(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】形状取得方法、対象物の管理方法及び鉄骨造の建方、並びに形状取得システム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/32 20060101AFI20240814BHJP
G01C 9/06 20060101ALI20240814BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240814BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01B21/32
G01C9/06 Z
G01C15/00 104A
G01C15/00 104Z
E04G21/18 C
(21)【出願番号】P 2023531839
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2022024719
(87)【国際公開番号】W WO2023276784
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2021106519
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 崇
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194369(JP,A)
【文献】特開2018-179533(JP,A)
【文献】特開2005-155285(JP,A)
【文献】登録実用新案第3031823(JP,U)
【文献】特開平01-233313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/32
G01C 9/06
G01C 15/00
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の形状情報を取得する形状取得方法であって、
対象物に取り付けられた複数のセンサを用いて前記対象物の傾斜角の情報を複数の点でそれぞれ取得することと、
取得された前記複数の点での前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を求めることと、を含み、
前記複数のセンサはそれぞれ角度センサを含み、重力方向を基準として前記複数の点での前記傾斜角の情報を計測する、形状取得方法。
【請求項2】
請求項1に記載の形状取得方法において、
前記対象物は、建築現場において建て込まれた鉄骨柱である形状取得方法。
【請求項3】
請求項2に記載の形状取得方法において、
前記取得することでは、前記鉄骨柱の長手方向に伸びる一面の前記長手方向に離れた複数の点で第1傾斜角の情報を取得し、
前記求めることでは、前記第1傾斜角の情報を用いて演算により前記鉄骨柱の前記一面の形状情報を求める形状取得方法。
【請求項4】
請求項3に記載の形状取得方法において、
前記取得することでは、前記鉄骨柱の前記一面と交差する別の一面の前記長手方向に離れた複数の点で第2傾斜角の情報をさらに取得し、
前記求めることでは、前記第2傾斜角の情報を用いて前記鉄骨柱の前記別の一面の形状情報をさらに求める形状取得方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の形状取得方法において、
前記対象物は、ビル、橋梁、トンネル、ダム、風車、航空機、高速鉄道、船舶の少なくとも1つを含む形状取得方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の形状取得方法において、
求められた前記形状情報に基づいて前記対象物の一部の基準からの最大乖離量が生じる点と最大乖離量を求めることをさらに含む形状取得方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の形状取得方法を繰り返し実行することと、
実行される都度求められる形状情報に基づいて前記対象物の形状の経時変化をモニタすることと、を含む対象物の管理方法。
【請求項8】
複数節の柱を含む鉄骨造の建方であって、
所定の配置で建てられた複数の下節柱それぞれの上に複数の上節柱を個別に建て込むに際し、
前記複数の下節柱に取り付けられた複数のセンサを用いて前記複数の下節柱の傾斜角の情報を複数の点でそれぞれ取得することと、
取得された前記複数の点での前記傾斜角の情報を用いて演算により複数の下節柱それぞれの長手方向に伸びる一面の形状情報を取得することと、
取得された形状情報に基づいて、前記複数の下節柱それぞれの前記一面に直交する方向に関する柱頭の基準からの第1位置ずれ量を求めることと、
求められた前記第1位置ずれ量を考慮して、前記複数の上節柱それぞれの建て入れ目標値を新たに定めることと、を含む鉄骨造の建方。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄骨造の建方において、
前記定めることでは、前記第1位置ずれ量が相殺されるように前記複数の上節柱それぞれの建て入れ目標値を新たに定める鉄骨造の建方。
【請求項10】
請求項8に記載の鉄骨造の建方において、
前記取得することでは、前記複数の下節柱それぞれの前記一面に交差する長手方向に伸びる他の一面の形状情報をさらに取得し、
前記求めることでは、取得された前記複数の下節柱それぞれの前記他の一面に直交する方向に関する柱頭の基準からの第2位置ずれ量をさらに求め、
前記定めることでは、前記複数の下節柱それぞれの柱頭の前記第2位置ずれ量をさらに考慮して、前記複数の上節柱それぞれの建て入れ目標値を新たに定める鉄骨造の建方。
【請求項11】
請求項10に記載の鉄骨造の建方において、
前記定めることでは、前記第1位置ずれ量及び第2位置ずれ量が相殺されるように前記上節柱それぞれの建て入れ目標値を新たに定める鉄骨造の建方。
【請求項12】
複数節の柱を含む鉄骨造の建方であって、
所定の配置で建てられた複数の下節柱それぞれの上に複数の上節柱を個別に建て込むに際し、
前記複数の下節柱それぞれの上に前記複数の上節柱を個別に載置した状態で、それぞれの下節柱と上節柱とを複数の建方治具をそれぞれ用いて連結することと、
前記複数の上節柱に取り付けられた複数のセンサを用いて、前記複数の上節柱それぞれについて、長手方向に伸びる第1面の前記長手方向に離れた複数の点での第1傾斜角の情報と、前記第1面と交差する第2面の前記長手方向に離れた複数の点での第2傾斜角の情報と、を取得することと、
前記複数の上節柱それぞれについて、前記第1傾斜角の情報と前記第2傾斜角の情報とを用いて演算により前記第1面及び前記第2面の形状情報を取得することと、
取得された前記複数の上節柱のそれぞれについての前記第1面及び前記第2面の形状情報に基づいて、制御装置が前記複数の建方治具に個別に設けられた複数の駆動装置を並行して制御することで、前記複数の上節柱の柱頭の位置を自動調整することと、を含む鉄骨造の建方。
【請求項13】
請求項12に記載の鉄骨造の建方において、
前記柱のそれぞれの長手方向に延びる4面の柱頭部と柱脚部には、エレクションピースがそれぞれ設けられ、
前記複数の建方治具をそれぞれ用いて、下節柱の柱頭部のエレクションピースと上節柱の柱脚部のエレクションピースとを前記4面のそれぞれで連結することで、前記下節柱と前記上節柱とを連結する鉄骨造の建方。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の鉄骨造の建方において、
前記複数の建方治具のそれぞれは、倒れ調整機構と、目違い調整機構と、転倒防止機構と、を有し、
前記駆動装置は、少なくとも倒れ調整機構の調整に用いられる鉄骨造の建方。
【請求項15】
対象物の形状情報を取得する形状取得システムであって、
互いに広域ネットワークを介して接続された解析装置及び端末装置と、
前記端末装置に通信回線を介してそれぞれ接続され、使用に際して前記対象物の異なる複数の位置にそれぞれ取り付けられ、前記複数の位置における傾斜角の情報を含むセンサデータを、前記通信回線を介してそれぞれ出力する複数のセンサ装置と、を備え、
前記センサデータに含まれる前記傾斜角の情報は、前記複数のセンサ装置にそれぞれ含まれる角度センサによって計測される、重力方向を基準とする前記複数の位置での前記傾斜角の情報であり、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、外部指令に基づいて又は予め定められたタイミングで前記センサデータを出力し、
前記端末装置は、前記複数のセンサ装置のそれぞれから出力される前記センサデータを、前記広域ネットワークを介して前記解析装置に送信し、
前記解析装置は、前記広域ネットワークを介して受信した前記複数のセンサ装置からの前記センサデータに含まれる前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を求め、求めた形状情報をストレージに格納する形状取得システム。
【請求項16】
請求項15に記載の形状取得システムにおいて、
前記広域ネットワークには、前記複数のセンサ装置との間で無線通信が可能なモバイル端末がさらに接続されている形状取得システム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の形状取得システムにおいて、
前記外部指令は、前記端末装置から通信回線を介して与えられる形状取得システム。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の形状取得システムにおいて、
前記センサデータは、前記複数のセンサ装置の識別のためのIDを含む形状取得システム。
【請求項19】
請求項18に記載の形状取得システムにおいて、
前記IDは、前記複数のセンサ装置の識別符号と前記対象物における前記複数の位置の識別符号を含む形状取得システム。
【請求項20】
