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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021527495
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020404
(87)【国際公開番号】W WO2020255631
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019113023
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】貝吹 香
(72)【発明者】
【氏名】岡 優希
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/016149(WO,A1)
【文献】特開昭52-131470(JP,A)
【文献】特開2004-039740(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
七フッ化ヨウ素と不活性ガスとを含有する混合ガスであるエッチングガスをプラズマ化して得られたプラズマを用いて、基板上に形成された窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜をエッチングするエッチング工程を備え、前記基板を支持する下部電極に0W超過150W以下のバイアスパワーを印加しつつエッチングを行い、前記窒化シリコン膜のエッチング速度が前記酸化シリコン膜のエッチング速度よりも大きいプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記酸化シリコン膜のエッチング速度に対する前記窒化シリコン膜のエッチング速度の比が2以上70以下である請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
1Pa以上10Pa以下のプロセス圧力下でエッチングを行う請求項1又は請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスにおいては、エッチングガスを用いたプラズマエッチングにより窒化シリコン膜をエッチングする場合がある。例えば特許文献1には、六フッ化硫黄(SF6)等のフッ素化ガスを含有するエッチングガスをプラズマ化して窒化シリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許公開公報 2016年第157940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体の製造プロセス等に使用されるプラズマエッチング方法においては、窒化シリコン膜のエッチング速度のさらなる向上が望まれている。
本発明は、窒化シリコン膜のエッチング速度が大きいプラズマエッチング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の一態様は以下の[1]~[7]の通りである。
[1] 七フッ化ヨウ素を含有するエッチングガスをプラズマ化して得られたプラズマを用いて、基板上に形成された窒化シリコン膜をエッチングするエッチング工程を備えるプラズマエッチング方法。
【0006】
[2] 前記基板上には前記窒化シリコン膜とともに酸化シリコン膜が形成されており、前記窒化シリコン膜とともに前記酸化シリコン膜をエッチングする[1]に記載のプラズマエッチング方法。
[3] 前記窒化シリコン膜のエッチング速度が前記酸化シリコン膜のエッチング速度よりも大きい[2]に記載のプラズマエッチング方法。
【0007】
[4] 前記酸化シリコン膜のエッチング速度に対する前記窒化シリコン膜のエッチング速度の比が2以上70以下である[3]に記載のプラズマエッチング方法。
[5] 前記エッチングガスが七フッ化ヨウ素と不活性ガスとを含有する混合ガスである[1]~[4]のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【0008】
[6] 1Pa以上10Pa以下のプロセス圧力下でエッチングを行う[1]~[5]のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
[7] 前記基板を支持する下部電極に0W以上1500W以下のバイアスパワーを印加しつつエッチングを行う[1]~[6]のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窒化シリコン膜のエッチング速度が大きいプラズマエッチング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るプラズマエッチング方法の一実施形態を説明するプラズマエッチング装置の一例の概略図である。
図2】プロセス圧力とSi34/SiO2選択比との関係を示すグラフである。
図3】プロセス圧力3Paにおける、バイアスパワーとSi34/SiO2選択比との関係を示すグラフである。
図4】プロセス圧力5Paにおける、バイアスパワーとSi34/SiO2選択比との関係を示すグラフである。
図5】エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度とSi34/SiO2選択比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0012】
本実施形態のプラズマエッチング方法は、七フッ化ヨウ素(IF7)を含有するエッチングガスをプラズマ化して得られたプラズマを用いて、基板上に形成された窒化シリコン膜(例えばSi34膜)をエッチングするエッチング工程を備える。七フッ化ヨウ素を含有するエッチングガスを用いてプラズマエッチングを行うことにより、大きなエッチング速度で窒化シリコン膜のエッチングを行うことができる。
【0013】
本実施形態のプラズマエッチング方法によれば、窒化シリコン膜とともに酸化シリコン膜(例えばSiO2膜)もエッチングすることができる。すなわち、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜が形成された基板を本実施形態のプラズマエッチング方法でエッチングすれば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜を同時にエッチングすることができる。
