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特許7537679プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20240814BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20240814BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 13/04 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240814BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K35/744
A61K35/745
A61P19/06
A61P13/04
A61P13/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P9/06
A61P1/16
A23L33/135
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020090613
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021187737
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年5月31日にThe Purine and Pyrimidine Societyのウェブサイト<http://ppsociety.org/downloads/PP19%20Program%20and%20abstract%20book.pdf>に公表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年6月12日、13日及び14日に国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)(フランス国リヨン)で開催されたThe Purine and Pyrimidine Society開催の18th Symposium on Purine and Pyrimidine Metabolism in Manにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年5月13日にNucleosides、 Nucleotides & Nucleic Acidsののウェブサイト<https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/15257770.2020.1733604>に公表
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】金子 希代子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 法子
(72)【発明者】
【氏名】福内 友子
(72)【発明者】
【氏名】山田 成臣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】狩野 宏
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002757(WO,A1)
【文献】特開平09-188694(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069704(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/080371(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074514(WO,A1)
【文献】Appl. Environ. Microbiol.,2013年,79, [10],p.3315-3318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄を促進するための組成物であって、
前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム及びペディオコッカス・エタノーリデュランスからなる群から選択される、前記組成物(但し、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスと、ストレプトコッカス・サーモフィラスと、ラクトバチルス・ガセリOLL2959株とを含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄を促進するための組成物を除く。)
【請求項2】
プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドを低減するための組成物であって、
前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム及びペディオコッカス・エタノーリデュランスからなる群から選択される、前記組成物(但し、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスと、ストレプトコッカス・サーモフィラスと、ラクトバチルス・ガセリOLL2959株とを含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドを低減するための組成物を除く。)
【請求項3】
プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、血中尿酸値の上昇を抑制するための組成物であって、
前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム及びペディオコッカス・エタノーリデュランスからなる群から選択される、前記組成物(但し、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスと、ストレプトコッカス・サーモフィラスと、ラクトバチルス・ガセリOLL2959株とを含む、血中尿酸値の上昇を抑制するための組成物を除く。)