請求項18に記載の形状取得システムにおいて、
前記対象物は複数設けられ、前記IDは、前記複数のセンサ装置がそれぞれ取り付けられた複数の対象物の識別符号をさらに含み、
前記端末装置は、前記複数のセンサ装置から出力される複数のセンサデータに含まれる前記IDに基づいて、同一の対象物についての前記センサデータを一塊で前記解析装置に送信し、
前記解析装置は、受信した同一の対象物についての前記一塊のセンサデータに含まれる前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を求める形状取得システム。
【請求項21】
請求項18に記載の形状取得システムにおいて、
前記対象物は複数設けられ、前記IDは、前記複数のセンサ装置がそれぞれ取り付けられた複数の対象物の識別符号をさらに含み、
前記解析装置は、受信した複数のセンサデータの中から前記センサデータに含まれるIDに基づいて同一の対象物についての複数のセンサデータを取り出し、取り出した複数のセンサデータに含まれる前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を求める形状取得システム。
【請求項22】
請求項15又は16に記載の形状取得システムにおいて、
前記センサ装置のそれぞれは、筐体と、該筐体の内部に収容された傾斜センサ、演算処理部及び無線通信部、並びに電源部を有する形状取得システム。
【請求項23】
請求項22に記載の形状取得システムにおいて、
前記筐体には前記演算処理部に接続された表示操作部が設けられている形状取得システム。
【請求項24】
請求項22に記載の形状取得システムにおいて、
前記対象物は、建築現場において建て込まれた鉄骨柱である形状取得システム。
【請求項25】
請求項24に記載の形状取得システムにおいて、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記筐体の一面に埋め込み状態で設けられた磁石の磁力により、前記鉄骨柱に固定されている形状取得システム。
【請求項26】
請求項25に記載の形状取得システムにおいて、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記筐体の前記一面に配置されたクッション部材を介して、前記鉄骨柱に固定されている形状取得システム。
【請求項27】
請求項24に記載の形状取得システムにおいて、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記鉄骨柱の長手方向に伸びる一面の前記長手方向に離れた複数点に取り付けられ、前記センサデータをそれぞれ出力し、
前記解析装置は、複数のセンサデータに含まれる前記傾斜角の情報を用いて演算により前記鉄骨柱の前記一面の形状情報を求める形状取得システム。
【請求項28】
請求項27に記載の形状取得システムにおいて、
前記解析装置は、求められた形状情報に基づいて前記一面の基準からの最大乖離量をさらに求め、前記ストレージに格納する形状取得システム。
【請求項29】
請求項15又は16に記載の形状取得システムにおいて、
前記解析装置は、前記ストレージに格納された情報を、前記広域ネットワークを介して前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、前記解析装置から送信された前記情報を受信して前記端末装置が備える記憶装置に格納する形状取得システム。
【請求項30】
請求項15又は16に記載の形状取得システムにおいて、
予め設定されたインターバルで前記複数のセンサ装置それぞれから前記傾斜角の情報を含む前記センサデータの前記端末装置に対する出力が繰り返し行われ、
前記解析装置は、前記広域ネットワークを介して受信した前記対象物についての複数のセンサデータに含まれる前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を、前記端末装置からの出力のインターバルに対応するタイミングで繰り返し求め、求めた都度前記ストレージに格納する形状取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状取得方法、対象物の管理方法及び鉄骨造の建方、並びに形状取得システムに係り、さらに詳しくは、例えば鉄骨などを含む構造物(以下では建築物または構造体などとも呼ぶ)の少なくとも一部を対象物とする場合に好適な形状取得方法、対象物の管理方法及び形状取得方法を利用する鉄骨造の建方、並びに構造物の少なくとも一部を対象物とする場合に好適な形状取得システムに関する。
本願は、2021年6月28日に出願された特願2021-106519号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物を施工する際には、柱や壁等を構成する構築材が倒れや歪みなく組み立てられていることを検査する必要がある。例えば鉄骨建方精度の計測は、鉄骨柱に取り付けられたターゲットの位置を光学的に計測する三次元測量機を用いて行うのが一般的であった。しかし、実際の建築現場には障害物等もあるため、光を使った測量機を用いて計測することが困難な場合もあった。かかる不都合を改善するものとして、鉄骨建方精度計測のため、鉄骨柱の倒れを、光を使わない倒れ測定器(センサ)を用いて計測する倒れ測定装置の発明が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の装置では、鉄骨建方工程における鉄骨柱の倒れの計測には対応できるが、鉄骨柱の柱頭の変位量を正確に測定することは出来ず、また鉄骨柱の形状の計測はできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、対象物の形状情報を取得する形状取得方法であって、対象物に取り付けられた複数のセンサを用いて前記対象物の傾斜角の情報を複数の点でそれぞれ取得することと、取得された前記複数点での前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を求めることと、を含む形状取得方法が、提供される。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る形状取得方法を繰り返し実行することと、実行される都度求められる形状情報に基づいて前記対象物の形状の経時変化をモニタすることと、を含む対象物の管理方法が、提供される。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、複数節の柱を含む鉄骨造の建方であって、所定の配置で建てられた複数の下節柱それぞれの上に複数の上節柱を個別に建て込むに際し、第1の態様に係る形状取得方法を用いて複数の下節柱それぞれの長手方向に伸びる一面の形状情報を取得することと、取得された形状情報に基づいて、前記複数の下節柱それぞれの前記一面に直交する方向に関する柱頭の基準からの第1位置ずれ量を求めることと、求められた前記第1位置ずれ量を考慮して、前記複数の上節柱それぞれの建て入れ目標値を新たに定めることと、を含む鉄骨造の建方が、提供される。ここで、「建て入れ」とは柱の垂直の程度を意味する用語であり、建て入れ目標値とは、柱の垂直の程度の目標値、すなわち傾斜角の目標値を意味する。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、複数節の柱を含む鉄骨造の建方であって、所定の配置で建てられた複数の下節柱それぞれの上に複数の上節柱を個別に建て込むに際し、前記複数の下節柱それぞれの上に前記複数の上節柱を個別に載置した状態で、それぞれの下節柱と上節柱とを複数の建方治具をそれぞれ用いて連結することと、前記複数の上節柱それぞれについて、上記の形状取得方法を用いて長手方向に延び互いに交差する第1面及び第2面の形状情報を取得することと、取得された前記複数の上節柱のそれぞれについての前記第1面及び前記第2面の形状情報に基づいて、制御装置が前記複数の建方治具に個別に設けられた複数の駆動装置を並行して制御することで、前記複数の上節柱の柱頭の位置を自動調整することと、を含む鉄骨造の建方が、提供される。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、対象物の形状情報を取得する形状取得システムであって、互いに広域ネットワークを介して接続された解析装置及び端末装置と、前記端末装置に通信回線を介してそれぞれ接続され、使用に際して前記対象物の異なる位置にそれぞれ取り付けられ、それぞれの取り付け位置における傾斜角の情報を含むセンサデータを、前記通信回線を介して出力する複数のセンサ装置と、を備え、前記複数のセンサ装置のそれぞれは、外部指令に基づいて又は予め定められたタイミングで前記センサデータを出力し、前記端末装置は、前記複数のセンサ装置のそれぞれから出力される前記センサデータを、前記広域ネットワークを介して前記解析装置に送信し、前記解析装置は、前記広域ネットワークを介して受信した前記複数のセンサデータに含まれる前記傾斜角の情報を用いて演算により前記対象物の形状情報を求め、求めた形状情報をストレージに格納する形状取得システムが、提供される。
【0010】
ここで、通信回線と広域ネットワークとは同一のネットワークの一部であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】形状取得方法を実施するための第1の実施形態に係る形状取得システムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1のセンサ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】形状計測の対象物である鉄骨柱を多数含む鉄骨建築物を一部省略して示す斜視図である。
【
図4】
図4の(A)部は、鉄骨柱に固定されたセンサ装置を示す側面図、
図4の(B)部は、センサ装置を示す底面図である。
【
図5】本実施形態に係る形状取得方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る形状取得方法の説明に用いられる、計測対象として選択された柱及びその柱に取り付けられた3つのセンサ装置を示す図である。
【
図7】センサ装置の演算処理部のCPUによって実行される処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図8】サーバのCPUによって実行される割り込み処理ルーチンの処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図9】センサ装置から出力される傾斜角の意味を説明するための図である。
【
図10】センサ装置18
1~18
3が取り付けられた柱100
1の計測面(第1面)の形状を算出する方法について説明するための図である。
【
図11】センサ装置を、柱の長手方向に伸びる互いに直交する2つの面の同じ高さ位置に配置した例を示す図である。
【
図12】鉄骨造の建方を実施するためのシステムの構成の一例を示す図である。
【
図13】建方治具について説明するための図であって、柱100
mのエレクションピース102aと柱100
nのエレクションピース102bとを連結した状態の建方治具を示す図である。
【
図14】柱100
mの柱頭のエレクションピース102aに組み付けられた建方治具を示す図、かつ開いた状態の建方治具を示す図である。
【
図15】n節柱の建方の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】梁用鉄骨について説明するための図である。
【
図17】1節柱の上に2節柱を建てる場合の1節柱の柱頭のX軸方向に関する位置ずれ量を相殺するための2節柱の建て入れ目標値の新たな設定について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、
図1~
図11に基づいて説明する。ここでは、一例として、対象物が、
図3に示される鉄骨建築物110を構成する鉄骨柱100である場合について説明するが、対象物は、鉄骨柱に限られるものではない。以下では、
図3に示されるように、鉛直方向(重力方向)をZ軸方向とし、Z軸に直交する面内で、
図3における紙面内左右方向をX軸方向、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの傾斜(回転)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行なう。
【0013】
図1には、形状取得方法を実施するための第1の実施形態に係る形状取得システム10の全体構成が概略的に示されている。形状取得システム10は、インターネットなどの広域エリアネットワーク(以下ネットワークと略称する)13を介して互いに接続された解析装置としても機能するサーバ12、端末装置としても機能する現場側コントローラ14及びモバイル端末16、並びに現場側コントローラ14に通信回線、例えば無線LANを介して接続された複数のセンサ装置18
i(i=1、2、3、……)を含んで構成されている。
図1では複数のセンサ装置18
iのうち、3つのセンサ装置18
1~18
3が代表的に示されている。なお、通信回線はすべてが無線でも良いが、少なくとも一部が有線であっても良い。また、
コントローラ(端末装置
)14は必ずしも設ける必要はなく、複数のセンサ装置18
iの出力を、ネットワーク13を介して直接サーバ12に提供する構成としても良い。すなわち、通信回線と広域ネットワーク13は同一のネットワークの一部でも良い。また、端末装置は現場側コントローラを含まず、モバイルPCまたはスマートフォンだけでも良い。
【0014】
サーバ12としては、本実施形態では、一般に使用されるサーバ用のコンピュータが用いられているが、クラウド(コンピュータ)を用いても良い。サーバ12は、図示しないCPU、ROM、RAM、HDD等(ストレージ)を備えており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD等に記憶されている種々のプログラムで規定される種々の処理アルゴリズムを実行する。なお、解析装置としても機能するサーバ12はその構成が本実施形態に限られるものでなく、複数のセンサ装置18iの出力を基に対象物(鉄骨柱100)の形状情報を演算により求めることができる構成(若しくは機能)を少なくも備えていれば良い。また、解析装置は本実施形態のようにハードウエアに限られるものでなく、例えば演算機能を少なくとも実行可能なソフトウエアであっても良い。
【0015】
また、サーバ12は、後述するようにネットワーク13を介して現場側コントローラ14からセンサデータ(IDを含む)を受けると、後述する割り込み処理ルーチンの処理を実行し、対象物(計測対象)の一部の形状情報を求める。割り込み処理ルーチンの処理については、後に詳述する。
【0016】
現場側コントローラ14は、本実施形態では一般に使用されるコンピュータである。現場側コントローラ14は、一例として図示しないCPU、ROM、RAM、HDDを内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD等に記憶されているプログラムで規定される処理アルゴリズムを実行する。現場側コントローラ14は、キーボード、マウス等の操作部及び液晶ディスプレイなどの表示画面を備えている。本実施形態では、現場側コントローラ14は、現場監督その他の管理者により操作部を介して入力された指示に応じて、ネットワーク13を介してサーバ12及びモバイル端末16との間でデータ通信を行う。また、現場側コントローラ14は、後述するように複数のセンサ装置18iから通信回線を介して複数のセンサデータが送られてくると、複数のセンサデータの中から同一の対象物についてのセンサデータを抽出して一纏めにし(例えば、同一IDを使って紐付けしたうえで)、サーバ12に送信する。
【0017】
モバイル端末16は、建築現場の作業員が携帯している。モバイル端末16は、一般に使用される携帯用のコンピュータ、例えばタブレットPCである。モバイル端末16はスマートフォンでも良い。
【0018】
センサ装置18
iのそれぞれは、
図2に示されるように、角度センサ181、演算処理部182、無線通信部183及び例えばバッテリから成る電源部184、並びにこれらをその内部に収容する防水性の筐体185を備えている。電源部
184からのセンサ装置の各部への電力の供給は、筐体185に設けられた電源スイッチ186の操作によってオン・オフできるようになっている。なお、通信部183は無線に限られず、少なくとも一部が有線であっても良い。また、センサ装置18
iは必ずしも電源スイッチ186を設ける必要はなく、外部(サーバ12または現場側コントローラ14など)からの操作で電源のオン・オフを行うことができる構成としても良い。また、センサ装置18
iは本実施形態の構成に限られるものでなく、角度センサ181、通信部183などを一体に構成しなくても良いし、少なくとも角度センサ181、すなわちセンサ装置18
iの設置箇所の角度情報を計測する機能のみを有していれば良い。例えば、角度センサ181と、これ以外の他部(演算処理部182などを含む)を、無線又は有線の通信回線で接続し、通信回線を介して角度センサ181からのセンサデータの出力と、角度センサ181への電力供給を行うよう構成しても良い。この場合、角度センサ181ごとに他部を設ける必要はなく、複数の角度センサ181を、通信回線を介して同一の他部に接続しても良い。また、この他部の機能を現場側コントローラ14に持たせても良い。
【0019】
角度センサ181としては、本実施形態では、一例として3DMEMS(3次元マイクロエレクトロメカニカルシステム)傾斜角(傾斜角度)センサが用いられている。3DMEMS傾斜角センサは、3DMEMSテクノロジーを使って生み出された精密傾斜センサであり、以下では簡単に3DMEMSセンサとも呼ぶ。3DMEMS傾斜角センサの必要電力は極めて低くマイクロアンペア領域の電力消費量であり、無線用途に適している。角度センサ181としては、出力特性が対称な2個のMEMS加速度センサとASICを内蔵したものが用いられており、例えば3方向(θx方向、θy方向、θz方向)の傾斜角(α、β、γ)の情報を出力する。角度センサとしては、3DMEMS傾斜角センサに限らず、その他の種類の3次元傾斜角センサを用いても良い。また、角度センサは、計測対象物に応じて3次元傾斜角センサに限らず、2次元傾斜角センサ又は1次元傾斜角センサを用いても良い。この際、2次元傾斜角センサと1次元傾斜角センサを組み合わせて、あるいは2次元または1次元傾斜角センサを複数組み合わせて用いても良い。
【0020】
演算処理部182は、例えばマイクロコントローラ(MCU)から成り、図示しないCPU、メモリ装置(RAM、ROM)、入出力回路、及びタイマー回路を有する。演算処理部182は、ROMに記憶されているプログラムで規定される処理アルゴリズムを実行する。なお、演算処理部182を設けることなく、角度センサ181に内蔵されたASICに演算処理部182の機能を併せて持たせても良い。
【0021】
ここで、センサ装置18
iを鉄骨柱(以下、適宜、柱と略記する)に取り付けるための構造の一例について説明する。
図4(A)には、柱100に固定されたセンサ装置18
iの側面図が示されている。また、
図4(B)にはセンサ装置18
iの底面図が示されている。
【0022】
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、筐体185の底面には、例えばウレタン、シリコン、ゴムあるいはフェルトなどから成るプレート状のクッション部材188が張り付けられている。クッション部材188に対向する筐体185の底部には、凹部が複数箇所、例えば6箇所形成されており、それぞれの凹部内に永久磁石190が配置されている。センサ装置18