【0014】
このとき、酸化シリコン膜よりも大きなエッチング速度で窒化シリコン膜をエッチングすることができる。すなわち、本実施形態のプラズマエッチング方法によれば、酸化シリコン膜に対して窒化シリコン膜を選択的にプラズマエッチングすることができる。例えば、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比が2以上70以下となるように、また、エッチングをより安定的に制御する観点では3以上30以下となるように、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜をエッチングすることができる。
【0015】
よって、本実施形態のプラズマエッチング方法を半導体の製造プロセスに適用すれば、ダブルパターニングを利用したシャロートレンチアイソレーション(STI:Shallow trench isolation)の形成のためのエッチング加工時において、窒化シリコン膜の選択的除去を効率的に行うことができる。また、酸化シリコン膜に対する窒化シリコン膜のエッチングの選択性が向上すれば(酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比が大きくなれば)、プラズマエッチング方法をウェットエッチング方法の代替方法とすることも可能となる。
【0016】
本実施形態のプラズマエッチング方法によるプラズマエッチングは、プラズマエッチング装置を用いて行うことができる。プラズマエッチング装置におけるプラズマ源は特に限定されるものではないが、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)等の高周波放電プラズマや、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECRP:Electron Cyclotron Resonance Plasma)等のマイクロ波放電プラズマが挙げられる。後に詳述する図1のプラズマエッチング装置は、ICPをプラズマ源とするプラズマエッチング装置である。
【0017】
本実施形態のプラズマエッチング方法においては、プラズマエッチングは0.2Pa以上26.7Pa以下のプロセス圧力下で行うことが好ましく、1Pa以上15Pa以下のプロセス圧力下で行うことがより好ましく、1Pa以上10Pa以下のプロセス圧力下で行うことがさらに好ましく、3Pa以上7Pa以下のプロセス圧力下で行うことが特に好ましい。プロセス圧力が高い方が七フッ化ヨウ素の解離が促進されるため、酸化シリコン膜に対する窒化シリコン膜のエッチングの選択性が向上する。また、プロセス圧力が高い方が、プラズマの着火性が高くなる。
【0018】
エッチングガスは、七フッ化ヨウ素のみから形成されていてもよいが、七フッ化ヨウ素と不活性ガスとを含有する混合ガスであってもよい。不活性ガスの種類は特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン及び窒素ガスが挙げられる。これら不活性ガスは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
七フッ化ヨウ素と不活性ガスとの混合比率については、プラズマの着火性等を考慮して調整すればよい。エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度は、0体積%超過100体積%以下とすることができ、プラズマの着火性をより十分なものとするためには、5体積%以上50体積%以下とすることがより好ましく、酸化シリコン膜に対する窒化シリコン膜のエッチングの選択性を十分に高くするためには、10体積%以上30体積%以下とすることがさらに好ましい。
エッチングガスの使用量、例えば、プラズマエッチング装置においてプラズマエッチングが行われるチャンバーへのエッチングガスの総流量は、チャンバーの体積、排気能力、及びプロセス圧力等に応じて調整するとよい。
【0020】
プラズマエッチング装置においては、例えばRF(radio frequency)コイルに高周波のソースパワーを印加して電界及び磁界を形成することにより、エッチングガスをプラズマ化してプラズマを発生させることができる。ソースパワーの大きさは特に限定されるものではないが、0W超過3000W以下とすることが好ましく、100W以上1500W以下とすることがより好ましく、200W以上1000W以下とすることがさらに好ましい。
【0021】
ソースパワーが大きいほど七フッ化ヨウ素の解離が促進されエッチング速度が大きくなるので、所望するエッチング速度に応じてソースパワーの大きさを設定すればよい。ソースパワーの大きさが上記の数値範囲内であれば、窒化シリコン膜のエッチング速度が十分に大きくなるとともに、酸化シリコン膜に対する窒化シリコン膜のエッチングの選択性が十分に高くなる。
【0022】
プラズマエッチング時の基板の温度は特に限定されるものではないが、-20℃以上250℃以下とすることが好ましく、0℃以上100℃以下とすることがより好ましく、20℃以上70℃以下とすることがさらに好ましい。プラズマエッチング時の基板の温度が上記の数値範囲内であれば、基板上に形成されたレジスト膜の変質、昇華等による変形が抑制されるので、高いパターニング精度でプラズマエッチングを行うことができる。
【0023】
プラズマエッチング時には、基板を支持する下部電極にバイアスパワーを印加してもよい。すなわち、下部電極に印加するバイアスパワーの大きさは、0Wでもよいし0W超過でもよい。酸化シリコン膜に対する窒化シリコン膜のエッチングの選択性を十分に高くするためには、下部電極に印加するバイアスパワーは12000W以下とすることが好ましく、1500W以下とすることがより好ましく、300W以下とすることがさらに好ましい。
【0024】
以下に、図1に示すプラズマエッチング装置を用いて、基板の表面に形成された窒化シリコン膜と酸化シリコン膜のプラズマエッチングを行う例について説明する。図1のプラズマエッチング装置は、ICPをプラズマ源とするプラズマエッチング装置である。まず、図1のプラズマエッチング装置について説明する。
【0025】
