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特許7537846処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法
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  • 特許-処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240814BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021015287
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118626
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】里吉 務
(72)【発明者】
【氏名】笠原 稔大
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-140939(JP,A)
【文献】特表2016-531436(JP,A)
【文献】特開2006-186323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/505
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置を構成し、基板を内部に収容してプラズマ処理を行う処理容器であって、
前記処理容器のうち、プラズマに晒される側壁と底板の第一内側面の少なくとも一部には第一絶縁膜が形成されており、
前記第一内側面を少なくともプラズマから保護する前記側壁と前記底板とに配設される保護面材のうち、前記第一絶縁膜と対向する背面には第二絶縁膜が形成されており、
前記第一絶縁膜と前記第二絶縁膜が面接触している、処理容器。
【請求項2】
前記第一内側面において、複数の前記保護面材が隣接して取り付けられており、
一方の前記保護面材のうち、隣接する他方の前記保護面材に対向する端面にも、前記第二絶縁膜が形成されており、
対向する前記絶縁膜同士が面接触している、請求項1に記載の処理容器。
【請求項3】
前記処理容器と前記保護面材はいずれも、アルミニウム、もしくはアルミニウム合金を含む金属により形成されており、
前記保護面材のうち、前記プラズマに晒される第二内側面は前記金属が露出する面である、請求項1又は2に記載の処理容器。
【請求項4】
前記第一内側面は接地電位を備えており、
前記処理容器と前記保護面材が金属製の締結部材を介して相互に接続され、前記保護面材が接地電位を備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処理容器。
【請求項5】
前記第一絶縁膜と前記第二絶縁膜は、アルマイト被膜、イットリウム溶射膜、フッ化イットリウム溶射膜、アルミナ溶射膜を含むセラミックス溶射膜、吹付け樹脂膜、定型樹脂膜のいずれか一種である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の処理容器を有する、プラズマ処理装置。
【請求項7】
プラズマ処理装置を構成し、基板を内部に収容してプラズマ処理を行う処理容器の製造方法であって、
前記処理容器のうち、プラズマに晒される側壁と底板の第一内側面の少なくとも一部に第一絶縁膜を形成する工程と、
前記第一内側面を少なくともプラズマから保護する前記側壁と前記底板とに配設される保護面材のうち、前記第一絶縁膜と対向する背面に第二絶縁膜を形成する工程と、
前記第一絶縁膜と前記第二絶縁膜を面接触させて、前記第一内側面に対して前記保護面材を取り付ける工程とを有する、処理容器の製造方法。
【請求項8】
前記第二絶縁膜を形成する工程では、前記保護面材のうち、隣接する他方の前記保護面材に対向する端面にも、前記第二絶縁膜を形成し、
前記保護面材を取り付ける工程では、隣接する前記保護面材の備える前記第二絶縁膜同士を面接触させる、請求項7に記載の処理容器の製造方法。
【請求項9】
前記処理容器と前記保護面材はいずれも、アルミニウム、もしくはアルミニウム合金を含む金属により形成されており、
前記保護面材のうち、前記プラズマに晒される第二内側面は前記金属が露出する面である、請求項7又は8に記載の処理容器の製造方法。
【請求項10】
前記第一内側面を接地する工程をさらに有し、
前記保護面材を取り付ける工程では、前記処理容器と前記保護面材を金属製の締結部材を介して相互に接続し、前記保護面材を接地する、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の処理容器の製造方法。
【請求項11】
