえば、1,3-ペンタジエン、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体、脂環式ジオレフィン単量体等を挙げることができる。また、本発明においては、これらの脂肪族単量体が含まれる混合物を、炭化水素樹脂を製造する際の重合反応系に添加してもよい。この際、混合物に含まれる脂肪族単量体は、炭化水素樹脂を構成する単量体単位の成分として用いられる。なお、混合物に含まれる脂肪族単量体以外の付加重合性成分も炭化水素樹脂の単量体単位の構成成分として用い、非付加重合性成分は重合時の溶媒として用いるようにすることもできる。このような脂肪族単量体が含まれる混合物としては、たとえば、脂肪族単量体として1,3-ペンタジエン、シクロペンテン、イソブチレンなどを含むC5留分を好適に用いることができる。
【0016】
炭化水素樹脂は、脂肪族単量体単位として、1,3-ペンタジエン単位、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位を含むことが好ましく、これらに加えて、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位および脂環式ジオレフィン単量体単位をさらに含んでもよい。
【0017】
炭化水素樹脂中における、1,3-ペンタジエン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは28~62質量%、さらに好ましくは32~58質量%、特に好ましくは37~53質量%である。1,3-ペンタジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、保持力およびタック性により優れたものとすることができる。なお、1,3-ペンタジエンにおけるシス/トランス異性体比は任意の比でよく、特に限定されない。
【0018】
炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位を形成する炭素数4~6の脂環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を1つと非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4~6の炭化水素化合物である。炭素数4~6の脂環式モノオレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロブテン、メチルシクロペンテンなどが挙げられる。
【0019】
炭化水素樹脂中における、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは10~42質量%、さらに好ましくは14~38質量%、さらにより好ましくは18~34質量%である。炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、保持力およびタック性により優れたものとすることができる。
【0020】
なお、炭素数4~6の脂環式モノオレフィンとしては、これに該当する各化合物の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともシクロペンテンが含まれていることが好ましく、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン中にシクロペンテンの占める割合が50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0021】
炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位を形成する炭素数4~8の非環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有し、環構造を有さない炭素数が4~8の鎖状炭化水素化合物である。炭素数4~8の非環式モノオレフィンの具体例としては、1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン(2-メチルプロペン)などのブテン類;1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンなどのペンテン類;1-ヘキセン、2-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテンなどのヘキセン類;1-ヘプテン、2-ヘプテン、2-メチル-1-ヘキセンなどのヘプテン類;1-オクテン、2-オクテン、2-メチル-1-ヘプテン、ジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテンおよび2,4,4-トリメチル-1-ペンテン)などのオクテン類;などを挙げることができる。
【0022】
炭化水素樹脂中における、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは8~40質量%、さらに好ましくは10~35質量%、特に好ましくは12~33質量%である。炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、保持力およびタック性により優れたものとすることができる。
【0023】
なお、炭素数4~8の非環式モノオレフィンとしては、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくとも2-メチル-2-ブテン、イソブチレン、およびジイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種と、1-ブテンとが含まれることが好ましい。この場合において、後述する、GPCチャートにおける、ピーク高さ指数を、所定の範囲とするという観点より、これらの割合は以下の通りとすることが好ましい。
【0024】
