(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エッジ部のチッピング検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240814BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2020052086
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】山崎 直樹
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178298(JP,A)
【文献】特開2010-016048(JP,A)
【文献】特開2007-290111(JP,A)
【文献】特開2010-181249(JP,A)
【文献】特開2014-085295(JP,A)
【文献】特開2009-002679(JP,A)
【文献】特開2007-256272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの外周縁部に形成され、前記ウエハの主面に対して傾斜した面取り面のチッピングを検出するチッピング検出装置において、
前記面取り面へ前記ウエハの前記主面に対して平行な方向から光を照射するLED照明装置と、
前記LED照明装置から照射された光によって照明された前記面取り面と前記主面とを前記主面に対して直交する方向から撮像する撮像手段と、
前記LED照明装置を前記ウエハの中心方向から覆うように設けられた反射板と、を備え、前記撮像手段によって撮像された画像から前記チッピングを検出
し、
前記反射板は、上面から見た形状がコの字状あるいは円弧状であり、高さ方向の中央部にスリットが設けられたチッピング検出装置。
【請求項2】
前記反射板は、前記LED照明装置側が前記面取り面を前記ウエハの前記中心方向へ超えた位置に設置されたことを特徴とする請求項1に記載のチッピング検出装置。
【請求項3】
前記反射板の前記LED照明装置側は、マンセル値N9.5、RGB(245、246、242)の白色で塗装されたことを特徴とする請求項1
又は2のいずれ
かに記載のチッピング検出装置。
【請求項4】
前記反射板は、前記LED照明装置と平行な面に対して30~60°傾いた斜面を有したことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のチッピング検出装置。
【請求項5】
前記LED照明装置から照射される光の波長は570nm以下とされたことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のチッピング検出装置。
【請求項6】
前記LED照明装置と前記反射板との間で前記面取り面より前記LED照明装置側に拡散板を設けたことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載のチッピング検出装置。
【請求項7】
前記撮像手段は、前記ウエハを挟んで一方側に配置された上面用カメラと、前記ウエハを挟んで他方側に配置された下面用カメラとを備えたことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載のチッピング検出装置。
【請求項8】
前記LED照明装置は、複数の青色発光LEDを配置したパネル型の面光源とされたことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載のチッピング検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハエッジ部の形状測定に係り、特にウエハ、あるいはツルーイング砥石エッジ部のチッピングをその端部の撮像画像に基づいて検出するエッジ部のチッピング検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの製造時において、ウエハの端部(縁部)が、他の部品やウエハ保持部材と接触することによって傷ついたり、欠けたりする場合がある。さらに、その傷や欠けが原因でウエハが割れることもある。このため、ウエハの製造工程においては、その端部に生じた傷を精度良く、検出することが必要とされる。
【0003】
例えば、特許文献1は、面取り加工されたエッジ部の形状(面取り形状:角度と面幅)を測定するため、測定対象物の端部に対し表裏各面に平行な方向から照射幅がウエハの厚さ幅よりも大きい光束を投光し、表裏各面側におけるその表面に直角の方向から2つのカメラで撮像する。そして、撮像画像における明部の像の幅を面取り加工された端面の幅として検出することを記載している。