前記第一絶縁膜と前記第二絶縁膜は、アルマイト被膜、イットリウム溶射膜、フッ化イットリウム溶射膜、アルミナ溶射膜を含むセラミックス溶射膜、吹付け樹脂膜、定型樹脂膜のいずれか一種である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の処理容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被処理体を内部に収容してプラズマ処理を行う、処理容器が開示されている。この処理容器は、開口部分を有する容器本体と、容器本体をプラズマおよび/または腐食性ガスによる損傷から保護する保護部材とを備えている。保護部材は、容器本体の内壁面に沿って配設された第1の保護部材と、開口部分の周囲において、第1の保護部材と分離して着脱可能に配設された第2の保護部材とを有している。特許文献1に開示の処理容器によれば、処理容器の内面を保護する保護部材の交換作業を容易にでき、部品コストを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-140939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、パーティクルの発生の抑制と放電の安定化を図ることのできる、処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による処理容器は、
プラズマ処理装置を構成し、基板を内部に収容してプラズマ処理を行う処理容器であって、
前記処理容器のうち、プラズマに晒される第一内側面の少なくとも一部には第一絶縁膜が形成されており、
前記第一内側面を少なくともプラズマから保護する保護面材のうち、前記第一絶縁膜と対向する背面には第二絶縁膜が形成されており、
前記第一絶縁膜と前記第二絶縁膜が面接触している。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、パーティクルの発生の抑制と放電の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る処理容器の一例と、実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す縦断面図である。
図2図1のII部を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態に係る処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0009】
[実施形態に係る処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法]
図1及び図2を参照して、本開示の実施形態に係る処理容器とプラズマ処理装置、及び処理容器の製造方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る処理容器の一例と、実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す縦断面図であり、図2は、図1のII部を拡大した縦断面図である。
【0010】
図1に示すプラズマ処理装置100は、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display、以下、「FPD」という)用の平面視矩形の基板G(以下、単に「基板」という)に対して、各種の基板処理方法を実行する誘導結合型プラズマ(Inductive Coupled Plasma: ICP)処理装置である。基板の材料としては、主にガラスが用いられ、用途によっては透明の合成樹脂などが用いられることもある。ここで、基板処理には、エッチング処理や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた成膜処理等が含まれる。FPDとしては、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display: LCD)やエレクトロルミネセンス(Electro Luminescence: EL)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)等が例示される。基板は、その表面に回路がパターニングされる形態の他、支持基板も含まれる。また、FPD用基板の平面寸法は世代の推移と共に大規模化しており、プラズマ処理装置100によって処理される基板Gの平面寸法は、例えば、第6世代の1500mm×1800mm程度の寸法から、第10.5世代の3000mm×3400mm程度の寸法までを少なくとも含む。また、基板Gの厚みは0.2mm乃至数mm程度である。
【0011】
図1に示すプラズマ処理装置100は、直方体状の箱型の処理容器20と、処理容器20内に配設されて基板Gが載置される平面視矩形の外形の基板載置台70と、制御部90とを有する。尚、処理容器は、円筒状の箱型や楕円筒状の箱型などの形状であってもよく、この形態では、基板載置台も円形もしくは楕円形となり、基板載置台に載置される基板も円形等になる。
【0012】