すなわち、炭素数4~8の非環式モノオレフィン中における、2-メチル-2-ブテン、イソブチレン、およびジイソブチレンの合計の合計量が占める割合(すなわち、「2-メチル-2-ブテン、イソブチレン、およびジイソブチレンの合計量」/「炭素数4~8の非環式モノオレフィン全体の量」×100(質量%))を60~85質量%とすることが好ましく、65~83質量%とすることがより好ましく、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が比較的低い場合(たとえば、重量平均分子量(Mw)が2200未満である場合)には、65~75質量%とすることがさらに好ましく、67~72質量%とすることが特に好ましく、また、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が比較的高い場合(たとえば、重量平均分子量(Mw)が2200以上である場合)には、70~83質量%とすることがさらに好ましく、75~83質量%とすることが特に好ましい。
【0025】
また、炭素数4~8の非環式モノオレフィン中における、1-ブテンの占める割合(すなわち、「1-ブテンの量」/「炭素数4~8の非環式モノオレフィン全体の量」×100(質量%))を13~32質量%とすることが好ましく、15~30質量%とすることがより好ましく、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が比較的低い場合(たとえば、重量平均分子量(Mw)が2200未満である場合)には、23~30質量%とすることがさらに好ましく、25~29質量%とすることが特に好ましく、また、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が比較的高い場合(たとえば、重量平均分子量(Mw)が2200以上である場合)には、15~27質量%とすることがさらに好ましく、16~24質量%とすることが特に好ましい。さらに、炭化水素樹脂中における、1-ブテンの量を、1.5~11質量%とすることが好ましく、2~10質量%とすることがより好ましく、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が比較的低い場合(たとえば、重量平均分子量(Mw)が2200未満である場合)には、6~10質量%とすることがさらに好ましく、7~9.5質量%とすることが特に好ましく、また、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が比較的高い場合(たとえば、重量平均分子量(Mw)が2200以上である場合)には、2~9質量%とすることがさらに好ましく、2.5~7.5質量%とすることが特に好ましい。
【0026】
脂環式ジオレフィン単量体単位を形成する脂環式ジオレフィンは、その分子構造中に、2つ以上のエチレン性不飽和結合と非芳香族性の環構造とを有する炭化水素化合物である。脂環式ジオレフィンの具体例としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンの多量体、メチルシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンの多量体などが挙げられる。
【0027】
炭化水素樹脂中における、脂環式ジオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0~1質量%であり、より好ましくは0.05~0.8質量%、さらに好ましくは0.1~0.7質量%、特に好ましくは0.15~0.6質量%である。脂環式ジオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、保持力およびタック性により優れたものとすることができる。
【0028】
また、本発明の製炭化水素樹脂は、1,3-ペンタジエン単量体単位、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位、芳香族モノオレフィン単量体単位、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位、および脂環式ジオレフィン単量体単位以外の、その他の単量体単位を含んでいてもよい。
【0029】
このようなその他の単量体単位を形成するその他の単量体は、1,3-ペンタジエンなどと付加共重合され得る付加重合性を有する化合物であれば、特に限定されない。このようなその他の単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ペンタジエンなどの1,3-ペンタジエン以外の炭素数4~6の不飽和炭化水素;シクロヘプテンなどの炭素数7以上の脂環式モノオレフィン;エチレン、プロピレン、ノネンなどの炭素数4~8以外の非環式モノオレフィン;等が挙げられる。
【0030】
炭化水素樹脂中における、その他の単量体単位の含有量は、通常、0質量%~30質量%の範囲であり、好ましくは0~25質量%、より好ましくは0~20質量%である。
【0031】
炭化水素樹脂中における、脂肪族単量体単位の炭化水素樹脂中の含有量は、特に限定されないが、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0032】
(芳香族単量体単位)
本発明の炭化水素樹脂は、脂肪族単量体単位に加えて、芳香族単量体単位を含むものであってもよい。芳香族単量体単位を形成するための芳香族単量体としては、芳香環を有し、脂肪族単量体と共重合することができるものであればよく、たとえば、芳香族モノオレフィン単量体が挙げられる。また、本発明においては、芳香族モノオレフィン単量体などの芳香族単量体が含まれる混合物を、炭化水素樹脂を製造する際の重合反応系に添加してもよい。この際、混合物に含まれる芳香族単量体は、炭化水素樹脂を構成する単量体単位の成分として用いられる。なお、混合物に含まれる芳香族単量体以外の付加重合性成分も炭化水素樹脂の単量体単位の構成成分として用い、非付加重合性成分は重合時の溶媒として用いるようにすることもできる。このような芳香族単量体が含まれる混合物としては、たとえば、芳香族単量体としてスチレン化合物、インデン化合物などを含むC9留分を好適に用いることができる。
【0033】
芳香族モノオレフィン単量体は、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有する芳香族化合物である。芳香族モノオレフィンの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン化合物;インデン、1-メチルインデンなどのインデン化合物;クマロンなどが挙げられる。