iは、クッション部材188を介して複数の永久磁石190の磁力によって柱100に取り付けられている。これにより錆などに起因して生じる柱100の取り付け面の凹凸等の影響を殆ど受けることなく、センサ装置18
iの取り付け時の傾き誤差の発生を効果的に抑制することができる。筐体185の底部近傍には磁気シールド部材189が設けられている。なお、永久磁石の数、形などは、特に問わないし、筐体185底部に形成される凹部の形状は永久磁石が配置できる形状であれば良い。また、クッション部材188は、センサ装置18
iを取り付ける柱の設置面の平坦度などによっては、必ずしも設けられてなくても良い。
【0023】
次に、本実施形態に係る形状取得方法の流れを、
図5のフローチャートに基づいて、説明する。センサ装置18
iは、
図3に示される鉄骨建築物110を構成する多数の柱のうち、計測対象として選択された柱に取り付けられる。以下では、
図6に示される1本の柱100
1及び柱100
1に取り付けられる3つのセンサ装置18
1~18
3を適宜取り上げて説明する。
図6では、柱100
1の+X側の面(以下、第1面又は計測面とも呼ぶ)に3つのセンサ装置18
1~18
3が下から上に並んで配置されている。
【0024】
前提として、現場側コントローラ14とサーバ12とのネットワーク13を介したやり取りにより、サーバ12は、鉄骨建築物110の設計図のデータ等をストレージ(HDDなど)内に格納している。また、サーバは、その設計図のデータに基づいて、計測の前提となる条件を現場側コントローラ14に指示している。この条件としては、計測対象の柱に対するセンサ装置の取り個数及び取り付け位置などが含まれる。
【0025】
まず、現場監督などの現場の管理者が、サーバからの指示に応じ、現場側コントローラ14を介して計測対象の柱及び計測箇所(計測ポイント又は計測点ともいう)を特定し、特定内容を現場の作業者に、メール等で知らせるとともに計測準備の実行を指示する(
図5のステップS1)。その指示内容は、モバイル端末16の表示画面にも表示される。ここで、柱の特定は、柱番号(001、002、……)を用いて行われ、計測箇所の特定は、下から順に番号(01、02、……)を用いて行われる。なお、各計測箇所は、例えば柱が建て込まれた状態でベースからの距離が予め定められた値となるように定められる。また、本実施形態では現場側コントローラ14を介して現場の作業者に指示を与えることとしたが、サーバ12からネットワーク13を介して、作業者が所持するモバイル端末16に作業指示を送っても良い。この場合、計測箇所などの特定内容は事前に管理者がサーバ12に入力しておくと良い。
【0026】
メール等の指示内容を確認した現場の作業者は、その指示に従って、計測対象の柱100
j
の計測箇所にセンサ装置18
iを順次取り付けるとともに、取り付けた各センサ装置18
iの初期設定を行う(
図5のステップS2)。ここで、各センサ装置18
iは、計測誤差が生じないように、予めキャリブレーション(較正)されているものとする。また、各センサ装置18
iは、通信回線(無線LAN)を介して現場側コントローラ14との通信が可能となるように、予め必要な設定が行われている。ただし、その設定後、スイッチ186は一旦OFF(オフ)に設定されている。ここで、センサ装置18
iの柱100
jへの取り付けは、本実施形態では、前述したように磁力を利用してワンタッチで行われる。なお、センサ装置18
iのスイッチ186をON(オン)にした状態(オン状態)で柱100
jに取り付けても良い。
【0027】
上記のセンサ装置18
iの初期設定は、そのセンサ装置18
iのスイッチ186をONにするとともに、表示操作部187を介して、そのセンサ装置18
iの識別情報を入力することを含む。例えば、
図6に示される3つのセンサ装置18
1、18
2、18
3のそれぞれには、識別情報(001-01)、(001-02)、(001-03)が個別に入力され、それぞれの演算処理部182は、入力された識別情報を、内部メモリ(RAM)に記憶する。これによって、センサ装置18
iは、いつでも計測ができるスタンバイ状態となる。なお、センサ装置18
iをオン状態のまま、取り付けた場合には、スイッチ186の操作は不要である。
【0028】
計測に用いられる全てのセンサ装置の取り付け及び初期設定が終了すると、指示された計測準備が終了した旨を、現場の作業者が現場監督などの管理者にメール等で連絡する(
図5のステップS3)。
【0029】
次いで、計測対象の柱100
jのそれぞれの計測ポイント(計測点)における傾斜角の情報を、センサ装置をそれぞれ用いて取得する(
図5のステップS4)。
【0030】
計測対象の柱(すなわち、対象物としての柱)のそれぞれの計測ポイントにおける傾斜角の情報の取得が終了すると、取得した傾斜角の情報を用いて計測対象の柱それぞれの柱頭の位置と形状を算出する(
図5のステップS5)。本実施形態では、柱の形状としてセンサ装置が取り付けられた一面の2次元形状(XZ面内の形状)を算出するものとする。
【0031】
柱の形状の算出が終了すると、算出した形状に基づいて、基準(
図10のZ軸参照)に対する柱頭の乖離量及び基準からの乖離量(柱の撓み量に相当)が最大の点及びその乖離量を求める(
図5のステップS6)。
【0032】
上記ステップS4からステップS6は、本実施形態では、形状取得システム10によって行われるので、以下、形状取得システム10の構成各部の動作について、説明する。
【0033】
まず、ステップS4の処理に用いられる各センサ装置の動作について、
図7のフローチャートに基づいて、説明する。このフローチャートは、演算処理部182のCPUによって実行される、プログラムで規定される処理アルゴリズムを示すものである。
図7のフローチャートで示される処理アルゴリズムが開始されるのは、便宜上、前述の各センサ装置の初期設定が終了したときであるものとする。
【0034】
まず、ステップS22において、計測開始の指示が入力されるのを待つ。計測開始の指示は、管理者により現場側コントローラ14を介して入力される。管理者は、前述のステップS3において作業者から計測準備が終了した旨の連絡を受けることで、計測準備が完了したことを認識できるので、この時点以後、適切なタイミングで各センサ装置18iに対して計測開始の指示を、操作部を介して現場側コントローラ14に入力する。
【0035】
そして、現場側コントローラ14から、通信回線及び無線通信部183を介して計測開始の指示が入力されると、ステップS24に進む。ステップS24では、角度センサ181に計測を指示し、角度センサ181で計測される傾斜角(最大3軸のうちの少なくとも1軸)の情報を取り込む。
【0036】
次のステップS26では、取り込んだ出力情報にID(識別符号)を付して1つのデータとして、無線通信部183を介して現場側コントローラ14に送信する。ここで、IDとしては、初期設定時に作業者によって入力され、RAM内に格納されている識別情報に基づいて作成された番号(符号)が用いられる。例えば、センサ装置181、182、183では、IDとして、それぞれ識別情報001-01、001-02、001-03に対応する番号(符号)が作成される。
【0037】
ステップS26の処理が終了すると、処理を終了する。これにより、センサ装置18iは、次の計測開始の指示が入力されるまで、待機状態になる。
上記のステップS22~S26までの処理が、全てのセンサ装置18iで行われる。
【0038】
現場側コントローラ14では、送られてきたセンサデータを順次RAMの所定の格納領域に格納する。複数のセンサデータが同時に送られてきた場合には、現場側コントローラ14では、時分割処理によりセンサデータをRAMの所定の格納領域に同時並行的に格納する。そして、新たに格納されたデータは、同一の柱について上中下3箇所の計測ポイントについてのセンサデータがそろった段階で、現場側コントローラ14によってネットワーク13を介してサーバ12に送信される。例えば、柱1001について説明すれば、識別情報001-01、001-02、001-03に対応するIDをそれぞれ含む3つのデータが一塊でサーバ12に送信される。
【0039】
現場側コントローラ14は、サーバ12に送信する際に、送信されるデータに対応する柱の識別データを、表示画面に表示するようにしても良い。
【0040】
次に、ステップS5及びステップS6の処理に用いられるサーバの動作について、
図8のフローチャートに基づいて、説明する。このフローチャートは、サーバ12のCPUによって実行される、プログラムで規定される割り込み処理ルーチンの処理アルゴリズムを示すフローチャートである。
この割り込み処理ルーチンは、例えば現場側コントローラ14から送られてきたセンサデータの取り込みが終了したタイミング毎に実行される。なお、割り込み処理ルーチンを実行するタイミングはこれに限られず、センサデータの取り込みが複数回終了したタイミングで行っても良い。
【0041】
まず、ステップS32では、取り込まれたセンサデータを用いて、柱100
jの形状のデータを算出する。
ここで、柱の形状の算出方法の一例について説明する。ここでは一例として、柱100
1のセンサ装置18
1~18
3が取り付けられた第1面(以下、計測面Wsと表記する)のXZ面内の形状を算出する場合について簡単に説明する。ここで、XZ面内の形状を取り上げるのは、柱100
1では。計測面Ws上に上下方向に沿って3つのセンサ装置18
1~18
3が配置されているためである。センサ装置18
iは、3DMEMSセンサからなる角度センサ181を含むため、
図9の左側に示される計測面Wsの各計測点(計測ポイント)における法線ベクトルの傾斜角β
iを、
図9の右側に示されるように、センサ装置18
iの傾き(重力方向の軸を基準とする角)として出力する。したがって、従来の三次元測量機による計測などのような基準の設定は不要である。
【0042】
図10に示されるように、センサ装置18
1、18
2、18
3のそれぞれを、点P
1、P
2、P
3で表し、センサ装置18
1、18
2、18
3のそれぞれが取り付けられる計測面Ws上の位置を、P