図1のプラズマエッチング装置は、内部でプラズマエッチングが行われるチャンバー1と、プラズマエッチングする基板20をチャンバー1の内部に支持する下部電極2と、下部電極2にバイアスパワーを印加するバイアスパワー用電源(図示せず)と、エッチングガスをプラズマ化するための電界及び磁界をチャンバー1の内部に形成するRFコイル15と、RFコイル15に高周波のソースパワーを印加するソースパワー用電源(図示せず)と、チャンバー1の内部を減圧する真空ポンプ13と、チャンバー1の内部の圧力を測定する圧力計14と、プラズマの発生に伴い生じるプラズマ発光を取り込むセンサー16と、センサー16で取り込んだプラズマ発光を分光してプラズマ発光の時間的変化をモニターする分光器17と、を備えている。
【0026】
基板20は、その表面に窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜が形成されている。センサー16としては、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサーを用いることができる。ただし、センサー16と分光器17を設ける代わりに、チャンバー1に覗き窓を設けて、その覗き窓からチャンバー1の内部を目視で観察し、プラズマ発光の時間的変化を確認してもよい。
【0027】
また、チャンバー1は、チャンバー1の内部にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部を備えている。エッチングガス供給部は、七フッ化ヨウ素ガスを供給する七フッ化ヨウ素ガス供給部3と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部4と、七フッ化ヨウ素ガス供給部3とチャンバー1を接続するエッチングガス供給用配管11と、エッチングガス供給用配管11の中間部に不活性ガス供給部4を接続する不活性ガス供給用配管12と、を有している。
【0028】
そして、エッチングガスとして七フッ化ヨウ素ガスをチャンバー1に供給する場合には、七フッ化ヨウ素ガス供給部3からエッチングガス供給用配管11に七フッ化ヨウ素ガスを送り出すことにより、エッチングガス供給用配管11を介して七フッ化ヨウ素ガスがチャンバー1に供給されるようになっている。
【0029】
また、エッチングガスとして七フッ化ヨウ素ガスと不活性ガスの混合ガスを供給する場合には、七フッ化ヨウ素ガス供給部3からエッチングガス供給用配管11に七フッ化ヨウ素ガスを送り出すとともに、不活性ガス供給部4からエッチングガス供給用配管11に不活性ガス供給用配管12を介して不活性ガスを送り出すことにより、エッチングガス供給用配管11の中間部において七フッ化ヨウ素ガスと不活性ガスが混合されて混合ガスとなり、この混合ガスがエッチングガス供給用配管11を介してチャンバー1に供給されるようになっている。
【0030】
このようなプラズマエッチング装置を用いてプラズマエッチングを行う場合には、チャンバー1の内部に配された下部電極2の上に基板20を載置し、真空ポンプ13によりチャンバー1の内部の圧力を1Pa以上10Pa以下に減圧した後に、エッチングガス供給部によりチャンバー1の内部にエッチングガスを供給する。そして、RFコイル15に高周波(例えば13.56MHz)のソースパワーを印加すると、チャンバー1の内部に電界及び磁界が形成されることで電子が加速し、この加速した電子がエッチングガス中の七フッ化ヨウ素分子と衝突して新たにイオンと電子が生成され、その結果放電が起こりプラズマが形成される。プラズマの発生は、センサー16及び分光器17を用いて確認することができる。
【0031】
プラズマが発生すると、基板20の表面に形成された窒化シリコン膜と酸化シリコン膜がエッチングされる。
エッチングガスのチャンバー1への供給量や、エッチングガス(混合ガス)中の七フッ化ヨウ素の濃度は、エッチングガス供給用配管11及び不活性ガス供給用配管12にそれぞれ設置されたマスフローコントローラー(図示せず)で七フッ化ヨウ素ガス及び不活性ガスの流量をそれぞれ制御することによって調整することができる。
【0032】
上記したように、エッチングガスとして七フッ化ヨウ素又は七フッ化ヨウ素と不活性ガスとの混合ガスを用いて、プロセス圧力を1Pa以上10Pa以下とし、バイアスパワーを1500W以下の条件とすることによって、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比が2以上70以下となるように、あるいは、エッチングをより安定的に制御する観点では3以上30以下となるように、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜をエッチングすることができる。
【実施例
【0033】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
図1のプラズマエッチング装置と略同様の構成を有するサムコ株式会社製のICPエッチング装置RIE-200iPを用いて、基板のプラズマエッチングを行った。この基板は、シリコン基板上に窒化シリコン膜(Si34膜)及び酸化シリコン膜(SiO2膜)を化学蒸着法にて成膜したものである。
【0034】
また、チャンバーの内部の体積は46000cm3であり、エッチングガスは七フッ化ヨウ素ガスとアルゴンの混合ガスである。七フッ化ヨウ素ガスの流量を10sccm、アルゴンの流量を40sccmとすることにより、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度を20体積%に調整した。ここでsccmは、0℃、1気圧の条件で規格化された1分間当たりの体積流量(cm3)である。
【0035】
チャンバーの内部のプロセス圧力を1Pa、ソースパワーを500W、バイアスパワーを0W、基板の温度を20℃とした上、七フッ化ヨウ素ガスの流量、アルゴンの流量、プロセス圧力、ソースパワー、及びバイアスパワーをそれぞれ常時モニターし、それぞれの設定値と実行値に差がないことを確認しながら、プラズマエッチングを行った。結果を表1に示す。
【0036】
表1には、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜がプラズマエッチングされている時間(エッチング時間)、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜のエッチング前の膜厚及びエッチング後の膜厚、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比(Si34/SiO2選択比)を示してある。
【0037】