【0034】
炭化水素樹脂中における、芳香族モノオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0~40質量%であり、より好ましくは3~35質量%、さらに好ましくは8~25質量%、特に好ましくは11~19質量%である。芳香族モノオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、保持力により優れたものとすることができる。
【0035】
本発明の炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、500~6500の範囲であり、好ましくは1000~4500の範囲、より好ましくは1300~4200の範囲、さらに好ましくは1500~3700の範囲である。炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを展開溶媒として用い、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0036】
また、本発明においては、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることに加えて、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られる、GPCチャートにおける、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]とから下記式(1)に従って算出される、ピーク高さ指数が0.5以下に制御するものであり、これにより、炭化水素樹脂を保持力およびタック性にバランス良く優れたものとすることができるものである。
ピーク高さ指数=(ピークトップのピーク高さ[mV]/ピーク面積[mV×秒])×100 (1)
【0037】
なお、ピーク高さ指数を求める際における、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定は、重量平均分子量(Mw)の測定と同様に、テトラヒドロフランを展開溶媒として用いて行うことができ、この際には、ポリスチレン換算の値として、重量平均分子量(Mw)も同時に測定することができる。
【0038】
ここで、図1に、実施例1に係る炭化水素樹脂のGPCチャートを示す。図1に示すように、GPC測定においては、示唆屈折計(Refractive Index Detector;RI検出器)により、各溶出時間における、RI(Refractive Index)強度(単位は、mV)を検出することで、溶出量を検出し、標準サンプル(ポリスチレン)を用いて、測定サンプル中に含まれる重合体の分子量の測定を行うものである。そして、本発明においては、展開溶媒のみにおけるRI強度を0mVとした場合(ベースラインとして設定した場合)における、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]とから、上記式(1)に従って求められる、ピーク高さ指数を0.5以下とするものである。ピーク高さ指数は、0.5以下であればよいが、好ましくは0.28~0.5の範囲であり、より好ましくは0.3~0.5の範囲、さらに好ましくは0.32~0.49の範囲である。
【0039】
なお、ピーク高さ指数を測定する際における、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー測定としては、たとえば、測定装置として、東ソー社製「HLC-8320GPC」を使用し、カラムとして、東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒とし(炭化水素樹脂を、テトラヒドロフラン中に、1.4質量%で溶解)、サンプル流入量100μL、40℃、1.0mL/minの流量にて行うことができる。なお、ピークトップのピーク高さ[mV]と、ピーク面積[mV×秒]は、測定装置に備えられた解析プログラム等を用いて算出すればよい。
【0040】
また、ピーク高さ指数を求める際に、GPCチャート中に、炭化水素樹脂に由来するピークが2以上観測される場合には、ピーク高さが最も高いピークの高さを、ピークトップのピーク高さとすればよく、また、ピーク面積については、全てのピークの面積を合計したものとすればよい。
【0041】
なお、本発明において、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)、ピーク高さ指数は、重合に用いる単量体の種類および量、ならびに重合条件により調整することができる。なかでも、ピーク高さ指数は、炭素数4~8の非環式モノオレフィン中における、2-メチル-2-ブテン、イソブチレン、およびジイソブチレンの合計の合計量が占める割合や、1-ブテンの占める割合を調整する方法や、重合触媒の使用量を調整する方法、重合温度を調整する方法、ならびに、重合触媒を予め揮発性溶媒中に混合する際の混合温度および混合時間を調整する方法を適宜組み合わせる方法により制御することができる。
【0042】
本発明の炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは350~1900の範囲であり、より好ましくは700~1700の範囲であり、また、Z平均分子量(Mz)は、特に限定されないが、好ましくは1000~23000の範囲であり、より好ましくは2100~12500の範囲である。
【0043】
また、本発明の炭化水素樹脂の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.3~3.7の範囲であり、より好ましくは1.5~3.5の範囲であり、重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は、特に限定されないが、好ましくは1.3~3.7の範囲であり、より好ましくは1.5~3.7の範囲である。
【0044】
炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)および重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)も、重量平均分子量(Mw)と同様に、テトラヒドロフランを展開溶媒として用い、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー測定による、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0045】
また、本発明の炭化水素樹脂の軟化点温度は、50℃以上であり、好ましくは80~150℃の範囲であり、より好ましくは85~145℃の範囲、さらに90℃~140℃の範囲、特に好ましくは90~105℃の範囲である。軟化点を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物用途に用いた場合に、ホットメルト混錬時に樹脂の溶融が容易となり、かつ、ベースポリマーとの相溶性を高めることができ、これにより、保持力およびタック性を高めることができる。炭化水素樹脂の軟化点は、JIS K6863に従い測定することができる。
【0046】
<炭化水素樹脂の製造方法>
本発明の炭化水素樹脂を製造する方法としては、特に限定されないが、炭化水素樹脂を構成するための単量体混合物を、付加重合する方法が挙げられ、たとえば、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒を用いた付加重合による方法が好適に挙げられる。
【0047】
フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒としては、特に限定されないが、アルミニウム、鉄、タンタル、ジルコニウム、スズ、ベリリウム、ホウ素、アンチモン、ガリウム、ビスマス、モリブデンなどのハロゲン化物を挙げることができるが、これらのなかでも、塩化アルミニウム(AlCl)や臭化アルミニウム(AlBr)などのハロゲン化アルミニウムが好適である。フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒の使用量は、重合に使用する単量体混合物100質量部に対し、好ましくは、0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.4~2.0質量部、特に好ましくは0.5~1.7質量部である。
【0048】
また、重合に際しては、触媒活性をより高めることができるという点より、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒に加えて、ハロゲン化炭化水素を併用してもよい。
【0049】
ハロゲン化炭化水素の具体例としては、t-ブチルクロライド、t-ブチルブロマイド、2-クロロ-2-メチルブタン、トリフェニルメチルクロライドなどの3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素;ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1-クロロエチル)ベンゼン、アリルクロライド、3-クロロ-1-プロピン、3-クロロ-1-ブテン、3-クロロ-1-ブチン、ケイ皮クロライドなどの炭素-炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。これらのなかでも、触媒活性と取り扱い性とのバランスに優れるという観点より、t-ブチルクロライド、ベンジルクロライドが好ましい。ハロゲン化炭化水素は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。ハロゲン化炭化水素の使用量は、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒に対するモル比で、好ましくは0.05~50の範囲、より好ましくは0.1~10の範囲である。
【0050】
また、重合反応をより良好に制御する観点からは、重合反応系に揮発性溶媒を添加して、重合反応を行うことが好ましい。揮発性溶媒の種類は、重合反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好適である。飽和脂肪族炭化水素としては、たとえば、n-ペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、2,2,4-トリメチルペンタンなどの炭素数5~10の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭素数5~10の環状飽和脂肪族炭化水素;などが挙げられる。芳香族炭化水素としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素数6~10の芳香族炭化水素;などが挙げられる。揮発性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。揮発性溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合に使用する単量体混合物100質量部に対して、好ましくは10~1,000質量部、より好ましくは50~500質量部である。
【0051】
重合反応を行うに当たり、単量体混合物や重合触媒のそれぞれの成分を重合反応器に添加する順序は特に限定されず、任意の順で添加すればよいが、重合反応を良好に制御するという観点や、ピーク高さ指数を制御するという観点より、揮発性溶媒中に、重合触媒を予め添加し、混合することで、重合触媒を揮発性溶媒中に分散させた状態とし、ここに、単量体混合物を重合反応器に添加して、重合反応を開する方法が好ましい。
【0052】
揮発性溶媒中に、重合触媒を予め添加し、混合する際には、揮発性溶媒中において重合触媒の一部は均一に分散する一方で、重合触媒の凝集等が部分的に残存するような状態となるような条件とすることが好ましく、混合温度は、好ましくは20~100℃であり、より好ましくは50~85℃であり、混合時間は、好ましくは10秒~4分、より好ましくは30秒~3分である。
【0053】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~90℃、さらに好ましくは50~85℃である。また、重合反応時間は、適宜選択すればよいが、通常10分~12時間、好ましくは30分~6時間である。