【0004】
また、特許文献2は、ウエハのノッチ部の研削条痕を視認するため、照明手段からノッチ部の直線部の任意点に入射する光のうち、直線状部の法線に対する光線の入射角が基準入射角以上である光線を遮光することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-181249号公報
【文献】特開2014-85295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術において、特許文献1は、単に、面取り加工された端面以外の表面が鏡面であるか非鏡面であるかに係らず、その面取り加工された端面の幅を測定したり、表裏各面それぞれの側についての測定を同時に行ったりするだけなので、ウエハエッジ部のチッピングの状態が検出できるものではない。
【0007】
また、同様に、特許文献2は、ウエハのノッチ部の面取り面に形成されている研削条痕を視認することができるものの、ウエハエッジ部のチッピングの状態に基づいてウエハの品質を評価することができなかった。また、チッピングに照射される光量不足、光がチッピングに対して奥行き方向に照射されないこと、チッピングは面幅から欠けて形成されること、などより検出精度が低かった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ウエハエッジ部のチッピングを高精度に検出するエッジ部のチッピング検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ウエハの外周縁部に形成され、前記ウエハの主面に対して傾斜した面取り面のチッピングを検出するチッピング検出装置において、前記面取り面へ前記ウエハの前記主面に対して平行な方向から光を照射するLED照明装置と、前記LED照明装置から照射された光によって照明された前記面取り面と前記主面とを前記主面に対して直交する方向から撮像する撮像手段と、前記LED照明装置を前記ウエハの中心方向から覆うように設けられた反射板と、を備え、前記撮像手段によって撮像された画像から前記チッピングを検出するものである。
【0010】
また、上記のチッピング検出装置において、前記反射板は、前記LED照明装置側が前記面取り面を前記ウエハの前記中心方向へ超えた位置に設置されたことが望ましい。
【0011】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記反射板は、上面から見た形状がコの字状あるいは円弧状であり、高さ方向の中央部にスリットが設けられたことが望ましい。
【0012】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記反射板の前記LED照明装置側は、マンセル値N9.5、RGB(245、246、242)の白色で塗装されたことが望ましい。
【0013】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記反射板は、前記LED照明装置と平行な面に対して30~60°傾いた斜面を有したことが望ましい。
【0014】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記LED照明装置から照射される光の波長は570nm以下とされたことが望ましい。
【0015】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記LED照明装置と前記反射板との間で前記面取り面より前記LED照明装置側に拡散板を設けたことが望ましい。
【0016】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記撮像手段は、前記ウエハを挟んで一方側に配置された上面用カメラと、前記ウエハを挟んで他方側に配置された下面用カメラとを備えたことが望ましい。
【0017】
さらに、上記のチッピング検出装置において、前記LED照明装置は、複数の青色発光LEDを配置したパネル型の面光源とされたことが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、LED照明装置をウエハの中心方向から覆うように設けられた反射板を設け、ウエハに対して平行な方向からLED照明装置で照射して、ウエハの主面に対して直交する方向から撮像された画像からチッピングを検出するので、反射板で乱反射した光がチッピングの深さ方向にも照射されてチッピングの状態を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるチッピング検出装置の主要部を示す側面図
【