【請求項4】
プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するための組成物であって、
前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム及びペディオコッカス・エタノーリデュランスからなる群から選択される、前記組成物(但し、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスと、ストレプトコッカス・サーモフィラスと、ラクトバチルス・ガセリOLL2959株とを含む、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するための組成物、及び、ラクトコッカス・ラクティスを含む高血圧を予防又は治療するための組成物を除く。)
【請求項5】
前記疾患又は状態が、高尿酸血症、痛風、痛風結節、尿酸結石、腎臓結石、糖尿病、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病、動脈硬化、不整脈及び脂肪肝から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、前記乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養した場合、培養終了時における前記乳酸菌の菌体の放射能が、培養開始時における前記乳酸菌の菌体の放射能と比較して、2倍以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、前記乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養した場合、培養終了時における前記乳酸菌の菌体の放射能が、培養開始時における前記乳酸菌の菌体の放射能と比較して、有意に高い、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、飲食品組成物又は医薬組成物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の変化に伴い、高尿酸血症者が年々増加している。高尿酸血症では、尿酸排泄低下又は尿酸産生過剰によって血中尿酸値が上昇し、痛風、痛風結節、尿酸結石、腎臓結石等が誘発される。これらの血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するためには、血中尿酸値の上昇を抑制することが有効である。
【0003】
特許文献1及び2には、プリン体取り込み能を有する乳酸菌を使用して、腸管内のプリン体を乳酸菌に取り込ませ、乳酸菌とともに排泄させることにより、プリン体の腸管吸収量を低減させ、ひいては、血中尿酸値を低減させることが記載されている。また、特許文献1及び2には、プリン体取り込み能を有する乳酸菌として、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)OLL2959株(NITE BP-224)が記載されている。
【0004】
特許文献3には、プリンヌクレオシドをプリン塩基へ分解する乳酸菌を使用して、プリンヌクレオシドの腸管吸収を抑制することにより、血中尿酸値を低減させることが記載されている。また、特許文献3には、プリンヌクレオシドをプリン塩基へ分解する乳酸菌として、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacteriumu pseudolongum)SBT2908株(FERM P-10138)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacteriumu pseudolongum)基準株(ATCC25526)、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス(Bifidobacterium animalis ssp.animalis)基準株(ATCC25527)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2161株(NITE BP-01707)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP-5445)及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)基準株(JCM1222)が記載されている。
【0005】
特許文献4には、プリンヌクレオシド分解能を有する乳酸菌を使用して、血中尿酸値の上昇を抑制することが記載されている。また、特許文献4には、プリンヌクレオシド分解能を有する乳酸菌として、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)NTM003株(NITE BP-01634)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/002757号パンフレット
【文献】国際公開第2016/080371号パンフレット
【文献】特開2017-031102号公報
【文献】国際公開第第2015/182155号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄を促進するための、腸管内に存在するプリンヌクレオチドを低減するための、血中尿酸値の上昇を抑制するための、或いは、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム、ペディオコッカス・エタノーリデュランス、ラクトバチルス・ガセリJCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリJCM5813株からなる群から選択される乳酸菌が、プリンヌクレオチド取り込み能を有することを見出し、本発明を完成されるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄を促進するための組成物であって、前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム、ペディオコッカス・エタノーリデュランス、ラクトバチルス・ガセリJCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリJCM5813株からなる群から選択される、前記組成物。