【0054】
重合反応は、所望の重合転化率が得られた時点で、メタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの重合停止剤を重合反応系に添加することにより停止することにより、炭化水素樹脂を含む重合体溶液を得ることができる。
【0055】
重合後には、重合停止剤を添加して、重合触媒を不活性化した際に生成する、溶媒に不溶な触媒残渣を、濾過などにより除去してもよい。
【0056】
また、重合後には、水蒸気蒸留などにより、炭化水素樹脂を含む重合体溶液から、溶媒、未反応の単量体、低分子量のオリゴマー成分等の揮発性有機化合物成分を、除去することが好ましい。
【0057】
なお、得られた炭化水素樹脂について、必要に応じて、炭化水素樹脂中の炭素-炭素二重結合を水素化する水素化反応を行うことで、水素化物としてもよい。
炭化水素樹脂の水素化は、水素化触媒の存在下において、炭化水素樹脂を水素と接触させることにより行うことができる。
【0058】
水素化触媒としては、特に限定されないが、ニッケル触媒が好ましい。特に、反応性が高いという観点より、担体としての担持無機化合物に、金属としてのニッケルを担持してなる化合物を主成分として含む触媒が好ましい。担体としての担持無機化合物の具体例としては、シリカ、アルミナ、ボリア、シリカ-アルミナ、珪藻土、白土、粘土、マグネシア、マグネシア-シリカ(シリカ-酸化マグネシウム)、チタニア、ジルコニアなどが挙げられ、これらのなかでも、反応性の観点より、マグネシア-シリカが好ましい。
【0059】
<ホットメルト粘接着剤組成物>
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、上記した本発明の炭化水素樹脂を含有する。
【0060】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、通常、本発明の炭化水素樹脂に、熱可塑性エラストマーを配合することにより得ることができる。
【0061】
熱可塑性エラストマーとしては特に限定されないが、ホットメルト粘接着剤のベースポリマーとして用いられている熱可塑性エラストマーを制限なく用いることができるが、本発明の作用効果をより高めることできるという点より、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー、およびポリオレフィン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0062】
エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、特に限定されないが、酢酸ビニル単量体単位含有量が、10~50質量%の範囲であるものが好ましく、15~40質量%の範囲であるものがより好ましく、15~35質量%の範囲であるものがさらに好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、メルトフローレイトが1~500g/10分のものが好ましく使用できる。
【0063】
なお、エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、市販品として入手可能であり、たとえば、三井・デュポンポリケミカル社製の「EVAFLEX EV220(商品名)」やロッテケミカル社製の「VA900(商品名)」などを好適に用いることができる。
【0064】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、スチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合し得る他のモノマーとのランダム、ブロック、グラフト等の共重合体、およびこのような共重合体の水添物などが挙げられ、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックおよび少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを含むブロック共重合体などが挙げられる。このようなブロック共重合体の具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体、イソプレン-スチレン-イソプレントリブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン-イソプレンテトラブロック共重合体、およびこれらの混合物を好適に用いることができる。
【0065】
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、たとえば、エチレン/α-オレフィン共重合体が挙げられる。エチレン/α-オレフィン共重合体を得るために、エチレンと共重合されるα-オレフィンは、特に限定されないが、たとえば、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどの炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、炭素数6~8のα-オレフィンがより好ましく、1-オクテンがさらに好ましい。α-オレフィンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
エチレン/α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン単位の含有割合は、特に限定されないが、全単量体単位に対してα-オレフィン単位が占める割合が、20~40モル%であることが好ましい。また、エチレン/α-オレフィン共重合体としては、メルトフローレイトが200~1500g/10分のものが好ましく使用できる。
【0067】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物における、熱可塑性エラストマーと上記本発明の炭化水素樹脂との配合割合は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、炭化水素樹脂の配合割合が50~500質量部であることが好ましく、80~400質量部であることがより好ましい。炭化水素樹脂の配合割合がこの範囲にあると、ホットメルト粘接着剤組成物の接着性能が特に良好なものとなる。
