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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240814BHJP
   B23K 26/0622 20140101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/0622
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020052423
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021153087
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013962(JP,A)
【文献】特開2017-006961(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115243(WO,A1)
【文献】特開2014-037006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/0622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含むレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線を該保持手段に保持された被加工物に集光する集光器とを少なくとも備え、
該発振器と該集光器との間にレーザー光線のパルス幅を拡張するパルス幅拡張器が配設され、該パルス幅拡張器は、入射したレーザー光線のパルス幅を拡張する複数個のVBG結晶が周方向に間隔をおいて装着された回転体と、該回転体を回転させて該複数個のVBG結晶のいずれかをレーザー光線の光軸に位置づける回転機構とを含み、
該パルス幅拡張器と該集光器との間にレーザー光線のパルス幅を縮小するパルス幅縮小器が配設され、該パルス幅縮小器は、入射したレーザー光線のパルス幅を縮小する複数個のVBG結晶が周方向に間隔をおいて装着された回転体と、該回転体を回転させて該複数個のVBG結晶のいずれかをレーザー光線の光軸に位置づける回転機構とを含み、
該パルス幅拡張器と該パルス幅縮小器との組み合わせでレーザー光線のパルス幅を所望の値に設定できるレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持手段とレーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含むレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持手段とレーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含み、被加工物に所望の加工を施すことができる(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-60862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レーザー加工装置に搭載されるレーザー光線を発振する発振器は、被加工物に応じて、または加工条件に応じてレーザー光線のパルス幅が所定の値に設定されている。このため、レーザー加工装置のユーザーは、複数種類の被加工物を加工する場合や、複数の加工条件で加工する場合には、各被加工物に対応した、または各加工条件に対応した多くのレーザー加工装置を用意しなければならず、設備費が高額になるという問題がある。
【0006】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、設備費を抑えることができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために以下のレーザー加工装置を提供する。すなわち、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含むレーザー加工装置であって、該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線を該保持手段に保持された被加工物に集光する集光器とを少なくとも備え、該発振器と該集光器との間にレーザー光線のパルス幅を拡張するパルス幅拡張器が配設され、該パルス幅拡張器は、入射したレーザー光線のパルス幅を拡張する複数個のVBG結晶が周方向に間隔をおいて装着された回転体と、該回転体を回転させて該複数個のVBG結晶のいずれかをレーザー光線の光軸に位置づける回転機構とを含み、該パルス幅拡張器と該集光器との間にレーザー光線のパルス幅を縮小するパルス幅縮小器が配設され、該パルス幅縮小器は、入射したレーザー光線のパルス幅を縮小する複数個のVBG結晶が周方向に間隔をおいて装着された回転体と、該回転体を回転させて該複数個のVBG結晶のいずれかをレーザー光線の光軸に位置づける回転機構とを含み、該パルス幅拡張器と該パルス幅縮小器との組み合わせでレーザー光線のパルス幅を所望の値に設定できるレーザー加工装置を本発明は提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含み、該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線を該保持手段に保持された被加工物に集光する集光器とを少なくとも備え、該発振器と該集光器との間にレーザー光線のパルス幅を拡張するパルス幅拡張器が配設され、該パルス幅拡張器は、入射したレーザー光線のパルス幅を拡張する複数個のVBG結晶が周方向に間隔をおいて装着された回転体と、該回転体を回転させて該複数個のVBG結晶のいずれかをレーザー光線の光軸に位置づける回転機構とを含み、該パルス幅拡張器と該集光器との間にレーザー光線のパルス幅を縮小するパルス幅縮小器が配設され、該パルス幅縮小器は、入射したレーザー光線のパルス幅を縮小する複数個のVBG結晶が周方向に間隔をおいて装着された回転体と、該回転体を回転させて該複数個のVBG結晶のいずれかをレーザー光線の光軸に位置づける回転機構とを含み、該パルス幅拡張器と該パルス幅縮小器との組み合わせでレーザー光線のパルス幅を所望の値に設定できるので、ユーザーは、被加工物または加工条件に応じて、レーザー光線のパルス幅を適宜設定して所望の加工を施すことが可能になり、設備費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー光線照射手段のブロック図。
図3図2に示すパルス幅拡張器の斜視図。
図4図2に示すパルス幅縮小器の斜視図。
図5】レーザー光線照射手段の他の形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に示すレーザー加工装置2は、被加工物を保持する保持手段4と、保持手段4に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段6と、保持手段4とレーザー光線照射手段6とを相対的に加工送りする送り手段8とを含む。
【0013】
保持手段4は、図1に矢印Xで示すX軸方向に移動自在に基台10の上面に装着されたX軸可動板12と、X軸方向に直交するY軸方向(図1に矢印Yで示す方向)に移動自在にX軸可動板12の上面に装着されたY軸可動板14と、Y軸可動板14の上面に固定された支柱16と、支柱16の上端に固定されたカバー板18とを含む。なお、X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0014】
カバー板18にはY軸方向に延びる長穴18aが形成され、長穴18aを通って上方に延びるチャックテーブル20が支柱16の上端に回転自在に装着されている。チャックテーブル20は、支柱16に内蔵された回転手段(図示していない。)によって回転される。チャックテーブル20の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形の吸着チャック22が配置され、チャックテーブル20においては、吸引手段で吸着チャック22の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック22の上面に載せられた被加工物を吸引保持する。また、チャックテーブル20の周縁には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ24が配置されている。
【0015】
図1に示すとおり、図示の実施形態のレーザー光線照射手段6は、基台10の上面から上方に延び次いで実質上水平に延びるハウジング26を備える。ハウジング26の内部には、レーザー光線LBを発振する発振器28(図2参照)が配置されている。発振器28は、たとえば、繰り返し周波数が数十MHz程度、出力が数W程度、パルス幅が数百fs程度のレーザー光線LB(いわゆる種光)を発振する。
【0016】
図1に示すとおり、ハウジング26の先端下面には、発振器28が発振したレーザー光線LBを保持手段4のチャックテーブル20に保持された被加工物に集光する集光器30が装着されていると共に、チャックテーブル20に保持された被加工物を撮像してレーザー加工すべき領域を検出するための撮像手段32が装着されている。なお、図2においては、便宜上、集光器30が集光レンズの形態で示されている。
【0017】
図2を参照して説明すると、発振器28と集光器30との間には、発振器28が発振したレーザー光線LBを調整する光学系34と、光学系34を通過したレーザー光線LBを反射して集光器30に導く第一の固定ミラー36とが設けられている。光学系34は、たとえば、発振器28が発振したレーザー光線LBを導くリレーレンズ、ミラー、ビームスプリッターのほか、発振器28が発振したレーザー光線LBの繰り返し周波数を適宜の繰り返し周波数(たとえば数百kHz程度)に変換する繰り返し周波数変換手段(図示していない。)と、発振器28が発振したレーザー光線LBの出力を適宜の出力(たとえば数十W程度)に増幅する出力増幅手段(図示していない。)と、出力増幅手段によって増幅されたレーザー光線LBの出力を適宜の出力に調整する出力調整手段(図示していない。)と、発振器28が発振したレーザー光線LBの波長を適宜の波長に変換する波長変換手段(図示していない。)等とを有する。