[2]プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドを低減するための組成物であって、前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム、ペディオコッカス・エタノーリデュランス、ラクトバチルス・ガセリJCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリJCM5813株からなる群から選択される、前記組成物。
[3]プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、血中尿酸値の上昇を抑制するための組成物であって、前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム、ペディオコッカス・エタノーリデュランス、ラクトバチルス・ガセリJCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリJCM5813株からなる群から選択される、前記組成物。
[4]プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するための組成物であって、前記乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・デルブルッキー、ペディオコッカス・パルヴルム、ペディオコッカス・エタノーリデュランス、ラクトバチルス・ガセリJCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリJCM5813株からなる群から選択される、前記組成物。
[5]前記疾患又は状態が、高尿酸血症、痛風、痛風結節、尿酸結石、腎臓結石、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、慢性腎臓病、動脈硬化、不整脈及び脂肪肝から選択される、[4]に記載の組成物。
[6]最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、前記乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養した場合、培養終了時における前記乳酸菌の菌体の放射能が、培養開始時における前記乳酸菌の菌体の放射能と比較して、2倍以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、前記乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養した場合、培養終了時における前記乳酸菌の菌体の放射能が、培養開始時における前記乳酸菌の菌体の放射能と比較して、有意に高い、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[8]前記組成物が、飲食品組成物又は医薬組成物である、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含む、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄を促進するための、腸管内に存在するプリンヌクレオチドを低減するための、血中尿酸値の上昇を抑制するための、或いは、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するための組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を含んでなる組成物に関する。
【0012】
プリンヌクレオチド取り込み能は、プリンヌクレオチドをそのまま菌体内に取り込む能力を意味する。したがって、プリンヌクレオチドの分解によって生じたプリンヌクレオシド又はプリン塩基を菌体内に取り込む能力は、プリンヌクレオチド取り込み能に該当しない。
【0013】
乳酸菌の取り込み対象であるプリンヌクレオチドは、好ましくは、プリンヌクレオシドに1個のリン酸基が結合したプリンヌクレオチド、すなわち、プリンヌクレオシド一リン酸(以下、「プリンモノヌクレオチド」という場合がある。)である。プリンヌクレオシド一リン酸としては、例えば、アデニル酸(AMP)、グアニル酸(GMP)、イノシン酸(IMP)、キサンチル酸(XMP)等が挙げられるが、これらのうち、アデニル酸(AMP)が好ましい。
【0014】
乳酸菌の取り込み対象であるプリンヌクレオチドは、好ましくは、単量体である。
【0015】
プリンヌクレオシドは、糖にプリン塩基が結合することにより形成される化合物であり、プリンヌクレオチドは、プリンヌクレオシドにリン酸が結合することにより形成される化合物である。したがって、プリンヌクレオチドは、プリン塩基、糖及びリン酸を有する。プリンヌクレオチドが有するプリン塩基としては、例えば、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン等が挙げられる。プリンヌクレオチドが有する糖は、リボースであってもよいし、デオキシリボースであってもよいが、リボースであることが好ましい。
【0016】
プリンヌクレオチドには、リン酸が結合する位置に応じて、2’体、3’体及び5’体の構造異性体が存在する。乳酸菌の取り込み対象であるプリンヌクレオチドは、いずれの構造異性体であってもよいが、5’体であることが好ましい。
【0017】
乳酸菌は、乳酸発酵、すなわち、代謝により乳酸を生成する細菌であるが、全ての乳酸菌がプリンヌクレオチド取り込み能を有するわけではない。
【0018】
