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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240814BHJP
   B24B 19/02 20060101ALI20240814BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240814BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/78 F
B24B19/02
B24B49/12
B24B27/06 M
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020132509
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029258
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】祝皓清
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-225555(JP,A)
【文献】特開2016-32075(JP,A)
【文献】特開平4-99607(JP,A)
【文献】特開2005-203540(JP,A)
【文献】特開2001-127010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 19/02
B24B 49/12
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインを有したウェーハの該分割予定ラインに沿って第1の幅の第1の溝を形成する溝形成ステップと、
該第1の幅より薄い厚みの切削ブレードで該第1の溝を切削する切削ステップと、
を備えたウェーハの加工方法であって、
該溝形成ステップでは、
該分割予定ラインに沿って該ウェーハの一端側の外周縁から他端側の外周縁に至らない範囲で該第1の溝を形成することで該他端側に未加工領域を形成し、
該切削ステップでは、
該切削ブレードで、該ウェーハの該他端側から該未加工領域を切削するともに該第1の溝に沿って該ウェーハの該一端側の外周縁に至るまで切削し、
所定のタイミングで実施される調整ステップであって、
該切削ステップにおいて該未加工領域に該切削ブレードで形成した切削溝を撮像して撮像画像を形成し、該撮像画像をもとに該切削ブレードの切削位置を調整するための調整ステップ、を更に備え
該調整ステップでは、
該切削溝が形成された該第1の溝も含まれるように撮像画像が形成されることとし、
該撮像画像に表れる該切削溝の幅方向における該切削溝の位置を検出し、
該切削溝の位置を、該第1の溝の位置と一致させるように該切削ブレードの切削位置を調整する、ウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハの切削加工において、例えば特許文献1に開示されるように、半導体ウェーハをハーフカットしてハーフカット溝を形成した後、ハーフカット溝の幅よりも薄い厚みの切削ブレードでハーフカット溝をフルカットする所謂ステップカットが知られている。
【0003】
切削ブレードの厚み方向の中心である切削位置は、予め規定の位置となるように設計されているが、切削ブレードの交換作業により新たな切削ブレードを取り付けた際には、取り付け誤差が生じるものであり、規定の位置からずれることが想定される。また、加工中に生じる熱によっても切削ブレードが規定の位置からずれることが想定される。
【0004】
このため、被加工物であるウェーハの切削工程における所定のタイミングでカーフチェックを行うとともに、切削ブレードの位置調整することで、所謂ヘアライン合わせが実施される。具体的には、撮像装置(カメラ、顕微鏡)で切削溝を撮像し、切削溝の位置と、撮像装置に設定された基準位置にずれが生じている場合には、切削ブレードの位置を調整することで、切削溝の位置を基準位置に一致させる調整が行われる。これにより、切削ブレードによる次の切削加工においては、規定の位置を基準に切削溝を形成することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-146831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、既に形成されたハーフカット溝の領域を切削ブレードで切削する場合には、切削ブレードで形成される切削溝がハーフカット溝の中に形成されるため、撮像画像を画像解析する際に、切削溝の位置を正確に検出することが困難な場合が生じる。
