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特許7537698セキュリティ用紙の製造方法及びセキュリティ用紙
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  • 特許-セキュリティ用紙の製造方法及びセキュリティ用紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】セキュリティ用紙の製造方法及びセキュリティ用紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/40 20060101AFI20240814BHJP
   D21H 11/12 20060101ALI20240814BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
D21H21/40
D21H11/12
D21H15/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020172309
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063911
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】奥田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 拓真
(72)【発明者】
【氏名】城村 圭佑
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029632(JP,A)
【文献】特開平06-264392(JP,A)
【文献】特開2015-193967(JP,A)
【文献】特開平09-316796(JP,A)
【文献】特開2000-051043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 21/40
D21H 11/12
D21H 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一種類の非木材を原材料としたセキュリティ用紙の製造方法であって、
前記原材料を離解する離解工程と、
離解した前記原材料を叩解して、長さ荷重中心線平均繊維長が0.5mm以下の短繊維が20重量%以上、長さ荷重中心線平均繊維長が1.5mm以上の長繊維が20重量%以上含有し、かつ、保水度が170%以上250%未満の非木材パルプを作製する叩解工程と、
前記非木材パルプを10%以上配合した製紙用パルプを作製する調製工程と、
前記製紙用パルプを抄紙してすき入れを施すすき入れ付与工程を含めた抄紙工程と、を有することを特徴とするセキュリティ用紙の製造方法。
【請求項2】
前記調製工程において、前記原材料と異なる種類のパルプを添加することを特徴とする請求項1記載のセキュリティ用紙の製造方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項記載の製造方法で製造された、すき入れが施されたセキュリティ用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非木材繊維を用いたセキュリティ用紙に関し、すき入れの鮮明さ、用紙強度及び柔軟性を両立したセキュリティ用紙の製造方法及びセキュリティ用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への負荷を軽減するため、木材繊維に代わる製紙用材料として、非木材繊維の利用が注目されている。
【0003】
非木材繊維とは、バガス、ケナフ、竹類、わら類、葦などの植物の茎や、ケナフ、ジュート、亜麻、マニラ麻、サイザル麻、コットン、楮、みつまた、雁皮などの靭皮や葉脈などを利用した繊維であり、これらの非木材繊維の利用は、森林伐採や二酸化炭素ガスの増加などといった環境問題の軽減につながるとともに、非木材は、木材と比較して成長が早いことから、生産性の面でも有利である(非特許文献1及び特許文献1参照)。
【0004】
また、非木材繊維の特徴として、耐久性や保存性が高いことが挙げられる。この特徴により、非木材繊維からセルロース繊維等を抽出して得られる非木材パルプは、金銭的、かつ、社会的価値の安定した維持が求められるパスポ-ト、有価証券、各種身分証明書、カ-ド、通行券等の貴重印刷物への利用に適している。