乳酸菌がプリンヌクレオチド取り込み能を有することは、標識化プリンヌクレオチドの存在下で乳酸菌を所定時間培養し、乳酸菌の菌体に取り込まれた標識化プリンヌクレオチドの量を測定することにより確認することができる。乳酸菌の培養は、常法に従って行うことができる。培地に植菌される乳酸菌の量は、培地1mLに対して、通常1×10~1×10cfu、好ましくは1×10~4×10cfu、さらに好ましくは1.5×10~2.5×10cfuである。培養温度は、通常29~39℃、好ましくは36~38℃である。培養方法は、好ましくは嫌気培養である。培養時間は、通常5~60分、好ましくは10~20分である。培地に含まれる標識化プリンヌクレオチドの濃度は、通常0.11~11nM、好ましくは0.55~6.6nM、さらに好ましくは1.1~3.3nMである。標識は、例えば、32P等の放射線同位体であり、標識化プリンヌクレオチドは、例えば、32P等の放射線同位体で標識されたプリンヌクレオチドである。
【0019】
乳酸菌の菌体に取り込まれたプリンヌクレオチドの量は、培養開始時及び培養終了時における乳酸菌の菌体内の標識化プリンヌクレオチドの量に基づいて測定することができる。培養開始時及び培養終了時における乳酸菌の菌体内の標識化プリンヌクレオチドの量として、数回(例えば3回)の測定から求められる平均値を使用することが好ましい。培養開始時及び培養終了時における乳酸菌の菌体内の標識化プリンヌクレオチドの量は、各時点の培養物から乳酸菌の菌体を回収し、回収された乳酸菌の菌体を洗浄し、乳酸菌の菌体表面の標識化プリンヌクレオチドを除去した後に測定することが好ましい。菌体の回収は、例えば、濾過、遠心分離等によって行うことができる。菌体の洗浄は、例えば、生理食塩水を使用して行うことができる。
【0020】
好ましい実施形態では、最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養し、培養開始時及び培養終了時における乳酸菌の菌体の放射能に基づいて、乳酸菌の菌体に取り込まれた32P-AMPの量を測定する。最少培地としては、例えば、表1に示す最少培地を使用することができる。最終濃度は、最少培地に、32P-AMPと、乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物とを添加することにより調製される培地(以下「所定培地」という。)中の濃度である。32P-AMPは、最終濃度が1.1nMとなるように、すなわち、所定培地中の濃度が1.1nMとなるように、最少培地に添加される。乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物は、該培養物の最終濃度が2体積%となるように、すなわち、該培養物の最終濃度が、所定培地の体積を基準として、2体積%となるように、最少培地に添加される。培養物の添加によって植菌される乳酸菌の量は、所定培地1mLに対して、通常1×10~1×10cfu、好ましくは1×10~4×10cfu、さらに好ましくは1.5×10~2.5×10cfuである。培養開始時及び培養終了時における乳酸菌の菌体の放射能として、数回(例えば3回)の測定から求められる平均値を使用することが好ましい。培養開始時及び培養終了時における乳酸菌の菌体の放射能は、各時点の培養物から乳酸菌の菌体を回収し、回収された乳酸菌の菌体を洗浄し、乳酸菌の菌体表面の32P-AMPを除去した後に測定することが好ましい。菌体の回収は、例えば、濾過、遠心分離等によって行うことができる。菌体の洗浄は、例えば、生理食塩水を使用して行うことができる。菌体の放射能は、液体シンチレーションカウンターを使用して測定することができる。
【0021】
最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養した場合、培養終了時における乳酸菌の菌体の放射能が、培養開始時における乳酸菌の菌体の放射能と比較して、2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがさらに好ましく、7倍以上であることがさらに一層好ましく、10倍以上であることがさらに一層好ましい。
【0022】
最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、乳酸菌をMRS培地で培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌して37℃で15分間嫌気培養した場合、培養終了時における乳酸菌の菌体の放射能が、培養開始時における乳酸菌の菌体の放射能と比較して、有意に高いことが好ましい。なお、「有意に高い」とは、スチューデントのt検定におけるp値が0.05未満であることを意味する。
【0023】
本発明において、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ペディオコッカス・パルヴルム(Pediococcus parvulus)、ペディオコッカス・エタノーリデュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)JCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)JCM5813株からなる群から選択される。本発明の組成物は、上記群から選択された1種の乳酸菌を含んでもよいし、上記群から選択された2種以上の乳酸菌を含んでもよい。
【0024】
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)としては、例えば、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホルドニアエ(Lactococcus lactis subsp.hordniae)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・トゥルクテ(Lactococcus lactis subsp. tructae)等が挙げられるが、これらのうち、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)が好ましい。ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)としては、例えば、JCM7638株、JCM5805T株、IFO12007株等が挙げられる。なお、JCM7638株及びJCM5805T株は、理化学研究所バイオリソースセンター 微生物材料開発室(RIKEN BRC JCM;茨城県つくば市、日本)から入手することができる。IFO12007株は、公益財団法人発酵研究所から入手することができる。