【0018】
図2に示すとおり、発振器28と集光器30との間(図示の実施形態では発振器28と光学系34との間)には、レーザー光線LBのパルス幅を拡張するパルス幅拡張器38と、発振器28が発振したレーザー光線LBを反射してパルス幅拡張器38に導く第一の移動ミラー40と、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBを反射して光学系34に導く第二の固定ミラー42とが配設されている。
【0019】
図3に示すとおり、図示の実施形態のパルス幅拡張器38は、円筒状の回転体44と、回転体44を回転させる回転機構46とを含む。回転体44には、入射したレーザー光線LBのパルス幅を拡張する3個のVBG(ボリューム・ブラッグ・グレーティング)結晶48a、48b、48cが周方向に等間隔をおいて装着されている。
【0020】
図示の実施形態では、VBG結晶48aがパルス幅を10倍に拡張し、VBG結晶48bがパルス幅を100倍に拡張し、VBG結晶48cがパルス幅を1000倍に拡張する。パルス幅拡張器38は、回転機構46によって回転体44を回転させることにより、VBG結晶48a、48bまたは48cをレーザー光線LBの光軸に位置づける。
【0021】
なお、パルス幅拡張器38のVBG結晶の数量は3個に限定されず任意に設定される。パルス幅拡張器38におけるパルス幅の拡張係数は、上述の10倍、100倍、1000倍に限定されず、任意の拡張係数でよい。また、パルス幅拡張器38としては、グレーティングミラーを有する公知のグレーティング方式等が採用され得る。
【0022】
図2に示すとおり、第一の移動ミラー40は、発振器28が発振したレーザー光線LBの光軸から離間する離間位置(図2において実線で示す位置)と、発振器28が発振したレーザー光線LBを反射する反射位置(図2において一点鎖線で示す位置)とに第一の移動機構50によって位置づけられる。
【0023】
第一の移動ミラー40が離間位置に位置づけられると、発振器28が発振したレーザー光線LBは光学系34に導かれる。一方、第一の移動ミラー40が反射位置に位置づけられると、発振器28が発振したレーザー光線LBは、第一の移動ミラー40で反射してパルス幅拡張器38に導かれ、VBG結晶48a、48bまたは48cに入射してパルス幅が10倍、100倍または1000倍に拡張された後、第二の固定ミラー42で反射して光学系34に導かれる。
【0024】
このようにレーザー光線照射手段6においては、パルス幅拡張器38のVBG結晶48aないし48cによってレーザー光線LBのパルス幅(たとえば100fs)を所望の値(1ps、10psまたは100ps)に拡張することができる。
【0025】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態では、パルス幅拡張器38と集光器30との間(具体的にはパルス幅拡張器38と光学系34との間)には、レーザー光線LBのパルス幅を縮小するパルス幅縮小器52と、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBを反射してパルス幅縮小器52に導く第二の移動ミラー54と、パルス幅縮小器52を通過したレーザー光線LBを反射して光学系34に導く第三の固定ミラー56とが配設されている。
【0026】
図4に示すとおり、図示の実施形態のパルス幅縮小器52は、円筒状の回転体58と、回転体58を回転させる回転機構60とを含む。回転体58には、入射したレーザー光線LBのパルス幅を縮小する8個のVBG結晶62aないし62hが周方向に等間隔をおいて装着されている。
【0027】
図示の実施形態では、VBG結晶62aがパルス幅を2/10倍に縮小し、VBG結晶62bがパルス幅を3/10倍に縮小し、VBG結晶62cがパルス幅を4/10倍に縮小し、VBG結晶62dがパルス幅を5/10倍に縮小し、VBG結晶62eがパルス幅を6/10倍に縮小し、VBG結晶62fがパルス幅を7/10倍に縮小し、VBG結晶62gがパルス幅を8/10倍に縮小し、VBG結晶62hがパルス幅を9/10倍に縮小する。パルス幅縮小器52は、回転機構60によって回転体58を回転させることにより、VBG結晶62aから62hまでのいずれかをレーザー光線LBの光軸に位置づける。
【0028】
なお、パルス幅縮小器52のVBG結晶の数量は8個に限定されず任意に設定される。パルス幅縮小器52におけるパルス幅の縮小係数は、上述の2/10倍ないし9/10倍に限定されず、任意の縮小係数でよい。また、パルス幅縮小器52としては、透過型グレーティングを有する公知のグレーティング方式等が採用され得る。
【0029】
図2に示すとおり、第二の移動ミラー54は、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBの光軸から離間する離間位置(図2において実線で示す位置)と、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBを反射する反射位置(図2において二点鎖線で示す位置)とに第二の移動機構64によって位置づけられる。