【0005】
これらの貴重印刷物は、耐久性や保存性だけでなく、意匠性や偽造防止性能も求められることから、偽造防止効果が高いすき入れが施された専用の用紙(以後、「セキュリティ用紙」という。)が広く用いられている。
【0006】
セキュリティ用紙に施されるすき入れは、偽造防止技術の一つであり、用紙の厚みの差や表面の凹凸などで生じる透過光量の差によって、図柄や文字等の模様が観察できる領域のことであり、一般に、円網抄紙機の円網シリンダー又は長網抄紙機のダンディーロールに、金属細線、竹簀、合成樹脂などですき入れとなる模様を形成してパルプを抄紙する方法が用いられている。
【0007】
セキュリティ用紙においては、すき入れとそれ以外の無地部の間で繊維量及び密度の差が大きいほど、透過光量の差は大きくなり、すき入れはより鮮明に観察できる。
【0008】
例えば、パルプの繊維長が短いほど、抄紙網に堆積する繊維の密度が増大して、すき入れとしてより細かい模様を付与できるが、パルプ中の水分が抄紙網から十分に水切れするまでの時間(以後、「ろ水時間」という。)が増加するため、工業的な大量製造に適さなくなる。
【0009】
また、パルプの繊維長が長いほど、ろ水時間が短くなり、用紙強度は増大するが、抄紙網に堆積する繊維の密度が低下して、すき入れの模様が粗くなり、セキュリティ用紙としての用途に適さなくなる。
【0010】
これらの問題について、すき入れの鮮明さ及び用紙強度を両立する技術としては、ミクロフィブリル化セルロースを所定の比率で添加した紙料を用いたすき入れ紙の製造方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】非木材紙関連用語の知識(非木材紙普及協会発行、p141)
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-363882号公報
【文献】特許第2962147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、環境問題の軽減を図るために非木材繊維(主にバガスパルプ)を用いた用紙に関するものであるが、あくまで上質紙の製造を目的としたものであり、セキュリティ用紙に施されるすき入れを目的としたものではなかった。
【0014】
また、特許文献2は、セキュリティ用紙に施されるすき入れの鮮明化を目的としているが、製造する際に、すき入れの鮮明さを高めるための植物繊維と、紙の物理的強度を向上させるための微細フィブリル化セルロースを配合する必要があり、異なる2種類の原材料を個別に用意しなければならず、抄紙工程が複雑化するという課題が存在した。
【0015】
本発明は、単一種類の非木材を原材料としながら、それらの原材料が離解及び叩解された際に短繊維と長繊維の両方を所定の割合で含有し、かつ、所定の保水度を示す非木材パルプを、所定の割合で製紙用パルプに配合して抄紙を行うことで、すき入れの鮮明さ、用紙強度及び柔軟性を両立するセキュリティ用紙の製造方法及びセキュリティ用紙に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、単一種類の非木材を原材料としたセキュリティ用紙の製造方法であって、原材料を離解する離解工程と、離解した原材料を叩解して、長さ荷重中心線平均繊維長が0.5mm以下の短繊維が20重量%以上、長さ荷重中心線平均繊維長が1.5mm以上の長繊維が20重量%以上含有し、かつ、保水度が170%以上250%未満の非木材パルプを作製する叩解工程と、非木材パルプを10%以上配合した製紙用パルプを作製する調製工程と、製紙用パルプを抄紙してすき入れを施すすき入れ付与工程を含めた抄紙工程とを有することを特徴とするセキュリティ用紙の製造方法である。
【0017】
また、本発明は、調製工程において、原材料と異なる種類のパルプを添加することを特徴とするセキュリティ用紙の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、上記の製造方法で製造された、すき入れが施されたセキュリティ用紙である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、単一種類の非木材を原材料とし、それらの原材料が離解及び叩解された際に繊維長毎の配合割合及び保水度を有する非木材パルプを調整して製紙用パルプとすることで、地球環境の負荷軽減を図るとともに、すき入れの鮮明さ、用紙強度及び柔軟性を両立するセキュリティ用紙を提供することができる。