1(X
1、Z
1)、P
2(X
2、Z
2)、P
3(X
3、Z
3)とすると、計算により、点P
2のX位置X
2、点P
3のX位置X
3は次のように求めることができる。なお、XZ座標系の原点は、形状を求めるべき計測面Wsの下端点に設定されているものとする。
【0043】
X2=X1+tan{(β1+β2)/2}×(Z2-Z1)……(1)
X3=X2+tan{(β2+β3)/2}×(Z3-Z2)……(2)
【0044】
しかるに、
図10(及び
図9)では説明を視覚的にわかりやすくするために、特にセンサ装置18
1で計測される傾斜角β
1が実際より大きく図示されている。実際には、傾斜角β
1は、微小角であるため、点P
1のX位置X
1は、X
1≒Z
1tanβ
1≒0となり、これを、式(1)に代入することにより、X
2が既知の値Z
2、Z
1、β
1、β
2から算出でき、さらに求めたX
2を式(2)に代入することにより、X
3が既知の値X
2、Z
2、Z
3、β
2、β
3から算出できる。
【0045】
次に、求めた点P1(X1、Z1)、P2(X2、Z2)、P3(X3、Z3)を、適宜な関数を用いてフィッティングすることで、計測面WsのXZ面での形状を求めることができる。
【0046】
なお、これまでの説明では、センサ装置18iを計測面上で3つ上下方向に沿って配置する場合について説明したが、センサ装置18iを計測面上で2次元配置することも考えられる。特に、対象物の計測面が3次元的な曲面である場合には、センサ装置を計測面上で2次元配置することが必要である。しかるに、実際には、センサ装置18iは、計測面Wsの法線ベクトルの傾斜角(3次元の傾斜角)を出力するので、計測点座標と法線ベクトルの計測値から対象物の計測面の形状(表面形状)を導出することも可能である。例えば、各計測点の表面スロープとその1階積分により各計測点の基準面に対する高さを求めることによって、形状を算出しても良いし、計測により得られた同一対象物についての複数のデータから得られる傾斜分布のデータにフィッティングした関数を、積分系に変えた関数に基づいて対象物の形状を求めても良い。フィッティング関数としては、例えば微分Zernikeなどの関数を用いることができる。対象物の計測面における有限数の離散した計測点の座標と法線ベクトルの実測値を用いて、例えばフーリエ級数展開によって表された近似曲面が、各計測点での誤差が最小になるように次数と係数を最適化することによって、形状を算出しても良い。その他、本実施形態に係る形状取得方法では、複数の計測点における傾斜角を用いて、形状を算出することができるのであれば、種々の関数を用いる種々の方法を用いることが可能である。
【0047】
図8の説明に戻り、次のステップS34では、算出した形状に基づいて、基準(ここでは、Z軸)に対する柱頭の乖離量及び基準からの乖離量が最大の点及びその乖離量(柱の最大撓み量に相当)を求める。
【0048】
そして、次のステップS36では、求めたデータ(形状、柱頭の乖離量、乖離量最大の点及びその乖離量のデータ)を、柱番号と関連付けて、ストレージ(HDDなど)に格納した後、割り込み処理ルーチンを抜ける。
【0049】
図8の割り込み処理ルーチンは、本実施形態では柱(対象物)のセンサデータの取り込みのタイミング毎に行われる。すなわち、全ての計測対象の柱(対象物)それぞれについてセンサデータの取り込みのタイミング毎に、形状の算出、柱頭の乖離量、最大乖離量(最大撓み量に相当)の算出、並びに柱番号(対象物の番号)と関連付けた算出結果の記憶が、繰り返し行われることになる。そこで、予めストレージの所定の領域に、対象物の番号(柱番号)に対応付けられた、書き換え可能なデータテーブルを用意しておき、算出結果の記憶の際に、対象物の番号(柱番号)に対応付けられた領域を繰り返し上書きする(すなわち記憶内容を更新する)こととしても良い。さらに、サーバ装置12は、ストレージに格納された最新の情報を設計データとの関連付けたテーブルデータとして、データテーブルの作成、その更新が行われる度に、ネットワーク13を介して現場側コントローラ14に送信することとしても良い。この場合には、現場側コントローラ14は、送られてきたテーブルデータを用いて、例えばRAM、HDDなどの記憶装置内に格納してデータベースを作成、更新するようにすることができる。
【0050】
この場合、その作成、更新されたデータベースに基づいて、対象物(柱)の形状の経時変化などの監視も可能となる。また、形状に基づいて、強度計算を行い、対象物(柱)に生じる応力を算出することなども可能になる。
【0051】
なお、長期にわたり経時変化の監視などを行う場合には、各センサ装置に対しての電力供給(給電)が必要となるが、この場合の対応策として、例えばMEMS振動発電子を用いた給電、電磁誘導方式送電側と受電側との間で発生する誘導磁束を利用して電力を送電するワイヤレス給電(非接触給電)、太陽光による発電、あるいはLANケーブルを用いた有線LAN給電などを行っても良い。
【0052】
本実施形態において、
図11に示されるように、センサ装置18
iを、柱100の長手方向に伸びる互いに直交する2つの面(X軸に直交する第1面及びY軸に直交する第2面)の同じ高さ位置に配置することとしても良い。
【0053】
例えば、第1面にセンサ装置181、182、183が配置され、第2面にセンサ装置184、185、186が配置されるものとする。この場合、センサ装置181、182、183の出力に基づいて第1面の形状の情報を、センサ装置184、185、186の出力に基づいて第2面の形状の情報を、前述の割り込み処理ルーチンにてそれぞれ求めても良い。
【0054】
ここで、各センサ装置は、3次元の傾斜角を出力するので、第1面にセンサ装置181、182、183を装着するのみでも、理論上は、第2面の形状をも求めることが可能であるが、実際には、センサ装置は取り付け面の法線回りに取付時の回転誤差が生じ得るので、第1面の形状と第2面の形状とを知りたい場合には、両方の面にセンサ装置を装着すると良い。また、第1面と第2面を既存の測量機で測定した結果を初期値とし、その結果からの変動を第1面に取り付けたセンサで継続的に測定し、第1面と第2面の変動結果とすることも可能である。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る形状取得方法によれば、柱に取り付けられた複数のセンサ装置で取得した柱の複数の計測ポイントにおける傾斜角の情報を用いて所定の演算を行うことにより、対象物の一部、例えばセンサ装置が取り付けられた面(計測面)の形状ひいては、柱の形状及び計測領域の全域での基準面からの最大乖離量などの取得が可能になる。これにより、光を用いることなく柱の形状を求めることが可能となり、光を用いる三次元計測機などが不要となり、障害物等があってもその影響を受けることがなくなる。
【0056】
また、計測面の形状、柱の形状及び最大乖離量などの取得を繰り返し行うことで、柱の管理(絶対値管理・経時変化管理)が可能になる。特に、上記実施形態に係る形状取得システム10を用いて本実施形態に係る形状取得方法を実施する場合には、計測の準備処理を除き、自動的な計測面の形状ひいては、柱の形状の取得、及び計測領域の全域での基準からの乖離量の取得、並びに柱の管理(絶対値管理・経時変化管理)が可能になる。したがって、上記実施形態に係る形状取得システム10によると、人手による鉄骨工事測量作業をなくし、これにより人手不足を改善し、かつ鉄骨工事の工期短縮を図ることが可能になる。
【0057】
なお、本実施形態に係る形状取得方法によると、鉄骨柱の計測面の形状を外装工事の開始に先立って取得することができるので、外装パネルの治具を用いた調整を工場内で行うことなども可能になる。
【0058】
なお、上記実施形態では、各センサ装置18iに対し、それぞれの初期設定時に表示操作部を介して識別情報を入力する場合について例示したが、センサ装置に対する識別情報の入力(あるいはRAM(メモリ)への記憶)の時期、方法などは特に問わないが、本実施形態に用いるセンサ装置は、そのセンサ装置の識別符号(ID)を含めたデータを出力することが好ましい。なお、上記実施形態では、各センサ装置の識別符号(ID)として、各センサ装置が取り付けられる対象物の識別符号及びその対象物における取り付け位置の識別符号を含むものとしたが、対象物の識別符号は含まれていなくても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、現場側コントローラ(端末装置)14が、複数のセンサ装置18iから出力される複数のセンサデータに含まれるIDに基づいて、同一の対象物についてのセンサデータを一塊でサーバ12(解析装置)に送信する場合について説明したが、これに代えて、解析装置が、受信した複数のセンサデータの中からセンサデータに含まれるIDに基づいて同一の対象物についての複数のセンサデータを取り出し、取り出した複数のセンサデータに含まれる傾斜角の情報を用いて演算により対象物の形状情報を求めるような構成を採用することもできる。本実施形態では、傾斜角情報を取得する複数の計測点の個数と同数のセンサ装置を用いるものとしたが、必ずしも同数とする必要はない。この場合、1つのセンサ装置を用いて2つ以上の計測点での傾斜角情報を取得すれば良い。
【0060】
《第2の実施形態》
本第2の実施形態では、上記第1の実施形態に係る形状取得方法の利用方法の一例として複数節の柱(鉄骨柱)を含む鉄骨造の建方を取り上げて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一又は同等の構成部材については、同一の符号を用いるとともにその詳細説明を省略する。
【0061】
図12には、この鉄骨造の建方を実施するためのシステム10Aの構成の一例が示されている。
【0062】
システム10Aは、インターネットなどのネットワーク13を介して互いに接続されたサーバ12、現場側コントローラ14、モバイル端末16、複数のセンサ装置18