なお、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の膜厚の測定は、フィルメトリクス社製の反射率分光膜厚計F20を用いて行った。また、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜のエッチング速度は、エッチング前の膜厚からエッチング後の膜厚を差し引いて、それをエッチング時間で除することにより算出した。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例2~4)
プロセス圧力を表1に示す通り変更した点以外は、実施例1と同様にしてプラズマエッチングを行い、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比を算出した。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1~4)
エッチングガスを六フッ化硫黄ガスとアルゴンの混合ガス(エッチングガス中の六フッ化硫黄の濃度は20体積%である)とした点と、プロセス圧力を表1に示す通り変更した点以外は、実施例1と同様にしてプラズマエッチングを行い、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例11~18)
プロセス圧力を3Paとした点と、バイアスパワーを表2に示す通り変更した点以外は、実施例1と同様にしてプラズマエッチングを行い、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比を算出した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例21~24)
プロセス圧力を5Paとした点と、バイアスパワーを表3に示す通り変更した点以外は、実施例1と同様にしてプラズマエッチングを行い、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比を算出した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
(比較例21~23)
エッチングガスを六フッ化硫黄ガスとアルゴンの混合ガス(エッチングガス中の六フッ化硫黄の濃度は20体積%である)とした点と、プロセス圧力を5Paとした点と、バイアスパワーを表3に示す通り変更した点以外は、実施例1と同様にしてプラズマエッチングを行い、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比を算出した。結果を表3に示す。
【0046】
(実施例31~33)
プロセス圧力を3Paとした点と、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度を表4に示す通り変更した点以外は、実施例1と同様にしてプラズマエッチングを行い、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の各エッチング速度、並びに、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比を算出した。結果を表4に示す。
【0047】
なお、実施例31~33においては、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度は、七フッ化ヨウ素ガスとアルゴンの流量を下記の通りとすることにより調整した。すなわち、七フッ化ヨウ素ガスの流量を2.5sccm、アルゴンの流量を47.5sccmとすることにより、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度を5体積%に調整し、七フッ化ヨウ素ガスの流量を5sccm、アルゴンの流量を45sccmとすることにより、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度を10体積%に調整し、七フッ化ヨウ素ガスの流量を10sccm、アルゴンの流量を40sccmとすることにより、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度を20体積%に調整した。
【0048】
【表4】
【0049】
表1~4の結果を図2~5のグラフにそれぞれ示す。表1及び図2のグラフから、いずれのプロセス圧力においても、七フッ化ヨウ素を含有するエッチングガスの方が、六フッ化硫黄を含有するエッチングガスよりも、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比(Si34/SiO2選択比)が大きく、酸化シリコン膜に対して窒化シリコン膜が選択的にエッチングされていることが分かる。そして、Si34/SiO2選択比は、プロセス圧力が高圧になるほど向上することが分かる。
【0050】
また、表2及び図3のグラフから、バイアスパワーが低いほどSi34/SiO2選択比が向上することが分かる。
さらに、表3及び図4のグラフから、いずれのバイアスパワーにおいても、七フッ化ヨウ素を含有するエッチングガスの方が、六フッ化硫黄を含有するエッチングガスよりも、酸化シリコン膜のエッチング速度に対する窒化シリコン膜のエッチング速度の比が大きく、酸化シリコン膜に対して窒化シリコン膜が選択的にエッチングされていることが分かる。そして、Si34/SiO2選択比は、バイアスパワーが低いほど向上することが分かる。
【0051】
さらに、表4から、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度が高いほど、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜いずれについても、エッチング速度が大きくなることが分かる。一方、Si34/SiO2選択比については、表4及び図5のグラフから、エッチングガス中の七フッ化ヨウ素の濃度が高いほど向上する傾向はあるものの、それほど大きな変化は無かった。
【符号の説明】
【0052】
1・・・チャンバー
2・・・下部電極
3・・・七フッ化ヨウ素ガス供給部
4・・・不活性ガス供給部
11・・・エッチングガス供給用配管
12・・・不活性ガス供給用配管
13・・・真空ポンプ
14・・・圧力計
15・・・RFコイル
16・・・センサー
17・・・分光器
20・・・基板
図1
図2
図3
図4
図5