【0025】
ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)としては、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. burgalicus)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp.lactis)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・インディカス(Lactobacillus delbrueckii subsp.indicus)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ヤコブセニ(Lactobacillus delbrueckii subsp. jakobsenii)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・スンキ(Lactobacillus delbrueckii subsp. sunkii)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)等が挙げられるが、これらのうち、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. burgalicus)が好ましい。ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. burgalicus)としては、例えば、JCM1002T株等が挙げられる。なお、JCM1002T株は、理化学研究所バイオリソースセンター 微生物材料開発室(RIKEN BRC JCM;茨城県つくば市、日本)から入手することができる。
【0026】
ペディオコッカス・パルヴルム(Pediococcus parvulus)としては、例えば、JCM5889T株等が挙げられる。なお、JCM5889T株は、理化学研究所バイオリソースセンター 微生物材料開発室(RIKEN BRC JCM;茨城県つくば市、日本)から入手することができる。
【0027】
ラクトバチルス・ガセリJCM1131T株及びラクトバチルス・ガセリJCM5813株は、理化学研究所バイオリソースセンター 微生物材料開発室(RIKEN BRC JCM;茨城県つくば市、日本)から入手することができる。
【0028】
ヒトにおいて、腸管内に存在するプリンヌクレオチドは、プリンヌクレオシドに分解された後、腸管吸収され、最終的に尿酸に代謝される。腸管内に存在するプリンヌクレオチドは、例えば、経口摂取された食物に由来する。イノシン酸(IMP)、アデニル酸(AMP)、グアニル酸(GMP)、キサンチル酸(XMP)等のプリンヌクレオチドは、旨味成分として、魚、肉等の食物に含まれている。なお、本発明において、「腸管内に存在するプリンヌクレオチド」は、プリンヌクレオシドに分解された後、腸管吸収されるプリンヌクレオチドを意味する。したがって、遊離のプリンヌクレオチドは、「腸管内に存在するプリンヌクレオチド」に該当するが、腸管内に存在する細菌、真菌、ウイルス等が保持するプリンヌクレオチドは、「腸管内に存在するプリンヌクレオチド」に該当しない。
【0029】
プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌が腸管内に存在すると、腸管内に存在するプリンヌクレオチドは乳酸菌に取り込まれる。乳酸菌は腸管で吸収されることなく生体外に排泄されるため、乳酸菌に取り込まれたプリンヌクレオチドは、乳酸菌とともに生体外に排泄される。したがって、本発明の組成物は、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄を促進するための組成物として使用することができる。
【0030】
腸管内に存在するプリンヌクレオチドが乳酸菌に取り込まれること、及び/又は、乳酸菌に取り込まれたプリンヌクレオチドが乳酸菌とともに生体外に排泄されることにより、腸管内に存在するプリンヌクレオチドが低減する。したがって、本発明の組成物は、腸管内に存在するプリンヌクレオチドを低減するための組成物として使用することができる。
【0031】
腸管内に存在するプリンヌクレオチドが低減することにより、プリンヌクレオチドから生じる尿酸が低減する。したがって、本発明の組成物は、血中尿酸値の上昇を抑制するための組成物として、或いは、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療するための組成物として使用することができる。血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態としては、例えば、高尿酸血症、痛風、痛風結節、尿酸結石、腎臓結石、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、慢性腎臓病、動脈硬化、不整脈、脂肪肝等が挙げられる。なお、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、慢性腎臓病、動脈硬化、不整脈及び脂肪肝は、血中尿酸値の上昇が関連する生活習慣病の例であり、本発明の組成物は、血中尿酸値の上昇が関連するその他の生活習慣病を予防又は治療するための組成物としても使用することができる。
【0032】
本発明の組成物の投与対象は、ヒトと同様に、腸管内に存在するプリンヌクレオチドが最終的に尿酸に代謝される動物である限り特に限定されない。本発明の組成物の投与対象としては、例えば、ヒト;ウシ、ブタ、ウマ等の家畜;イヌ、ネコ等の愛玩動物、マウス、ラット等の実験(試験)動物等を含む哺乳動物等が挙げられるが、これらのうち、ヒトが好ましい。
【0033】
一実施形態において、投与対象は、健常なヒトである。投与対象者が健常なヒトである場合、本発明の組成物の投与により、血中尿酸値の上昇或いはそれに起因する疾患又は状態を予防することができる。
【0034】