処理容器20は、金属窓30により上下2つの空間に区画されており、上方空間であるアンテナ室Aは上チャンバー13により形成され、下方空間である処理室Sは下チャンバー17により形成される。処理容器20において、上チャンバー13と下チャンバー17の境界となる位置には矩形環状の支持枠14が処理容器20の内側に突設するようにして配設されており、支持枠14に金属窓30が取り付けられている。
【0013】
アンテナ室Aを形成する上チャンバー13は、側壁11と天板12とにより形成され、全体としてアルミニウムやアルミニウム合金等の金属により形成される。
【0014】
処理室Sを内部に有する下チャンバー17は、側壁15と底板16とにより形成され、全体としてアルミニウムやアルミニウム合金等の金属により形成される。また、側壁15は、接地線21により接地されている。
【0015】
側壁15と底板16のうち、それぞれの処理室Sに臨む第一内側面18a、18bは、プラズマに晒される側面である。下チャンバー17では、側壁15と底板16の第一内側面18a、18bの全域、もしくは、特にプラズマエロージョン耐性が要求される領域において、図2に示す保護面材40が取り付けられている。尚、第一内側面18が保護面材40により保護されている構成については、以下で詳説する。
【0016】
支持枠14は、導電性のアルミニウムやアルミニウム合金等の金属により形成されており、金属枠と称することもできる。
【0017】
下チャンバー17の側壁15の上端には、矩形環状(無端状)のシール溝22が形成されており、シール溝22にOリング等のシール部材23が嵌め込まれ、シール部材23を支持枠14の当接面が保持することにより、下チャンバー17と支持枠14とのシール構造が形成される。
【0018】
下チャンバー17の側壁15には、下チャンバー17に対して基板Gを搬出入するための搬出入口15aが開設されており、搬出入口15aはゲートバルブ24により開閉自在に構成されている。下チャンバー17には搬送機構を内包する搬送室(いずれも図示せず)が隣接しており、ゲートバルブ24を開閉制御し、搬送機構にて搬出入口15aを介して基板Gの搬出入が行われる。
【0019】
また、下チャンバー17の有する底板16には複数の排気口16aが開設されており、各排気口16aにはガス排気管25が接続され、ガス排気管25は開閉弁26を介して排気装置27に接続されている。ガス排気管25、開閉弁26及び排気装置27により、ガス排気部28が形成される。排気装置27はターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有し、プロセス中に下チャンバー17内を所定の真空度まで真空引き自在に構成されている。尚、下チャンバー17の適所には圧力計(図示せず)が設置されており、圧力計によるモニター情報が制御部90に送信されるようになっている。
【0020】
基板載置台70は、基材71と、基材71の上面71aに形成されている静電チャック76とを有する。
【0021】
基材71の平面視形状は矩形であり、基板載置台70に載置される基板Gと同程度の平面寸法を有する。基材71の長辺の長さは1800mm乃至3400mm程度に設定でき、短辺の長さは1500mm乃至3000mm程度に設定できる。この平面寸法に対して、基材71の厚みは、例えば50mm乃至100mm程度となり得る。
【0022】
基材71には、矩形平面の全領域をカバーするように蛇行した温調媒体流路72aが設けられており、ステンレス鋼やアルミニウム、アルミニウム合金等から形成される。尚、温調媒体流路72aは、静電チャック76に設けられてもよい。また、基材71が、図示例のように一部材でなく、アルミニウムもしくはアルミニウム合金等による二部材の積層体により形成されてもよい。
【0023】
下チャンバー17の底板16の上には、絶縁材料により形成されて内側に段部を有する箱型の台座78が固定されており、台座78の段部の上に基板載置台70が載置される。
【0024】
基材71の上面71aには、基板Gが直接載置される静電チャック76が形成されている。静電チャック76は、アルミナ等のセラミックスを溶射して形成される誘電体被膜であるセラミックス層74と、セラミックス層74の内部に埋設されて静電吸着機能を有する導電層75(電極)とを有する。
【0025】
導電層75は、給電線84を介して直流電源85に接続されている。制御部90により、給電線84に介在するスイッチ(図示せず)がオンされると、直流電源85から導電層75に直流電圧が印加されることによりクーロン力が発生する。このクーロン力により、基板Gが静電チャック76の上面に静電吸着され、基材71の上面71aに載置された状態で保持される。
【0026】
基板載置台70を構成する基材71には、矩形平面の全領域をカバーするように蛇行した温調媒体流路72aが設けられている。温調媒体流路72aの両端には、温調媒体流路72aに対して温調媒体が供給される送り配管72bと、温調媒体流路72aを流通して昇温された温調媒体が排出される戻り配管72cとが連通している。
【0027】