図3】一実施形態による面取り部(面取り加工されたエッジ部)における光の照射を示す拡大断面図
【
図5】従来の面取り部(面取り加工されたエッジ部)における光の照射を示す拡大断面図
【
図6】撮像手段によりチッピング8を検出した一実施形態の撮像画像を従来技術と比較した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、チッピング検出装置の主要部を示す側面図、
図2は平面図、
図3は、面取り部(面取り加工されたエッジ部)における光の照射を示す拡大断面図である。半導体ウエハエッジ部の形状測定は、カメラ、照明装置を用いて、面取り角度、面幅等を測定している。その装置は、ウエハ2の測定場所に対してカメラを垂直に設置し、それに対して直交するように照明機器は設置されている。チッピング検出は、形状測定の例であり、特に形状測定として重要とされて面幅の計測と同様に行われる。
【0021】
形状測定装置、あるいはチッピング検出装置は、ウエハ2の主面Pを水平姿勢で吸着保持して回転可能な回転テーブル3、照明手段としてのLED照明装置4、撮像手段としてウエハ2を挟んで一方側に配置された上面用カメラ6、ウエハを挟んで他方側に配置された下面用カメラ5を備えている。その他図示していないが、チッピング検出装置は、画像処理装置、モニタ等を有している。回転テーブル3は、面取り加工終了後に洗浄されたウエハ2が載置される。面取り面Cは、ウエハ2の外周縁部に形成され、ウエハ2の主面Pに対して傾斜している。
【0022】
LED照明装置4は、回転テーブル3の側方に配置され、ウエハ2のエッジ部に、ウエハ2に対して平行な方向から光を矢印Aに示すように照射する。また、光は、矢印Bに示すように反射板1で反射する。LED照明装置4は、照明光が面光源となるように照明光の高さH、及び幅Lを持つ矩形とされている。つまり、LED照明装置4は、光を拡散する拡散板7を有している。
【0023】
上面用カメラ6は、ウエハ2の上面外周部に対向して配置され、ウエハ2の上面側エッジ部の形状を撮像する。下面用カメラ5は、ウエハ2の下面外周部に対向して配置され、ウエハ2下面側エッジ部の形状を撮像する。上面用カメラ6及び下面用カメラ5は、LED照明装置4から照射された光によって照明されたウエハ2の面取り面Cと主面Pとをウエハ2の主面Pに対して直交する方向から撮像する。
【0024】
LED照明装置4からウエハ2に照射された光は、面取り面Cで反射された光のみが、上面用カメラ6及び下面用カメラ5に撮像される。これにより、ウエハ2の面取り面Cを示す画像は、白色に表示され、主面Pを示す画像は黒色に表示されて、モニタに表示される。
【0025】
画像処理装置は、撮像された画像から、面取り面Cの面幅を計測したり、チッピング8を検出したりする。なお、画像処理装置は、上面用カメラ6及び下面用カメラ5によって撮像された画像から面取り面Cの画像として抽出し、エッジ検出処理等の画像処理する機能を備える。
【0026】
図4は反射板1の斜視図であり、反射板1は、LED照明装置4をウエハ2の中心方向から覆うように設けられる。ただし、上面用カメラ6及び下面用カメラ5の視野を妨げることはない。反射板1の形状は、
図2、4に示すように上面から見た形状が斜面1-2、1-3を有するコの字状あるいは円弧状であり、高さ方向の中央部にスリット1-1が設けられる。
【0027】
スリット1-1は、ウエハ2の厚さより大きく、ウエハ2の面取り面Cが挿入される。反射板1は、反射板1のLED照明装置4側が面取り面C、つまり面幅をウエハ2の中心方向へ超えた位置に設置される。拡散板7は、LED照明装置4と反射板1との間で面取り面CよりLED照明装置4側に設ければ良い。
【0028】
斜面1-2、1-3は、LED照明装置4及び拡散板7と平行な面1-4に対して30~60°、好ましくは約45°傾いた面とすることが良い。なお、反射板1の高さ方向は、同様に斜面を形成しても良い。反射板1の材質は、金属板であり、折り曲げ加工により成型されている。
【0029】
そして、反射板1の内側、LED照明装置4側は、Ra10~40μm、望ましくは25μm程度の荒仕上げ面であり、マンセル値N9.5、RGB(245、246、242)の白色でメラミン焼付塗装されている。また、反射板1は、凹となる面がLED照明装置4側となる白色の円弧状の紙を用いても改善効果が得られる。なお、塗装色は、アイボリーとしても良い。
【0030】
図5は、反射板1を設けない、従来のエッジ部の形状測定装置による面取り部(面取り加工されたエッジ部)の拡大断面図である。
図5は、LED照明装置4からウエハ2に照射された光と、面取り面C及びチッピング8で反射される代表的な光の関係を示している。