【0007】
さらに、ハーフカット溝内に切削ブレードを進入させて切削溝を形成する際には、切削ブレードがハーフカット溝の溝壁に接触するなどしてハーフカット溝に倣うように切削されることも懸念される。この場合、切削溝の位置は、実際の切削ブレードの位置、つまりは、ハーフカット溝に進入していない状態の切削ブレードの位置とずれてしまっていると考えられる。このため、実際の切削ブレードの正確な位置を検出することができず、結果として、切削ブレードの正確な位置調整ができないことになる。
【0008】
以上に鑑み、本願発明は、既に形成された溝をフルカットして切削溝を形成する所謂ステップカットが実施されるウェーハの加工方法において、切削溝の位置を正確に検出することで、切削ブレードの正確な位置調整を可能とする新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
本発明の一態様によれば、
複数の分割予定ラインを有したウェーハの該分割予定ラインに沿って第1の幅の第1の溝を形成する溝形成ステップと、
該第1の幅より薄い厚みの切削ブレードで該第1の溝を切削する切削ステップと、
を備えたウェーハの加工方法であって、
該溝形成ステップでは、
該分割予定ラインに沿って該ウェーハの一端側の外周縁から他端側の外周縁に至らない範囲で該第1の溝を形成することで該他端側に未加工領域を形成し、
該切削ステップでは、
該切削ブレードで、該ウェーハの該他端側から該未加工領域を切削するともに該第1の溝に沿って該ウェーハの該一端側の外周縁に至るまで切削し、
所定のタイミングで実施される調整ステップであって、
該切削ステップにおいて該未加工領域に該切削ブレードで形成した切削溝を撮像して撮像画像を形成し、該撮像画像をもとに該切削ブレードの切削位置を調整するための調整ステップ、を更に備えた、
ウェーハの加工方法とするものである。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、
該調整ステップでは、
撮像装置で該切削溝を撮像し、
該撮像画像に表れる該切削溝の幅方向における該切削溝の位置を検出し、
該切削溝の位置を、該撮像装置に対し予め設定される基準位置と一致させるように該切削ブレードの切削位置を調整する、
ウェーハの加工方法とするものである。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
該調整ステップでは、
該切削溝が形成された該第1の溝も含まれるように撮像画像が形成されることとし、
該撮像画像に表れる該切削溝の幅方向における該切削溝の位置を検出し、
該切削溝の位置を、該第1の溝の位置と一致させるように該切削ブレードの切削位置を調整する、
ウェーハの加工方法とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、溝形成ステップで未加工領域を形成しておき、切削ステップでこの未加工領域に第2の切削溝が形成されることになるため、撮像画像では、第1の溝と重ならない位置にある第2の切削溝を表示することができる。これにより、画像解析を行う際には、第2の切削溝を高精度で検出することが可能となり、第2の切削溝の位置を正確に検出することができる。これにより、切削ブレードのより正確な位置調整が可能となる。
【0014】
また、本発明の一実施形態によれば、撮像装置に対し予め設定される基準位置を基準とする切削ブレードの位置調整が可能となる。
【0015】
また、本発明の一実施形態によれば、第1の溝の位置を基準とする切削ブレードの位置調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】切削ブレードを備える切削装置の構成例について示す斜視図。
図2】(A)は被加工物となるウェーハの一例について示す斜視図。(B)はウェーハユニットの構成について示す斜視図。
図3】ウェーハを保持テーブルで保持して切削加工が行われる様子を示す図。
図4】(A)は第1の切削ブレードにより第1の切削溝が形成されることについて示す図。(B)は第2の切削ブレードによりフルカットが行われ、第2の切削溝が形成されることについて示す図。(C)は未加工領域において、第2の切削ブレードによりウェーハが切削される様子について示す図。
図5】ウェーハの加工方法の各ステップについて示すフローチャート。
図6】(A)は溝形成ステップ(第1の方向)について示す図。(B)は溝形成ステップ(第2の方向)について示す図。
図7】(A)は切削ステップ(第1の方向)について示す図。(B)は切削ステップ(第2の方向)について示す図。