別の実施形態において、投与対象は、血中尿酸値の上昇を呈するヒトである。投与対象者の血中尿酸値が、基準値(例えば、投与対象者と同年齢の健常者の血中尿酸値)よりも高い場合、投与対象者の血中尿酸値が上昇していると判定することができる。投与対象が血中尿酸値の上昇を呈するヒトである場合、本発明の組成物の投与により、血中尿酸値の上昇を抑制することができる。
【0035】
さらに別の実施形態において、投与対象は、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を呈するヒトである。投与対象が血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を呈するヒトである場合、本発明の組成物の投与により、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を改善又は治療することができる。
【0036】
本発明の組成物の投与方法は、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌を投与対象の腸管内に存在させることができる限り特に限定されない。本発明の組成物の投与方法は、好ましくは経口投与である。
【0037】
本発明の組成物に含まれるプリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌は、好ましくは生菌である。本発明の組成物に含まれるプリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌は、乳酸菌を培養して得られた培養物から分離された乳酸菌であってもよいし、乳酸菌を培養して得られた培養物それ自体又はその処理物であってもよい。培養物からの乳酸菌の分離は、例えば、濾過、遠心分離等により行うことができる。培養物の処理物としては、例えば、培養物の濃縮物、希釈物、乾燥物等が挙げられる。濃縮、希釈、乾燥等の処理は、常法に従って行うことができる。
【0038】
本発明の組成物は、飲食品組成物又は医薬組成物であることが好ましい。飲食品組成物又は医薬組成物に含まれるプリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌は、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌の1回の投与あたりの摂取量、本発明の組成物の1日あたりの投与回数、本発明の組成物の投与期間及び投与間隔等を考慮して適宜調整することができる。飲食品組成物又は医薬組成物に含まれるプリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌は、飲食品組成物又は医薬組成物の質量を基準として、通常0.001~1質量%、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0039】
飲食品組成物としては、例えば、健康食品、栄養補助食品、機能性食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、高齢者用食品、患者用食品)等が挙げられる。
【0040】
飲食品組成物の形態は、特に限定されず、例えば、固形状、ペースト状、半液体状、ゲル状、液体状等の形態が挙げられる。
【0041】
飲食品組成物としては、例えば、発酵乳(ドリンクヨーグルト、セットタイプヨーグルト、ソフトヨーグルト、チーズ等)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳等)、茶系飲料(緑茶、紅茶、烏龍茶等)、果物・野菜系飲料(オレンジ、りんご、ぶどう等の果汁、トマト、ニンジン等の野菜汁を含む飲料)、アルコール性飲料(ビール、発泡酒、ワイン等)、炭酸飲料、清涼飲料、水ベースの飲料、氷菓、アイスクリーム、菓子、インスタント食品等が挙げられるが、これらのうち、ドリンクヨーグルト、セットタイプヨーグルト、ソフトヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、水ベースの飲料、菓子等が好ましく、ドリンクヨーグルト、セットタイプヨーグルト、ソフトヨーグルト等がさらに好ましい。各種の飲食品組成物の製造方法等については、既存の文献、例えば「最新・ソフトドリンクス」(2003)(株式会社光琳)等を参考にすることができる。発酵乳又は乳製品を製造する際、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌は、必要に応じてその他の乳酸菌とともにスターターとして使用してもよいし、スターターを使用して製造された発酵乳又は乳製品に添加してもよい。なお、スターターを使用した発酵乳又は乳製品の製造は、常法に従って行うことができる。例えば、加温、混合、均質化、殺菌処理後に冷却した乳又は乳製品に、スターターを混合し、発酵、冷却することにより、ヨーグルトを製造することができる。
【0042】
飲食品組成物に含まれる乳酸菌以外の成分は特に限定されない。乳酸菌以外の成分としては、例えば、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等が挙げられる。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物、バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分等が挙げられる。糖質としては、一般の糖類、加工澱粉(デキストリン、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維等が挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂等が挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸等が挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラル等が挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸等が挙げられる。これらの成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