図1に示すように、送り配管72bと戻り配管72cにはそれぞれ、送り流路87と戻り流路88が連通しており、送り流路87と戻り流路88はチラー86に連通している。チラー86は、温調媒体の温度や吐出流量を制御する本体部と、温調媒体を圧送するポンプとを有する(いずれも図示せず)。尚、温調媒体としては冷媒が適用され、この冷媒には、ガルデン(登録商標)やフロリナート(登録商標)等が適用される。図示例の温調形態は、基材71に温調媒体を流通させる形態であるが、基材71がヒータ等を内蔵し、ヒータにより温調する形態であってもよいし、温調媒体とヒータの双方により温調する形態であってもよい。また、ヒータの代わりに、高温の温調媒体を流通させることにより加熱を伴う温調を行ってもよい。尚、抵抗体であるヒータは、タングステンやモリブデン、もしくはこれらの金属のいずれか一種とアルミナやチタン等との化合物から形成される。また、図示例は、基材71に温調媒体流路72aが形成されているが、例えば静電チャック76が温調媒体流路を有していてもよい。
【0028】
基材71には熱電対等の温度センサ(図示せず)が配設されており、温度センサによるモニター情報は、制御部90に随時送信される。そして、送信されたモニター情報に基づいて、基材71及び基板Gの温調制御が制御部90により実行される。より具体的には、制御部90により、チラー86から送り流路87に供給される温調媒体の温度や流量が調整される。そして、温度調整や流量調整が行われた温調媒体が温調媒体流路72aに循環されることにより、基板載置台70の温調制御が実行される。尚、熱電対等の温度センサは、例えば静電チャック76に配設されてもよい。
【0029】
静電チャック76及び基材71の外周と、台座78の上面とにより段部が形成され、この段部には、矩形枠状のフォーカスリング79が載置されている。段部にフォーカスリング79が設置された状態において、フォーカスリング79の上面の方が静電チャック76の上面よりも低くなるよう設定されている。フォーカスリング79は、アルミナ等のセラミックスもしくは石英等から形成される。
【0030】
基材71の下面には、給電部材80が接続されている。給電部材80の下端には給電線81が接続されており、給電線81はインピーダンス整合を行う整合器82を介してバイアス電源である高周波電源83に接続されている。基板載置台70に対して高周波電源83から例えば3.2MHzの高周波電力が印加されることにより、RFバイアスを発生させ、以下で説明するプラズマ発生用のソース源である高周波電源56にて生成されたイオンを基板Gに引き付けることができる。従って、プラズマエッチング処理においては、エッチングレートとエッチング選択比を共に高めることが可能になる。このように、基板載置台70は、基板Gを載置しRFバイアスを発生させるバイアス電極を形成する。この時、チャンバー内部の接地電位となる部位がバイアス電極の対向電極として機能し、高周波電力のリターン回路を構成する。尚、金属窓30を高周波電力のリターン回路の一部として構成してもよい。金属窓30は、複数の分割金属窓31により形成される。金属窓30を形成する分割金属窓31の数は、12個、24個等、多様な個数が設定できる。
【0031】
分割金属窓31は、導体プレート32と、シャワープレート34とを有する。導体プレート32とシャワープレート34はいずれも、非磁性で導電性を有し、さらに耐食性を有する金属もしくは耐食性の表面加工が施された金属である、アルミニウムやアルミニウム合金、ステンレス鋼等により形成されている。耐食性を有する表面加工は、例えば、陽極酸化処理やセラミックス溶射などである。また、処理室Sに臨むシャワープレート34の露出面34aには、陽極酸化処理やセラミックス溶射による耐プラズマコーティングが施されていてもよい。導体プレート32は接地線(図示せず)を介して接地されており、シャワープレート34も相互に接合される導体プレート32を介して接地されている。
【0032】
金属窓30を構成する各分割金属窓31は、複数本のサスペンダ(図示せず)により、上チャンバー13の天板12から吊り下げられている。それぞれの分割金属窓31の上方には、絶縁部材により形成されるスペーサ(図示せず)が配設され、該スペーサにより導体プレート32から離間して高周波アンテナ51が配設されている。高周波アンテナ51はプラズマの生成に寄与し、銅等の良導電性の金属から形成されるアンテナ線を、環状もしくは渦巻き状に巻装することにより形成される。例えば、環状のアンテナ線を多重に配設してもよい。高周波アンテナ51は、分割金属窓31の上面に配設されていることから、分割金属窓31を介して天板12から吊り下げられている。
【0033】
導体プレート32の下面には、ガス拡散溝33が形成されており、ガス拡散溝33と上端面32aとを連通する貫通孔32bが設けられている。この貫通孔32bに、ガス導入管52が埋設されている。シャワープレート34には、導体プレート32のガス拡散溝33と処理室Sとに連通する、複数のガス吐出孔35が開設されている。シャワープレート34は、導体プレート32のガス拡散溝33の外側の領域の下面に対して、金属製のネジ(図示せず)によって締結されている。尚、ガス拡散溝は、シャワープレートの上面に開設されてもよい。