i(i=1、2、3、……)及び複数の駆動装置50
p(p=1、2、3、4……)を含んで構成されている。
図12では複数のセンサ装置18
iのうち、3つのセンサ装置18
1~18
3が代表的に示され、複数の駆動装置50
pのうち、4つの駆動装置50
1~50
4が代表的に示されている。複数のセンサ装置18
i及び複数の駆動装置50
pのそれぞれは、無線LAN等の通信回線を介してネットワーク13に接続されている。なお、通信回線はすべてが無線でも良いが、少なくとも一部が有線であっても良い。複数の駆動装置50
pそれぞれは、後述する建方治具30
p(p=1、2、3、4……)に個別に取り付けられる。
【0063】
本第2の実施形態では、柱100として、矩形の断面を有する角柱が用いられており、柱100
jの長手方向に延びる4つの面には、柱頭部と柱脚部にエレクションピース102(102a、102b)がそれぞれ突設されている(
図13及び
図14参照)。各エレクションピース102は柱100の各面と直交し、上下方向へ伸びている。本第2の実施形態では、便宜上、柱頭部に設けられたエレクションピース102をエレクションピース102aとし、柱脚部に設けられたエレクションピース102をエレクションピース102bとしている。
【0064】
図13に示されるように、建方において、下節の柱(以下、下節柱と称する)100
mのエレクションピース102aと、下節柱100
mの上に建て込まれる上節の柱(以下、上節柱と称する)100
nのエレクションピース102bとは、建方治具30
pを用いて、柱の長手方向に延びる4つの面のそれぞれにおいて連結される。
【0065】
建方治具30
pは、
図13に示されるように、本体フレーム32と、該本体フレーム32に設けられた倒れ調整ボルト
(傾き調整ボルト)34、目違い調整ボルト36、転倒防止ボルト38及び固定ボルト40などの各種ボルトとを備えている。本実施形態では、これらのボルトとして、一例として六角穴付きボルトが用いられる。
【0066】
本体フレーム32は、エレクションピース100a、100bの厚さより幅の広い中空部が幅方向の中央部に形成された所定方向(
図13では、上下方向)に延びる枠部材である。
【0067】
固定ボルト40は、建方治具30pを取り付け対象のエレクションピースに対して起伏回動可能(揺動可能)に取り付けるためのボルトである。固定ボルト40は、頭部と軸部とから成り、軸部は、大径部と小径部とを有する段付き円筒状の形状を有する。大径部は、軸部の頭部側の一部に設けられ、その外周面にねじ部が形成され、ねじ部の頭部と反対側、すなわち先端側が小径部となっている。
【0068】
建方治具30
pを、取付対象のエレクションピース(
図13では、エレクションピース102a)に取り付ける際に、固定ボルト40は、先端側(小径部)から本体フレーム32の一方の側面の下端部近傍に形成されたねじ穴の内部に挿入され、ねじ部がそのねじ穴にねじ込まれる。固定ボルト40の小径部は、エレクションピース102aに形成された長孔を介して本体フレーム32の他方の面に形成された孔に挿入される。建方治具30
pが、エレクションピース102aに取り付けられた状態では、小径部の先端は、本体フレーム32の外側に所定量露出している。これによって建方治具30
pが、固定ボルト40の軸心を中心として起伏回動可能な状態で取付対象のエレクションピース102aに取りつけられるようになっている(
図14参照)。
【0069】
本体フレーム32の中空部の長手方向の中央部の内部には押上部材44が配置されている。押上部材44は、
図13に示される下節柱100
mのエレクションピース102aと上節柱100
nのエレクションピース102bとの建方治具30
pによる連結状態(すなわち建方治具30
pの上下節の柱に対する取り付け状態)では、エレクションピース102b、102a間の空間に位置する。押上部材44は、一端(
図13における下端)が支持ピンを介して本体フレーム32に回動(揺動)自在に支持された可動レバー46と、可動レバー46の先端部に一端が連結された押圧レバー48を含む。押圧レバー48は、可動レバー46に対して回動自在に連結されている。押圧レバー48の連結部とは反対側の他端(
図13における上端)には貫通ピンが取り付けられている。貫通ピンの両端は、本体フレーム32の両側壁に形成された上下方向のガイド孔に挿入され、貫通ピンはガイド孔に沿って上下動可能である。押上部材44は、V字状の形状を成す状態で本体フレーム32に対して取り付けられている。可動レバー46と押圧レバー48の連結部を押圧することで、押上部材44の上端と下端との距離が長くなるように、押上部材44の全体形状が変化する(変形する)構成となっている。
【0070】
可動レバー46と押圧レバー48の連結部を覆うように断面U字状の支持部材42が本体フレーム32に固定されている。支持部材42の一面にねじ穴が形成されており、そのねじ穴に倒れ調整ボルト34がねじ込まれている。
【0071】
図13に示される建方治具30
pの上下節の柱に対する取り付け状態では、倒れ調整ボルト34を時計回りに回転させる(ねじ込む)ことにより、押上部材44の押圧レバー48によって上節柱100
nのエレクションピース102bが押し上げられる構成となっている。押し上げ部材の構成としては、この他、カムを用いた構成なども考えられ、その構成は特に問わない。
【0072】
なお、本実施形態では、建方治具30
pが
図13と上下逆向きで上下節の柱に取り付ける使用方法も採用されるが、この場合であっても、倒れ調整ボルト34を時計回りに回転させる(ねじ込む)ことにより、押上部材44の変形によって上節柱100
nのエレクションピース102bが押し上げられる構成となっている。
【0073】
目違い調整ボルト36は、本体フレーム32の
図13における上半部の両側面に各1つ、本体フレーム32の下半部の一方の側面に1つの合計3つ設けられている。目違い調整ボルト36は、本体フレーム32に対してねじ穴を介してねじ込まれている。上半部の2つの目違い調整ボルト36は、時計回りに回転させることで上節柱のエレクションピース102bの両側面にそれぞれの先端部が圧接するようになっており、エレクションピース102bを互いに逆向きに押圧する。したがって、目違い調整の際には、2つの目違い調整ボルト36は、互いに逆向きに回転させながら調整を行う必要がある。下半部の1つの目違い調整ボルト36は、時計回りに回転させることで下節柱のエレクションピース102aの一方の面を押圧する。
【0074】
図13に示されるように、建方治具30
pがエレクションピース102a、102bに取り付けられ、上下節の柱を連結した後、不図示の支持部材を介して駆動装置50
pが建方治具30
pに取り付けられる。具体的には、支持部材は上述した各ボルトの操作を妨害しない状態で、かつ本体フレーム32に対する相対変位が生じにくい姿勢で本体フレーム32に取り付けできるように構成されている。この支持部材には、傾き調整ボルト34の頭部の頂面に対向する位置に円形の開口が形成されており、該開口を介して傾き調整ボルト34の六角穴に嵌合する六角棒レンチ状の部材の一端が接続されている。六角棒レンチ状の部材の他端は回転軸部を介して駆動装置50
pが備える減速機構に接続されている。減速機構は、駆動装置50
pが備えるモータに接続されている。本実施形態では、駆動装置50
pは、MPU(制御用マイコン)を有しており、このMPUに回転軸部の回転量を計測するセンサ及びモータが電気的に接続されている。
【0075】
本実施形態では、下節柱100m及び上節柱100nの4面にそれぞれ配置され、エレクションピース102a、102bを連結する4つの建方治具30pの本体フレーム32に不図示の支持部材をそれぞれ介して4つの駆動装置50pが個別に取り付けられる。
それぞれの駆動装置50pのMPUは、通信部を介してネットワーク13に接続されている。
【0076】
本実施形態では、ネットワーク13を介して外部端末、一例としてサーバ12から与えられた指令値に従って、それぞれの駆動装置50pが有するモータの回転量を制御する。勿論、回転量は、それぞれの駆動装置50pが有するセンサで計測されるので正確なモータ回転量の制御、すなわち傾き調整ボルト34の調整が行われる。
【0077】
なお、建方治具30pと同様の構成を有する鉄骨柱傾き調整装置の詳細な構成が、例えば特開2001-355340号公報に開示されている。建方治具30pについての更なる詳細説明は省略する。
【0078】
次に、鉄骨造の建方について、n(≧2)節の鉄骨(以下、適宜n節柱と表記する)の建て方を中心として、
図15のフローチャートに沿って説明する。
図15は、n節柱の建方の処理の流れを示す。n節柱の建て方が開始される前提として、(n-1)節柱の建方が終了している。ここでは、前提として、下節柱(ここでは(n-1)節柱)100
mは、鉛直に建て込まれているものとする。
【0079】
まず、ステップS102において、上節柱(ここではn節柱)100
nを、クレーンで吊り上げて地切りする。
次のステップS104では、下節柱100
mの柱頭のエレクションピース102a(又は上節柱100
nの柱脚のエレクションピース102b)に建方治具30
pを組み付ける(取り付ける)。4面のエレクションピース102aに4つの建方治具30
pがそれぞれ組付けられる(
図14参照)。
【0080】
次のステップS106では、上節柱100
nをクレーンで吊込み、建方治具30
pで下節柱100
mに仮固定する。すなわち、上節柱100
nを吊込み、下節柱100
mの柱頭のエレクションピース102a(又は上節柱100
nの柱脚のエレクションピース102b)に取り付けられた4つの建方治具30
pを開いた状態(
図14参照)で上節柱100
nを下節柱100
mの上に載せ、上節柱100
nのエレクションピース102b(又は下節柱100
mのエレクションピース102a)を4つの建方治具30
pの本体フレーム32でそれぞれ包み込み、上節柱100
nの柱脚と下節柱100