図8】(A)は撮像画像と基準線について示す図。(B)は撮像画像上の第2の切削溝について示す図。(C)は第2の切削溝と基準位置のずれ量について説明する図。
図9】第2の切削ブレードの他の調整方法について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明では、図1に示す第1の切削ブレードを備える切削装置2と、図1と同等の切削装置であって第2の切削ブレードを備える図示しない切削装置と、を用い、ハーフカット工程とフルカット工程を各切削装置で順に行うステップカットの例を用いて説明する。
【0018】
なお、このように、2つの切削装置を用いてハーフカット工程とフルカット工程を含むステップカットを実施する他、1つの切削装置に2つの切削ユニット(切削ブレード)を備えるデュアルダイサーにより、ハーフカット工程とフルカット工程を順に行うステップカットを実施することとしてもよい。
【0019】
また、この他、1つのレーザー加工装置と、1つの切削装置を用いてステップカットを実施することとしてもよい。即ち、レーザー加工装置によるアブレーション加工(グルービング)によりハーフカット工程を行った後、切削装置によってフルカット工程を行うものである。なお、レーザー加工装置は、レーザービームを発生させるレーザー発振器と、レーザービームをウェーハに対して集光させる集光器と、を備えるもので構成することができる。
【0020】
図1に示す切削装置2の構成について説明する。
切削装置2の基台4には、保持テーブル18が図示せぬ移動機構によりX軸方向に往復動可能に配設されている。保持テーブル18の周囲にはウォーターカバー14が配設されており、このウォーターカバー14と基台4にわたり蛇腹16が連結されている。
【0021】
基台4の前側角部には、被加工物を収容するカセット20を載置するためのカセット載置台21が設けられる。
【0022】
基台4上には門型形状のコラム24が立設されており、コラム24にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール26が固定されている。コラム24にはY軸移動ブロック28が、ボールねじ30とパルスモータ32とからなるY軸移動機構34によりガイドレール26に案内されてY軸方向に移動可能に搭載されている。
【0023】
Y軸移動ブロック28にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36が固定されている。Y軸移動ブロック28上には、Z軸移動ブロック38がボールねじ40とパルスモータ42とからなるZ軸移動機構44によりガイドレール36に案内されてZ軸方向に移動可能に搭載されている。
【0024】
Z軸移動ブロック38には切削ユニット46及び撮像装置52(カメラ)が取付けられている。切削ユニット46は、図示せぬモータにより回転駆動されるスピンドル48(図3)の先端部に第1の切削ブレードB1を着脱可能に装着して構成されている。
【0025】
基台4上には、スピンナーテーブル56を有するスピンナー洗浄ユニット54が設けられており、切削加工後の被加工物をスピンナーテーブル56で吸引保持してスピンナー洗浄するとともに、スピン乾燥できるようになっている。
【0026】
切削装置2は、装置の稼働状況を表示するとともに、オペレーターによる操作入力を可能とする表示モニター60が設けられる。表示モニター60は、撮像装置52で撮像される映像が表示できるようになっている。
【0027】
図2(A)は被加工物となるウェーハ10の一例について示すものである。
ウェーハ10は、半導体基板の表面10aにデバイス11が格子状に配列され、分割予定ライン13(ストリート)に沿って切削加工が施されることにより、チップに分割されるものである。分割予定ライン13は、第1の方向D1と、第1の方向D1と直交する第2の方向D2に伸びており、各方向D1,D2に伸びる各分割予定ライン13同士の距離がインデックス幅とされる。
【0028】
図2(B)は、ウェーハ10の裏面10b側をテープTに貼着し、テープTを介して環状フレームFとウェーハ10を一体としたウェーハユニットUを示すものである。このウェーハユニットUが図1に示すカセット20に複数収容され、順次保持テーブル18に搬送されてウェーハ10の加工が行われる。
【0029】
図3は、ウェーハ10を保持テーブル18で保持して切削加工が行われる様子を示す図である。
ウェーハユニットUの環状フレームFがクランプ18aによって挟持され、ウェーハ10が保持テーブル18に吸引保持される。
【0030】