【0020】
また、本発明は、単一種類の非木材パルプ中に、短繊維と長繊維の両方を含有するので、複数のパルプを配合する工程が不要であり、抄紙工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】セキュリティ用紙の製造方法に係るフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる発明を実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術の範疇であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0023】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態について、図1を用いて説明する。
【0024】
図1は、本発明の第一の実施形態におけるセキュリティ用紙の製造方法に係るフロー図である。
【0025】
本発明の第一の実施形態におけるセキュリティ用紙の製造方法は、離解工程(Step1)、叩解工程(Step2)、調製工程(Step3)及び抄紙工程(Step4)からなる。
【0026】
本発明における「原材料」は、バガス、ケナフ、竹類、わら類、葦などの植物の茎や、ケナフ、ジュート、亜麻、マニラ麻、サイザル麻、コットン、楮、みつまた、雁皮などの靭皮や葉脈などを利用した非木材である。
【0027】
本発明においては、少なくとも単一種類の非木材を原材料として使用して、セキュリティ用紙を作製する。なお、求めるセキュリティ用紙の性質に応じて、他の種類の非木材、若しくは木材を添加することができる。
【0028】
非木材は、そのまま使用してもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲で、前処理として機械的に磨砕や裁刻してもよいし、熱や圧力をかける蒸煮や、薬品を加えて熱や圧力をかける化学的な蒸煮によって、リグニンの除去や繊維を柔らかくする処理を施してもよい。また、原材料は、非木材をパルプ化して乾燥させ、シート状に加工された状態で使用してもよい。
【0029】
離解工程(Step1)では、原材料を非木材繊維にする。ここで、本発明における「離解」とは、未離解繊維が無くなるまで繊維間をほぐすことを指し、離解機を含めた公知の離解が実施可能である。なお、「未離解繊維」とは、繊維間に水素結合などの結合が存在して、ほぐれていない状態の繊維を示す。
【0030】
叩解工程(Step2)では、離解工程で得られた非木材繊維について、公知の叩解方法で繊維の切断及びフィブリル化を施し、所定の水準の非木材パルプを製造する。なお、本発明における「叩解」とは、繊維を毛羽立たせて繊維同士を絡み易くすることであり、叩解機を含めた公知の叩解方法で実施可能である。なお、本発明における「非木材パルプ」とは、離解工程(Step1)及び叩解工程(Step2)によって得られた非木材パルプを示す。
【0031】
また、本発明における「所定の水準」とは、非木材パルプの長さ荷重中心線平均繊維長(以下、「繊維長」という。)について、繊維長0.5mm以下の短繊維の割合が20重量%以上、繊維長1.5mm以上の長繊維の割合が20重量%以上であり、かつ、非木材パルプの保水度が好ましくは170%以上250%未満の条件であることを示す。ここで、繊維長はすき入れの鮮明さ及び用紙強度の尺度であり、抄紙網に堆積する繊維の密度の増大に必要な繊維長は、0.5mm以下の短繊維であり、用紙強度の増大に必要な繊維長は、1.5mm以上の長繊維である。このとき、短繊維の割合が20重量%未満だと、短繊維が少ないので鮮明なすき入れ模様を得られず、長繊維の割合が20重量%未満だと、後述する抄紙工程(Step4)において非木材繊維同士が十分に絡まないため、十分な用紙強度が得られない。また、保水度は柔軟性の尺度であり、保水度が170%未満だと、非木材繊維の強度が高いのですき入れ模様の凹凸形状を十分に形成できず、保水度が250%以上だと、非木材繊維の強度が小さいため十分な用紙強度が得られないことから好ましくない。叩解工程(Step2)においては、「所定の水準」が得られるように、叩解条件を適宜調整する。また、離解工程と叩解工程の間に、アルカリ薬品等の洗浄を含めた処理を実施してもよい。なお、一般的な非木材の繊維長の平均値は、竹が0.2mmから4.4mm程度、マニラ麻が2.0~12.0mm程度、大麻が5~50mm程度であり、叩解方法の種類や条件を適宜設定することによって、繊維長を調整することが可能である。
