(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】テンプレートアセンブリ、研磨ヘッド及びウェーハの研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H01L21/304 622L
(21)【出願番号】P 2021085091
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健汰
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-110909(JP,A)
【文献】特開2003-197580(JP,A)
【文献】特開平10-94959(JP,A)
【文献】特開2011-83856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ支持用のテンプレートアセンブリであって、
バックパッドと、該バックパッドの外周部に沿って固定されたガイドリング部とを具備し、
前記テンプレートアセンブリを貼り付けた研磨ヘッドの前記ガイドリング部の内側にウェーハを保持し且つ前記研磨ヘッドをタクタイルセンサを介して研磨パッド上に着座させた静止状態での前記タクタイルセンサを用いた荷重分布測定によって得られる、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の径方向の荷重分布が、前記ガイドリング部の中心から前記ウェーハの外端部の位置までの距離を100とした際の前記中心からの相対距離が105~110である位置に極大値を示すものであ
り、
前記ガイドリング部が、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の前記中心からの相対距離が105~110である前記位置に、基準面から10μm以上の極大をもつ平面度プロファイルを有したものであり、
前記基準面は、測定面における全ての測定点から求められる平均二乗平面であることを特徴とするテンプレートアセンブリ。
【請求項2】
前記荷重分布において、前記極大値が、前記ウェーハへの平均荷重及び前記ガイドリング部の外端部の荷重に対して、20%以上高い値を示すものであることを特徴とする請求項1に記載のテンプレートアセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のテンプレートアセンブリと、
前記ガイドリング部に対応する位置に配置されたリテーナリングと
を具備したものであることを特徴とする研磨ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の研磨ヘッドを用いて、ウェーハを研磨パッドに対して押圧しながら研磨することを特徴とするウェーハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンプレートアセンブリ、研磨ヘッド及びウェーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハのCMP研磨の分野では、ウェーハのエッジフラットネスの向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、CMP研磨ヘッドのリテーナリングのウェーハに接触するリング内側側面を斜め形状にすることで、研磨時にウェーハ外周部のせり上がりを抑制し、外周部フラットネスが向上する研磨ヘッド及び研磨方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、CMP研磨ヘッドにおいてリテーナリングの偏摩耗を考慮し、内側を厚くしたリテーナリングとすることで、交換寿命を延ばすと共に、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を低減する研磨ヘッドと研磨方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、CMP研磨ヘッドにおいて、リテーナリングの内側に幅5~7.5mmの凸部を設け、内側から3~5mmの位置に凸部頂点を配置し、高さは凸部幅(5~7.5mm)の5/3~3/2とすることで、ウェーハ外周部の研磨レート上昇を防止する研磨ヘッド及び研磨方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-165792号公報
【文献】特開2007-27166号公報
