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特許7537442半導体装置、非接触電子装置、および周期検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】半導体装置、非接触電子装置、および周期検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/06 20060101AFI20240814BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H04L27/06 Z
G06K19/07 230
G06K19/07 090
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022003399
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2017068626の分割
【原出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2022044659
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-01-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】今任 祐基
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0163370(US,A1)
【文献】特開2008-295035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/06
G06K 19/07
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を介して受信したデータ信号の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれか一方のエッジを検出するエッジ検出部と、
隣り合う前記エッジの区間における、前記データ信号に応じて予め定められた周波数の基準クロック信号の周波数を1/N(Nは2以上の整数)としたN分周クロック信号の個数を計数する計数部と、
前記エッジと前記N分周クロック信号の位相差に応じて定まる前記N分周クロック信号の端数を計数する端数計数部と、
前記計数部による計数値をN倍した値と前記端数とを加算し前記データ信号の周期として出力する第1の加算部と、
を含み、
前記端数計数部は、隣り合う前記エッジの最初のエッジと前記N分周クロック信号との位相差に応じて定まる第1の端数と、隣り合う前記エッジの次のエッジと前記N分周クロック信号との位相差に応じて定まる第2の端数とを加算する第2の加算部とを備え、
前記端数計数部は、前記第1の端数を示す信号と前記第2の端数を示す信号とを順番に保持するシフトレジスタを備え、
Nの値が4であり、
4分周クロック信号の位相を1/4周期遅延させた遅延4分周クロック信号を生成する第1の生成部と、
前記エッジのタイミングと同期させて前記4分周クロック信号から選択信号を生成する第2の生成部と、をさらに含み
前記シフトレジスタは、前記4分周クロック信号、前記遅延4分周クロック信号、および前記選択信号の各々の前記最初のエッジのタイミングにおける前記データ信号との位相関係を示す第1の値の組み合わせと、前記4分周クロック信号、前記遅延4分周クロック信号、および前記選択信号の各々の前記次のエッジのタイミングにおける前記データ信号との位相関係を示す第2の値の組み合わせとを出力し、
前記端数計数部は、前記第1の値の組み合わせをデコードして前記第1の端数を算出する第1のデコード部、および前記第2の値の組み合わせをデコードして前記第2の端数を算出する第2デコード部を備える
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体装置は、前記半導体装置によって検出された前記データ信号の周期を用いて前記データ信号を復調する復調部、および前記電波から生成された電力により前記基準クロック信号を発生するクロック信号発生部をさらに含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の半導体装置と、
前記データ信号を含む前記電波を受信するアンテナと、
を含む非接触電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、非接触電子装置、および周期検出方法、特にRFID(Radio Frequency IDentifier)タグのPIE(Pulse Interval Encoding)デコード部における周期検出に係る半導体装置、非接触電子装置(RFIDタグ)、および周期検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグ(RFIDチップ)は、例えば、無線により人や物を識別し、管理するために使用される。通常RFIDタグには固有の番号が割り振られており、リーダライタとよばれる装置から無線通信により該固有の番号を読み出すことが可能となっている。RFIDタグの固有の番号と実物との対応付けはリーダライタ側が行うため、通常RFIDタグ自体は複雑な機能は持たない。