【0068】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、本発明の炭化水素樹脂、および熱可塑性エラストマーのみからなるものであってよいが、さらに、他の成分を含有するものであってもよい。ホットメルト粘接着剤組成物に含有され得る他の成分としては、ワックス、軟化剤、酸化防止剤、本発明の炭化水素樹脂以外の粘着付与樹脂、前述したもの以外の重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。なお、ホットメルト粘接着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0069】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物を得るにあたり、上記した炭化水素樹脂、熱可塑性エラストマー、およびさらに必要に応じて添加されるその他の成分を混合する方法は特に限定されず、たとえば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで溶融混合する方法などを挙げることができる。混合をより効率的に行う観点からは、これらの方法のなかでも溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100~200℃の範囲である。
【0070】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、上記本発明の炭化水素樹脂を粘着付与樹脂として含有しているため、保持力およびタック性にバランス良く優れたものである。したがって、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、このような特性を活かし、種々の部材の接着に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行うことができるものである。本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、たとえば、各種の粘着テープやラベルの粘着剤として好適に使用される。具体的には、粘着テープやラベルを構成するシート状の基材上に、本発明のホットメルト粘接着剤組成物からなる粘着剤層を形成することで、基材と、本発明のホットメルト粘接着剤組成物からなる粘着剤層とからなる、粘着テープやラベルとして好適に使用される。
【実施例
【0071】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0072】
〔炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)、ピーク高さ指数〕
炭化水素樹脂について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)、ピークトップのピーク高さ[mV]、およびピーク面積[mV×秒]を求め、また、下記式(1)に従って、ピーク高さ指数を算出した。なお、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析は、測定装置として、東ソー社製「HLC-8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として(炭化水素樹脂を、テトラヒドロフラン中に、1.4質量%で溶解)、サンプル流入量100μL、40℃、1.0mL/minの流量で測定した。
ピーク高さ指数=(ピークトップのピーク高さ[mV]/ピーク面積[mV×秒])×100 (1)
【0073】
〔炭化水素樹脂の軟化点〕
炭化水素樹脂について、JIS K6863に従い測定した。
【0074】
〔ホットメルト粘接着剤組成物の剥離接着力〕
得られたホットメルト粘接着剤組成物を、25μmのPETフィルムに厚み20~30μmとなるように溶融塗布して、塗布シートを得た。次いで、この塗布シートを裁断して試験片を得た。このようにして得られた試験片を用いて、PSTC-101(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて、被着体としてステンレス鋼板を使用して、引張速度300mm/min、温度23℃で測定することにより、常温での剥離接着力(N/10mm)を評価した。値が大きいものほど、剥離接着力に優れる。
【0075】
〔ホットメルト粘接着剤組成物のループタック(23℃)〕
上記と同様にして得られた試験片を用いて、PSTC-16(米国粘着テープ委員会によるループタック試験)に準じて、被着体としてステンレス鋼板を使用し、試験速度が300mm/分、接着部が25×25mm、温度23℃にて測定することにより、常温(23℃)でのループタック(N/25mm)を評価した。値が大きいものほど、ループタック力(初期接着力)に優れる。
【0076】
〔ホットメルト粘接着剤組成物の保持力〕
上記と同様にして得られた試験片を用いて、PSTC-107 Procedure A(米国粘着テープ委員会による保持力試験法)に準じ、被着体としてステンレス鋼板を使用して、接着部10×25mm、負荷1000±5g、温度40℃にて、剥がれるまでの時間(分)を測定することにより、保持力を評価した。値が大きいものほど、保持力に優れる。
【0077】
〔実施例1〕
(炭化水素樹脂の製造)