図3に示すように、切削ユニット46の第1の切削ブレードB1を高さ方向であるZ軸方向において所定の位置に位置付けて回転させるとともに、保持テーブル18を矢印Kの方向に加工送りすることで、ウェーハ10の切削加工が実施される。
【0031】
図4(A)に示すように、第1の切削ブレードB1は、ウェーハ10を完全に切断せずに、所定の深さの第1の切削溝61(第1の溝)を形成するものである。第1の切削溝61は、溝底に残存部分を形成される所謂ハーフカット溝である。
【0032】
図4(A)に示すように、第1の切削溝61の幅61wは、第1の切削ブレードB1の刃厚W1に対応する幅にて構成される。
【0033】
図4(B)は後述する切削ステップにおいて、第2の切削ブレードB2によりフルカットが行われ、第2の切削溝62が形成されることについて示す図である。第2の切削ブレードB2は、テープTに到達するまで切り込むことでウェーハ10を完全にカットする。
【0034】
図4(B)に示すように、第2の切削ブレードB2の刃厚W2は、第1の切削ブレードB1の刃厚W1よりも狭く構成される。刃厚W2に対応し、第2の切削溝62の幅62wは、第1の切削溝61の幅61wよりも狭く構成される。
【0035】
図4(C)は後述する未加工領域M1,M2(図7(A)(B))において、第2の切削ブレードB2によりウェーハ10が切削される様子について示す図である。未加工領域M1,M2には、第1の切削溝61(図4(A))が存在せず、第2の切削ブレードB2のみによる切削加工が行われるものである。
【0036】
次に、本発明にかかるウェーハの加工方法の各ステップについて順に説明する。各ステップは、図5に示すフローチャートの順に行われるものであり、各ステップを実施するための各種駆動部の制御は、第1,第2の切削装置2,2Aに備えられるコントローラー100によって行われる。
【0037】
<溝形成ステップS1>
図6(A)(B)に示すように、複数の分割予定ライン13を有したウェーハの該分割予定ラインに沿って第1の幅の第1の切削溝61を形成するステップであり、第1の切削装置2(図1)によって実施される。
【0038】
まず、図6(A)に示すように、第1の切削ブレードB1のY軸方向のインデックス送りと、ウェーハ10のX軸方向の加工送りを交互に繰り返すことにより、ウェーハ10の第1の方向D1に伸びる全ての分割予定ライン13について、第1の切削溝61(ハーフカット溝)を形成する。なお、図6(A)(B)では、ウェーハ10の表面に現れるデバイス11(図2(A)の図示は省略されている。
【0039】
ここで、図6(A)に示すように、第1の方向D1に伸びる第1の切削溝61は、ウェーハ10の第1の方向D1の一端側G1の外周縁から他端側G2の外周縁に至らない範囲で形成され、これにより他端側G2に未加工領域M1が形成される。
【0040】
この未加工領域M1が形成される範囲は特に限定されるものではないが、例えば、デバイス11(図2(A))が形成される領域以外の領域に未加工領域M1を形成することができる。
【0041】
なお、図6(A)においては、ウェーハ10のノッチNの位置、第1の方向D1、及び、第1の方向D1に直交する第2の方向D2が表現されている。
【0042】
次いで、図6(A)に示す状態から保持テーブル18(図1)を時計回りに90度回転させることで、ウェーハ10を時計回りに90度回転させた後、図6(B)に示すように、第1の切削ブレードB1のY軸方向のインデックス送りと、ウェーハ10のX軸方向の加工送りを交互に繰り返すことにより、ウェーハ10の第2の方向D2に伸びる全ての分割予定ライン13について、第1の切削溝61(ハーフカット溝)を形成する。
【0043】
ここで、図6(B)に示すように、第2の方向D2に伸びる第1の切削溝61は、ウェーハ10の第2の方向D2の一端側G1の外周縁から他端側G2の外周縁に至らない範囲で形成され、これにより他端側G2に未加工領域M2が形成される。
【0044】
この未加工領域M2が形成される範囲は特に限定されるものではないが、例えば、デバイス11(図2(A))が形成される領域以外の領域に未加工領域M2を形成することができる。
【0045】
<回転ステップS2>
図7(A)に示すように、ウェーハ10は、図6(A)に示す溝形成ステップS1における角度に対し180度回転させた状態で第2の切削装置にセットされることで、第2の切削ブレードB2に対し、ウェーハ10の他端側G2が近い位置となるように配置される。ウェーハ10の回転は、第1の切削装置と第2の切削装置のいずれかにおいて実施することができる他、第1の切削装置から第2の切削装置への搬送過程において実施することとしてもよい。なお、図6(A)に示す溝形成ステップS1がレーザー加工装置で実施される場合には、未加工領域M1を一端側G1に形成することで、第2の切削装置にセットする際に180度回転させることは不要となる。