【0032】
調製工程(Step3)では、叩解工程で得られた非木材パルプを用いて、製紙用パルプを製造する。ここで、本発明における「調製」とは、非木材パルプを所定の割合で配合して後述する抄紙工程に適した製紙用パルプを製造することであり、添加料として、繊維間の隙間を埋める目的で公知のてん料を添加してもよいし、インキのにじみを防ぐ目的で公知のサイズ剤を添加してもよいし、強度を調整する目的で公知の紙力増強剤を添加してもよいし、用紙の色を調整する目的で公知の着色料を添加してもよいし、その他、公知の添加料を配合してもよい。また、抄紙を容易にする目的で、木材繊維からセルロース繊維等を抽出して得られる木材パルプを、本発明の効果を阻害しない範囲で添加料として配合してもよい。
【0033】
なお、本発明における「所定の割合」とは、製紙用パルプ全量に対する非木材パルプが配合割合10重量%以上100重量%未満であり、叩解工程と調製工程の間に、スクリーンや遠心分離等の公知の方法を用いて不純物を除去する処理を実施してもよい。ここで、非木材パルプの配合割合が10重量%未満だと、すき入れ模様を形成する非木材繊維中の短繊維の割合が少なくなり、鮮明なすき入れ模様を得られなくなるので好ましくない。
【0034】
抄紙工程(Step4)では、調製工程で得られた製紙用パルプを用いて、公知のすき入れ付与方法を含めた抄紙を実施し、セキュリティ用紙を製造する。ここで、本発明における「すき入れ付与方法」は、円網抄紙機の円網シリンダー又は長網抄紙機のダンディーロールを含めた公知のすき入れ付与方法により行うことができる。
【0035】
本発明の効果を説明する。本発明のセキュリティ用紙の製造方法は、非木材を原材料とすることで、木材を利用するための森林伐採を減らすことにつながり、地球環境に配慮したセキュリティ用紙を製造することができる。加えて、本発明の製造方法で製造されるセキュリティ用紙は、すき入れの鮮明さ、用紙強度及び柔軟性を両立することができ、地球環境保護と用紙品質の両立を図ることができる。
【0036】
(第二及び第三の実施形態)
本発明の第一の実施形態では、離解工程(Step1)から抄紙工程(Step4)まで連続して実施する構成を説明したが、第二の実施形態として、叩解工程(Step2)まで実施した非木材パルプを、シート状に乾燥させて非木材パルプシートを作製して、後日、調製工程(Step3)を実施するまで保管する構成であってもよい。また、第三の実施形態として、あらかじめ叩解工程(Step2)まで実施された、シート状に乾燥された非木材パルプを購入して、調製工程(Step3)及び抄紙工程(Step4)を実施する構成であってもよい。
【0037】
(実施例)
本発明の実施例1から実施例3について説明する。なお、各実施例において、非木材パルプの繊維長分布は、メッツオートメーション社製FiberLabを用いてISO 16565-2及びJIS P 8226に基づき測定し、非木材パルプの保水度は、試験規格JAPAN TAPPI No.26に基づき測定した。加えて、セキュリティ用紙の用紙強度は、A&D社製テンシロン万能試験機を用いてJIS P 8113に基づき引張強度を評価した。
【0038】
(実施例1)
実施例1として、市販されている竹パルプシートを原材料に用いて、図1に示す製造方法でセキュリティ用紙を作製した。
【0039】
離解工程(Step1)では、離解機としてビーターを使用し、竹パルプシートを濃度約4%で離解を実施した結果、80分で未離解繊維が無くなった。
【0040】
叩解工程(Step2)では、叩解機としてダブルコニカルリファイナー(DCR)を使用して、叩解条件を濃度約4重量%、流量2m/min、刃間隙約1.0mmに設定し、ろ水時間が60秒となるまでサイクル処理を実施した結果、約17パスでろ水時間64秒程度の竹パルプ懸濁液が得られた。ここで、竹パルプ懸濁液の繊維長分布を測定した結果、繊維長0.5mm以下の短繊維の割合が20重量%以上であり、かつ、繊維長1.5mm以上の長繊維の割合が20重量%以上であることを確認した。また、竹パルプ懸濁液の保水度は、247%であった。