【文献】特開2015-116656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CMP後のエッジフラットネスのレベル向上のため、研磨ヘッドのガイドリング部の荷重分布に着目した。ガイドリング部を強く押し当てるような荷重条件を与えることで、研磨パッドに対するリテーナ効果により、ウェーハエッジ部の偏荷重が緩和され、エッジロールオフ(エッジ部のダレ悪化)が抑制されることは一般的に知られている。その際、研磨ヘッド本体のリテーナリング及びその上に貼り付けられるテンプレートアセンブリはより平面であることが望ましいとされてきた。しかしながら、ガイドリング部を強く押し当てるような荷重条件では、ガイドリング部全体の荷重がウェーハ荷重に対して高くなり、研磨ヘッドのガイドリング内に位置するウェーハへのスラリーの流出入量が低下して研磨残渣の排出が低下することで、欠陥レベルの悪化、特にパーティクル数の悪化を引き起こすことが問題である。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ウェーハの外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善できるテンプレートアセンブリ、研磨ヘッド、及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、ウェーハ支持用のテンプレートアセンブリであって、
バックパッドと、該バックパッドの外周部に沿って固定されたガイドリング部とを具備し、
前記テンプレートアセンブリを貼り付けた研磨ヘッドの前記ガイドリング部の内側にウェーハを保持し且つ前記研磨ヘッドをタクタイルセンサ(面圧分布測定システム)を介して研磨パッド上に着座させた静止状態での前記タクタイルセンサを用いた荷重分布測定によって得られる、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の径方向の荷重分布が、前記ガイドリング部の中心から前記ウェーハの外端部の位置までの距離を100とした際の前記中心からの相対距離が105~110である位置に極大値を示すものであることを特徴とするテンプレートアセンブリを提供する。
【0010】
このようなテンプレートアセンブリであれば、研磨ヘッドに貼り付けてウェーハの研磨に用いた場合、研磨パッド(クロス)の偏荷重を軽減しつつ、研磨ヘッドの内部へのスラリー供給量が制限されるのを防ぐことができるので、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0011】
前記荷重分布において、前記極大値が、前記ウェーハへの平均荷重及び前記ガイドリング部の外端部の荷重に対して、20%以上高い値を示すものであることが好ましい。
【0012】
このようなテンプレートアセンブリであれば、ウェーハ外周部のフラットネス悪化をより確実に抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを更に改善することができる。
【0013】
例えば、前記ガイドリング部が、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の前記中心からの相対距離が105~110である前記位置に、基準面から10μm以上の極大をもつ平面度プロファイルを有したものとすることができる。
【0014】
例えば、このようなガイドリング部を具備することで、上記荷重分布を実現できる。
【0015】
また、本発明では、本発明のテンプレートアセンブリと、
前記ガイドリング部に対応する位置に配置されたリテーナリングと
を具備したものであることを特徴とする研磨ヘッドを提供する。
【0016】
このような研磨ヘッドを用いてウェーハの研磨を行うことにより、研磨パッドの偏荷重を軽減しつつ、研磨ヘッドの内部へのスラリー供給量が制限されるのを防ぐことができるので、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0017】
また、本発明では、本発明の研磨ヘッドを用いて、ウェーハを研磨パッドに対して押圧しながら研磨することを特徴とするウェーハの研磨方法を提供する。
【0018】
このようなウェーハの研磨方法であれば、研磨パッドの偏荷重を軽減しつつ、研磨ヘッドの内部へのスラリー供給量が制限されるのを防ぐことができるので、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0019】
また、本発明では、研磨ヘッドを用いて、ウェーハを研磨パッドに対して押圧しながら、前記ウェーハを研磨する方法であって、