【0046】
<切削ステップS3>
図7(A)に示すように、第2の切削ブレードB2で、ウェーハ10の他端側G2から未加工領域M1を切削するともに第1の切削溝61に沿ってウェーハ10の一端側G1の外周縁に至るまで切削するステップであり、第2の切削装置2A(図1)によって実施される。
【0047】
本実施例においては、図1に示す切削装置2においてウェーハについて溝形成ステップS1を実施した後、スピンナー洗浄ユニット54で洗浄を行ってウェーハを搬出し、別の第2の切削装置にウェーハを搬送する。当該第2の切削装置においては、図4(B)に示すように第2の切削ブレードB2によるフルカットが行われることで、第2の切削溝62が形成されるものである。
【0048】
図7(A)に示すように、第2の切削ブレードB2のY軸方向のインデックス送りと、ウェーハ10のX軸方向の加工送りを交互に繰り返すことにより、ウェーハ10の第1の方向D1に伸びる第1の切削溝61に沿うように、第2の切削溝62(フルカット溝)を形成する。なお、図7(A)(B)では、ウェーハ10の表面に現れるデバイス11(図2(A)の図示は省略されている。
【0049】
ここで、図7(A)に示すように、第2の切削ブレードB2は未加工領域M1側から切り込むことになり、未加工領域M1においては、第2の切削溝62のみが形成されることとなる。
【0050】
次いで、図7(A)に示す状態から保持テーブル18(図1)を時計回りに90度回転させることで、ウェーハ10を時計回りに90度回転させた後、図7(B)に示すように、第2の切削ブレードB2のY軸方向のインデックス送りと、ウェーハ10のX軸方向の加工送りを交互に繰り返すことにより、ウェーハ10の第2の方向D2に伸びる第1の切削溝61に沿うように、第2の切削溝62(フルカット溝)を形成する。
【0051】
この図7(B)に示すように、ウェーハ10の第2の方向D2においても、第2の切削ブレードB2は未加工領域M2側から切り込むことになり、未加工領域M2においては、第2の切削溝62のみが形成されることとなる。
【0052】
以上のように、ウェーハ10の第1,第2の方向D1,D2について分割予定ライン13(図2(A))に沿った第2の切削溝62(フルカット溝)が形成される。その後、別の分割装置によってテープT(図2(B))をエキスパンドすることでチップに分割することができる。
【0053】
<調整ステップS4>
以上の切削ステップS3が実施される過程では、所定のタイミングにおいて調整ステップS4が実施される。
調整ステップS4では、例えば、図7(A)に示すように、未加工領域M1に既に形成された第2の切削溝62を撮像してカーフチェックを行い、図8(C)に示すように、第2の切削溝62(中心線62cの位置62a)と基準位置92との間にずれが生じている場合に、当該ずれ量Δだけ第2の切削ブレードB2の位置を調整することで、実際に形成される第2の切削溝62と基準位置を一致させるものである。
【0054】
以下具体的に説明すると、図1及び図7(A)に示すように、オペレーターによる表示モニター60(図1)の操作に基づき、第2の切削装置2Aのコントローラー100は、保持テーブル18と撮像装置52を移動させ、未加工領域M1において直近で形成された第2の切削溝62の箇所の上方に撮像装置52を位置付ける。
【0055】
なお、図8(A)に示すように、撮像装置52(図1)には、撮像装置52のY軸方向の位置を定義するための基準位置92が予め設定されており、図8(A)に示す撮像画像90では、基準位置92に対応する位置に基準線92aが表示されるようにしている。基準線92aはソフトウエアによって撮像画像90に重ね合わせて表示されるようになっており、図8(A)の例では一点鎖線で表現されている。撮像画像90は表示モニター60(図1)に表示可能となっており、オペレーターが基準線92aを視認することができる。
【0056】
次いで、図8(B)に示すように、撮像装置52(図1)により撮像がされると、撮像画像90には、未加工領域M1に形成された第2の切削溝62が現れる。本実施例では、撮像装置52(図1)は光学式カメラで構成されることにより、第2の切削溝62の部分において光が吸収され、撮像画像90には第2の切削溝62の箇所がグレーで表示されるようになっている。
【0057】
次いで、図8(C)に示すように、コントローラー100は、撮像画像90のグレーの領域から第2の切削溝62を画像解析して検出するとともに、その検出した第2の切削溝62の幅方向(Y軸方向)の中心に伸びる中心線62cを規定するとともに、中心線62cの位置を第2の切削溝62の位置62aとして規定する。