mの柱頭にそれぞれ設けられた4組のエレクションピース102a、102b同士を、4つの建方治具30
pでそれぞれ連結する。
【0081】
次のステップS108では、柱の目違い調整を実施する。目違いとは、下節柱100mの柱頭と上節柱100nの柱脚との水平面内の位置ずれを指し、この目違いの調整は、上節柱100nをクレーンで吊ったまま、上節柱100nを下節柱100mの上に載せた状態で、上下節の柱が見かけ上1本の柱になるように、下節柱100mに対する上節柱100nのX軸方向、Y軸方向の位置を4つの建方治具30pそれぞれの複数の目違い調整ボルト36の回転方向及び回転量を、例えば目視にて調整することにより行う。この調整により、下節柱100mのエレクションピース102aと上節柱100nのエレクションピース102bとが、4面のそれぞれで略鉛直線上に位置する。別の言い方をすれば、目違い調整とは、下節柱100mのエレクションピース102aと上節柱100nのエレクションピース102bとが、4面のそれぞれで略鉛直線上に位置するように、下節柱100mに対する上節柱100nのX軸方向、Y軸方向の位置ずれを4つの建方治具30pそれぞれの複数の目違い調整ボルト36の回転方向及び回転量を、調整することであるとも言える。
【0082】
この後、クレーンが解放される(ステップS110)。なお、柱の重量が所定値より軽い場合には、目違い調整の実施前にクレーンを開放することも可能である。
【0083】
次のステップS112では、柱の倒れ調整を実施する。この倒れ調整は、本実施形態では、サーバ12と4つの建方治具30pのそれぞれに取り付けられた駆動装置50pのMPUとによって、自動で行われる。
【0084】
これをさらに詳述する。一例として、
図11に示される柱100と同様の配置で、6つのセンサ装置18
iが取り付けられた上節柱100
nの倒れ調整について説明する。
【0085】
サーバ12は、上節柱100nに取り付けられた6つのセンサ装置18iに計測開始を指示して6つのセンサ装置18iからのセンサデータを取得する。
次いでサーバ12は、上節柱100nの第1面に取り付けられた3つのセンサ装置18iから出力されるセンサデータに基づいて、前述した方法により上節柱100nの第1面の形状情報を求める。また、サーバ12は、上節柱100nの第2面に取り付けられた3つのセンサ装置18iから出力されるセンサデータに基づいて、前述した方法により上節柱100nの第2面の形状情報を求める。ここで、それぞれのセンサ装置18iのセンサデータに含まれるIDとセンサ装置18iの取り付け対象の柱、取付位置(すなわちセンサ装置の計測ポイント)との関係は、サーバ12によって管理されている。
【0086】
センサ装置18iは、柱100の建て込み前又は建て込み後に柱100に取り付けられるが、その取付位置には、マークが付されており、そのマークの位置は、設計情報に基づいてサーバ12が定めている。また、どのセンサ装置18iをどの柱のどの位置に取り付けるか(あるいは取り付けたか)の情報は、前述した第1の実施形態と同様、センサ装置18iの取付を担当する作業者がセンサ装置18iの初期設定を行い、その初期設定時に入力した情報をセンサデータにID情報として含めることとしても良い。あるいは、センサ装置18iの出荷段階で、センサ装置18iに柱番号と取付位置の情報を予め演算処理部182に入力しメモリに記憶させるとともに表示操作部187の画面上に柱番号と取付位置の情報を表示するようにしておいても良い。
【0087】
次いで、サーバ12は、上節柱100nの第1面及び第2面の形状情報に基づいて上節柱100nの柱頭の基準からのX軸方向及びY軸方向の位置ずれ量(Δx、Δy)を求め、その位置ずれ量がほぼゼロとなる(あるいは所定の許容値内に収まる)ように、4つの建方治具30pを用いて、上節柱100nの傾斜角を調整する。この調整は、サーバ12が位置ずれ量(Δx、Δy)を上節柱100nの傾斜角に換算し、その傾斜角が相殺されるようなそれぞれのモータの制御量の指令値を、4つの駆動装置50pそれぞれのMPUに与えることで、4つの建方治具30pの傾き調整ボルト34の回転を並行して制御することで実現される。本実施形態では4つの建方治具30pの傾き調整ボルト34の回転を並行して制御することができるので、従来のように複数人の共同作業により4つの建方治具30pそれぞれの傾き調整ボルト34の回転調整を1つずつ順番に行う場合に比べて、上節柱100nの傾斜角調整を迅速に、かつ正確に行うことができる。
【0088】
次のステップS114では、建方治具30pを用いて上節柱100nと下節柱100mを固定する。この固定は、4つの建方治具30pが備える固定ボルト40及び転倒防止ボルト38を専用の工具を用いて仮締めする(軽く締める)ことで行われる。
上記のステップS102~S114までの処理は、複数の上節柱(n節柱)100nについて順次(又は一部並行して)行われる。
【0089】
図16には、複数の上節柱(n節柱)100
nについてステップS114までの処理が終了した状態が、一部省略して示されている。また、
図16では、建方治具も図示が省略されている。
【0090】
次のステップS116では、梁入れ、及び梁入れ後の再計測が行われる。ここで、梁入れとは、一般に2つの柱の間に梁用鉄骨を配置し、該梁用鉄骨の両端を2つの柱にそれぞれ連結することを指す。本実施形態では、
図16に示されるように、梁用鉄骨(鉄骨梁)として、鉄骨梁の両端部に位置すると共に柱100に接合される一対の梁端部材200aと、その一対の梁端部材200aに一端と他端が接合される梁中央部材200b(
図16中の二点鎖線部)とを有する梁200が用いられている。したがって、本実施形態では、梁入れとは、2つの柱100にそれぞれ接合された2つの梁端部材200aの間に中央部材200bを配置し、中央部材200bと両側の梁端部材200aのそれぞれとを梁継手で連結することを意味する。しかるに、梁用鉄骨に不可避的に存在する製造誤差によって、梁入れの際、梁用鉄骨の両端に連結された柱100に作用する水平力のために、柱100の傾斜角が梁入れ前から変化することがある。この変化を確認するため、上記の梁入れ後の傾斜角の再計測が必要となる。
【0091】
図15の説明に戻る。次のステップS118では、再計測の結果により、必要に応じて、梁入れ後の再調整を実施する。梁入れ後の再調整は、柱の目違いの調整、柱の倒れ調整が含まれ得る。柱の目違いの調整は、前述と同様、4つの建方治具30
pそれぞれの複数の目違い調整ボルト36の回転量及び回転方向を、目視で調整することで行われる。一方、柱の倒れ調整は、自動で行われる。具体的には、サーバ12と、複数の上下節柱の連結に用いられている各4つの建方治具30
pのそれぞれに取り付けられた駆動装置50
pのMPUとによって、前述のステップS112と同様にして、調整対象の複数の上節柱100
nについて、並行して自動で行われる。これにより、調整対象の複数の上節柱100
nの傾斜誤差が一度にほぼゼロとなる(又は予め定めた許容値内に収まるよう)に調整される。
【0092】
次のステップS120では、梁継手及び柱継手の本締めを実施する。梁継手の本締めは、梁継手の高力ボルトを締めつけることで行われ、柱継手の本締めは、4つの建方治具30pの転倒防止ボルト38及び固定ボルト40(及び必要に応じ目違い調整ボルト36)を本締めすることで行われる。この本締め後、上節柱100nの傾斜角の計測を行い、傾斜誤差が、予め定めた許容値内に収まっていることを確認する。ここで、許容値は、仕様値(長さ10mの鉄骨で柱頭の位置ずれ10mm以内)とは異なり、仕様値より小さくゼロより大きい値が定められる。ここで、上記の再調整(ステップS118)の段階で、傾斜誤差がほぼゼロとなる(又は予め定めた許容値内に収まるよう)に自動調整されているので、通常、柱の傾斜誤差は、許容値内に収まっている。
【0093】
所定時間経過後、上節柱100nを下節柱100mに対して溶接後、4つの建方治具を取り外す(ステップS122)。その後、エレクションピースの切断が行われることとなる。溶接後にも、上節柱100nの傾斜角が、許容値内に収まっていることを確認する目的で、上節柱100nの傾斜角の計測が行われる。ここで、上記ステップS120で傾斜誤差が許容値内であることが確認されているので、通常は、上節柱100nの傾斜誤差は、許容値内に収まっている。しかるに、本締め終了後、溶接が開始されるまでにはかなりの時間が経過するので、上節柱100nの傾斜誤差、換言すれば柱頭の位置ずれ量が許容値内に収まっていない場合もあり得る。このような場合、溶接が終了しているので、もはや再調整は困難であるが、傾斜角の計測結果を後の工程で有効に利用することができる。例えば、その傾斜角の計測結果に基づいて、その上節柱(ここでは、(n+1)節柱)の(柱頭位置の)建て入れ目標値にその傾斜誤差(の影響)をキャンセルするためのオフセットを設定することなどが可能である。
【0094】
これまでの説明は、下節柱100mは、鉛直に建て込まれていることを前提として行ったが、実際には、下節柱100mの建て込み終了時点で鉛直であったとしても、下節柱100mの建て込み終了から上節柱100nの建て込みが開始されるまでには、ある程度の時間が経過することに起因して上節柱100nの建て込みが開始される時点では、下節柱100mが鉛直でない場合がある。
【0095】
そこで、所定の配置で建てられた複数の下節柱100mそれぞれの上に複数の上節柱100nを個別に建て込むに際し、複数のセンサ装置18iを用いて複数の下節柱100mそれぞれの長手方向に伸びる互いに交差する(例えば互いに直交する)第1面と第2面の形状情報を取得し、取得された形状情報に基づいて、複数の下節柱100mそれぞれの第1面に直交する方向(例えば、X軸方向)に関する柱頭の基準からの第1位置ずれ量及び第2面に直交する方向(例えば、Y軸方向)に関する第2位置ずれ量を求め、これら第1位置ずれ量及び第2位置ずれ量を考慮して、複数の上節柱100nの建て入れ目標値を新たに定めることとしても良い。この場合において、例えば第1位置ずれ量及び第2位置ずれ量が相殺されるように上節柱の建て入れ目標値を新たに定めることができる。