前記研磨ヘッドとして、
リテーナリングと、前記リテーナリング上に貼り付けられたテンプレートアセンブリとを具備し、
前記テンプレートアセンブリが、バックパッドと、該バックパッドの外周部に沿って固定されたガイドリング部とを具備し、
前記ガイドリング部の内側に前記ウェーハを保持し且つ前記研磨ヘッドをタクタイルセンサを介して前記研磨パッド上に着座させた静止状態での前記タクタイルセンサを用いた荷重分布測定によって得られる、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の径方向の荷重分布が、前記ガイドリング部の中心から前記ウェーハの外端部の位置までの距離を100とした際の前記中心からの相対距離が105~110である位置に極大値を示すものを用いて、前記ウェーハを研磨することを特徴とするウェーハの研磨方法を提供する。
【0020】
このようなウェーハの研磨方法であれば、研磨パッドの偏荷重を軽減しつつ、研磨ヘッドの内部へのスラリー供給量が制限されるのを防ぐことができるので、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のテンプレートアセンブリであれば、研磨ヘッドに貼り付けてウェーハの研磨に用いた場合、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0022】
また、本発明の研磨ヘッドであれば、ウェーハの研磨において用いることで、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0023】
また、本発明のウェーハの研磨方法であれば、ウェーハ外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のテンプレートアセンブリの一例を示す概略断面図である。
【
図2】タクタイルセンサを用いたガイドリング部の径方向の荷重分布の測定を説明するための概略断面図である。
【
図3】本発明のテンプレートアセンブリの一例を示す概略平面図である。
【
図4】
図3に示すテンプレートアセンブリのガイドリング部の平坦度を示すグラフである。
【
図5】本発明の研磨ヘッドの一例を示す概略断面図である。
【
図6】比較例で用いたテンプレートアセンブリのガイドリング部の平坦度を示すグラフである。
【
図7】実施例及び比較例における研磨ヘッド荷重分布測定を説明するための概略断面図である。
【
図8】実施例及び比較例における研磨ヘッド荷重分布測定結果を示すグラフである。
【
図9】実施例及び比較例におけるGBIR差分指数を示すグラフである。
【
図10】実施例及び比較例におけるESFQR差分指数を示すグラフである。
【
図11】実施例及び比較例における荷重変化による欠陥の増加率を示すグラフである。
【
図12】実施例及び比較例における荷重条件別の面内とエッジ部とのが占める欠陥数の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、ウェーハの外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善できるテンプレートアセンブリ、研磨ヘッド、及び研磨方法の開発が求められていた。
【0026】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、CMP研磨における研磨ヘッドの荷重分布測定で得られるガイドリング部の径方向の荷重分布プロファイルのうち、中心からウェーハ外端までの距離を100とした時の相対距離が105から110までの領域に荷重値の極大を持つような荷重分布を実現するテンプレートアセンブリ又は研磨ヘッドを用いることで、研磨パッドの偏荷重を軽減しつつ、リテーナ効果を発揮でき、且つ研磨ヘッドの内部へのスラリー供給量を制限せずにスラリーの流入量低下を最低限にでき、その結果、エッジフラットネス悪化の防止及び研磨後の欠陥レベルの改善の両立が可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
即ち、本発明は、ウェーハ支持用のテンプレートアセンブリであって、
バックパッドと、該バックパッドの外周部に沿って固定されたガイドリング部とを具備し、
前記テンプレートアセンブリを貼り付けた研磨ヘッドの前記ガイドリング部の内側にウェーハを保持し且つ前記研磨ヘッドをタクタイルセンサを介して研磨パッド上に着座させた静止状態での前記タクタイルセンサを用いた荷重分布測定によって得られる、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の径方向の荷重分布が、前記ガイドリング部の中心から前記ウェーハの外端部の位置までの距離を100とした際の前記中心からの相対距離が105~110である位置に極大値を示すものであることを特徴とするテンプレートアセンブリである。