【0003】
上記のようなRFIDタグの方式についてはいくつかの種類が存在するが、最近では、通信距離が長い等の理由から900MHz帯への注目が高まっている。900MHz帯のRFIDタグに関する各種仕様は規格として定められており、例えば、「EPC Global Class1 Generation2(略してEPC C1G2又はEPC Gen2)」とよばれる規格が広く知られている。一方、RFIDタグは、上記のように機能が比較的単純であるものの、例えばバーコードの代替として使用されるため非常に安価であることが求められる。また、通常、リーダライタの発する電波から電力を受けて動作するパッシブ型で構成されるため、低消費電流であることも必要となる。
【0004】
消費電流の低減を目的としたRFIDタグの一例として、特許文献1に開示された非接触電子装置が知られている。特許文献1に開示された非接触電子装置は、基準クロックCLKの発振周波数を周波数設定信号TR_OSC1の値に比例して設定可能な回路を設け、リーダライタから送信された通信速度を規定する信号(TRcal)を受信した際、このTRcalの1周期を例えばTR_OSC1値がXである基準クロックCLKでカウントし、カウント結果となるTRcalカウンタ値を得る。そして、このTRcalカウンタ値とXとを用いて、TRcalカウンタ値を予め定めた設定値Yにしたい場合のTR_OSC1値を換算し、この換算値を反映したCLKを用いてリーダライタに向けて返信を行う。
【0005】
特許文献1では、上記のように通信速度に応じてCLKの発振周波数を可変とする方式を用いたので、通信速度の精度がCLKの周波数設定精度によって定められ、従来よりも低い周波数のCLKを用いることが可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-287387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パッシブ型のRFIDタグでは消費電流が通信距離に反比例するため、消費電流が低ければ低いほど通信距離等の特性が優れたものとなる可能性がある。一方、パッシブ型RFIDタグの受信動作時において最大の動作周波数を必要とするのがPIEデコード部であることから、RFIDタグのロジック内において消費電流が最大となるのは、一般にPIEデコード部である。すなわち、PIEデコード部の消費電流を削減することは、パッシブ型のRFIDタグの特性を改善することに大きく寄与すると考えられる。
【0008】
PIEデコード部を構成する回路の中でも、アンテナを介して入力されたデータ信号の周期を検出する周期検出回路は一般に最大周波数のクロックを直接使用しており、この周期検出回路の消費電流を削減することは、パッシブ型のRFIDタグの特性改善において有効な手段であると考えられる。
【0009】
図6(a)に従来技術に係る周期検出回路80を示す。図6(a)に示すように、周期検出回路80は、エッジ検出部82、およびカウンタ84から構成されている。図6(a)、(b)に示すように、エッジ検出部82にはData(データ)信号とClock(クロック)信号が入力され、入力されたData信号の立ち上がりを検出し、図6(b)に示すように検出のつどEnable信号(立ち上がり検出信号)を発生する。
【0010】
カウンタ84は、Data信号の周期をClock信号の個数でカウントする周期計測回路であり、あるEnable信号によって初期化され、次のEnable信号までのClock信号の個数がカウントされる。図6(b)では、時刻t1でData信号の立ち上がりが検出されたことによりEnable信号(パルス)が発生し、Enableパルスの立ち下がりの時刻t2においてカウンタ84から出力(Counter out)が開始されている、すなわちカウント動作が開始されている。時刻t3でData信号が再び立ち上がるとEnableパルスが出力され、該Enableパルスの立ち下がりの時刻t4においてカウントがリセットされている。図6(b)ではData信号の1周期の間にN個のClock信号が計数されたので、Clock信号の周期をTc(秒)とすれば、Data信号の周期はN×Tc(秒)と求めることができる。
【0011】
しかしながら、周期検出回路80は回路的には簡易な構成ではあるが、周波数の高いClock信号を用いて周期を計測するので、消費電流削減という観点からは一定の限界がある。すなわち、図6(a)に示すような従来技術に係る周期検出回路80を用いている限り、大幅な消費電流の削減は期待できない。
【0012】