【0058】
次いで、図8(C)に示すように、コントローラー100は、第2の切削溝62の位置62aが基準位置92とずれている場合には、そのずれ量Δを算出するとともに、第2の切削溝62の位置62aを基準位置92と一致させる方向に、ずれ量Δに相当する分だけ第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置を調整し、調整後の位置をメモリに記憶する。コントローラー100は、調整後の位置情報に基づいて、第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置を制御する。
【0059】
以上のように第2の切削ブレードB2の位置が調整されることで、調整ステップS4を終えた後の次に形成される第2の切削溝62を規定の位置に形成することが可能となる。
【0060】
ここで、図8(C)に示すように、撮像画像90では、第1の切削溝61と重ならない位置にある第2の切削溝62を取得することができ、コントローラー100が画像解析を行う際には、第2の切削溝62を高精度で検出することが可能となる。そして、その検出した第2の切削溝62の幅方向(Y軸方向)の中心に伸びる中心線62cを正確に検出することができる。これにより、第2の切削ブレードB2のより正確な位置調整が可能となる。
【0061】
なお、以上の説明では、既に形成された第2の切削溝62を撮像してカーフチェックを行い、第2の切削ブレードB2の調整を行うこととしたが、カーフチェックのためだけに未加工領域M1に第2の切削ブレードB2を切り込ませ、第2の切削溝62を形成することとしてもよい。
【0062】
また、以上の説明では、図7(A)の状態において、未加工領域M1の第1の方向D1に伸びる第2の切削溝62を撮像してカーフチェックを行い、第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置調整を行う例を説明したが、図7(B)の状態において、未加工領域M2の第2の方向D2に伸びる第2の切削溝62を撮像してカーフチェックを行い、第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置調整を行う場合も同様の手順で実施可能である。
【0063】
次に、第2の切削ブレードB2の他の調整方法について説明する。
図9に示す撮像画像95は、未加工領域M1における第2の切削溝62(フルカット溝)と、未加工領域M1を外れた位置にある第1の切削溝61(ハーフカット溝)を撮像した画像である。この撮像画像95に基づいて、第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置を、第1の切削ブレードB1のY軸方向の位置に一致させる調整を行うこととしてもよい。
【0064】
これによれば、第1の切削溝61(ハーフカット溝)と第2の切削溝62(フルカット溝)を完全に一致させることが可能となり、第2の切削溝62を規定の位置に形成することができる。なお、前提として、第1の切削溝61(ハーフカット溝)が規定の位置に形成されることが必要であり、第1の切削溝61(ハーフカット溝)のカーフチェックやY軸方向の位置調整が事前に行われるものであり、その具体的方法については特に限定されるものではない。
【0065】
図9の撮像画像95を利用する例では、コントローラー100は、撮像画像95のグレーの領域から第2の切削溝62を画像解析して検出するとともに、その検出した第2の切削溝62の幅方向(Y軸方向)の中心に伸びる中心線62cを規定するとともに、中心線62cの位置を第2の切削溝62の位置62aとして規定する。
【0066】
さらに、コントローラー100は、撮像画像95のより明度の低いグレーの領域から第1の切削溝61を検出するとともに、その検出した第1の切削溝61の幅方向(Y軸方向)の中心に伸びる中心線61cを規定するとともに、中心線61cの位置を第1の切削溝61の位置61aとして規定する。
【0067】
図9に示すように、コントローラー100は、第2の切削溝62の位置62aが第1の切削溝61の位置61aとずれている場合には、そのずれ量Δを算出するとともに、第2の切削溝62の位置62aを第1の切削溝61の位置61aと一致させる方向に、ずれ量Δに相当する分だけ第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置を調整し、調整後の位置をメモリに記憶する。コントローラー100は、調整後の位置情報に基づいて、第2の切削ブレードB2のY軸方向の位置を制御する。