【0028】
また、本発明は、本発明のテンプレートアセンブリと、
前記ガイドリング部に対応する位置に配置されたリテーナリングと
を具備したものであることを特徴とする研磨ヘッドである。
【0029】
また、本発明は、本発明の研磨ヘッドを用いて、ウェーハを研磨パッドに対して押圧しながら研磨することを特徴とするウェーハの研磨方法である。
【0030】
また、本発明は、研磨ヘッドを用いて、ウェーハを研磨パッドに対して押圧しながら、前記ウェーハを研磨する方法であって、
前記研磨ヘッドとして、
リテーナリングと、前記リテーナリング上に貼り付けられたテンプレートアセンブリとを具備し、
前記テンプレートアセンブリが、バックパッドと、該バックパッドの外周部に沿って固定されたガイドリング部とを具備し、
前記ガイドリング部の内側に前記ウェーハを保持し且つ前記研磨ヘッドをタクタイルセンサを介して前記研磨パッド上に着座させた静止状態での前記タクタイルセンサを用いた荷重分布測定によって得られる、前記テンプレートアセンブリの前記ガイドリング部の径方向の荷重分布が、前記ガイドリング部の中心から前記ウェーハの外端部の位置までの距離を100とした際の前記中心からの相対距離が105~110である位置に極大値を示すものを用いて、前記ウェーハを研磨することを特徴とするウェーハの研磨方法である。
【0031】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
[テンプレートアセンブリ]
図1及び
図2を参照しながら、本発明のテンプレートアセンブリの一例を具体的に説明する。
【0033】
図1及び
図2に示すテンプレートアセンブリ1は、ウェーハ20の支持用のテンプレートアセンブリであって、バックパッド2と、バックパッド2の外周部に沿って固定されたガイドリング部3とを具備している。
【0034】
図1のガイドリング部3の内側の点線で示す位置に、研磨対象となるウェーハ20を保持することができる。
【0035】
テンプレートアセンブリ1は、例えば、
図2の下側のグラフに実線で示すようなガイドリング部3の径方向の荷重分布を示す。
【0036】
この荷重分布は、
図2に示すように、このテンプレートアセンブリ1を例えばリテーナリング4上に貼り付けた研磨ヘッド10のガイドリング部3の内側にウェーハ20を保持し且つ研磨ヘッド10をタクタイルセンサ50を介して研磨パッド30上に着座させた静止状態で、タクタイルセンサ50を用いて測定して得られる。研磨パッド30は、研磨定盤40上に貼り付けられている。
【0037】
本発明のテンプレートアセンブリ1は、このようにして得られた荷重分布が、例えば
図2の下側のグラフにおいて実線で示すように、
図1に示すガイドリング部3の中心3cから
図1及び
図2に示すウェーハ20の外端部21の位置までの距離を100とした際の中心3cからの相対距離が105~110である位置に極大値を示すものである。
【0038】
本発明のテンプレートアセンブリ1は、このようなガイドリング部3の径方向の荷重分布を示すことにより、研磨ヘッド10に貼り付けてウェーハ20の研磨に用いた場合、リテーナ効果を十分に発揮しつつ、スラリー流入低下を最低限にすることができる。そして、本発明のテンプレートアセンブリ1は、研磨パッド30の偏荷重を軽減しつつ、研磨ヘッド10の内部へのスラリー供給量が制限されるのを防ぐことができる。したがって、本発明のテンプレートアセンブリ1は、研磨ヘッド10に貼り付けてウェーハ20の研磨に用いた場合、ウェーハ20の外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0039】
一方、ガイドリング部3の径方向の荷重分布において、ガイドリング部3の中心3cから
図1及び
図2に示すウェーハ20の外端部21の位置までの距離を100とした際の中心3cからの相対距離が105~110である位置に極大値を示さない場合(例えば、
図2のグラフで点線及び一点鎖線で示す荷重分布の場合)、エッジフラットネス悪化の防止及び欠陥レベルの改善を両立することができない。
【0040】
ガイドリング部3の径方向の荷重分布において、ガイドリング部3の中心3cからの相対距離が107~110である位置に極大値を示すことが好ましく、相対距離が108~110である位置に極大値を示すことがより好ましい。