この点、特許文献1に開示された非接触電子装置は、クロックのカウント値に基づいて周波数を調整するものではあるが、送信信号の周波数を調整するものであり、周期検出回路80のようにPIEデコードにおける周波数を調整するものではない。
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、消費電流を効率的に削減することが可能な新たな方式の周期検出回路を用いた半導体装置、非接触電子装置、および周期検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る半導体装置は、電波を介して受信したデータ信号の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれか一方のエッジを検出するエッジ検出部と、隣り合う前記エッジの区間における、前記データ信号に応じて予め定められた周波数の基準クロック信号の周波数を1/N(Nは2以上の整数)としたN分周クロック信号の個数を計数する計数部と、前記エッジと前記N分周クロック信号の位相差に応じて定まる前記N分周クロック信号の端数を計数する端数計数部と、前記計数部による計数値をN倍した値と前記端数とを加算し前記データ信号の周期として出力する第1の加算部と、を含むものである。
【0015】
本発明に係る非接触電子装置は、上記の半導体装置と、前記データ信号を含む前記電波を受信するアンテナと、を含むものである。
【0016】
本発明に係る周期検出方法は、エッジ検出部により、電波を介して受信したデータ信号の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれか一方のエッジを検出し、計数部により、隣り合う前記エッジの区間における、前記データ信号に応じて予め定められた周波数の基準クロック信号の周波数を1/N(Nは2以上の整数)としたN分周クロック信号の個数を計数し、端数計数部により、前記エッジと前記N分周クロック信号の位相差に応じて定まる前記N分周クロック信号の端数を計数し、加算部により、前記計数部による計数値をN倍した値と前記端数とを加算して前記データ信号の周期を検出するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、消費電流を効率的に削減することが可能な新たな方式の周期検出回路を用いた半導体装置、非接触電子装置、および周期検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係るタグの構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態に係る周期検出回路の構成の一例を示す回路図である。
図3】第1の実施の形態に係る周期検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
図4】第2の実施の形態に係る周期検出回路の構成の一例を示す回路図である。
図5】第2の実施の形態に係る周期検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
図6】従来技術に係る周期検出回路の、(a)はブロック図、(b)は動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本実施の形態に係るパッシブ型(受動型)のRFIDタグ(以下、「タグ」)100の構成の一例について説明する。図1に示すように、タグ100は、変復調回路(ASK)102、整流回路(RCT)104、クロック回路(RC)106、およびロジック回路(LOG)108を含んで構成されている。タグ100は一例として半導体集積回路のチップで構成されており、アンテナ110は該チップの外部に接続される。
【0021】
アンテナ110は、リーダライタからの電波を受信し、リーダライタへ電波を送信する。変復調回路102は、リーダライタからアンテナ110を介して受信したデータを復調し、またタグ100からリーダライタへ送信するデータを変調する。整流回路104は、アンテナ110で受信した電波から電力を抽出し、タグ100の内部回路に供給する。クロック回路106は、RC発振器を含み、整流回路104から電力の供給を受けると所定の周波数のクロックを生成し、ロジック回路108に供給する。このクロック回路106から出力されるクロック信号は、タグ100内で用いられるクロック信号の基準となるクロック信号(後述のClock信号)となっている。ロジック回路108は、タグ100における通信速度の制御、各種情報の処理等を行う。
【0022】
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態に係る周期検出回路10について説明する。周期検出回路10は変復調回路102の内部に含まれ、アンテナ110で受信したデータ信号(Data)の周期を検出する。図2(a)に示すように、周期検出回路10は、エッジ検出部12、カウンタ14、フリップフロップ(FF)16、18、20、1加算部22、加算部24、2逓倍部26、加算部28、およびインバータ30を含んで構成されている。