【0096】
ここで、一例として、1節柱100
mの上に2節柱100
nを建てる場合の1節柱100
mの柱頭のX軸方向に関する位置ずれ量を相殺するための2節柱100
nの建て入れ目標値の新たな設定について、
図17に基づいて説明する。
【0097】
下節柱である1節柱100
mの第1面100aに取り付けられた3つのセンサ装置18
iからのセンサデータを用いて算出した1節柱100
mの第1面100aの形状から1節柱100
mの柱頭のX軸方向の位置ずれ量が+Δx(
図17参照)であったとする。実際には、このΔxは、仕様値より小さい値であるから10mの長さの鉄骨柱の場合で10mmより小さい値である。
図17の1節柱100
m、2節柱100
nの曲がり形状は、説明の便宜上、相当誇張して描かれている。
【0098】
1節柱100
m及び2節柱100
nそれぞれの長さをLとすると、
図17に示されるように、+Δx/L=tanθyが成立し、これを書き直すと、+Δx=L・tanθyとなる。したがって、これを相殺するため、-Δx=L・tan(-θy)を、2節柱100
nの柱頭のX軸方向に関する目標位置として改めて設定する。
【0099】
上述の2節柱100
nの柱頭のX軸方向に関する目標位置の新たな設定は、
図17からも明らかなように、2節柱100
nの傾き(傾斜角度)の目標値を(-θy)とすることと、実質的に(結果的に)一致する。ここでは、θyは、時計回り方向がプラスであるとしている。θyは、センサ装置18
iで計測される各計測点における柱の第1面の傾斜角β
iではなく、柱の全体的なY軸回りの傾き(柱の第1面の下端と上端とを結んだ直線のXZ面内におけるZ軸に対する傾き)を指す。
【0100】
したがって、1節柱(下節柱)100mの第1面の形状から1節柱100mのX軸方向に関する柱頭位置(位置ずれ量)を求め、この柱頭位置(位置ずれ量)から傾きθyを求め、この傾きθyを相殺する傾斜角(-θy)を2節柱(上節柱)100nの建て入れ目標値(傾斜角の目標値)として新たに設定すれば、結果として、上述した位置ずれ量+Δx=L・tanθyを相殺する2節柱100nの柱頭のX軸方向に関する目標位置を新たに設定したことになる。
【0101】
1節柱100mのY軸方向に関する柱頭の位置ずれ量を相殺するための2節柱100nの建て入れ目標値の新たな設定も、上記と同様にして行うことができる。なお、場合によっては、1節柱100mの柱頭のX軸方向及びY軸方向の一方の位置ずれ量がゼロの場合もあり得る。そのような場合、X軸方向及びY軸方向の他方に関してのみ、2節柱(上節柱)100nの新たな建て入れ目標値(傾斜角の新たな目標値)を設定しても良い。
【0102】
また、前述した傾き調整ボルト34の自動調整の手法を用いて、1節柱100mのX軸方向及びY軸方向に関する位置ずれ量を相殺するために新たに設定された2節柱(上節柱)100nのX軸方向及びY軸方向に関する目標位置に2節柱100nの柱頭を位置させることを実現する場合には、サーバ12が、各上下節柱の固定に用いられる建方治具30pに取り付けられた各4つの駆動装置50pのMPUに対して、1節柱100mの柱頭の位置ずれ量が相殺されるようなそれぞれのモータの制御量の指令値を与えることとすれば良い。この場合において、1節柱100mと同様に2節柱100nにセンサ装置18iを取り付ける場合には、サーバ12がセンサ装置18iを用いて計測した傾斜角の情報に基づいて、2節柱100nの第1面及び第2面の形状及び柱頭のX軸方向及びY軸方向の位置を求め、その位置と上述した目標位置との差がなくなるように、傾き調整ボルト34の自動調整を行うことをさらに行っても良い。1節柱100mと2節柱100nが必ずしも同様に変形するとは限らないので、このような調整を行うことで2節柱100nの柱頭を目標位置により確実に位置させることができる。
【0103】
なお、上記第2の実施形態では、鉄骨柱の種類として、角柱を例にとって説明したが、円柱であっても良い。さらに、H鋼あるいはI鋼を十字形状に組み合わせた鉄骨柱であっても良い。
【0104】
また、上記第2の実施形態では、センサ装置18iの出力データ(センサデータ)から得られる柱の形状あるいは位置情報に基づいて、柱の柱頭のXY面内における位置(柱の倒れ)を、4つの建方治具30pを介して自動調整する(すなわち、4つの建方治具30pそれぞれの倒れ調整ボルト34の回転を自動調整する)ものとしたが、これに加えて柱の目違いなどをセンサ装置18iの出力データから得られる柱の位置情報に基づいて、自動調整することとしても良い。例えば、駆動装置50pが搭載される不図示の支持部材の形状及び構造を、目違い調整ボルト36の回転方向及び回転量を調整可能な調整装置をも搭載可能な形状及び構造にする、あるいは、駆動装置50pが搭載される支持部材とは別の支持部材を設け、該別の支持部材に調整装置を搭載することとしても良い。いずれにしても、調整装置をサーバ12によって制御する構成にすることで、柱の目違いの自動調整も可能となる。
【0105】
なお、上記第1の実施形態では、対象物として鉄骨柱を取り上げて、その形状算出、及びそれを利用した最大乖離量(最大撓み量に相当)の管理、経時変化の管理について説明したが、上記第1の実施形態に係る形状取得方法及び形状取得システム(以下、上記第1の実施形態に係る方法及びシステムと略記する)は、鉄骨柱以外の鉄骨の管理(絶対値管理・経時変化管理)については勿論、その他の建築工程管理にも適用が可能である。また、上記第1の実施形態では、センサ装置を、磁石(磁力)を用いて鉄骨柱に固定するものとしたが、磁石に代えてあるいは磁石とともにその他の固定手段を用いても良い。例えば、対象物がねじ止めによって十分な強度を得られる部材、例えば金属等である場合には、磁石に代えてあるいは磁石とともにねじ(ボルトを含む)を用いてセンサ装置を対象物に固定しても良い。この他、対象物の素材によっては接着材を用いてセンサ装置を対象物に固定しても良い。また、対象物は上記実施形態(ビルなどの鉄骨柱)に限られるものでなく、他のインフラ、例えば橋梁、ダム、トンネル(内壁、トンネル内に設置されるジェットファンなどの構造物を含む)、高速道路、高架、プラント(タンクなどを含む)、屋内施設(屋内プール、体育館、ホール)などでも良いし、風力発電用風車羽根(ブレード)、航空機の胴体や翼またはプロペラ、高速鉄道(新幹線など)の車体(特に先頭車)、鉄道レール、船舶(例えば船体、スクリュー)などでも良い。これらの他、対象物は、乗り物(F1カーなどを含む自動車、飛行機、鉄道、船舶など)、水中の乗り物(潜水艦、深海探査艇など)、宇宙関連(宇宙船、再突入体など)、飛翔体(ロケット、ミサイル、衛星など)、発電所(水力、火力、天然ガス、原子力など)などであっても良い。
【0106】
上記第1の実施形態に係る方法及びシステムを好適に適用可能な建築工程管理として、杭打ちの管理(絶対値管理、経時変化管理)、及び山留めの管理(経時変化管理)なども挙げられる。ここで、杭とは建築時の土台となる構造物を意味し、山留めとは地下構造を作る為に穴を掘る際に周囲の土砂を抑える壁を意味する。
【0107】
上記第1の実施形態に係る方法及びシステムは、インフラ管理にも適用が可能である。例えば、橋梁のメンテナンス(経時変化管理)、橋梁施工時の管理(絶対値管理)、ダム壁面のメンテナンス(経時変化管理)、トンネルのメンテナンス(経時変化管理)、及びプラント/ガスタンクのメンテナンス(経時変化管理)などに好適に適用できる。この他、上記実施形態に係る方法及びシステムは、各種の変形量解析にも適用が可能である。例えば、船底の変形量解析(経時変化)、風力発電ブレードの変形量解析(経時変化)、無人飛行機の翼変形量解析(経時変化)、鉄道レールの変形量解析(経時変化)などに好適に適用できる。
【0108】
上記第1の実施形態に係る方法及びシステムを、橋梁のメンテナンスに適用する場合、例えば、複数のセンサ装置を橋梁に配置し、初期状態からの3次元の形状の変化を常時監視し、例えば形状の変化の指標(例えばセンサ装置が出力する傾斜角、最大乖離量など)が閾値を超えたとき、例えばサーバ12から現場側コントローラ14に警報を発するようにする。このようにすれば、現場側コントローラ14の管理者が異常の発生と発生個所を速やかに認識できるので、作業員による定期検査を不要とし、効率的な点検を実現することが可能になる。
【0109】
なお、サーバ12の管理者が、現場側コントローラ14の管理者とセンサ装置が設置される対象物(上記実施形態では柱)を含む構造物の設計データ等を共有するのであれば、サーバ12の管理者は特に問わない。例えば、サーバ12は、建築会社等のセンサ装置の使用者の管理下にあっても良いし、センサ装置の供給会社(メーカー、サプライヤーなど)の管理下にあっても良い。また、サーバは、クラウドであっても良い。サーバ12が、センサ装置の供給会社の管理下にある場合、供給会社は、センサ装置を使用者にリース(あるいはレンタル)するとともに、予め取得した使用の目的に基づいて決定したセンサ装置の取り付け位置等の最適な情報を提供する。供給会社は、その情報に基づいて使用者がセンサ装置で取得したデータの提供を受け、そのデータを用いた所定の解析(形状算出を含む)を行い、解析結果の情報を使用者に提供する。そして、センサ装置のリース(あるいはレンタル)及び情報の提供の対価を使用者から受け取る。このようなビジネス方法(ビジネスモデル)の実現も可能となる。この場合において、解析及び解析結果の提供の代わりに、解析処理用のアプリケーションソフトウェア(アプリケーションプログラム)を、センサ装置とともにリースしても良い。
【符号の説明】
【0110】
10…形状取得システム、12…サーバ、13…広域エリアネットワーク、14…現場側コントローラ、16…モバイル端末、181~183…センサ装置、100…鉄骨柱、110…鉄骨建築物、181…角度センサ、182…演算処理部、183…無線通信部、184…電源部、185…筐体、187…表示操作部、188…クッション部材、190…永久磁石。