【0041】
また、ガイドリング部3の径方向の荷重分布において、極大値が、ウェーハ20への平均荷重及びガイドリング部の外端部の荷重に対して、20%以上高い値を示すものであることが好ましい。
【0042】
このようなテンプレートアセンブリ1であれば、ウェーハ20の研磨後の外周部のフラットネスのレベルを更に改善することができる。
【0043】
例えば、ガイドリング部3として、
図3に示すガイドリング部3を用いることができる。
【0044】
図3に平面図を示すテンプレートアセンブリ1のガイドリング部3は、
図4に示す平面度プロファイルを有する。
図4に示す平面度プロファイルは、
図3に示すテンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の中心3cからの相対距離が105~108である位置に、基準面から10μm以上の極大をもつ。
【0045】
図4に示す平面度プロファイルは、接触式プローブを用いた三次元形状測定機を用い、セラミックリングに
図3に示すテンプレートアセンブリ1を貼り付けた状態で上向きにして、表面基準として
図3において点線で示す測定位置3aにおいて半径毎に周方向へ測定して平均値を求め、基準面からの偏差を相対距離に対してプロットしたものである。
【0046】
例えば、このようなガイドリング部3を用いることにより、上記相対距離が105~108である位置に極大値を示す荷重分布を実現することができる。
【0047】
このように、ガイドリング部3が、テンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の中心3cからの相対距離が105~110である位置に、基準面から10μm以上の極大をもつ平面度プロファイルを有したものであることがより好ましい。
【0048】
上記平面度プロファイルにおける極大が、基準面から10μm以上300μm以下であることがより好ましい。このような平面度プロファイルを有するガイドリング部3を具備したテンプレートアセンブリ1であれば、研磨ヘッド10の内部へのスラリー供給量が制限されるのをより確実に防ぐことができる。
【0049】
ただし、本発明のテンプレートアセンブリ1は、上記荷重分布を示すものであれば、以上に説明したような平面度プロファイルを有するガイドリング部3を具備する形態に限定されるものではない。
【0050】
[研磨ヘッド]
次に、本発明の研磨ヘッドを
図5を参照しながら説明する。
【0051】
図5に示す研磨ヘッド10は、
図1及び
図2を参照しながら説明した本発明の一例のテンプレートアセンブリ1と、テンプレートアセンブリ1のガイドリング部3に対応する位置に配置されたリテーナリング4とを具備している。
【0052】
テンプレートアセンブリ1は、ガイドリング部3に対応する位置にリテーナリング4が位置するように、リテーナリング4上に貼り付けられている。それにより、バックパッド2の外周部が、リテーナリング4とガイドリング部3との間に挟まれている。
【0053】
図5に示す研磨ヘッド10は、リテーナリング4のテンプレートアセンブリ1とは反対側に配置された、上部フランジアセンブリ5を更に具備している。上部フランジアセンブリ5は、上部金属7と、上備金属7の中心に配されたフランジ6とを具備している。上部金属7の外周部に沿って、リテーナリング4が固定されている。
【0054】
上部金属7のフランジ6とは反対側に、裏板8が配されている。裏板8とバックパッド2とリテーナリング4とに囲まれた空間9は、流体封入部であるバックパッド加圧部となっている。
【0055】
[研磨方法]
(第1態様)
図5を再度参照して、本発明の研磨方法の第1態様を説明する。
【0056】
本発明の研磨方法の第1態様では、
図5を参照しながら例を挙げて説明した本発明の研磨ヘッド10を用い、ウェーハ20を研磨パッド30に対して押圧しながら研磨する。なお、ウェーハ20及び研磨パッド30は、
図5において点線で示している。
【0057】
リテーナリング4にかけられた荷重は、バックパッド2の外周部を経て、ガイドリング部3に伝わる。研磨ヘッド10は、先に詳細に説明したガイドリング部3の径方向の荷重分布で、ウェーハ20を研磨パッド30に対して押圧する。
【0058】
図2にて説明したガイドリング部3の径方向の荷重分布を示すテンプレートアセンブリ1を具備する研磨ヘッド10を用いてウェーハの研磨を行うことにより、研磨パッド30の偏荷重を軽減しつつ、リテーナ効果を発揮でき、且つ研磨ヘッド10の内部へのスラリー供給量を制限せずにスラリーの流入量低下を最低限にでき、その結果、ウェーハ20の外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【0059】