【0068】
以上のように、第1の切削溝61に第2の切削溝62を一致させるいわゆるヘアライン合わせにより、第2の切削溝62の位置62aを調整することとしてもよい。
【0069】
この場合でも、第1の切削溝61と重ならない位置にある第2の切削溝62が撮像されることで、コントローラー100が画像解析を行う際には、第2の切削溝62を高精度で検出することが可能となる。そして、その検出した第2の切削溝62の幅方向(Y軸方向)の中心に伸びる中心線62cを正確に検出することができる。
【0070】
以上のようにして本発明を実現することができる。
即ち、図1乃至図8に示すように、
複数の分割予定ライン13を有したウェーハ10の分割予定ライン13に沿って第1の幅61wの第1の溝(第1の切削溝61)を形成する溝形成ステップS1と、
第1の幅61wより薄い厚みのブレード(第2の切削ブレードB2)で第1の溝(第1の切削溝61)を切削する切削ステップS3と、
を備えたウェーハ10の加工方法であって、
溝形成ステップS1では、
分割予定ライン13に沿ってウェーハ10の一端側G1の外周縁から他端側G2の外周縁に至らない範囲で第1の溝(第1の切削溝61)を形成することで他端側G2に未加工領域M1,M2を形成し、
切削ステップS3では、
切削ブレード(第2の切削ブレードB2)で、ウェーハ10の他端側G2から未加工領域M1,M2を切削するともに第1の溝(第1の切削溝61)に沿ってウェーハ10の一端側G1の外周縁に至るまで切削し、
所定のタイミングで実施される調整ステップS4であって、
切削ステップS3において未加工領域M1,M2に切削ブレードで形成した切削溝(第2の切削溝62)を撮像して撮像画像90を形成し、撮像画像90をもとに切削ブレード(第2の切削ブレードB2)の切削位置を調整するための調整ステップS4、を更に備えた、
ウェーハ10の加工方法とするものである。
【0071】
この加工方法によれば、溝形成ステップS1で未加工領域M1,M2を形成しておき、切削ステップS3でこの未加工領域M1,M2に第2の切削溝62が形成されることになるため、撮像画像90では、第1の切削溝61と重ならない位置にある第2の切削溝62を表示することができる。これにより、画像解析を行う際には、第2の切削溝62を高精度で検出することが可能となり、第2の切削溝62の位置を正確に検出することができる。これにより、第2の切削ブレードB2のより正確な位置調整が可能となる。
【0072】
また、図8(A)乃至(C)に示すように、
調整ステップS4では、
撮像装置52(図1)で切削溝(第2の切削溝62)を撮像し、
撮像画像90に表れる切削溝(第2の切削溝62)の幅方向における切削溝の位置(中心線62cの位置62a)を検出し、
切削溝の位置(中心線62cの位置62a)を、撮像装置52(図1)に対し予め設定される基準位置92と一致させるように切削ブレード(第2の切削ブレードB2)の切削位置を調整する、こととするものである。
【0073】
これによれば、撮像装置52(図1)に対し予め設定される基準位置92を基準とする切削ブレード(第2の切削ブレードB2)の位置調整が可能となる。
【0074】
また、図9に示すように、
調整ステップS4では、
切削溝(第2の切削溝62)が形成された第1の溝(第1の切削溝61)も含まれるように撮像画像95が形成されることとし、
撮像画像95に表れる切削溝の幅方向における切削溝の位置(中心線62cの位置62a)を検出し、
切削溝の位置を、第1の溝(第1の切削溝61)の位置(中心線61cの位置61a)と一致させるように切削ブレード(第2の切削ブレードB2)の切削位置を調整する、こととするものである。
【0075】
これによれば、第1の溝(第1の切削溝61)の位置を基準とする切削ブレード(第2の切削ブレードB2)の位置調整が可能となる。
【符号の説明】
【0076】
2 切削装置
2A 切削装置
10 ウェーハ
10a 表面
10b 裏面
11 デバイス
13 分割予定ライン
18 保持テーブル
46 切削ユニット
52 撮像装置
60 表示モニター
61 第1の切削溝
61a 位置
61c 中心線
61w 幅
62 第2の切削溝
62a 位置
62c 中心線
62w 幅
90 撮像画像
92 基準位置
92a 基準線
95 撮像画像
B1 第1の切削ブレード
B2 第2の切削ブレード
G1 一端側
G2 他端側
M1 未加工領域
M2 未加工領域
W1 刃厚
W2 刃厚
Δ ずれ量
S1 溝形成ステップ
S2 回転ステップ
S3 切削ステップ
S4 調整ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9