【0034】
それぞれの分割金属窓31は、絶縁部材37により、支持枠14や隣接する分割金属窓31と相互に電気的に絶縁されている。ここで、絶縁部材37は、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等のフッ素樹脂により形成される。絶縁部材37の処理室Sに臨む端面37aは、シャワープレート34の処理室Sに臨む露出面34aと面一となっており、絶縁性を有するカバー部材38が、絶縁部材37の端面37aを被覆しながら、隣接するシャワープレート34の露出面34aに跨がって配設されている。このカバー部材38は、アルミナ等のセラミックスにより形成されている。
【0035】
絶縁部材37は、絶縁性能が高く、軽量なPTFEなどの樹脂により形成されているが、アルミナ等のセラミックスと比較して樹脂の耐プラズマ性は高くない。さらに、樹脂の表面に対して、陽極酸化処理やセラミックス溶射による耐プラズマコーティングを行うことは難しい。そこで、プラズマ処理装置100では、絶縁部材37の処理室S側の端面37aを、例えばセラミックス製のカバー部材38にて被覆することにより、プラズマから絶縁部材37を保護している。支持枠14と分割金属窓31や、隣接する分割金属窓31同士を相互に絶縁する各絶縁部材37は、カバー部材38により被覆されている。
【0036】
高周波アンテナ51には、上チャンバー13の上方に延設する給電部材53が接続されており、給電部材53の上端には給電線54が接続され、給電線54はインピーダンス整合を行う整合器55を介して高周波電源56に接続されている。
【0037】
高周波アンテナ51に対して高周波電源56から例えば13.56MHzの高周波電力が印加されることにより、下チャンバー17内に誘導電界が形成される。この誘導電界により、シャワープレート34から処理室Sに供給された処理ガスがプラズマ化されて誘導結合型プラズマが生成され、プラズマ中のイオンが基板Gに提供される。
【0038】
高周波電源56はプラズマ発生用のソース源であり、基板載置台70に接続されている高周波電源83は、発生したイオンを引き付けて運動エネルギを付与するバイアス源となる。このように、イオンソース源には誘導結合を利用してプラズマを生成し、別電源であるバイアス源を基板載置台70に接続してイオンエネルギの制御を行うことより、プラズマの生成とイオンエネルギの制御が独立して行われ、プロセスの自由度を高めることができる。
【0039】
図1に示すように、それぞれの分割金属窓31の有するガス導入管52は、アンテナ室A内で一箇所に纏められ、上方に延びるガス導入管52は上チャンバー13の天板12に開設されている供給口12aを気密に貫通する。そして、ガス導入管52は、気密に結合されたガス供給管61を介して処理ガス供給源64に接続されている。
【0040】
ガス供給管61の途中位置には開閉バルブ62とマスフローコントローラのような流量制御器63が介在している。ガス供給管61、開閉バルブ62、流量制御器63及び処理ガス供給源64により、処理ガス供給部60が形成される。尚、ガス供給管61は途中で分岐しており、各分岐管には開閉バルブと流量制御器、及び処理ガス種に応じた処理ガス供給源が連通している(図示せず)。
【0041】
プラズマ処理においては、処理ガス供給部60から供給される処理ガスがガス供給管61及びガス導入管52を介して、各分割金属窓31の有する導体プレート32のガス拡散溝33に供給される。そして、各ガス拡散溝33から各シャワープレート34のガス吐出孔35を介して、処理室Sに吐出される。
【0042】
尚、各分割金属窓31の有するガス導入管52が一つに纏められることなく、それぞれが単独に処理ガス供給部60に連通し、分割金属窓31ごとに処理ガスの供給制御が行われてもよい。また、金属窓30の外側に位置する複数の分割金属窓31の有するガス導入管52が一つに纏められ、金属窓30の内側に位置する複数の分割金属窓31の有するガス導入管52が別途一つに纏められ、それぞれのガス導入管52が個別に処理ガス供給部60に連通して処理ガスの供給制御が行われてもよい。すなわち、前者の形態は、分割金属窓31ごとに処理ガスの供給制御が実行される形態であり、後者の形態は、金属窓30の外部領域と内部領域に分けて処理ガスの供給制御が実行される形態である。さらに、各分割金属窓31が固有の高周波アンテナを有し、各高周波アンテナに対して個別に高周波電力が印加される制御が実行されてもよい。
【0043】
制御部90は、プラズマ処理装置100の各構成部、例えば、チラー86や、高周波電源56,83、処理ガス供給部60、圧力計から送信されるモニター情報に基づくガス排気部28等の動作を制御する。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、RAMやROMの記憶領域に格納されたレシピ(プロセスレシピ)に従い、所定の処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対するプラズマ処理装置100の制御情報が設定されている。制御情報には、例えば、ガス流量や処理容器20内の圧力、処理容器20内の温度や基材71の温度、プロセス時間等が含まれる。