重合反応器に、炭化水素溶媒としてのシクロペンタン38.8部を仕込み、65℃に昇温した後、重合触媒としての塩化アルミニウム1.0部を添加し、温度(65℃)を維持した状態のまま、2分間混合することで、シクロペンタン中に、塩化アルミニウムを、一部凝集が残存するような状態で分散させた。次いで、2分間の混合を終了した後、ここに、1,3-ペンタジエン45.0部、シクロペンテン24.7部、イソブチレン23.2部、1-ブテン6.0部、2-メチル-2-ブテン0.5部、C4-C6不飽和炭化水素(イソブチレン、ジイソブチレン、1-ブテン、および2-メチル-2-ブテンを除く)0.3部、ジシクロペンタジエン0.2部、シクロペンタジエン0.1部、およびC4-C6飽和炭化水素8.9部からなる混合物と、t-ブチルクロライド0.5部とを、それぞれ、別のラインを通して、60分間に亘り温度(65℃)を維持して、重合反応器に連続的に添加しながら重合を行った。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。なお、重合反応時の重合反応器中の成分の種類および量を表1にまとめて示した。そして、重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去することで、炭化水素樹脂および未反応単量体等を含む重合体溶液を得た。次いで、重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去し、炭化水素樹脂とした。なお、未反応単量体の量は極少量であったため、得られた炭化水素樹脂を構成する単量体組成は、重合に使用した単量体組成とほぼ同様であると判断できる(後述する実施例2~4、比較例1~3においても同様。)。そして、得られた炭化水素樹脂について、上記方法にしたがって、重量平均分子量(Mw)、ピーク高さ指数、および軟化点の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(ホットメルト粘接着剤組成物の調製)
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(商品名「Quintac(登録商標)3620」、日本ゼオン社製)100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに上記にて得られた炭化水素樹脂100部、軟化剤(商品名「サンピュアN100」、ナフテン系プロセスオイル、日本サン石油社製)20部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)1.5部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160~180℃で1時間混練することにより、ホットメルト粘接着剤組成物を調製した。そして、得られたホットメルト粘接着剤組成物について、剥離接着力、ループタック、および保持力の各測定を行った。結果を表2に示す。
【0079】
〔実施例2,3〕
重合反応器に添加する成分の種類および量、重合触媒としての塩化アルミニウムを混合する際の混合温度、および、重合温度を下記表1に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2,3の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例1に記載のないスチレンは、1,3-ペンタジエン等と共に混合し、重合に供した。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
また、上記にて得られた実施例2,3の炭化水素樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
〔比較例1,2〕
重合反応器に添加する成分の種類および量、重合触媒としての塩化アルミニウムを混合する際の混合温度および混合時間、ならびに、重合温度を下記表1に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1,2の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例1に記載のない、ジイソブチレンおよびスチレンは、1,3-ペンタジエン等と共に混合し、重合に供した。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
また、上記にて得られた比較例1,2の炭化水素樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
〔実施例4〕
重合反応器に添加する成分の種類および量、重合触媒としての塩化アルミニウムを混合する際の混合温度、および、重合温度を下記表3に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例1に記載のない、ジイソブチレンは、1,3-ペンタジエン等と共に混合し、重合に供した。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表3に示す。
【0086】
また、上記にて得られた実施例4の炭化水素樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表4に示す。
【0087】
〔比較例3〕
重合反応器に添加する成分の種類および量、重合触媒としての塩化アルミニウムを混合する際の混合温度および混合時間、ならびに、重合温度を下記表3に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例1に記載のない、スチレンは、1,3-ペンタジエン等と共に混合し、重合に供した。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表3に示す。
【0088】
また、上記にて得られた比較例3の炭化水素樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、実施例1と同様に各試験・評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表1、表2に示す実施例1~3と比較例1,2との結果、表3、表4に示す実施例4と比較例3との結果より、重量平均分子量(Mw)が500~6500の範囲であり、軟化点温度が50℃以上であり、ピーク高さ指数が0.5以下である炭化水素樹脂によれば、これを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物は、保持力およびタック性にバランス良く優れるものであった。
なお、保持力および低温性能については、軟化点の高低や、重量平均分子量(Mw)の大小によっても、影響を受けるため、本実施例、比較例においては、これらの条件が近い実施例、比較例を対比した。
図1