【0023】
エッジ検出部12にはData(データ)信号とDiv2_Clock(2分周クロック)信号が入力され、エッジ検出部12は、入力されたData信号の立ち上がりを検出し、図3に示すように検出のつどEnable信号(立ち上がり検出信号)を発生する。
なお、本実施の形態ではエッジ検出部が立ち上がりを検出する形態を例示して説明するが、これに限られず、立ち下がりを検出する形態としてもよい。カウンタ14は、Data信号の周期をDiv2_Clock信号の個数でカウントする周期計測回路であり、あるEnable信号によって初期化され、次のEnable信号までのDiv2_Clock信号の個数がカウントされる。ここで、図3に示すように、Div2_Clock信号は、基準クロック信号であるClock信号が図示しない分周器によって1/2の周波数に分周されたクロック信号である。なお、図3に示すEnable_O信号とExpect信号は図2(a)の回路に直接関係しない信号であり、Enable_O信号はClock信号によって発生させた場合のEnable信号を、Expect信号はDataの1周期におけるClock信号の計数値を各々示している。
【0024】
本実施の形態に係る周期検出回路10では、消費電流削減のために、周期の検出に用いるクロックの周波数を基準クロック信号の1/2に落とし(周期を2倍にし)ている。そして、Enable信号の区間で示されるData信号の1周期内に、Div2_Clock信号が何個含まれるかカウンタ14によって計数し、得られた計数値を2倍して基準のクロック信号であるClockの個数に換算する。この際、Div2_Clock信号とClock信号の周波数が一致していないことに起因して、正味のDiv2_Clock信号の個数以外に端数について考慮する必要があり、この端数を別途演算して正味の個数に加算する必要がある。
【0025】
すなわち、Div2_Clockの計数の開始時点において、Data信号(Enable信号)の立ち上がりのタイミングが、Div2_Clock信号のハイレベル(以下、「H」)のタイミングか、ロウレベル(以下、「L」)のタイミングかによって端数が異なる。つまり、Data信号とDiv2_Clockとの位相差によって端数が異なる。この事情は、Div2_Clockの計数の終了時点においても同様である。従って、Div2_Clock信号のカウント値をClock信号のカウント値に換算するためには以下の(式1)に示す演算を行う必要がある。
N=Nn+F1+F2 ・・・ (式1)
ただし、NはClock信号の計数値、NnはDiv2_Clock信号の正味の計数値、F1はData信号のある立ち上がり(以下、「1回目の立ち上がり」)のタイミングにおける端数(第1の端数)、F2はData信号の次の立ち上がり(以下、「2回目の立ち上がり」)のタイミングにおける端数(第2の端数)である。
【0026】
図2(b)は、Data信号の1回目の立ち上がりのタイミングがDiv2_Clock信号のHまたはLに一致した場合、および2回目の立ち上がりのタイミングがDiv2_Clock信号のHまたはLに一致した場合の端数を示している。図2(b)から、Div2_Clock信号の正味の計数値に加える端数の合計値は、1、2、3の場合がありえることが分かる。
【0027】
図2(a)に示すように、Div2_Clock信号はフリップフロップ16によりData信号のタイミングで取り込まれ、pn_pre信号とされる(図3の時刻t1)。
pn_pre信号は、さらにフリップフロップ18によってEnable信号のタイミングで識別されpn信号となる(図3の時刻t2)。pn信号は、さらにフリップフロップ20によってEnable信号のタイミングで識別され、pn_d信号となる。pn_d信号は先に入力されたpn信号がシフトしたものである。つまり、フリップフロップ18と20によってシフトレジスタが構成されている。
【0028】
この際、pn_d信号がData信号の1回目の立ち上がりのタイミングにおける端数F1を示す値(1ビット)となっており、pn信号がData信号の2回目の立ち上りにおける端数F2を示す値となっている。ただし、pn信号は1ビット表示(Div2_Clock信号のHで1、Lで0)であるため、インバータ30によって反転した後1加算部22によって1を加算し、2ビット表示に変換する(Div2_Clock信号のHで1、Lで2、図2(b)参照)。この変換した値とpn_d信号とを加算部24で加算することにより端数の合計値(F1+F2)が算出され、この算出結果を示すpn_add信号が生成される。
【0029】