医薬組成物としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。これらの製剤は、常法に従って、薬学上許容される担体を使用して製造することができる。薬学上許容される担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。薬学上許容される担体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
担体としては、例えば、水、薬学上許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学上許容される界面活性剤等の他、リポゾーム等の人工細胞構造物等が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物の投与量は、投与対象の年齢、体重、症状、投与経路、投与回数等を考慮して適宜調整することができる。例えば、本発明の組成物は、プリンヌクレオチド取り込み能を有する乳酸菌の1回の投与あたりの摂取量が、通常1×10~1×1011cfuとなるように、好ましくは1×10~1×1010cfuとなるように、より好ましくは6×10~1×1010cfuとなるように経口投与される。
【0046】
本発明の組成物の1日あたりの投与回数は、例えば、1回、2回、3回等である。本発明の組成物の投与期間及び投与間隔は特に限定されないが、1週間以上の期間、毎日経口投与されることが好ましく、2週間以上の期間、毎日経口投与されることがさらに好ましい。投与期間の上限は特に限定されない。
【0047】
本発明の組成物は、1日分の投与量を投与しやすいように、包装されていてもよい。1日分の投与量は、一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、継続的に摂取しやすいように、一定期間の摂取量(例えば、数日分の摂取量)がセットとなった形態で提供することが好ましい。包装形態は一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、ソフトバック、紙容器、缶、ボトル、カプセル等が挙げられる。
【0048】
包装又は添付文書(説明書)に、本発明の組成物の用途(腸管内に存在するプリンヌクレオチドの排泄促進、腸管内に存在するプリンヌクレオチドの低減、血中尿酸値の上昇の抑制、血中尿酸値の上昇に起因する疾患又は状態を予防又は治療等)、用量、用法等を表示してもよい。
【実施例
【0049】
〔実施例1〕Lactobacillus delbrueckiiのプリンモノヌクレオチド取り込み試験
プリンモノヌクレオチドとして32P-AMPを使用して、プリンモノヌクレオチドの取り込み実験を行った。詳細は以下の通りである。
【0050】
(1)使用菌株
実施例1で使用した菌株は以下の通りである。なお、P2000701及びP2000702は、株式会社明治(〒192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1 明治イノベーションセンター)により保管されている菌株である。
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus P2000701
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus P2000702
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002T
【0051】
(2)32P-AMPの調製
CaCl(最終濃度1mM)、α-32P-ATP(最終濃度33nM)、アピラーゼ(最終濃度2mU/mL)を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)に加えて混合し、37℃で15分間インキュベートした。その後、Amicon 3Kフィルターに全量入れ、14,000g×10分、室温(20~25℃)で遠心した。遠心により得られたフィルターろ過液に対して、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)を加えて3倍希釈し、得られた希釈液を32P-AMP(11nM)として使用した。
【0052】
(3)32P-AMPの取り込み
表1に示す最少培地に、32P-AMPを最終濃度1.1nMで添加するとともに、MRS培地でP2000701株、P2000702株又はJCM1002T株を培養して得られた培養物を最終濃度2体積%で植菌し、37℃で15分間嫌気培養した後、5% TFA溶液を等量添加して培養を停止させた。培養物をフィルター(0.22μm)で濾過し、菌体のみを回収した。生理食塩水にて菌体を洗浄し、菌体に取り込まれなかった32P-AMPを除去後、液体シンチレーションカウンターにて、回収された菌体の放射能を測定した。測定時間は1分間とした。測定は3回行った。
【0053】
結果を表2に示す。表2に示すように、いずれの菌株を使用した場合にも、培養開始0分後の放射能(平均値)と比較して、培養開始15分後の放射能(平均値)が有意に高かった(P2000702株:p<0.05,P2000701株:p<0.05,JCM1002T株:p<0.05,いずれもスチューデントのt検定)。32P-AMPがヌクレオシドに分解されるとリン酸基を標識している32Pが外れるため、各菌株がヌクレオシドを菌体内に取り込む場合、菌体の放射能は増加しない。したがって、表2に示す結果は、各菌株が菌体内に直接32P-AMPを取り込んでいることを示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
〔実施例2〕Pediococcus属菌のプリンモノヌクレオチド取り込み試験
以下の菌株を使用した点を除き、実施例1と同様にしてプリンモノヌクレオチド取り込み試験を行った。
実施例2で使用した菌株は以下の通りである。なお、P2000703、P2000704及びP2000705は、株式会社明治(〒192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1 明治イノベーションセンター)により保管されている菌株である。