(第2態様)
本発明の研磨方法は、別の側面である第2態様では、先に説明した荷重分布測定方法によって得られるテンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の径方向の荷重分布が、ガイドリング部3の中心3cからウェーハ20の外端部21の位置までの距離を100とした際の中心3cからの相対距離が105~110である位置に極大値を示す研磨ヘッドを用いて、ウェーハ20を研磨パッド30に対して押圧しながら、ウェーハ20を研磨する研磨方法である。
【0060】
すなわち、上記テンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の径方向の荷重分布は、テンプレートアセンブリ1の設計によって実現できるものに限られず、研磨ヘッド10全体の設計、例えばリテーナリング4の押圧面の設計によって実現しても良い。
【0061】
このような第2の態様の研磨方法でも、研磨パッド30の偏荷重を軽減しつつ、リテーナ効果を発揮でき、且つ研磨ヘッド10の内部へのスラリー供給量を制限せずにスラリーの流入量低下を最低限にできるので、ウェーハ20の外周部のフラットネス悪化を抑えつつ、研磨後の欠陥レベルを改善することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(比較例)
比較例では、平面度PVが5μm以下という平面度の良いガイドリング部3を持つこと以外は
図1を参照しながら説明したのと同様のテンプレートアセンブリ1を準備した。
図6に、比較例で用いたテンプレートアセンブリ1のガイドリング部の平坦度プロファイルを示す。また、比較例では、このテンプレートアセンブリ1を具備すること以外は
図5を参照しながら説明したのと同様の研磨ヘッド10を準備した。
【0064】
(実施例)
実施例では、
図4に示す平坦度プロファイルを示すガイドリング部3、すなわち、
図3に示すテンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の中心3cからウェーハの外端部の位置までの距離を100とした際の中心3cからの相対距離が105~108である位置に、基準面から10μm以上、より詳細には11.5μmの極大をもつガイドリング部3を具備するテンプレートアセンブリ1を用いた。また、実施例では、このテンプレートアセンブリ1を具備した、
図5を参照しながら説明したのと同様の研磨ヘッド10を準備した。
【0065】
[荷重分布測定]
図7に示すように、セラミック定盤40上に研磨パッド30を貼り付け、その上にタクタイルセンサ50(Tekscan Inc製センサハンドルVERSA TekVH-1、NITTA製センサーシートC-SCAN12S)を配置した。次いで、ウェーハ20を保持した実施例の研磨ヘッド10を、間にタクタイルセンサ50を介して研磨パッド30に着座させた静止状態で、タクタイルセンサ50を用いた荷重分布測定を行い、ウェーハ20の中心(
図1に示すガイドリング部3の中心3c)を通る径方向の荷重分布を求めた。比較例の研磨ヘッド10についても同様に荷重分布を求めた。
【0066】
比較例及び実施例とも、ウェーハ20部への荷重がおよそ同一となるような荷重設定とし、低荷重条件(ウェーハ部荷重(kPa)に対し、リテーナ荷重が80%以下)及び高荷重条件(ウェーハ部荷重(kPa)に対し、リテーナ荷重が120%以上)を設定して、静止状態で荷重を測定した。
図8には、比較例と実施例の径方向荷重分布のうち、ウェーハ20のエッジ部(外端部21)に着目したグラフを示す。実施例の高荷重条件では、テンプレートアセンブリ1のリテーナ平面度プロファイルに倣うように、テンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の中心3cからウェーハ20の外端部21の位置までの距離を100とした際の中心3cからの相対距離が105~110の位置、特には107.6付近の位置に極大値を持つような荷重分布となった。また、実施例の低荷重条件の荷重分布は、ガイドリング部3の中心3cからの相対距離が105~110の位置、特には107.6付近の位置に極大値を有していた。更に、実施例の高荷重条件の荷重分布における極大値は、ウェーハ20への平均荷重及びガイドリング部3の外端部の荷重に対して、20%以上高い値を示すものであった。一方、比較例では、低荷重条件及び高荷重条件の何れの荷重分布も、ガイドリング部3の中心3cからの相対距離が105~110の位置には極大値を持たなかった。