【0031】
図5で示すように、LED照明装置4からの光は、矢印Aのように面取り面Cに照射され、矢印Fのように反射して上面用カメラ6及び下面用カメラ5に至って撮像される。しかし、チッピング8は、面取り面Cが欠けている状況であるから面取り面Cとは傾きが異なる。また、チッピング8に至る光量は、LED照明装置4から影になる部分も存在する。
【0032】
したがって、チッピング8から上面用カメラ6及び下面用カメラ5へ至る光量は、大きく不足する。これにより、従来技術は、拡散板7によりLED照明装置4からの光が多少拡散され、多少改善はされるもののチッピング8の検出精度が十分でなかった。
【0033】
従来技術に対して、実施形態は、
図3に示すように反射板1が設けられる。LED照明装置4からの光は、矢印Aから面取り面Cに照射されるだけでなく、反射板1で矢印G、矢印Fのように反射して面取り面Cに至る。そして、LED照明装置4からの光は、面取り面Cとは傾きが異なるチッピング8へも到達し、チッピング8に照射される光量が増えることになる。つまり、反射板1で乱反射した光がチッピング8の深さ方向にも照射され、チッピング8の状態を高精度に検出することができる。
【0034】
さらに、反射板1は、斜面1-2、1-3を有する他、反射板1の内側、LED照明装置4側が荒仕上げ面とされ、無彩色で塗装されているので、LED照明装置4からの光が散乱して、より効果を高めることができる。光散乱は、光の波長が短いほど著しいので、LED照明装置4から照射する光の波長を570nm以下の短波長とすることが好ましい。
【0035】
なお、570nm以下の波長の光とは、可視光領域内の波長でもよく、紫外光領域を含む波長でもよい。例えば、単一波長の光を安定して発光することができる青色発光LEDを使用して、450nm~495nmの波長の光を利用することが、測定精度を高める点で好ましい。また、LED照明装置4は、複数の青色発光LEDを配置したパネル型の面光源とすることが良い。
【0036】
図6は、上面用カメラ6(撮像手段)によりチッピング8を検出した一実施形態の撮像画像を従来技術と比較した図である。下面用カメラ5による撮像画像も同様である。(a)は、反射板1が無い場合、(b)は、
図4で示した金属板による反射板1に代えて、白色の円弧状の紙でLED照明装置4を囲うようにした場合、(c)は、
図4で示した金属板による反射板1による場合を示している。
【0037】
(a)は反射板1が無いので、ウエハ2の面取り面Cを示す面幅は白色に表示され、主面Pは黒色に表示され、濃淡が付いて表示されている。しかし、チッピング8の部分(図の中央)は、主面P(図の右側)と濃淡が無く、識別が困難となっている。
【0038】
(b)は、反射板1は、凹となる面がLED照明装置4側となる白色の円弧状の紙を用いたので、ウエハ2の面取り面Cを示す面幅は白色に表示されている。しかし、主面Pと面幅との濃淡差が小さい。また、主面Pとチッピング8の濃淡差は、(a)よりも大きく、やや改善されている。ただし、チッピング8と面幅との位置関係が分かり難い。
【0039】
(c)は、ウエハ2の面取り面Cを示す面幅は白色に表示され、主面Pと面幅との濃淡差が明確に識別できる。さらに、主面Pと面幅との濃淡差もあり、チッピング8の検出精度が向上されている。
【0040】
また、実験の結果、ウエハ2をシリコンウエハとし、チッピング8の検出結果を評価指数で表すと、反射板1が無い(a)は67、反射板1を紙とした(b)は815、(c)反射板1を
図4で示した金属板とした(c)は、940となった。
【0041】
ただし、評価指数は、測定している範囲にあるコントラストの差を点数化した累積値である。例えば、チッピング8が無い状況のときは評価指数は0となり、面幅が白、ウエハ2表面が黒となる。面幅にチッピング8が存在した場合は、白の場所に黒が発生してコントラストの差がでるのでそれを点数化する。また、ウエハ2表面にチッピング8が存在した場合は、黒一色の場所に境の白など発生してコントラストが発生するので点数化される。
【0042】
以上の説明は、ウエハ2を対象としたが、ツルーイング砥石(GC砥石)の場合も同様であり、端部のチッピング8を検出することが可能である。なお、ツルーイングは、砥石に形状を転写することが求められているため、より形状の精度が求められるため、ウエハ2と同様にチッピング8などの損傷を少なくすることが強く求められている。
【符号の説明】
【0043】
1…反射板
1-1…スリット
1-2…斜面
1-4…面
2…ウエハ
3…回転テーブル
4…LED照明装置
5…下面用カメラ
6…上面用カメラ
7…拡散板
8…チッピング
A…矢印
C…面取り面
G…矢印
H…高さ
P…主面