Pediococcus parvulus JCM5889T
Pediococcus parvulus P2000703
Pediococcus ethanolidurans P2000704
Pediococcus ethanolidurans P2000705
【0057】
結果を表3に示す。表3に示すように、いずれの菌株を使用した場合にも、培養開始0分後の放射能(平均値)と比較して、培養開始15分後の放射能(平均値)が有意に高かった(JCM5889T株:p<0.05,P2000703株:p<0.05,P2000704株:p<0.05,P2000705株,いずれもスチューデントのt検定)。32P-AMPがヌクレオシドに分解されるとリン酸基を標識している32Pが外れるため、各菌株がヌクレオシドを菌体内に取り込む場合、菌体の放射能は増加しない。したがって、表3に示す結果は、各菌株が菌体内に直接32P-AMPを取り込んでいることを示す。
【0058】
【表3】
【0059】
〔実施例3〕Lactococcus lactisのプリンモノヌクレオチド取り込み試験
以下の菌株を使用した点を除き、実施例1と同様にしてプリンモノヌクレオチド取り込み試験を行った。
実施例3で使用した菌株は以下の通りである。なお、P2000706株は、株式会社明治(〒192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1 明治イノベーションセンター)により保管されている菌株である。
Lactococcus lactis subsp. lactis JCM7638
Lactococcus lactis subsp. lactis P2000706
【0060】
結果を表4に示す。表4に示すように、いずれの菌株を使用した場合にも、培養開始0分後の放射能(平均値)と比較して、培養開始15分後の放射能(平均値)が有意に高かった(JCM7638株:p<0.05,P2000706株:p<0.05,いずれもスチューデントのt検定)。32P-AMPがヌクレオシドに分解されるとリン酸基を標識している32Pが外れるため、各菌株がヌクレオシドを菌体内に取り込む場合、菌体の放射能は増加しない。したがって、表4に示す結果は、各菌株が菌体内に直接32P-AMPを取り込んでいることを示す。
【0061】
【表4】
【0062】
〔実施例4〕Lactobacillus gasseriのプリンモノヌクレオチド取り込み試験
以下の菌株を使用した点を除き、実施例1と同様にしてプリンモノヌクレオチド取り込み試験を行った。
実施例4で使用した菌株は以下の通りである。なお、P2000707、P2000708、P2000709及びP2000710は、株式会社明治(〒192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1 明治イノベーションセンター)により保管されている菌株である。
Lactobacillus gasseri JCM1131T
Lactobacillus gasseri JCM5813
Lactobacillus gasseri P2000707
Lactobacillus gasseri OLL2922 (NITE BP-462)
Lactobacillus gasseri P2000708
Lactobacillus gasseri P2000709
Lactobacillus gasseri P2000710
【0063】
結果を表5に示す。表5に示すように、いずれの菌株を使用した場合にも、培養開始0分後の放射能(平均値)と比較して、培養開始15分後の放射能(平均値)が有意に高かった(JCM1131T株:p<0.05,JCM5813株:p<0.05,P2000707株:p<0.05,OLL2922株:p<0.05,P2000708株:p<0.05,P2000709株:p<0.05,P2000710株:p<0.05,いずれもスチューデントのt検定)。32P-AMPがヌクレオシドに分解されるとリン酸基を標識している32Pが外れるため、各菌株がヌクレオシドを菌体内に取り込む場合、菌体の放射能は増加しない。したがって、表5に示す結果は、各菌株が菌体内に直接32P-AMPを取り込んでいることを示す。
【0064】
表5に示すように、JCM1131T株及びJCM5813株の32P-AMP取り込み能は、OLL2922株の32P-AMP取り込み能と同程度又はそれよりも高かった。
【0065】
【表5】
【0066】
〔比較例1〕Streptococcus thermophilusのプリンモノヌクレオチド取り込み試験
以下の菌株を使用した点を除き、実施例1と同様にしてプリンモノヌクレオチド取り込み試験を行った。
比較例1で使用した菌株は以下の通りである。なお、P2000711、P2000712、P2000713及びP2000714は、株式会社明治(〒192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1 明治イノベーションセンター)により保管されている菌株である。
Streptococcus thermophilus NCIMB8510T
Streptococcus thermophilus ATCC BAA-250
Streptococcus thermophilus NCIMB700821
Streptococcus thermophilus ATCC BAA-491
Streptococcus thermophilus P2000711
Streptococcus thermophilus P2000712
Streptococcus thermophilus P2000713
Streptococcus thermophilus P2000714
【0067】
結果を表6に示す。表6に示すように、いずれの菌株を使用した場合にも、培養開始0分後の放射能(平均値)と、培養開始15分後の放射能(平均値)との間に有意な差がなかった。表6に示す結果は、各菌株がプリンモノヌクレオチドを直接菌体内に取り込めないことを示す。したがって、全ての乳酸菌がプリンモノヌクレオチドを直接菌体内に取り込めるわけではないことが明らかとなった。
【0068】
【表6】