【0067】
[研磨加工]
実施例及び比較例の研磨ヘッド10をそれぞれ用いて、ウェーハの研磨加工を実施した。
【0068】
研磨加工は、ウレタン含浸不織布製の研磨パッドを貼付けたセラミック定盤を用いて、シリカ系砥粒を含むKOHベースのアルカリ性水溶液の研磨スラリーを研磨パッド上に供給しながら、研磨ヘッド10と定盤を回転させてウェーハを摺接させることで行った。この後、連続して、発泡ウレタンスエード製の研磨パッドを貼り付けたセラミック定盤に、シリカ系砥粒を含むアンモニアベースのアルカリ性水溶液の研磨スラリーを研磨パッド上に供給しながら、研磨ヘッド10と定盤を回転させてウェーハを摺接させることで研磨加工を行い、洗浄を行ったウェーハを後述する方法にて測定した。荷重条件は、荷重分布測定と同じ低荷重条件及び高荷重条件にそれぞれ設定した。ウェーハの研磨枚数は各条件につき10枚とした。
【0069】
[フラットネス評価]
図9及び
図10に、実施例及び比較例の研磨ヘッド10を用い、荷重分布測定と同様の低荷重条件及び高荷重条件で取り代を300nmとして研磨した後のウェーハのフラットネスを示す。具体的には、KLA-Tencor社製WaferSight2+にて測定を行って求めたGBIR・ESFQR(2mmE.E.)のそれぞれの差分指数を
図9及び
図10に示す。各条件10枚研磨加工したうちの平均値として示している。
図9及び
図10では、実施例及び比較例ともに、低荷重条件で研磨した結果を100とした相対値を示している。
【0070】
図9及び
図10から明らかなように、比較例及び実施例とも、高荷重条件とすることで、GBIR及びESFQRの偏差が低荷重条件のおよそ6割に低減し、同等レベルとなった。これは、いずれの条件においても、ガイドリング部3の荷重が高くなることでリテーナ効果が発現し、エッジロールオフが抑制されたためと考えられる。
【0071】
[欠陥レベル測定]
欠陥レベル測定のため、各条件での研磨後のウェーハに対し、研磨砥粒を除去するSC1(Standard Cleaning 1)洗浄を行った後に、KLA-Tencor社製SurfScan SP5を用いて、最小粒径19nmで測定を行った。その結果を
図11に示す。
図11では、各条件でウェーハ10枚のスタック値とし、欠陥レベルもフラットネスと同様、比較例及び実施例とも、低荷重条件で研磨加工したウェーハの欠陥レベルレベルを100とし、高荷重条件にした時の増加率として示した。
【0072】
図11から明らかなように、比較例では高荷重条件とすることで、欠陥レベルが低荷重条件の約2.8倍まで増加した。一方、実施例では高荷重条件としても、欠陥レベルは、10%未満の増加率で抑えられたことが分かる。
【0073】
図12に、各条件での、ウェーハ面内(半径90%以内の領域)とエッジ部(半径90%以上の外周領域)の欠陥レベル数が占める割合を示した。
【0074】
図12から明らかなように、比較例では高荷重条件とすることでエッジ部の欠陥レベル数の割合が増えているのに対し、実施例ではエッジ部欠陥レベルの割合が維持されている。
【0075】
以上に示した結果から、テンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の中心3cからの相対距離が105~110の位置に極大値を持つガイドリング部3の径方向の荷重分布を示すテンプレートアセンブリ1、及びこのような荷重分布を示す研磨ヘッド10を用いて研磨を行った実施例は、エッジフラットネス悪化の防止及び欠陥レベルの改善の両立が可能であったことが分かる。
【0076】
一方、ガイドリング部3の径方向の荷重分布においてテンプレートアセンブリ1のガイドリング部3の中心3cからの相対距離が105~110の位置に極大値を持たないテンプレートアセンブリ1、及びこのような荷重分布を示す研磨ヘッド10を用いて研磨を行った比較例は、エッジフラットネスの悪化を防止することができたものの、欠陥レベルの改善はできなかったことも分かる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1…テンプレートアセンブリ、 2…バックパッド、 3…ガイドリング部、 3a…測定位置、 3c…中心、 4…リテーナリング、 5…上部フランジアセンブリ、 6…フランジ、 7…上部金属、 8…裏板、 9…バックパッド加圧部(流体封入部)、 10…研磨ヘッド、 20…ウェーハ、 21…外端部、 30…研磨パッド、 40…研磨定盤(セラミック定盤)、 50…タクタイルセンサ。