【0044】
レシピ及び制御部90が適用するプログラムは、例えば、ハードディスクやコンパクトディスク、光磁気ディスク等に記憶されてもよい。また、レシピ等は、CD-ROM、DVD、メモリカード等の可搬性のコンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体に収容された状態で制御部90にセットされ、読み出される形態であってもよい。制御部90はその他、コマンドの入力操作等を行うキーボードやマウス等の入力装置、プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示装置、及びプリンタ等の出力装置といったユーザーインターフェイスを有している。
【0045】
次に、図2を参照して、処理容器20を構成する下チャンバー17の側壁15から底板16に亘る第一内側面18のうち、保護面材40が取り付けられている領域の構成について説明する。
【0046】
アルミニウムやアルミニウム合金により形成されている側壁15と底板16の第一内側面18a、18bには、塩素系ガス等による第一内側面18a、18bの腐食や消耗を防止するべく、第一絶縁膜43が形成されている。
【0047】
第一絶縁膜43としては、アルマイト被膜、イットリウム溶射膜、フッ化イットリウム溶射膜、アルミナ溶射膜を含むセラミックス溶射膜や、吹付け樹脂膜、テフロン(登録商標)シート等の定型樹脂膜のいずれか一種が適用される。中でも、施工性やコスト等の観点から、第一絶縁膜43にはアルマイト被膜が好適である。
【0048】
図示例の下チャンバー17では、第一絶縁膜43の表面43aに対して保護面材40が取り付けられている。
【0049】
保護面材40は、側壁15や底板16と同様に、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により形成されている。保護面材40のうち、プラズマに晒される前面40a(処理室Sに臨む面)は、アルミニウム等が露出した無垢面となっている。一方、保護面材40のうち、第一絶縁膜43と対向する背面40bには、第二絶縁膜41が形成されている。
【0050】
第二絶縁膜41は、第一絶縁膜43と同様にアルマイト等により形成されており、第二絶縁膜41の表面41aが第一絶縁膜43の表面43aと面接触している。
【0051】
図示例は、側壁15の第一内側面18aに設けられている第一絶縁膜43Aに対して、保護面材40Aの背面40bに設けられている第二絶縁膜41Aが面接触している。また、底板16の第一内側面18bに設けられている第一絶縁膜43Bに対して、保護面材40Bの背面40bに設けられている第二絶縁膜41Bが面接触している。
【0052】
また、保護面材40A,40Bは隣接して取り付けられているが、双方の保護面材40A,40Bの有する相互に対向する端面40cにもそれぞれ、第二絶縁膜42A,42Bが形成されている。そして、第二絶縁膜42A,42Bの表面42a同士は面接触している。
【0053】
保護面材40Aには貫通孔40dが開設されており、側壁15のうち、保護面材40Aが取り付けられた際に貫通孔40dと対応する位置には、ネジ溝18cが設けられている。貫通孔40dに対して、金属製の締結部材45が挿通され、締結部材45の先端がネジ溝18cに螺合されることにより、保護面材40Aが側壁15の第一内側面18aに固定される。
【0054】
一方、保護面材40Bにも貫通孔40dが開設されており、底板16のうち、保護面材40Bが取り付けられた際に貫通孔40dと対応する位置には、ネジ溝18dが設けられている。貫通孔40dに対して、金属製の締結部材45が挿通され、締結部材45の先端がネジ溝18dに螺合されることにより、保護面材40Bが底板16の第一内側面18bに固定される。
【0055】
金属製の締結部材45としては、図示例の頭付きボルトの他、ネジ等が適用される。側壁15と底板16は接地線21を介して接地されており、従って、第一内側面18a,18bは接地電位を備えている。そして、接地電位を備えている第一内側面18a,18bに対して、金属製の締結部材45を介して保護面材40A,40Bが固定されることにより、保護面材40A,40Bも接地電位を備えることになる。このことにより、保護面材40A,40Bは、バイアス用高周波電源83によって載置台70に対してバイアス用高周波電圧が印加された際に、載置台70に対する対向電極の一部を形成することができる。
【0056】
下チャンバー17の第一内側面18に対して第一絶縁膜43が形成されることにより、上記するように、塩素系ガス等による第一内側面18の腐食や消耗を防止可能な保護構造が形成される。図示例の下チャンバー17では、第一絶縁膜43の表面に保護面材40が取り付けられていることから、フッ素系ガスによる第一絶縁膜43の消耗を防止可能な保護構造が形成されている。