図3に示すように、Enable信号の立ち下りのタイミング(時刻t3)において、カウンタ14によるカウントが開始されている。Data信号の次の立ち上がりのタイミング(時刻t4)においてpn信号およびpn_d信号の論理が反転し、Enable信号が発生し(時刻t5)、Enable信号の立ち下がり(時刻t6)でカウンタ14によるカウントが終了している。この時、図3に示す例ではカウンタ14の出力であるCounter_pre信号は0から4までカウントしている。一方、pn_add信号は、一例として、Data信号の1回目の立ち上がり時点においてF1=1、Data信号の2回目の立ち上がり時点において(F1+F2)=3(つまり、F2=2)となっている。
【0030】
その結果、時刻t5までは、カウンタ14によるカウント値であるCounter preの信号が2逓倍部26によって2倍にされた信号にF1の1が加算され、Counter out信号が1、3、5、7と推移している。一方、時刻t5においてData信号の2回目の立ち上がりのタイミングにおける端数F2=2が加算されて(F1+F2)=3となるので、Counter out信号は11(4×2+3)となっている。この結果は、Clock信号で計数した場合の結果であるExpect信号の結果11と一致しており、本実施の形態に係る周期検出回路10が正しく動作していることが分かる。
【0031】
以上詳述したように、本実施の形態に係る周期検出回路10によれば、基準となるクロック信号であるClock信号の1/2の周波数のクロック信号であるDiv2_Clock信号を用いて新たな方式の周期検出回路を構成したので、タグの消費電流を効率的に削減することが可能となった。この際、カウンタの精度が従来技術に係る周期検出回路80と変わらないことは上記のとおりである。なお、シミュレーションによる比較によれば、周期検出回路10は周期検出回路80と比較して30~40%の消費電流削減の効果があるという結果を得ている。
【0032】
[第2の実施の形態]
図4および図5を参照して、本実施の形態に係る周期検出回路10Aについて説明する。本実施の形態は、上記実施の形態に係る周期検出回路10に対してさらに基準のクロック信号であるClock信号を4分周したDiv4_Clock信号を導入し、より精度を向上させつつ、さらなる消費電流の削減を図った形態である。なお、図5に示すEnable_O信号とExpect信号は図4(a)の回路に直接関係しない信号であり、Enable_O信号はClock信号によって発生させた場合のEnable信号を、Expect信号はDataの1周期におけるClock信号の計数値を各々示している。
【0033】
図4(a)に示すように、周期検出回路10Aは、パルス生成部40、カウンタ42、フリップフロップ44、46、48、50、52、54、56、58、60、デコーダ62(add1)、デコーダ64(add2)、4逓倍部66、加算部68、70、インバータ72、AND回路74を含んで構成されている。周期検出回路10Aは、Div4_Clock信号でData信号の1周期を計数する。その際、端数F1、F2の演算を行い、(式1)に準じてカウンタ42によるカウント値に加算する。
【0034】
図4(a)および図5に示すように、パルス生成部40は、Div2_Clock信号を基準にして、Data信号から、clk_pn_pre信号とdata_r信号を生成する。data_r信号はDiv4_Clock信号とともにカウンタ42に入力され、Data信号1周期分のDiv4_Clock信号の個数を計数する。Div4_Clockは、フリップフロップ44によって、インバータ72によって反転されたDiv2_Clock信号のタイミングで識別されてDiv4_Clock信号の位相が1/4周期遅れたdiv4_d信号(遅延4分周クロック信号)とされる。
【0035】
Div4_Clock信号が、フリップフロップ46によりData信号のタイミングで識別されてpn_pre[1]信号が生成され、div4_d信号が、フリップフロップ48によりData信号のタイミングで識別されてpn_pre[0]信号が生成される。一方、clk_pn_pre信号はAND回路74でDiv2_Clockによって打ち抜かれてclk_pn信号が生成される。
【0036】
pn_pre[1]信号がフリップフロップ50によってclk_pn信号のタイミングで識別されてpn[1]信号が生成され、pn_pre[0]信号がフリップフロップ52によってclk_pn信号のタイミングで識別され、pn[0]信号が生成される。
一方、Div4_Clock信号がフリップフロップ54によってclk_pn信号のタイミングで識別され、pn_sel[0]信号が生成される。
【0037】
pn[1]信号、pn[0]信号(両者をまとめてpn[1:0]と表記する場合がある)、およびpn_sel[0]信号はデコーダ62に入力される。pn[1:0]信号およびpn_sel[0]信号は、Data信号の2回目の立ち上がりのタイミングにおける端数F2を算出するための信号(第2の値の組み合わせ)である。すなわち、これらの信号の位相差関係によって端数F2が変化し、これらの信号はデコーダ62によってデコードされて端数F2を生成する。図4(b)は、デコーダ62のデコードルールを示している。図4(b)に示すように、デコーダ62の出力は0から4まで0.5刻み値をとりえるので、デコーダ62の出力は3ビットとされている。