【0030】
第二の移動ミラー54が離間位置に位置づけられると、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBは第二の固定ミラー42で反射して光学系34に導かれる。一方、第二の移動ミラー54が反射位置に位置づけられると、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBは、第二の移動ミラー54で反射してパルス幅縮小器52に導かれ、VBG結晶62aから62hまでのいずれかに入射してパルス幅が2/10倍から9/10倍までのいずれかに縮小された後、第三の固定ミラー56で反射して光学系34に導かれる。
【0031】
図示の実施形態のレーザー光線照射手段6においては、パルス幅拡張器38のVBG結晶48aないし48cによってレーザー光線LBのパルス幅を10倍、100倍、1000倍等の所望の値に拡張することができるのに加え、パルス幅拡張器38のVBG結晶48aないし48cと、パルス幅縮小器52のVBG結晶62aないし62hとの組み合わせによってレーザー光線LBのパルス幅を2倍、3倍、4倍、…、700倍、800倍、900倍等の所望の値に設定することができる。
【0032】
なお、レーザー光線照射手段6は上述した形態に限定されず、たとえば図5に示す形態であってもよい。図5に示すレーザー光線照射手段6は、発振器28と光学系34との間に配置された第一の1/2波長板66と、第一の1/2波長板66を回転させる第一のモータ68と、第一の1/2波長板66を通過したレーザー光線LBを光学系34またはパルス幅拡張器38に導く第一の偏光ビームスプリッター70と、パルス幅拡張器38と第二の固定ミラー42との間に配置された第二の1/2波長板72と、第二の1/2波長板72を回転させる第二のモータ74と、第二の1/2波長板72を通過したレーザー光線LBを第二の固定ミラー42またはパルス幅縮小器52に導く第二の偏光ビームスプリッター76とを備える。
【0033】
第一の1/2波長板66は、第一の偏光ビームスプリッター70に対するレーザー光線LBの偏光面をP偏光に調整するP偏光位置と、第一の偏光ビームスプリッター70に対するレーザー光線LBの偏光面をS偏光に調整するS偏光位置とに第一のモータ68によって位置づけられる。
【0034】
第一の1/2波長板66がP偏光位置に位置づけられると、発振器28が発振したレーザー光線LBは、第一の1/2波長板66によって第一の偏光ビームスプリッター70に対する偏光面がP偏光に調整された後、第一の偏光ビームスプリッター70を透過して光学系34に導かれる。
【0035】
一方、第一の1/2波長板66がS偏光位置に位置づけられると、発振器28が発振したレーザー光線LBは、第一の1/2波長板66によって第一の偏光ビームスプリッター70に対する偏光面がS偏光に調整された後、第一の偏光ビームスプリッター70で反射してパルス幅拡張器38に導かれ、VBG結晶48a、48bまたは48cに入射してパルス幅が10倍、100倍または1000倍に拡張される。
【0036】
第二の1/2波長板72は、第二の偏光ビームスプリッター76に対するレーザー光線LBの偏光面をP偏光に調整するP偏光位置と、第二の偏光ビームスプリッター76に対するレーザー光線LBの偏光面をS偏光に調整するS偏光位置とに第二のモータ74によって位置づけられる。
【0037】
第二の1/2波長板72がP偏光位置に位置づけられると、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBは、第二の1/2波長板72によって第二の偏光ビームスプリッター76に対する偏光面がP偏光に調整された後、第二の偏光ビームスプリッター76を透過し、第二の固定ミラー42で反射して光学系34に導かれる。
【0038】
一方、第二の1/2波長板72がS偏光位置に位置づけられると、パルス幅拡張器38を通過したレーザー光線LBは、第二の1/2波長板72によって第二の偏光ビームスプリッター76に対する偏光面がS偏光に調整された後、第二の偏光ビームスプリッター76で反射してパルス幅縮小器52に導かれ、VBG結晶62aから62hまでのいずれかに入射してパルス幅が2/10倍から9/10倍までのいずれかに縮小された後、第三の固定ミラー56で反射して光学系34に導かれる。
【0039】
したがって、図5に示す形態においても、パルス幅拡張器38のVBG結晶48aないし48cによってレーザー光線LBのパルス幅を所望の値に拡張することができると共に、パルス幅拡張器38のVBG結晶48aないし48cと、パルス幅縮小器52のVBG結晶62aないし62hとの組み合わせによってレーザー光線LBのパルス幅を所望の値に設定することができる。
【0040】