【0057】
すなわち、図示例の下チャンバー17の第一内側面18は、耐フッ素系ガス仕様の保護構造を有することになるが、将来的に耐塩素系ガス仕様の処理容器に切り換える(転用する)場合には、保護面材40の前面40aにも第二絶縁膜で覆われた保護面材40を取り付ければよい。
【0058】
ところで、第一絶縁膜43に対して保護面材40の金属面を当接させた状態で取り付ける場合、第一絶縁膜43の表面43aに対して保護面材40の平坦な金属面が当接することから、場所ごとに絶縁と導通が不定となり、電気的に不安定な状態となり得る。より具体的には、第一絶縁膜43の表面43aにおける微少孔や、熱摺動により表面43aが擦れて表面43aの一部が剥離している箇所では、側壁15や底板16と保護面材40との間に電流パスが形成され得る。そして、形成された電流パスが断続的に繋がることにより、絶縁と導通が不定な状態となり得る。このことは、相互に隣接する保護面材40の端面の界面においても同様である。
【0059】
しかしながら、図示例の下チャンバー17では、第一内側面18に形成されている第一絶縁膜43の表面43aに対して、保護面材40の背面40bに形成されている第二絶縁膜41の表面41aが面接触している。さらに、相互に隣接する保護面材40A,40Bの端面40cにもそれぞれ、第二絶縁膜42A,42Bが形成され、第二絶縁膜42A,42Bの表面42a同士が面接触している。このことにより、表面41a,43aの界面や表面42a同士の界面における安定的な絶縁を図ることができ、界面の場所ごとに絶縁と導通が不定となるといった問題は生じない。そのため、電気的安定性と放電安定性のある下チャンバー17が形成される。
【0060】
また、下チャンバー17の第一内側面18に対して保護面材40が取り付けられ、保護面材40における処理室Sに臨む面が金属が露出した無垢面となっていることにより、フッ素系ガスによって第一絶縁膜43が消耗されてパーティクルが発生したり、消耗による局所的な無垢面の露出が引き起こす放電不安定といった問題も生じない。
【0061】
このように、図示する処理容器20とこれを備えたプラズマ処理装置100によれば、フッ素系ガスによるパーティクルの発生を抑制もしくは抑止しながら、高い電気的安定性と放電安定性が得られる。
【0062】
次に、実施形態に係る処理容器20の製造方法の一例を概説する。
【0063】
この製造方法は、処理容器20のうち、プラズマに晒される第一内側面18の少なくとも一部に第一絶縁膜43を形成する工程を備える。
【0064】
また、第一内側面18を少なくともプラズマから保護する保護面材40のうち、第一絶縁膜43と対向する背面40bに第二絶縁膜41を形成する工程を備える。
【0065】
さらに、第一絶縁膜43と第二絶縁膜41を面接触させて、第一内側面18に対して保護面材40を取り付ける工程を備える。
【0066】
第二絶縁膜41を形成する工程では、保護面材40のうち、隣接する他方の保護面材40に対向する端面40cにも、第二絶縁膜42を形成する。そして、保護面材40を取り付ける工程では、隣接する保護面材40の備える第二絶縁膜42同士を面接触させる。
【0067】
この処理容器20の製造方法によれば、フッ素系ガスによるパーティクルの発生を抑制もしくは抑止でき、高い電気的安定性と放電安定性を有する処理容器20を製造できる。
【0068】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本開示はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0069】
例えば、図示例のプラズマ処理装置100は金属窓を備えた誘導結合型のプラズマ処理装置として説明したが、金属窓の代わりに誘電体窓を備えた誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよく、他の形態のプラズマ処理装置であってもよい。具体的には、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(Electron Cyclotron resonance Plasma; ECP)やヘリコン波励起プラズマ(Helicon Wave Plasma; HWP)、平行平板プラズマ(Capacitively coupled Plasma; CCP)が挙げられる。また、マイクロ波励起表面波プラズマ(Surface Wave Plasma; SWP)が挙げられる。これらのプラズマ処理装置は、ICPを含めて、いずれもイオンフラックスとイオンエネルギを独立に制御でき、エッチング形状や選択性を自由に制御できると共に、1011乃至1013cm-3程度と高い電子密度が得られる。
【符号の説明】
【0070】
18,18a,18b:第一内側面
20:処理容器
40,40A,40B:保護面材
40b:背面
41:第二絶縁膜
43,43A,43B:第一絶縁膜
100:プラズマ処理装置
G:基板
図1
図2