【0038】
さらに、pn[1]信号がフリップフロップ56によってclk_pn信号のタイミングで識別されてpn_d[1]信号が生成され、pn[0]信号がフリップフロップ58によってclk_pn信号のタイミングで識別されてpn_d[0]信号が生成され、pn_sel[0]信号がフリップフロップ60によってclk_pnのタイミングで識別されてpn_sel[1]信号が生成される。以下、pn_d[1]信号とpn_d[0]信号とをまとめてpn_d[1:0]信号という場合があり、pn_sel[0]信号とpn_sel[1]信号とをまとめてpn_sel[1:0]信号(選択信号)という場合がある。pn_d[1:0]信号およびpn_sel[1]信号は、各々pn[1:0]信号およびpn_sel[0]信号をシフトさせたものとなっている。つまり、フリップフロップ50、52、54の組とフリップフロップ56、58、60の組とでシフトレジスタが構成されている。
【0039】
pn_d[1:0]信号およびpn_sel[1]信号は、Data信号の1回目の立ち上がりのタイミングにおける端数F1を算出するための信号(第1の値の組み合わせ)である。すなわち、これらの信号の位相差関係によって端数F1が変化し、これらの信号はデコーダ64によってデコードされて端数F1を生成する。図4(c)は、デコーダ64のデコードルールを示している。図4(c)に示すように、デコーダ64の出力は0から4まで0.5刻み値をとりえるので、デコーダ64の出力は3ビットとされている。
【0040】
図5に示すように、本例では時刻t1でData信号が立ち上がっている。このData信号の立ち上がりに同期して時刻t2でclk_pnパルスが発生し、pn[1:0]信号が生成されている。本例ではpn[1:0]=b11(バイナリ11)の例を示している。時刻t3で再びData信号が立ち上がると時刻t4でclk_pnパルスが発生し、pn[1:0]の値がpn_d[1:0]にシフトし、pn[1:0]の値は新たにb00となっている。
【0041】
このとき、本例ではpn_sel[1:0]の値がpn_sel[1:0]=b01であることから、図4(b)においてpn_sel[0]=1、pn[1:0]=00の行を参照して、デコーダ62のデコード値はadd1=1.5、つまりF2=1.5とされる。一方、図4(c)においてpn_sel[1]=0、pn_d[1:0]=11の行を参照して、デコーダ64のデコード値はadd2=0.5、つまりF1=0.5とされる。
【0042】
デコーダ62のデコード値とデコーダ64のデコード値とは加算部68で加算されてpn_add信号となるが、図5に示すように、本例ではpn_add信号の値は2(=F1+F2=0.5+1.5)となっている。
【0043】
一方、カウンタ42によってData信号の立ち上がりから次の立ち上がりまでの正味のDiv4_Clock信号の個数((式1)におけるNn)が計数され図5に示すCounter信号が生成されている。本例では、0、1、2と2まで計数されている、つまり、(式1)におけるNnがNn=2となっている。Counter信号は4逓倍部66で4倍の値に変換された後、加算部70によって上記のpn_add信号と加算されてCounter out信号が生成される。本例ではCounter outの値は10(=2×4+2)となっている。この値は、図5に示すように、基準クロック信号であるClock信号によってData信号の1周期を計数したExpect信号による計数値10と一致している。
【0044】
以上詳述したように、本実施の形態に係る周期検出回路10Aによれば、基準となるクロック信号であるClock信号の1/4の周波数のクロック信号であるDiv4_Clock信号を用いて新たな方式の周期検出回路を構成したので、タグの消費電流をさらに効率的に削減することが可能となる。この際、カウンタの精度が従来技術に係る周期検出回路80と変わらないことは上記のとおりである。なお、シミュレーションによる比較によれば、周期検出回路10Aは周期検出回路80と比較して50%の消費電流削減の効果があるという結果を得ている。
【符号の説明】
【0045】
10、10A 周期検出回路
12 エッジ検出部
14 カウンタ
16、18、20 フリップフロップ
22 1加算部
24 加算部
26 2逓倍部
28 加算部
30 インバータ
40 パルス生成部
42 カウンタ
44、46、48、50、52、54、56、58、60 フリップフロップ
62 デコーダ(add1)
64 デコーダ(add2)
66 4逓倍部
68、70 加算部
72 インバータ
74 AND回路
80 周期検出回路
82 エッジ検出部
84 カウンタ
100 タグ
102 変復調回路(ASK)
104 整流回路(RCT)
106 クロック回路(RC)
108 ロジック回路(LOG)
110 アンテナ
F1、F2 端数
図1
図2
図3
図4
図5
図6