図1を参照して送り手段8について説明する。図示の実施形態の送り手段8は、保持手段4とレーザー光線照射手段6とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段78と、保持手段4とレーザー光線照射手段6とを相対的にY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段80とを備える。
【0041】
X軸送り手段78は、基台10の上面に沿ってX軸方向に延びるボールねじ82と、ボールねじ82を回転させるモータ84とを有する。ボールねじ82のナット部(図示していない。)はX軸可動板12に連結されている。そして、X軸送り手段78は、ボールねじ82によりモータ84の回転運動を直線運動に変換してX軸可動板12に伝達し、基台10上の案内レール10aに沿ってX軸可動板12をレーザー光線照射手段6に対して相対的にX軸方向に加工送りする。
【0042】
Y軸送り手段80は、Y軸可動板14の上面に沿ってY軸方向に延びるボールねじ86と、ボールねじ86を回転させるモータ88とを有する。ボールねじ86のナット部(図示していない。)はY軸可動板14に連結されている。そして、Y軸送り手段80は、ボールねじ86によりモータ88の回転運動を直線運動に変換してY軸可動板14に伝達し、X軸可動板12上の案内レール12aに沿ってY軸可動板14をレーザー光線照射手段6に対して相対的にY軸方向に割り出し送りする。
【0043】
図1には、レーザー加工装置2を用いて加工が施される被加工物としてのウエーハ90が示されている。円板状のウエーハ90は、たとえばシリコン等から形成され得る。ウエーハ90の表面90aは格子状の分割予定ライン92によって複数の矩形領域に区画されており、複数の矩形領域のそれぞれにはIC、LSI等の複数のデバイス94が形成されている。図示の実施形態では、周縁が環状フレーム96に固定された粘着テープ98にウエーハ90の裏面90bが貼り付けられている。
【0044】
上述したとおりのレーザー加工装置2を用いて、ウエーハ90に対してレーザー加工を施す際は、まず、チャックテーブル20の上面でウエーハ90を吸引保持する。また、複数のクランプ24で環状フレーム96を固定する。次いで、撮像手段32で上方からウエーハ90を撮像し、撮像手段32で撮像したウエーハ90の画像に基づいて、分割予定ライン92をX軸方向に整合させると共に、X軸方向に整合させた分割予定ライン92の上方に集光器30を位置づける。
【0045】
次いで、第一・第二の移動ミラー40、54を移動させて発振器28から光学系34までのレーザー光線LBの光路を設定すると共に、パルス幅拡張器38のVBG結晶48aないし48cと、パルス幅縮小器52のVBG結晶62aないし62hとの組み合わせを適宜選択することにより、ウエーハ90に照射するレーザー光線LBのパルス幅を所望の値に設定する。
【0046】
次いで、集光器30に対してチャックテーブル20を相対的に所定の送り速度でX軸方向に加工送りしながら、パルス幅拡張器38とパルス幅縮小器52との組み合わせによってパルス幅が所望の値に設定され、かつ光学系34によって適宜の繰り返し周波数、出力および波長に変換されたレーザー光線LBを分割予定ライン92に沿ってウエーハ90に照射してレーザー加工を施す。
【0047】
ウエーハ90に施すレーザー加工は、たとえば、ウエーハ90に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハ90の内部に位置づけてレーザー光線をウエーハ90に照射し、分割予定ライン92に沿ってウエーハ90の内部に改質層を形成する改質層形成加工や、ウエーハ90に対して吸収性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハ90の表面90aに位置づけてレーザー光線をウエーハ90に照射し、分割予定ライン92に沿って溝を形成するアブレーション加工等が挙げられる。
【0048】
次いで、分割予定ライン92のY軸方向の間隔の分だけ、集光器30に対してチャックテーブル20を相対的にY軸方向に割り出し送りする。レーザー加工と割り出し送りとを交互に繰り返すことにより、X軸方向に整合させた分割予定ライン92のすべてにレーザー加工を施す。そして、チャックテーブル20を90度回転させた上で、レーザー加工と割り出し送りとを交互に繰り返すことにより、先にレーザー加工を施した分割予定ライン92と直交する分割予定ライン92のすべてにもレーザー加工を施す。
【0049】
以上のとおりであり、図示の実施形態のレーザー加工装置2においては、レーザー光線LBのパルス幅を所望の値に設定できるので、ユーザーは、被加工物または加工条件に応じて、レーザー光線LBのパルス幅を適宜設定して所望の加工を施すことが可能になる。したがって、図示の実施形態のレーザー加工装置2によれば、各被加工物に対応した、または各加工条件に対応した多くのレーザー加工装置を用意することが不要となるため、設備費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0050】
2:レーザー加工装置
4:保持手段
6:レーザー光線照射手段
8:送り手段
28:発振器
30:集光器
38:パルス幅拡張器
52:パルス幅縮小器
図1
図2
図3
図4
図5