【0041】
調製工程(Step3)では、叩解工程(Step2)で作製した竹パルプ懸濁液に、乾燥紙力剤、てん料、硫酸バンド等の製紙用薬品を添加して、製紙用パルプを調整した。
【0042】
抄紙工程(Step4)では、製紙用パルプを長網抄紙機に投入した。このとき、長網抄紙機に設置されているダンディーロールにあらかじめすき入れとして形成したい模様を施すことで、すき入れを有するセキュリティ用紙を作製した。
【0043】
作製の結果、柔軟性を有するセキュリティ用紙が得られた。また、作製したセキュリティ用紙について、引張強度を評価するとともに、すき入れ模様の鮮明さについて官能評価を実施した。結果としては、いずれも良好であった。
【0044】
(実施例2)
実施例2として、市販されているマニラ麻パルプシートを原材料に用いて、図1に示す製造方法でセキュリティ用紙を作製した。
【0045】
離解工程(Step1)では、離解機としてパルパーを使用し、マニラ麻パルプシートを濃度約6%で離解を実施した結果、60分で未離解繊維がなくなった。
【0046】
叩解工程(Step2)では、叩解機としてダブルディスクリファイナー(DDR)を使用して、叩解条件を濃度約4重量%、流量1m/min、刃間隙約0.1mmに設定し、ろ水時間が60秒となるまでサイクル処理を実施した結果、約8パスでろ水時間61秒程度のマニラ麻パルプ懸濁液が得られた。ここで、マニラ麻パルプ懸濁液の繊維長を実施例1と同様の方法で測定した結果、繊維長0.5mm以下の短繊維の割合が20重量%以上であり、かつ、繊維長1.5mm以上の長繊維の割合が20重量%以上であることを確認した。また、マニラ麻パルプ懸濁液の保水度は、193%であった。
【0047】
調製工程(Step3)では、叩解工程で作製したマニラ麻パルプ懸濁液に、乾燥紙力剤、てん料、硫酸バンド等の製紙用薬品を添加して、製紙用パルプを調整した。
【0048】
抄紙工程(Step4)では、製紙用パルプを長網抄紙機に投入した。このとき、長網抄紙機に設置されているダンディーロールにあらかじめすき入れとして形成したい模様を施すことで、すき入れを有するセキュリティ用紙を作製した。
【0049】
作製の結果、柔軟性を有するセキュリティ用紙が得られた。また、作製したセキュリティ用紙について、引張強度を評価するとともに、すき入れ模様の鮮明さについて官能評価を実施した。結果については、いずれも良好であった。
【0050】
(実施例3)
実施例3として、原材料に竹パルプシート、かつ、主な添加料としてLBKP(広葉樹パルプ)を用いて、図1に示す製造方法でセキュリティ用紙を作製した。
【0051】
離解工程(Step1)では、離解機としてビーターを使用し、竹パルプシートを濃度約4%で離解を実施した結果、80分で未離解繊維がなくなった。
【0052】
叩解工程(Step2)では、叩解機としてダブルコニカルリファイナー(DCR)を使用して、叩解条件を濃度約4重量%、流量2m/min、刃間隙約1.0mmに設定し、ろ水時間が60秒となるまでサイクル処理を実施した結果、約17パスで、ろ水時間64秒程度の竹パルプ懸濁液が得られた。ここで、竹パルプ懸濁液の繊維長分布を測定した結果、繊維長0.5mm以下の短繊維の割合が20重量%以上、繊維長1.5mm以上の長繊維の割合が20重量%以上であることを確認した。また、竹パルプ懸濁液の保水度は、247%であった。
【0053】
調製工程(Step3)では、製紙用パルプ全量に対して、竹パルプ懸濁液40重量、添加料としてLBKP(広葉樹パルプ)50重量%を配合するとともに、乾燥紙力剤、てん料、硫酸バンド等の製紙用薬品を10重量%添加して、製紙用パルプを調整した。
【0054】
抄紙工程(Step4)では、製紙用パルプを長網抄紙機に投入した。このとき、長網抄紙機に設置されているダンディーロールにあらかじめすき入れとして形成したい模様を施すことで、すき入れを有するセキュリティ用紙を作製した。
【0055】
作製の結果、柔軟性を有するセキュリティ用紙が得られた。また、作製したセキュリティ用紙について、引張強度を評価するとともに、すき入れ模様の鮮明さについて官能評価を実施した。結果については、いずれも良好であった。
図1